(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018854
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】シンチレータパネル、及び、放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20161020BHJP
G01T 1/202 20060101ALI20161020BHJP
G21K 4/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 L
G01T1/202
G21K4/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-203187(P2012-203187)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-59171(P2014-59171A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】外山 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】楠山 泰
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅典
(72)【発明者】
【氏名】大澤 弘武
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−003955(JP,A)
【文献】
特開2004−012282(JP,A)
【文献】
特開2011−220774(JP,A)
【文献】
特開平05−060871(JP,A)
【文献】
特開昭61−142497(JP,A)
【文献】
特開2000−009847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G01T 1/202
G21K 4/00
A61B 6/00
G03B 42/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルであって、
表面及び裏面を有すると共に、前記裏面から前記表面に向かう所定の方向に前記表面から突出する複数の凸部と、前記凸部によって規定される凹部とが形成された基板と、
前記基板の前記凸部のそれぞれの上に形成された複数の第1のシンチレータ部と、
前記基板の前記凹部の底面上に形成された第2のシンチレータ部と、を備え、
前記第1のシンチレータ部は、前記凸部の上面から前記所定の方向に沿って延在する第1の部分と、前記凸部の側面から前記所定の方向に沿って延在して前記第1の部分と接触する第2の部分と、を有し、
前記第1及び第2の部分は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶から構成されており、
前記第1のシンチレータ部同士は互いに離間しており、
前記第2のシンチレータ部は、前記第2の部分と接触している、
ことを特徴とするシンチレータパネル。
【請求項2】
前記第1の部分は、前記凸部の前記上面に基端部を有し前記所定の方向に沿った複数の前記柱状結晶から構成されており、
前記第2の部分は、前記凸部の前記側面に基端部を有し前記所定の方向に交差する方向に沿った複数の前記柱状結晶から構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
【請求項3】
前記第1の部分を構成する前記柱状結晶の柱径は、前記凸部の前記上面から離れるにつれて拡大しており、
前記第2の部分を構成する前記柱状結晶の柱径は、前記凸部の前記側面から離れるにつれて拡大しており、
前記第2の部分を構成する前記柱状結晶の柱径の拡大率は、前記第1の部分を構成する前記柱状結晶の柱径の拡大率よりも大きい、ことを特徴とする請求項2に記載のシンチレータパネル。
【請求項4】
前記凸部の高さは、前記柱状結晶の柱径よりも大きい、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシンチレータパネル。
【請求項5】
前記第1及び第2のシンチレータ部を覆うように形成された保護膜をさらに備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のシンチレータパネル。
【請求項6】
前記第1のシンチレータ部同士の間に形成され、前記シンチレーション光を遮蔽するための光遮蔽層をさらに備える、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のシンチレータパネル。
【請求項7】
表面及び裏面を有すると共に、前記裏面から前記表面に向かう所定の方向に前記表面から突出する複数の凸部と前記凸部によって規定される凹部とが形成されており、複数の光電変換素子を有する基板と、
前記基板の前記凸部のそれぞれの上に形成された複数の第1のシンチレータ部と、
前記基板の前記凹部の底面上に形成された第2のシンチレータ部と、を備え、
前記凸部は、前記光電変換素子に対応するように形成されており、
前記第1のシンチレータ部は、前記凸部の上面から前記所定の方向に沿って延在する第1の部分と、前記凸部の側面から前記所定の方向に沿って延在して前記第1の部分と接触する第2の部分と、を有し、
前記第1及び第2の部分は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶から構成されており、
前記第1のシンチレータ部同士は互いに離間しており、
前記第2のシンチレータ部は、前記第2の部分と接触している、
ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項8】
前記基板の前記凸部は、シンチレーション光に対して透過性を有する、ことを特徴とする請求項7に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記第1の部分は、前記凸部の前記上面に基端部を有し前記所定の方向に沿った複数の前記柱状結晶から構成されており、
前記第2の部分は、前記凸部の前記側面に基端部を有し前記所定の方向に交差する方向に沿った複数の前記柱状結晶から構成されている、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記第1の部分を構成する前記柱状結晶の柱径は、前記凸部の前記上面から離れるにつれて拡大しており、
前記第2の部分を構成する前記柱状結晶の柱径は、前記凸部の前記側面から離れるにつれて拡大しており、
前記第2の部分を構成する前記柱状結晶の柱径の拡大率は、前記第1の部分を構成する前記柱状結晶の柱径の拡大率よりも大きい、ことを特徴とする請求項9に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記凸部の高さは、前記柱状結晶の柱径よりも大きい、ことを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記第1及び第2のシンチレータ部を覆うように形成された保護膜をさらに備える、ことを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項13】
前記第1のシンチレータ部同士の間に形成され、シンチレーション光を遮蔽するための光遮蔽層をさらに備える、ことを特徴とする請求項7〜12のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータパネル及び放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野の従来の技術として、例えば、特許文献1に記載の放射線検出素子が知られている。特許文献1に記載の放射線検出素子は、ガラス基板と、ガラス基板の上に設けられ複数の光電変換素子を含む光センサー部と、光センサー部の上に設けられた平坦化膜と、平坦化膜の上に設けられた複数のシンチレータ部とを備えている。特に、この放射線検出素子においては、平坦化膜に、光電変換素子のそれぞれに対応する複数の凸部が形成されており、シンチレータ部のそれぞれは、互いに接触しつつ区切られるようにその凸部の上面上に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−128064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の放射線検出素子においては、上述したように、基板及び光センサー部の上の平坦化膜に凸部を形成すると共に、互いに区切られるようにその凸部の上面上にシンチレータ部を形成することによって、基板及び光センサー部の全面にシンチレータ部を形成する場合と比較して、シンチレータ部でのクロストークに起因したMTFの低下の抑制等を図っている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の放射線検出素子のように、平坦化膜の凸部の上面上にシンチレータ部を形成すると、基板及び光センサー部の全面(すなわち平坦化膜の全面)にシンチレータ部を形成する場合と比較して、シンチレータ部の密着性が低下し、信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、信頼性の低下を抑制可能なシンチレータパネル、及び、放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るシンチレータパネルは、放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルであって、表面及び裏面を有すると共に、裏面から表面に向かう所定の方向に表面から突出する複数の凸部と、凸部によって規定される凹部とが形成された基板と、基板の凸部のそれぞれの上に形成された複数の第1のシンチレータ部と、基板の凹部の底面上に形成された第2のシンチレータ部と、を備え、第1のシンチレータ部は、凸部の上面から所定の方向に沿って延在する第1の部分と、凸部の側面から所定の方向に沿って延在して第1の部分と接触する第2の部分と、を有し、第1及び第2の部分は、シンチレータ材料の複数の柱状結晶から構成されており、第1のシンチレータ部同士は互いに離間しており、第2のシンチレータ部は、第2の部分と接触している、ことを特徴とする。
【0008】
このシンチレータパネルは、基板の複数の凸部上に形成された第1のシンチレータ部と、基板の凸部によって規定された凹部の底面上に形成された第2のシンチレータ部とを備えている。特に、第1のシンチレータ部は、凸部の上面から延びる第1の部分に加えて、凸部の側面から延びて第1の部分に接触する第2の部分を含む。このため、第1のシンチレータ部全体と基板との接触面積が大きくなり、密着性が向上する。さらに、第2の部分は、凹部の底面に形成された第2のシンチレータ部と接触している。このため、第2の部分を構成する複数の柱状結晶が、凹部の底面側から第2のシンチレータ部によって支えられることとなるので、それらの欠落が防止される。よって、このシンチレータパネルによれば、信頼性の低下を抑制することができる。なお、第1のシンチレータ部が、第1の部分に加えて、凸部の側面から延びる第2の部分をさらに有するので、凸部の突出方向(基板の裏面から表面に向かう所定の方向)に沿って放射線が入射する場合に、有効エリアを広くとることができる。
【0009】
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、第1の部分は、凸部の上面から所定の方向に沿って結晶成長して形成された複数の柱状結晶から構成されており、第2の部分は、凸部の側面から所定の方向に交差する方向に沿って結晶成長して形成された複数の柱状結晶から構成されているものとすることができる。この場合、上述した所定の方向に沿って放射線が入射する場合に、有効エリアをより広くとることができる。
【0010】
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、第1の部分を構成する柱状結晶の柱径は、凸部の上面から離れるにつれて拡大しており、第2の部分を構成する柱状結晶の柱径は、凸部の側面から離れるにつれて拡大しており、第2の部分を構成する柱状結晶の柱径の拡大率は、第1の部分を構成する柱状結晶の柱径の拡大率よりも大きいものとすることができる。この場合、凸部の側面から延びる第2の部分を構成する柱状結晶の柱径が相対的に大きくなるため、有効エリアがより広くなると共に、放射線吸収が高められる。
【0011】
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、凸部の高さは、柱状結晶の柱径よりも大きいものとすることができる。この場合、第2の部分を、確実に複数の柱状結晶から構成することが可能となる。また、第1のシンチレータ部同士を確実に分離して形成することが可能となる。
【0012】
本発明に係るシンチレータパネルは、第1及び第2のシンチレータ部を覆うように形成された保護膜をさらに備えることができる。この場合、第1及び第2のシンチレータ部の耐湿性が向上する。
【0013】
本発明に係るシンチレータパネルは、第1のシンチレータ部同士の間に形成され、シンチレーション光を遮蔽するための光遮蔽層をさらに備えることができる。この場合、第1のシンチレータ部のそれぞれにおいて生じたシンチレーション光を閉じ込めることができるので、高輝度・高解像度を実現することが可能となる。
【0014】
ここで、上記課題を解決するために、本発明に係る放射線検出器は、上述したシンチレータパネルを備え、基板は、第1のシンチレータ部に光学的に結合されるように配列された複数の光電変換素子を有するセンサパネルである、ことを特徴とする。この放射線検出器は、上述したシンチレータパネルを備えるので、信頼性の低下を抑制することができる。特に、基板が光電変換素子を含むセンサパネルであるので、その光電変換素子上に直接凸部を形成し、その凸部の上にシンチレータ部を形成することができる。このため、別途用意したシンチレータパネルとセンサパネルとを張り合わせる必要がない。
【0015】
本発明に係る放射線検出器においては、基板の凸部は、シンチレーション光に対して透過性を有することができる。この場合、第1のシンチレータ部からのシンチレーション光を、凸部を介して効率よく光電変換素子まで到達させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、信頼性の低下を抑制可能な、分離型シンチレータ部を有するシンチレータパネル、及び、分離型シンチレータ部を有する放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
【
図2】
図1に示されたシンチレータパネルの部分的な平面図である。
【
図3】
図1に示されたシンチレータパネルの部分的な側面図である。
【
図4】
図1に示されたシンチレータパネルの一例を示す断面写真である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
【
図7】
図6に示されたシンチレータパネルの部分的な平面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の実施形態に係るシンチレータパネルは、入射したX線等の放射線Rを可視光等のシンチレーション光に変換するためのものであり、例えば、マンモグラフィー装置、胸部検査装置、CT装置、歯科口内撮影装置、及び、放射線カメラ等において、放射線イメージング用のデバイスとして用いることができる。
[第1実施形態]
【0019】
まず、本発明の第1実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
図2は、
図1に示されたシンチレータパネルの部分的な平面図である。
図3は、
図1に示されたシンチレータパネルの部分的な側面図である。
図1〜3に示されるように、シンチレータパネル1は、矩形状の基板10を備えている。
【0020】
基板10は、互いに対向する表面10a及び裏面10bを有する。基板10は、表面10aに形成された凹凸パターンPaを有している。基板10の材料としては、例えば、AlやSUS(ステンレス鋼)等の金属、ポリイミドやポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の樹脂フィルム、アモルファスカーボンや炭素繊維強化プラスチック等のカーボン系材料、FOP(ファイバオプティックプレート:直径が数ミクロンの多数の光ファイバを束ねた光学デバイス(例えば、浜松ホトニクス社製J5734))等を用いることができる。凹凸パターンPaの材料としては、例えば、エポキシ系樹(日本化薬(株)製KMPRやSU−8等)といった高アスペクトレジスト、シリコン、及び、ガラス等を用いることができる。特に、凹凸パターンPaを構成する凸部の材料は、後述するシンチレータ部20で生じるシンチレーション光に対して透過性を有する材料とすることができ、その場合、基板10の裏面10b側においてシンチレータパネル1と光電変換素子を有するセンサパネルとを張り合わせて放射線検出器を構成することもできる。
【0021】
凹凸パターンPaは、複数の凸部11と、凸部11によって規定された凹部12とによって形成されている。つまり、基板10には、複数の凸部11と凹部12とが形成されている。凸部11のそれぞれは、基板10の裏面10bから表面10aに向かう所定の方向(ここでは、放射線Rの入射方向、及び、基板10の表面10aや裏面10bに直交する方向)に沿って表面10aから突出している。凸部11のそれぞれは、直方体状に形成されている。凸部11は、基板10の表面10a上に2次元アレイ状に周期的に配列されている。したがって、凸部11によって規定される凹部12は、平面視で矩形の格子状を呈する溝である。
【0022】
このような凹凸パターンPaの各寸法は、例えば、凸部11のピッチ(凸部11の形成周期)Pを100μm程度とした場合には凹部12の幅(溝幅)Wを35μm程度とし、凸部11のピッチPを127μm程度とした場合には凹部12の幅Wを20μm〜40μm程度とし、凸部11のピッチPを200μm程度とした場合には凹部12の幅Wを50μm〜70μm程度とすることができる。また、凸部11の高さHは、2.5μm〜50μm程度とすることができる。特に、本実施形態においては、凸部11のピッチPを127μm程度とし、凹部12の幅Wを45μm程度とし、凸部11の高さHを15μm程度としている。
【0023】
シンチレータパネル1は、凸部11のそれぞれの上に形成された複数のシンチレータ部(第1のシンチレータ部)20と、凹部12内に形成されたシンチレータ部(第2のシンチレータ部)30とを備えている。シンチレータ部20同士は互いに離間している(すなわち、シンチレータパネル1は、分離型シンチレータ部を有している)。シンチレータ部30は、凹部12の全体にわたって一体に形成されている。シンチレータ部20,30は、例えばCsI(ヨウ化セシウム)といった柱状結晶を形成するシンチレータ材料により形成することができる。シンチレータ部20の高さ(シンチレータ膜厚))Tは、例えば、100μm〜600μm程度とすることができる。
【0024】
シンチレータ部20は、第1の部分21と、第2の部分22とを有する。第1の部分21は、平面視において、凸部11の形状に対応するように矩形状を呈している。第2の部分22は、平面視において、第1の部分21の側部を覆うように矩形環状を呈している。第1の部分21は、凸部11の上面11aから放射線Rの入射方向(基板10に対して略垂直な方向)に沿って延在している。より具体的には、第1の部分21は、凸部11の上面11aから放射線Rの入射方向に沿って結晶成長して形成されたシンチレータ材料の複数の柱状結晶C1から構成されている。
【0025】
第2の部分22は、凸部11の側面11bから放射線Rの入射方向に沿って延在して第1の部分21と接触している。第2の部分22は、第1の部分21と一体的に形成されている(第1の部分21と接合されている)。より具体的には、第2の部分22は、凸部11の側面11bから放射線Rの入射方向(基板10に対して略垂直な方向)に交差する方向(所定の方向に交差する方向)に沿って結晶成長して形成されたシンチレータ材料の複数の柱状結晶C2から構成されており、全体として放射線Rの入射方向に沿って延びている。柱状結晶C2は、凸部11の側面11bの全体に形成されている。
【0026】
第1の部分21を構成する柱状結晶C1は、凸部11の上面11aから離れるにつれて拡径するテーパ状を呈している。つまり、柱状結晶C1の柱径R1は、凸部11の上面11aから離れるにつれて(すなわち、上面11a側の基端部から反対側の先端部に向けて)拡大している。第2の部分22を構成する柱状結晶C2は、凸部11の側面11bから離れるにつれて拡径するテーパ状を呈している。つまり、柱状結晶C2の柱径R2は、凸部11の側面11bから離れるにつれて(すなわち、側面11b側の基端部から反対側の先端部に向けて)拡径している。
【0027】
特に、柱状結晶C2の柱径R2の拡大率は、柱状結晶C1の柱径R1の拡大率よりも大きい。したがって、例えばそれぞれの先端部において、柱状結晶C1の柱径R1よりも柱状結晶C2の柱径R2の方が相対的に大きくなる。なお、上述した凸部11の高さHは、少なくとも第1の部分21を構成する柱状結晶C1及び第2の部分22を構成する柱状結晶C2の基端部における柱径よりも大きい。したがって、凸部11の上面11a上又は側面11b上には、複数の柱状結晶C1又は柱状結晶C2が形成されている。
【0028】
シンチレータ部30は、凹部12内において、特に凹部12の底面12a上に形成されている。シンチレータ部30は、シンチレータ部20の第1の部分21及び第2の部分22と同様に、CsIといったシンチレータ材料の複数の柱状結晶により構成されている。シンチレータ部30を構成する各柱状結晶は、凹部12の底面12aから放射線Rの入射方向に沿って結晶成長されて形成されている。シンチレータ部30は、凹部12の隅(凸部11の側面11bと凹部12の底面12aとの接続部分)から凹部12の幅方向の中心に向かって厚みが増すような凸状(断面略三角形状)を呈している。シンチレータ部30は、凸部11の側面11bから延びる第2の部分22の柱状結晶C2を凹部12の底面12a側から支えるように、第2の部分22と接触している。因みに、第2の部分22におけるシンチレータ部30と接触している部分の柱状結晶の柱径は、第1の部分21の柱状結晶C1の柱径R1よりも小さい。
【0029】
以上のように構成されるシンチレータパネル1は、例えば次のように製造することができる。すなわち、まず、基板10の元となる基材を用意し、基材上に凹凸パターンPaの材料を塗布乾燥によって形成する。続いて、フォトリソグラフィによってその基材に凹凸パターンPaを形成して所望の寸法の凹凸パターンPaを有する基板10を作製する。なお、基材上にスクリーン印刷によって凹凸パターンPaを形成してもよい。そして、真空蒸着によってCsIといったシンチレータ材料を基板10の上に蒸着する。各種蒸着条件(真空度、蒸着レート、基板加熱温度、蒸気流の角度等)を制御することにより、凹凸パターンPa上に上述したようなシンチレータ部20,30を形成することができる。
【0030】
このとき、凸部11の上面11a上のシンチレータ部が所定の高さ(例えば100μm〜600μm)となるまで、シンチレータ材料の蒸着を行う。これにより、
図4に示されるように、凸部11の上面11a上から第1の部分21が形成されると共に凸部11の側面11b上から第2の部分22が形成されシンチレータ部20が構成される。また、同時に、凹部12の底面12a上にシンチレータ部30が形成されて、シンチレータパネル1が製造される。
【0031】
なお、基板10の凹凸パターンPaの各寸法(凸部11のピッチP、凹部12の幅W、及び凸部11の高さH等)は、シンチレータ部20,30を形成するために上述した各値に設定することができるが、特に、凹部12の幅W及び凸部11の高さHは、真空蒸着により形成するシンチレータ部20の高さTに応じて、以下のように設定することができる。
【0032】
すなわち、シンチレータ部20の高さTを100μm未満とする場合には、凹部12の幅Wを1μm〜10μm程度とし、シンチレータ部20の高さTを100μm〜200μmとする場合には、凹部12の幅Wを10μm〜40μm程度とし、シンチレータ部20の高さを200μm〜400μmとする場合には、凹部12の幅Wを40μm〜60μmとし、シンチレータ部20の高さTを400μm〜600μmとする場合には、凹部12の幅Wを60μm〜80μm程度とすることができる。このとき、凸部11の高さHは、例えば5μm〜50μmとすることができる。
【0033】
このように、シンチレータ部20の高さHに応じて凹部12の幅W及び凸部11の高さHを設定すれば、真空蒸着によって形成されるシンチレータ部20同士を互いに分離することができる(すなわち、シンチレータ部のピクセル化を実現できる)と共に、凹部12の底面12a上にシンチレータ部30を形成することができる。なお、凹部12の幅Wを広げすぎてしまうことは、開口率の問題から現実的ではない。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係るシンチレータパネル1は、基板10の複数の凸部11の上に形成されたシンチレータ部20と、基板10の凸部11によって規定された凹部12の底面12a上に形成されたシンチレータ部30とを備えている。特に、シンチレータ部20は、凸部11の上面11aから延びる第1の部分21に加えて、凸部11の側面11bから延びる第2の部分22を含む。このため、シンチレータ部20と基板10との接触面積が大きくなり、密着性が向上する。
【0035】
また、本実施形態に係るシンチレータパネル1においては、凸部11の側面11bから延びる第2の部分22は、凹部12の底面12aに形成されたシンチレータ部30と接触している。このため、第2の部分22を構成する複数の柱状結晶C2が、凹部12の底面12a側からシンチレータ部30によって支えられることとなるので、それらの欠落が防止される。よって、このシンチレータパネル1によれば、信頼性の低下を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るシンチレータパネル1においては、シンチレータ部20の第1の部分21を構成する柱状結晶C1の柱径R1の拡大率よりも、第2の部分22を構成する柱状結晶C2の柱径R2の拡大率の方が大きい。このため、特にそれぞれの先端部において、第2の部分22の柱状結晶C2の柱径R2が、第1の部分21の柱状結晶C1の柱径R1よりも大きくなる。これにより、放射線Rの入射方向からみて有効エリアがより広くなると共に、放射線Rの吸収率が高められる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るシンチレータパネル1においては、凸部11の高さHを、各柱状結晶の柱径よりも大きくしているので、凸部11の側面11b上に複数の柱状結晶C2を確実に形成することができるうえに、シンチレータ部20を確実に互いに分離するように凸部11上に形成することができる。凸部11の高さHが十分でないと、蒸着によりシンチレータ部20を形成したときに、互いに隣り合うシンチレータ部20同士が接触する場合がある。
[第2実施形態]
【0038】
引き続いて、本発明の第2実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
図5に示されるように、本実施形態に係るシンチレータパネル1Aは、第1実施形態に係るシンチレータパネル1と比較して、保護膜40をさらに備える点で相違している。
【0039】
保護膜40は、シンチレータ部20の外形に沿ってシンチレータ部20,30の全体を覆うように、シンチレータ部20,30の上に形成されている。特に、保護膜40は、互いに隣り合うシンチレータ部20同士の間にも形成されるが、互いに隣り合うシンチレータ部20同士の隙間を埋めないように(すなわち、当該隙間を維持するように)形成されている。具体的には、保護膜40の厚さは、例えば、1μm〜5μm程度とすることができ、好適には2μm〜3μm程度とすることができる。保護膜40は、例えば、ポリパラキシリレンやポリ尿素等からなる耐湿性有機膜とすることができる。
【0040】
本実施形態に係るシンチレータパネル1Aによれば、第1実施形態に係るシンチレータパネル1と同様に信頼性の低下を抑制することができる。さらに、本実施形態に係るシンチレータパネル1Aによれば、保護膜40を設けることにより、シンチレータ部20,30を湿気等から保護することが可能とり、シンチレータ部20の耐湿性が向上される。
[第3実施形態]
【0041】
引き続いて、本発明の第3実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
図7は、
図6に示されたシンチレータパネルの部分的な平面図である。
図6,7に示されるように、本実施形態に係るシンチレータパネル1Bは、第2実施形態に係るシンチレータパネル1Aと比較して、光遮蔽層50をさらに備える点で相違している。なお、
図7においては、保護膜40が省略されている。
【0042】
光遮蔽層50は、シンチレータ部20において発生したシンチレーション光を反射する光反射層、又は、シンチレータ部20において発生したシンチレーション光を吸収する光吸収層である。つまり、光遮蔽層50は、所定のシンチレータ部20で発生したシンチレーション光を遮蔽して、その所定のシンチレータ部20に閉じ込めるためのものである。
【0043】
そのために、光遮蔽層50は、互いに隣り合うシンチレータ部20同士の間の隙間に、保護膜40を介して充填されて形成されている。また、光遮蔽層50は、シンチレータパネル1Bの外周部に位置するシンチレータ部20においては、他のシンチレータ部20と隣接していない側の側部上にも、保護膜40を介して形成されている。一方、光遮蔽層50は、シンチレータ部20の上端部(凸部11と反対側の端部)には形成されていない。
【0044】
したがって、光遮蔽層50は、シンチレータ部20の上端部を除いて、各シンチレータ部20の全体を覆うように、保護膜40の上に形成されている(換言すれば、各シンチレータ部20は、その上端部において保護膜40に覆われると共に光遮蔽層50から露出している)。このような光遮蔽層50は、例えば、有機顔料、無機顔料、又は金属顔料を含むインク、塗料、又はペーストや、Ag、Pt、又はCu等の金属ナノ粒子を含む金属ナノインクや、各種染料とすることができる。また、光遮蔽層50は、ALD法(原子層堆積法)や無電解メッキ等により金属膜を形成することで形成することもできる。
【0045】
本実施形態に係るシンチレータパネル1Bによれば、第2実施形態に係るシンチレータパネル1Aと同様に、信頼性の低下を抑制可能であると共に耐湿性を向上させることができる。さらに、本実施形態に係るシンチレータパネル1Bによれば、光遮蔽層50を設けることにより、所定のシンチレータ部20で生じたシンチレーション光を、その所定のシンチレータ部20に閉じ込めることが可能となるので、高輝度・高解像度を実現することが可能となる。
[第4実施形態]
【0046】
引き続いて、本発明の第4実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。
図8は、本発明の第4実施形態に係るシンチレータパネルの側面図である。
図8に示されるように、本実施形態に係るシンチレータパネル1Cは、第3実施形態に係るシンチレータパネル1Bと比較して、光遮蔽層60をさらに備える点で相違している。光遮蔽層60は、光遮蔽層50と同様に、シンチレーション光を遮蔽するためのものであり、シンチレーション光を反射する光反射層、又は、シンチレーション光を吸収する光吸収層である。
【0047】
光遮蔽層60は、光遮蔽層50から露出したシンチレータ部20の上端部(上端部上の保護膜40)を覆うように、基板10上の全体にわたって保護膜40及び光遮蔽層50の上に形成されている。光遮蔽層60は、光遮蔽層50と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。また、光遮蔽層50は、光遮蔽層50と同様の材料によって形成されてもよいし、光遮蔽層50と異なる材料によって形成されてもよい。
【0048】
本実施形態に係るシンチレータパネル1Cによれば、第2実施形態に係るシンチレータパネル1Aと同様に、信頼性の低下を抑制可能であると共に耐湿性を向上させることができる。さらに、本実施形態に係るシンチレータパネル1Cによれば、光遮蔽層50,60を設けることにより、所定のシンチレータ部20で生じたシンチレーション光を、その所定のシンチレータ部20に確実に閉じ込めることが可能となる。
【0049】
以上の実施形態は、本発明に係るシンチレータパネルの一実施形態を説明したものである。したがって、本発明は、上述したシンチレータパネル1〜1Cに限定されない。本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述したシンチレータパネル1〜1Cを任意に変更し、又は他のものに適用したものとすることができる。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、本発明をシンチレータパネルに適用した場合について説明したが、本発明は、上述したシンチレータパネル等を備える放射線検出器に適用することができる。その場合には、放射線検出器は、上述したシンチレータパネル1〜1Cのいずれかを備えると共に、それらの基板10を、シンチレータ部20に光学的に結合されるように配列された複数の光電変換素子を備えるセンサパネル(TFTパネルやCMOSイメージセンサパネル)とすることができる。
【0051】
その場合には、例えば、基板10であるTFTパネルやCMOSイメージセンサの各画素にそれぞれ対応する凸部11を形成し、その上にシンチレータ部20,30を形成する。凸部11の材料や形成方法は上述したとおりである。その際、凸部11のそれぞれを、シンチレータ部20で生じるシンチレーション光に対して透過性を有する材料により構成することが好ましい。
【0052】
このような放射線検出器によれば、上述したシンチレータパネル1〜1Cを備えるので、信頼性の低下を抑制することができる。また、基板10が、光電変換素子を含むセンサパネルであるので、その光電変換素子の上に直接凸部11を形成してシンチレータ部20を設ければ、別途用意したシンチレータパネルとセンサパネルとを張り合わせる必要がない。
【符号の説明】
【0053】
1,1A,1B,1C…シンチレータパネル、10…基板(センサパネル)、11…凸部、11a…上面、11b…側面、12…凹部、12a…底面、20…シンチレータ部(第1のシンチレータ部)、21…第1の部分、22…第2の部分、30…シンチレータ部(第2のシンチレータ部)、40…保護膜、50…光遮蔽層、60…光遮蔽層、C1,C2…柱状結晶、R…放射線、R1,R2…柱径。