(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1中空部を有する第1シリンダ、及び、第1中空部に収容される、液状検体を吸収保持する吸収体を圧搾して、液状検体を取り出すための第1プランジャから構成される圧搾部と、
第2中空部を有する第2シリンダ、及び、第2中空部に挿入される第2プランジャから構成されており、前記吸収体から取り出された液状検体のうちの所定量を第1中空部から排出させるための定量部と、
第1中空部及び第2中空部と空間的に接続されており、第1中空部から排出された所定量の液状検体を収容するための、第1中空部に対して着脱自在に接続されている収容部と、を含む検体採取器具。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る検体採取器具を示す概略図であり、
図1(a)がその概略断面図、
図1(b)及び
図1(c)はそれぞれ、第1プランジャ101の先端部101a、第2プランジャ201の先端部201aの形状を示す上面図である。
【0015】
本実施形態に係る検体採取器具は、唾液等の液状検体を吸収保持する吸収体から、液状検体を精度良く定量しながら採取できる器具であり、2つのピストン機構(圧搾部100としてのピストン機構と定量部200としてのピストン機構)を配管(収容部300)で接続したような簡易な構造を有している。より具体的には、この検体採取器具は、液状検体を吸収保持する吸収体を圧搾して、液状検体の取り出しを行うための圧搾部100;吸収体から取り出された液状検体のうちの所定量を定量するための定量部200;及び、定量された液状検体を収容するための収容部300から構成される。
【0016】
圧搾部100は、第1中空部を有する第1シリンダ102、及び、第1中空部に挿入される第1プランジャ101からなる。本発明において「シリンダ」とは、筒状体を意味し、内部に空間(中空部)を有するものである。「プランジャ」とは、シリンダの中空部に挿入されるピストン棒であり、中空部に挿入した状態で往復運動自在なものである。本実施形態において第1中空部は、第1プランジャ101が挿入される側から順に、第1チャンバ151、第1チャンバ151に連結される第2チャンバ152、及び、第2チャンバ152に連結される第3チャンバ153から構成されている。本実施形態では、第2チャンバ152の断面積が第1チャンバ151の断面積より小さく、また、第3チャンバ153の断面積が第2チャンバ152の断面積より小さくなるように設計されている。
【0017】
第1シリンダ102の第1中空部に挿入された第1プランジャ101を押すことにより、液状検体を吸収保持する吸収体が圧搾され、吸収体から液状検体が取り出される。
【0018】
定量部200は、第2中空部251を有する第2シリンダ202、及び、第2中空部251に挿入される第2プランジャ201からなる。第2シリンダ202の第2中空部251に挿入された第2プランジャ201を引くことにより、吸収体から取り出された液状検体のうちの所定量が第1中空部から排出され、収容部300内に収容される。
【0019】
図1(b)に示されるように、第1プランジャ101の先端部101aは切り欠き部を有しており、この切り欠き部は、第1中空部内の空気を排出するための空気排出口である。一方、第2プランジャ201の先端部201aは、このような空気排出口を有していない〔
図1(c)〕。
【0020】
収容部300は、定量部200を用いて定量された液状検体を収容するための部位であり、本実施形態では樹脂製のチューブからなる。収容部300の一方端、他方端はそれぞれ、収容部300内の空間が第3チャンバ153及び第2中空部251と空間的に接続されるように、第1シリンダ102の端部、第2シリンダ202の端部に差し込まれている。従って、収容部300は、第1中空部及び第2中空部251に接続されているが、着脱自在(収容部300は、第1シリンダ102及び第2シリンダ202から取り外し可能)である。
【0021】
本実施形態において圧搾部100と定量部200とは、それらの中空部が略平行となるように、かつ、それらの中空部におけるプランジャが挿入される側とは反対側の開口が同じ側を向くように、隣接して配置されている。そしてこれらの開口を繋ぐように収容部300が配置されている。本実施形態において圧搾部100と定量部200とは、別々のプラスチック成形部材である。この場合、圧搾部100及び定量部200を図示しない1つの支持体(例えば、2つのピストン機構を差し込む穴が開いた基板等)に固定することにより、又は接着剤等を用いて接着することにより、圧搾部100と定量部200とを結合させることができる。
【0022】
ただし、圧搾部100と定量部200とは別々の部材である必要はなく、第1シリンダ102と第2シリンダ202とが一体的に成形された部材を用いることもできる。この場合、検体採取器具を構成する部品点数をより少なくすることができるため、低コストでの量産により有利である。
【0023】
次に、
図2を参照しながら、本実施形態に係る検体採取器具の使用方法について説明する。以下に詳述するように、本実施形態に係る検体採取器具によれば、極めて簡便な操作で液状検体を精度良く定量採取できる。また、手を汚すことなく、安全に、衛生的に定量採取操作を行うことができる。
【0024】
なお以下では、液状検体が唾液である場合を例に挙げて検体採取器具の使用方法を説明するが、液状検体は唾液に限定されるものではなく、血液、涙、鼻水、尿等の生体サンプルを含む如何なる液状検体にも適用可能である。また、検体に限らず、液状の化学物質の定量にも適用することが可能である。
【0025】
(A)圧搾工程
まず本工程において、口に含ませることにより唾液を吸収させた唾液採取用の吸収体400を、第1シリンダ102の第1中空部、より具体的には第1チャンバ151に入れ、第1プランジャ101を押して吸収体400を圧搾し、吸収体400から唾液450を取り出す〔
図2(a)〕。吸収体400としては、唾液採取用スワブとして一般的に市販されているものを用いることができ、例えば、綿、天然スポンジ、ウレタンスポンジを挙げることができる。
【0026】
上述のように、第2チャンバ152の断面積は第1チャンバ151の断面積より小さくなっており、これにより第1中空部には、その断面積が狭窄された第1狭窄部160が形成されている。この第1狭窄部160上に吸収体400が載置される。第1狭窄部160上に吸収体400が載置されるので、吸収体400を第1プランジャ101で押圧しても、吸収体400が第2チャンバ152に落ち込んで、圧搾操作に不具合が生じることはない。換言すれば、吸収体400としては、第2チャンバ152の断面積より大きく、第1チャンバ151の断面積と同程度か、又はこれより若干小さめのサイズのものが用いられる。このように、第1チャンバ151の第2チャンバ152側端部が吸収体400を載置する載置部となる。
【0027】
圧搾操作により吸収体400から取り出された唾液450は、第2チャンバ152内に一時的に収容される。このように、第2チャンバ152は、吸収体400から取り出された唾液450を一時的に貯めておく貯蔵部(保持部)として機能する。吸収体400から取り出す唾液450の量は特に限定されず、例えば最終的に定量される唾液量の10倍程度であることができる。取り出すべき唾液450の量を明確に把握できるよう、
図1(a)及び
図2(a)等において点線で示されるように、第2チャンバ152にマーカー(目印となるライン)を付しておくとよい。
【0028】
上述のように、第3チャンバ153の断面積は第2チャンバ152の断面積より小さくなっており、これにより第1中空部には、その断面積が狭窄された第2狭窄部170が形成されている〔
図2(a)参照〕。このような狭窄部を設けることにより、圧搾操作において第1中空部内の空気を空気排出口(第1プランジャ101の先端部101aの切り欠き部)から良好に排出させることができる。第3チャンバ153は、収容部300を差し込んだときに、収容部300の端部の位置を位置決めする役割を果たすとともに(収容部300の端部の位置を第3チャンバ153の収容部300側端部に位置決めする)、第2チャンバ152内の唾液450が毛細管現象で収容部300に侵入することを防止する。
【0029】
第2チャンバ152の断面積に対する第3チャンバ153の断面積をより小さくしたり、第2狭窄部170近傍における第3チャンバ153の内表面の撥水性をより大きくしたりすることにより、唾液450が毛細管現象で収容部300に侵入することをより効果的に防止することができる。
【0030】
なお本実施形態では、第1プランジャ101の先端部101aに空気排出口を設けているが、これに限定されず、第1シリンダ102に、第1中空部と採取器具外部とを連通する開口からなる空気排出口を設けてもよい。また、第1及び第2プランジャ101,201の形状は
図1及び
図2に示されるような、それらの先端部101a,201aの径のみが第1チャンバ151,第2中空部251の径と同等である形状に限定されず、全体が第1チャンバ151,第2中空部251の径と同等であるような柱状であってもよい。
【0031】
(B)定量工程
上記圧搾工程(A)に続き、本工程では、第2プランジャ201を引くことによって、第2チャンバ152に保持された唾液450のうちの所定量を第1中空部から排出させ、収容部300内に引き込むことにより定量を行う〔
図2(b)〕。収容部300内に収容された量が定量された量である。定量されるべき唾液450の量を明確に把握できるよう、
図1(a)及び
図2(a)等において点線で示されるように、収容部300にマーカー(目印となるライン)を付しておくとよい。マーカーは、マーカーの位置まで唾液を引き込んだときに所定量が定量される位置に付される。
【0032】
収容部300内に収容され得る唾液量は、収容部300の長さや内径によって調節することができる。収容部300の内径を小さくすれば、定量性をより向上させることができる。
【0033】
第2プランジャ201を引き過ぎたことにより、過剰の唾液が収容部300に収容された場合には、唾液450がマーカーの位置に到達するまで第2プランジャ201を押し込めばよい。また、収容部300として、例えばプラスチック製のチューブ等を用いる場合などにおいては、収容部300へ液状検体を引き込む際に気泡などが混入することを防ぐために、収容部300の内面に、界面活性剤などを用いて親水化処理を施しておいてもよい。
【0034】
図3に示されるような第2プランジャを用いると、唾液の収容部300への引き込み量の微量調整がより容易となり、定量性をより向上させ得る。
図3(a)は第2プランジャの別の例を示す概略側面図であり、
図3(b)は
図3(a)に示される先端部分IIIを拡大して示す概略側面図である。
図3に示される第2プランジャは、その先端部分にらせん状の溝が刻まれている。このような溝を設けると、第2プランジャを回転させることにより引き上げることが可能になるので、回転量の調節により、第2プランジャの引き上げ長さ、ひいては唾液の収容部300への引き込み量をより精密に調節することができる。また、溝ではなく、らせん状突起を設けるようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0035】
図3に示される第2プランジャを使用する場合、第2プランジャの溝(又は突起)に対応するらせん状の突起(又は溝)を第2中空部251の内壁に設けてもよいが、このような突起を設けなくても、第2プランジャと第2シリンダとの摩擦力によって、第2プランジャの回転による引き上げ動作を十分に行うことができる。
【0036】
ここで上述のように、収容部300は、第1シリンダ102及び第2シリンダ202の末端に設けられ、それぞれ第1収容部(第3チャンバ153)及び第2収容部251と連通する凹部に差し込むことにより、圧搾部100及び定量部200と接続することができる。これらの凹部は、
図1に示されるように、収容部300の径と同等の径を有する一定径の凹部であってもよいが、例えば
図4に示されるように、該凹部(凹部205)の第1収容部や第2収容部側の端部において凹部205の径が大きくなるように空間部205aが設けられた凹部であってもよい。これにより、収容部300を凹部205の奥まで容易に差し込むことができるようになるため、収容部300が凹部の奥まで差し込まれず、デッドスペースが生じて、液状検体定量に誤差が生じることを効果的に防止することができる。なお
図4は、第2シリンダ202を例に挙げた図であるが、第1シリンダ102についても同様である。
【0037】
(C)取り出し工程
最後に、本工程において、収容部300と第1シリンダ102とを切り離し、定量工程(B)において引き上げた第2プランジャ201を最後まで押して、定量された唾液を収容部300から取り出す〔
図2(c)〕。取り出しの一形態では、収容部300の先端から、唾液分析を行う分析チップ(バイオチップ)や分析装置の検体注入口に直接滴下する。
【0038】
なお、本実施形態において収容部300は、第2シリンダ202からも取り外し可能となっているが、少なくとも第1シリンダ102から取り外し可能であればよく、収容部300と第2シリンダ202との接続は固定的であってもよい。
【0039】
以下に示す手順で本実施形態の検体採取器具の定量性を評価した。第1、第2、第3チャンバ、第2中空部(第2プランジャの挿入部分)の断面形状はいずれも円であり、それらの直径はそれぞれ、5mm、2mm、1.5mm、5mmとした。収容部300には、内面が界面活性剤により親水化処理された内径0.8mmのシリコーン製チューブを用いた。
【0040】
(a)予備実験
下記(b)及び(c)に示すように、検体採取器具による検体の定量性を、定量した検体の体積ではなく質量に基づき評価するため、その妥当性について事前に検討した。まず、表示値が10μl、15μl、30μl、50μlであるマイクロピペットをそれぞれ用いて、マイクロチューブに純水を分注した。これら5種類の純水入りマイクロチューブを1つのロットとし、合計5ロット(それぞれ、第1〜第5ロットとする)を用意した。純水分注前に、各マイクロチューブの質量を電子天秤(A&D社製 GR−202)を用いて予め測定しておいた。
【0041】
次に、上記と同じ電子天秤を用いて、
第1ロット 10μl→15μl→30μl→50μl
↓
第2ロット 10μl→15μl→30μl→50μl
↓
↓
第5ロット 10μl→15μl→30μl→50μl
の順で純水入りマイクロチューブの質量を測定し、予め測定しておいたマイクロチューブの質量との差分から各マイクロチューブ内の純水の質量を求めた。10μl、15μl、30μl、50μlの純水量毎に、第1〜第5ロットについて求められた純水質量の変動係数を算出した。以上の一連の測定をn=5で4回繰り返した。
図5にその結果を示す。
【0042】
純水質量の変動係数は最大でも1.33%であり、バラツキは小さかった。従って、測定中の蒸発等に起因する質量の変動は実質的に無視できると判断した。また、電子天秤のドリフトが1mg/h程度と極めて小さいことにも鑑み、採取した検体の質量に基づいて、問題なく検体の定量性を評価できると判断した。
【0043】
(b)検体の定量性の評価1
ウシ血清アルブミン(BSA)を一定濃度溶解して粘性を持たせた疑似唾液を用いて、検体採取器具の定量性を評価した。まず、疑似唾液として5質量%BSA溶液を調製し、その100μlを唾液採取用のスワブに含ませた。このスワブを第1シリンダ102に入れ、第1プランジャ101で圧搾して、疑似唾液を第2チャンバ152に排出させた。次いで、第2プランジャ201を引き、収容部300に予め付しておいた検体量40μlのライン(
図1に示される点線ライン)まで疑似唾液を引き込み、疑似唾液を定量した。次に、収容部300と第1シリンダ102とを切り離した後、第2プランジャ201を最後まで押し込み、収容部300内の疑似唾液全量を、予め質量を測定したマイクロチューブへ滴下した。疑似唾液入りマイクロチューブの質量を測定し、予め測定しておいたマイクロチューブの質量との差分からマイクロチューブ内の疑似唾液の質量を求めた。
【0044】
以上の測定を10回繰り返し、平均値及び変動係数を求めた。結果を
図6に示す。また、疑似唾液として、0質量%、0.5質量%、1質量%及び3質量%BSA溶液を調製し、同様にして、定量された疑似唾液の質量の平均値及び変動係数を求めた。結果を併せて
図6に示す。疑似唾液の質量の変動係数は最大でも2.75%であり、バラツキは極めて小さかった。
【0045】
(c)検体の定量性の評価2
ヒト唾液を用いて検体採取器具の定量性を評価した。この際、収容部300の長さ(予め付しておいたラインまでの長さ)を10cm、9cm、8cm、7cmの4種類とし、それぞれについて定量性を評価した。評価方法は上記(b)と同じであり、測定を10回繰り返し、平均値及び変動係数を求めた。結果を
図7に示す。
【0046】
図7に示されるように、収容部300の長さに比例したヒト唾液を定量採取することができた。また、ヒト唾液の質量の変動係数は最大でも8.22%であり、バラツキは十分に小さかった。
【0047】
<第2の実施形態>
図8は、本実施形態に係る検体採取器具を示す概略断面図である。本実施形態に係る検体採取器具もまた、第1の実施形態と同様、液状検体を吸収保持する吸収体から、液状検体を精度良く定量しながら採取できる器具であり、2つのピストン機構(圧搾部700としてのピストン機構と定量部800としてのピストン機構)を収容部900で接続したような簡易な構造を有している。
【0048】
本実施形態に係る検体採取器具と第1の実施形態に係る検体採取器具との間の構造上の主な相違点は、本実施形態では、圧搾部700と定量部800の中空部におけるプランジャが挿入される側とは反対側の開口が同じ側を向くのではなく、互いに対向するように、圧搾部700と定量部800を上下に配置している点である。定量部800のシリンダ(第2シリンダ802)の一部は、圧搾部700のシリンダ(第1シリンダ702)に差し込まれている。
【0049】
圧搾部700は、第1中空部を有する第1シリンダ702、及び、第1中空部に挿入される第1プランジャ701からなる。本実施形態において第1中空部は、第1プランジャ701が挿入される側から順に、第1チャンバ751、及び、第1チャンバ751に連結経路702aを介して連結される第2チャンバ752から構成されており、第3チャンバを有しない。例えば、台の上に置かれた第1プランジャ701に対し、第1シリンダ702を押し込むことにより、液状検体を吸収保持する吸収体が圧搾され、吸収体から液状検体が取り出される。第1プランジャ701の周縁部には、押し込まれた第1シリンダ702を挿入するための凹部が形成されている。
【0050】
本実施形態では、第1プランジャ701ではなく、第1シリンダ702に、第1中空部と採取器具外部とを連通する開口からなる、第1中空部内の空気を排出するための空気排出口702bを設けている。
【0051】
定量部800は、第2中空部851を有する第2シリンダ802、及び、第2中空部851に挿入される第2プランジャ801からなる。第2シリンダ802には、その先端に、第2中空部851の狭部852を形成する針部が設けられており、これに収容部900が取り付けられる。第2シリンダ802の第2中空部851に挿入された第2プランジャ801を引くことにより、吸収体から取り出された液状検体のうちの所定量が第1中空部(より具体的には第2チャンバ752)から収容部900内に導入される。
【0052】
収容部900は、第2シリンダ802の針部に取り付けられることにより、第2シリンダ802の第2中空部851と空間的に接続されている。また、収容部900は、第1シリンダ702の第2チャンバ752内に配置されているので、第1中空部(第2チャンバ752)とも空間的に接続されている。本実施形態において収容部900は、ピペットチップ等のプラスチック部材である。
【0053】
次に、
図9を参照しながら、本実施形態に係る検体採取器具の使用方法について説明する。本実施形態に係る検体採取器具によれば、第1の実施形態と同様、極めて簡便な操作で液状検体を精度良く、また、安全に、衛生的に定量採取できる。なお以下では、液状検体が唾液である場合を例に挙げて検体採取器具の使用方法を説明するが、液状検体は唾液に限定されるものではない。
【0054】
(A)圧搾工程
まず本工程において、口に含ませることにより唾液を吸収させた唾液採取用の吸収体400を、第1シリンダ702の第1チャンバ751に入れ〔
図9(a)〕、台の上に置かれた第1プランジャ701に対し、第1シリンダ702を押し込むことにより、吸収体400を圧搾し、吸収体400から唾液450を取り出す〔
図9(b)〕。取り出すべき唾液450の量を明確に把握できるよう、第1の実施形態と同様、第2チャンバ752にマーカー(目印となるライン)を付しておくとよい。第2チャンバ752への唾液450の導入に伴い、第1中空部内の空気は、空気排出口702bから排出される。
【0055】
(B)定量工程
上記圧搾工程(A)に続き、本工程では、第2プランジャ801を引くことによって、第2チャンバ752に保持された唾液450のうちの所定量を第1中空部から排出させ、収容部900内に引き込むことにより定量を行う〔
図9(c)〕。定量されるべき唾液450の量を明確に把握できるよう、収容部900にマーカー(目印となるライン)を付しておくとよい。収容部900内に収容され得る唾液量は、収容部900の内容積によって調節することができる。本実施形態においても同様に、
図3に示されるような第2プランジャを用いることができる。
【0056】
(C)取り出し工程
最後に、本工程において、定量部800及び収容部900を圧搾部700から取り外し〔
図9(d)〕、第2プランジャ801を最後まで押して、定量された唾液を収容部900から取り出す〔
図9(e)〕。例えば、収容部900の先端から、唾液分析を行う分析チップ(バイオチップ)や分析装置の検体注入口に直接滴下する。