特許第6018852号(P6018852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018852
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】要因分析・表示方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20161020BHJP
【FI】
   G06Q10/06
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-201075(P2012-201075)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-56448(P2014-56448A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆
【審査官】 大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−314199(JP,A)
【文献】 特開2011−150496(JP,A)
【文献】 森下 真一,流通業におけるデータマイニングの応用,第29回人工知能セミナー講演テキスト,日本,社団法人人工知能学会,1995年 7月 4日,pp.53-62
【文献】 野地 幸一,サービスオーダ投入の効率化と品質向上を目指して SO入力支援システムの開発,NTT技術ジャーナル,社団法人電気通信協会,1992年 8月 1日,第4巻 第8号,pp.14-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部、表示部および記憶部を有する因果関係表示システムが、前記表示部に因果関係を表示する方法であって,
前記処理部が、複数の要因候補データが1の結果データ関連している場合,該要因候補データが独立に前記結果データに関連しているのか,前記複数の要因候補データ相互が関連して前記1の結果データに関連しているのかを区別して前記表示部に表示し、
前記制御部が、複数の要因候補データ及び複数の結果データのそれぞれの組み合わせの相関関係を算出し、算出した相関関係に基づいて、前記要因候補データが独立に前記結果データに関連しているのか,前記複数の要因候補データ相互が関連して前記1の結果データに関連しているのかを判定し、
前記表示部が、前記要因候補データが独立に前記結果データに関連している場合は、各要因候補データと前記結果データとを各要因候補データから前記結果データに向けた矢印で結んで表示し、
前記表示部が、前記複数の要因候補データ相互が関連して前記1の結果データに関連している場合は、各データからの線を1点に集約して表示し、
前記記憶部が、ユーザから入力される誤関係を含む業務知識情報を保持し、
前記制御部が、前記表示された因果関係を保持された業務知識に基づいて修正し、
前記制御部が、前記要因候補データと前記結果データ各々の間の寄与率を算出し,
前記表示部が、前記算出した寄与率の値を表示し、
前記制御部が、前記表示された要因データの値を変化させた場合の他のデータに対する影響値を算出し、
前記表示部が、前記算出した影響値を表示し、
前記制御部が、前記要因候補データと結果データとの間の相関を求め、前記算出した相関が高いデータ同士をグループとし,前記グループが要因候補データと結果データの2データから構成される場合には要因が独立に結果に関連していると判断し、前記グループが3データ以上のデータから構成される場合には該グループの要因候補データが相互に関連していると判断することを特徴とする因果関係表示方法。
【請求項2】
因果関係表示システムであって,
複数の要因候補データが1の結果データが関連している場合,該要因候補データが独立に前記結果データに関連しているのか,前記複数の要因候補データ相互が関連して前記1の結果データに関連しているのかを区別して表示する表示部と、
複数の要因候補データ及び複数の結果データのそれぞれの組み合わせの相関関係を算出し、算出した相関関係に基づいて、前記要因候補データが独立に前記結果データに関連しているのか,前記複数の要因候補データ相互が関連して前記1の結果データに関連しているのかを判定する制御部と、
ユーザから入力される誤関係を含む業務知識情報を保持する記憶部と、を備え、
前記表示部は、
前記要因候補データが独立に前記結果データに関連している場合は、各要因候補データと前記結果データとを各要因候補データから前記結果データに向けた矢印で結んで表示し、
前記複数の要因候補データ相互が関連して前記1の結果データに関連している場合は、各データからの線を1点に集約して表示し、
前記制御部は、
前記表示された因果関係を保持された業務知識に基づいて修正し、
前記制御部は、
前記要因候補データと前記結果データ各々の間の寄与率を算出し,
前記表示部は、
前記算出した寄与率の値を表示し、
前記制御部は、
前記表示された要因データの値を変化させた場合の他のデータに対する影響値を算出し、
前記表示部は、
前記算出した影響値を表示し、
前記制御部は、
前記要因候補データと結果データとの間の相関を求め,
前記算出した相関が高いデータ同士をグループとし,
前記グループが要因候補データと結果データの2データから構成される場合には要因が独立に結果に関連していると判断し,
前記グループが3データ以上のデータから構成される場合には該グループの要因候補データが相互に関連していると判断することを特徴とする因果関係表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,企業等における事故・故障等の要因分析・表示方法に関する。更に,本発明は,企業等における非財務情報の財務情報に対する関連性分析・表示システム,及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IT技術の発達により,企業において,保全に関する記録や,製造・営業等の企業活動に関する大量の非財務情報が蓄積されるようになってきた。このような状況の下,企業活動において事故・故障等が発生した場合,要因を求めて該要因の保全活動を優先する事等を目的として,蓄積された大量の情報の中から,該事故・故障等の因果関係を分析し,要因分析のニーズが高まっている。また,企業活動に影響を与える投資対象の優先順位付け等を目的として,企業におけるある時点における財務状況が,どのような企業活動の要因でそのような状況になったのか,因果関係を分析する要因分析のニーズが高まっている。 上記のような要因分析を行い,その結果を表示する方法の例として,ベイジアンネットワークにおけるK−2アルゴリズム(非特許文献1)が知られている。ベイジアンネットワークはカテゴリに分類された変数を前提とした循環の無いグラフ構造であり,K−2アルゴリズムは尤度と構造の単純さを指標とした情報量基準を評価関数として該グラフ構造を求める。
【0003】
一方,特許文献1には,医療分野におけるバリアンスの原因分析を行う方法とその表示方法が開示されている。該文献記載の方法では,原因―結果の組を組み合わせることにより要因分析結果に相当する表示を行う。また,特許文献2,3には,予め与えられた故障や異常が起きた時の因果関係を表示する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−171045号公報
【特許文献2】特開2010−92312号公報
【特許文献3】特開2009−116842号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cooper, G. and Herskovits, E.: A Bayesian method for the induction of probabilistic networks from data, Machine Learning, vol.9, pp.309-347, (1992).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保全に関する記録や,製造・営業等の企業活動に関する非財務情報は,一般にはカテゴリ情報だけではなく連続する数値情報も含まれるが,ベイジアンネットワークでは,数値情報の依存関係を表示することはできない。また,K−2アルゴリズムで用いられる尤度や構造の単純さは情報間の因果関係の強さを表す指標ではないため,該アルゴリズムで求められたグラフ構造は要因を正しく表していない。
【0007】
また,特許文献1では,因果関係生成の基となる原因―結果の組を求める相関関係生成手段が記載されているが,その方法は開示されておらず,データから因果関係を自動的に生成する一連の方法が開示されていない。特許文献2並びに特許文献3では,因果関係は予め与えられることが必要で,因果関係を自動的に求めることはできない。
【0008】
また、複数の要因から,事故・故障,財務状況等の結果を生じる場合,それらの要因が独立で作用しているのか,相互に関係があるのかを区別することは,複数要因全てに対して保全や投資の優先順位を上げる必要があるのか,一部の要因のみで良いのかを判断する上で必須となる。しかしながら、非特許文献1、特許文献1ないし3のいずれのも,複数の要因から結果が生じる場合,それらの要因が独立で作用しているのか,相互に関係があるのかを区別する事ができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち,事故・故障等に関する情報と,運用・保全関連情報並びに環境外部情報との相関を求め,二情報間で関連する場合には矢印で,三情報以上の間で関連する場合はそれらを纏める図を用いて表示する。更に予め,関連していない情報の組を業務知識として蓄積し,該情報間には前記の表示を行わない。
【0010】
また,本願において開示される発明の別の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち,財務情報と非財務情報との相関を求め,二情報間で関連する場合には矢印で,三情報以上の間で関連する場合はそれらを纏める図を用いて表示する。更に,関連する情報間の関連度合いを矢印の太さ,色等により表示する。更に,非財務情報を変更した場合の財務情報の変化を表示する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の代表的な実施の形態によれば,事故・故障が発生した際に関連する可能性がある要因の候補が矢印等で結ばれるため,自明でない該事故・故障の要因を発見することが可能となる。また,財務情報に影響を与える非財務情報とその度合いが分かるため,設備投資,運用・保全投資に伴う非財務情報の期待変化量から,財務情報に与える影響が分かり,投資効果の把握が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】事故・故障の要因分析結果の表示例を示す図である。
図2】財務情報と非財務情報の関係分析結果の表示例を示す図である。
図3】分析結果の別の表示例を示す図である。
図4】事故・故障の要因分析方法の一例を示す図である。
図5】財務情報と非財務情報の関係分析方法の一例を示す図である。
図6】データの形態が記録されたテーブルの構造を示すデータ図である。
図7】データの構造を示す図である。
図8】因果関係生成処理の一例を示す図である。
図9】因果関係グルーピング処理の一例を示す図である。
図10】因果関係グループデータの一例を示す図である。
図11】因果関係グループデータに基づく表示例を示す図である。
図12】業務知識データの一例を示す図である。
図13】住民情報の一例を示す図である。
図14】因果関係の表示の一例を示す図である。
図15】因果関係の表示の一例を示す図である。
図16】業務知識データの一例を示す図である。
図17】影響値算出結果の例を示す図である。
図18】影響予測処理の一例を示す図である。
図19】回帰係数データの一例を示す図である。
図20】変更値入力画面の一例を示す図である。
図21】影響出力画面の一例を示す図である。
図22】本発明の実施形態のシステムの一例を示す図である。
図23】相関係数算出結果の一例を示す図である。
図24】データ集合の一例を示す図である。
図25】データ集合に含まれる要因に対応する相関行列の一例を示す図である。
図26】データ集合に含まれる要因に対応する相関行列の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明の実施形態を,図面を参照して説明する。
【0014】
まず,図1〜3を用いて,本発明により出力される表示形態を説明する。
【0015】
図1は事故・故障の要因分析結果の表示例である。事故・故障の情報である事故関連情報(111〜113)とその他の周辺要因(121〜124)が図示され,関連する情報が矢印等により結ばれている(101〜107)。例えば,周辺要因2(122)が事故関連情報2(112)と関連している場合は、周辺要因2から事故関連情報2への矢印(102)で表す。一方,三つ以上の情報である周辺要因1(121)と周辺要因2(122)と事故関連情報1(111)が互いに関連している場合には中心に丸印(101)を表示し,該周辺要因から該丸印への矢印(105,106)と該丸印から該事故関連情報1への矢印(107)で表す。また,図3に示すように関連する情報を丸で囲み,要因から事故関連情報への矢印で表す(301)方法や,要因から事故関連情報への矢印(311,312)と要因を直線(310)で結んで表す方法も考えられる。ここで,周辺要因2(122),周辺要因3(123),事故関連情報2(112)は,該周辺要因2から該事故関連情報2への矢印(102)と該周辺要因3から該事故関連情報2への矢印(103)で結ばれているが,これらの三情報が互いに関連しているのではなく,該周辺要因2と該周辺要因3は別個に該事故関連情報2と関連していることを表す。また,事故関連情報同士に関連がある場合には直線で結ぶ(104)。
【0016】
次に,図2は財務情報と非財務情報の関係分析結果の表示例である。図1と同様に財務情報(211〜213)と非財務情報(221〜224)が図示され,関連する情報が矢印等により結ばれている(201〜204)。また,矢印若しくは直線の太さは関連の強さを表し,例えば非財務情報3(223)と財務情報2(212)との関係は非財務情報2(222)と該財務情報2との関係より強いことを表す。また,矢印若しくは直線の種類(実線/破線)は互いに負の影響を与えているか正の影響を与えているかを表し,例えば非財務情報2(222)は財務情報2(212)に正の影響を与えている(204)が,財務情報3(213)には負の影響を与えている(202)。また,図3に示すように正の影響を与えている場合には「+」を矢印に記載し(321),負の影響を与えている場合には「−」を矢印に記載する(322)方法も考えられる。更に,正の影響を与えている場合には黒い矢印,負の影響を与えている場合には赤い矢印とする場合も考えられる。一方,矢印の太さではなく色の違いを使って関係の強さを表すことも考えられる。
【0017】
次に,本発明の実施形態の処理を,図4,5,22を用いて説明する。
【0018】
まず,本発明の実施形態のシステムは,データを図示する表示部(2200),表示部に表示されたデータをマウス,キーボード等を用いて選択,データを入力するユーザ入力部(2210),他システムや他の記憶媒体よりデータを入力するデータ入力部(2220),本発明の方法を処理部に実行させるプログラム(2231),該プログラムにより生成されたデータ(2232),入力部(2210,2220)より入力されたデータ等を記録する記憶部(2230),プロセッサやメモリを有し該プログラムを実行する処理部(2240),各部分間のデータの通信を行うネットワーク(2250)から構成される。図1〜3に示した表示形態は表示部(2200)に表示される。
次に,図4は事故・故障の要因分析方法の一例である。まず,データ入力部(2220)から入力され入力データ記録部(2233)に記録された,事故・故障関連情報(411)と,要因の候補である運用・保全情報(412)や環境外部情報(413)を入力とし,処理部(2240)が,プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,図1に示したような関係を求める因果関係生成を行う(400)。次に,データ入力部(2220)から入力され入力データ記録部(2233)に記録された業務知識(410)を用い,処理部(2240)が,プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて因果関係を修正し表示部(2200)に表示する(401)。もし,誤った因果関係が表示されている場合には,表示部(2200)に表示された該関係に対応する矢印等を,ユーザ入力部(2210)のマウス,キーボード等のデバイスを用いて選択することにより,業務知識(410)へ該関係を保存する。
【0019】
次に,図5は財務情報の要因分析方法の一例である。まず,データ入力部(2220)から入力され入力データ記録部(2233)に記録された財務情報(510)とそれ以外の非財務情報(511)を入力とし,処理部(2240)が,プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,図2に示したような関係を求める因果関係生成を行う(500)。次に,処理部(2240)が,プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,因果関係毎に寄与率を算出し,図2における矢印の太さや種類に反映し表示部(2200)に表示する(501)。次に,ユーザ入力部(2210)を用いてユーザが,非財務情報に新たな値を代入すると,処理部(2240)が,プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,影響を予測し表示部(2200)に表示する(502)。
【0020】
次に,事故・故障関連情報(411),要因の候補である運用・保全情報(412),環境外部情報(413), 財務情報(510),非財務情報(511)に関して,図6,7を用いて説明する。各データベースには図6に示すようなデータの形態が記録されたテーブルが1つ存在する。該テーブルには,データベースに格納されているデータ名(601),データの種類(602),及び種類に応じたパラメタ(603)が記録されている。ここで,データの種類(602)には,データの種類が環境外部情報(413)における気温や財務情報(510)における売上の様な実数データの場合には「1」,データの種類が運用・保全情報(412)における目視劣化度合いの様な値の順序のみが意味を持つ順序数の場合には「2」,データの種類が事故・故障関連情報(411)における事故種類のようなカテゴリ番号を表す場合には「3」が格納されている。また,パラメタ(603)はデータの種類(602)が「3」の場合のみ値が入力されており,該カテゴリ番号のカテゴリ数が格納される。例えば、事故種類のデータが「渇水(カテゴリ番号=1)」「水道管破裂(カテゴリ番号=2)」「洪水(カテゴリ番号=3)」の3種類あればカテゴリ数「3」が格納される。次に,図6に記録されたデータ名毎に図7に示したテーブルが格納される。該テーブルには値が発生若しくは計測された時刻(701)とその値(702)が記録されている。
【0021】
次に,因果関係生成処理(400,500)を,図8を用いて示す。ここで,結果データは,事故・故障の要因分析(図4)の場合には事故・故障関連情報(411),財務情報と非財務情報の関係分析(図5)の場合には財務情報(510)であり,要因候補データは,事故・故障の要因分析(図4)の場合には運用・保全情報(412)と環境外部情報(413),財務情報と非財務情報の関係分析(図5)の場合には非財務情報(511)である。
【0022】
まず,因果関係生成処理(400,500)では、プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,処理部(2240)が,入力データ記録部(2233)に記録された,事故・故障の要因分析(図4)の場合には事故・故障関連情報(411),運用・保全情報(412),及び,環境外部情報(413)を、財務情報と非財務情報の関係分析(図5)の場合には財務情報(510)及び非財務情報(511)を読み込み、対象となるデータ全ての組み合わせに対して相関係数を求め生成データ記録部(2232)に記録する(801)。ここで,組み合わせにおける双方のデータの種類(602)がいずれも実数である場合(すなわち、データの種類が「1」を示す場合)には,ピアソンの積率相関係数を,いずれかが順序数である場合(すなわち、データの種類が「2」を示す場合)には,スピアマンの順位相関係数を求める。また,データの種類(602)のいずれかがカテゴリである場合(すなわち、データの種類が「3」を示す場合)には,該データのカテゴリ数(603)分のダミー変数法を用いてスピアマンの順位相関係数を求める。ここで,ダミー変数法とは,例えばカテゴリ数が3の場合,3つのデータとみなし,カテゴリの値(702)が1,2,3である場合,カテゴリの値1,2,3を、各々(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)であると考える方法である。
【0023】
次に,処理部(2240)は、求めた相関係数を基に因果関係があるデータのグルーピングを行う(802)。なお,本実施例では相関係数を用いた方法を示したが,データをベクトルとみなし,その角度に基づく類似度を用いる方法等も考えられる。更に,データから図10に示す因果関係を出力するその他の方法を用いても良い。
【0024】
次に,因果関係グルーピング処理(802)を,図9を用いて説明する。まず,プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,処理部(2240)が,全ての結果データに対して902〜903の処理を行う(901)。ここで結果データとは,因果関係の結果となるデータを表し,事故・故障関連情報(411)若しくは財務情報(510)に含まれるデータである。結果データRiは、図6に示した1つのレコードに記載のデータであり,図7に示すテーブルが1つのデータである。まず,結果データRiと強い相関(相関係数の絶対値が0.5より大きい)を持つデータの集合Siを求める(902)。本実施例では「相関係数の絶対値が0.5より大きい」として説明したが、0.5以外の値でもよい。次に,Siに含まれる全ての要因データに対し,強い相関を持つデータ同士を,結果データRiと共にグループGilとする(903)。
【0025】
因果関係グルーピング処理(802)の具体例を図23〜26,10を用いて説明する。図23は相関係数算出(801)によって求められた相関行列で,各行の左に記載されたデータ(2310)と各列の上に記載されたデータ(2311)の相関係数が記載されている。算出された相関係数が0.5より大きい値の場合には背景を灰色で表している。ここで,同じデータの相関は1.0で自明なので淡色で表でいる。また,相関行列は対象行列なので,i行j列の値とj行i列の値は等しい。結果データは「結果1」(2301)と「結果2」(2302)なので,それぞれに対し(901),強い相関を持つデータの集合を求める(902)。図23の場合,第1行(2301)と第2行(2302)で0.5より大きな相関を持つデータ集合は図24の2401,2402になる。次に,各データ集合(2401,2402)の相関行列(図23の部分行列になる)で高い相関があるデータを同グループとする(903)。データ集合2401に含まれる要因「要因1」「要因2」に対応する相関行列が図25であり,「要因1」「要因2」が強い相関を持つため,グループ化され,「結果1」「要因1」「要因2」が1つのグループとなる(1001〜1003)。一方,データ集合2402に含まれる「要因2」「要因3」に対応する相関行列が図26であり,「要因2」「要因3」は強い相関を持たないため,別個のグループとなり,「結果2」「要因2」(1008,1009)と「結果2」「要因3」(1010,1011)のグループになる。更に,「結果1」「結果2」も強い相関を持つので,グループとなる(1004,1005)。
【0026】
処理部(2240)は、以上の処理により求められた因果関係データを生成データ記録部(2232)に出力する。因果関係データの例を図10に示す。因果関係データは、例えば、因果関係生成(400,500)によりグループ化されたデータ名(1000)とグループ番号(1020)を含む。
【0027】
処理部(2240)は、因果関係データを用いて、表示部2200に因果関係を表示する。処理部(2240)は、生成データ記録部(2232)に記録された図10の因果関係データを参照し、グループ1(1001〜1003)とグループ6(1012〜1014)のようにグループが3つ以上のデータから構成される場合は1101,1106のように、直線で各データを結ぶのではなく、例えば、各データからの線を1点に集約して表示する。さらに,データが要因ならば矢印の始点とし,結果ならば矢印の終点として表示する。グループ2(1004,1005),グループ3(1006,1007)のようにグループが2つの結果データから構成される場合は直線で結ぶ(1102,1103)。グループ4(1008,1009),グループ5(1010,1011),グループ7(1015,1016)のようにデータが要因データと結果データから構成される場合は,要因データから結果データへの矢印を表示する(1104,1105,1107)。
【0028】
次に,業務知識(410)のデータ例を,図12を用いて説明する。該業務知識には,因果関係として誤りであるデータの組が記録されている。図12の場合,「結果1」と「結果2」(1201),「結果2」と「結果3」(1202),「結果2」と「結果2」と「要因4」(1203)の因果関係は誤りである事を表す。
【0029】
次に,因果関係修正処理(401)を図10〜13を用いて説明する。処理部(2240)は、プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,求められた因果関係(図10,11)に対し,業務知識(図12)に含まれる因果関係がある場合には,そのグループを削除する。図10〜12の場合,1201に対応する因果関係はグループ2(1004,1005,1102),1202に対応する因果関係はグループ3(1006,1007,1103),1203に対応する因果関係はグループ6(1012〜1014,1106)なので,それらを削除する。これにより、図10の因果関係データは図13に示す通りとなり、処理部(2240)は、図11に示した因果関係を、図13の因果関係データに基づいて図14に示すように修正して表示部2200に表示する。
【0030】
次に,誤関係選択処理(402)を,図14〜16を用いて説明する。図14の表示でユーザが誤関係である1400を選択した場合,ユーザ入力部2210を介して該選択情報を受け付けると、処理部(2240)は、グループ4の該関係を因果関係データから削除し、因果関係表示を図15のように修正し表示部(2200)に表示する。また、処理部(2240)は、グループ4の組(1600)を業務知識(410)に追加する。
【0031】
次に,寄与率算出処理(501)を説明する。処理部(2240)は、プログラム記録部(2231)に記録されたプログラムを用いて,グループが2つのデータから構成される場合には801で求めた相関係数を寄与率として算出し,グループが3つ以上のデータから構成される場合には,グループ内の全てのデータの組み合わせにおける相関係数の平均を寄与率として算出する。処理部(2240)は、算出した寄与率の絶対値の値に比例して矢印の太さを変更し,寄与率の符号が正の場合には矢印を実線,負の場合には破線として表示部(2200)に表示する。例えば、図2に示すように、矢印若しくは直線の太さを用いて寄与率を表す。例えば非財務情報3(223)と財務情報2(212)との関係は非財務情報2(222)と該財務情報2との関係より強い(寄与率が大きい)ことを表す。また,矢印若しくは直線の種類(実線/破線)は互いに負の影響を与えているか正の影響を与えているかを表し,例えば非財務情報2(222)は財務情報2(212)に正の影響を与えている(204)が,財務情報3(213)には負の影響を与えている(202)。また,図3に示すように正の影響を与えている場合には「+」を矢印に記載し(321),負の影響を与えている場合には「−」を矢印に表示してもよい(322)。
【0032】
次に,影響予測処理(502)を,図17〜21を用いて説明する。まず,処理部(2240)はは、事故・故障の要因分析(図4)の場合には事故・故障関連情報(411),運用・保全情報(412),及び,環境外部情報(413)を、財務情報と非財務情報の関係分析(図5)の場合には財務情報(510)及び非財務情報(511)を読み込み、全てのデータの組み合わせに関して,回帰係数を算出する(1801)。求められた回帰係数データ例を図19に示す。回帰係数データは組み合わせた2つのデータ名(1901,1902)と回帰係数(1903)から構成される。次に,ユーザからの変更値の入力を受け付ける(1802)。例えば,ユーザからユーザ入力部(2210)を介して図20の表示画面で「非財務情報2」(2000)の選択を受け付ける。すると変更値入力プロンプト2001を表示部(2200)に表示し(2001),ユーザ入力部(2210)を介してユーザから入力値「100」を受け付ける。次に,回帰係数データの中で選択された「非財務情報2」(1901)を含むデータ1911〜1912に基づき,関係するデータ(1902)への影響値を入力値×回帰係数の式に基づき算出する(1803)。算出結果を図17に示す。図17は、影響があるデータのデータ名と影響値とを含む。次に,図17に基づいて、影響があるデータ名(1701)とその影響値(1702)を出力する(1803)。処理部(2240)、表示部(2200)にこれらの情報を表示する。出力結果例を図21に示す。
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