(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記突き当て部の方向を示す第2の支援情報を前記第1の支援情報と共に前記画像表示部に表示させることを特徴とする請求項2記載の作業支援情報表示装置。
前記制御部は、前記本体部の水平に対する傾斜度合いを示す第3の支援情報を前記第1の支援情報と共に前記画像表示部に表示させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業支援情報表示装置。
前記制御部は、前記ワークにおける前記本体部を装着すべき位置を示す第4の支援情報を前記画像表示部に表示させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業支援情報表示装置。
前記曲げ加工での前記ワークの変形に伴う前記本体部の姿勢変化に基づいて、前記ワークに装着されている前記本体部の位置を推定する装着位置推定部を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業支援情報表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、実施例の作業支援情報表示装置51及びその変形例により
図1〜
図22を参照して説明する。
作業支援情報表示装置51は、作業者の曲げ加工作業を支援するために、加工する金属板材であるワークWに取り付けて使用するものである。
まず、その構成について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は、作業支援情報表示装置51の外観斜視図である。
図2は、作業支援情報表示装置51をワークWに取り付けた状態を説明するための側面部である。
図3は、作業支援情報表示装置51をワークWに取り付けた状態で、作業者がワークWを把持した状態を示す部分的斜視図である。
図4は、作業支援情報表示装置51のブロック図である。
【0013】
作業支援情報表示装置51は、扁平の直方体形状を呈する本体部1と、概ね平板状のクランププレート2と、本体部1とクランププレート2とを連結する連結部3と、を有して構成されている。
【0014】
本体部1は、上ケース1aと下ケース1bとを有する。上ケース1aと下ケース1bとは、組み合わされて筐体1cを形成している。筐体1c内には、画像表示部4が収容されている。
上ケース1aは開口部1a1を有して概ね枠状に形成されている。
開口部1a1には画像表示部4の表示部4aが露出し、表示部4aに表示された画像が外部から視認できるようになっている。
表示部4aには、曲げ加工の作業を支援する支援情報が画像として表示される。
従って、作業者は、表示された画像を視認して内容を把握しつつ加工作業を実行することができる。
図1には支援情報の一例である白矢印M1が記載されている。
【0015】
筐体1cの側面には、作業者が操作をする、電源スイッチ1d,表示モード切替釦1e1,及び基準姿勢設定釦1e2などを含む操作部1fが設けられている。
本体部1におけるクランププレート2と対向する面には、金属に対する摩擦係数が高い材料(ゴムなど)で形成された当接部1gが取り付けられている。
【0016】
本体部1の内部には、画像表示部4の他に、センサS1,制御部CT,記憶部MR,無線通信部R,及びバッテリBが収容されている。
センサS1は、三軸姿勢センサであり、本体部1の姿勢を三次元的に逐次検出し、姿勢を特定するX,Y,Zの三軸成分を含む姿勢情報を検出信号SN1として出力する。
制御部CTは、作業支援情報表示装置51全体の動作を制御する。
記憶部MRは、予め設定された基本的加工情報が記憶されている書き換え不可領域と、情報を適宜書き換え可能な書き換え可能領域とを有している。
無線通信部Rは、外部に設置された曲げ加工に関与する装置(例えばNC装置)との間で、無線による送受信を行う。
【0017】
当接部1gにはセンサS2が取り付けられている。センサS2は、例えば誘導型近接センサであり、本体部1とクランププレート2との間に挟持されている金属板材(ワークW)の有無を逐次検出し、その有無情報を含めた検出信号SN2を出力する。
【0018】
クランププレート2は、矩形平板状のプレート2aと、厚さがプレート2aよりも厚く、プレート2aに連結して対向するプレート2aの一辺と平行な段部2bを形成する基部2cと、を有している。
プレート2aにおける本体部1と対向する面には、当接部1gと同様に、金属に対する摩擦係数が高い材料で形成された当接部2dが取り付けられている。
当接部2dの表面には縦目又は菱形のローレット状の凹凸が形成されて、ワークWに対して滑り難くなっている。
【0019】
連結部3は、本体部1の一側面部とクランププレート2の基部2cの一側面部とを連結するフレキシブルなベルト状に形成された部材である。
連結部3は、自由状態でU字状を維持しU字の開放端側を開閉する方向に弾性を有して形成されている。詳しくは、付勢部材を内蔵して本体部1の当接部1gとクランププレート2の当接部2dとを面接触させる方向(
図2における矢印DR2方向)に付勢するようになっている。また、この付勢力に抗する手の力により、I字状となる方向(
図2における矢印DR1方向)に広げることができる。
【0020】
図3に示されるように、作業者HBは、曲げ加工に際し、ワークWを、例えば、その左側の端部Wt1及び右側の端部Wt2をそれぞれ左手LH及び右手RHで把持する。
そして、曲げ加工を施す端部Wt3側を、曲げ加工機Kの上テーブルK1に装着されたパンチPと下テーブルK2に装着されたダイDとの間に挿入して、パンチP及びダイDよりも奥側に配設された一対の突き当て部K3a,K3b(以下、単に突き当て部K3とも称する)に当接させる。
次いで、端部Wt3を突き当て部K3に当接させた状態で曲げ加工機Kに曲げ動作を実行させ、曲げ加工線VLに沿った曲げ加工を施す。
【0021】
この曲げ加工に際して、作業支援情報表示装置51を、ワークWの所定の位置に予め装着しておく。所定の位置は、例えば端部Wt2である。
制御部CTは、支援動作として、表示部4aに、例えば白矢印M1を、ワークWにおいてこれから行う曲げ加工で突き当てるべき部位の方向を指すように表示させる。
この支援動作に基づいて、作業者HBは、その白矢印M1が指す方向の部位(
図3では端部Wt3)を突き当て部K3に当接させればよく、作業が容易になる。
【0022】
ここでセンサS1について
図5を参照して説明する。
図5に示されるように、本体部1に収容されたセンサS1は、センサS1自身の姿勢を、方位(例えば北の方向)及び重力の方向とを基準に、互いに直交するX,Y,Zの三軸成分で特定し、各軸成分で特定された姿勢の情報(姿勢情報)を出力信号SN1に含めて出力する。
また、本体部1において、センサS1は、三軸の内のいずれかの軸(例えばY軸)が、クランププレート2の段部の延在方向と一致する姿勢で収容されている。
制御部CTは、本体部1が予め定められた基準となる姿勢となっている状態での三軸成分を、基準三軸成分(X0,Y0,Z0)として記憶部MRに記憶させる(後述する「基準姿勢の設定(Step2)」)。
そして、記憶した基準三軸成分と、任意姿勢の三軸成分(x,y,z)と、を比較し、各軸毎に差分(ΔX,ΔY,ΔZ)をΔX=X0−x,ΔY=Y0−y,ΔZ=Z0−zとして算出することで三軸それぞれの移動量を得て、この各移動量から任意姿勢を特定することができる。
そして、ワークWにおける予め決められた位置に装着された本体部1について、曲げ加工に伴って生じる姿勢変化が曲げ加工のプログラムから推定できるので、曲げ加工で変化した後の推定姿勢と、曲げ加工後に実際にセンサS1から得られた姿勢と、を比較することで、曲げ加工が正しく行われたか否か、を判定することができる。
また、加工情報として予め得られるワークWの形状から、次の曲げ加工で突き当てるべきワークWにおける部位が把握されるので、曲げ加工による変化後の姿勢を考慮してその部位の方向を示す支援情報を表示部4aに表示させる。
【0023】
この曲げ加工の作業に対する支援動作の一例を、
図6〜
図14を参照して詳述する。ここで説明する曲げ加工の例は、ワークW1に対し2回の曲げ加工を施すものである。
具体的には、
図8のワークW1に示されるように、1回目が、ワークW1の端部Wt11に平行な曲げ加工線VL1における曲げ加工であり、2回目が、端部Wt11の隣の端部Wt13に平行な曲げ加工線VL2における曲げ加工である。
【0024】
<A:加工情報のダウンロード>
作業者により操作部1fを介して電源投入やダウンロード実行指示等の指示があると、制御部CTは、無線通信部Rを介して、外部のNC装置等からこれから行う曲げ加工に関する加工情報をダウンロードして入手する(Step1)。
制御部CTは、入手した加工情報を記憶部MRに記憶させる。
入手する加工情報には、ワークW1のサイズ及び形状,曲げ加工回数,ワークWにおける各曲げでの折り曲げ線の位置,各曲げ加工前後のワークW1の三次元的に形状などが含まれている。
【0025】
<B:基準姿勢の設定>
作業者は、
図6に示されるように、作業支援情報表示装置51を、突き当て部K3の基準突き当てラインLN1とワークW1を突き当てる段部2bの当接ラインLN2とが直交すると共に本体部1が水平状態となる基準姿勢にし、基準姿勢設定釦1a2を押して初期状態として設定する(Step2)。
この設定により、基準姿勢での基準三軸成分(X0,Y0,Z0)が記憶部MRに記憶される。
この初期状態を設定するときの本体部1の高さ方向の位置(厳密にはセンサS1の位置)は、突き当て部K3と同じ高さ(水平位置)であることが望ましい。従って、下テーブルK2上に、載せれば基準姿勢となる設定用の台などを置き、その上に作業支援情報表示装置51を載せて設定するとよい。
この基準姿勢の設定は、加工情報のダウンロード(Step1)より先に行ってもよい。
制御部CTは、基準姿勢の設定(Step2)が終了したら、次の加工に供されるワークW1に対してこの作業支援情報表示装置51を装着する位置を示す装着位置情報を、支援情報として表示部4aに表示させる(Step3)。
【0026】
<C:装着位置情報の表示>
装着位置情報の表示例は
図7に示される。この表示例において、制御部CTは、ダウンロードした加工情報に基づき、ワークW1の外形形状を縮小表示した外形線N1と、作業支援情報表示装置51を示すシルエットN2と、シルエットN2を注視させるための矢印N3と、外形線N1に対するシルエットN2の位置の詳細である付帯情報N4と、を表示させる。
付帯情報N4は比率であり、この例において、作業支援情報表示装置51は、ワークW1の一対の短手辺の一方(端部Wt12)に装着すべきであること、及び、その装着位置は、一対の長手辺までの距離比が4:5となる位置であることが把握される。
この装着位置は、これからワークW1に施す曲げ加工において、取り付けた作業支援情報表示装置51がその大きさや形状を考慮して加工の妨げになることがない位置として予め設定されている。この装着位置の情報は、ダウンロードした加工情報に含まれているか、または加工情報に基づいて制御部CTが生成する。
作業者HBは、表示部4aに表示されたこの装着位置情報に基づいて、作業支援情報表示装置51を、ワークW1の所定の装着位置に取り付ける(Step4)。
このように、表示部4aに装着位置情報が表示されるので、作業者HBは、作業支援情報表示装置51を、ワークW1のどの位置に装着するべきかが容易に視認把握できると共にその位置に確実に装着することができる。
【0027】
作業支援情報表示装置51がワークW1に装着されると、センサS2がワークW1の存在を検出し、「ワーク有」の有無情報を含む検出信号SN2を出力する。
制御部CTは、(Step3)において装着位置情報を表示部4aに表示させた後、検出信号SN2を常に監視してワークの有無を随時判定する(Step5)。
制御部CTは、検出信号SN2にワーク有の情報が含まれて入来した(Step5:Yes)と判定したら、作業支援情報表示装置51がワークW1に装着されたものとして、第1回目の曲げ加工に際し突き当て部K3に突き当てるべき部位の方向を示す白矢印を、支援情報として表示部4aに表示させる(Step6)。
一方、検出信号SN2からワーク有の情報の入来が無く(Step5:No)、かつ所定時間が経過した場合(Step6−1:Yes)、制御部CTは、表示部4aに「未装着」等の未装着情報を表示させる(Step7)。
作業者が作業支援情報表示装置51をワークW1に装着したにも拘わらず「未装着」の表示が出た場合は、誤装着の可能性がある。この未装着情報の表示により、作業者に対し、装着状態のチェックや再装着(Step8)が促される。
【0028】
<D:第1回加工用の支援情報の表示>
制御部CTが(Step6)において表示させる白矢印M1は、(Step1)でダウンロードした、ワークW1の形状及び折り曲げ線VL1の位置などから判定したワークW1の曲げ加工部位等の加工情報に基づき、突き当てすべき部位の方向を向く矢印である。
例えば、
図8及び
図8におけるA部拡大図である
図9(a)において、ワークW1に対する第1回目の曲げ加工が曲げ加工線VL1の位置で予定されている場合、突き当て部K3には、ワークW1の端部Wt11を当接させることになる。
この場合、制御部CTは、表示部4aに、ワークW1の突き当て部位である端部Wt11の方向を示す白矢印M1を支援情報として表示させる。
【0029】
<E:第1回姿勢適正化作業>
作業者は、
図10に示されるように、把持したワークW1を、表示部4aに表示された白矢印M1の示す方向が突き当て部K3に向くように回し(矢印DR3参照)、端部Wt11を突き当て部K3に当接させる(矢印DR4参照)。これは第1回の曲げ加工に向けてのワークW1の姿勢適正化作業である(Step9)。
【0030】
突き当て部位の方向を示す支援情報の表示は、白矢印M1のみを表示させるものに限らない。
例えば、
図9(b)に示されるように、制御部CTは、表示部4aに、ワークW1において突き当てる部位の方向を指す白矢印M1と、突き当て部K3の方向を指す色矢印M2と、を、支援情報として併せて表示させてもよい。
この色矢印M2の表示において、制御部CTは、(Step2)で設定した基準姿勢と、センサS1からの検出信号SN1に含まれる姿勢情報から得られる現時点での姿勢と、を比較し、現時点の姿勢において突き当て部K3が存在する方向を演算により求めてその方向を示すようにする。
制御部CTは、この方向の算出を所定周期(例えば100ms程度)で繰り返し実行する。そして、ワークW1の姿勢(向き)が変わる姿勢変換中も、遅延を作業に支障のない程度に抑えたほぼリアルタイムで、色矢印M2が常に突き当て部K3の方向を示すように更新表示させる。
【0031】
姿勢適正化作業において、作業者は、白矢印M1が示す方向と色矢印M2が示す方向とが合致するように、ワークW11を動かしてその姿勢を変えればよい。
図9(b)に示された例では、作業者は、ワークW1を、時計回り方向に角度θaだけ回転させれば白矢印M1の示す方向と色矢印M2の示す方向とが合致し、その合致させた姿勢で、端部Wt11が突き当て部K3に対し平行対向することが、視認により容易に把握できる。
【0032】
第1回の姿勢適正化作業(Step9)の後、作業者のペダル操作等により第1回の曲げ加工を実施する(Step10)。この曲げ加工でワークW1には、フランジWf1(
図11参照)が形成される。
【0033】
<F:第2回加工用の支援情報の表示>
第1回の曲げ加工を完了した旨の案内が、NC装置から無線通信部Rを介して入手されると、制御部CTは、記憶部MRに記憶された加工情報の内の、第2回の曲げ加工の情報を参照し、表示部4aに、ワークW1において第2回の曲げ加工で突き当て部K3に付き当てるべき部位の方向を、白矢印M1により支援情報として表示部4aに表示させる(Step11)。
具体的には、第2回の曲げ加工が曲げ加工線VL2の位置で予定されている場合、突き当て部K3には、フランジWf1とされた端部Wt11の隣の端部であって曲げ加工線VL2と平行な端部Wt13を当接させることになる。
従って、制御部CTは、
図11に示されるように、表示部4aに、ワークW1の突き当て部位の方向を示す白矢印M1を、端部Wt13の方を向くように表示させる。また、この表示において、(Step5)と同様に、突き当て部K3の方向を指す色矢印M2を併せて表示させてももちろんよい。
【0034】
<G:第2回姿勢適正化作業>
図12に示されるように、作業者HBは、ワークW1において、表示部4aに表示された白矢印M1の指す方向が突き当て部K3に向くように、ワークW1を回動させ(
図12における矢印DR5参照)て、端部Wt13を突き当て部K3に当接させる(矢印DR6参照)。これは第2回の曲げ加工に向けてのワークW1の姿勢適正化作業である(Step12)。
【0035】
第2回の姿勢適正化作業(Step12)の後、作業者のペダル操作等により第2回の曲げ加工を実施する(Step13)。
図13に示されるように、この第2回の曲げ加工でワークW1には、ほぼ直角に立ち上がるフランジWf2が形成される。
第2回の曲げ加工を完了した旨の案内が、NC装置から無線通信部Rを介して入手されると、制御部CTは、記憶部MRに記憶された加工情報の内の、曲げ加工回数等の情報を参照して全曲げ加工が終了したと判断し、表示部4aに、曲げ加工が終了した旨の支援情報を表示させる。表示例としては、「END」という文字M5である(Step14)。
【0036】
この曲げ加工終了を知らせる支援情報が表示されることで、作業者は、予め加工プログラム等の段取りから把握していた曲げ加工の作業終了を、作業支援情報表示装置51からの支援情報によっても確認することができ、作業の確度が向上し、誤作業が防止される。
制御部CTは、この加工終了時点での表示以外にも、各作業の区切り毎に、作業工程のどの段階にあるかを視覚的に把握できる加工過程に関する支援情報M5を表示させてよい。
【0037】
上述のように、作業支援情報表示装置51において、制御部CTは、ワークW1における次の曲げ加工に際して突き当て部K3に突き当てるべき部位の方向を、視覚的に把握できる支援情報として表示部4aに表示させる。
また、加工の過程を視覚的に把握できる支援情報を表示部4aに表示させる。
また、ワークW1において突き当てるべき部位の方向に加え、突き当て部K3の方向もほぼリアルタイムで表示させる。この場合には、作業者HBは、ワークW1の姿勢を、どちらの回転方向にどれだけ回転させればよいか、を瞬時に把握することができ、作業が効率よく、より容易に、かつ確実に行える。
【0038】
上述した作業支援情報表示装置51は、提供する支援情報の確度を向上させる種々の機能を有するものに変形することができる。
その一つとして以下に説明する変形例1は、ワークに装着されている本体部1の位置を推定する装着位置推定部STを有して、ワークへの装着位置が所定の位置ではない場合に、それを早期に自己検出するための機能を備えたものであり、
図15を参照して説明する。以下の例では、装着位置推定部STは、制御部CTの内部に備えられているものとして説明する。
【0039】
図15は、突き当て部K3に突き当てたワークW2を、、パンチP及びダイDを用いて曲げ加工線VL3で折り曲げる曲げ加工における、加工前と加工後との状態を説明する断面図である。
すなわち、
図15(a)が曲げ加工前の状態、
図15(b)が曲げ加工後の状態である。また、各図には、作業支援情報表示装置51の本体部1が、曲げ加工線VL3よりも前方(作業者側)に装着された状態(F)(以下、F装着とも称する)と、後方(突き当て側)に装着された状態(R)(以下、R装着とも称する)と、の両方が記載されている。
【0040】
この曲げ加工を施すことにより、本体部1は、F装着の場合、
図15(b)の矢印DR7の方向に移動して曲げ加工位置側に下がった右下がりの傾斜姿勢となる。
一方、R装着の場合、
図15(b)の矢印DR8の方向に移動して曲げ加工位置側に下がった左下がりの傾斜姿勢となる。すなわち、傾斜方向が逆となる。
従って、制御部CTの装着位置推定部STは、センサS1の検出信号SN1に基づき把握される姿勢における傾きの正負を判定することで、本体部1が曲げ加工線VL3に対する前後どちら側に装着されているか、を判定することができる。
そして、予めダウンロードして記憶部MRに記憶させた加工情報と照合し、検出信号SN1から得られる傾斜姿勢の傾斜方向が、加工情報から把握される姿勢の傾斜方向と異なる場合、装着位置が誤っているとして、その旨の表示や警告表示を表示部4aに表示させる。これにより、作業者は、本体部1の装着位置の確認が促される。
【0041】
また、変形例2として、本体部1に加速度センサS3(
図4に破線で表示)を備えたものとしてよい。
図15(a)及び
図15(b)に示されるような、曲げ加工時のワーク変形に伴う作業支援情報表示装置51の移動における加速度は、曲げ加工線VL3からの離隔距離L1が遠いほど大きくなる。
そこで装着位置推定部STは、加速度センサS3から出力される検出信号SN3における加速度情報と、記憶部MRに記憶した加工情報から得られるパンチの降下速度情報と、から、曲げ加工線VL3から本体部1が装着された位置までの離隔距離L1を得ることができる。
従って、装着位置推定部STは、本体部1が曲げ加工線VL3に対して、前後どちら側にどれだけの離隔距離L1で装着されているかを、判定することができる。
また、装着位置推定部STは、予めダウンロードして記憶部MRに記憶させた加工情報と照合し、検出信号SN1及び検出信号SN3から得られる傾斜姿勢及び離隔距離L1の少なくともいずれかが、加工情報から把握される傾斜方向及び離隔距離L1と異なっている場合、装着位置が誤っているとしてその旨の表示や警告表示を表示部4aに表示させてもよい。
これにより、作業者は、本体部1の装着位置の確認が促される。
【0042】
制御部CTは、付帯情報として本体部1の傾斜方向を、(+)、(−)の正負で判別できるよう表示部4aに表示させてもよい。また、付帯情報として離隔距離L1を、その数値自体で、又は、正規の位置との差分として表示させてもよい。
例えば離隔距離L1の差分を表示させた場合、作業者は、本体部1を、表示部4aに表示される差分を見ながら再装着することで、差分が0(ゼロ)になる正しい位置で装着させることができる。
【0043】
上述の、曲げ加工に伴って傾いた本体部1の傾斜方向を把握することで、本体部1が曲げ加工線に対してどちらの側に装着されているかを判定する例を、
図16を参照して説明する。
【0044】
図16において、ワークW3に対し、まず曲げ加工線VL4、次いで曲げ加工線VL5の順に曲げ加工を施す場合、作業者HBは、加工線VL4において曲げ加工を施す場合は、端部Wt31を突き当て部K3に当接させ、加工線VL5において曲げ加工を施す場合は、ワークW3の向きを180°回転させて端部Wt32を突き当て部K3に当接させる。
【0045】
本体部1が、曲げ加工線に対し、突き当て部側に取り付けられている場合に傾斜する方向を(+)、作業者HB側に取り付けられている場合に傾斜する方向を(−)とすると、曲げ加工線VL4における曲げで傾斜方向が(+)となったら本体部1は領域AR1に装着されており、(−)となったら領域AR2又はAR3に装着されていることがわかる。
次いで、曲げ加工線VL5における曲げで傾斜方向が傾斜方向が(+)となったら、本体部は領域AR3に装着されており、(−)になったら領域AR1又はAR2に装着されていることがわかる。
従って、曲げ加工線VL4とその次の曲げ加工線VL5との曲げにおいて傾斜方向が、
(+)→(−)となれば、本体部1は領域AR1に装着されている。
(−)→(−)となれば、本体部1は領域AR2に装着されている。
(−)→(+)となれば、本体部1は領域AR3に装着されている。
ということがわかる。
【0046】
上述のような、支援情報として、突き当て方向を指す矢印(例:白矢印)又は二つの矢印(例:白矢印及び色矢印)を用いた表示は、作業者HBがワークWを、突き当て部K3に対して概ね水平となる姿勢(以下、水平姿勢とも称する)で把持している場合に充分な情報量が提供される。
【0047】
ここで、作業者HBが、ワークWを、水平姿勢に対し、仰角又は俯角が或る程度以上の角度となる姿勢で把持している場合の、表示部4aにおける表示について
図17〜
図20を参照して詳述する。
【0048】
図17は、突き当て部K3に対し、ワークW4の端部Wt41を突き当てる場合に、作業者HBが、ワークW4を、水平方向については上方からの平面視において時計回りに角度θaだけ傾いて、また、仰俯角については側面視で端部Wt41側が水平姿勢に対して仰角θbだけ傾いた姿勢て把持した状態を示している。
すなわち、
図17(a)は上方から見た図、
図17(b)は側方から見た図である。また、
図18は、作業支援情報表示装置51の表示部4aに表示された画像例である。
【0049】
作業支援情報表示装置51は、ワークW4の右側の端部Wt43に取り付けられている。この状態で、制御部CTは、表示部4aに、突き当てるべき位置である端部Wt41の方向を示す白矢印M1と、突き当て部K3の方向を示す色矢印M2と、を表示させる。
従って、白矢印M1は、ワークW4の姿勢が変わっても常に端部Wt43の方向を示すように表示される。
一方、色矢印M2は、ワークW4の姿勢に応じた矢印としてほぼリアルタイムに更新表示され、その表示時点でのワークW4の姿勢における突き当て部K3の方向を示すように表示される。
【0050】
制御部CTは、更に、仰角θbを示すスケールM3を支援情報として表示させる。
例として、例えば表示部4aの右側に作業者から見て前後となる縦のスケールM3を表示し、センターを突き当て部K3に突き当てる水平姿勢位置として黒ラインM3aを表示させる。
そして、縦スケールの上方を仰角の(+)、下方を仰角の(−)〔俯角としては(+)〕とし、仰角を縦スケールに変換させた際の、仰角θbに対応する距離L2の位置に色ラインM3bを、表示させる。
制御部CTは、黒ラインM3aを、ワークW4の姿勢にかかわらずセンタに表示させる一方、色ラインM3bを、センタからワークW4の姿勢における仰角θbに対応した距離L2だけ離隔した位置にほぼリアルタイムに更新表示させる。
距離L2は、仰角θbを例えば比例的に変換して得る。もちろん、比例変換に限らず、対数変換として、仰角θbが小さく0(ゼロ)に近い程、その差分が距離2に大きく反映するようにしてもよい。対数変換した場合は、水平姿勢位置に近い姿勢での仰角の微調整を行い易くなる。
【0051】
作業者は、表示部4aを見て、白矢印M1の示す方向が色矢印M2の示す方向と合致するようにワークW4を水平方向に回動させると共に、スケールM3において、色ラインM3bの位置が黒ラインM3aの位置と合致するようにワークW4の傾斜角度を調節し、突き当て部K3に当接させる。
この作業は、ワークW4の姿勢適正化作業であり、作業者は、表示部4aの画面上で、二つの矢印の方向の合致と二つのラインの位置の合致とを行えばよく、簡単に正しい突き当て姿勢で突き当てをすることができる。
【0052】
上述の仰角を含めた表示において、制御部CTは、作業支援情報表示装置51の本体部1の姿勢に応じて、表示内容を以下のように変更するようにしてもよい。
【0053】
図19は、作業支援情報表示装置51が、ワークW5の端部Wt52に装着されており、第1回目の曲げでフランジWf3として立ち上げられたことで、表示部4aが、次の曲げ加工線VL7に対して直交する姿勢になった状態が示されている。
次の曲げ加工は、端部Wt51を突き当ててそれに平行な曲げ加工線VL7において行われる予定でり、それに際して、作業者により、ワークW5が、仰角θbを(+)とする傾斜方向(作業者HB側が低い姿勢)で把持されている。
このような、表示部4aが曲げ加工線VL7にほぼ直交して交わり、鉛直方向に沿う画面の場合、制御部CTは、表示を、
図18に示される画面から
図20に示される画面に切り替える。
【0054】
図20は、
図19における矢視Y1図である。
制御部CTは、表示部4aに、次の加工に際して突き当てるべき部位の端部Wt51の方向を示す白矢印M1を表示させる。
また、水平姿勢を示す水平ラインM4aを表示する。表示部4aの画面は、この表示した水平ラインM4aにより上方の範囲AR4と下方の範囲AR5との二つの範囲に分割される。制御部CTは、範囲AR4と範囲AR5とに、それぞれ異なる色を付して表示する。
また、制御部CTは、水平ラインM4aを、ワークW5の姿勢に応じてほぼリアルタイムに更新表示させる。
【0055】
表示部4aの画面中央部には、水平ラインM4aに交わるように所定長さのワーク傾斜ラインM4bを背景に対して強調された色で表示させる。
ワーク傾斜ラインM4bは、作業者が把持したワークW4における水平姿勢にすべき部分(
図19のワークW5では平板部W5c)の傾斜を示すラインであり、制御部CTは、このワーク傾斜ラインM4bを、ワークW5の姿勢に応じてほぼリアルタイムで更新表示させる。
これらの表示により、作業者HBは、水平ラインの方向とワークW4の傾斜方向との違い、及びその程度(角度)を一瞥で把握できる。
【0056】
制御部CTは、ワーク傾斜ラインM4bにおける突き当て部K3側の端部に、ワークW5を水平姿勢にするための移動方向を示す矢印M4cを表示させる。
作業者は、この矢印M4cの方向に、ワークW5の端部Wt51側を移動(この例では下げる)し、ワーク傾斜ラインM4bと水平ラインM4aとを合致させることで、ワークW5の仰角θbを0°とすることができる。
【0057】
また、作業支援情報表示装置51は、次の機能を有する変形例3としてよい
折り曲げ工程において、ワークWの同じ側を突き当てる曲げ工程が複数回ある場合、制御部CTは、ワークWの突き当て側の外形シルエットを表示し、次に突き当てる部分を示す表示を行う。その表示例は、
図21に示される。
【0058】
制御部CTは、表示部4aの画面に、白矢印M1を縮小して表示させると共に、ワークWの突き当て側の外形シルエットN5と、次の曲げ加工で曲げる位置となる曲げ加工線VL6と、後の曲げ加工で曲げる位置となる曲げ加工線VL7と、を表示させる。その際、次の曲げ加工線VL6を、曲げ加工線VL7に対し色、太さ、線種等を変えて充分目立つように表示させる。突き当て部K3の形状を併せて表示させてもよい。
この突き当てる部位の方向のみならず、突き当てる部位を示す支援情報が表示されることにより、作業者は、突き当てる部位のある方向が同じで、突き当てる部位が複数ある場合に、次の突き当て部位を容易に特定し、正しい突き当て部位を突き当て部K3に突き当てることができる。
従って、作業者HBは、曲げ加工作業をより容易に、確実に行うことができる。
【0059】
以上、詳述したように、作業支援情報表示装置51は、曲げ作業を支援する支援情報を表示部4aに表示するので、作業者は、曲げ加工作業を、極めて容易に行うことができる。
また、作業支援情報表示装置51は、曲げ加工に供するワークに取り付けて使用されるので、表示部4aを見る視線と加工するワークを見る視線とは、左右方向はもとより上下方向もほとんど移動を必要としない。
従って、作業者が曲げ加工する際の視線移動はほとんどなく、作業をより効率良く行うことができる。
また、作業支援情報として、突き当て部位の方向や突き当て部を、矢印の指す方向で案内するので、作業者による二次元と三次元との間での認識変換が不要で、直感的な判断も可能となり、曲げ作業の効率が大幅に向上すると共に、誤認がより確実に防止される。
【0060】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において更に別の変形例としてもよい。
【0061】
連結部3を、フリーストップ式のボールクランプ構造の連結部3Aとしてもよい。連結部3Aを有する変形例4なる作業支援情報表示装置51Aの姿勢例を、
図22に示す。
作業支援情報表示装置51Aは、クランププレート2に相当するプレート2Aにマグネット2Aaを備え、ワークWに対しマグネット2Aaの磁力により装着されるものである。
【0062】
図22(a)は、標準姿勢であって、本体部1Aの表示部1Aaは上方を向く姿勢とされた状態を示す。プレート2Aは複数箇所のマグネット2AaによってワークWに磁気的に吸着されている。
図22(b)は、標準姿勢から本体部1Aを90°起こした状態を示す。表示部1Aaは、当図における右方を向いている。
図22(c)は、
図22(b)に対して本体部1Aを180°回動させた状態を示す。表示部1Aaは当図における左方を向いている。
図22(d)は、
図22(c)に示された姿勢から本体部1Aを外方に180°寝かせた状態を示す。表示部1Aaは上方を向いている。
【0063】
この構造によれば、ワークWにおける作業支援情報表示装置51Aを取り付けた部位の姿勢に応じて表示部1Aaが最適となる向きに表示部1Aaを向けることができ、作業効率がより向上する。
例えば、
図19に示されたような表示部1Aaが概ね鉛直面となる姿勢の場合、本体部1Aを90°起こすと、
図22(e)に示されたように表示部1Aaがほぼ水平な面となるので、作業者にとって表示された画像が見易くなる。
連結部3Aには、プレート2Aに対する本体部1Aの姿勢を検出するセンサS4(
図4参照)を備え、プレート2Aに対する本体部1Aの姿勢を示す姿勢情報を含む検出信号SN4を制御部CTに向け出力する。
制御部CTは、センサS1からの検出信号SN1に加え、検出信号SN4から得られる姿勢の情報も考慮して本体部1Aの姿勢を特定し、曲げ作業の支援情報を画像表示させる。
【0064】
作業支援情報表示装置51Aでは、センサS1をプレート2Aに備えていてもよい。この場合、センサS1からの情報を、センサS4からの情報に影響されない独立したものとすることができる。
【0065】
表示部4aに表示させる際の色は、限定されない。従って、白矢印M1の色は、白でなくてよく、模様を付してあってもよい。複数の情報を表示させる場合は、それぞれを独立して誤認なく視認できる配色としたり模様を付すのが好ましい。
作業支援情報表示装置51,51Aをワークへ取り付ける方法及びその構造は、上述した挟み込む及び磁力によるものに限らない。また、挟みこみの場合に付勢力を発揮する付勢部材も限定されない。例えば、圧縮,引っ張り,及び捻りバネのいずれでもよく、他に樹脂バネ等であってもよい。
【0066】
曲げ加工に関する加工情報は、上述の無線通信部Rを介して入手するものに限らない。ディスクやフラッシュメモリ等の記憶媒体を介して入手するようにしてもよい。
支援情報として表示する突き当て部K3に突き当てる部位の方向を示す画像は、突き当てる部位以外の曲げ加工に関与する部位であればよい。
例えば、曲げ加工機への供給搬出にロボットを導入している場合等では、ロボットのハンドにクランプさせる部位であってもよい。