特許第6018780号(P6018780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018780回転翼ブレード、該ブレードを少なくとも2つ備えるロータ、及び該ロータの実施方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018780
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】回転翼ブレード、該ブレードを少なくとも2つ備えるロータ、及び該ロータの実施方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/473 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   B64C27/473
【請求項の数】23
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-90690(P2012-90690)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2012-218735(P2012-218735A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2015年4月9日
(31)【優先権主張番号】1101126
(32)【優先日】2011年4月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512096539
【氏名又は名称】オネラ (オフイス ナシオナル デチュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシヤル)
【氏名又は名称原語表記】ONERA (Office National d’Etudes et de Recherches Aerospatiales)
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】メルシェ デ ロシェット ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ビュシャニエ レオン
(72)【発明者】
【氏名】ジョリ ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】デュパ ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ルコント フィリップ
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0258680(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0205332(US,A1)
【文献】 特開2004−345525(JP,A)
【文献】 特表2003−513838(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0090067(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0064579(US,A1)
【文献】 米国特許第05626312(US,A)
【文献】 特開2004−012248(JP,A)
【文献】 特開平01−282091(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0005456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/38
B64C 27/473
B64C 27/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパン(E)を有し、回転方位角が知られた、ある回転周波数(Ω)を有するロータ(RO)のハブ(M)周りを回転する翼のブレード(P)であって、前記ハブ用の固定部(B)と空力部(A)とを備え、複数の異なる歪みモードを有し、
−ブレードの概ねスパン(E)周りに捩じれを生じさせる動的捩り手段(17)であって、リアルタイム、すなわち、ブレードの前記ハブ周りの回転中に、少なくとも前記ロータの回転周波数(Ω)にて、前記ブレードの回転方位角に同期して作動可能であり、スワッシュプレートが無くてもサイクリックピッチを作用させることができる動的捩り手段(17)を備え、
−ブレードの概ねスパン(E)周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性が、前記動的捩り手段(17)が前記ブレードの自由端における横断面において、落下または失速角として翼弦に対し少なくとも14°の動的弾性捩じれ角(v)を得ることができるために充分なだけ低く、かつ、前記ブレードのスパン周りの捩り固有振動数が前記ロータの回転周波数(Ω)と等しくなるために充分なだけ高く、前記ブレードの捩じれ共振による動的捩じれを可能とし、これにより前記サイクリックピッチを作用させるために必要なエネルギーを最小とし、
−ブレードの減衰係数が、遠心力下において厳密に正であり、前記複数の異なる歪みモードの共振発散を避けることを特徴とするブレード。
【請求項2】
前記複数の異なる歪みモードが、前記スパン(E)周りの捩り剛性の関数である固有振動数にてスパン(E)周りに捩じれる捩じれモードを含むことを特徴とする、請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
前記固定部(B)が、前記空力部(A)の見掛けの捩り剛性の10から100倍低い見掛けの捩り剛性を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のブレード。
【請求項4】
−前記ブレードの構造が複合材料から成り、
−前記ブレードが、ブレードの前記スパンに対してほぼ0°に等しい角度をなす一方向になされたコーティングを有し、前記ブレードのスパン周りの捩り剛性を最小とすることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のブレード。
【請求項5】
前記空力部は、翼底面または翼頂面のいずれか一つに長手方向スリットが形成され、
・前縁とこれに隣接する前縁底部および頂部を形成し、前記スリットの先端縁を形成する長手横方向側面を有する第1スパーと、
・前記第1スパーから前記スリットにより離間され、前記スリットの後端縁を形成する長手横方向側面を有する第2スパーと、
・前記ブレードの底面および頂面を形成し、前記スリットにより長手方向に割断され、前記第1および第2スパーと一体的にこれらを包囲するシェルと、
・前記シェル用の充填材と、
・前記スリットの前記先端縁および後端縁間にて相対的滑りを生じさせることができる動的捩りアクチュエータを備える前記動的捩り手段と、を備え、
・前記シェルが繊維・樹脂複合材料から成り、前記繊維の少なくとも大部分が前記ブレードのスパンに対する角度がほぼ0°に等しくなるよう配されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のブレード。
【請求項6】
前記スリット(6)の両側の近傍(14)において、前記シェル(11)が前記第1および第2スパー(7、9)と堅固に一体であり、前記スリット(6)の近傍(14)外において、前記シェルが、10%を超える減衰係数を有し前記ブレードの振動を緩衝可能なエラストマーなどの弾性材から成る接続部を介して前記ブレードの残部と接続され、該弾性材が連続的または非連続的に前記シェルおよび前記ブレード残部の間に配されることを特徴とする、請求項に記載のブレード。
【請求項7】
前記充填材(12)が、硬質から半硬質フォームであることを特徴とする、請求項またはに記載のブレード。
【請求項8】
前記ブレードが、10%を超える減衰係数を有し前記ブレードの固有捩り振動を緩衝可能な例えばエラストマーなどの弾性材から成る細長片(13)を備え、前記細長片が前記スリット(6)を覆うことを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載のブレード。
【請求項9】
前記動的捩りアクチュエータ(17)がブレードの自由端に配され、設置および維持管理が容易であることを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載のブレード。
【請求項10】
前記動的捩り手段(17)が、かかるロータの多数の回転周波数(Ω)において、かつ前記ブレードの回転方位角に同期して、前記動的弾性捩じれ角(v)の振幅が、これら同一の多数の回転周波数(Ω)における異なる歪みモードの最大振幅と絶対値が少なくとも等しくなることが可能な寸法を有することで、マルチサイクルの振動能動制御が可能であることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のブレード。
【請求項11】
前記ハブ(M)に対する固定部(B)が、ブレードのスパン(E)周りの遠心力下における捩り固有振動数を漸進的に制御するための制御手段(25から31)を備え、ブレードの前記ハブ周りの回転中に、前記捩り固有振動数を前記ロータの回転周波数(Ω)にほぼ従わせることができることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のブレード。
【請求項12】
前記ブレードの固有振動数を漸進的に制御するための制御手段(25から31)が、前記固定部(B)の概ねスパン(E)周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を調節しながら前記固有振動数を調節することを特徴とする、請求項11に記載のブレード。
【請求項13】
下限回転周波数および上限回転周波数間に含まれる回転周波数(Ω)にてハブ(M)周りを回転する回転翼が、請求項1から10のいずれか一項に記載の、回転方位角の知られた少なくとも2つのブレード(P)を備えるロータ(RO)であって、前記ロータが、
・リアルタイムすなわち前記回転周波数(Ω)に少なくとも等しい周波数において、前記ブレードの回転中かつ前記ブレードの回転方位角に同期して、スワッシュプレートが無くても前記各ブレードのサイクリックピッチを制御することができる、前記ブレードそれぞれの動的捩り手段(17)を制御する手段と、
・前記各ブレード(P)のスパン(E)周りの遠心力下における捩り固有振動数を漸進的に制御するための制御手段(25から31)であって、ブレードの回転中に、それぞれの捩り固有振動数を前記ロータの回転周波数(Ω)にほぼ従わせることができ、ブレードのスパン周りの捩じれ共振を利用して、動的捩りによってサイクリックピッチを作用させるために必要な力を最小とする手段、とを備えることを特徴とする、ロータ。
【請求項14】
前記動的捩り手段(17)を制御する前記手段が、スワッシュプレート無しで、前記ロータの回転中に前記ブレードのコレクティブピッチを制御することも可能であることを特徴とする、請求項13に記載のロータ。
【請求項15】
捩り固有振動数を漸進的に制御するための前記制御手段(25から31)が、ロータの前記下限回転周波数に対応する最小値と、前記ロータの上限回転周波数に対応する最大値との間で、前記各ブレード(P)のスパン周りの遠心力下における前記捩り固有振動数を双方向に調節可能であることを特徴とする、請求項13または14に記載のロータ。
【請求項16】
前記制御手段(25から31)が、請求項3から11のいずれか一項に記載の前記各ブレードの固定部(B)を硬化させる手段であって、前記各ブレードのスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を、前記制御手段(25から31)により硬化される前の各ブレードの前記剛性に対応する最小値と、前記各ブレードの前記空力部(A)の前記剛性に対応する最大値との間で、調節する手段であることを特徴とする、請求項15に記載のロータ。
【請求項17】
前記制御手段(25から31)が故障の際に、前記各ブレードに対し、前記各ブレードの遠心捩り力下における固有振動数が、これらブレードの空力部(A)の遠心力下における捩り固有振動数と等しくなるよう強制して、前記ブレードの捩り共振発散を避けることができる、自動作動手段(37)を備えることを特徴とする、請求項13から16のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項18】
下限回転周波数から上限回転周波数までのある回転周波数(Ω)を有するロータ(RO)のハブ(M)周りを回転する翼の少なくとも一つのブレード(P)の動的捩り方法であって、前記ブレード(P)が、あるスパン(E)を有し、回転方位角が知られ、前記ハブ(M)用の固定部(B)および空力部(A)を備え、複数の異なる歪みモードを有し、
前記方法が、
−動的捩り手段(17)によりリアルタイム、すなわち、前記ロータの回転周波数(Ω)と少なくとも等しい周波数にて、前記各ブレードの回転中に、かつ前記各ブレードの回転方位角に同期して、前記各ブレードの自由端における横断面において、落下または失速角として翼弦に対し少なくとも14°の動的弾性捩じれ角(v)を得るよう制御して、該動的捩り手段によりスワッシュプレートが無くてもサイクリックピッチを作用させることができる工程と、
制御手段(25から31)を使用して、前記各ブレード(P)の概ねスパン(E)周りの遠心力下における見掛けの捩り固有振動数を、前記ロータ(RO)の回転周波数(Ω)とほぼ等しくなるよう制御し、これにより、捩り共振によって最小限の力で前記動的弾性捩じれ(v)を得る工程と、
−前記各ブレード(P)の複数の異なる歪みモードの固有振動数を緩衝し、共振発散を回避する工程と、を備えることを特徴とする、動的捩り方法。
【請求項19】
前記複数の異なる歪みモードが、前記スパン(E)周りの捩り剛性の関数としての固有振動数にてスパン(E)周りに捩じれる捩じれモードを含むことを特徴とする、請求項18に記載の動的捩り方法。
【請求項20】
前記動的捩り手段(17)の前記制御がマルチサイクル、すなわち、前記ロータ(RO)の多数の回転周波数(Ω)において行われることで、前記ブレードのサイクリックピッチ制御に加え前記ブレードの複数の異なる歪みモードを能動制御することを特徴とする、請求項18または19に記載の動的捩り方法。
【請求項21】
前記動的捩り手段(17)の前記制御が、前記ブレードのサイクリックピッチ制御に加え前記ブレードのコレクティブピッチを制御するものであることを特徴とする、請求項18から20のいずれか1項に記載の動的捩り方法。
【請求項22】
前記各ブレード(P)の概ねスパン(E)周りの遠心力下における見掛けの前記捩り固有振動数の前記制御が、前記各ブレード(P)の前記固定部(B)の概ねスパン(E)周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を漸進的に制御することにより行われ、前記固定部(B)が、対応する空力部(A)より高い柔軟性を有し、前記空力部のスパン(E)周りの見掛けの捩り剛性に等しい最大値まで硬化することが可能であることを特徴とする、請求項18から21のいずれか一項に記載の動的捩り方法。
【請求項23】
前記制御手段(25から31)が故障の際に、前記各ブレードのスパン周りの遠心捩り力下における固有振動数が、これらブレードの空力部(A)のスパン周りの遠心力下における捩り固有振動数と等しくなるよう強制して、前記ブレードの捩り共振発散を回避する工程を含むことを特徴とする、請求項18から22のいずれか一項に記載の動的捩り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転翼ロータ、具体的にはヘリコプター用のロータ、および、かかるロータ用のブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
回転翼ロータのブレードは、コレクティブピッチおよびサイクリックピッチにより制御されることが知られている。
【0003】
コレクティブピッチは、全てのブレードを上記ロータの回転軸に対して迎え角が等しくなるよう位置決めすることによりヘリコプターの静止飛行を可能にするもので、ロータのパイロン駆動軸と組み合わせて、鉛直方向に沿いヘリコプターの重量と釣り合う全体的な揚力を発生させる。
【0004】
サイクリックピッチに関しては、各ブレードの迎え角を方位角の関数として位置決めすることにより、全体的な揚力を鉛直方向に対して傾かせることで上記ヘリコプターを移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】フランス特許出願公開第2,924,681号
【特許文献2】国際公開2009−103865号公報
【特許文献3】欧州特許第1,788,646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コレクティブピッチおよびサイクリックピッチ制御のために、ロータは一般に、ロータのパイロンに装着されるスワッシュプレートと呼ばれる機構を有し、同機構は、各ブレードにピッチコントロールロッドを介して接続され回転シザーにより回転駆動される回転プレートと、ロータのパイロン沿いに摺動し回転プレートに対して傾くことのできる静止プレートと、上記静止プレートおよび回転プレートとの間の軸受リンクとを備える。
【0007】
このようなスワッシュプレートは、定期的に維持管理および点検を必要とする大量の機械部品から成るという点で不利である。
【0008】
このため、上述のようなスワッシュプレートを取り除き、上記ブレードに可動フラップを取り付け、上記フラップの延伸によりもたらされる捩りモーメントによって前記ブレードに捩じれを生じさせることでサイクリックピッチを制御し、ブレードのコレクティブピッチはプロペラ用と同様、または、ブレードシャンクに配されるアクチュエータにより行うことが既に考えられている。
【0009】
しかし、このような可動フラップも、精巧で摩擦の影響を受けやすい機械的機構を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回転翼ブレード、具体的にはヘリコプターのロータでスワッシュプレートを含まないもの、および上述の従来技術における問題点を解決するための実施方法からなる。
【0011】
本発明に係るブレードは、スパン(E)を有し、回転方位角が知られた、ある回転周波数を有するロータのハブ周りを回転する翼のブレードであって、前記ハブ用の固定部と空力部とを備え、複数の異なる歪みモードを有し、
−ブレードの概ねスパン周りに捩じれを生じさせる動的捩り手段であって、リアルタイム、すなわち、ブレードの前記ハブ周りの回転中に、少なくとも前記ロータの回転周波数にて、前記ブレードの回転方位角に同期して作動可能であり、スワッシュプレートが無くてもサイクリックピッチを作用させることができる動的捩り手段を備え、 −ブレードの概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性が、前記動的捩り手段が前記ブレードの自由端における横断面において、落下または失速角として翼弦に対し少なくとも14°の動的弾性捩じれ角(v)を得ることができるために充分なだけ低く、かつ、前記ブレードのスパン周りの捩り固有振動数が前記ロータの回転周波数と等しくなるために充分なだけ高く、前記ブレードの捩じれ共振による動的捩じれを可能とし、これにより前記サイクリックピッチを作用させるために必要なエネルギーを最小とし、
−ブレードの減衰係数が、遠心力下において厳密に正であり、前記複数の異なる歪みモードの共振発散を避けることを特徴とする。
【0012】
ところで、機械部品に所定振幅の捩じれ角を与えるためには、捩りアクチュエータの出力を調整する方法と、上記機械部品の硬度を調節する方法の2つがあることは当業者にはよく知られている。本発明で実施する解決法は、これら2つの方法を組み合わせるもので、既存のものより捩り剛性の低いブレードを使用してアクチュエータの重量を抑え、失速または落下角として少なくとも14°の捩じれ振幅を得ることでサイクリックピッチを与える。従来、ブレードなどの機械部品の捩り剛性を低減させる様々な手段が知られている。ブレードのシェルを長手方向に割断したり(例えば同一出願人によるフランス特許出願公開第2,924,681号)、捩り剛性の低い構造、充填またはコーティング材料を用いることができる。
【0013】
また、厳密に正のブレード減衰係数を得るための様々な手段が、機械分野の当業者には知られていることも留意点である。例えば、減衰係数が10%を超える材料、例えばゴムなどをブレードシャンクに当接させるなどしてブレード構造に追加する受動的方法や、振動を能動制御する能動的方法が知られている。
【0014】
なお更に、ブレードの材料や構造は、落下または失速角として少なくとも14°の振幅を有し、ロータの最大回転周波数の数倍でもあり得る周波数にて繰り返される(捩じれのマルチサイクル制御により振動を能動制御する場合)捩じれに耐えることができ、かつ弾性歪み境界を超えないよう選択される。
【0015】
したがって、本発明によれば、低エネルギーでサイクリックピッチ制御を容易に行うことができ、スワッシュプレートを省略することができながら、うなりモードおよび捩じれモード間のカップリングを必要としない、回転翼ロータ、具体的にはヘリコプターのロータを得ることができる。
【0016】
なお、ブレードの柔軟性は、その固定部または空力部またはその双方に起因し得る。例えば、既知の通り、各ブレードが、その大部分が(空力的に能動的にピッチ変化する)空力部から成り、これより短い固定部を介して空力部がロータのハブに接続されている場合、(全体の)捩り固有振動数は、上記空力部または上記固定部の剛性係数の組合せにより得られる。このような組合せにより、対応するアクチュエータが、マルチサイクルモードにて使用するために充分大きな捩じれ角を得ることができることが有利な点である。
【0017】
第2実施形態によれば、本発明は上述の実施形態のブレードであって、前記複数の異なる歪みモードが、前記スパン周りの捩り剛性の関数である固有振動数にてスパン周りに捩じれる捩じれモードを含むことを特徴とすることが有利な点である。
【0018】
実施形態によれば、本発明は上述の2つの実施形態のいずれかのブレードであって、前記固定部が、前記空力部の見掛けの捩り剛性の10から100倍低い見掛けの捩り剛性を有することを特徴とすることが有利な点である。
【0019】
実施形態によれば、本発明は上述のつの実施形態のいずれかのブレードであって、
−前記ブレードの構造が複合材料から成り、
−前記ブレードが、ブレードの前記スパンに対してほぼ0°に等しい角度をなす一方向になされたコーティングを有し、前記ブレードのスパン周りの捩り剛性を最小とすることを特徴とすることが有利な点である。
【0020】
実施形態によれば、本発明は上述のつの実施形態のいずれかのブレードであって、前記空力部は、翼底面または翼頂面のいずれか一つに長手方向スリットが形成され、
・前縁とこれに隣接する前縁底部および頂部を形成し、前記スリットの先端縁を形成する長手横方向側面を有する第1スパーと、
・前記第1スパーから前記スリットにより離間され、前記スリットの後端縁を形成する長手横方向側面を有する第2スパーと、
・前記ブレードの底面および頂面を形成し、前記スリットにより長手方向に割断され、前記第1および第2スパーと一体的にこれらを包囲するシェルと、
・前記シェル用の充填材と、
・前記スリットの前記先端縁および後端縁間にて相対的滑りを生じさせることができる動的捩りアクチュエータを備える前記動的捩り手段と、を備え、
・前記シェルが繊維・樹脂複合材料から成り、前記繊維の少なくとも大部分が前記ブレードのスパンに対する角度がほぼ0°に等しくなるよう配されていることを特徴とすることが有利な点である。
【0021】
実施形態によれば、本発明は上述の実施形態のブレードであって、前記スリットの両側の近傍において、前記シェルが前記第1および第2スパーと堅固に一体であり、前記スリットの近傍外において、前記シェルが、10%を超える減衰係数を有し前記ブレードの振動を緩衝可能なエラストマーなどの弾性材から成る接続部を介して前記ブレードの残部と接続され、該弾性材が連続的または非連続的に前記シェルおよび前記ブレード残部の間に配されることを特徴とすることが有利な点である。
【0022】
したがって、スリット近傍外では、弾性係数が低く減衰材として適した(連続的または個々の)接続部が形成され、
−うなりおよび抗力に対する剛性を保ちながら捩り剛性を大幅に低減することができ、
−ブレードの第1捩じれモードの固有振動数を最小として相対的に回転周波数に近づけることができ、
−このような捩じれモードにおいて減衰を得ることで、任意で設けられる第1うなりモードおよび抗力モード間とのカップリングが、不安定な空力弾性カップリングでなくなる。
【0023】
一方、上記スリットの近傍では、例えば接着による堅固な接続部により、アクチュエータの動きを良好に伝えることができ、容易にブレードを捩じることができる。
【0024】
実施形態によれば、本発明は上述の第または第実施形態のブレードであって、前記充填材が、硬質から半硬質フォームであることを特徴とすることが有利な点である。
【0025】
この硬質から半硬質フォームにより、一方で、ブレードの(前記歪みモードの)振動緩衝を増大させることができる。
【0026】
実施形態によれば、本発明は上述の第から第実施形態のいずれかのブレードであって、前記ブレードが、10%を超える減衰係数を有し前記ブレードの捩り固有振動を緩衝可能な例えばエラストマーなどの弾性材から成る細長片を備え、前記細長片が前記スリットを覆うことを特徴とすることが有利な点である。
【0027】
実施形態によれば、本発明は上述の第から第実施形態のいずれかのブレードであって、前記動的捩りアクチュエータがブレードの自由端に配され、設置および維持管理が容易であることを特徴とすることが有利な点である。
【0028】
各ブレードの関連のアクチュエータは、電気、機械、油圧式のいずれでもよい。但し、国際公開WO2009/103865号に開示のアクチュエータと類似の圧電型であることが好ましい。
【0029】
その性質に関わらず、アクチュエータはブレードの空力部に沿ってまたは固定部上に配することができる。
【0030】
但し、各ブレードにおいてアクチュエータはブレードの自由端に配され、設置および維持管理が容易であることが好ましい。
【0031】
加えて、各ブレードの輪郭が、具体的には迎え角およびブレードの見掛けの剛性の関数に適合(または規制)されていると有利である。
【0032】
10実施形態によれば、本発明は上述の第1から第実施形態のいずれかのブレードであって、前記動的捩り手段が、かかるロータの多数の回転周波数において、かつ前記ブレードの回転方位角に同期して、前記動的弾性捩じれ角の振幅が、これら同一の多数の回転周波数における異なる歪みモードの最大振幅と絶対値が少なくとも等しくなることが可能な寸法を有することで、マルチサイクルの振動能動制御が可能であることを特徴とすることが有利な点である。
【0033】
11実施形態によれば、本発明は上述の第1から第10実施形態のいずれかのブレードであって、前記ハブに対する固定部が、ブレードのスパン周りの遠心力下における捩り固有振動数を漸進的に制御するための制御手段を備え、ブレードの前記ハブ周りの回転中に、前記捩り固有振動数を前記ロータの回転周波数にほぼ従わせることができることを特徴とすることが有利な点である。
【0034】
12実施形態によれば、本発明は上述の第11実施形態のブレードであって、前記ブレードの固有振動数を漸進的に制御するための制御手段が、前記固定部の概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を調節しながら前記固有振動数を調節することを特徴とすることが有利な点である。
【0035】
13実施形態によれば、本発明は、下限回転周波数および上限回転周波数間に含まれる回転周波数にてハブ周りを回転する回転翼が、上述のいずれかの実施形態の、回転方位角の知られた少なくとも2つのブレードを備えるロータであって、前記ロータが、
・リアルタイムすなわち前記回転周波数に少なくとも等しい周波数において、前記ブレードの回転中かつ前記ブレードの回転方位角に同期して、スワッシュプレートが無くても前記各ブレードのサイクリックピッチを制御することができる、前記ブレードそれぞれの動的捩り手段を制御する手段と、
・前記各ブレードのスパン周りの遠心力下における捩り固有振動数を漸進的に制御するための制御手段であって、ブレードの回転中に、それぞれの捩り固有振動数を前記ロータの回転周波数にほぼ従わせることができ、ブレードのスパン周りの捩じれ共振を利用して、動的捩りによってサイクリックピッチを作用させるために必要な力を最小とする手段、とを備えることを特徴とすることが有利な点である。
【0036】
14実施形態によれば、本発明は上述の第13実施形態のロータであって、前記動的捩り手段を制御する前記手段が、スワッシュプレート無しで、前記ロータの回転中に前記ブレードのコレクティブピッチを制御することも可能であることを特徴とすることが有利な点である。
【0037】
15実施形態によれば、本発明は上述の第13または第14実施形態のロータであって、捩り固有振動数を漸進的に制御するための前記制御手段が、ロータの前記下限回転周波数に対応する最小値と、前記ロータの上限回転周波数に対応する最大値との間で、前記各ブレードのスパン周りの遠心力下における前記捩り固有振動数を双方向に調節可能であることを特徴とすることが有利な点である。
【0038】
第16実施形態によれば、本発明は上述の第15実施形態のロータであって、前記制御手段が、請求項3から11のいずれかに記載の前記各ブレードの固定部を硬化させる手段であって、前記各ブレードのスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を、前記制御手段により硬化される前の各ブレードの前記剛性に対応する最小値と、前記各ブレードの前記空力部の前記剛性に対応する最大値との間で、調節可能な手段であることを特徴とすることが有利な点である。
【0039】
17実施形態によれば、本発明は上述の第13から第16実施形態のいずれかのロータであって、前記制御手段が故障の際に、前記各ブレードに対し、前記各ブレードの遠心捩り力下における固有振動数が、これらブレードの空力部の遠心力下における捩り固有振動数と等しくなるよう強制して、前記ブレードの捩り共振発散を避けることができる、自動作動手段を備えることを特徴とすることが有利な点である。
【0040】
18実施形態によれば、本発明は、下限回転周波数から上限回転周波数までのある回転周波数を有するロータのハブ周りを回転する翼の少なくとも一つのブレードの動的捩り方法であって、前記ブレードが、あるスパンを有し、回転方位角が知られ、前記ハブ用の固定部および空力部を備え、複数の異なる歪みモードを有し、前記方法が、
−動的捩り手段によりリアルタイム、すなわち、前記ロータの回転周波数と少なくとも等しい周波数にて、前記各ブレードの回転中に、かつ前記各ブレードの回転方位角に同期して、前記各ブレードの自由端における横断面において、落下または失速角として翼弦に対し少なくとも14°の動的弾性捩じれ角(v)を得るよう制御して、該動的捩り手段によりスワッシュプレートが無くてもサイクリックピッチを発生させることができる工程と、
制御手段を使用して、前記各ブレードの概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り固有振動数を、前記ロータの回転周波数とほぼ等しくなるよう制御し、これにより、捩り共振によって最小限の力で前記動的弾性捩じれを得る工程と、
−前記各ブレードの複数の異なる歪みモードの固有振動数を緩衝し、共振発散を回避する工程と、を備えることを特徴とすることが有利な点である。
【0041】
第19実施形態によれば、本発明は、上述の第18実施形態の方法であって、前記複数の異なる歪みモードが、前記スパン周りの捩り剛性の関数としての固有振動数にてスパン周りに捩じれる捩じれモードを含むことを特徴とすることが有利な点である。
【0042】
20実施形態によれば、本発明は、上述の第18または第19実施形態の方法であって、前記動的捩り手段の前記制御がマルチサイクル、すなわち、前記ロータの多数の回転周波数において行われることで、前記ブレードのサイクリックピッチ制御に加え前記ブレードの複数の異なる歪みモードを能動制御することを特徴とすることが有利な点である。
【0043】
21実施形態によれば、本発明は、上述の第18から20実施形態のいずれかの方法であって、前記動的捩り手段の前記制御が、前記ブレードのサイクリックピッチ制御に加え前記ブレードのコレクティブピッチを制御するものであることを特徴とすることが有利な点である。
【0044】
22実施形態によれば、本発明は、上述の第18から第21実施形態のいずれかの方法であって、前記各ブレードの概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの前記捩り固有振動数の前記制御が、前記各ブレードの前記固定部の概ねスパン周りの遠心力下における見掛けの捩り剛性を漸進的に制御することにより行われ、前記固定部が、対応する空力部より高い柔軟性を有し、前記空力部のスパン周りの見掛けの捩り剛性に等しい最大値まで硬化することが可能であることを特徴とすることが有利な点である。
【0045】
23実施形態によれば、本発明は、上述の第18から22実施形態のいずれかの方法であって、前記制御手段が故障の際に、前記各ブレードのスパン周りの遠心捩り力下における固有振動数が、これらブレードの空力部のスパン周りの遠心力下における捩り固有振動数と等しくなるよう強制して、前記ブレードの捩り共振発散を回避する工程を含むことを特徴とすることが有利な点である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明に係るヘリコプターの回転翼ロータの概略斜視図である。
図2】本発明に係るヘリコプターの回転翼ロータのブレードを底面側から見た斜視図である。
図3図2のIII−III線に沿ったブレードの断面図である。
図4図2に示すブレードの端部を頂面側から見た分解拡大斜視図である。
図5図4に示されたブレード端部アクチュエータにより起こる図2に示すブレードの捩じれを示す概略斜視図である。
図6】本発明に係るロータの各ブレードの捩り固有振動数を漸進的に調整可能な制御手段の概略図である。
図7A図6に示す制御手段の動作を示す概略断面図であり、制御手段が最大捩り固有振動数における係合位置にある状態を示す。
図7B図6に示す制御手段の動作を示す概略断面図であり、制御手段が最小捩り固有振動数における非係合位置にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
添付図面の図により、本発明がどのようにして実施されるかが明確に説明される。これらの図中、同一符号は同一要素を示す。
【0048】
図1に概略図示するヘリコプター用回転翼ロータ(RO)は、図示しない主変速機により自身の軸(Z−Z)周りに回転駆動されるハブ(M)と、このハブ(M)に固定装置(L)を介し横向きに接続されるブレード(P)とを備える。これにより、ブレード(P)は上記ハブ(M)の回転周波数(Ω)にて軸(Z−Z)周りを回転することができる。
【0049】
図2に示すように、本発明に係るブレード(P)は空力部(A)およびこの空力部(A)より短い固定部(B)を備える。
【0050】
固定部(B)は、例えば十字状の部分により、固定装置(L)と協働して、ブレード(P)をハブ(M)に固定する。
【0051】
空力部(A)は、前方にて前縁(4)、および後方にて後縁(5)を形成する頂面(2)および底面(3)を備える。
【0052】
前縁(4)の近傍において(図3も参照)、底面(3)には長手方向スリット(6)が形成され、上記空力部(A)を(スパンEに沿って)長手方向に、上記前縁(4)を含む前側長手部(A1)および、上記後縁(5)を含む後側長手部(A2)に区分している。一方、上記前側および後側長手部(A1)、(A2)は、連続的な頂面(2)にて一体的に形成されている。
【0053】
図3に示す実施形態において、上記空力部(A)は、
−上記前縁(4)、および、これに隣接する頂面(2)および底面(3)の一部を形成し、繊維と樹脂の複合材料(例えばガラスエポキシまたは炭素エポキシ)により形成することができ、前縁(4)に沿って延設されるバラスト部材(8)を組み込むことができる、前縁スパー(7)と、
−底面長手方向スリット(6)により前縁スパー(7)から分離される底面スパー(9)であって、上記長手方向スリット(6)の先端縁(6A)が前縁スパー(7)の長手横方向側面により形成されるのに対しスリット(6)の後端縁(6R)を自身の長手横方向側面により形成し、繊維・樹脂複合材料により形成することができる底面スパー(9)と、
−後縁(5)を形成し、例えば繊維・樹脂複合材料から成る、突端スパー(10)と、
−頂面(2)および底面(3)を形成し(スリット(6)により中断され)、スパー(7)、(9)、(10)を同時に一体的に覆うシェル(11)と、
−上記スパー(7)、(9)、(10)間で上記シェル(11)を充填する、(例えばポリウレタンなどの)低反発性の硬質フォームである充填剤(12)と、
−スリット(6)を塞ぎスリット(6)の先端縁(6A)および後端縁(6R)と(好ましくは接着剤により)一体化される低反発性のエラストマー材より成る細長片(13)と、を備える。
【0054】
シェル(11)は繊維・樹脂材料(例えば炭素繊維)から成り、これらの繊維(f1)は、ブレードの上記空力部に対して長手方向、すなわち、上記スパン(E)に沿って配されている。上記シェルは、上記スパンに対し直角である繊維(f2)を含むことも可能であるが、スパンに対し傾きを有する繊維は含まない(図5に示すシェル(11)の切欠き図を参照)。
【0055】
また、スリット(6)に隣接しスリット(6)の両側に延びる領域(14)において、シェル(11)は前縁スパー(7)および上記底面スパー(9)と、(例えば接着により)堅固に一体化されている。これに対し、領域(14)外では、シェル(11)はスパー(7)、(9)、(10)および充填剤(12)に、低反発性の減衰材から成る接続層により接続されている。このような接続層(明瞭化のため図示せず)は、連続・非連続のいずれでもよく、エラストマー材で形成することができる。
【0056】
これにより、スパン(E)周りの捩りに対する剛性が低いながらも、スリット(6)周りにおいては一方の前縁スパー(7)および底面スパー(9)と他方のシェル(11)との間で堅固な一体性を有する空力部(A)が得られることが、容易に理解できる。スパー周りの捩り剛性が空力部Aよりさらに(例えば10から100倍)低い固定部(B)を選択することにより、ブレード(P)は、ブレードシャンク、すなわちブレードの自由端(16)の側面(15)に発生する捩りに対し、少なくとも14°の動的弾性捩じれ角vに耐えることができる。
【0057】
さらに、ブレード(P)の自由端(16)には、空力部(A)の延長線上にアクチュエータ(17)が挿入されている(図4参照)。アクチュエータ(17)は、明示的に引用された文献の欧州特許第1,788,646号に記載されるものと類似の圧電型である。圧電アクチュエータ(17)は空力部(A)の先端に固定されると、空力部の翼弦(PC)面内に少なくとも部分的に位置する。着脱自在のフード(18)により圧電アクチュエータ(17)を覆い、アクチュエータおよびブレードの端側面(15)を保護する。
【0058】
圧電アクチュエータ(17)は剪断作用を与えるもので、上記アクチュエータに電力が供給されると互いに摺動するよう構成された2つの面(19)、(20)を備える。面(19)は接続部(21)を介して前縁スパー(7)と一体形成され、面(20)は底面スパー(9)と一体形成されている。
【0059】
このようにして、図5に示すように、上記アクチュエータ(17)が励起されると、上記面(19)および(20)間で滑り(d)が生じ、かかる滑りはスパン方向に沿って起こり、互いに動くスパー(7)、(9)に伝達される。この結果、前部(A1)および後部(A2)は相対移動し(図5に矢印(22)、(23)により概略図示)、シェル(11)が座屈することで、ブレード(P)は、翼弦(PC)面内にある捩り軸(T−T)周りに、スパン(E)沿いに捩じれ変形する。もちろん、細長片(13)もまた、剪断変形する(図5参照)。
【0060】
図6に、ブレードPをロータ(RO)の軸(Z−Z)周りに回転可能とする固定装置(L)の実施例を概略例示する。本実施例では、固定装置(L)は、
−ロータ(RO)のハブ(M)に既知の手段(図示せず)で一体化されるブレードハブ(24)と、
−一側で上記ブレードハブ(24)と、他側でブレード(P)の固定部(B)の内側端(26)と一体回転するフランジ(フランジ部)(25)と、
−一側でフランジ(25)に対向配置されるフランジ(フランジ部)(28)と、他側で、空力部(A)と固定部(B)との間の移行部を形成するブレード部(30)と固定手段(29)を介して一体化され、上記固定部(B)を大きなゆとりを持って囲う、剛体スリーブ(スリーブ部)(27)と、
−フランジ(25)、(28)間の圧力を漸進的に可変とする少なくとも一つの装置(31)と、を備える。
【0061】
図7A図7Bに示すように、フランジ(25)、(28)の周縁部(25A)、(28A)は僅かに弾性変形が可能とされ、装置(31)の可動ヨーク(32)内に配されて、間に介在される弾性ブロック(33)を介し互いに接触している。
【0062】
周縁部(25A)、(28A)は一側でバネ(34)の作用を受け、他側で可変カム(35)の作用を受ける。上記バネ(34)および上記カム(35)は可動ヨーク(32)に接しており、上記周縁部(25A)、(28A)に対し拮抗作用を与えている。
【0063】
カム(35)はヨーク(32)上に設けられる軸(36)周りに回転可能に装着され、矢印(F)により示すアクチュエータの制御によって上記軸周りを回転する。
【0064】
カムアクチュエータ(F)が故障の際には、戻しバネ(37)によりカム(35)を図(7A)の位置に戻すことができる。
【0065】
図7Aに示す状態では、カムがバネ(34)を押圧することで周縁部(25A)、(28A)を押動するため、フランジ(25)、(28)間に大きな圧力がかかる。この場合、スリーブ(27)がブレードハブ(24)と一体化し、捩りアクチュエータ(17)がブレード固定部(B)に作用できないため、空力部(A)のみが捩じれ可能となる。当然ながらこの結果、ブレード(P)の捩り固有振動数はこの時最大となって、上記空力部(A)の捩り振動数と同一となる。
【0066】
これに対し、図7Bに示す状態では、バネ(34)が延伸し、周縁部(25A)、(28A)をカム(35)に向けて押動するため、フランジ(25)、(28)間には弱い圧力がかかるか、ほとんど圧力がかからない。したがってスリーブ(27)はブレードハブ(24)から解放され、捩りアクチュエータ(17)はブレードの部分(A)および(B)全体に対して作用することができる。このときのブレード(P)の捩り固有振動数は最小である。
【0067】
当然ながら、図7Aおよび図7Bに例示する位置間でカム(35)をその軸(36)周りに回転制御することで、部分(A)および(B)を含むブレード全体の捩り固有振動数および、空力部(A)のみの捩り固有振動数に対応する最大値を、双方向に漸進的に可変とすることができる。
【0068】
なおさらに、例えば電力供給上の問題によるアクチュエータ(F)またはアクチュエータ(17)が故障の際や、ブレードの捩じれに発散が見られる場合であっても、戻しバネ(37)により、最大捩り固有振動数に対応する図7Aの状態に復帰することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B