(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車用LAN等において、光ファイバ相互の接続に使用される光コネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。
図8(a)に示すように、この種の光コネクタ501は、ファイバ挿通孔503が形成され、ファイバ挿通孔503に光ファイバ505を配置してなるストップリング507と、光ファイバケーブル509の周囲に配置され、ストップリング507及び光ファイバケーブル509を加締める加締めリング511と、光ファイバケーブル509における光ファイバ505の端部に配置されるフェルール513と、フェルール513とストップリング507との間に配置されるスプリング(図示せず)と、ストップリング507に嵌め合わされるプラグフレーム517と、プラグフレーム517に嵌め合わされる摘み519と、加締めリング511及び光ファイバケーブル509の一部を覆うブーツ521と、を備えている。
【0003】
フェルール513は、
図8(b)に示すように、光ファイバケーブル509における光ファイバ505の端部に配置されるものであり、フランジ部523と、円筒状部525と、を有して形成されている。フランジ部523及び円筒状部525にはいずれも貫通孔527が形成されており、この貫通孔527に光ファイバ505の先端を貫通させ、接着剤などで接着することでフェルール513を固定することができる。
【0004】
光コネクタ501の組立工程では、光ファイバケーブル509に、ブーツ521、加締めリング511、ストップリング507が順に通される。光ファイバケーブル509は、外被529や抗張力体531が除去されて露出した光ファイバ505にフェルール513が固定される。加締めリング511をストップリング507及び光ファイバケーブル509に加締める工程は、ストップリング507と加締めリング511との間に抗張力体531を挟み込みつつ圧着工具等を用いて周囲から圧力を加える。これより、加締めリング511を縮径方向に塑性変形させ、抗張力体531をストップリング507の外周に圧着する。そして、摘み519をプラグフレーム517と嵌め合わせると共に、ブーツ521をストップリング507の一部、加締めリング511、光ファイバケーブル509の一部を覆うように配置し、光コネクタ付きの光ファイバケーブル509として完成させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した光ファイバ505の端部に配置されたフェルール513は、光コネクタ501の先端面から突出しており、コネクタ組立時やコネクタ嵌合時には、このフェルール513の先端面に組立治具や相手コネクタ部品が接触することも考えられる。そのため、フェルール513の先端面に露出している光ファイバ505の端面に接触傷が生じる可能性があり、接触傷による端面損失増加に起因する通信不能が懸念される。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、光ファイバの端面における傷付きを防止できるフェルール及び光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1)
光ファイバ素線と、前記光ファイバ素線を覆うプラスチック樹脂とで構成された光ファイバの端部を収納する軸方向の貫通孔を備えたフェルールであって、
前記貫通孔は、フェルール先端側からコジリ対策穴部と、前記コジリ対策穴部のフェルール後端側に接続し前記コジリ対策穴部より内径が大きいファイバ素線挿入穴部と、前記ファイバ素線挿入穴部のフェルール後端側に接続し前記ファイバ素線挿入穴部より内径が大きいファイバ挿入穴部と、からなり、
前記コジリ対策穴部の内径は前記光ファイバ素線の外径より小さく、前記ファイバ素線挿入穴部の内径は前記光ファイバ素線の外径と略一致し、前記ファイバ挿入穴部の内径は前記光ファイバ素線を覆う前記プラスチック樹脂の外径と略一致し、
前記ファイバ素線挿入穴部には、前記光ファイバの端部における前記プラスチック樹脂で覆われない前記光ファイバ素線のみが収納され、前記ファイバ挿入穴部には、前記光ファイバの端部における前記光ファイバ素線を覆う前記プラスチック樹脂が収納され、
前記コジリ対策穴部と前記ファイバ素線挿入穴部との接続部には、前記ファイバ素線挿入穴部に収納された前記光ファイバ
素線の先端面と当接して前記光ファイバのフェルール先端側への移動を規制する段部が設けられることを特徴とするフェルール。
【0009】
上記(1)の構成のフェルールによれば、段部に当接した光ファイバの先端面は、フェルールの先端部から外に露出しない。そこで、光ファイバの搬送時やコネクタ組立時に、フェルールの先端部が組立治具や相手コネクタ部品等の他部材と接触しても光ファイバの先端面に擦れが生じることはなく、光ファイバの先端面における傷付きを防止できる。
【0010】
(2) 上記(1)の構成のフェルールをコネクタハウジングに収容保持したことを特徴とする光コネクタ。
【0011】
上記(2)の構成の光コネクタによれば、コネクタ嵌合時の抉り(コジリ)やインライン嵌合時の光ファイバの先端面同士の擦れが生じることはなく、コネクタハウジング側でコジリ対策を実施する必要がないので、光コネクタを小型・安価に構成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフェルール及び光コネクタによれば、光ファイバの先端面における傷付きを防止できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るフェルールを備えた光コネクタの分解斜視図である。
【
図2】
図1に示したフェルールの軸線を含む面による断面図である。
【
図3】
図2に示したフェルールを備えたフェルールアッシーを説明するための部分断面図である。
【
図4】
図1に示した光コネクタと相手光コネクタとのインライン嵌合状態を示す水平断面図である。
【
図5】(a)は本発明の第2実施形態に係るフェルールを備えたフェルールアッシーが接続される基板実装光コネクタの斜視図、(b)はフェルールアッシーが接続された基板実装光コネクタの断面図である。
【
図6】
図5に示した基板実装光コネクタの積層基板配索状態を表した斜視図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るフェルールを備えたフェルールアッシーを用いたサブハーネスを説明するための縦断面図である。
【
図8】(a)は従来の光コネクタの一部を破断して拡大した平面図、(b)は(a)に示したフェルールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の第1実施形態に係るフェルール19を備えた光コネクタ11及び相手光コネクタ30(
図4参照)は、互いに結合することで、二対のフェルールアッシー25の光ファイバ17の先端を突き合わせた状態に接続(インライン嵌合)する光コネクタである。
【0016】
本第1実施形態に係る光コネクタ11は、
図1に示すように、光ファイバ17の端部に接続されたフェルール19を後方開口23に収容するコネクタハウジング21と、フェルール19をコネクタハウジング21内に収容保持するホルダ24とを備える。
合成樹脂製のコネクタハウジング21は、前方に相手光コネクタ30との結合開口部31を有する。結合開口部31の奥側には一対のフェルール19が収容され、コネクタハウジング21の下面にはホルダ装着開口(不図示)が形成され、ホルダ装着開口はホルダ24を受入可能とする。
【0017】
本第1実施形態に係る相手光コネクタ30は、
図4に示すように、光ファイバ17の端部に接続されたフェルール19を後方開口38に収容するコネクタハウジング32と、フェルール19をコネクタハウジング32内に収容保持するホルダ33とを備える。
合成樹脂製のコネクタハウジング32は、前方に光コネクタ11との結合開口部34を有する。一対のフェルール19が収容される結合開口部34の奥側には、コネクタ嵌合時に光コネクタ11のフェルール19を挿入案内してフェルール19同士の突合せ位置決めを行うガイド部36が設けられている。
【0018】
光ファイバ17は、光ファイバ素線27をプラスチック樹脂29で覆って構成されている。光ファイバ17の種類としては、シングルモードファイバ、マルチモードファイバ等、材料としては、石英、プラスチック等の材料からなる光ファイバ素線27を用いることができる。
【0019】
本実施形態のフェルール19は、コジリ対策付きのものとなっている。フェルール19は、例えばジルコニア製とすることができる。
図2に示すように、フェルール19は、軸体の先端側からコジリ対策穴部35と、ファイバ素線挿入穴部37と、ファイバ挿入穴部39と、からなる貫通孔41が同軸に貫通して形成されている。軸体の外周側には、軸線方向略中央部に円環フランジ部43が半径方向外側に張り出して形成され、この軸線方向後方側に略同一外径の円環後端部45が半径方向外側に張り出して形成される。
【0020】
ファイバ素線挿入穴部37の内径D2は、光ファイバ素線27の外径と略一致する。ファイバ挿入穴部39の内径D3は、光ファイバ素線27にプラスチック樹脂29が被された光ファイバ17の外径と略一致する。コジリ対策穴部35の内径D1は、光ファイバ素線27の外径よりも小さく形成されている。即ち、コジリ対策穴部35の内径D1と、ファイバ素線挿入穴部37の内径D2と、ファイバ挿入穴部39の内径D3との大きさは、D1<D2<D3の関係にある。
そして、フェルール19の先端部47における貫通孔41の開口端49には、貫通孔41に収納された光ファイバ17の先端面であるファイバ端面51(光ファイバ素線27のファイバ端面51)と当接して光ファイバ17のフェルール先端側への移動を規制する段部であるファイバストッパ部53が設けられている。本実施形態におけるファイバストッパ部53は、開口端49の開口縁から開口中心に向って突出した円環状に形成されており、ファイバ端面51の外周全体に当接しているが、光ファイバ17のフェルール先端側への移動を規制できる形状であれば、ファイバ端面51の外周の一部に当接するなど種々の形態を採り得ることは云うまでもない。
【0021】
なお、
図3に示すように、ファイバ端面51を予め端面処理(カットまたはクリービング等)した光ファイバ17の両端部をそれぞれフェルール19に挿入し、ファイバ端面51をファイバストッパ部53に合わせた状態で、レーザー溶着、接着等により固着することで、フェルールアッシー25が構成されている。
そこで、フェルールアッシー25の一端をコネクタハウジング21に挿入し、ホルダ24を押し上げ、フェルール19をコネクタハウジング21に収容保持することで、光コネクタ11が構成される。また、フェルールアッシー25の一端をコネクタハウジング32に挿入し、ホルダ33を押し上げ、フェルール19をコネクタハウジング32に収容保持することで、相手光コネクタ30が構成される。
【0022】
次に、上記構成を有するフェルール19を備えた光コネクタ11及び相手光コネクタ30の作用を説明する。
図3に示すように、本実施形態に係るフェルール19では、ファイバストッパ部53に当接した光ファイバ17のファイバ端面51は、フェルール19の先端部47における貫通孔41の開口端49から外に露出しない。
そこで、フェルールアッシー25の搬送時やコネクタ組立時に、フェルール19の先端部47が組立治具やコネクタハウジング21と接触しても、ファイバ端面51に擦れが生じることはなく、光ファイバ17のファイバ端面51の傷付きを防止できる。その結果、コネクタ組み立て時の他部材との接触やコネクタ嵌合時のコジリなどによるファイバ端面51の傷が起因する通信不能を防止することができる。
【0023】
また、直線型の接続であるインライン嵌合の場合、環境変化などでピストニングが発生することがある。この場合、ファイバ端面同士が接した状態で振動を受けると突き合わせたファイバ端面同士が擦れ合うことも考えられる。しかしながら、本第1実施形態に係る光コネクタ11と相手光コネクタ30とのインライン嵌合においては、
図4に示したように、フェルール19の先端部47における貫通孔41の開口端49に設けたファイバストッパ部53によって、各コネクタ内の光ファイバ17のピストニング(伸び方向)が物理的に抑制されるので、光損失安定化にも効果がある。
【0024】
なお、光コネクタ11と相手光コネクタ30を嵌合してフェルール19の先端部47同士を互いに当接させた際、コジリ対策により開口端49より奥まっている光ファイバ17のファイバ端面51同士の間隔は、通常のフェルールの場合よりも広くなる。そこで、ファイバ端面51同士の間隔が広がったことによる接続損失を最小限に抑えるため、ファイバストッパ部53の肉厚寸法や光ファイバ素線27のコア径が適宜設定される。
【0025】
図5及び
図6に示した本発明の第2実施形態に係るフェルール19を備えたフェルールアッシー25は、積層配置された複数の回路基板75にそれぞれ実装された基板実装光コネクタ60間を接続するものである。
基板実装光コネクタ60には、フェルールアッシー25のフェルール19が結合される。基板実装光コネクタ60は、絶縁ハウジング63と、FOT(Fiber Optic Transceiver;以下、光トランシーバ71と称す)と、シールドケース65と、を備える。光トランシーバ71は、電気信号と光信号を相互変換し、送受信するためのものである。この光トランシーバ71は、絶縁ハウジング63の内方に収容される。
【0026】
基板実装光コネクタ60は、回路基板75の例えばカードエッジに配置されることで、回路基板75を出入りする接続が回路基板75の縁から行えるようになる。そして、基板実装光コネクタ60は、フェルールアッシー25のフェルール19と嵌合結合されると、光ファイバ17の光ファイバ素線27の先端が光トランシーバ71に接続される。
光トランシーバ71には、光電変換素子のそれぞれの光路中心を筒部72の軸線とする一対のフェルール70が付設される。それぞれのフェルール70は、絶縁ハウジング63の隔壁を貫通している。フェルール70は、光トランシーバ本体と別体または一体に形成される。フェルール70は、透明樹脂材からなり、筒部72の底にレンズ部73を有している。レンズ部73は、受信用光トランシーバの受光素子、送信用光トランシーバの発光素子の正面にそれぞれ配置される。これにより、フェルール70に嵌装されるフェルール19内の光ファイバ素線27と、光トランシーバ71の光電変換素子とが簡単、且つ高精度に位置合わせされる。
【0027】
光トランシーバ71を収容した絶縁ハウジング63は、シールドケース65によって覆われる。シールドケース65は、導電性金属板を箱状に形成して構成されており、ケース天板部65aの両側にケース両側面部65bが平行に折り曲げられて垂設され、ケース両側面部65bの後方がケース天板部65aから折り曲げられたケース背面部65cで塞がれる。
【0028】
絶縁ハウジング63におけるフェルール70の前方には、それぞれランス61が設けられている。ランス61は、フェルールアッシー25のフェルール19における円環フランジ部43と円環後端部45の間に嵌合することで、フェルール19の先端部47を光トランシーバ71の筒部72に嵌装した状態に保持する。
【0029】
フェルールアッシー25のフェルール19を基板実装光コネクタ60のフェルール70に嵌合する際、コジリが生じてもファイバストッパ部53に当接した光ファイバ素線27のファイバ端面51は、フェルール19の先端部47から外に露出しないので、ファイバ端面51の擦れが生じることはなく、光ファイバ17のファイバ端面51における傷付きを防止できる。
【0030】
なお、基板実装光コネクタ60の光トランシーバ71は、レンズ部73の焦点位置を調節することで、コジリ対策によりファイバ端面51が開口端49より奥まっているフェルール19との接続にも、ファイバ端面が開口端に露出している通常のフェルールとの接続にも、容易に対応することができ、接続損失が生じることはない。
【0031】
図7に示した本発明の第3実施形態に係るフェルール19を備えたフェルールアッシー25を用いたサブハーネス80は、光ファイバ17の両端部にそれぞれ接続した光コネクタ81を介して、図示しない相手光コネクタ間に接続されるものである。
【0032】
本第3実施形態に係る光コネクタ81は、光ファイバ17の端部に接続されたフェルール19を収容するコネクタハウジング83と、フェルール19をコネクタハウジング83内に収容保持するホルダ85とを備える。
合成樹脂製のコネクタハウジング83は、前方に相手光コネクタとの結合開口部86を有する。結合開口部86の奥側には一対のフェルール19が収容され、コネクタハウジング83の下面に形成されたホルダ装着開口に装着されたホルダ24によりフェルール19をコネクタハウジング83に収容保持する。
【0033】
上述したように、本実施形態に係るフェルール19では、ファイバストッパ部53に当接した光ファイバ17のファイバ端面51は、フェルール19の先端部47における貫通孔41の開口端49から外に露出せず、コネクタ嵌合時のコジリなどによりファイバ端面51に擦れが生じることはない。
そこで、本実施形態に係る光コネクタ81のコネクタハウジング83側では、コジリ対策を実施する必要がなく、コネクタハウジング83の結合開口部86を形成するフード部87を従来のコネクタのものより短くできる。即ち、従来の光コネクタでは、コネクタ嵌合時のコジリを防止する為、コネクタハウジングのフード部を長くして相手光コネクタを嵌合案内するように構成されていた。これに対し、コジリ対策を実施する必要がない本実施形態のコネクタハウジング83は、フード部87の先端をフェルール19の先端部47と略同位置に形成することができ、光コネクタ81のコネクタ全長を短くできる。
なお、フェルール19の先端部47をフード部87の先端よりも突出させて、更に小型化したコネクタハウジングを構成することもできる。
【0034】
従って、本実施形態に係るフェルール19及び光コネクタ11,13,81は、によれば、光ファイバ17のファイバ端面51の傷付きを防止でき、接触傷による端面損失増加に起因する通信不能を防止できる。
なお、本発明のフェルール及び光コネクタは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。