【文献】
山田 美季 他,複数基地局連携型MIMOにおけるInterference Alignmentの送受信ウェイトに関する一検討,電子情報通信学会技術研究報告,2010年 2月24日,Vol.109, No.440,pp.191-196,RCS2009-291
【文献】
Wonjae Shin et al.,On the Design of Interference Alignment Scheme for Two-Cell MIMO Interfereing Broadcast Channels,IEEE Transactions on Wireless Communications,2011年 2月,Vol.10,No.2,pp.437-442
【文献】
Changho Suh et al.,Downlink Interference Alignment,Global Telecommunications Conference(GLOBECOM 2010), 2010 IEEE,2010年12月10日
【文献】
Chongning Na et al.,Two-Cell Coordinated Transmission Scheme Based on Interference Alignment and MU-MIMO Beamforming,Vehicular Technology Conference(VTC Spring), 2012 IEEE 75th,2012年 5月 9日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
協調セルのサービスエリア範囲内における端末のマルチセルデコーディング行列は、現在の送信機から協調セルの送信機に送信されるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
協調セルのサービスエリア範囲内における端末のマルチセルデコーディング行列は、上記送信機から協調セルの送信機に送信されることを特徴とする請求項8に記載の送信機。
マルチセルプレコーディング行列算出手段は、上記送信機から協調セル範囲内における端末までの下りチャネル行列とアンテナマッチング行列で線形方程式を構成して干渉等価行列を算出し、上記干渉等価行列に基づいてマルチセルプレコーディング行列を算出することを特徴とする請求項8に記載の送信機。
シングルセルマルチユーザプレコーディング行列算出手段は、現在の通信セルの下りチャネル行列、アンテナマッチング行列、マルチセルプレコーディング行列およびデコーディング行列でマルチユーザマルチアンテナシステム等価行列を構成し、上記マルチユーザマルチアンテナシステム等価行列に基づいて、マルチユーザプレコーディング・デコーディングアルゴリズムで線形プレコーディング・デコーディング行列を算出することを特徴とする請求項8に記載の送信機。
シングルセルマルチユーザプレコーディング行列算出手段は、現在の通信セルの下りチャネル行列、アンテナマッチング行列、マルチセルプレコーディング行列およびデコーディング行列でマルチユーザマルチアンテナシステム等価行列を構成し、上記マルチユーザマルチアンテナシステム等価行列と端末から受信したノイズパワー測定値に基づいて、マルチユーザプレコーディング・デコーディングアルゴリズムで線形プレコーディング・デコーディング行列を算出することを特徴とする請求項8に記載の送信機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以上の図面を参照した詳細な説明から、本発明の上記特徴と利点はより明らかなものになる。以下、図面を参考して、本発明の好ましい実施形態を詳しく説明する。図面では、異なる図面に示されているものの、同一の図面記号が同一又は類似の構成を示す。明確・簡明のために、ここに含まれる既知の機能と構造の詳細の説明を省き、本発明の主題が不明確にならないようにする。
【0016】
図1は、本発明の一実施例による方法とシステムの応用シーンを示している。
図1に示すように、隣接する二つのセルの送信機(セル1の送信機とセル2の送信機)は同一の周波数バンド内で稼働し、互いは有線を介して接続する(
図1に点線で示す接続)ことにより有線での情報交互を行うことができる。このような情報交互は、システム状態情報または制御情報のみに限られ、ユーザデータが含まれておらず、すなわち、ユーザに送信されるデータは、ユーザがいるセルの送信機内のみに存在する。当該分野の技術者に知られているように、送信機に対応するセルは、単一基地局によるサービスエリアであってもよいし、基地局のある送信機に対応するセクタ(sector)であってもよい。
【0017】
各送信機は、そのセル内の複数のユーザに同時にサービスを提供する。例えばセル1の送信機は、端末(1,1)と端末(1,2)にサービスを提供し、セル2の送信機は、端末(2,1)と端末(2,2)にサービスを提供する。同一の周波数バンドで稼働するため、隣接するセル1とセル2との間に同一周波数干渉が生じることがある。セル1の送信機とセル2の送信機の間は、有線でのシグナリング交互でセル間の同一周波数干渉を抑制する。セルの間に協作(協調)が存在し、しかも各セルが複数のユーザにサービスを提供するため、このシステムは、マルチセルマルチユーザシステムと称する。
【0018】
本発明の実施例の方法は、マルチアンテナ線形プレコーディングおよび/またはデコーディングに基づくマルチセル協調通信プランに係り、プレコーディング行列とデコーディング行列の取得は、干渉アラインメントの思想に基づいて実現する。
【0019】
図2は、プレコーディング、プレデコーディング方法における送信機と移動端末を説明するための概略図面である。
図2に示すように、送信側において、ユーザ1のデータとユーザ2のデータは、それぞれ加重和をされてから送信アンテナにマッピングされる。送信側の重み付け係数で構成する行列(またはベクトル)はプレコーディング行列(またはベクトル)と称する。受信側において、例えばユーザkの場合、各アンテナで受信した信号は加重和をされることにより有用信号を取得する。受信側の重み付け係数で構成する行列(またはベクトル)はデコーディング行列(またはベクトル)と称する。
【0020】
本発明の一実施例では、プレコーディング行列(またはベクトル)とデコーディング行列(またはベクトル)を最適化することによりマルチセル協調通信システムの周波数スペクトル利用効率が高くなり、ユーザが高品質のデータ伝送を行えるようになる。
【0021】
線形プレコーディングデコーディングを適用したマルチセルマルチユーザ下りMIMOシステムの入出力関係は、以下の(式1)で表現する。
【数1】
【0022】
ただし、
は、送信機iとセルiにおけるユーザkとの間の下りチャネル行列であり、
は、送信機jとセルiにおけるユーザkとの間の下りチャネルであり、
は、セルiにおけるユーザkに送信するデータ信号であり、
は、セルiにおけるユーザlに送信するデータ信号であり、
は、セルjにおけるユーザlに送信するデータ信号であり、
は、受信側で復元した有用信号であり、
はセルiにおけるユーザlに対してプレコーディングを行うプレコーディング行列であり、
はセルiにおけるユーザkに対してプレコーディングを行うプレコーディング行列であり、
は、セルjにおけるユーザlに対してプレコーディングを行うプレコーディング行列であり、
は、セルiにおけるユーザkのデータをデコーディングするためのデコーディング行列であり、
はセルiにおけるユーザkが受信したノイズである(非協調セルからの干渉を含む)。
【0023】
類似的に、線形プレコーディングデコーディングを適用したマルチセルマルチユーザ上りMIMOシステムの入出力関係は、以下の(式2)で表現する。
【数2】
【0024】
ただし、
は送信機iとセルjにおけるユーザlとの間の上りチャネルであり、
は送信機iとセルiにおけるユーザkとの間の上りチャネルであり、
は送信機iとセルiにおけるユーザlとの間の上りチャネルであり、
は、セルiにおけるユーザkから送信されるデータ信号であり、
はセルiにおけるユーザlから送信されるデータ信号であり、
はセルjにおけるユーザlから送信されるデータ信号であり、
は受信側で復元したセルiにおけるユーザkの有用信号であり、
は、セルiにおけるユーザlに対してプレコーディングを行うプレコーディング行列であり、
はセルiにおけるユーザkに対してプレコーディングを行うプレコーディング行列であり、
は、セルjにおけるユーザlに対してプレコーディングを行うプレコーディング行列であり、
はセルiにおけるユーザkのデータをデコーディングするためのデコーディング行列であり、
は送信機iが受信したノイズ(非協調セルからの干渉を含む)である。
【0025】
以下、本発明の実施例におけるマルチセルマルチユーザシステム下りプレコーディングとプレデコーディングの計算過程を説明する。
【0026】
図3は、本発明の一実施例による通信システムにおける送信機の構造概略図を示している。
図3に示すように、送信機20は、チャネル推定手段21を含む。該チャネル推定手段は、TDD(時間分割デュプレックス)システムの場合に、受信した上り探知信号を利用してチャネル推定を行い、送信機20のセル範囲内における端末の上りチャネル情報および送信機20から協調セル範囲内における端末までの上りチャネル情報を取得し、TDDシステムの上り下りチャネル相反性を利用して、対応する送信機20のセル範囲内における端末の下りチャネル情報および送信機20から協調セル範囲内における端末までの下りチャネル情報を取得する。一方、FDD(周波数分割デュプレックス)システムの場合に、該チャネル推定手段は、端末からフィードバックされる情報を受信することにより、送信機20のセル範囲内における端末の下りチャネル情報および送信機20から協調セル範囲内における端末までの下りチャネル情報を取得する。
【0027】
該送信機20は、送信機20のセル範囲内における端末の下りチャネル情報に基づいてアンテナマッチング行列を算出するアンテナマッチング行列算出手段22をさらに含む。マルチセルプレコーディング行列算出手段23は、送信機20から協調セル範囲内における端末までの下りチャネル情報およびアンテナマッチング行列に基づいて、協調セルにおける端末のマルチセルデコーディング行列および送信機20のマルチセルプレコーディング行列を算出する。
【0028】
シングルセルプレコーディング行列算出手段24は、送信機20のセル範囲内における端末の下りチャネル情報、送信機20のアンテナマッチング行列とマルチセルプレコーディング行列、および協調通信する送信機から受信した現在の送信機20のセル範囲内における端末のマルチセルデコーディング行列に基づいて、現在の送信機20の等価シングルセルマルチユーザチャネル行列を算出し、それに基づいてシングルセルマルチユーザプレコーディング行列を算出する。
【0029】
本発明の別の実施例によると、シングルセルプレコーディング行列算出手段24は、該等価シングルセルマルチユーザチャネル行列および該送信機のセル範囲内における端末が受信したノイズパワー測定値に基づいて、シングセルマルチユーザプレコーディング行列を算出する。
【0030】
シングルセルプレコーディング手段25は、シングルセルマルチユーザプレコーディング行列でシングルセルプレコーディングを完成し、すなわち、セル内部のマルチユーザのデータが線形的に重畳される。
【0031】
マルチセルプレコーディング手段26は、シングルセルプレコーディング処理を経た後のデータに対して、マルチセルプレコーディング行列でマルチセルプレコーディングを行うことによって、セル間干渉の抑制を実現する。
【0032】
アンテナマッチング手段27は、アンテナマッチング行列でアンテナマッチングを行い、すなわち、マルチセルプレコーディング後のユーザデータを線形的に重畳して送信アンテナにマッピングする。
【0033】
以上は、各プレコーディング手段25、26、27は、単一手段の形式で実現しているが、当該分野の技術者が認識すべきこととして、上記各手段は、一つまたは複数の手段に合併してこれらのプレコーディング過程を実現することができる。
【0034】
図4は、本発明の一実施例による移動端末の構造概略図を示している。本発明の実施例では、
図4に示すように、移動端末30側において、干渉・ノイズ測定手段31は、下りチャネル情報参考チャネルに対して干渉とノイズ値の測定を行ってノイズレベルマッピング手段32に入力する。ノイズレベルマッピング手段32は、測定した干渉とノイズ値を対応するノイズレベルにマッピングして送信機20にフィードバックする。
【0035】
一方、移動端末30において下り信号、例えば下り復調参考信号と下りデータを受信した後、分解手段33によって下り復調参考信号と下りデータを分解し、それからチャネル推定手段35は下り信号に基づいてチャネル推定を行って下りチャネル行列を取得する。一方、マルチセルデコーディング手段34は、自身がいるセルの送信機から、協調セルの送信機から送信してきたマルチセルデコーディング行列を受信し、該マルチセルデコーディング行列で下りユーザデータをデコーディングすることにより、セル間の干渉を除去する。また、チャネル推定手段35は、取得したマルチセルデコーディング行列および受信した下り信号に従ってシングルセルマルチユーザ等価チャネルを推定し、取得したシングルセルマルチユーザ等価チャネルに従ってシングルセルマルチユーザデコーディング行列を算出する。それから、マルチユーザデコーディング手段36は、算出したシングルセルマルチユーザデコーディング行列で下りデータのMIMO検出を行い、データストリームを出力する。
【0036】
本発明の実施例の通信システムを利用して、線形アンテナマッピングを通じて所定のシステムを干渉アラインメント方法応用可能な等価システムに、すなわち、干渉アラインメント直接応用不可のシステムを、干渉アラインメント直接応用可能なシステムに変換できる。また、セル間干渉の抑制とセル内干渉の管理を二つの独立した工程に分割し、各工程において異なる線形プレコーディング、デコーディング方法を採用可能である。この設計に従って、大量の実施プランを得ることができる。各プランは、異なる性能と複雑度を有し、異なる通信環境に適用可能である。
【0037】
以下、具体的な例を通じて、各送信機20と移動端末30の手段の具体的な操作過程を詳細に説明する。本発明の一実施例によれば、アンテナマッチング行列算出手段22はアンテナマッチング行列を算出し、アンテナマッチング手段27は、該プレコーディング行列で所定のシステムを干渉アラインメントアルゴリズムの応用がマッチングするシステムに変換する。
【0038】
所定システムの送信機側のアンテナの数が
、ユーザ側のアンテナの数が
と仮定する。干渉アラインメントアルゴリズムの応用がマッチングするシステムアンテナ配置が必要となり、所定システム送信機側のアンテナ数が等価システムの送信機側のアンテナ数以上、かつ、所定システムのユーザ側のアンテナ数が等価システムのユーザ側のアンテナ数に等しく、すなわち、
と
(
は、等価システムの送信機側のアンテナ数であり、
は等価システムのユーザ側のアンテナ数である。)の条件を満足しなければならない。
図1に示すシステムを例とし、
、
となり、干渉アラインメントアルゴリズムの応用がマッチングするシステムアンテナ配置は、
、
である。
【0039】
線形マッピングを通じてシステム変換を行い、すなわち、
のアンテナマッチング行列を見つけ出し、すると、アンテナマッピングの際に、取得した
パスのデータストリームを、このアンテナマッチング行列で線形プレコーディングを行う。
図1に示すシステムを例とし、アンテナマッチング行列は、3×4の行列である。以下、
でセル1の送信機のアンテナマッチング行列を示す。
【0040】
本発明の一実施例に基づき、
の行列をランダムに生成することによりアンテナマッチング行列
とすることができる。該行列は、アンテナマッチングのみに使用され、いずれか一つの
の行列は、アンテナマッチングを実現できる。アンテナマッチング行列をランダムに生成する方法は、複雑度が低く、使用が便利である。
【0041】
選択可能なこととして、別の実施例に基づき、送信機iと自身セルにおけるユーザk(k=1,2,…,K)との間の下りチャネル行列からなる等価チャネル行列H(式3)の特異値分解をしてもよい。
【数3】
【0042】
すなわち、
(上付き記号の「H」は、行列の共役転置を表す)。
は、送信機iとセルiにおけるユーザ1との間の下りチャネルであり、
は、送信機iとセルiにおけるユーザKとの間の下りチャネルであり、ユニタリー行列
の列ベクトルが左特異ベクトルであり、ユニタリー行列
の列ベクトルが右特異ベクトルであり、対角行列
の対角線要素が特異値である。行列
から
列を選択し、この列は、
個の最大の特異値に対応するべきである。該実施例のアンテナマッチング行列
は、この
列のベクトルからなる。類似的に、セル2の送信機のアンテナマッチング行列
を取得することもできる。
【0043】
本発明の一実施例によれば、マルチセルプレコーディングは、マルチセルデコーディングと共同で設計すべきであり、その設計準則が干渉アラインメントである。マルチセルプレコーディング行列算出手段23の操作過程の一例は下記のとおりである(
図1におけるセル1の送信機を例とする)。
【0044】
セル1からセル2の端末までの下りチャネル行列とセル1のアンテナマッチング行列
で線型方程式を構成することでセル2の二つのユーザのデコーディング行列と干渉等価チャネルを取得する。それから、干渉等価チャネルとマルチセルプレコーディング行列との間の直交性を利用して、マルチセルプレコーディング行列を算出する。たとえば、チャネル行列とアンテナマッチング行列
で以下の線型方程式(式4)を構成する。
【数4】
【0045】
ただし、
は、セル1の送信機からセル2の範囲内における端末1(すなわち端末(2,1))までの下りチャネルであり、
は、セル1の送信機からセル2の範囲内における端末2(すなわち端末(2,2))までの下りチャネルであり、
は、セル1の送信機のアンテナマッチング行列であり、
は、セル1の送信機の干渉等価チャネルであり、
は端末(2,1)のマルチセルデコーディング行列であり、
は、端末(2,2)のマルチセルデコーディング行列であり、
は3行3列の単位対角行列であり、
は3行2列のゼロ行列であり、
は、6行1列のゼロ列ベクトルである。
【0046】
この方程式(4)を解くと、デコーディング行列
と
を得る。該二つのデコーディング行列は、セル2の二つのユーザ(すなわち端末(2,1)と端末(2,2))のデコーディング行列である。
【0047】
上記方程式(4)を解いて干渉等価チャネル
を得て、以下の方程式(式5)を構成する。
【数5】
【0048】
ただし、
は、セル1の送信機のマルチセルプレコーディング行列である。
【0049】
この方程式(5)を解いてマルチセルプレコーディング行列
を得る。
【0050】
上記方程式(4)は、下記の方程式(式6)に等価する。
【数6】
【0051】
ただし、
は、
の共役転置を示し、その他の各変数の定義は、方程式(4)についての説明を参考する。
【0052】
該方程式(6)によって、セル1の送信機からセル2の二つのユーザへの干渉信号を同一方向、すなわちベクトル
が指し示す方向に揃える。セル1の送信機からそのセル範囲内におけるユーザへデータを送信する方向がこの方向と直交するのであれば、セル1の送信機からセル2に対する干渉信号発生がまったくない。方程式(5)は、このような直交化を実現するために定義されるものである。方程式(4)と方程式(5)を組み合わせることで、セル間干渉の除去を実現する。同時に、干渉信号が基本的に同一方向に揃えられるため、有用信号になるべく多くの送信可能な方向を保留した。
【0053】
セル2の送信機側において上記同一の操作を行うことで
、
、
を、すなわち、セル2のマルチセルプレコーディング行列と端末(1,1)と(1,2)のマルチデコーディング行列を得ることができる。
【0054】
例えば、セル2の送信機からセル1の端末までの下りチャネル行列とセル2の送信機のアンテナマッチング行列
で線型方程式を構成することでセル1の二つのユーザのデコーディング行列と干渉等価チャネルを取得する。それから、干渉等価チャネルとマルチセルプレコーディング行列との間の直交性を利用して、マルチセルプレコーディング行列を算出する。たとえば、チャネル行列とアンテナマッチング行列
で以下の線型方程式(式4´)を構成する。
【数7】
【0055】
ただし、
は、セル2の送信機からセル1の範囲内における端末1(すなわち端末(1,1))までの下りチャネルであり、
は、セル2の送信機からセル1の範囲内における端末2(すなわち端末(1,2))までの下りチャネルであり、
は、セル2の送信機のアンテナマッチング行列であり、
は、セル2の送信機の干渉等価チャネルであり、
は端末(1,1)のマルチセルデコーディング行列であり、
は、端末(1,2)のマルチセルデコーディング行列であり、
は3行3列の単位対角行列であり、
は3行2列のゼロ行列であり、
は、6行1列のゼロ列ベクトルである。
【0056】
この方程式(4´)を解くと、デコーディング行列
と
を得る。該二つのデコーディング行列は、セル1の二つのユーザ(すなわち端末(1,1)と端末(1,2))のデコーディング行列である。
【0057】
上記方程式(4´)を解いて干渉等価チャネル
を得て、以下の方程式(式5´)を構成する。
【数8】
【0058】
ただし、
は、セル2の送信機のマルチセルプレコーディング行列である。
【0059】
この方程式(5´)を解いてマルチセルプレコーディング行列
を得る。
【0060】
上記方程式(4´)は、下記の方程式(式6´)に等価する。
【数9】
【0061】
ただし、
は、
の共役転置を示し、その他の各変数の定義は、方程式(4´)についての説明を参考する。
【0062】
該方程式(6´)によって、セル2の送信機からセル1の二つのユーザへの干渉信号を同一方向、すなわちベクトル
が指し示す方向に揃える。セル2の送信機からそのセル範囲内におけるユーザへデータを送信する方向がこの方向と直交するのであれば、セル2の送信機からセル1に対する干渉信号発生がまったくない。方程式(5´)は、このような直交化を実現するために定義されるものである。方程式(4´)と方程式(5´)を組み合わせることで、セル間干渉の除去を実現する。同時に、干渉信号が基本的に同一方向に揃えられるため、有用信号になるべく多くの送信可能な方向を保留した。
【0063】
本発明の実施例によれば、シングルセルマルチユーザプレコーディング行列算出手段24の操作過程の例(セル1の送信機を例とする)は、下記のとおりである。
【0064】
セル1の送信機から端末(1,1)と(1,2)までの下りチャネル行列、以上取得したセル1の送信機のアンテナマッチング行列
、マルチセルプレコーディング行列
およびセル1のユーザ端末(1,1)と(1,2)のデコーディング行列
と
により、以下のマルチユーザマルチアンテナシステム等価行列(式7)を構成する。
【数10】
【0065】
ただし、
は、セル1の等価シングルセルマルチユーザチャネル行列であり、
は、セル1における端末(1,1)に対応する等価チャネル行列であり、
は、セル1における端末(1,2)に対応する等価チャネル行列であり、
は、等価ノイズベクトルであり、
は、端末(1,1)の等価ノイズであり、
は、端末(1,2)の等価ノイズであり、
は、セル1の送信機からその端末(1,1)までの下りチャネル行列を示し、
は、セル1の送信機からその端末(1,2)までの下りチャネル行列を示し、
(k=1または2)は、セル1における端末kが受信したノイズである。
【0066】
式(7)から算出した行列により、セル1の送信機について、以下のマルチユーザシステムの入出力関係を得ることができる(式8)。
【数11】
【0067】
ただし、
は、セル1における端末kのマルチユーザプレコーディング行列であり、
はセル1における端末kのマルチユーザMIMOデコーディング行列であり、
は、セル1に端末kに対するユーザチャネル行列であり、
は、セル1における端末lのマルチユーザプレコーディング行列であり、
は、セル1の送信機からセル1におけるユーザlへ送信されるデータ信号であり、
は、セル1の送信機からセル1におけるユーザkへ送信されるデータ信号であり、
は、セル1における端末kの等価ノイズである。
【0068】
異なる設計準則に基づき、
と
を算出してマルチユーザMIMO線形符号化デコーディングに用いることができる。
【0069】
線形プレコーディングおよびデコーディング行列を算出する具体的な実施プランは、ゼロフォーシング(ZF)アルゴリズム、最小平均二乗誤差(MMSE)アルゴリズム、マッチドフィルタリング(MF)アルゴリズム、BD(Block Diagonalization)アルゴリズム、最大化信号対漏洩雑音比(SLNR)アルゴリズムなどの非反復アルゴリズム、および最大レート和反復アルゴリズム、最小平均二乗誤差(MMSE)反復アルゴリズムなどの反復アルゴリズムを含むが、それらに限られることはない。そのうち、最小平均二乗誤差(MMSE)アルゴリズム、最大化信号対漏洩雑音比(SLNR)アルゴリズム、最大レート和反復アルゴリズムおよび最小平均二乗誤差(MMSE)反復アルゴリズムでは、端末からフィードバックされる等価干渉とノイズ測定値を必要とする。一方、ゼロフォーシング(ZF)アルゴリズム、マッチドフィルタリング(MF)アルゴリズム、BD(Block Diagonalization)アルゴリズムでは、端末からフィードバックされる等価干渉とノイズ測定値を介する必要がない。
【0070】
セル2の送信機を例とし、セル2の送信機から端末(2,1)と(2,2)までの下りチャネル行列、以上取得したセル2の送信機のアンテナマッチング行列
、マルチセルプレコーディング行列
およびセル2のユーザ端末(2,1)と(2,2)のデコーディング行列
と
により、以下のマルチユーザマルチアンテナシステム等価行列(式7´)を構成する。
【数12】
【0071】
ただし、
は、セル2の等価シングルセルマルチユーザチャネル行列であり、
は、セル2における端末(2,1)に対応する等価チャネル行列であり、
は、セル2における端末(2,2)に対応する等価チャネル行列であり、
は、等価ノイズベクトルであり、
は、端末(2,1)の等価ノイズであり、
は、端末(2,2)の等価ノイズであり、
は、セル2の送信機からその端末(2,1)までの下りチャネル行列を示し、
は、セル2の送信機からその端末(2,2)までの下りチャネル行列を示し、
(k=1または2)は、セル2における端末kが受信したノイズである。
【0072】
式(7´)から算出した行列により、以下のマルチユーザシステムの入出力関係を得ることができる(式8´)。
【数13】
【0073】
ただし、
は、セル2における端末kのマルチユーザプレコーディング行列であり、
はセル2における端末kのマルチユーザMIMOデコーディング行列であり、
は、セル2に端末kに対するユーザチャネル行列であり、
は、セル2における端末lのマルチユーザプレコーディング行列であり、
は、セル2の送信機からセル2におけるユーザlへ送信されるデータ信号であり、
は、セル2の送信機からセル2におけるユーザkへ送信されるデータ信号であり、
は、セル2における端末kの等価ノイズである。
【0074】
異なる設計準則に基づき、
と
を算出してマルチユーザMIMO線形符号化デコーディングに用いることができる。
【0075】
線形プレコーディングおよびデコーディング行列を算出する具体的な実施プランは、ゼロフォーシング(ZF)アルゴリズム、最小平均二乗誤差(MMSE)アルゴリズム、マッチドフィルタリング(MF)アルゴリズム、BD(Block Diagonalization)アルゴリズム、最大化信号対漏洩雑音比(SLNR)アルゴリズムなどの非反復アルゴリズム、および最大レート和反復アルゴリズム、最小平均二乗誤差(MMSE)反復アルゴリズムなどの反復アルゴリズムを含むが、それらに限られることはない。そのうち、最小平均二乗誤差(MMSE)アルゴリズム、最大化信号対漏洩雑音比(SLNR)アルゴリズム、最大レート和反復アルゴリズムおよび最小平均二乗誤差(MMSE)反復アルゴリズムでは、端末からフィードバックされる等価干渉とノイズ測定値を必要とする。一方、ゼロフォーシング(ZF)アルゴリズム、マッチドフィルタリング(MF)アルゴリズム、BD(Block Diagonalization)アルゴリズムでは、端末からフィードバックされる等価干渉とノイズ測定値を介する必要がない。
【0076】
図5は、本発明の一実施例による干渉アラインメントに基づく協調通信方法のフロー図を示している。
【0077】
説明しやすくするために、ここでは、
図5におけるkを1、2と仮定する。このような場合、セル1とセル2とは、協調セルとなる。セル1の送信機(TX1)は、端末(1,1)と(1,2)、すなわち、RX1,1とRX1,2へのデータ送信を司る。セル2の送信機(TX2)は、端末(2,1)と(2,2)、すなわち、RX2,1とRX2,2へのデータ送信を司る。
図5の説明は、TDDの場合に関するものである。しかし、当該分野の技術者にとって、本発明はFDDシステムにも応用可能であることがわかる。本発明の実施例による通信方法は、以下のステップを含む。
【0078】
ステップS51において、端末(1,1)は、上り探知信号SRSをセル1の送信機とセル2の送信機に送信する。セル1の送信機とセル2の送信機は、それぞれ上り探知信号SRSを受信して、各々のチャネル推定手段21によりそれぞれチャネル推定を行うことで端末(1,1)の上りチャネルを取得する。セル1の送信機とセル2の送信機は、ぞれぞれTDDシステム上り下りチャネル交互特性を利用して端末(1,1)の下りチャネルを取得する。端末(1,2)、(2,1)、(2,2)は、類似した操作を行い、セル1の送信機とセル2の送信機は、これらの端末の下りチャネル行列を取得する。
【0079】
選択可能なこととして、端末(1,1)は、受信した非協調セル干渉とノイズ信号強度を測定可能である。それから、端末(1,1)は、フィードバック信号を送信して、非協調セル干渉とノイズ信号強度をセル1の送信機とセル2の送信機に送信する。続いて、セル1の送信機とセル2の送信機は、それぞれ端末(1,1)のフィードバック情報を受信し、端末(1,1)の非協調セル干渉とノイズ信号強度情報を取得する。端末(1,2)、(2,1)、(2,2)は、類似した操作を行い、セル1の送信機とセル2の送信機は、これらの端末の非協調セル干渉とノイズ信号強度情報を取得する。上記過程で取得した干渉とノイズ信号強度情報は、マルチユーザプレコーディング行列とマルチユーザプレデコーディング行列の計算に用いられる。
【0080】
ステップS52において、セル1の送信機のアンテナマッチング行列算出手段22は、セル1の送信機から端末(1,1)、(1,2)までの下りチャネル情報を利用してアンテナマッチング行列を算出する。上記式(4)と(5)に従い、セル1の送信機のマルチセルプレコーディング行列算出手段23は、セル1の送信機から協調セルにおける端末(2,1)、(2,2)までの下りチャネル情報およびセル1の送信機のアンテナマッチング行列を利用して、端末(2,1)、(2,2)のマルチセルデコーディング行列およびセル1の送信機のマルチセルプレコーディング行列を算出する。たとえば、セル1の送信機から協調セルにおける端末までのチャネル行列とセル1の送信機のアンテナマッチング行列で線型方程式を構成してセル2の二つのユーザのデコーディング行列と干渉等価チャネルを取得する。それから、干渉等価チャネルとマルチセルプレコーディング行列との間の直交性を利用して、セル1の送信機のマルチセルプレコーディング行列を算出する。
【0081】
図5に示すように、セル1の送信機は、有線接続を介して、端末(2,1)、(2,2)のマルチセルデコーディング行列をセル2に通知する。ステップS53で算出したデコーディング行列
と
は、セル1の送信機とセル2の送信機との間のリターン通路を介してセル2の送信機に送信され、それから、セル2の送信機は、下り(DL)シグナリングを介して該デコーディング行列を関連する端末(2,1)、(2,2)に配信する。
【0082】
類似的に、セル2の送信機のアンテナマッチング行列算出手段22は、セル2の送信機から端末(2,1)、(2,2)までの下りチャネル情報を利用してアンテナマッチング行列を算出する。セル2の送信機のマルチセルプレコーディング行列算出手段23は、セル2の送信機から協調セル1における端末(1,1)、(1,2)までの下りチャネル情報およびセル2の送信機のアンテナマッチング行列を利用して、端末(1,1)、(1,2)のマルチセルデコーディング行列およびセル2の送信機のマルチセルプレコーディング行列を算出する。たとえば、セル2の送信機から協調セルにおける端末までのチャネル行列とセル2の送信機のアンテナマッチング行列で線型方程式を構成してセル1の二つのユーザのデコーディング行列と干渉等価チャネルを取得する。それから、干渉等価チャネルとマルチセルプレコーディング行列との間の直交性を利用して、セル2の送信機のマルチセルプレコーディング行列を算出する。セル2のシングルセルマルチユーザプレコーディング行列算出手段24は、セル2の送信機から端末(2,1)、(2,2)までの下りチャネル行列、セル2の送信機のアンテナマッチング行列、セル2のマルチセルプレコーディング行列および端末(2,1)、(2,2)のマルチセルデコーディング行列に基づいて、セル2の等価シングルセルマルチユーザチャネル行列を算出して、これに基づいてセル2のシングルセルマルチユーザプレコーディング行列を算出する。本発明の別の実施例によれば、該等価シングルセルマルチユーザチャネル行列および端末(2,1)、(2,2)が受信したノイズに基づいて、セル1のシングルセルマルチユーザプレコーディング行列を算出することができる。
【0083】
セル2の送信機は、端末(2,1)、(2,2)それぞれのマルチセルデコーディング行列を下りリンクを介して通知する。セル2の送信機は、ユーザ端末(2,1)、(2,2)のデータおよび/または復調参考信号に対して、順にシングルセルマルチユーザプレコーディング、マルセルプレコーディング、アンテナマッチングを行い、最後に、下りリンクを介してユーザ端末に送信する。
【0084】
ステップS54において、セル1の送信機のシングルセルマルチユーザプレコーディング行列算出手段24は、セル1の送信機から端末(1,1)、(1,2)までの下りチャネル行列、セル1の送信機のアンテナマッチング行列、セル1のマルチセルプレコーディング行列および端末(1,1)、(1,2)のマルチセルデコーディング行列に基づいて、等価シングルセルマルチユーザチャネル行列を算出して、これに基づいてセル1のシングルセルマルチユーザプレコーディング行列を算出する。本発明の別の実施例によれば、該等価シングルセルマルチユーザチャネル行列および端末(1,1)、(1,2)が受信したノイズに基づいて、セル1のシングルセルマルチユーザプレコーディング行列を算出することができる。
【0085】
ステップS55において、セル1のシングルセルマルチユーザプレコーディング手段25、マルチセルプレコーディング手段26およびアンテナマッチング手段27は、端末(1,1)、(1,2)のデータおよび/または復調参考信号に対して、順にシングルセルマルチユーザプレコーディング、マルセルプレコーディング、アンテナマッチングを行い、最後に、下りリンクを介してユーザ端末に送信する。
【0086】
セル2の送信機は、端末(1,1)、(1,2)のマルチセルデコーディング行列を有線接続を介してセル1の送信機に通知する。セル1の送信機は、端末(1,1)、(1,2)それぞれのマルチセルデコーディング行列を下りリンクを介して通知する。
【0087】
各端末は、取得したマルチセルデコーディング行列に従い有用信号を復元する。各端末のマルチセルデコーディング手段は、受信したマルチセルデコーディング行列を利用して下りユーザ信号をデコーディングして、セル間の干渉を除去する。各端末のチャネル推定手段は、取得したマルチセルデコーディング行列および受信した下り信号に従いシングルセルマルチユーザ等価チャネルを推定し、しかも、取得したシングルセルマルチユーザ等価チャネルに従いシングルセルマルチユーザデコーディング行列を算出する。それから、各端末のマルチユーザデコーディング手段は、取得したシングルセルマルチユーザデコーディング行列に従い有用信号を復元して下りデータを検出する。
【0088】
以上の説明は、本発明を実現する実施形態のみに用いられる。当該分野の技術者が理解すべきこととして、本発明の範囲を逸脱しないいかなる修正または一部の差し替えは、いずれも本発明の請求項によって限定される範囲に属する。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲による保護範囲を基準とするべきである。