特許第6018825号(P6018825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

特許6018825フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機
<>
  • 特許6018825-フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機 図000003
  • 特許6018825-フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機 図000004
  • 特許6018825-フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機 図000005
  • 特許6018825-フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機 図000006
  • 特許6018825-フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機 図000007
  • 特許6018825-フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018825
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】フレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/12 20060101AFI20161020BHJP
   B41N 6/00 20060101ALI20161020BHJP
   B41F 27/12 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B41N1/12
   B41N6/00
   B41F27/12
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-159839(P2012-159839)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-19061(P2014-19061A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田所 信彦
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4917693(JP,B2)
【文献】 特開2004−322398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/12
B41F 27/12
B41N 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の版胴の外周面に巻き付けられて使用されるシート状のフレキソ版であって、
前記版胴に巻きつけられたときの外面に印刷用の転写面が形成されたシート状の表面印刷層と、該表面印刷層の内面側に配されたシート状の内側補強層とが重ねられたシート積層体、
及び、
該シート積層体の版胴の周方向の両端部を各々保持することにより、該保持位置での前記表面印刷層と前記内側補強層との位置ずれを防止する一対の保持手段を具え、
前記シート積層体は、前記一対の保持手段の間で、前記表面印刷層と前記内側補強層とが相対位置ずれ可能な非接着状態とされているとともに、前記両端部において、前記表面印刷層と前記内側補強層とが接着されていることを特徴とするフレキソ版。
【請求項2】
前記シート積層体は、前記両端部それぞれに、貫通孔が設けられており、
前記各保持手段は、前記シート積層体の前記貫通孔に挿入されるピンを含んでいる請求項1記載のフレキソ版。
【請求項3】
前記表面印刷層の前記両端部の貫通孔間の長さL1は、前記内側補強層の前記両端部の貫通孔間の長さL2よりも大きい請求項2記載のフレキソ版。
【請求項4】
前記内側補強層は、厚さtが50〜500μmの樹脂シートからなる請求項1乃至3のいずれかに記載のフレキソ版。
【請求項5】
前記内側補強層は、厚さtが50〜00μmの金属シートからなる請求項1乃至のいずれかに記載のフレキソ版。
【請求項6】
前記版胴と、該版胴の外周面に巻きつけられた請求項1乃至5のいずれかに記載されたフレキソ版とを具えたことを特徴とするフレキソ印刷機。
【請求項7】
前記版胴の前記外周面には、前記保持手段の一方が移動不能に固着される第1固着手段と、前記保持手段の他方が前記一方の保持手段に対して接近及び離間可能に固着される第2固着手段が設けられている請求項6記載のフレキソ印刷機。
【請求項8】
前記表面印刷層の前記両端部の貫通孔間の長さL1と、前記内側補強層の前記両端部の貫通孔間の長さL2との差L3(=L1−L2)は、次式(1)を満足する請求項6又は7記載のフレキソ印刷機。
0.85 ≦ {2πt×(θ/360)}/L3 ≦ 1.15 −−−(1)
ただし、tは前記内側補強層の厚さ、θは前記版胴に前記シート積層体が巻きつけられている中心角(°)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴への巻き付けを容易にし、かつ、耐久性を向上できるフレキソ版及びこれを用いたフレキソ印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
凸版印刷の一つとして、フレキソ印刷が知られている。フレキソ印刷には、フレキソ印刷機が用いられる。該フレキソ印刷機は、版胴とフレキソ版とを具える。版胴は、略円筒状である。フレキソ版は、可撓性を有したシート状であり、版胴の外周面に巻き付けられる。フレキソ版の外側面には、印刷用の転写面が形成されている。転写面は、紙や液晶層などの被印刷物に押し付けられ、印刷が行われる。
【0003】
図6には、版胴に巻きつけられる前のフレキソ版aの長さ方向に沿った断面図が示される。このフレキソ版aは、表面印刷層bと基材cとからなるシート積層体d、及び、一対の保持手段eとを具えている(例えば下記特許文献1)。
【0004】
表面印刷層bは、外面に転写面が形成されている。転写面は、例えば、ゴムや樹脂等の弾性素材からなる。
【0005】
基材cは、表面印刷層bの内面に熱圧着等により接着されている。該基材cは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の樹脂シートで構成される。
【0006】
一対の保持手段eは、シート積層体dの長さ方向(版胴に巻きつけられたときの周方向)の両端部に固定されている。具体的には、シート積層体dは、その両端に、貫通孔fが形成されている。貫通孔fは、通常、シート積層体dの長さ方向と直交する向きに複数個設けられている。保持手段eは、貫通孔fに挿入されるピンgを具えている。保持手段eは、フレキソ版aを版胴(図示省略)に取り付け、かつ、フレキソ版aに張力を付与する金具としても用いられる。
【0007】
フレキソ印刷では、フレキソ版aが巻きつけられた版胴(図示省略)が回転させられる。被印刷物は、回転する表面印刷層bの転写面へ送られて接触する。これにより、転写面のインクや配向膜等が、被印刷物に転写される。
【0008】
【特許文献1】特許第4917693号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フレキソ印刷時、表面印刷層bと被印刷物とが接触する。このとき、フレキソ版aの表面印刷層bにせん断力が作用する。表面印刷層bと一体に接着されている基材cにもせん断力が作用する。これらのせん断力は、シート積層体dの貫通孔fや両端部を繰り返し変形させ、早期に損傷を招きやすい。
【0010】
このような実状に鑑み、内側補強層cの厚さを大きくすることにより、シート積層体dの剛性向上させることが考えられる。しかしながら、この場合、シート積層体dの曲げ剛性も高められ、フレキソ版aを版胴に巻き付けることが困難となる、又はフレキソ版aを版胴に巻き付けられなくなるおそれがある。
【0011】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたものであり、内側補強層の厚さを大きくしつつも、版胴に容易に巻き付けることができるフレキソ版及びこれを具えたフレキソ印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のうち、請求項1記載の発明は、略円筒状の版胴の外周面に巻き付けられて使用されるシート状のフレキソ版であって、前記版胴に巻きつけられたときの外面に印刷用の転写面が形成されたシート状の表面印刷層と、該表面印刷層の内面側に配されたシート状の内側補強層とが重ねられたシート積層体、及び、該シート積層体の版胴の周方向の両端部を各々保持することにより、該保持位置での前記表面印刷層と前記内側補強層との位置ずれを防止する一対の保持手段を具え、前記シート積層体は、前記一対の保持手段の間で、前記表面印刷層と前記内側補強層とが相対位置ずれ可能な非接着状態とされているとともに、前記両端部において、前記表面印刷層と前記内側補強層とが接着されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記シート積層体は、前記両端部それぞれに、貫通孔が設けられており、前記各保持手段は、前記シート積層体の前記貫通孔に挿入されるピンを含んでいる請求項1記載のフレキソ版である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記表面印刷層の前記両端部の貫通孔間の長さL1は、前記内側補強層の前記両端部の貫通孔間の長さL2よりも大きい請求項2記載のフレキソ版である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、前記内側補強層は、厚さtが50〜500μmの樹脂シートからなる請求項1乃至3のいずれかに記載のフレキソ版である。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、前記内側補強層は、厚さtが50〜00μmの金属シートからなる請求項1乃至のいずれかに記載のフレキソ版である。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、前記版胴と、該版胴の外周面に巻きつけられた請求項1乃至5のいずれかに記載されたフレキソ版とを具えたことを特徴とするフレキソ印刷機である。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、前記版胴の前記外周面には、前記保持手段の一方が移動不能に固着される第1固着手段と、前記保持手段の他方が前記一方の保持手段に対して接近及び離間可能に固着される第2固着手段が設けられている請求項6記載のフレキソ印刷機である。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、前記表面印刷層の前記両端部の貫通孔間の長さL1と、前記内側補強層の前記両端部の貫通孔間の長さL2との差L3(=L1−L2)は、次式(1)を満足する請求項6又は7記載のフレキソ印刷機である。
0.85 ≦ {2πt×(θ/360)}/L3 ≦ 1.15 −−−(1)
ただし、tは前記内側補強層の厚さ、θは前記版胴に前記シート積層体が巻きつけられている中心角(°)である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフレキソ版のシート積層体は、一対の保持手段の間で、表面印刷層と内側補強層とが相対位置ずれ可能な非接着状態とされる。このため、フレキソ版を版胴に巻き付ける際に、表面印刷層と内側補強層とは、相互にずれが生じ、シート積層体全体の剛性を過度に高めることがない。よって、従来に比して、小さな力でフレキソ版を版胴へ容易に巻き付けることができる。また、例えば、内側補強層の厚さを大きくし、内側補強層の耐久性を向上しつつも、フレキソ版を版胴に巻き付けることができる。即ち、本発明のフレキソ版は、シート積層体の耐久性を飛躍的に向上でき、かつ、版胴に容易に巻き付けることができる。
【0021】
また、本発明によれば、表面印刷層と内側補強層とは、非接着状態である。このため、表面印刷層又は内側補強層に変形や損傷が生じた場合、保持手段を外し、いずれか一方の層のみを交換することが可能になる。この結果、フレキソ印刷機のメンテナンスコストが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態が示されるフレキソ印刷機の断面図である。
図2図1の版胴が示される斜視図である。
図3】版胴の要部が示される一部拡大斜視図である。
図4図1のフレキソ版を展開した断面図である。
図5】版胴に巻き付けられたフレキソ版の部分拡大断面図である。
図6】従来のフレキソ版の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のフレキソ版2を用いたフレキソ印刷機1の概略断面図である。図1に示されるように、フレキソ印刷機1は、版胴3と、フレキソ版2とを具える。版胴3は、略円筒状に形成される。フレキソ版2は、版胴3の外周面Sに巻き付けられて使用される。
【0024】
本実施形態では、フレキソ印刷機1は、インクパン4と、インク出しローラ5と、アニロックスローラ6と、圧胴7とをさらに具える。インクパン4は、内部がインクに満たされた容器である。インク出しローラ5は、その外表面の一部が、インクパン4のインクと接している。このため、インクパン4のインクは、インク出しローラ5の回転により、インクパン4から取り出される。アニロックスローラ6は、その外表面の一部が、インク出しローラ5の外表面と接している。アニロックスローラ6は、その外表面の他の一部が、版胴3のフレキソ版2と接している。このため、インク出しローラ5のインクは、回転するアニロックスローラ6を介して、版胴3のフレキソ版2へと供給される。版胴3と圧胴7との間を通過する被印刷物8は、圧胴7により版胴3側へと押し付けられる。
【0025】
フレキソ版2に供給されたインクは、版胴3の周方向Fの回転により被印刷物8へ転写される。なお、アニロックスローラ6は、フレキソ版2に供給するインクの量を調整する適宜の手段を有する。該手段は、例えば、アニロックスローラ6の外表面に近接する長尺なブレード(図示省略)等であればよい。
【0026】
図2又は図3に示されるように、版胴3の外周面Sには、取付け凹部10が形成されている。該取付け凹部10は、版胴3の軸方向Gにのびる溝状に形成される。取付け凹部10には、フレキソ版2の一端が固着される第1固着手段11と、フレキソ版2の他端が固着される第2固着手段12とが設けられる。
【0027】
第1固着手段11は、取付け凹部10の周方向Fの一方側に設けられる。フレキソ版2の一端は、例えば、第1固着手段11に、移動不能に固着される。本実施形態では、第1固着手段11は、取付け凹部10の底面10aに形成された軸方向Gに長いブロック状である。フレキソ版2の一端は、例えば、複数のボルトにより、第1固着手段11に固着される。
【0028】
第2固着手段12は、取付け凹部10の周方向Fの他方側に設けられる。フレキソ版2の他端は、例えば、第2固着手段12に、フレキソ版2の一端と近接及び離間可能に固着される。本実施形態では、第2固着手段12は、取付け凹部10の底面10aに形成された案内レール13と、該案内レール13に案内される軸方向Gに長いブロック14と、該ブロック14を介してフレキソ版2に張力を付与する張力付与手段15とを含む。フレキソ版2の他端は、例えば、複数のボルトにより、ブロック14に固着される。
【0029】
ブロック14は、案内レール13により、取付け凹部10の底面10a上で周方向Fに沿って案内される。本実施形態では、案内レール13は、ブロック14が案内レール13から外れないよう把持するストッパ(図示省略)を含む。
【0030】
張力付与手段15は、例えば、シリンダ15aと、該シリンダ15aの内側に向かって付勢されたロッド15bとを含む。図3に示されるように。張力付与手段15は、案内レール13より取付け凹部10の内側において、シリンダ15aの後端が取付け凹部10の底面10aに固着される。また、ロッド15bの先端は、ブロック14に固着される。このため、ブロック14は、案内レール13に沿って取付け凹部10の内方に向かって付勢される。なお、ブロック14は、軸方向Gの長さ20mmあたり、0.3〜0.5MPaの張力で付勢されるのが望ましい。
【0031】
図3又は図4に示されるように、フレキソ版2は、シート状の表面印刷層18とシート状の内側補強層19とが重ねられたシート積層体20、及び、該シート積層体20の両端部20a、20bを各々保持する一対の保持手段21を具える。
【0032】
表面印刷層18は、本実施形態では、印刷用の転写面17aを有する転写層17と、該転写層17の内面側に固着される基材22とを含む。該基材22は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の樹脂から可撓性を有するシート状に形成される。また、基材22は、転写層17の内面に、例えば、熱圧着等により接着される。このため、基材22と転写層17とは、相対的な位置ずれがなく一体に固着される。
【0033】
転写層17は、例えば、基材22よりも伸びが大きい材料から形成される。転写層17は、例えば、ゴムやウレタン樹脂等の弾性材を用いてシート状に形成される。転写層17は、被印刷物8と接するため、基材22より柔らかな素材であるのが望ましい。また、転写層17は、版胴3に巻き付けられたとき、表面印刷層18の外面側に形成される。該転写層17の外面には、被印刷物8に転写される形状の印刷用凸部が形成される。
【0034】
内側補強層19は、樹脂や金属箔等の材料から、可撓性を有するシート状に形成される。内側補強層19は、例えば、PETやPP等の樹脂、又は、SUS(ステンレス鋼)等の金属箔の材料からなる。また、内側補強層19は、表面印刷層18の内面側、即ち基材22側に配される。なお、内側補強層19は、基材22と同等又はより伸びが小さい材料であるのが好ましい。
【0035】
シート積層体20は、一対の保持手段21の間で、表面印刷層18と内側補強層19とが非接着状態とされる。表面印刷層18と内側補強層19とは、周方向Fに相対的な位置ずれが可能である。このため、フレキソ版2を版胴3に巻き付ける際に、表面印刷層18と内側補強層19とは、互いにずれが生じ、シート積層体20全体の曲げ剛性を過度に高めることがない。よって、従来に比して、小さな力でフレキソ版2を版胴3へ容易に巻き付けることができる。また、内側補強層19の厚さを大きくし、内側補強層19の耐久性を向上しつつ、フレキソ版2を版胴3に巻き付けることができる。即ち、本実施形態のフレキソ版2は、シート積層体20の耐久性を飛躍的に向上でき、かつ、版胴3に容易に巻き付けることができる。
【0036】
表面印刷層18と内側補強層19とが、非接着状態とされている。このため、表面印刷層18又は内側補強層19に変形や損傷が生じた場合、保持手段21を外し、いずれか一方の層18又は19のみを交換することが可能である。このため、フレキソ印刷機1のメンテナンスコストが軽減される。
【0037】
シート積層体20の各端部20a、20bは、それぞれ保持手段21により保持される。このため、表面印刷層18と内側補強層19とは、保持位置Pでの相対的な位置ずれが防止される。なお、保持位置Pとは、シート積層体20の各端部20a、20bにおいて、各保持手段21に保持される表面印刷層18及び内側補強層19の位置を意味する。
【0038】
シート積層体20の端部20a及び20bは、例えば、接着剤等の接着層29により、予め接着されてもよい。このようなシート積層体20では、表面印刷層18と内側補強層19とは、保持位置Pでの位置ずれがより確実に防止される。
【0039】
シート積層体20は、端部20a及び20bそれぞれに、貫通孔23が設けられる。
【0040】
貫通孔23は、シート積層体20の軸方向Gの長さ、及びフレキソ版2にかかる荷重にもよるが、軸方向Gに複数形成されるのが好ましい。例えば、貫通孔23は、各端部20a及び20bに、それぞれ軸方向Gに25〜35個形成される。貫通孔23の数が少ない場合、1個の貫通孔23に作用する荷重が大きく、該貫通孔23が早期に変形するおそれがある。貫通孔23の数が多い場合、各貫通孔23に作用する荷重は分散されるが、内側補強層19の貫通孔23が形成された軸方向Gの強度が減少する。
【0041】
図4に示されるように、シート積層体20において、内側補強層19の厚さtは、50〜500μmであるのが望ましい。内側補強層19の厚さtが、50μmより小さい場合、内側補強層19によるシート積層体20の補強効果が十分に得られない。また、内側補強層19の厚さtが、500μmより大きい場合、シート積層体20の剛性が大きくなり、シート積層体20が撓みにくくなるので、フレキソ版2を版胴3へ巻き付けるのが困難になる。内側補強層19がPET又はPP等の樹脂から形成される場合、その厚さtは、188〜500μmであるのがより好ましい。また、内側補強層19がSUS等の金属箔から形成される場合、その厚さtは、50〜200μmであるのがより好ましい。
【0042】
シート積層体20は、表面印刷層18の周方向Fの貫通孔23間の長さL1が、内側補強層19の周方向Fの貫通孔23間の長さL2よりも大きく形成されるのが好ましい。このようなシート積層体20は、版胴3に巻き付けられた際に、内側補強層19のだぶつきが抑制される。
【0043】
図4又は図5に示されるように、シート積層体20は、例えば、表面印刷層18の貫通孔23間の長さL1と内側補強層19の貫通孔23間の長さL2との差L3(=L1−L2)が、次式(1)を満足するのが望ましい。
0.85 ≦ {2πt×(θ/360)}/L3 ≦ 1.15−−−(1)
ただし、tは内側補強層19の厚さ、θはシート積層体20が版胴3に巻き付けられている中心角(°)である。
【0044】
(1)式において、2πtとは、厚さtの内側補強層19を有するフレキソ版2が、円筒の外周面に1周だけ巻き付けられた場合、表面印刷層18と内側補強層19とに生じる周方向Fの長さの差である。本実施形態では、版胴3が取付け凹部10を有するため、フレキソ版2は、版胴3に角度θ°だけ巻き付けられる。ひいては表面印刷層18の貫通孔23間の長さL1と内側補強層19の貫通孔23間の長さL2との差L3は、{2πt×(θ/360)}により算出される。
【0045】
上記式(1)を満足するシート積層体20は、表面印刷層18の長さL1を、内側補強層19の長さL2よりも予め大きく形成することにより、フレキソ版2が版胴3に巻き付けられた際の表面印刷層18又は内側補強層19のだぶつきがより確実に抑制される。
【0046】
図4に示されるように、保持手段21は、本実施形態では、上部ブロック25と、下部ブロック26と、中間ブロック27とを含むバイスであり、版胴3の軸方向Gに沿って長尺な断面略U字状である。
【0047】
下部ブロック26は、第1固着手段11又は第2固着手段12のブロック14の上部に固着される。上部ブロック25は、下部ブロック26の上面26aに対向する下面25aを具える。中間ブロック27は、上部ブロック25及び下部ブロック26の間で、上面26aと下面25a間の距離を調整する。上部ブロック25は、例えば、ボルトにより、中間ブロック27を介して下部ブロック26に固着される。なお、上面26aと下面25a間の距離は、例えば、シート積層体20の厚さよりも小さく調整され、上面26aと下面25a間でシート積層体20を圧縮して保持するのが望ましい。
【0048】
また、下部ブロック26の上面26aには、複数のピン28が、軸方向Gに沿って形成される。各ピン28は、シート積層体20の貫通孔23に挿入される。また、ピン28の頂部は、例えば、上部ブロック25に形成された孔部に嵌合される。なお、ピン28は、例えば、下部ブロック26に形成された孔部に、長尺なピンが嵌合されて形成されてもよい。
【0049】
保持手段21は、各ピン28がシート積層体20の各貫通孔23に挿入されることにより、表面印刷層18と内側補強層19との保持位置Pでの位置ずれを、より確実に防止することができる。
【0050】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。本実施形態では、表面印刷層18に非接着状態の1つの内側補強層19が示された。該内側補強層19は、例えば、第1の内側補強層と、その内側に隣り合う非接着状態の第2の内側補強層とからなるものであってもよい。この場合、第1の内側補強層及び第2の内側補強層の貫通孔間の長さの差をXとし、第2の内側補強層の厚さをYとしたとき、該Xが下記式(2)を満足する。即ち、下記式(2)を満足するシート積層体20は、内側補強層の内側に、さらに複数の内側補強層を設けることもできる。
0.85 ≦ {2πY×(θ/360)}/X ≦ 1.15−−−(
ただし、Yは第2の内側補強層の厚さ、θはシート積層体20が版胴3に巻き付けられている中心角(°)である。
【実施例】
【0051】
本発明の効果を確認するため、図4に示される基本構造をなすフレキソ版が、各仕様に基づいて試作された。そして、これら試作フレキソ版がテスト用フレキソ印刷機の版胴に巻き付けられテストされた。表1には、フレキソ版を版胴に巻き付ける際の容易性、及び、印刷時の貫通孔の耐久性が示される。なお、各フレキソ版には、材質がPET、その厚さが438μmの基材が用いられた。
【0052】
また、比較例として、図6に示される基本構造をなすフレキソ版が、各仕様に基づいて試作され、本発明のフレキソ版と同様のテストがされた。各比較例のフレキソ版は、内側補強層を有しておらず、また、基材の材質がPETである。
【0053】
なお、各実施例及び各比較例の共通仕様は以下の通りである。
版胴の直径 : 722.9mm
版胴の軸方向の長さ : 1600mm
フレキソ版が巻き付けられる角度θ : 322°
テスト印刷機:ナカンテクノ社製配向膜印刷機(G6サイズ)
テスト方法は、次の通りである。
【0054】
<版胴への巻き付け容易性>
フレキソ版を版胴に巻き付けることが可能であるかが評価された。結果は、版胴への巻き付けが可能であったフレキソ版を「可」と示し、版胴への巻き付けが不可能であったフレキソ版は「不可」と示す。
【0055】
<貫通孔の耐久性>
上記条件にて、フレキソ印刷が行われ、フレキソ版の貫通孔が破損するまでの印刷回数が測定された。そして、該印刷回数に基づくフレキソ版の貫通孔の耐久性が評価された。結果は、比較例1のフレキソ版の印刷回数を基準とする比較であり、「△」は比較例1との差が無く、「○」は比較例1の1.2倍以上、「◎」は比較例1の1.5倍以上良好であることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0056】
【表1】
【0057】
テストの結果、実施例のフレキソ版は、版胴に巻き付けることができ、かつ、貫通孔の耐久性が飛躍的に向上し、ひいてはフレキソ版の耐久性が飛躍的に向上しているのが確認できた。
【符号の説明】
【0058】
1 フレキソ印刷機
2 フレキソ版
3 版胴
8 被印刷物
10 取付け凹部
11 第1固着手段
12 第2固着手段
17 転写層
18 表面印刷層
19 内側補強層
20 シート積層体
21 保持手段
23 貫通孔
28 ピン
29 接着層
F 周方向
G 軸方向
S 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6