(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱ローラ及び前記加圧ローラそれぞれは、荷重を受けて前記定着ローラに圧接されており、前記加圧ローラが受ける荷重は、前記加熱ローラが受ける荷重より大きいことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の定着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本願の発明者は、未定着トナーの記録媒体への定着性について鋭意研究した結果、上記の特許文献1に記載された定着装置のように加圧ローラの表面を補助的に加熱した場合でも、定着ローラ及び加圧ローラのニップ部に複数の記録媒体を連続して通過させると、未定着トナーの記録媒体への定着性が悪化する問題が生じることを新たに見出した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、記録媒体に担持された未定着トナーの、記録媒体への定着性を向上させることが可能な定着装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の定着装置は、芯金と、前記芯金の周囲に形成された断熱層、及び当該断熱層の周囲に形成された熱保持層からなる弾性層とを有する定着ローラと、前記定着ローラの表面に接触し、内部に第1ヒータを有する加熱ローラと、前記定着ローラに圧接して当該定着ローラとでニップ部を形成し、内部に第2ヒータを有する加圧ローラと、前記第1ヒータ及び前記第2ヒータそれぞれに供給する供給電力を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記第1ヒータに電力を供給して前記定着ローラを前記加熱ローラにより加熱し、且つ、前記第2ヒータに電力を供給して前記加圧ローラを内部から加熱することで、前記ニップ部を通過する記録媒体に担持された未定着トナーを当該記録媒体に定着させる定着装置であって、前記制御手段は、前記第1ヒータへの供給電力
PW1を前記加熱ローラの熱容量で除算した値をW1とし、前記第2ヒータへの供給電力
PW2を前記加圧ローラの熱容量で除算した値をW2としたとき、前記未定着トナーを記録媒体に定着させる定着動作時において、前記定着ローラの温度が前記未定着トナーを溶融可能な温度に維持されるようにするとともに、
前記供給電力PW2が前記供給電力PW1の1倍以上2倍以下で、且つ、前記W2が前記W1の0.75倍以上
1.5倍以下となるように、前記第1ヒータ及び前記第2ヒータそれぞれに供給する供給電力を制御することを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、記録媒体による、定着ローラ及び加圧ローラの表面温度の低下幅を小さくすることができる。その結果、未定着トナーの記録媒体への定着性を向上させることができる。
【0009】
加えて、前記W2が前記W1の1.5倍以下であ
るため、未定着トナーを確実に溶融させることができる。
【0010】
また、本発明の定着装置においては、前記熱保持層の厚みが、前記断熱層の厚みよりも小さくていてもよい。これにより、定着ローラの表面温度を効率良く昇温させることができる。
【0011】
また、本発明の定着装置においては、前記断熱層がスポンジゴム層であり、前記熱保持層がソリッドゴム層であってもよい。これにより、定着ローラの表面温度を効率良く昇温させることができ、且つ、定着動作時の表面温度の低下幅を小さくすることができる。
【0012】
また、本発明の定着装置において、前記定着ローラは、その表面に、前記熱保持層よりも小さい厚みのフッ素系保護層が形成されていてもよい。これにより、トナーに対する離型性を良くすることができるので、定着ローラの表面が汚れることがない。
【0013】
また、本発明の定着装置において、前記加熱ローラ及び前記加圧ローラそれぞれは、荷重を受けて前記定着ローラに圧接されており、前記加圧ローラが受ける荷重は、前記加熱ローラが受ける荷重より大きくてもよい。加圧ローラと加熱ローラとの間に形成されるニップ部のニップ幅を広くすることができる。その結果、定着ローラや加圧ローラが、ニップ部を通過する記録媒体や、当該記録媒体に担持された未定着トナーに対して熱を与える時間を長くすることができる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、上述した何れかの定着装置を備えている。この場合においても、上述の効果を奏することができる
【発明の効果】
【0015】
記録媒体に担持された未定着トナーの、記録媒体への定着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
先ず、
図1を参照し、画像形成装置101の全体構成について説明する。画像形成装置101は、たとえばネットワーク上のPC等の端末装置から送信される画像データなどに基づいて、記録媒体である用紙Pに対して多色又は単色の画像を形成する装置である。画像形成装置101は、給紙機構20、搬送機構30、排紙トレイ40、4つのトナー像形成ユニット50a〜50d(以下、総称して「トナー像形成ユニット50」と称すこともある)、及び定着装置100を備えている。
【0019】
給紙機構20は、複数の用紙Pを収納可能であり、最も上方にある用紙Pを搬送機構30に給紙する。搬送機構30は、給紙機構20から給紙された用紙Pを搬送方向に搬送するものであり、駆動ローラ31、従動ローラ32、及びこれらの両ローラ31,32間に架け渡されるように巻回された無端状の搬送ベルト33を備えている。駆動ローラ31は、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで回転する。従動ローラ32は、駆動ローラ31の回転により搬送ベルト33が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト33の外周面に載置された用紙Pは、
図1右方へと搬送される。
【0020】
トナー像形成ユニット50各々は、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及びシアン(C)の4色にそれぞれ対応し、用紙Pの搬送方向に沿って所定間隔隔てて並設されている。搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのトナー像形成ユニット50のすぐ下方を通過する際に、各トナー像形成ユニット50は用紙Pの上面に各色のトナー像を転写する。トナー像は、たとえば非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、および磁性現像剤(磁性トナー)などの現像剤(以下、「トナー」とも称する)Tによって形成される。
【0021】
トナー像形成ユニット50各々は、それぞれ略同一の構成を有し、それぞれに、感光体ドラム51、帯電器52、レーザ光照射手段53、現像器54、転写ローラ55、及び清掃ユニット56が設けられている。
【0022】
感光体ドラム51は、形成される画像を担持するものである。帯電器52は、感光体ドラム51の表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。レーザ光照射手段53は、画像形成装置101に入力された画像データに応じて、帯電器52によって帯電した感光体ドラム51の表面を露光して、該感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する。現像器54は、感光体ドラム51の表面に形成された静電潜像を、各色のトナーTによって顕像化する。転写ローラ55は、トナーTとは逆極性のバイアス電圧が印加されており、搬送機構30によって搬送された用紙Pに、形成されたトナー像を転写させる。清掃ユニット56は、現像器54での現像処理、および、感光体ドラム51に形成された画像の転写後に、感光体ドラム51の表面に残留したトナーTを、除去・回収する。
【0023】
トナー像形成ユニット50各々によりトナー像が転写された用紙P(未定着トナーTが担持された用紙P)は、搬送機構30によってさらに
図1右方に搬送され、定着装置100に到達する。定着装置100は、用紙Pに適度な熱と圧力とを与えて、用紙Pに担持された未定着トナーTを溶融して熱定着させる。この後、用紙Pは排紙トレイ40に排出される。
【0024】
次に、定着装置100について、
図2を参照しつつ説明する。定着装置100は、未定着トナーTを担持した用紙Pに対して、熱および圧力により未定着トナーTを溶融して用紙P上に定着させるものである。
【0025】
定着装置100は、定着ローラ60、加圧ローラ70、加熱ローラ80、これらローラ60,70,80各々の温度を検出する温度センサ90a〜90c、電源PW、駆動モータTR1,TR2及び定着装置100全体の動作を司る制御装置95を備えている。なお、本実施形態においては、定着ローラ60の内部には発熱源が設けられておらず、定着ローラ60の表面は、加熱ローラ80や加圧ローラ70によって加熱される。
【0026】
定着ローラ60は、定着部材であって、その内側から順に、芯金61、弾性層62、および保護層63が形成された3層構造からなる。芯金61には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属、またはそれらの合金等が用いられる。弾性層62は芯金61の周囲に形成されており、内層を断熱層62aとし、外層を熱保持層62bとした2層構造からなる。本実施形態においては、断熱層62aとしてスポンジゴム層、熱保持層62bとしてソリッドゴム層が用いられている。
【0027】
ここで、弾性層62を2層構造にし、内層をスポンジゴム層である断熱層62aとし、外層をソリッドゴム層である熱保持層62bとした理由について説明する。弾性層62がスポンジゴム層だけの場合には、用紙Pが後述のニップ部Ndを通過したとき、スポンジゴム層の空胞部分で圧抜けを起こす虞があり、また、スポンジゴム層自体の密度が低いため熱容量が小さくなりすぎて用紙Pをニップしたときに定着ローラ60の表面温度が下がりすぎて定着性が悪化する虞がある。一方、断熱層62の内層がスポンジゴム層であっても外層がソリッドゴム層であればソリッドゴム層の抗力でスポンジゴム層の圧抜けを防止でき、また、ソリッドゴムはスポンジと比べて熱容量が大きいので、定着ローラ60の表面温度が極端に低下することを防止できるためである。また、弾性層62を全てソリッドゴム層にした場合には熱容量が大きくなりすぎて、定着ローラ60の表面の昇温時間が長くなってしまうためである。
【0028】
また、熱保持層62bの厚みは、断熱層62aの厚みよりも小さくされている。これにより、定着ローラ60の表面温度を効率良く昇温することができる。
【0029】
保護層63は、フッ素系樹脂からなるフッ素系保護層である。このように、保護層63としてフッ素系保護層を用いることで、トナーTに対する離型性を良くすることができるので、その結果として、定着ローラ60の表面が汚れることを防ぐことができる。
【0030】
加圧ローラ70は、その内側から順に、中空状筒体の金属性芯材71、及び保護層72が形成された2層構造からなる。金属性芯材71は、例えばアルミニウムや鉄系材料からなる。保護層72は、フッ素系樹脂からなるフッ素系保護層である。
【0031】
また、金属性芯材71の内部には、加圧ローラ70を加熱する第2ハロゲンヒータ73(第2ヒータ)が配置されている。第2ハロゲンヒータ73は、制御装置95による制御の下、電源PWから電力が供給されることによって、赤外線を放射する。これによって、金属性芯材71の内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ70の表面全体が加熱される。
【0032】
加熱ローラ80は、定着ローラ60の外周面に接触して、当該定着ローラ60加熱するものであって、加圧ローラ70と同様に、その内側から順に、中空状筒体の金属性芯材81、及び保護層82が形成された2層構造からなる。金属性芯材81は、例えばアルミニウムや鉄系材料からなる。保護層82は、フッ素系樹脂からなるフッ素系保護層である。
【0033】
また、金属性芯材81の内部には、加熱ローラ80を加熱する第1ハロゲンヒータ83(第1ヒータ)が配置されている。第1ハロゲンヒータ83は、制御装置95による制御の下、電源PWから電力が供給されることによって、赤外線を放射する。これによって、金属性芯材81の内周面が赤外線を吸収して加熱され、加熱ローラ80の表面全体が加熱される。
【0034】
加圧ローラ70は、圧接機構(不図示)により荷重を受けて定着ローラ60に圧接されており、定着ローラ60とでニップ部(圧接部)Ndを形成している。また、加熱ローラ80は、圧接機構(不図示)により荷重を受けて定着ローラ60に圧接されており、定着ローラ60とでニップ部Npを形成している。
【0035】
ここで、加圧ローラ70が圧接機構により受ける荷重は、加熱ローラ80が圧接機構により受ける荷重よりも大きい。これにより、定着ローラ60と加圧ローラ70の間に形成されるニップ部Ndのニップ幅を広くすることができる。その結果、定着動作時において、定着ローラ60や加圧ローラ70が、ニップ部Ndを通過する用紙Pや、当該用紙Pに担持された未定着トナーTに対して熱を与える時間を長くすることができる。なお、用紙Pがニップ部Ndを通過するときには、定着ローラ60は用紙Pのトナー像形成面に当接し、加圧ローラ70は用紙Pにおけるトナー像形成面とは反対の面に当接するように構成されている。
【0036】
また、加圧ローラ70は駆動モータTR1に接続されており、加熱ローラ80は駆動モータTR2に接続されている。制御装置95による制御の下、駆動モータTR1,TR2それぞれが駆動されることで、加圧ローラ70及び加熱ローラ80は回転駆動する。定着ローラ60は、この加圧ローラ70及び加熱ローラ80の回転駆動に伴い従動回転する。
【0037】
定着ローラ60、加圧ローラ70、及び加熱ローラ80の外周面には、サーミスタ等の温度センサ90a〜90cがそれぞれ配設されており、各ローラ60,70,80の表面温度を検出する。各温度センサ90a〜90cは、検出した表面温度のデータを制御装置95に出力する。
【0038】
制御装置95は、駆動モータTR1,TR2、及び、電源PWを制御する。具体的には、制御装置95は、定着動作前のウォームアップ動作時には、第2ハロゲンヒータ73,83に電力が供給されるように電源PWを制御し、加圧ローラ70、及び加熱ローラ80の表面温度をそれぞれの目標温度まで昇温させる。また、制御装置95は、加圧ローラ70及び加熱ローラ80が回転駆動されるように、駆動モータTR1,TR2を制御する。これにより、定着ローラ60が回転されながら、加圧ローラ70、及び加熱ローラ80により加熱されるので、当該定着ローラ60の表面全体に亘り均一に昇温される。そして、制御装置95は、温度センサ90aにより検出される定着ローラ60の表面温度が目標温度に達すると、定着動作を開始する。
【0039】
制御装置95は、定着動作では、用紙Pが所定の搬送速度でニップ部Ndを通過するように、駆動モータTR1,TR2を制御する。また、制御装置95は、各温度センサ90a〜90cの検出結果に基づいて、各ローラ60,70,80の表面温度が目標温度に維持されるように、電源PWを制御する。
【0040】
以下、具体的に、制御装置95の電源PWの制御方法について説明する。加圧ローラ70、及び加熱ローラ80の目標温度は、定着ローラ60の目標温度よりも高く設定されている。そして、制御装置95は、温度センサ90bにより検出される加圧ローラ70の表面温度が、当該加圧ローラ70の目標温度未満の場合には第2ハロゲンヒータ73に電力を供給するオン動作を行うよう電源PWを制御し、目標温度以上の場合には第2ハロゲンヒータ73に電力を供給しないオフ動作を行うよう電源PWを制御する。ここで、本実施形態において、「オン動作」とは、当該動作中に第2ハロゲンヒータ73に常に通電を行う動作ではなく、動作中の或る一定時間(以下、通電時間)は第2ハロゲンヒータ73に通電をし、残りの時間(以下、非通電時間)は通電をしないデューティ比制御を行う動作である。また、「オフ動作」とは、当該動作中に第2ハロゲンヒータ73に通電を一切行わない動作である。
【0041】
制御装置95は、同様に、温度センサ90cにより検出される加熱ローラ80の表面温度が、加熱ローラ80の目標温度未満の場合には第1ハロゲンヒータ83に電力を供給するオン動作を行うよう電源PWを制御し、目標温度以上の場合には第1ハロゲンヒータ83に電力を供給しないオフ動作を行うよう電源PWを制御する。加圧ローラ70の表面温度、及び加熱ローラ80の表面温度がそれぞれ目標温度に達することで、定着ローラ60の表面温度が目標温度に達することになる。
【0042】
また、電源PWには、出力可能な最大出力電力(本実施形態においては1200W)が存在する。制御装置95は、電源PWを制御して、当該最大出力電力を、第2ハロゲンヒータ73及び第1ハロゲンヒータ83に分配して供給する制御を行う。具体的には、制御装置95は、第2ハロゲンヒータ73,83それぞれに係るオン動作時における通電時間と非通電時間との比率を変えることで、第2ハロゲンヒータ73に供給する供給電力と第1ハロゲンヒータ83に供給する供給電力を調節する。例えば、第2ハロゲンヒータ73に係るオン動作の非通電時間に対する通電時間の比率を、第1ハロゲンヒータ83に係るオン動作の非通電時間に対する通電時間の比率の2倍にすることで、第2ハロゲンヒータ73に供給する供給電力を第1ハロゲンヒータ83に供給する供給電力の2倍にすることができる。
【0043】
本実施形態においては、制御装置95は、第1ハロゲンヒータ83への供給電力を加熱ローラ80の熱容量で除算した値をW1とし、第2ハロゲンヒータ73への供給電力を加圧ローラ70の熱容量で除算した値をW2としたとき、定着動作時において、定着ローラ60の表面温度が未定着トナーTを溶融可能な温度に維持されるようにするとともに、W2がW1の0.75倍以上となるように、電源PWを制御する。
【0044】
次に、折り曲げ試験を行って、本実施形態に係る定着装置の技術的効果を検証した。
【0045】
(実施例1)
本実施形態に係る実施例1について説明する。実施例1に係る折り曲げ試験は、下記の方法で行った。
まず。定着ローラ60の表面温度が常温(約26〜28℃)になっている状態から、ウォームアップ動作を開始した。このウォームアップ動作における、第2ハロゲンヒータ73及び第1ハロゲンヒータ83への供給電力は共に600Wに設定した。その後、定着ローラ60の表面温度が目標温度である190℃に達すると、ウォーミング動作を終了して定着動作を開始した。実施例1では、ウォームアップ動作開始から約27秒後に定着ローラ60の表面温度が目標温度に達した。
【0046】
定着動作では、重合トナー4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブロック)により黒ベタの画像が形成された10枚の用紙Pをニップ部Ndに連続通紙した。この定着動作における、第2ハロゲンヒータ73及び第1ハロゲンヒータ83への供給電力は共に600Wに設定した。なお、この第2ハロゲンヒータ73及び第1ハロゲンヒータ83の供給電力は、定着動作中(連続通紙中)において、定着ローラ60の表面温度が未定着トナーTを溶融可能な温度に維持することができる電力である。実施例1では、ウォームアップ動作開始から約37秒後に、ニップ部Ndへの連続通紙を開始し、ウォームアップ動作開始から約54秒後に連続通紙が終了した。
【0047】
下記に、ウォームアップ動作時及び定着動作時におけるその他の試験条件を示す。
【0048】
「試験条件」
<定着ローラ>
定着ローラの直径:30mm
芯金の直径:18mm
断熱層(スポンジゴム層)の厚み:4mm
熱保持層(ソリッドゴム層)の厚み:2mm
保護層(フッ素系保護層):0.05mm
定着ローラの目標温度:190℃
<加熱ローラ>
加熱ローラの直径:30mm
金属性芯材:中空アルミ素管(厚み0.3mm)
保護層(フッ素系保護層):0.05mm
加熱ローラの熱容量:17.60J/℃
加熱ローラが受ける荷重:5kg
加熱ローラの目標温度:210℃
加熱ローラの線速度:195mm/sec
<加圧ローラ>
加圧ローラの直径:30mm
金属性芯材:中空アルミ素管(厚み0.4mm)
保護層(フッ素系保護層):0.05mm
加圧ローラの熱容量:23.60J/℃
加圧ローラが受ける荷重:15kg
加圧ローラの目標温度:210℃
加圧ローラの線速度:195mm/sec
<用紙>
用紙の種類:A4サイズの普通紙(坪量64g/m
2)
用紙の通紙速度:用紙縦送りで34枚/min
【0049】
上記の定着動作により定着された連続通紙サンプル各々を、画像形成部分を内側にして折り曲げた。そして、連続通紙サンプル各々の折り曲げた部分におけるトナーの剥離率をあらかじめ作成した見本サンプルと比較して求め、そのトナーの剥離率を定量化することで定着性を評価した。実施例1に係るウォーミング動作開始時からの、定着ローラ60、加圧ローラ70、及び加熱ローラ80それぞれの表面温度の変化を
図3に示す。
【0050】
(実施例2)
実施例2に係る折り曲げ試験は、定着動作における、第2ハロゲンヒータ73の供給電力を
800W、第1ハロゲンヒータ83の供給電力を
400Wとした以外、実施例1と同様にして行った。なお、実施例2においても、第2ハロゲンヒータ73及び第1ハロゲンヒータ83の供給電力は、定着動作中において、定着ローラ60の表面温度が未定着トナーTを溶融可能な温度に維持することができる電力である。実施例2のウォーミング動作開始時からの、定着ローラ60、加圧ローラ70、及び加熱ローラ80それぞれの表面温度の変化を
図4に示す。
【0051】
(比較例)
比較例に係る折り曲げ試験は、定着動作における、第2ハロゲンヒータ73の供給電力を
400W、第1ハロゲンヒータ83の供給電力を
800Wとした以外、実施例1と同様にして行った。なお、比較例においても、第2ハロゲンヒータ73及び第1ハロゲンヒータ83の供給電力は、定着動作中において、定着ローラ60の表面温度が未定着トナーTを溶融可能な温度に維持することができる電力である。比較例のウォーミング動作開始時からの、定着ローラ60、加圧ローラ70、及び加熱ローラ80それぞれの表面温度の変化を
図5に示す。
【0052】
実施例1、実施例2、及び比較例の折り曲げ試験の結果を表1に示す。表1において、定着性は、数値が小さいほど優れることを示す。また、表中の「W2/W1」の数値は、W2がW1の何倍かを示す数値である。なお、上記のように、加熱ローラ80の熱容量と加圧ローラ70の熱容量との比率は、約3対4となっている。また、加熱ローラ80の保護層82、及び加圧ローラ70の保護層72の熱容量は、それぞれの金属性芯材71,81の熱容量と比べて無視できるほど極めて小さい。
【0054】
表1に示すように、実施例1及び実施例2では、連続通紙における1枚目から10枚目までの用紙Pにおいて、定着性に関する数値が低く定着性が優れていた。これに対して、比較例では、連続通紙における2枚目までの用紙Pについては、定着性に関する数値が低く定着性は優れているものの、3枚目以降の用紙Pについては、定着性に関する数値が高く、定着性が悪化した。この理由について、以下に説明する。
【0055】
図3〜
図5に示すように、連続通紙時において、用紙Pに熱が直接奪われることがない加熱ローラ80では、実施例1及び実施例2と比較例とでは、当該加熱ローラ80の表面温度が目標温度(210℃)から低下した低下幅には殆ど差がない。一方、連続通紙時において、用紙Pに熱が直接奪われることがある加圧ローラ70では、比較例は実施例1及び実施例2と比べて、加圧ローラ70の表面温度が目標温度(210℃)から低下した低下幅が著しく大きい。これは、比較例では、「W2/W1」が0.375と小さく、その結果として、加圧ローラ70の表面に関して、用紙Pにより奪われる熱量と比べて第2ハロゲンヒータ73から与えられる熱量が著しく小さかったためだと考えられる。また、比較例では、この加圧ローラ70の表面温度の低下により、定着ローラ60の表面温度も、実施例1及び実施例2と比べて目標温度(190℃)から低下した低下幅が大きくなっている。このように、比較例では、連続通紙時において、加圧ローラの温度、及び加熱ローラの温度が低下したため、3枚目以降の用紙Pの定着性が悪化したものと考えられる。
【0056】
これに対して、実施例1では「W2/W1」が0.75であり、実施例2では「W2/W1」が1.50であるため、比較例と比べて、第2ハロゲンヒータ73から加圧ローラ70の表面に与えられる熱量が大きく、加圧ローラ70の表面温度が低下することが抑制されている。その結果、実施例1及び実施例2では、連続通紙時において、2枚目以降の用紙に対しても、定着性が向上したものと考えられる。
【0057】
以上の結果から、「W2/W1」の数値が0.75〜1.5の範囲では、用紙Pに担持された未定着トナーTの、用紙Pへの定着性を向上させることが可能であることが分かった。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。