(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018823
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】照明制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 37/02 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
H05B37/02 L
H05B37/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-157215(P2012-157215)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-22090(P2014-22090A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勇人
(72)【発明者】
【氏名】森 星豪
(72)【発明者】
【氏名】平川 恵士
【審査官】
田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−087215(JP,A)
【文献】
特開平02−142094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に配されて調光レベルを任意に制御することができる複数の照明器具と、前記照明器具を調光制御する制御装置と、トンネル坑口からトンネル外の所定の視距位置までの範囲において前記トンネル坑口に接近する運転者の順応輝度を計測する計測装置と、を備えた照明制御システムであって、
前記制御装置は、前記計測装置が計測した順応輝度から順応曲線を求め、前記順応曲線に対応した所要路面輝度が得られるように前記照明器具を調光制御し、
前記計測装置は、前記トンネル坑口から所定の視距位置離れた位置に設けられて前記トンネル坑口周囲の画像を撮像する撮像器を有し、前記撮像器が撮像した画像における前記トンネル坑口周囲の輝度分布から等価光幕輝度及び路面輝度を算出することにより前記順応輝度を計測することを特徴とする照明制御システム。
【請求項2】
前記計測装置は、前記トンネル坑口から前記視距位置までの間に複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記所定の視距位置は、前記トンネルを含む道路の設定速度に応じて設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車道路のトンネル入口照明に用いられる照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昼間の明るい野外を自動車で走行している運転者が、走行方向前方にあるトンネル坑口を見たとき、トンネル内が暗黒に見え、トンネル内に進行した前走車を見失うことがある。このような現象はブラックホール現象と呼ばれ、高速道路等において事故や渋滞を引き起こす要因となる。このようなブラックホール現象を抑制するために、トンネル入口照明に用いられる照明制御システムでは、昼間のトンネルに接近する運転者の順応を考慮したトンネル内の所要路面輝度が決定されている。
【0003】
従来の研究では、例えば、
図11(a)(b)に示すように、均一な輝度分布を有する周辺視野Sにおいて、視標Oを視認できる背景Bの輝度を所要路面輝度として定めていた。また、周辺視野Sの輝度が、順応輝度と考えられ、
図12に示すように、順応輝度と所要路面輝度との関係が求められている。
図12は、視標の提示時間が0.1秒、視標の視角寸法が7分、視認確率75%である実験条件で計測されたものであり、図示された4種の曲線は、視標Oの輝度とその背景Bの路面輝度との輝度対比Cが異なっている。ここで、照明されているトンネル内の路面が背景Bに相当し、トンネル内の前走車といった路上障害物が視標Oに相当する。つまり、照明されているトンネル内の路面(背景B)と、トンネル内の路上障害物(視標O)との輝度差が大きいほど、視標Oを視認し易くなるので、順応輝度及び所要路面輝度は低くなる。なお、これら背景Bと視標Oとを識別し得る最小の輝度差を、輝度差弁別閾という。そして、トンネル入口照明では、
図13に示すように、トンネル坑口T0を含む20度視野の平均輝度を順応輝度とし、この順応輝度に基づいて所要路面輝度が設定されてきた。
【0004】
しかしながら、現実的には、トンネルに接近している運転者の視野内における輝度分布は不均一であり、その平均輝度と均一面視野の輝度が一致した場合に、両者の順応輝度が等しいとは言えない。そのため、
図12に示した関係図から、トンネル入口照明を設計するための所要路面輝度を設定した場合であっても、適切なトンネル照明を実現できるとは限らない。
【0005】
そこで、不均一な輝度分布の視野における視認性の研究が行われている。この研究により、運転者の目の中心窩が順応している輝度(以下、中心窩順応輝度)と、運転者の目の眼球内散乱の程度を示す輝度(以下、等価光幕輝度)、及び視標Oの背景輝度が、視認性に影響することが明らかになった(例えば、非特許文献1参照)。
図14は、中心窩順応輝度に対する輝度差弁別閾と、等価光幕輝度及び背景輝度の和に対する輝度差弁別閾と、を夫々示す。なお、後者について、等価光幕輝度に比べて、背景輝度は比較的低いことから、
図14では等価光幕輝度に対する輝度差弁別閾を示している。
【0006】
また、
図15に示すように、所定の中心窩順応輝度における輝度差弁別閾と一致する等価光幕輝度と、均一な輝度分布空間における順応輝度との関係が求められている(例えば、特許文献1参照)。この
図15に示す関係図と、上記
図12に示した関係図から、あらゆるトンネル坑口の条件においても容易にトンネル内の所要路面輝度を求めることができる。
【0007】
【非特許文献1】Narisada, K. , Yoshimura, Y.:Luminance d’adaptation des yeux d’un conducteur à l’entrée d’un tunnel Une méthode objective de musure,Lux No.95(1977).
【特許文献1】特開昭61−290696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般的な高速道路のトンネル照明では、
図13に示したように、自動車の運転者がトンネル坑口の150m前方からトンネル坑口の中央を注視し始めることを想定して照明制御が行われている。しかしながら、トンネル坑口からの距離に対する順応輝度は、例えば、トンネル坑口の大きさ、該当トンネルを含む道路の設定速度、又は周囲環境といったトンネルの様々な条件によって、ばらつきがある。従って、このようなばらつきを十分に考慮せずに順応輝度が定められ、この順応輝度に応じてトンネル内の所要路面輝度が求められると、トンネル内の路面輝度が必要以上となり、無駄な電力消費を発生させる、又は路面輝度が不十分となる虞がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、トンネル条件のばらつきによらず、適切なトンネル内の路面輝度を実現することができる照明制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る照明制御システムは、トンネル内に配されて調光レベルを任意に制御することができる複数の照明器具と、前記照明器具を調光制御する制御装置と、トンネル坑口からトンネル外の所定の視距位置までの範囲において前記トンネル坑口に接近する運転者の順応輝度を計測する計測装置と、を備えた照明制御システムであって、前記制御装置は、前記計測装置が計測した順応輝度から順応曲線を求め、前記順応曲線に対応した所要路面輝度が得られるように前記照明器具を調光制御
し、前記計測装置は、前記トンネル坑口から所定の視距位置離れた位置に設けられて前記トンネル坑口周囲の画像を撮像する撮像器を有し、前記撮像器が撮像した画像における前記トンネル坑口周囲の輝度分布から等価光幕輝度及び路面輝度を算出することにより前記順応輝度を計測することを特徴とする。
【0011】
上記照明制御システムにおいて、前記計測装置は、前記トンネル坑口から前記視距位置までの間に複数設けられることが好ましい。
【0013】
上記照明制御システムにおいて、前記所定の視距位置は、前記トンネルを含む道路の設定速度に応じて設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、計測装置が計測した順応輝度に基づき、制御装置が順応曲線に対応した所要路面輝度が得られるように照明器具を調光制御するので、トンネル条件のばらつきによらず、適切なトンネル内の路面輝度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る照明制御システムの概略構成図。
【
図2】同照明制御システムの動作フローを説明する図。
【
図3】(a)は等価光幕輝度と順応輝度との関係を示す図、(b)は順応輝度と所要路面輝度との関係を示す図。
【
図4】同照明制御システムにおいて算出された順応輝度と、これに対応するトンネル内の所要路面輝度とを示す図。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る照明制御システムの概略構成図。
【
図6】(a)乃至(c)は同照明制御システムにおける画像処理による輝度計測の手順を説明するための模式図。
【
図7】標準的なトンネル坑口までの距離と順応輝度との関係を示す図。
【
図8】等価光幕輝度の角度特性を説明するための図。
【
図9】計測装置の配置と測定軸を説明するための図。
【
図10】トンネル坑口までの距離と順応輝度との関係を示す図。
【
図11】(a)は順応輝度及び所要路面輝度を説明するための側面図、(b)は同正面図。
【
図12】順応輝度と所要路面輝度との関係を示す図。
【
図14】中心窩順応輝度又は等価光幕輝度と輝度差弁別閾との関係を示す図。
【
図15】不均一な輝度分布空間における順応輝度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態に係る照明制御システムについて、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の照明制御システム1は、トンネルT内に配された複数の照明器具2と、照明器具2を調光制御する制御装置3と、トンネル坑口T0に接近する運転者の順応輝度を計測する計測装置4と、を備える。この照明制御システム1は、昼光がトンネル内部にまで差し込まない、トンネル延長が100m以上であるトンネルTの入口照明に好適に用いられる。照明器具2は、トンネルTの天井部又は隅角部に、車両走行方向に沿って所定間隔で配置される。計測装置4は、トンネル坑口T0からトンネルT外の所定の視距位置までの範囲において、トンネル坑口T0に接近する運転者の順応輝度を計測する。
【0017】
照明器具2は、制御装置3からの調光制御信号に基づき、各調光レベルを任意に制御することができる。照明器具2の光源には、例えば、制御装置3から出力された調光信号(例えばPWM信号ののオンデューティ比)に応じて、光出力を可変とすることができるLEDが用いられる。照明器具2は、少なくともトンネルT内の路面を効果的に照明できるように配置されていればよく、その配光が、道路横軸に対して対称であっても、車両進行方向(プロビーム照明)であっても、それと逆の方向(カウンタービーム照明)であってもよい。
【0018】
計測装置4は、トンネル坑口T0を含む所定視野の輝度を測定する輝度測定器41と、輝度測定器41の計測結果から等価光幕輝度等を計算する輝度計測部42と、輝度計測部42の計測結果から運転者Dの順応輝度を計測する順応輝度算出部43と、を備える。輝度測定器41は、トンネル坑口T0から所定の視距位置までの間に複数設けられている。輝度測定器41は、受光部及びグレアレンズから構成され、グレアレンズを介して受光部が受光した所定の視野角の光束を測定する。輝度計測部42は、複数の輝度測定器41から送信された計測結果から、各々の地点における等価光幕輝度を計算する。なお、順応輝度は、上述したように、等価光幕輝度だけでなく、中心窩順応輝度にも依存する。しかし、トンネル接近中の運転者の中心窩順応輝度は、運転者が主に路面を走査しながら走行する傾向があるので、実質的に路面輝度に等しい。そこで、本実施形態の順応輝度算出部43は、中心窩順応輝度に換えて、路面輝度に基づいて順応輝度を計測する。なお、路面輝度は、等価光幕輝度のように観測位置に依存しないので、例えば、トンネル坑口T0から最も離れた位置に設けられた計測装置4の全視野角の平均輝度から推定される。また、例えば、上記計測装置4との別途に設けられた水平面輝度測定器(不図示)により計測され輝度が用いられてもよい。順応輝度算出部43は、各等価光幕輝度及び路面輝度から、トンネル坑口T0から離れた夫々の視距位置における順応輝度を計測し、その計測情報を制御装置3へ送信する。
【0019】
制御装置3は、受信した計測情報に基づいて順応曲線を生成する順応曲線生成部31と、この順応曲線に対応する所要路面輝度を算出する所要路面輝度算出部32と、その所要路面輝度が得られるように各照明器具2を調光制御する照明制御部33と、を備える。
【0020】
図2に、本実施形態の照明制御システム1の動作フローを示す。照明制御システム1は、まず、計測装置4が、等価光幕輝度及び路面輝度を計測し(S1)、更に、トンネル坑口T0から離れた夫々の視距位置における順応輝度を計測する(S2)。次に、制御装置3が、順応曲線を作成し(S3)、更に所要路面輝度を計算する(S4)。そして、制御装置3の照明制御部33は、上記所要路面輝度が得られる各照明器具2(入口照明)の調光率を計算し(S5)、照明器具2を点灯制御する調光率を設定する(S6)。また、照明制御部33は、この設定がなされると、累積点灯時間をカウントし(S7)、その計時時間に応じて適宜に照明器具2の光束を減退させるか否かを判断する(S8)。
【0021】
図3(a)(b)は、上記S1において等価光幕輝度L
eqが200cd/m
2として、路面輝度L
afが5000cd/m
2として計測されたときの順応輝度L
1及び所要路面輝度L
2の算出する手順を示す。等価光幕輝度L
eq200cd/m
2、路面輝度L
af5000cd/m
2であるときの順応輝度L
1は、
図3(a)に示すように、4700cd/m
2と算出される。そして、順応輝度L
1であるときの所要路面輝度L
2は、
図3(b)に示すように、200cd/m
2と算出される。なお、
図3(b)は、上述した
図12と同様の実験条件で計測されている。また、ここで示す計算例は、国際照明委員会が推奨する値であり、国内基準に比べて2倍程度高い値となっている。従って、本実施形態の照明制御システム1を国内道路のトンネル照明に採用する際には、トンネル坑口から0mにおける所要路面輝度を国内基準の値とし、以降は順応輝度の相対値に準じて所要路面輝度を漸減させればよい。
【0022】
このようにして、トンネル坑口T0から離れた夫々の視距位置において、順応輝度L
1及び所要路面輝度L
2を測定することにより、
図4に示すような順応曲線(左上)を得ることができる。また、順応輝度L
1と所要路面輝度L
2とは概ね比例するので、入口照明におけるトンネル坑口T0から離れた夫々の路面について、順応輝度L
1に対応する所要路面輝度が設定される。そして、照明制御部33は、上記所要路面輝度が得られるように、各照明器具2の調光レベルを設定することで、ブラックホール現象を抑制するのに必要なトンネル内の路面輝度を得ることができる。従って、本実施形態によれば、制御装置3が、計測装置4が計測した順応輝度に基づき、順応曲線に対応した所要路面輝度が得られるように照明器具を調光制御するので、トンネル条件のばらつきによらず、適切なトンネル内の路面輝度を実現することができる。
【0023】
また、従来の一般的なトンネル入口照明では、照明器具が、例えば4段階(100、75、50、25%)でしか調光されなかったので、必要以上の路面輝度となり、無駄な電力消費が発生することがあった。これに対して、本実施形態においては、制御装置3が各照明器具2を漸次調光するので、無駄な電力消費を発生させることなく、必要な路面輝度を得ることができる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明制御システムについて、
図5乃至
図10を参照して説明する。
図5に示すように、本実施形態の照明制御システム1は、計測装置4の構成として、輝度測定器41に換えて、トンネル坑口T0から所定の視距位置離れた位置に設けられてトンネル坑口T0周囲の画像を撮像する撮像器44を有する。また、計測装置4は、上記実施形態の輝度計測部42に換えて、撮像器44が撮像した画像から等価光幕輝度及び路面輝度を算出する画像処理部45を有する。他の構成は、上記第1の実施形態と同様である。
【0025】
撮像器44は、
図6(a)に示すように、トンネル坑口T0周囲のデジタル画像を撮像する。画像処理部45は、このデジタル画像におけるトンネル坑口T0周囲の輝度分布から等価光幕輝度及び路面輝度を算出する。そして、
図6(b)(c)に示すように、上記デジタル画像をズームし、撮像器44とトンネル坑口T0との距離にズーム比率で除した値を視距位置に擬制して、トンネル坑口T0から離れた夫々の視距位置における等価光幕輝度及び順応輝度を算出する。
【0026】
照明制御システム1が高速道路のトンネル入口照明に適用される場合、撮像器44は、例えば、トンネル坑口から150mの地点に設けられる。ここで、
図7に、過去の調査研究(K.Narisada et al:Adaptation luminance of driver’s eyes approaching a tunnel entrance in daytime,CIE,Kyoto(1979))における、標準的なトンネル坑口までの距離と順応輝度の相対値との関係を示す。同図から、トンネル坑口までの距離が150m以上における順応輝度には、顕著な変化がないことが分かる。日本国内における車道の最高速度100k/mの条件における計測距離は160mなので、160m以上の距離における順応輝度は実用的に必要ない。従って、トンネル坑口から150mの地点における等価光幕輝度を測定すれば、トンネル坑口とそこから150m地点の間の運転者の順応輝度を推測することができる。なお、画像処理部45は、画像データから、ソフトウェアを用いて所定の路面部分を抽出して、その平均輝度を算出することで路面輝度を算出し、等価光幕輝度と同時に測定される。
【0027】
なお、等価光幕輝度は、
図8に示すような角度特性を有している。視野中心に発光部を置いたときの等価光幕輝度に比べて、例えば、視線中心から20°程度離れた位置に同一の輝度を有する発光部の等価光幕輝度は1000分の1となる。従って、画像処理における等価光幕輝度の測定に際しては、運転者の全視野の輝度分布を考慮して測定する必要はなく、視線中心から20〜30度の範囲の輝度分布を測定すれば必要十分であると推測される。
【0028】
一方、路面輝度は、俯角1°において測定するものとされていることから、
図9に示すように、測定軸が俯角1°となるように、測定する車道の範囲を設定することが望ましい。また、等価光幕輝度と同じ地点から路面輝度を測定する場合、山岳部の影の影響を考慮して坑口の手前50mより手前の路面に測定軸が交差するように測定するならば、撮像器44は、俯角1°となるように、約1.7mより低い高さに配置することが望ましい。
【0029】
このようにして、
図10に示すように、トンネル坑口までの夫々の距離における順応輝度が求められる。本実施形態においては、画像データのズームにより各輝度を算出するので、複数の輝度測定器を用いることなく、トンネル坑口と撮像器44の設置位置との間の任意の位置における等価光幕輝度及び順応輝度を算出することができる。従って、各輝度を算出する視距位置を多数設定して、詳細な順応曲線を作成することができ、より適切なトンネル内の路面輝度を得ることができる。
【0030】
なお、視距位置、つまり、トンネル坑口T0から撮像器44の設置位置までの距離は、照明制御システム1が適用されるトンネルを含む道路の設定速度に応じて設定される。例えば、道路の設定速度が80km/hであれば視距位置は110mに、道路の設定速度が100km/hであれば視距位置は160mになる。
【0031】
また、一般に、トンネル坑口に近づくほど、該当トンネルの条件により順応輝度がばらつき易いが、トンネル坑口から遠くなると、トンネルの条件によらず順応輝度はばらつき難くなる。順応距離は、各設計速度の視距に応じて求められることから、例えば、
図7に示したような、標準的なトンネル坑口からの距離に対する順応輝度を相対値に対して、下記表1に示すような変換係数を乗ずることにより、任意の位置の等価光幕輝度を推定することができる。なお、表1は、等価光幕輝度の測定位置をトンネル坑口から100mの位置としたときの、設計速度毎の等価光幕輝度の変換係数を示す。
【0033】
トンネル坑口T0から遠い位置に配置した撮像器44の画像データを、ズーム比率を高めて等価光幕輝度を算出した場合、トンネル坑口から近い位置に配置した撮像器44の画像データを用いた場合に比べて、等価光幕輝度の算出精度が低下する。撮像器44がトンネル坑口から遠いと、スモッグや粉塵等のノイズの影響が大きくなり、仮に撮像素子の解像レベルや撮像器44のレンズ性能を向上させたとしても、その影響は排除できない。従って、一般的な設定速度に応じた視距を確保できる範囲で、撮像器44の設置位置は、トンネル坑口から近いことが望ましい。
【0034】
本実施形態によれば、トンネル坑口T0から遠い位置の等価光幕輝度を推定するので、比較的、撮像器44をトンネル坑口T0の近くに配置し易くなり、等価光幕輝度の算出精度を向上させることができる。また、トンネル条件の影響を受け易いトンネル坑口T0の近くの等価光幕輝度を実測し、トンネル条件の影響を受け難いトンネル坑口T0の遠くの等価光幕輝度を推定するので、トンネルの条件によらず、いずれの視距においても適切な順応輝度を計測することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。例えば、上記第2の実施形態で説明したトンネル坑口T0から遠い位置における等価光幕輝度の推定方法は、上記第1の実施形態においても適用することができる。また、上記第1の実施形態で用いた輝度測定器41と、上記第1の実施形態で用いた撮像器44とを組み合わせて、等価光幕輝度及び順応輝度を計測してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 照明制御システム
2 照明器具
3 制御装置
4 計測装置
45 画像処理部
T トンネル
T0 トンネル坑口