特許第6018850号(P6018850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018850
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】金属製管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20161020BHJP
   B32B 15/02 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20161020BHJP
   F16L 9/10 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B32B1/08 A
   B32B15/02
   B32B15/04 B
   F16L9/10
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-198254(P2012-198254)
(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公開番号】特開2014-51063(P2014-51063A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】岡田 勝男
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−028880(JP,A)
【文献】 特開2002−060247(JP,A)
【文献】 特開2001−047559(JP,A)
【文献】 米国特許第06071563(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00− 7/26
F16L 9/00−11/26
F16L57/00−58/18
C23C24/00−30/00
C23D 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製管本体に表面仕上げ処理を施し、次いで、表面仕上げ処理を施した前記金属製管本体の少なくとも内面にシリカを主成分としたホーロー用フリットを塗装し、その後、加熱炉により焼成し、次いで、徐冷し、かくして、前記金属製管本体の少なくとも内面にホーローを施す、金属製管の製造方法において、前記ホーロー用フリットにおけるシリカの含有量を50wt%から100wt%の範囲内とし、前記金属製管本体の焼成温度を600℃から1000℃の範囲内とし、前記金属製管本体の焼成時間を10分から180分の範囲内とし、前記ホーローの厚さを0.1mmから1.0mmの範囲内とし、前記金属製管本体の冷却速度を100℃/分から200℃/分の範囲内としたことを特徴とする、金属製管の製造方法。
【請求項2】
前記金属製管本体は、鋳鉄製または鉄製であることを特徴とする、請求項1に記載の金属製管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホーロー(琺瑯)を施した金属製管の製造方法、特に、管路を構成する鋳鉄または鉄等からなる金属製管本体の少なくとも内面にホーローを施した金属製管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水道用あるいは下水道用等に使用されている塗装金属製管の内面塗装には、2液の液状エポキシ樹脂塗料あるいはエポキシ樹脂粉体塗料等が使用され、外面塗装には、一般的に、液状の合成樹脂塗料が使用されている。
【0003】
特許文献1(特開2003−11253号公報)には、エポキシ樹脂の成分を特定したエポキシ樹脂粉体塗料を塗装した金属管が開示されている。
【0004】
内面塗装にエポキシ樹脂粉体塗料を使用する場合、エポキシ樹脂粉体塗料には、溶剤が含有されておらず、予熱した金属製管に塗装することから、水質に悪影響を及ぼす懸念は少ないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等による環境ホルモンの懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−11253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように内面塗装に2液の液状エポキシ樹脂塗料を使用する場合、一般に液状エポキシ樹脂塗料には、溶剤が含有されているので、厚塗りすると乾燥に時間がかかり、また、水質に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0007】
これに対して、エポキシ樹脂粉体塗料には、上述したように、溶剤が含有されておらず、予熱した金属製管に塗装することから、水質に悪影響を及ぼす懸念は少ないので、内面塗装には、エポキシ樹脂粉体塗料が用いられているが、これを外面塗装に適用する場合は、塗膜が硬く、耐衝撃性が低いことから不向きである。
【0008】
一方、外面塗装については、一般的に使用されている液状の合成樹脂塗料は、厚塗りが困難で、また、乾燥に時間がかかり、防食性も低いので、腐食性の土壌に埋設された場合、短期間に金属製管が腐食して、短期間にその寿命を終えるケースがある。
【0009】
また、従来は、管の内外面を同一の塗料による同時塗装は不可能であり、一般的に内面塗装後に外面塗装を行っているのが現状である。
【0010】
従って、この発明の目的は、水質に悪影響を及ぼさず、管路を構成する金属製管本体の金属組織と一体化することから防食性能を長期間に亘って維持することができ、しかも、抜群に衛生性に優れる、少なくとも内面にホーローを施した金属製管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、上記目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた。この結果、以下のような知見を得た。
【0012】
ホーローは、有機物も溶剤も含有せず、しかも、環境ホルモン等の有害な物質も含まないことから、水質に悪影響を及ぼすことはない。また、管の内外面に同時にホーローを施すことも可能であり、さらに、徐冷すれば、直ちに使用可能な状態となる。
【0013】
この発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0014】
請求項1記載の発明は、金属製管本体に表面仕上げ処理を施し、次いで、表面仕上げ処理を施した前記金属製管本体の少なくとも内面にシリカを主成分としたホーロー用フリットを塗装し、その後、加熱炉により焼成し、次いで、徐冷し、かくして、前記金属製管本体の少なくとも内面にホーローを施す、金属製管の製造方法において、前記ホーロー用フリットにおけるシリカの含有量を50wt%から100wt%の範囲内とし、前記金属製管本体の焼成温度を600℃から1000℃の範囲内とし、前記金属製管本体の焼成時間を10分から180分の範囲内とし、前記ホーローの厚さを0.1mmから1.0mmの範囲内とし、前記金属製管本体の冷却速度を100℃/分から200℃/分の範囲内としたことに特徴を有するものである。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記金属製管本体は、鋳鉄製または鉄製であることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、内面については、主成分が無機質であるため水質に全く悪影響を及ぼさず、透水性もないことから長期の耐久性を維持することができる。また、外面については、主成分が無機質であるため耐食性に優れていることから、防食性能を長期間に亘って維持することができると共に外面の金属組織とホーローとが一体化していることから耐衝撃性に優れる。しかも、内外面同時ホーロー化が可能であり、さらに、焼成後、徐冷することによって直ちに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明により製造された金属製管を示す部分断面図である。
図2】この発明の、金属製管の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、この発明の一実施態様を、鋳鉄管本体の内外面にホーローが形成された場合を例に挙げて、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、この発明により製造された金属製管を示す部分断面図である。
【0028】
図1に示すように、この発明により製造された金属製管は、金属製管本体としての鋳鉄管本体1と、鋳鉄管本体1の内外面に形成された、シリカを主成分とするフリットを焼成することにより形成されたホーロー2とから構成されている。
【0029】
ホーロー2におけるシリカの含有量は、50wt%から100wt%の範囲内とする。シリカの含有量が50wt%未満では、鋳鉄管本体1の金属組織と十分に一体化しないので、密着性が劣り、耐衝撃性も低下する。
【0030】
ホーロー2の焼成温度は、600℃から1000℃の範囲内とする。焼成温度が600℃未満では、焼成が不完全となり、金属組織との一体化が十分でなく密着性が劣る。一方、焼成温度が1000℃超えでは、ホーロー2がオーバーベイクとなり、変色や皮膜の固化が発生し、耐衝撃性が低下する。
【0031】
ホーロー2の焼成時間は、10分から180分の範囲内とする。焼成時間が10分未満では、焼成が不完全となり、金属組織との一体化が十分でなく密着性が劣る。一方、焼成時間が180分超えでは、ホーロー2がオーバーベイクとなり、変色や皮膜の固化が発生し、耐衝撃性が低下する。
【0032】
ホーロー2の厚さは、0.1mmから1.0mmの範囲内とする。ホーロー2の厚さが0.1mm未満では、ピンホールの発生が多くなり、耐食性能が著しく低下する。一方、1.0mm超えでは、ホーロー2の膜厚が厚すぎて脆くなり、耐衝撃性が低下する。
【0033】
ホーロー2の冷却速度は、200℃/分以下とする。ホーロー2の冷却速度が200℃/分超えでは、急冷のためホーロー2が脆くなり、耐衝撃性が低下する。
【0034】
以上は、この発明を鋳鉄管に適用した場合であるが、鉄管等の金属製管に適用する場合も鋳鉄管の場合と同様である。
【0035】
次に、この発明の、金属製管の製造方法の一実施態様を、鋳鉄管本体の内外面にホーローを施す場合を例に挙げて、図面を参照しながら説明する。なお、鋳鉄管本体の内面のみにホーローを施す場合も基本的には、内外面にホーローを施す場合と同様である。
【0036】
図2は、この発明の、金属製管の製造方法を示す工程図である。
【0037】
図2に示すように、この発明により金属製管を製造するには、まず、従来法により鋳造後、焼鈍した鋳鉄管本体に内外面仕上げ処理を施す。この内外面仕上げ処理は、重要であり、表面をグリットブラスト等によりブラスト処理を行って、鋳鉄管本体の内外面から錆びや酸化スケール等を除去する。その仕上げ程度は、Sa2(1/2)以上になるように行う。 次いで、内外面仕上げ処理を施した鋳鉄管本体の内外面に、シリカを主成分とするフリットを刷毛あるいはスプレーによりホーローの厚みが0.1mmから1.0mmになるように塗装を行う。次いで、塗装後の鋳鉄管本体を加熱炉に装入して600℃から1000℃の温度範囲に加熱し、10分から180分の範囲内で焼成した後、200℃/分以下の冷却速度で徐冷する。この後、検査を行い、保管する。
【0038】
このようにして、高い耐食性能を有し、水質衛生性に優れた製品としての、内外面にホーローが施された鋳鉄管を製造することができる。
【0039】
以上は、この発明を鋳鉄管の製造方法に適用した場合であるが、鉄管等の金属製管の製造方法に適用する場合も鋳鉄管の場合と同様である。
【実施例】
【0040】
次に、この発明を実施例により、さらに説明する。
【0041】
口径φ100mm、肉厚7.5mm、長さ700mmのダクタイル鋳鉄管からなる鋳鉄管本体の内外面にグリットブラストによりブラスト処理を施して、鋳鉄管本体の内外面から錆びや酸化スケールを除去した。
【0042】
次いで、表面仕上げ処理を施した鋳鉄管本体の内外面に、エアレススプレー装置を使用して、ホーローの厚さが0.3mmになるようにシリカ70wt%と残部ガラス粉および石粉を30wt%含有するフリットを塗装した。
【0043】
次いで、フリットを塗装した鋳鉄管本体を加熱炉に装入して850℃で30分間加熱した。その後、加熱炉から取り出して100℃/分の速度で冷却した。
【0044】
このようにして、内外面にホーローを施した鋳鉄管を製造した。
【0045】
そして、上記鋳鉄管の外面側に対して、複合サイクル試験を行った。試験条件は、以下の通りである。
【0046】
複合サイクル試験装置:スガ試験機製CPY−90型。
塩水噴霧試験:JIS Z 2371規定の性能を満足するもの。
乾燥試験:
(a)温度条件:(RT+10℃)〜70±1℃。
(b)湿度条件:温度60℃において25±5%rh。
湿潤試験(高温):
(a)温度条件:(RT+10℃)〜50±1℃。
(b)湿度条件:温度50℃において95%rh以上。
外気導入試験:約外気温度・温湿度制御なし。
試験サイクル:JIS K 5600−7−9の付属書C(規定)のサイクルA。
試験サイクル数:360サイクル。
【0047】
この複合サイクル試験を行った結果、赤さび等の発生が無く良好であることが確認できた。
【0048】
この結果から明らかなように、この発明により製造された鋳鉄管によれば、高い防食性能を長期間に亘って維持することが確認できた。
【0049】
また、上記鋳鉄管の内面側に対して、水質衛生性を確認するために、浸出性試験および環境ホルモン分析試験を行った。試験条件は、以下の通りであった。
【0050】
浸出性試験:
試験方法:JWWA Z 108(水道用資機材−浸出試験方法)により行った。
試験条件:接触面積比:550cm2/L、浸出時間:16時間、
浸出温度:23℃、コンディショニング:無し。
分析項目:平成12年厚生省令第15号「水道施設の技術的基準を定める省令」別表
第2に掲げる項目およびJWWA K 139(水道用ダクタイル鋳鉄管
用合成樹脂塗料)の浸出性に掲げる項目。
【0051】
この浸出性試験を行った結果、全ての分析項目について、品質基準を満足していた。
【0052】
環境ホルモン分析試験:
分析方法:ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)により行った。
【0053】
この分析試験を行った結果、ビスフェノールA等の環境ホルモンは検出されなかった。
【符号の説明】
【0054】
1:鋳鉄管本体
2:ホーロー
図1
図2