【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて、本発明にかかる繊維強化プラスチック用組成物及び繊維強化プラスチックについて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔ナノ繊維の製造〕
<製造例1>
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する。)の粉末(日本ポバール社製、平均重合度1500、鹸化度88%)を80℃の蒸留水に添加し、マグネティックスターラーを用いて5時間撹拌混合した。
このようにして調製した16重量%PVA溶液を、エレクトロスピニング装置(カトーテック社製)を用いてナノ繊維化した。
具体的には、まず、カソードとなる銅プレート上にアルミ箔を取り付けたのち、PVA溶液をシリンジニードルから0.01mm/minで吐出した。電圧は15kVとし、シリンジニードルからターゲットへの距離は15cmとした。
エレクトロスピニング法(以下、「ES法」と略記する)により形成されたナノ繊維の平均繊維径は100nmであった。なお、ナノ繊維の繊維径については、走査型電子顕微鏡によって100本測定し、その単純平均値をナノ繊維の平均繊維径とした。
【0035】
<製造例2〜4>
製造例1において、吐出するPVA溶液の濃度を18重量%,20重量%又は22重量%に変更する以外は同様にして、製造例2〜4の各ナノ繊維を製造した。製造例2〜4の各ナノ繊維の平均繊維径は、それぞれ、100nm、75nm、150nmであった
【0036】
〔炭素繊維強化プラスチックの製造〕
<実施例1>
ビスフェノールA型エポキシプレポリマー「エピコート828」(ジャパンエポキシレジン社製)100重量部に対し、上記製造例3にかかるナノ繊維0.03重量部を添加し、プロセスホモジナイザー(SMT社製)を用いて15000rpmで混合し、繊維強化プラスチック用組成物を調製した。
さらに、エポキシプレポリマー100重量部に対し、硬化剤としての変性芳香族ポリアミン(ジャパンエポキシレジン社製)60重量部を添加し、真空乾燥機で15分間脱気した。その後、得られた混合物を、ハンドレイアップ法により平織炭素繊維「TR3110M」(三菱レイヨン社製、繊維体積含有率50±2%)10枚に含浸させ、実施例1にかかる炭素繊維強化プラスチックを製造した。
【0037】
<実施例2>
ナノ繊維の添加量を、エポキシプレポリマー100重量部に対し0.05重量部としたこと以外は実施例1と同様にして実施例2にかかる炭素繊維強化プラスチックを製造した。
【0038】
<実施例3>
ナノ繊維の添加量を、エポキシプレポリマー100重量部に対し0.1重量部としたこと以外は実施例1と同様にして実施例3にかかる炭素繊維強化プラスチックを製造した。
【0039】
<比較例1>
ナノ繊維を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして比較例1にかかる炭素繊維強化プラスチックを製造した。
【0040】
〔評価試験〕
<引張強度>
引張強度は、島津オートグラフ万能試験機を用いて測定した。200mm×25mm×2mmの試験片を用いて、ゲート長さは100mm、引っ張り速度は1mm/minとした。試験片の両端には、接着によって1.5mm厚のアルミニウムタブを取り付けた。
【0041】
<曲げ強度>
曲げ性能の測定は、島津オートグラフ万能試験機を用い、3点曲げ試験により行った。この3点曲げ試験は、厚み2mm、幅15mm、長さ100mmの試験片を用い、スパンを80mmとして、室温下、1mm/minの速度で行った。
【0042】
<モードI層間破壊靭性>
モードI層間破壊靱性は、モードI双片持ち梁(Mode I Double Cantilever Beam)(DCB)法により測定した。このDCB試験は万能試験機(島津製作所社製)を用いて行った。試験片は、厚み2mm、幅20mm、長さ150mmとした。初期クラック長さは50mmとした。
モードI層間破壊靱性G
IC、G
IPは、修正コンプライアンス較正法(MCC法)を用いて下式(1)、(2)から算出した。
【0043】
【数1】
【0044】
【数2】
【0045】
上式(1)、(2)において、G
ICは初期破壊段階における破壊靭性を表し、G
IPは亀裂が伝播している段階における破壊靭性を表す。P
pは負荷荷重、Cは各クラック長さに対応する較正値、P
cは初期最大荷重、Bは試料片の幅、2hは試料片の厚み、Nはエンドブロック補正率、Fははりの大変形に対する補正率、mは(a/2h)に対して(BC/N)
1/3をプロットしたときの勾配である(ただし、aはクラック長さ)。
試験方法についての更なる詳細は、ASTM D5528−01の記載に準じる。
【0046】
<SEM観察>
アルミ箔上のナノ繊維、ならびに、静的試験及び疲労試験での破断面を日本電子社製の走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM−7001FD」により観察した。
【0047】
〔結果及び考察〕
<ナノ繊維の形状>
ナノ繊維の形状は、上記SEM観察によって確認した。
ES法に供するPVA溶液濃度が16重量%であった製造例1のナノ繊維では、ES法の工程において繊維上にランダムにビーズが形成された。ビーズの大きさ(差し渡し最大長さ)は、200nmに達するものもあった。
ES法に供するPVA溶液濃度が18重量%であった製造例2のナノ繊維では、繊維径、繊維形状ともに乱雑なものが得られた。
ES法に供するPVA溶液濃度が20重量%であった製造例3のナノ繊維は、50〜100nmの範囲の繊維径を有し、ランダムに整列したウェブ状の滑らかな繊維であった。
ES法に供するPVA溶液濃度が22重量%であった製造例4のナノ繊維では、製造例3のナノ繊維よりも厚みがあり、形状にバラツキがあった。
【0048】
上の結果から、PVA溶液濃度20重量%程度が最も好ましいナノ繊維を形成させるものであったので、実施例1〜3においては、上述のとおり、製造例3にかかるナノ繊維を用いた。
【0049】
<炭素繊維強化プラスチックの引張強度及び曲げ強度>
実施例1〜3及び比較例1の各炭素繊維強化プラスチックについて、上述の方法に従って測定した引張強度と曲げ強度の結果を下表に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上記表1に示す結果から分かるように、引張強度と曲げ強度は、いずれも、実施例1〜3が比較例1を上回っており、特に、実施例2は、比較例1の結果と比べて、引張強度が10%向上し、曲げ強度も8.8%向上しており、ナノ繊維の添加効果が顕著に現れた。ヤング率、曲げ弾性率については、ナノ繊維を添加することで、値が小さくなる傾向があった。
【0052】
引張試験後の試験片をSEM観察したところ、実施例1〜3の炭素繊維強化プラスチックにおいては、エポキシ樹脂と炭素繊維がナノ繊維によって強固に結合されていることが分かり、これが、引張強度や曲げ強度の向上の要因であると理解された。実施例2の炭素繊維強化プラスチックにおいて、ナノ繊維によるエポキシ樹脂と炭素繊維の結合が特に優れていることも分かった。
対照的に、比較例1の炭素繊維強化プラスチックにおいては、エポキシ樹脂と炭素繊維との結合が弱いことが分かった。
【0053】
<炭素繊維強化プラスチックのモードI層間破壊靭性>
実施例1〜3及び比較例1の各炭素繊維強化プラスチックについて、上述の方法に従って測定したモードI層間破壊靭性の結果を
図1〜3に示す。
図1(a)〜(c)は、それぞれ、実施例1〜3についての結果を示すグラフであり、
図1(d)は比較例1についての結果を示すグラフである。
同様に、
図2(a)〜(c)は、それぞれ、実施例1〜3についての結果を示すグラフであり、
図2(d)は比較例1についての結果を示すグラフである。
また、
図3(a)はG
ICの測定値を表すグラフであり、
図3(b)はG
IPの測定値を表すグラフである。
【0054】
図1を見ると、最大荷重値に達するまでは直線状に増加し、その後、伝播段階において、ジグザグ状に徐々に減少していく傾向が見られた。これは、長さ方向において樹脂リッチの領域と繊維リッチの領域のバラツキがあること、繊維の整合不良、孔、繊維架橋の破壊といった要因で説明できる。
ナノ繊維を添加した実施例1〜3では、ナノ繊維を添加しなかった比較例1と比べて、変位が大きくなり、荷重値が高くなった。これは、エポキシ樹脂と炭素繊維とがナノ繊維によって強く結合されている結果、クラックの伝播が起こりにくくなったためであると推測される。
【0055】
さらに、
図2,3に示す結果から、ナノ繊維を添加した実施例1〜3では、ナノ繊維を添加しなかった比較例1と比べて、初期及び伝搬段階のいずれにおいても層間破壊靭性の増加が見られる。
【0056】
モードI層間破壊靭性試験後の試験片をSEM観察したところ、ナノ繊維を添加しなかった比較例1では、エポキシ樹脂と炭素繊維との結合が比較的弱かったのに対し、ナノ繊維を添加した実施例1〜3では、ナノ繊維が、エポキシ樹脂と炭素繊維との界面の接着を強化し、炭素繊維強化プラスチックの強度向上に寄与していることが分かった。