(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るランのシミュレーション装置100を示す概略図である。シミュレーション装置100は、コンピュータ2と、複数のレーダーR1、R2、R3とを有する。複数のレーダーR1、R2、R3は、コンピュータ2に接続されている。レーダーR1と、レーダーR2と、レーダーR3とは、同じである。レーダーの数は1台でもよいが、計測精度の観点から、2台以上が好ましく、3台以上がより好ましい。装置及び計算の簡略化と計測精度とのバランスを考慮すると、レーダーの数は3台が最も好ましい。
【0017】
以下、レーダーR1について説明するが、レーダーR2及びレーダーR3も、レーダーR1と同じである。
【0018】
図2は、レーダーR1の受信部設置面10の概略を示している。レーダーR1は、一つの送信部(図示省略)と、複数の受信部16とを有する。本実施形態では、レーダーR1は、3つの受信部16a、16b及び16cを有する。送信部は、飛行中のボールにレーダー波を発射する。受信部16は、ボールに反射されたレーダー波を受信する。第一受信部16aと、第二受信部16bと、第三受信部16cとで、位置が相違する。レーダーR1は、受信部設置面10が鉛直面に対して傾斜した状態で設置される。この傾斜により、受信部設置面10が斜め上向きとなる。鉛直面に対する受信部設置面10の傾斜角度は10度程度に設定されうる。
【0019】
図1及び
図2において図示されていないが、シミュレーション装置100は、受信部16により受信された信号に基づいて、ボールの三次元座標を算出する演算部を備えている。この演算部は、レーダーR1に内蔵されている。この演算部が、レーダーR1に接続されたコンピュータ2等に設けられても良い。
【0020】
レーダーR1は、ドップラー効果を用いて、ボールの速度(三次元速度)を計測しうる。レーダーR1は、ドップラーレーダである。本実施形態で用いられているレーダーの波長λは28.57mmであり、周波数fは10.5GHzであり、出力は10mVである。レーダーは、雨や霧の状態でもターゲット(ボール)を安定して捉えることができる。またレーダーにより、暗くても計測が可能である。
【0021】
図3は、レーダーR1のシステム構成図である。
【0022】
上述の通り、ボールから反射された電波(レーダー波)を受信部16が受信し、この受信された信号(電波)に基づいて、ボールの速度及び三次元座標が算出される。
【0023】
ボールの三次元座標は、ボールの三次元方位や三次元速度などの三次元情報に基づいて算出される。ボールの三次元座標は、演算部22により算出される。演算部22は、例えば、所定のソフトウエア、このソフトウエアを作動させるコンピュータ部のCPU及びメモリを含む。
【0024】
演算部22は、ボールからの反射波から得られた情報に基づき、ボールの各時刻における三次元速度及び三次元座標を算出する。各時刻における三次元座標に基づいて得られた弾道が、コンピュータの表示部に表示されてもよい。この表示部の典型例は、モニタである。
【0025】
ボールの三次元情報(三次元方位や三次元速度など)を得るためには、受信部(レシーバー)が三つ以上であるのが好ましい。三つの受信部間での受信電波(受信信号)の相違に基づき、ボールに関する三次元情報が得られる。
【0026】
ボールの三次元情報からボールの三次元座標を得るための方法として、例えば以下の第一及び第二の方法がある。本発明では、下記の第一及び第二の方法がいずれも採用されうる。他の方法によりボールの三次元座標が得られてもよい。
【0027】
第一の方法は、ボールの三次元情報としてボールの三次元方位を得るとともに、ボールとレーダーR1との距離を得て、得られた三次元方位と距離とからボールの三次元座標を得る方法である。
【0028】
第二の方法は、ボールの三次元情報としてボールの三次元速度を得て、得られた三次元速度を逐次積分することによりボールの三次元座標を得る方法である。
【0029】
ボールの速度と、ボールの三次元方位とから、ボールの三次元座標が得られても良い。
【0030】
レーダーR1では、一台のレーダーR1のみでボールの三次元速度及び三次元座標が得られる。レーダーR1に設けられた複数(3つ)の受信部は、一台のレーダ装置で三次元情報を取得することを可能とする。
【0031】
レーダーR1とボールとの距離は、送信から受信までに要した時間に基づいて算出されうる。またレーダーR1とボールとの距離は、同じ送信部から送信された2種類の周波数の電波を複数の受信部により受信することによって得られうる。ボールの速度は、ドップラーシフトに基づいて算出されうる。
【0032】
レーダーR1は、受信部16、送信部20及び演算部22に加え、変調器24及び発信器26を有する。変調器24からの変調信号に基づく発信周波数で発信器26より発信された信号が送信部20より発信される。ボールに反射して返ってきた電波信号は、受信部16により受信される。
【0033】
レーダーR1は、ミキサ回路28と、アナログ回路30と、A/Dコンバータ32と、FFT処理部34とを有する。受信部16で受信された電波信号は、ミキサ回路28で周波数変換される。ミキサ回路28には、受信部16で受信された電波信号に加えて、発信器26からの信号が供給される。ミキサ回路28は、受信部16からの信号と発信器26からの信号とをミキシングする。ミキシングにより発生する信号がアナログ回路30に出力される。アナログ回路30で増幅された信号はA/Dコンバータ32に出力される。A/Dコンバータ32によりデジタル信号に変換された信号はFFT処理部34に供給される。FFT処理部34は、高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)を行う。高速フーリエ変換により、信号の周波数スペクトラムから振幅及び位相の情報が得られ、この情報が演算部22に供給される。FFT処理部34からの情報から、演算部22はボールまでの距離とボールの速度とを算出する。
【0034】
ボールの速度(レーダーR1とボールとの相対速度)は、ドップラーシフトを利用することにより算出されうる。ボールまでの距離(レーダーR1からボールまでの距離)は、例えば2周波CW(Continuous Wave)方式を利用することにより算出されうる。
【0035】
2周波CW方式の場合、発信器26に変調信号が入力され、発信器26は2つの周波数f1、f2を時間的に切り替えながら送信部20に供給する。送信部20は2つの周波数f1、f2を時間的に切り替えながら発信する。送信部20から発信された電波はボールで反射される。反射信号は三つの受信部16で受信される。受信信号と発信器26の信号とがミキサ回路28で掛け合わされることにより、ビード信号が得られる。ホモダイン方式の場合、ミキサ回路28から出力されるビート信号がドップラー周波数となる。それぞれの送信周波数における受信信号は、アナログ回路30で分離復調され、A/Dコンバータ32でA/D変換される。A/D変換で得られたデジタルのサンプルデータがFFT処理部34で高速フーリエ変処理される。高速フーリエ変換処理により、受信されたビート信号の全周波数帯域での周波数スペクトラムが得られる。2周波CW方式の原理に基づいて、高速フーリエ変換処理の結果得られたピーク信号に対し、送信周波数f1のピーク信号のパワースペクトルと、送信周波数f2のピーク信号のパワースペクトルとが得られる。2つのパワースペクトルの位相差から、ボールまでの距離が算出される。
【0036】
以上のようにしてボールまでの距離とボールの三次元方位とを把握することにより、ボールの三次元座標が一義的に定まる。
【0037】
ボールの三次元速度を逐次積分することによりボールの三次元座標を算出することも可能である。ボールの三次元速度を得るためには、ドップラーシフトの原理が利用される。三次元速度を得るために、受信部16が3つ以上設けられる。好ましくは、全ての受信部16がレーダーR1内に設けられる。3つ以上の受信部は、それぞれ異なる位置に配置される。各受信部16は異なる位置に配置されているので、各受信部16とボールとの相対速度は個々に相違する。各受信部16とボールとの相対速度に基づき、ボールの三次元速度が算出される。三次元速度の積分は、演算部22によりなされる。
【0038】
ボールの一次元速度を逐次積分してボールの一次元座標を算出してもよい。ボールの二次元速度を逐次積分してボールの二次元座標を算出してもよい。この場合、得られた一次元座標又は二次元座標と他のデータ(ボールの方位等)とを組み合わせることにより、ボールの三次元座標が得られうる。
【0039】
本実施形態では、ボールの初期条件及び落下条件が計測される。よってボールの三次元座標は不要とされうる。ただし、ボールの座標(例えば、地面からの高さ)を把握することにより、落下条件(落下速度)の計測位置を精度良く決定することができる。
【0040】
図4は、計測方法を説明するための図である。弾道d1が一点鎖線で示されている。第一のレーダーR1は、打球位置の後方に配置される。第三のレーダーR3は、着地位置の近傍に配置される。第二のレーダーR2は、レーダーR1とレーダーR3との間に配置される。レーダーR2は、一方側(打球地点側)から落下条件(落下速度)を計測する。レーダーR3は、他方側から落下条件(落下速度)を計測する。2つの方向からの計測により、計測精度が向上しうる。
【0041】
レーダーR1は、初期条件及び弾道d1の初期段階を精度よく計測しうる。レーダーR2は、弾道d1の中間段階から後半段階を精度よく計測しうる。レーダーR3は、弾道d1の後半段階及び落下条件を精度良く計測しうる。
【0042】
3台のレーダーR1、R2及びR3からの反射波データから、強度の強いデータを用い、これらを近似曲線で結ぶことにより、弾道d1が決定されうる。この方法により、弾道d1の計測精度が向上しうる。また、落下条件が精度よく計測されうる。計測精度の観点から、好ましくは、3台のレーダーR1、R2及びR3からの反射波データから、強度の強いデータを用いて、落下条件が計測される。
【0043】
レーダーの計測可能領域の広さは、ビーム幅(ビーム角とも称される)に依存する。ビーム幅内の移動物体は精度よく計測されうる。ビーム幅は、例えば電力の半値幅で表される。半値幅とは、送信部から発信される電力が、レーダー正面で観測される最も強い値に対して半分に低下するまでの角度幅である。好ましくは、レーダーR1は、弾道d1の全てがビーム幅の範囲内となるように設置される。好ましくは、レーダーR2は、着地点p2がビーム幅の範囲内となるように設置される。好ましくは、レーダーR3は、着地点p2がビーム幅の範囲内となるように設置される。より好ましくは、レーダーR3は、弾道d1の全てがビーム幅の範囲内となるように設置される。
【0044】
落下条件の計測精度の観点から、レーダーR3と着地点p2との距離は、100ヤード以下が好ましく、70ヤード以下がより好ましく、50ヤード以下がより好ましい。弾道d1の後半及び落下条件の計測精度の観点から、レーダーR2と着地点p2との距離は、170ヤード以下が好ましく、160ヤード以下がより好ましく、150ヤード以下がより好ましい。後半の弾道d1を広範囲で捉える観点から、レーダーR2と着地点p2との距離は、100ヤード以上が好ましい。
【0045】
設置位置が異なる2台のレーダーR3及びレーダーR2を着地点p2の近くに設置することで、レーダーR1のみでの計測と比較して、落下条件の計測精度が向上しうる。
【0046】
本実施形態では、初期条件と落下条件とが計測される。これら初期条件及び落下条件にも基づいて、ランDrが算出される。ランDrは、落下地点p2から最終到達地点p3までの距離である。
【0047】
初期条件の計測時刻は、好ましくは、インパクトからの経過時間が、0.00秒以上0.01秒以下までである。初期条件として、ボール速度、左右方向の打ち出し角度、上下方向の打ち出し角度、バックスピン及びサイドスピンが例示される。
【0048】
本実施形態では、ランDrのシミュレーションに、初期条件のサイドスピン(rpm)、即ち、初期サイドスピンが用いられる。本実施形態では、サイドスピン以外の初期条件は用いない。例えば本実施形態では、ランDrのシミュレーションに、バックスピンは用いない。初期条件としてサイドスピンを用いることにより、ランDrのシミュレーションの精度が高まることが判明した。初期条件として初期サイドスピンのみを用いることにより、ランDrのシミュレーションの精度が高まることが判明した。また、初期バックスピンを用いるよりも、初期サイドスピンを用いるのが有効であることが判明した。
【0049】
初期条件の計測は、レーダーによっても可能である。ただし、計測精度の観点からは、打球地点p1付近に設けられた計測装置を用いて初期条件が計測されるのが好ましい。典型的な計測装置では、カメラ、フラッシュ、レーザー等により初期条件が計測される。印を付したボールをカメラで撮影することで、サイドスピン等のスピンが計測できる。このような初期条件の計測装置及び計測方法は周知である。
【0050】
計測精度の観点から、落下条件の計測は、レーダーによるのが好ましい。シミュレーション精度の観点から、落下条件は、着地点に着地する時刻T1に近いのが好ましい。落下条件の計測時刻は、時刻T1の0.1秒前から時刻T1まで(時刻T1を除く)が好ましい。また、落下条件が計測されるときのボール位置は、地面からの高さが50cm以下であるのが好ましい。
【0051】
図5では、落下速度Vのベクトルが矢印で示されている。
図5で示されているのは、時刻T1での落下速度Vである、本実施形態では、ランDrのシミュレーションに、落下速度Vを用いる。落下条件として落下速度Vを用いることにより、ランDrのシミュレーションの精度が高まることが判明した。
【0052】
落下速度Vは、レーダーによって計測される。弾道も、レーダーによって計測される。レーダーにより、ボールの位置及び速度が時系列的に得られうる。
【0053】
図5が示すように、落下速度Vは、目標方向成分Vxと、鉛直方向成分Vyとに分解されうる。これらVx及びVyを用いることにより、ランDrのシミュレーションの精度が高まることが判明した。なお本願では、目標方向がX方向とされ、鉛直方向がY方向とされる。
【0054】
また、テストの結果、好ましいランDrの算出式は、上記初期条件と上記落下条件とを変数とする二次関数であることが判明した。
【0055】
上記ランがDr(ヤード)とされ、上記落下速度の目標方向成分がVx(m/s)とされ、上記落下速度の鉛直方向成分がVy(m/s)とされ、初期サイドスピンがS(rpm)とされるとき、好ましいランDrの算出式は、次の式(1)である。
Dr=C
1×Vx
2−C
2×Vx+C
3×Vy
2+C
4×Vy−C
5×S+C
6 ・・・(1)
ただし、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5及びC
6は、それぞれ、正の定数である。なお、ランDrは、目標方向に沿った距離である。目標方向とは、打球位置p1と目標方向とを結ぶ直線の方向である。
【0056】
計測精度の観点から、定数C
1は、0.09以上0.10以下が好ましく、0.096以上0.097以下がより好ましく、0.0964がより好ましい。
【0057】
計測精度の観点から、定数C
2は、2以上3以下が好ましく、2.5以上3.0以下がより好ましく、2.8以上2.9以下がより好ましく、2.84がより好ましい。
【0058】
計測精度の観点から、定数C
3は、0.1以上0.2以下が好ましく、0.1以上0.15以下がより好ましく、0.13以上0.14以下がより好ましく、0.133がより好ましい。
【0059】
計測精度の観点から、定数C
4は、5以上6以下が好ましく、5.5以上6.0以下がより好ましく、5.6以上5.7以下がより好ましく、5.65がより好ましい。
【0060】
計測精度の観点から、定数C
5は、0.0005以上0.001以下が好ましく、0.0009以上0.001以下がより好ましく、0.00099がより好ましい。
【0061】
計測精度の観点から、定数C
6は、80以上90以下が好ましく、80以上85以下がより好ましく、81以上82以下が好ましく、81.9がより好ましい。
【0062】
上記実施形態では、初期条件と落下条件とを用いてランがシミュレーションされている。従来、初期条件及び落下条件の両方を用いるとの技術思想は存在しなかった。落下条件が計測できるとすると、当業者は、初期条件の考慮はもはや不要であると考えるはずである。なぜなら、落下条件は、飛球の最終的な状態を示しており、ランが生じる直前のボールの状態を示しているからである。しかしながら、この実測された落下条件に、初期条件を加えることで、より正確にランをシミュレーションできることが分かった。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0064】
[実施例1]
ドライバー(1番ウッド)、3番ウッド及び5番アイアンを用いて、多数のショットを行い、ランの実測値を得るとともに、落下速度V、バックスピン量及びサイドスピン量が計測された。計測には、
図1で示すシミュレーション装置が用いられた。3台のレーダーが
図4に示すように配置され、弾道及び落下速度Vの計測がなされた。レーダーとして、ISGデンマーク社製の商品名「トラックマン(Trackman)」が用いられた。ヘッドスピード、初期バックスピン及び初期サイドスピンは、周知の方法で計測された。
【0065】
計測された落下速度V(ベクトル)に基づき、落下速度Vx、落下速度Vy及び落下角度θvが得られた。なおランは、目標方向(X方向)における距離である。落下速度Vは、地面gからのボールの高さが0.1mのときの速度とされた。天候が晴れであり、且つほぼ無風の条件で実測されたデータが採用された。採用されたデータの数は、ドライバーで552であり、3番ウッドで83であり、5番アイアンで232であった。ドライバーでの552のデータにおいて、ヘッドスピードの平均値は42.1m/sであり、最大値は49.8m/sであり、最小値は35.2m/sであった。3番ウッドでの83のデータにおいて、ヘッドスピードの平均値は43.8m/sであり、最大値は46.3m/sであり、最小値は41.4m/sであった。5番アイアンでの232のデータにおいて、ヘッドスピードの平均値は36.3m/sであり、最大値は41.4m/sであり、最小値は30.6m/sであった。データ数を多くすることにより、本発明の有効性を確認した。計測値の最大値、最小値及び平均値が、下記の表1に示される。バックスピンは初期バックスピンであり、サイドスピンは初期サイドスピンである。なおサイドスピンにおいて、マイナスの値は右方向に曲がるスピンを意味し、プラスの値は左方向に曲がるスピンを意味する。
【0066】
【表1】
【0067】
これらのデータを用いて、回帰分析を行った。この回帰分析の手法として、重回帰分析が採用された。重回帰分析で用いたソフトウェアは、statsoft社の商品名「STATISTICA」とされた。
【0068】
実施例1では、目的変数及び従属変数が次の通りとされた。
・[目的変数]:ランDr(ヤード)
・[従属変数]:落下速度Vx(m/s)、落下速度Vy(m/s)、Vx
2、Vy
2、初期サイドスピンS(rpm)
【0069】
図6は、実施例1の分析結果を示すグラフである。
図6において横軸はランの予測値(ヤード)を示しており、縦軸はランの観測値(ヤード)を示している。即ち縦軸は実測値を示している。
図6において実線で示された直線は回帰直線を示し、2本の破線は95%信頼区間を示している。得られたシミュレーションの式は次の通りであった。
Dr=C
1×Vx
2−C
2×Vx+C
3×Vy
2+C
4×Vy−C
5×S+C
6
ただし、C
1は、0.0964であり、定数C
2は、2.84であり、定数C
3は0.133であり、定数C
4は5.65であり、定数C
5は0.00099であり、定数C
6は81.9であった。この数式で得られるランDrとランの観測値との重相関係数Rは0.925であり、決定係数R
2は0.856であった。
【0070】
[比較例1]
目的変数及び従属変数が次の通りとされた他は実施例1と同様にして、重回帰分析を行った。
・[目的変数]:ランDr(ヤード)
・[従属変数]:落下角度θv(degree)、落下速度V(m/s)
【0071】
図7は、比較例1の分析結果を示すグラフである。
図7において横軸はランの予測値(ヤード)を示しており、縦軸はランの観測値(ヤード)を示している。
図7において実線で示された直線は回帰直線を示し、2本の破線は95%信頼区間を示している。得られたシミュレーションの式は次の通りであった。
Dr=0.610×V+0.754×θv+24.2
この数式で得られるランDrとランの観測値との重相関係数Rは0.846であり、決定係数R
2は0.716であった。
【0072】
[比較例2]
目的変数及び従属変数が次の通りとされた他は実施例1と同様にして、重回帰分析を行った。
・[目的変数]:ランDr(ヤード)
・[従属変数]:落下速度Vx(m/s)、落下速度Vy(m/s)
【0073】
図8は、比較例2の分析結果を示すグラフである。
図8において横軸はランの予測値(ヤード)を示しており、縦軸はランの観測値(ヤード)を示している。
図8において実線で示された直線は回帰直線を示し、2本の破線は95%信頼区間を示している。得られたシミュレーションの式は次の通りであった。
Dr=1.35×Vx+1.42×Vy+6.52
この数式で得られるランDrとランの観測値との重相関係数Rは0.876であり、決定係数R
2は0.767であった。
【0074】
[実施例2]
目的変数及び従属変数が次の通りとされた他は実施例1と同様にして、重回帰分析を行った。
・[目的変数]:ランDr(ヤード)
・[従属変数]:落下速度Vx(m/s)、落下速度Vy(m/s)、初期バックスピンB(rpm)
【0075】
図9は、実施例2の分析結果を示すグラフである。
図9において横軸はランの予測値(ヤード)を示しており、縦軸はランの観測値(ヤード)を示している。
図9において実線で示された直線は回帰直線を示し、2本の破線は95%信頼区間を示している。得られたシミュレーションの式は次の通りであった。
Dr=0.00148×B+1.64×Vx+1.50×Vy−3.38
この数式で得られるランDrとランの観測値との重相関係数Rは0.883であり、決定係数R
2は0.779であった。
【0076】
[実施例3]
目的変数及び従属変数が次の通りとされた他は実施例1と同様にして、重回帰分析を行った。
・[目的変数]:ランDr(ヤード)
・[従属変数]:落下速度Vx(m/s)、落下速度Vy(m/s)、初期サイドスピンS(rpm)
【0077】
図10は、実施例3の分析結果を示すグラフである。
図10において横軸はランの予測値(ヤード)を示しており、縦軸はランの観測値(ヤード)を示している。
図10において実線で示された直線は回帰直線を示し、2本の破線は95%信頼区間を示している。得られたシミュレーションの式は次の通りであった。
Dr=−0.000693×S+1.34×Vx+1.40×Vy+6.08
この数式で得られるランDrとランの観測値との重相関係数Rは0.876であり、決定係数R
2は0.768であった。
【0078】
[実施例4]
目的変数及び従属変数が次の通りとされた他は実施例1と同様にして、重回帰分析を行った。
・[目的変数]:ランDr(ヤード)
・[従属変数]:落下速度Vx(m/s)、落下速度Vy(m/s)、初期バックスピンB(rpm)、初期サイドスピンS(rpm)
【0079】
図11は、実施例4の分析結果を示すグラフである。
図11において横軸はランの予測値(ヤード)を示しており、縦軸はランの観測値(ヤード)を示している。
図11において実線で示された直線は回帰直線を示し、2本の破線は95%信頼区間を示している。得られたシミュレーションの式は次の通りであった。
Dr=0.00184×B−0.00157×S+1.70×Vx+1.46×Vy−6.79
この数式で得られるランDrとランの観測値との重相関係数Rは0.886であり、決定係数R
2は0.785であった。
【0080】
以上のように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。