(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記窒化物半導体装置について、本発明者が実際に実験を行ってGaN層に酸素プラズマ処理を行った後にオーミック電極を形成した場合、オーミック電極のコンタクト抵抗が高く、十分に低いコンタクト抵抗を得ることはどうしてもできなかった。
【0005】
そこで、この発明の課題は、窒化物半導体層とオーミック電極とのコンタクト抵抗を低減できる窒化物半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、窒化物半導体層上に形成されたオーミック電極のコンタクト抵抗について鋭意検討した結果、TiAl系材料からなるオーミック電極と窒化物半導体層との界面の基板側の領域において上記界面近傍に発生する酸素濃度ピークの酸素濃度と塩素濃度ピークの塩素濃度に応じて窒化物半導体層とオーミック電極とのコンタクト抵抗の特性が変化することを発見した。
【0007】
さらに、本発明者は、上記界面より基板側の上記界面近傍の酸素濃度ピークの酸素濃度と塩素濃度ピークの塩素濃度が特定の範囲内であるときにコンタクト抵抗が大幅に減少することを実験により初めて見出した。
【0008】
上記発見に基づき、この発明の窒化物半導体装置は、
基板と、
上記基板上に形成されていると共にヘテロ界面を有する窒化物半導体積層体と、
上記窒化物半導体積層体内に少なくとも一部が形成されたTiAl系材料からなるオーミック電極と
を備え、
上記窒化物半導体積層体は、
上記基板上に形成された第1の窒化物半導体層と、
上記第1の窒化物半導体層上に形成されていると共に上記第1の窒化物半導体層とヘテロ界面を形成する第2の窒化物半導体層と
を有し、
上記TiAl系材料からなるオーミック電極から上記窒化物半導体積層体に亘る深さ方向の酸素濃度分布において、
上記オーミック電極と上記窒化物半導体積層体との界面よりも上記基板側の領域の上記界面近傍の位置に酸素濃度ピークを有し、
上記酸素濃度ピークの酸素濃度は、
1.1×10
18cm
−3以上かつ6.8×10
18cm
−3以下であり、
上記TiAl系材料からなるオーミック電極から上記窒化物半導体積層体に亘る深さ方向の塩素濃度分布において、
上記オーミック電極と上記窒化物半導体積層体との界面よりも上記基板側の領域の上記界面近傍の位置に塩素濃度ピークを有し、
上記塩素濃度ピークの塩素濃度は、
5.0×10
16cm
−3以上かつ9.6×10
17cm
−3以下であることを特徴としている。
【0009】
この発明の窒化物半導体装置によれば、上記TiAl系材料からなるオーミック電極と上記窒化物半導体積層体との界面の上記基板側の領域において、上記界面近傍の上記酸素濃度ピークの酸素濃度が、1.1×10
18cm
−3以上かつ6.8×10
18cm
−3以下であると共に、上記界面近傍の上記塩素濃度ピークの塩素濃度が、5.0×10
16cm
−3以上かつ9.6×10
17cm
−3以下であることによって、上記窒化物半導体積層体と上記オーミック電極とのコンタクト抵抗を低減できる。
【0010】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、上記窒化物半導体積層体は、
上記第2の窒化物半導体層を貫通して上記ヘテロ界面近傍の2次元電子ガス層に達する凹部を有し、
上記凹部に上記オーミック電極の少なくとも一部が埋め込まれている。
【0011】
この実施形態によれば、リセス構造の窒化物半導体装置において、上記ヘテロ界面近傍の2次元電子ガス層とオーミック電極とのコンタクト抵抗を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の窒化物半導体装置によれば、TiAl系材料からなるオーミック電極と窒化物半導体積層体との界面の基板側の領域において、上記界面近傍の酸素濃度ピークの酸素濃度が、1.1×10
18cm
−3以上かつ6.8×10
18cm
−3以下であると共に、上記界面近傍の塩素濃度ピークの塩素濃度が、5.0×10
16cm
−3以上かつ9.6×10
17cm
−3以下であるので、上記窒化物半導体積層体と上記オーミック電極とのコンタクト抵抗を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施形態の窒化物半導体装置の断面図を示しており、この窒化物半導体装置はGaN系HFET(Hetero-junction Field Effect Transistor;ヘテロ接合電界効果トランジスタ)である。
【0016】
この半導体装置は、
図1に示すように、Si基板10上に、アンドープAlGaNバッファ層15、第1の窒化物半導体層の一例としてのアンドープGaN層1と、第2の窒化物半導体層の一例としてのアンドープAlGaN層2からなる窒化物半導体積層体20を形成している。このアンドープGaN層1とアンドープAlGaN層2との界面近傍に2DEG層(2次元電子ガス層)3が発生する。
【0017】
なお、上記GaN層1に替えて、上記AlGaN層2よりもバンドギャップの小さい組成を有するAlGaN層としてもよい。また、上記AlGaN層2上にキャップ層として例えばGaNからなる約1nmの厚さの層を設けてもよい。
【0018】
また、ソース電極11とドレイン電極12とを、上記AlGaN層2と2DEG層3を貫通してGaN層1まで達する凹部106と凹部109に互いに間隔をあけて形成している。また、AlGaN層2上に、ソース電極11とドレイン電極12との間かつソース電極11側にゲート電極13を形成している。ソース電極11とドレイン電極12はオーミック電極であり、ゲート電極13はショットキー電極である。上記ソース電極11と、ドレイン電極12と、ゲート電極13と、そのソース電極11,ドレイン電極12,ゲート電極13が形成されたGaN層1,AlGaN層2の活性領域でHFETを構成している。
【0019】
ここで、活性領域とは、AlGaN層2上のソース電極11とドレイン電極12との間に配置されたゲート電極13に印加される電圧によって、ソース電極11とドレイン電極12との間でキャリアが流れる窒化物半導体積層体20(GaN層1,AlGaN層2)の領域である。
【0020】
そして、ソース電極11とドレイン電極12とゲート電極13が形成された領域を除くAlGaN層2上に、AlGaN層2を保護するため、SiO
2からなる絶縁膜30を形成している。また、ソース電極11とドレイン電極12とゲート電極13とが形成されたSi基板10上に、ポリイミドからなる層間絶縁膜40を形成している。また、
図1において、41はコンタクト部としてのビア、42はドレイン電極パッドである。なお、絶縁膜は、SiO
2に限らず、SiNやAl
2O
3などを用いてもよい。特に、絶縁膜として、コラプス抑制のために半導体層表面にストイキオメトリックを崩したSiN膜と表面保護のためのSiO
2やSiNの多層膜構造とするのが好ましい。また、層間絶縁膜は、ポリイミドに限らず、p−CVD(プラズマCVD)で製造したSiO
2膜やSOG(Spin On Glass)やBPSG(ホウ素・リン・シリケート・ガラス)などの絶縁材料を用いてもよい。
【0021】
上記構成の窒化物半導体装置において、GaN層1とAlGaN層2との界面近傍に発生した2次元電子ガス層(2DEG層)3でチャネルが形成され、このチャネルをゲート電極13に電圧を印加することにより制御して、ソース電極11とドレイン電極12とゲート電極13を有するHFETをオンオフさせる。このHFETは、ゲート電極13に負電圧が印加されているときにゲート電極13下のGaN層1に空乏層が形成されてオフ状態となる一方、ゲート電極13の電圧がゼロのときにゲート電極13下のGaN層1に空乏層がなくなってオン状態となるノーマリーオンタイプのトランジスタである。
【0022】
次に、上記窒化物半導体装置の製造方法を
図2〜
図5に従って説明する。なお、
図2〜
図5では、図を見やすくするためにSi基板やアンドープAlGaNバッファ層を図示せず、また、ソース電極とドレイン電極の大きさや間隔を変えている。
【0023】
まず、
図2に示すように、Si基板(図示せず)上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法を用いて、アンドープAlGaNバッファ層(図示せず)、アンドープGaN層101とアンドープAlGaN層102を順に形成する。アンドープGaN層101の厚さは例えば1μm、アンドープAlGaN層102の厚さは例えば30nmとする。このGaN層101とAlGaN層102が窒化物半導体積層体120を構成している。
【0024】
次に、AlGaN層102上に絶縁膜130(例えばSiO
2)を例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長))法により200nmの厚さに成膜する。
図2において、103は、GaN層101とAlGaN層102とのヘテロ界面近傍に形成される2次元電子ガス層(2DEG層)である。
【0025】
次に、絶縁膜130上にフォトレジスト(図示せず)を塗布してパターニングした後、ドライエッチングにより、
図3に示すように、オーミック電極を形成すべき部分を除去して、AlGaN層102を貫通してGaN層101の上側の一部に2DEG層103よりも深い凹部106,109を形成する。上記ドライエッチングでは、塩素系のガスを用いる。この凹部106,109の深さはAlGaN層102の表面から2DEG層103までの深さ以上であればよく、例えば50nmとする。
【0026】
また、この実施形態では、上記ドライエッチングにおいて、RIE(reactive ion etching:リアクティブイオンエッチング)装置の自己バイアス電位Vdcを180V以上かつ240V以下に設定した。
【0027】
次に、レジストを剥離後、上記ドライエッチングによるエッチングダメージを低減するためのアニールを行う(例えば500〜850℃)。そして順次、O
2プラズマ処理、HCl/H
2O
2による洗浄、BHF(バッファードフッ酸)もしくは1%のHF(フッ酸)による洗浄を行なう。
【0028】
次に、
図4に示すように、絶縁膜130上および凹部106,109にスパッタリングにより、Ti,Al,TiNを順に積層することで、Ti/Al/TiNを積層して、オーミック電極となる積層金属膜107を形成する。ここで、TiN層は、後工程からTi/Al層を保護するためのキャップ層である。
【0029】
上記スパッタリングで上記積層金属膜107を形成する時に、Ti成膜中に少量(例えば5sccm)の酸素をチャンバー内に流す。ここで、上記酸素の流量は、Tiの酸化物が生成されない量とする。なお、上記Ti成膜中に少量の酸素をチャンバー内に流すことに替えて、上記Ti成膜前にチャンバー内に酸素を例えば50sccmで5分間流してもよい。
【0030】
尚、上記スパッタリングにおいて、TiとAlの両方を同時にスパッタリングしてもよい。また、スパッタリングに替えて上記Ti,Alを蒸着してもよい。
【0031】
次に、
図5に示すように、通常のフォトリソグラフィおよびドライエッチングを用いて、オーミック電極111,112のパターンを形成する。
【0032】
そして、オーミック電極111,112が形成された基板を例えば400℃以上かつ500℃以下で10分以上アニールすることによって、2次元電子ガス層(2DEG層)103とオーミック電極111,112との間にオーミックコンタクトが得られる。この場合、500℃を超える高温でアニールした場合に比べてコンタクト抵抗を大幅に低減できる。また、400℃以上かつ500℃以下の低温でアニールすることにより絶縁膜130への電極金属の拡散を抑制でき、絶縁膜130の特性に悪影響を与えることがない。また、上記低温のアニールにより、GaN層101からの窒素抜けによる電流コラプスの悪化や特性変動を防ぐことができる。なお、「電流コラプス」とは、低電圧動作でのトランジスタのオン抵抗と比べて高電圧動作でのトランジスタのオン抵抗が高くなってしまう現象である。
【0033】
このオーミック電極111,112がソース電極11とドレイン電極12となり、後の工程でオーミック電極111,112の間にTiNまたはWNなどからなるゲート電極が形成される。
【0034】
上記実施形態の窒化物半導体装置の製造方法によれば、上記オーミック電極としてのソース電極11,ドレイン電極12から上記GaN層1に亘る深さ方向の酸素濃度分布において、上記ソース電極11,ドレイン電極12と上記GaN層1との界面S1,S2の上記アンドープGaN層1側の上記界面S1,S2近傍の位置に第1の酸素濃度ピークP1が形成される。また、上記第1の酸素濃度ピークP1よりも深い位置に第2の酸素濃度ピークP2が形成される。なお、上記界面S1,S2近傍とは、
図7を参照して後述するように、例えば、界面S1,S2よりも深い側へ約33nmの範囲であり、
図6から分かるように、第2の酸素濃度ピークP2は、界面近傍よりも深い位置にある。
【0035】
また、上記製造方法により、上記第1の酸素濃度ピークの酸素濃度は、例えば、1.1×10
18cm
−3以上かつ6.8×10
18cm
−3以下にできる。この第1の酸素濃度ピークの酸素濃度は、上記第2の酸素濃度ピークの酸素濃度よりも高い。
【0036】
図6は、上記ソース電極11とアンドープGaN層1との界面S1のソース電極11側から上記GaN層1側へ亘る深さ方向における酸素の濃度分布の一例を示すグラフである。
図6において、縦軸目盛の1.E+00、1.E+01、…、1.E+06は、それぞれ、1.0、1.0×10、…、1.0×10
6を表す。このグラフは、TEG(テスト・エレメント・グループ)を用い、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定した結果を表し、横軸に深さ(nm)を取り、縦軸に相対2次イオン強度(counts)を取ったものである。
図6に示すように、上記界面S1の位置に凸状の酸素濃度分布を有し、一例として、上記界面S1から上記GaN層1側へ約8nmの界面近傍の深さに、第1の酸素濃度ピークP1が位置し、上記界面S1から上記GaN層1側へ約108nmの深さに、第2の酸素濃度ピークP2が位置している。
図6の一例では、上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度は、2.6×10
18cm
−3であり、上記第2の酸素濃度ピークP2の酸素濃度は、6.4×10
17cm
−3であった。
【0037】
尚、上記界面S1は、カーボンCの相対2次イオン強度(counts)のピークの位置に対応している。また、上記ドレイン電極12とアンドープGaN層1との界面S2のドレイン電極12側から上記GaN層1側へ亘る深さ方向における酸素の濃度分布も、
図6のグラフと同様であった。
【0038】
図7は、上記ソース電極11とアンドープGaN層1との界面S1のソース電極側から上記GaN層1側へ亘る深さ方向における酸素の濃度分布、およびAl,Ti,Gaの濃度分布を示すグラフである。
図7において、縦軸目盛の1.E+00、1.E+01、…、1.E+07は、それぞれ、1.0、1.0×10、…、1.0×10
7を表す。このグラフは、
図6と同様、TEG(テスト・エレメント・グループ)を用い、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定した結果を表し、横軸に深さ(nm)を取り、縦軸に相対2次イオン強度(counts)を取ったものである。上記界面S1は、カーボンCの相対2次イオン強度(counts)のピークの位置に対応している。
図7のグラフでは、一例として、深さ約378nmから深さ約438nmの領域が界面近傍の領域R1であり、界面S1よりも浅い側へ約27nmと界面S1よりも深い側へ約33nmの範囲が界面近傍の領域R1である。
【0039】
尚、上記ドレイン電極12とアンドープGaN層1との界面S2のドレイン電極12側から上記GaN層1側へ亘る深さ方向におけるAl,Ti,Gaの濃度分布も、
図7のグラフと同様であった。
【0040】
また、上記実施形態の窒化物半導体装置の製造方法によれば、上記オーミック電極としてのソース電極11,ドレイン電極12から上記GaN層1に亘る深さ方向の塩素濃度分布において、上記ソース電極11,ドレイン電極12と上記アンドープGaN層1との界面S1,S2の上記アンドープGaN層1側の領域において、上記界面S1,S2近傍の位置に第1の塩素濃度ピークP10が形成される。また、上記第1の塩素濃度ピークP10よりも深い位置に、第2の塩素濃度ピークP20が形成される。なお、上記界面S1,S2近傍とは、
図7を参照して上述したように、例えば、界面S1,S2よりも深い側へ約33nmの範囲であり、
図8から分かるように、第2の塩素濃度ピークP20は、界面近傍よりも深い位置にある。
【0041】
また、上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度は、例えば、5.0×10
16cm
−3以上かつ9.6×10
17cm
−3以下になる。この第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度は、上記第2の塩素濃度ピークP20の塩素濃度よりも高い。
【0042】
図8は、上記ソース電極11から上記アンドープGaN層1に亘る深さ方向の塩素濃度分布の一例を示すグラフである。
図8において、縦軸目盛の1.E+01、1.E+02、…、1.E+04は、それぞれ、1.0×10、1.0×10
2、…、1.0×10
4を表す。このグラフは、TEG(テスト・エレメント・グループ)を用い、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定した結果を表し、横軸に深さ(nm)を取り、縦軸に相対2次イオン強度(counts)を取ったものである。
図8に示すように、上記界面S1の位置に凸状の塩素濃度分布を有し、一例として、上記界面S1から上記GaN層1側へ約10nmの深さの界面近傍に、第1の塩素濃度ピークP10が位置し、上記界面S1から上記GaN層1側へ約95nmの深さに、第2の塩素濃度ピークP20が位置している。
図8に示す一例では、上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度が、1.6×10
17cm
−3であった。また、上記第2の塩素濃度ピークP20の塩素濃度は、8.4×10
16cm
−3であった。
【0043】
尚、上記ドレイン電極12とアンドープGaN層1との界面S2のドレイン電極12側から上記GaN層1側へ亘る深さ方向における塩素の濃度分布も、
図8のグラフと同様であった。
【0044】
次に、
図9に、上記窒化物半導体積層体20の2DEG層3と上記ソース電極11,ドレイン電極12とのコンタクト抵抗(Ωmm)と、上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度(cm
−3)との関係を示す。
図9において、横軸目盛のE+17、E+18、E+19、E+20は、それぞれ、×10
17、×10
18、×10
19、×10
20を表す。
図9において、菱形印◇の各プロットの傍らに記載されている数値が上記各プロットにおけるコンタクト抵抗(Ωmm)である。
【0045】
図9から分かるように、上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度(cm
−3)を、1.1×10
18cm
−3以上かつ6.8×10
18cm
−3以下の範囲内にすることで、上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度が上記範囲外である場合に比べて、上記コンタクト抵抗を格段に低減できる。
【0046】
なお、
図9において、各プロットのサンプルは、上記第1の塩素濃度ピークの塩素濃度が、5.0×10
16(cm
−3)以上かつ9.6×10
17(cm
−3)以下である。
【0047】
次に、
図10に、上記窒化物半導体積層体20の2DEG層3と上記ソース電極11,ドレイン電極12とのコンタクト抵抗(Ωmm)と、上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度(cm
−3)との関係を示す。
図10において、横軸目盛のE+16、E+17、E+18、E+19は、それぞれ、×10
16、×10
17、×10
18、×10
19を表す。
図10において、菱形印◇の各プロットの傍らに記載されている数値が上記各プロットにおけるコンタクト抵抗(Ωmm)を表す。
【0048】
図10から分かるように、上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度(cm
−3)を、5.0×10
16cm
−3以上かつ9.6×10
17cm
−3以下の範囲内にすることで、上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度が上記範囲外である場合に比べて、上記コンタクト抵抗を格段に低減できる。
【0049】
なお、
図10において、各プロットのサンプルは、上記第1の酸素濃度ピークの酸素濃度が、1.1×10
18(cm
−3)以上かつ6.8×10
18(cm
−3)以下である。
【0050】
次に、
図11に、上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度(cm
−3)および上記第1の塩素濃度ピークP10とコンタクト抵抗(Ωmm)との関係を表す。
図11では、縦軸に上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度(cm
−3)を取り、横軸に上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度(cm
−3)を取り、菱形印◇の各プロットの傍らに記載されている数値が上記各プロットにおけるコンタクト抵抗(Ωmm)を表す。
図11において、横軸目盛のE+16、E+17、E+18、E+19は、それぞれ、×10
16、×10
17、×10
18、×10
19を表し、縦軸目盛のE+17、E+18、E+19、E+20は、それぞれ、×10
17、×10
18、×10
19、×10
20を表す。
【0051】
図11から分かるように、第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度が、1.1×10
18cm
−3以上かつ6.8×10
18cm
−3以下の範囲内であると共に、上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度が、5.0×10
16cm
−3以上かつ9.6×10
17cm
−3以下の範囲内であることによって、上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度が上記範囲外である場合や上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度が上記範囲外である場合に比べて、上記コンタクト抵抗を格段に低減できる。
【0052】
上記実施形態では、一例として、上記第1の酸素濃度ピークの酸素濃度が2.6×10
18cm
−3であると共に、上記第1の塩素濃度ピークの塩素濃度が1.6×10
17cm
−3であることで、オーミック電極(ソース電極11,ドレイン電極12)とGaN層1とのコンタクト抵抗を1.1Ωmmにできた。
【0053】
これに対して、上記第1の酸素濃度ピークの酸素濃度が1.1×10
18cm
−3を下回るとコンタクト抵抗が70Ωmmに急増している。これは、オーミックコンタクトの形成に必要なGaN層側の反応である酸素の活性化が不足するからであると考えられる。一方、上記第1の酸素濃度ピークの酸素濃度が6.8×10
18cm
−3を上回るとコンタクト抵抗が100Ωmmに急増している。これは、上記第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度が高過ぎると、塩素濃度が低くても、過剰な酸素がTiと反応し、オーミックコンタクト形成に必要なGaN層1側の反応であるTiによるGaNからのNの引き抜き反応が十分に行なわれないからであると考えられる。
【0054】
また、上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度が9.6×10
17cm
−3を上回るとコンタクト抵抗が50Ωmmまで急増したプロットが存在している。これは、上記第2の塩素濃度ピークP20の塩素濃度が高過ぎると、酸素濃度が所定の範囲内(1.1×10
18cm
−3〜6.8×10
18cm
−3)でも、過剰な塩素がGaやTiと反応し、オーミックコンタクト形成に必要なGaN層1側の反応であるTiによるGaNからのNの引き抜き反応や酸素の活性化が阻害されたためと考えられる。
【0055】
この実施形態によれば、第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度が1.1×10
18cm
−3〜6.8×10
18cm
−3の範囲内であり、かつ、第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度が5.0×10
16cm
−3〜9.6×10
17cm
−3の範囲内である。これにより、オーミックコンタクト形成に必要なGaN層側の酸素の活性化,GaNからのNの引き抜き反応を促進でき、第1の酸素濃度ピークP1の酸素濃度が上記範囲外である場合や上記第1の塩素濃度ピークP10の塩素濃度が上記範囲外である場合に比べて、格段に低抵抗のオーミックコンタクトを形成できると考えられる。
【0056】
なお、上記実施形態の窒化物半導体装置の製造方法によれば、絶縁膜130、AlGaN層102、GaN層101をドライエッチングにより除去し、凹部106,109を形成したが、絶縁膜130をウェットエッチングにより除去し、その後AlGaN層102、GaN層101をドライエッチングにより除去することにより、凹部106,109を形成してもよい。
【0057】
また、上記実施形態の窒化物半導体装置の製造方法によれば、Ti/Al/TiNを積層してオーミック電極としたが、これに限らず、TiNはなくともよく、また、Ti/Alを積層した後、その上にAu,Ag,Ptなどを積層してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、Si基板を用いた窒化物半導体装置について説明したが、Si基板に限らず、サファイヤ基板やSiC基板を用いてもよく、サファイヤ基板やSiC基板上に窒化物半導体層を成長させてもよいし、GaN基板にAlGaN層を成長させる等のように、窒化物半導体からなる基板上に窒化物半導体層を成長させてもよい。また、基板と窒化物半導体層との間にバッファ層を形成してもよいし、窒化物半導体積層体の第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との間にヘテロ改善層を形成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、オーミック電極がGaN層に達するリセス構造のHFETについて説明したが、リセスを形成せずにアンドープAlGaN層上にソース電極およびドレイン電極となるオーミック電極を形成したHFETにこの発明を適用してもよい。また、この発明の窒化物半導体装置は、2DEGを利用するHFETに限らず、他の構成の電界効果トランジスタであっても同様の効果が得られる。
【0060】
また、上記実施形態では、ノーマリーオンタイプのHFETについて説明したが、ノーマリーオフタイプの窒化物半導体装置にこの発明を適用してもよい。また、ショットキー電極に限らず、絶縁ゲート構造の電界効果トランジスタにこの発明を適用してもよい。また、この発明は、電界効果トランジスタに限らず、ショットキーダイオードのオーミック電極に適用してもよい。
【0061】
この発明の窒化物半導体装置の窒化物半導体は、Al
xIn
yGa
1−x−yN(x≦0、y≦0、0≦x+y≦1)で表されるものであればよい。
【0062】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。