特許第6018807号(P6018807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6018807-膨張弁 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018807
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/06 20060101AFI20161020BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F25B41/06 K
   F16K31/68 S
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-132783(P2012-132783)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-257064(P2013-257064A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 武志
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−014369(JP,A)
【文献】 特開2008−180476(JP,A)
【文献】 実開平03−067968(JP,U)
【文献】 実開昭63−057470(JP,U)
【文献】 特開2011−002140(JP,A)
【文献】 米国特許第04542852(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/06
F16K 31/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧冷媒が導入される入口通路と、該入口通路に連通する弁室と、該弁室に連通するオリフィスと、前記弁室内に配設されて前記オリフィスの入口に形成された弁座に対向する弁体と、該弁体を前記弁座に向けて付勢するコイルばねと、前記弁室内で前記コイルばねを支持するプラグと、前記オリフィスを通過した冷媒を蒸発器へ向けて送り出す出口通路と、蒸発器から圧縮機へ戻る低圧の冷媒が通過する低圧通路と、該低圧通路の冷媒の圧力と温度に対応して前記弁体を駆動するパワーエレメントとを備える膨張弁であって、
前記入口通路から前記オリフィスに向かう高圧冷媒が前記コイルばねに接するのを防止するべく、前記コイルばねの外周部を覆うとともに前記弁室の内周面との間に冷媒整流通路を形成するばねカバー部材を設け
前記ばねカバー部材は筒状の部材であって、その外周部が前記入口通路からの冷媒の流れに対して直交するように配置され、
前記コイルばねの付勢方向において、前記ばねカバー部材と前記プラグとは重ならないことを特徴とする膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに用いられる膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルに用いられる膨張弁の弁本体は、圧縮機からの高圧の冷媒が導入される入口通路と、入口通路に連通する弁室と、弁室に連通するオリフィスとを有する。
弁室内には、オリフィスの入口に形成された弁座に対向する弁体と、弁体を弁座に向けて付勢するコイルばね等が配設される。弁体と弁座の間に形成される隙間を通過した冷媒はオリフィスで減圧されて、出口通路から蒸発器へ送り出される。
弁本体は、蒸発器から圧縮機へ戻る低圧の冷媒が通過する低圧冷媒通路を有する。低圧冷媒の圧力と温度は、弁本体の頂部に配設された弁体の駆動装置であるパワーエレメントに伝達される。
パワーエレメントは、低圧冷媒から受けとる情報に対応して弁体を操作して弁開度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−180476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入口通路から弁室に導入される高圧の冷媒は、流れの向きを直角方向に変えて弁座に向かうが、その際、弁体を付勢するコイルばねに接する。これにより、弁室内の冷媒の流れが乱れやすくなるとともに、冷媒に含まれる気泡が潰れやすくなり、騒音の発生原因となる。
そこで、本発明の目的は、上述した不具合を解消する膨張弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高圧冷媒が導入される入口通路と、入口通路に連通する弁室と、弁室に連通するオリフィスと、弁室内に配設されてオリフィスの入口に形成された弁座に対向する弁体と、弁体を弁座に向けて付勢するコイルばねと、弁室内でコイルばねを支持するプラグと、オリフィスを通過した冷媒を蒸発器へ向けて送り出す出口通路と、蒸発器から圧縮機へ戻る低圧の冷媒が通過する低圧通路と、低圧通路の冷媒の圧力と温度に対応して弁体を駆動するパワーエレメントとを備える膨張弁であって、入口通路からオリフィスに向かう高圧冷媒がコイルばねに接するのを防止するべく、コイルばねの外周部を覆うとともに弁室の内周面との間に冷媒整流通路を形成するばねカバー部材を設け、ばねカバー部材は筒状の部材であって、その外周部が入口通路からの冷媒の流れに対して直交するように配置され、コイルばねの付勢方向において、ばねカバー部材とプラグとは重ならないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の膨張弁は、上述した手段を備えることにより、弁室内を流れる冷媒の騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態である膨張弁の正面側縦断面図。
図2図1の膨張弁の左側縦断面図。
図3図1の膨張弁の横断面図であり、(a)は図1のA−A’線断面図、(b)は図2のB−B’線断面図、(c)は図1のC−C’線断面図。
図4図1の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜3に示すように、本実施形態の膨張弁1は角柱状の弁本体10を有し、弁本体10の底部の近傍には高圧冷媒の入口通路20が設けられる。入口通路20は奥に向かって径が次第に小さくなる多段状に形成され、最奥部の小径部22を介して弁室30に連通している。弁室30の上端はオリフィス44に連通しており、その入口側には弁座42が形成されている。
【0010】
弁室30には弁体40が配設され、弁体40は弁座42と協働して弁部を構成する。弁体40と弁座42の間に形成される隙間を通過した高圧の冷媒は、オリフィス44を介して出口通路50に流入し、配管(図示せず)を通って蒸発器へ送られる。入口通路20と出口通路50は、それらの軸線が直交するように形成されており、凝縮器から入口通路20を介して弁本体10内に流入する高圧冷媒は、弁本体10内をL字状に流れ、出口通路50を介して蒸発器へ送り込まれる。
【0011】
弁体40は弁室30内に配設される弁支持部材60により支持され、弁支持部材60はコイルばね62により閉弁方向に常時付勢されている。コイルばね62は弁室30の下端開口部を封止するプラグ64により支持され、プラグ64のねじ込み量を調節することにより、コイルばね62の圧縮量を変更して弁体40への閉弁方向の付勢力を調整する。また、プラグ64の上端外周部に装着されたシールリング66により弁室30がシールされる。
【0012】
コイルばね62の外側には、コイルばね62を覆うばねカバー部材100が配設されている。ばねカバー部材100は金属製の板材をプレス加工して形成される円筒形状の部材であって、その外径寸法は弁室30の内径寸法より小さな寸法になっており、ばねカバー部材100の外周面と弁室30の内周面との間には環状の間隙からなる冷媒整流通路Gが形成されている。ばねカバー部材100の下端部102は小径部22の最下部よりもプラグ64側に延びており、ばねカバー部材100の外周面は小径部22の弁室30への開口部の全面に対向している。
【0013】
蒸発器から圧縮機へ戻る低圧の冷媒は、弁本体10の上部に設けられる低圧冷媒の入口ポート70に入り、出口ポート72を介して圧縮機へ戻る。図3(c)に示すように、入口ポート70と出口ポート72は、それらの軸線が直交するように形成されており、蒸発器から入口ポート70を介して弁本体10内に流入する低圧冷媒は、弁本体10内をL字状に流れ、出口ポート72を介して圧縮機へ戻る。
【0014】
図1に示すように、弁本体10の頂部にはパワーエレメント80が装備される。パワーエレメント80は上蓋81と下蓋82の間に挟み込まれるダイアフラム83を有し、上蓋81とダイアフラム83の間には上部圧力作動室84が形成される。
上部圧力作動室84内には作動ガスが封入され、下部圧力作動室85に導入される低圧冷媒の圧力、温度に応じてダイアフラム83が変位する。
パワーエレメント80はカバー88で覆われ、作動ガスへの外部の温度の影響を防止する。
【0015】
ダイアフラム83の変位は、受け部材90を介して作動棒92に伝達され、作動棒92は弁体40を駆動して弁開度を制御する。
作動棒92は、弁本体10に形成された凹部10a内に装着されたリング状の防振バネ部材93により弾性支持されている。この防振バネ部材93は作動棒92に外嵌され、作動棒92の軸方向の移動を許容しつつ径方向の移動を抑制する。これにより、高圧冷媒の圧力変動に伴う騒音の発生が防止される。
【0016】
図4において、入口通路20に導入された高圧冷媒は、小径部22を通って弁室30内に流入する。そして、ばねカバー部材100の外周面に接し、平滑な表面をもつばねカバー部材100の外周面と弁室30の内周面とにより形成される冷媒整流通路Gに案内されてオリフィス44へ向かう。平滑面であるカバー部材100の外周面と平滑面である弁室30の内周面とで形成される冷媒整流通路Gを通る冷媒は整流されるので、乱流となることはない。また、高圧冷媒に含まれる気泡は冷媒整流通路Gで細分化される。この作用により、高圧冷媒により弁室30内で発生する騒音が低減する。
【0017】
本発明の膨張弁は、以上のように、高圧冷媒が流入する弁室30内に、コイルばね62を覆うとともに弁室30の内周面との間に冷媒整流通路Gを形成するばねカバー部材100を配設したので、冷媒の流れはスムーズとなって乱流が発生せず、気泡が細分化されるので、騒音が低減する。
【符号の説明】
【0018】
1 膨張弁
10 弁本体
20 入口通路
22 小径部
30 弁室
40 弁体
42 弁座
44 オリフィス
50 出口通路
60 弁支持部材
62 コイルばね
64 プラグ
66 シールリング
70 入口ポート
72 出口ポート
80 パワーエレメント
81 上蓋
82 下蓋
83 ダイアフラム
84 上部圧力作動室
85 下部圧力作動室
90 受け部材
92 作動棒
100 ばねカバー部材
冷媒整流通路
図1
図2
図3
図4