【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回転翼ブレード、具体的にはヘリコプターのロータでスワッシュプレートを含まないもの、および上述の従来技術における問題点を解決するための実施方法からなる。
【0011】
本発明に係るブレードは、スパン(E)を有し、回転方位角が知られた、ある回転周波数を有するロータのハブ周りを回転する翼のブレードであって、前記ハブ用の固定部と空力部とを備え、複数の異なる歪みモー
ドを有し、
−ブレードの概ねスパン周りに捩じれを生じさせる動的捩り手段であって、リアルタイム、すなわち、ブレードの前記ハブ周りの回転中に、少なくとも前記ロータの回転周波数にて、前記ブレードの回転方位角に同期して作動可能であり、スワッシュプレートが無くてもサイクリックピッチを作用させることができる動的捩り手段を備え、 −ブレードの概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性が、前記動的捩り手段が前記ブレードの自由端における横断面において、落下または失速角として翼弦に対し少なくとも14°の動的弾性捩じれ角(v)を得ることができるために充分なだけ低く、かつ、前記ブレードのスパン周りの捩り固有振動数が前記ロータの回転周波数と等しくなるために充分なだけ高く、前記ブレードの捩じれ共振による動的捩じれを可能とし、これにより前記サイクリックピッチを作用させるために必要なエネルギーを最小とし、
−ブレードの減衰係数が、遠心力下において
厳密に正であり、前記複数の異なる
歪みモードの共振発散を避けることを特徴とする。
【0012】
ところで、機械部品に所定振幅の捩じれ角を与えるためには、捩りアクチュエータの出力を調整する方法と、上記機械部品の硬度を調節する方法の2つがあることは当業者にはよく知られている。本発明で実施する解決法は、これら2つの方法を組み合わせるもので、既存のものより捩り剛性の低いブレードを使用してアクチュエータの重量を抑え、失速または落下角として少なくとも14°の捩じれ振幅を得ることでサイクリックピッチを与える。従来、ブレードなどの機械部品の捩り剛性を低減させる様々な手段が知られている。ブレードのシェルを長手方向に割断したり(例えば同一出願人によるフランス特許出願公開第2,924,681号)、捩り剛性の低い構造、充填またはコーティング材料を用いることができる。
【0013】
また、
厳密に正のブレード減衰係数を得るための様々な手段が、機械分野の当業者には知られていることも留意点である。例えば、減衰係数が10%を超える材料、例えばゴムなどをブレードシャンクに当接させるなどしてブレード構造に追加する受動的方法や、振動を能動制御する能動的方法が知られている。
【0014】
なお更に、ブレードの材料や構造は、落下または失速角として少なくとも14°の振幅を有し、ロータの最大回転周波数の数倍でもあり得る周波数にて繰り返される(捩じれのマルチサイクル制御により振動を能動制御する場合)捩じれに耐えることができ、かつ弾性歪み境界を超えないよう選択される。
【0015】
したがって、本発明によれば、低エネルギーでサイクリックピッチ制御を容易に行うことができ、スワッシュプレートを省略することができながら、うなりモードおよび捩じれモード間のカップリングを必要としない、回転翼ロータ、具体的にはヘリコプターのロータを得ることができる。
【0016】
なお、ブレードの柔軟性は、その固定部または空力部またはその双方に起因し得る。例えば、既知の通り、各ブレードが、その大部分が(空力的に能動的にピッチ変化する)空力部から成り、これより短い固定部を介して空力部がロータのハブに接続されている場合、(全体の)捩り固有振動数は、上記空力部または上記固定部の剛性係数の組合せにより得られる。このような組合せにより、対応するアクチュエータが、マルチサイクルモードにて使用するために充分大きな捩じれ角を得ることができることが有利な点である。
【0017】
第2実施形態によれば、本発明は上述の実施形態のブレードであって、前記複数の異なる歪みモードが、前記スパン周りの捩り剛性の関数である固有振動数にてスパン周りに捩じれる捩じれモードを含むことを特徴とすることが有利な点である。
【0018】
第
3実施形態によれば、本発明は上述の
2つの実施形態の
いずれかのブレードであって、前記固定部が、前記空力部
の見掛けの捩り剛性の10から100倍低い見掛けの捩り剛性を有することを特徴とすることが有利な点である。
【0019】
第
4実施形態によれば、本発明は上述の
3つの実施形態のいずれかのブレードであって、
−前記ブレードの構造が複合材料から成り、
−前記ブレードが、ブレードの前記スパンに対してほぼ0°に等しい角度
をなす一方向
になされたコーティングを有し、前記ブレードのスパン周りの捩り剛性を最小とすることを特徴とすることが有利な点である。
【0020】
第
5実施形態によれば、本発明は上述の
4つの実施形態のいずれかのブレードであって、前記空力部は、翼底面または翼頂面のいずれか一つに長手方向スリットが形成され、
・前縁とこれに隣接する前縁底部および頂部を形成し、前記スリットの先端縁を形成する長手横方向側面を有する第1スパーと、
・前記第1スパーから前記スリットにより離間され、前記スリットの後端縁を形成する長手横方向側面を有する第2スパーと、
・前記ブレードの底面および頂面を形成し、前記スリットにより長手方向に割断され、前記第1および第2スパーと一体的にこれらを包囲するシェルと、
・前記シェル用の充填材と、
・前記スリットの前記先端縁および後端縁間にて相対的滑りを生じさせることができる動的捩りアクチュエータを備える
前記動的捩り手段と、を備え、
・前記シェルが繊維・樹脂複合材料から成り、前記繊維の少なくとも大部分が前記ブレードのスパンに対する角度がほぼ0°に等しくなるよう配されていることを特徴とすることが有利な点である。
【0021】
第
6実施形態によれば、本発明は上述の実施形態のブレードであって、前記スリットの両側の近傍において、前記シェルが前記第1および第2スパーと堅固に一体であり、前記スリットの近傍外において、前記シェルが、10%を超える減衰係数を有し前記ブレードの振動を緩衝可能なエラストマーなどの弾性材から成る接続部を介して前記ブレードの残部と接続され、該弾性材が連続的または非連続的に前記シェルおよび前記ブレード残部の間に配されることを特徴とすることが有利な点である。
【0022】
したがって、スリット近傍外では、弾性係数が低く減衰材として適した(連続的または個々の)接続部が形成され、
−うなりおよび抗力に対する剛性を保ちながら捩り剛性を大幅に低減することができ、
−ブレードの第1捩じれモードの固有振動数を最小として相対的に回転周波数に近づけることができ、
−このような捩じれモードにおいて減衰を得ることで、任意で設けられる第1うなりモードおよび抗力モード間とのカップリングが、不安定な空力弾性カップリングでなくなる。
【0023】
一方、上記スリットの近傍では、例えば接着による堅固な接続部により、アクチュエータの動きを良好に伝えることができ、容易にブレードを捩じることができる。
【0024】
第
7実施形態によれば、本発明は上述の第
5または第
6実施形態のブレードであって、前記充填材が、硬質から半硬質フォームであることを特徴とすることが有利な点である。
【0025】
この硬質から半硬質フォームにより、一方で、ブレードの(前記歪みモードの)振動緩衝を増大させることができる。
【0026】
第
8実施形態によれば、本発明は上述の第
5から第
7実施形態のいずれかのブレードであって、前記ブレードが、10%を超える減衰係数を有し前記ブレードの捩り固有振動を緩衝可能な例えばエラストマーなどの弾性材から成る細長片を備え、前記細長片が前記スリットを覆うことを特徴とすることが有利な点である。
【0027】
第
9実施形態によれば、本発明は上述の第
5から第
8実施形態のいずれかのブレードであって、前記動的捩りアクチュエータがブレードの自由端に配され、設置および維持管理が容易であることを特徴とすることが有利な点である。
【0028】
各ブレードの関連のアクチュエータは、電気、機械、油圧式のいずれでもよい。但し、国際公開WO2009/103865号に開示のアクチュエータと類似の圧電型であることが好ましい。
【0029】
その性質に関わらず、アクチュエータはブレードの空力部に沿ってまたは固定部上に配することができる。
【0030】
但し、各ブレードにおいてアクチュエータはブレードの自由端に配され、設置および維持管理が容易であることが好ましい。
【0031】
加えて、各ブレードの輪郭が、具体的には迎え角およびブレードの見掛けの剛性の関数に適合(または規制)されていると有利である。
【0032】
第
10実施形態によれば、本発明は上述の第1から第
9実施形態のいずれかのブレードであって、前記動的捩り手段が、かかるロータの多数の回転周波数において、かつ前記ブレードの回転方位角に同期して、前記動的弾性捩じれ角の振幅が、これら同一の多数の回転周波数における異なる歪みモードの最大振幅と絶対値が少なくとも等しくなることが可能な寸法を有することで、マルチサイクルの振動能動制御が可能であることを特徴とすることが有利な点である。
【0033】
第
11実施形態によれば、本発明は上述の第1から第
10実施形態のいずれかのブレードであって、前記ハブに対する固定部が、ブレードのスパン周りの遠心力下における捩り固有振動数を漸進的に制御するための
制御手段を備え、ブレードの前記ハブ周りの回転中に、前記捩り固有振動数を前記ロータの回転周波数にほぼ従わせることができることを特徴とすることが有利な点である。
【0034】
第
12実施形態によれば、本発明は上述の第
11実施形態のブレードであって、前記ブレードの固有振動数を漸進的に制御するための
制御手段が、前記固定部の概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を調節しながら前記固有振動数を調節することを特徴とすることが有利な点である。
【0035】
第
13実施形態によれば、本発明は、下限回転周波数および上限回転周波数間に含まれる回転周波数にてハブ周りを回転する回転翼が、上述のいずれかの実施形態の、回転方位角の知られた少なくとも2つのブレードを備えるロータであって、前記ロータが、
・リアルタイムすなわち前記回転周波数に少なくとも等しい周波数において、前記ブレードの回転中かつ前記ブレードの回転方位角に同期して、スワッシュプレートが無くても前記各ブレードのサイクリックピッチを制御することができる、前記ブレードそれぞれの動的捩り手段を制御する手段と、
・前記各ブレードのスパン周りの遠心力下における捩り固有振動数を漸進的に制御するための
制御手段であって、ブレードの回転中に、それぞれの捩り固有振動数を前記ロータの回転周波数にほぼ従わせることができ、ブレードのスパン周りの捩じれ共振を利用して、動的捩りによってサイクリックピッチを作用させるために必要な力を最小とする手段、とを備えることを特徴とすることが有利な点である。
【0036】
第
14実施形態によれば、本発明は上述の第
13実施形態のロータであって、前記動的捩り手段を制御する前記手段が、スワッシュプレート無しで、前記ロータの回転中に前記ブレードのコレクティブピッチを制御することも可能であることを特徴とすることが有利な点である。
【0037】
第
15実施形態によれば、本発明は上述の第
13または第
14実施形態のロータであって、捩り固有振動数を漸進的に制御するための前記
制御手段が、ロータの前記下限回転周波数に対応する最小値と、前記ロータの上限回転周波数に対応する最大値との間で、前記各ブレードのスパン周りの遠心力下における前記捩り固有振動数を双方向に調節可能で
あることを特徴とすることが有利な点である。
【0038】
第16実施形態によれば、本発明は上述の第15実施形態のロータであって、前記制御手段が、請求項3から11のいずれかに記載の前記各ブレードの固定部を硬化させる手段であって、前記各ブレードのスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を、前記制御手段により硬化される前の各ブレードの前記剛性に対応する最小値と、前記各ブレードの前記空力部の前記剛性に対応する最大値との間で、調節可能な手段であることを特徴とすることが有利な点である。
【0039】
第
17実施形態によれば、本発明は上述の第
13から第
16実施形態のいずれかのロータであって、前記制御手段が故障の際に、前記各ブレードに対し、前記各ブレードの遠心捩り力下における固有振動数が、これらブレードの空力部の遠心力下における捩り固有振動数と等しくなるよう強制して、前記ブレードの捩り共振発散を避けることができる、自動作動手段を備えることを特徴とすることが有利な点である。
【0040】
第
18実施形態によれば、本発明は、下限回転周波数から上限回転周波数までのある回転周波数を有するロータのハブ周りを回転する翼の少なくとも一つのブレードの動的捩り方法であって、前記ブレードが、あるスパンを有し、回転方位角が知られ、前記ハブ用の固定部および空力部を備え、複数の異なる歪みモー
ドを有し、前記方法が、
−動的捩り手段によりリアルタイム、すなわち、前記ロータの回転周波数と少なくとも等しい周波数にて、前記各ブレードの回転中に、かつ前記各ブレードの回転方位角に同期して、前記各ブレードの自由端における横断面において、落下または失速角として翼弦に対し少なくとも14°の動的弾性捩じれ角(v)を得るよう制御して、該動的捩り手段によりスワッシュプレートが無くてもサイクリックピッチを発生させることができる工程と、
−
制御手段を使用して、前記各ブレードの概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り固有振動数を、前記ロータの回転周波数とほぼ等しくなるよう制御し、これにより、捩り共振によって最小限の力で前記動的弾性捩じれを得る工程と、
−前記各ブレードの複数の異なる歪みモードの固有振動数を緩衝し、共振発散を回避する工程と、を備えることを特徴とすることが有利な点である。
【0041】
第19実施形態によれば、本発明は、上述の第18実施形態の方法であって、前記複数の異なる歪みモードが、前記スパン周りの捩り剛性の関数としての固有振動数にてスパン周りに捩じれる捩じれモードを含むことを特徴とすることが有利な点である。
【0042】
第
20実施形態によれば、本発明は、上述の第
18または第19実施形態の方法であって、前記動的捩り手段の前記制御がマルチサイクル、すなわち、前記ロータの多数の回転周波数において行われることで、前記ブレードのサイクリックピッチ制御に加え前記ブレードの複数の異なる歪みモードを能動制御することを特徴とすることが有利な点である。
【0043】
第
21実施形態によれば、本発明は、上述の第
18から第
20実施形態のいずれかの方法であって、前記動的捩り手段の前記制御が、前記ブレードのサイクリックピッチ制御に加え前記ブレードのコレクティブピッチを制御するものであることを特徴とすることが有利な点である。
【0044】
第
22実施形態によれば、本発明は、上述の第
18から第
21実施形態のいずれかの方法であって、前記各ブレードの概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの前記捩り固有振動数の前記制御が、前記各ブレードの前記固定部の概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を漸進的に制御することにより行われ、前記固定部が、対応する空力部より高い柔軟性を有し、前記空力部のスパン周りの見掛けの捩り剛性に等しい最大値まで硬化することが可能であることを特徴とすることが有利な点である。
【0045】
第
23実施形態によれば、本発明は、上述の第
18から第
22実施形態のいずれかの方法であって、前記制御手段が故障の際に、前記各ブレードのスパン周りの遠心捩り力下における固有振動数が、これらブレードの空力部のスパン周りの遠心力下における捩り固有振動数と等しくなるよう強制して、前記ブレードの捩り共振発散を回避する工程を含むことを特徴とすることが有利な点である。