(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018782
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】三輪自動車の後輪サスペンション
(51)【国際特許分類】
B62K 25/26 20060101AFI20161020BHJP
B62K 5/05 20130101ALI20161020BHJP
【FI】
B62K25/26
B62K5/05
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-93518(P2012-93518)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-133099(P2013-133099A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0142150
(32)【優先日】2011年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ゼ−キル
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン−フン
【審査官】
常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−114183(JP,A)
【文献】
特開平01−127475(JP,A)
【文献】
米国特許第04114918(US,A)
【文献】
特開平01−047690(JP,A)
【文献】
特開昭50−131238(JP,A)
【文献】
特開平01−148685(JP,A)
【文献】
特開2006−062573(JP,A)
【文献】
特開2009−286155(JP,A)
【文献】
米国特許第05908078(US,A)
【文献】
特開昭50−106360(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0148664(US,A1)
【文献】
特開2008−247352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/26
B62K 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に2つの前輪と1つの後輪が装着される三輪自動車の後輪サスペンションであって、
後輪の回転軸が連結されたホイールセンタ、
一側は車体に連結され、他側はホイールセンタに連結されたアッパーリンク、および
一側は前記アッパーリンクの下の車体に連結され、他側は前記アッパーリンクの下のホイールセンタに連結されたロワーリンク、を含み、
前記アッパーリンクは、ホイールセンタの一側に付着する第1アッパーリンクと、前記第1アッパーリンクと対称をなすようにホイールセンタの他側に付着する第2アッパーリンクとで構成され、
前記ロワーリンクは、ホイールセンタの一側に付着する第1ロワーリンクと、前記第1ロワーリンクと対称をなすようにホイールセンタの他側に付着する第2ロワーリンクとで構成され、
前記第1アッパーリンクと第2アッパーリンクの各延長線上の交差点に位置するアッパーリンクの瞬間中心、および第1ロワーリンクと第2ロワーリンクの各延長線上の交差点に位置するロワーリンクの瞬間中心のそれぞれは、後輪の回転軸よりも後方に位置することを特徴とする三輪自動車の後輪サスペンション。
【請求項2】
前記第1アッパーリンクと第2アッパーリンクは車の全幅方向に4節リンク運動をするように装着され、
前記第1ロワーリンクと第2ロワーリンクは車の全幅方向に4節リンク運動をするように装着されたことを特徴とする請求項1に記載の三輪自動車の後輪サスペンション。
【請求項3】
前記アッパーリンクの瞬間中心は、ロワーリンクの瞬間中心よりも後方に位置するように装着されたことを特徴とする請求項1に記載の三輪自動車の後輪サスペンション。
【請求項4】
前記ホイールセンタは、トレーリングリンクを通じて車体に回動可能に装着され、
前記トレーリングリンクの上部にアッパーリンクが位置し、トレーリングリンクの下部にロワーリンクが位置することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の三輪自動車の後輪サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三輪自動車の後輪サスペンション構造に係り、より詳しくは、前輪2つ後輪1つから構成される三輪自動車において、旋回の安全性を向上させるために、車の旋回方向に応じて後輪のトー角(およびキャンバー角)が自動的に制御される三輪自動車の後輪サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的に車の燃費を改善するための努力が続けられており、その一環として、パワートレーンの性能を改善や車の重量節減の研究がなされている。
このような趣旨に合致し、環境に優しくさらにはより軽量化した運送手段として三輪自動車が新たに開発されている。
このように、軽量化および親環境性をコンセプトとして開発された三輪自動車は、前輪が1つ(三角形構造)あるいは、後輪が1つ(逆三角形構造)の構造を有するもので、四輪車と比べて軽量化および燃費向上の長所はあるが、走行の安全性が低下するという短所がある。
【0003】
このうち、前輪が2つで後輪が1つの三輪自動車には、バイクの後輪に一般的に適用され上下運動のみが可能な従来の後輪サスペンションのスイングアームタイプが主に適用されていた。
図1に示す通り、前輪が2つで後輪が1つの三輪自動車における従来の後輪サスペンション構造は、車体の後方終端で「H」型のスイングアームがヒンジピンによって結合されて上下にヒンジ回動(上下ピボット運動)し、ショックアブソーバのバンプ(bump)およびリバウンド(rebound)運動によって衝撃を緩衝するように構成されている。
すなわち、前記スイングアームは、後輪の回転軸が後方終端に結合し、前方終端は車体に結合し、地面の凹凸によって上下ピボット運動するように構成されている。
【0004】
しかし、後輪が1つの三輪自動車の場合、四輪車と同じ性能のタイヤが装着されたときと比較して、コーナリング力が半分の水準に低下する。したがって、同じコースの旋回時に四輪車に比べて後輪の横力(車旋回によって横軸方向に作用する力を支持する力)が小さく、スピンアウト(spin−out)発生の可能性大きくなり旋回の安全性が低下する問題点があった。
また、上記スイングアームタイプのサスペンション構造は、横力が作用するとき、振動および変形を吸収するためのサスペンション用のゴム材ブッシュが外力によって変形してアライメントが変わり、ハンドルが操向されたような現象が発生するコンプライアンス効果によってトーアウト(toe−out)が発生する傾向がある。
すなわち、スイングアームタイプのサスペンションは、車の旋回時に発生する遠心力と横力によって(オーバーステアモーメントが誘発して)車の旋回安全性が低下していた。
これにより、後輪が正常軌道を離脱し、車の走行安全性が減少する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−033060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、旋回時に後輪のトーイン(toe−in)およびキャンバー角(camber angle)の変化を強制的に誘導することによって旋回安全性を増大させた三輪自動車の後輪サスペンションを提供することに主な目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明は、車体に2つの前輪と1つの後輪が装着される三輪自動車の後輪サスペンションであって、後輪の回転軸が連結されたホイールセンタ、一側は車体に連結され、他側はホイールセンタに連結されたアッパーリンク、および一側は前記アッパーリンクの下の車体に連結され、他側は前記アッパーリンクの下のホイールセンタに連結されたロワーリンク、を含み、
前記アッパーリンクとロワーリンクは、車体との結合地点がホイールセンタとの結合地点よりもさらに高い位置に置かれるように装着され、地面からの傾斜角度は、アッパーリンクよりもロワーリンクがさらに大きく形成されたことを特徴とする。
【0008】
前記アッパーリンクは、ホイールセンタの一側に付着する第1アッパーリンクと、前記第1アッパーリンクと対称をなすようにホイールセンタの他側に付着する第2アッパーリンクとで構成され、前記第1アッパーリンクと第2アッパーリンクは車の全幅方向に4節リンク運動をするように装着され、前記ロワーリンクは、ホイールセンタの一側に付着する第1ロワーリンクと、前記第1ロワーリンクと対称をなすようにホイールセンタの他側に付着する第2ロワーリンクとで構成され、前記第1ロワーリンクと第2ロワーリンクは車の全幅方向に4節リンク運動をするように装着されたことを特徴とする。
【0009】
前記第1アッパーリンクと第2アッパーリンクの各延長線上の交差点に位置するアッパーリンクの瞬間中心、および第1ロワーリンクと第2ロワーリンクの各延長線上の交差点に位置するロワーリンクの瞬間中心のそれぞれは、後輪の回転軸よりも後方に位置することを特徴とする。
【0010】
前記アッパーリンクの瞬間中心は、ロワーリンクの瞬間中心よりも後方に位置するように装着されたことを特徴とする。
【0011】
前記ホイールセンタは、トレーリングリンクを通じて車体に回動可能に装着され、前記トレーリングリンク
の上部にアッパーリンクが位置し、トレーリングリンクの下部にロワーリンクが位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、後輪サスペンション構造は、地面を基準としてロワーリンクの角度(β)がアッパーリンクの角度(α)よりもさらに大きく形成されるように装着されることにより、ショックアブソーバ(図示せず)のバンプ時にホイールセンタの後方移動を誘導し、乗車感性能をより向上させることができる。
また、前記アッパーリンクとロワーリンクはそれぞれ4節リンク運動が発生するように後輪に2つずつ配置され、それぞれの瞬間中心は後輪の回転軸後方に位置するようになるため、旋回安全性を向上させることができる。
より詳細には、車の旋回によって(オーバーステアモーメントを相殺するアンダーステアを誘発するように)後輪のトーイン(toe−in)が誘導される構造、すなわち、前輪の旋回方向と同じ方向に後輪が旋回する構造によってスピンアウトを防ぎ、旋回安全性を向上させることができるアンチロール(anti−roll)効果をもたらすことができる。
さらに、アッパーリンクの瞬間中心とロワーリンクの瞬間中心の配置を調節し、旋回時にキャンバー角の調節もできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の三輪自動車後輪サスペンション構造を示す側面図である。
【
図2】発明の好ましい実施形態に係る三輪自動車の後輪サスペンション構造が適用された様子を透視して示す斜視図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態に係る三輪自動車の後輪サスペンション構造が適用された側面の様子、およびショックアブソーバがバンプとリバウンド運動をするとき、上下運動をするようになるアッパーリンクとロワーリンクの仮想ピボット点を表示した図である。
【
図4】本発明のアッパーリンクとロワーリンクが4節リンクの運動をする様子を表示した参考図である。
【
図5】アッパーリンクの瞬間中心(B)がロワーリンクの瞬間中心(A)の後方に形成された様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の三輪自動車の後輪サスペンションについてより詳しく説明する。
図2、3に示す通り、本発明の三輪自動車は、車体に2つの前輪と1つの後輪1が装着される。後輪1を車体に連結する本発明の後輪サスペンションは、ホイールセンタ10、アッパーリンク20(20a、20b)、ロワーリンク30(30a、30b)、およびトレーリングリンク40を含んで構成される。
本発明の後輪1は、リンク20、30、40を通じて車体に連結することができるように連結ホイールセンタ10に回転軸が連結され、ホイールセンタ10は車体の前方を向くように配置される。
【0015】
ホイールセンタ10の下側にはロワーリンク30が装着され、上側にはアッパーリンク20が装着され、ロワーリンク30とアッパーリンク20それぞれはホイールセンタ10の両側にそれぞれ1つずつ装着される。また、トレーリングリンク40は、ロワーリンク30とアッパーリンク20の間に装着してホイールセンタ10と車体を連結し、車体には上下回動が可能なように結合し、上側にはショックアブソーバ(図示せず)が装着される。
このとき、アッパーリンク20とロワーリンク30は、車体との結合地点がホイールセンタ10との結合地点よりもさらに高い位置に置かれるように装着され、地面からの傾斜角はアッパーリンクよりもロワーリンクがさらに大きく形成される。すなわち、
図3示すように、地面を基準としてロワーリンクの角度(β)がアッパーリンクの角度(α)よりもさらに大きくなるよう装着される。
【0016】
したがって、アッパーリンク20とロワーリンク30の延長線上に置かれる上下運動の仮想ピボット点は、後輪1の回転軸よりも上側に位置するようになるため、ショックアブソーバのバンプ時に後輪1の後方移動が誘導される。このような後輪の後方移動は前輪と後輪の間隔を増加させ、乗車感の向上を誘導する(ショックアブソーバの上下運動による揺れを減少させることができる)。このとき、アッパーリンク20とロワーリンク30の上下運動時に干渉を防ぐように、トレーリングリンク40の上下ピボット点も、アッパーリンク20とロワーリンク30の上下ピボット点を経るように配置されることが好ましい。
【0017】
アッパーリンク20は、ホイールセンタ10の一側に装着される第1アッパーリンク20aと、第1アッパーリンク20aと対称をなすようにホイールセンタ10の他側に装着される第2アッパーリンク20bとで構成される。また、第1アッパーリンク20aと第2アッパーリンク20bは、車の全幅方向(左右方向)に4節リンク運動をするように装着される。
さらに、ロワーリンク30も、ホイールセンタ10の一側に装着される第1ロワーリンク30aと、第1ロワーリンク30aと対称をなすようにホイールセンタ10の他側に装着される第2ロワーリンク30bとで構成される。同様に、第1ロワーリンク30aと第2ロワーリンク30bは、車の全幅方向に4節リンク運動をするように装着される。
【0018】
このとき、第1アッパーリンク20aと第2アッパーリンク20bが形成するリンク構造および第1ロワーリンク30aと第2ロワーリンク30bが形成するリンク構造において、対をなしたリンクの各延長線上の交差点に位置する瞬間中心は後輪1の回転軸後方に位置するように装着される。すなわち、それぞれのリンク20a、20b、20b、30bが、
図4に示すような4節リンク運動が行われるように、アッパーリンク20とロワーリンク30は車体に連結した両側結合地点の間隔(車体側スパン[span])がホイールセンタに連結した両側結合地点の間隔(ホイールセンタ側スパン[span])よりもさらに大きく形成される。
これにより、
図4に示すように前輪が直進の場合には後輪1は旋回しないが、前輪が左折する場合には、後輪に作用する横力によって後輪は前輪と同じ方向に旋回してトーインが誘導される。
【0019】
一方、本発明の好ましい実施形態において、アッパーリンクの瞬間中心(B)はロワーリンクの瞬間中心(A)よりも後方に位置するように装着できる。すなわち、
図5に示すように、ロワーリンク30a、30bの瞬間中心(B)がアッパーリンク20a、20bの瞬間中心(A)はより後方に置かれることにより、リンク運動時の運動量差によって後輪1の旋回時にキャンバー角変化を誘導することができ、このようなキャンバー角変化は車の操向性能をさらに向上させる。
また、上記の通り、ホイールセンタ10はトレーリングリンク40を通じて車体に回動可能に装着されて支持され、トレーリングリンク40はアッパーリンク20a、20bとロワーリンク30a、30bの対称点となる位置に装着されることが好ましい。
【0020】
このような構成の本発明は、後輪1の横力減少を抑制して旋回の安全性を向上させ、後輪1の上下運動時に後輪1が後方移動するように構成されることにより、乗車感を向上させる効果がある。
また、4節リンク構造を有することにより、リンクの長さおよび直径などの調節を通じてチューニング因子が増加して設計自由度が向上する長所があり、機械的な構造改善を通じて信頼性がさらに向上する効果がある。
【0021】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0022】
10 ・・・ホイールセンタ
20 ・・・アッパーリンク
30 ・・・ロワーリンク
40 ・・・トレーリングリンク