(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のシートリクライニング装置において、上記強制ロック解除突起を持たないロック部材と、上記ロック部材を上記噛合位置と非噛合位置との間で移動させるカム機構との間に、該強制ロック解除突起を持たないロック部材を上記非噛合位置に保持するサブ強制アンロック保持機構が備えられているシートリクライニング装置。
請求項1または2記載のシートリクライニング装置において、上記ロック部材は周方向に等間隔に配置された3個であり、上記強制ロック解除突起を持つロック部材は1個、持たないロック部材は2個であるシートリクライニング装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜
図25を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中の矢印方向を基準としている。なお、以下の説明中の「内周側」は「ベースプレート27の中心側」の意味であり、「外周側」は「ベースプレート27の中心側とは反対側」のことである。
図1に示す車両用シート10は右側の座席(運転席)を構成するものであり、シートレールを介して車両の車内床面に支持されるシートクッション11と、シートクッション11の後部に対して回転可能なシートバック12とを備えている。シートクッション11の内部には左右一対の金属からなるシートクッションフレームが固定状態で設けてある。このシートクッションフレームは前後方向に延びる板状部材であり、その後部はシートクッション11の後部から上方に突出する金属製の後部フレーム13(
図2等を参照)によって構成してある。後部フレーム13には円形孔の周縁部に周方向に120°間隔で3つの嵌合孔15を形成したクッション側接続孔14が貫通孔として形成してある。各嵌合孔15は略矩形形状であり、その長手方向の両端部は互いに平行な平面部15aにより構成してある。シートバック12の内部には左右一対の金属からなるシートバック側フレーム16が固定状態で設けてある(
図2参照)。シートバック側フレーム16はシートバック12の長手方向に延びる板状部材であり、その下部(シートバック12が前傾したときは後部)には略正方形孔と、略正方形孔の周縁部(四辺)にそれぞれ形成した計4つの略矩形形状の嵌合孔18とからなるシートバック側接続孔17が貫通孔として形成してある。
【0014】
左右の後部フレーム13はシートバック12の内部空間に進入している。左右の後部フレーム13の間に左右のシートバック側フレーム16が位置し、左右のシートバック側フレーム16と左右の後部フレーム13がそれぞれ左右方向(車幅方向)に対向する。車両用シート10の左側(車内側)の後部フレーム13とシートバック側フレーム16は図示を省略した回転接続軸を介して回転可能に接続している。一方、右側(車外側)の後部フレーム13とシートバック側フレーム16の間には両者を左右方向の軸回りに回転可能に接続するリクライニング装置25が設けてある。
シートバック12(シートバック側フレーム16)はシートクッション11(後部フレーム13)に対して、当該回転接続軸及びリクライニング装置25を中心に回転可能である。具体的には
図1に符号12Aで示す前傾位置と符号12Bで示す後傾位置との間を回転可能である。
【0015】
続いてリクライニング装置25の詳しい構造について説明する。
リクライニング装置25は大きな構成要素としてベースプレート27、ロック部材36、37(ポール)、楔部材41、回転カム47、回転中心軸51、ラチェットプレート57、押えリング64、ロックスプリング68、及び、スプリングカバー72を具備している。
金属製の円盤部材であるベースプレート27はプレス成形品であり、その左側面の周縁部には円形の大径環状フランジ28が突設してあり、大径環状フランジ28の内側には収納空間が形成してある。ベースプレート27の中心部には断面円形の軸支持孔29が貫通孔として形成してある。ベースプレート27の左側面には軸支持孔29を中心とする周方向に120°間隔で並んだ3つの溝形成用突部30(
図21〜
図24参照)が突設してある。略扇形状をなす溝形成用突部30は、プレス成形時にベースプレート27の右側面を成形型によって左側に押圧することにより形成したものである。図示するように各溝形成用突部30の外周面と大径環状フランジ28の間には円弧状の隙間が形成してある。各溝形成用突部30の両側面は平面からなる案内平面30aとなっており、隣り合う溝形成用突部30の互いに平行をなす案内平面30a(対向面)の間には案内溝31が形成してある。さらにベースプレート27の右側面には、プレス成形時に各案内溝31の底面(左側面)を成形型によって右側に押圧することにより形成した、各案内溝31の裏側に位置する計3つの溶接用突部33が突設してある(
図2、
図4、
図6等を参照)。各案内溝31の底面(左側面)の各溶接用突部33の裏側には、成形型によって形成された突部対応凹部32がそれぞれ凹設してある(
図8〜
図10、
図12、
図13参照)。各溶接用突部33は略矩形形状であり、各溶接用突部33の長手方向の両端面は互いに平行な平面からなる側端面33aにより構成してある。また各溶接用突部33の内周面の中央部にはベースプレート27の中心側(内周側)に向かって僅かに突出する抜止突起34が形成してある。さらにベースプレート27の右側面には、前側に位置する溶接用突部33の近傍に位置する一対の係止突起35が右向きに突設してある(
図2、
図13、
図14参照)。
【0016】
ベースプレート27の各案内溝31にはそれぞれロック部材36、37と楔部材41が配設してある。
2つのロック部材36及び一つのロック部材37は金属板のプレス成形品であり、その厚みは案内溝31の深さと略同一である。ロック部材36、37にはカム溝38が形成してあり、ロック部材37には楔係合溝39が形成してある。
図24に示すように楔係合溝39は、ベースプレート27の中心点を中心とする円周方向と略平行な周方向平行部39bと、周方向平行部39bの一端(
図24では右側端)から内周側に傾斜しながら延びる被押圧部39aと、を有している。被押圧部39aは直線形状(平面)ではなく、楔係合溝39によって形成された空間側(後述する楔部材41側。
図24では左下側)に向かって凸の曲面である(但し、被押圧部39aの曲率は極めて小さいので、肉眼では略直線形状に見える。)さらにロック部材36、37の円弧状をなす外周面には外歯40が形成してある。またロック部材36、37の右側面は平面である。
【0017】
ロック部材37の楔係合溝39によって形成される空間に配置可能な一つの楔部材41は、金属板のプレス成形品である。楔部材41の外形寸法はロック部材36、37より小寸であり、その厚みはロック部材36、37と略同一である。
図25に示すように楔部材41は直線L1に関して対称な形状であり、その左右両側面は互いに平行な平面である。楔部材41の周面には係合部43、押圧部44、及び、スライド接触平面45が形成してある。楔部材41の係合部43は、楔部材41の内側に位置する仮想円42(その中心を直線L1が通る)の一部によって構成した円弧面である。上記したロック部材37の被押圧部39aの曲率は、楔部材41の係合部43の曲率より小さい。直線L1に関して互いに対称な押圧部44とスライド接触平面45は仮想円42の外側に位置しており、押圧部44とスライド接触平面45は共に直線L1に対して傾斜する平面によって構成してある。さらに楔部材41は、直線L1に対して直交しかつ仮想円42の中心を通る直線L2より係合部43側に位置する隙間形成部46を具備している。隙間形成部46は、直線L2より係合部43側に位置し、かつ、仮想円42の外側(
図25では右側)に位置する部分によって構成されており、隙間形成部46の外周面は係合部43と連続する(楔部材41の内部側に向かって凹んだ)凹面46aによって構成してある。
ロック部材36、37と楔部材41は
図21〜
図23等に示した態様で各案内溝31に配設してある。ロック部材36、37及び楔部材41の右側面はいずれも各案内溝31の平面からなる底面(左側面)に対して面接触している。
【0018】
回転カム47は金属板のプレス成形品であり、その厚みは案内溝31の深さと略同一である。回転カム47の中心部には円の対向する2カ所を直線的に切り落とした非円形形状の中心非円形孔48が貫通孔として形成してある。回転カム47の外周部には3本のカム突起49が120°間隔で突設してある。図示するように回転カム47はベースプレート27の上記収納空間の中央部に配設してある。
図20等に示すように回転カム47の左側面には、周方向に等角度間隔で3本の回り止め突起47aが左向きに突設してある。3本の回り止め突起47aは同一仕様の円柱形状である。
図20、
図24に示すように回転カム47の各カム突起49の外周面には外周側に向かって凸の曲面からなる押圧曲面50が形成してある。さらに回転カム47の外周面の押圧曲面50と異なる位置には3つのロック部材押圧部47bが等角度間隔で形成してある。
【0019】
金属製の回転中心軸51は、カム接続軸52と環状フランジ54を具備している。
カム接続軸52は断面非円形の筒状部材であり、その両端が開口している。カム接続軸52の断面形状は中心非円形孔48と相似形であり、中心非円形孔48よりやや小寸である。カム接続軸52の内部に形成された接続孔53の断面形状も中心非円形孔48と相似形である。
カム接続軸52の左端部に一体的に突設した環状フランジ54は、カム接続軸52の軸線に対して直交する平板状である。
さらに環状フランジ54には周方向に等角度間隔で、いずれも貫通孔である小径円形孔55a、大径円形孔55b、長孔55cがそれぞれ2つずつ形成してある。小径円形孔55aは回り止め突起47aと同径の円形孔である。大径円形孔55bは小径円形孔55a(回り止め突起47a)より僅かに大径の円形孔である。長孔55cは、短手寸法が小径円形孔55a(回り止め突起47a)と同一で、かつ、長手寸法が小径円形孔55a(回り止め突起47a)の径より長い孔である。
回転中心軸51は、環状フランジ54とベースプレート27との間の微小隙間にロック部材36、37、楔部材41、及び、回転カム47を配置させ、かつ、それぞれ一つの小径円形孔55a、大径円形孔55b、長孔55cに3本の回り止め突起47aを1本ずつ嵌合させた状態で、回転カム47に固定してある。カム接続軸52は中心非円形孔48に遊嵌しており、カム接続軸52の先端部(右端部)はベースプレート27の右側に突出している(
図8〜
図10等を参照)。小径円形孔55a、大径円形孔55b、長孔55cに3本の回り止め突起47aをそれぞれ嵌合させると、小径円形孔55a、大径円形孔55b、長孔55cと各回り止め突起47aとの遊びが実質的に無くなるので、回転カム47と回転中心軸51が一体化する(回転カム47と回転中心軸51の相対回転が規制される)。そのため回転中心軸51をベースプレート27(軸支持孔29)に対して自身の軸線回りに回転させると、回転カム47が回転中心軸51と一緒に回転する。また環状フランジ54に形成する貫通孔をすべて小径円形孔55aとせずに上記態様で構成しているので、3本の回り止め突起47aを環状フランジ54側の孔(小径円形孔55a、大径円形孔55b、長孔55c)に対して簡単に嵌合することが可能である。
【0020】
金属製の円盤部材であるラチェットプレート57はプレス成形品であり、その右側面の周縁部には円形の小径環状フランジ58が突設してあり、小径環状フランジ58の内側には収納空間が形成してある。ラチェットプレート57の中心部には断面円形の軸支持孔59が貫通孔として形成してある。ラチェットプレート57の左側面には軸支持孔59を中心とする周方向に90°間隔で並んだ計4つの溶接用突部60が突設してある。ラチェットプレート57の左側面の外周縁部には、小径環状フランジ58の裏側に位置する環状段部62が形成してある(
図8〜
図10参照)。また小径環状フランジ58の内周面には内歯63が形成してある。
ラチェットプレート57は、小径環状フランジ58を大径環状フランジ28の内周面と溝形成用突部30の外周面の隙間に挿入した状態でベースプレート27の左側面に被せてある。ラチェットプレート57をベースプレート27に被せると、環状フランジ54の左側面がラチェットプレート57の上記収納空間の底面(右側面)と微小隙間を形成しながら対向するので、回転中心軸51が自身の軸線方向に対して傾斜したり、ベースプレート27とラチェットプレート57の収納空間内でロック部材36、37、楔部材41、及び、回転カム47が回転中心軸51の軸線方向にがたつくのが抑えられる。
金属製の円環状部材である押えリング64の外径はベースプレート27よりやや大径であり、その左端部には内周側に向かって突出する環状対向部65が形成してある(
図8〜
図10参照)。押えリング64は、環状対向部65を環状段部62の左側に位置させた(対向させた)状態でベースプレート27及びラチェットプレート57の周縁部に被せてある。押えリング64の右端部には環状カシメ部66が形成してある。押えリング64は、ベースプレート27の右側面の外周部に形成された環状凹部に対して環状カシメ部66をかしめることによりベースプレート27に対して固定してある。ベースプレート27と押えリング64を一体化(固定)するとベースプレート27と押えリング64の間にラチェットプレート57が位置するので、ラチェットプレート57は、ベースプレート27及び押えリング64から脱落することなく回転中心軸51回りにベースプレート27及び押えリング64に対して相対回転可能となる。
【0021】
さらにベースプレート27の右側面には、帯状の金属線材を渦巻き状に巻くことにより構成したロックスプリング68が設けてある。ロックスプリング68の内周側端部は直線状に曲折することにより構成した第1係止部69となっており、ロックスプリング68の外周側端部はロックスプリング68の径方向と略平行な方向に延びる第2係止部70となっている。
ロックスプリング68はベースプレート27から突出したカム接続軸52の右端部の周囲に配設してある。
図14に示すように第1係止部69をカム接続軸52の周面の一部をなす平面部に係止し、第2係止部70を一方の係止突起35に係止している。
このようにしてロックスプリング68をベースプレート27と回転中心軸51(カム接続軸52)に取り付けると、ロックスプリング68は僅かに弾性変形して回転中心軸51を一方向に回転する付勢力を発生する。この付勢力は回転中心軸51を
図21〜
図23の反時計方向に回転させる力であるため、回転中心軸51に対してロックスプリング68以外の外力を及ぼさないとき回転カム47は
図21に示すロック位置に位置する。そして回転カム47がロック位置に位置するとき、各ロック部材押圧部47bが対応するロック部材36、37をロック方向(外周側)に押圧する。さらに、回転カム47の一つのカム突起49(
図21では
下側に位置するカム突起49)の押圧曲面50が楔部材41の係合部43をロック方向(外周側)に押圧するので、楔部材41はスライド接触平面45が面接触する案内平面30aによって案内されながらベースプレート27の外周側にスライドし、かつ、押圧部44の一部が被押圧部39aに強い力で圧接する。そのため楔部材41によって(
図21においてロック部材37の右側に位置する)案内平面30a側及びロック方向に押圧されたロック部材37が噛合位置に移動し、その外歯40がラチェットプレート57の内歯63と噛み合うので、ロック部材37は案内溝31内を移動不能となる。一方、残りのロック部材36は各案内溝31内での周方向への移動が許容されているので、案内溝31上を周方向に移動しながら内歯62と噛み合う。従って、回転カム47がロック位置まで回転したときに、すべてのロック部材36、37が確実にロック動作を行うので、ベースプレート27とラチェットプレート57の相対回転が規制される。
一方、ロックスプリング68の回転付勢力に抗して回転中心軸51を
図21〜
図23の時計方向に回転させると、ロック位置に位置していた回転カム47が
図22に示すアンロック位置まで回転する。するとロック部材押圧部47bが対応するロック部材36、37から内周側に離間し、回転カム47の一つのカム突起49(
図21では上側に位置するカム突起49)の押圧曲面50が楔部材41の係合部43から周方向に離間する。さらに各カム突起49が対応するカム溝38に係合して対応するロック部材36、37を
図22に示す非噛合位置まで径方向内側に移動させるので、ロック部材36、37の外歯40と内歯63の噛合が解除されベースプレート27とラチェットプレート57の相対回転が可能になる。また楔部材41が対応する案内溝31内を案内平面30a、ロック部材37(被押圧部39a)、及び、回転カム47(カム突起49)によって囲まれた範囲内で自由に動ける状態になる。
【0022】
ベースプレート27の右側面には金属製のスプリングカバー72が取り付けてある。スプリングカバー72は金属板をプレス成形することにより得られた部材である。スプリングカバー72の基部は側面形状が非円形形状をなしかつ左端面全体が開放したバネ収納部73により構成してあり、バネ収納部73の中央部には円形貫通孔74が形成してある。バネ収納部73の左端部の周縁部には断面略V字形の係合突部75が突設してある。またバネ収納部73の左端部の周縁部には、係合突部75とは周方向位置を異ならせて、2つの被押さえ片76が突設してある。2つの被押さえ片76は、左右方向に対して直交する一平面上に位置する平板状の突片である。
スプリングカバー72は、カム接続軸52の端部を円形貫通孔74内に位置させ、かつ、バネ収納部73を3つの溶接用突部33の間に位置させた状態でベースプレート27の右側面に取り付けてある。バネ収納部73を3つの溶接用突部33の間に位置する空間内に押し込むと、バネ収納部73周縁部の二カ所に対して、2つの溶接用突部33に形成した抜止突起34がそれぞれ係止し、さらに係合突部75の先端に対して残りの一つの溶接用突部33に形成した抜止突起34が係合する。そのためスプリングカバー72をベースプレート27の右側面に取り付けると、スプリングカバー72はベースプレート27の右側面に対して取り付けられた状態になる。
【0023】
図6に示すようにリクライニング装置25のベースプレート27は、各溶接用突部33を各嵌合孔15にそれぞれ嵌合し、各溶接用突部33の一対の側端面33aを対応する嵌合孔15の一対の平面部15aと面接触させた状態で、後部フレーム13に取り付けてある。後部フレーム13の右側面側から各嵌合孔15の外周縁部と各溶接用突部33の右端面の外周縁部に跨る部分に溶接W1(
図11の多数の×印、及び
図12を参照)を施すことにより、後部フレーム13とベースプレート27を固定している。
図11に示すように各溶接用突部33の右端面の外周縁部(溶接W1を施す位置)は、内歯63の位置(即ち、噛合位置に位置するロック部材36、37の外歯40の位置)、及び、突部対応凹部32の外周縁部より外周側に位置する(
図11、
図13参照)。またベースプレート27を後部フレーム13に固定すると、
図12に示すように被押さえ片76の外側面に後部フレーム13の内側面(クッション側接続孔14の周縁部)が当接するので、スプリングカバー72のベースプレート27の右側面からの脱落を簡単かつ確実に防止できる。
一方、リクライニング装置25のラチェットプレート57は、溶接用突部60を各嵌合孔18にそれぞれ嵌合し、シートバック側フレーム16の左側面側から各嵌合孔18の外周縁部と溶接用突部60の左端面の外周縁部に溶接(図示略)を施すことによりシートバック側フレーム16に固定する。
【0024】
このようにしてリクライニング装置25に後部フレーム13とシートバック側フレーム16を取り付けたら、操作レバー21(
図1参照)の基端部から左側に向かって延びる断面非円形形状の接続シャフト(図示略)を、スプリングカバー72の円形貫通孔74を通してカム接続軸52の接続孔53に圧入し、接続シャフトを回転中心軸51(接続孔53)に対して固定する。従って、操作レバー21を接続シャフト回りに回転させると、回転中心軸51が操作レバー21(接続シャフト)と一緒に回転する。
【0025】
以上の実施形態において、
図2に示す1つのロック部材37と楔部材41及び2つのロック部材36はそれぞれ、上述のように、ベースプレート27に形成した3本の案内溝31に摺動可能に配設されている。
図21ないし
図23は、これらのロック部材37と楔部材41、及びロック部材36と、3本の案内溝31の関係を示している(なお、これら要素は、
図2にも表れているが、図示の便宜上、これらの位置関係は、
図21ないし
図23とは一致していない)。3本の案内溝31は、ベースプレート27とラチェットプレート57の相対回動軸を中心に放射方向(半径方向)に等角度間隔で配置されており、その1本は、同回動中心から鉛直方向下方に延びていて、その案内溝31に、1つのロック部材37と楔部材41が配置されている。他の2本の案内溝31は従って、同回動中心から斜め上方に延びていて、この上方斜めに延びる案内溝31にロック部材36が配置されている。この2つのロック部材36には、重力による下方への移動力(ロック部材36の外歯40がラチェットプレート57の内歯63から離間して非噛合位置に移動しようとする力)が加わる。
【0026】
一方、ロック部材37とラチェットプレート57との間には、ラチェットプレート57(シートバック側フレーム16)のアンロック位置(前倒位置から初段ロック位置の直前迄の間)において、ロック部材37を強制的にアンロック位置に保持する強制アンロック保持機構が備えられている。すなわち、ロック部材37の左側面には、断面略矩形の係合突起40aが突設され(他のロック部材36には、このような係合突起が設けられていない)、ラチェットプレート57には、小径環状フランジ58の内周面の内歯63より一段左側に位置する部分に、周方向に等角度間隔で3つのアンロック状態保持用突部57a(
図2にも表れている)が内周側に向けて突設してある。これらのアンロック状態保持用突部57aの内周面はラチェットプレート57の中心を中心とする円弧形状である。
【0027】
ラチェットプレート57に設けられた3つのアンロック状態保持用突部57aのうち、2つロック部材36に対応する2つのアンロック状態保持用突部57aは、何ら仕事をしない(ラチェットプレート57の成形上の理由で設けられたものである)。これに対し、ロック部材37の係合突起40aに対応するアンロック状態保持用突部57aは、ラチェットプレート57(シートバック側フレーム16)のアンロック位置(前倒位置から初段ロック位置の直前迄の間)において、ロック部材37を強制的にアンロック位置に保持する。
【0028】
続いて車両用シート10の動作について説明する。
操作レバー21に対して外力を付与しないとき、ロックスプリング68の回転付勢力によって操作レバー21は
図1の実線で示す非作動位置に位置する。さらに回転カム47がロック位置に位置しロック部材37が噛合位置に位置するので、リクライニング装置25はロック状態になる。そのためベースプレート27と一体化したシートクッション11(後部フレーム13)とラチェットプレート57と一体化したシートバック12(シートバック側フレーム16)の相対回転(シートバック12の前傾)が規制される。一方、ロックスプリング68の回転付勢力に抗して操作レバー21を
図1に仮想線で示した作動位置まで時計方向に回転させると、回転カム47がアンロック位置まで回転しロック部材36、37が非噛合位置に移動するので、リクライニング装置25はアンロック状態になる。そのためベースプレート27と一体化したシートクッション11(後部フレーム13)とラチェットプレート57と一体化したシートバック12(シートバック側フレーム16)の相対回転が可能になる。
そしてシートバック12(シートバック側フレーム16)が
図1に実線で示した初段ロック位置に位置するときに、操作レバー21を作動位置まで回転させてリクライニング装置25をアンロック状態にすると、車両用シート10内に設けた回転付勢スプリング(図示略)の回転付勢力によってシートバック12が前方に回転する。するとラチェットプレート57がベースプレート27に対して
図21〜
図23の反時計方向に回転する。
図23はシートバック12が初段ロック位置から前方に僅かに回転したときのリクライニング装置25の内部の様子を示しており、このとき、ラチェットプレート57の3つのアンロック状態保持用突部57aのうち、ロック部材37に対応する突部57aの内周面は、該突部57aの内周面より内周側に位置するロック部材37の係合突起40a(の外周面)と対向する(接触する)トッピング状態(リクライニング装置25がアンロック状態に保持される状態)となる。一方、2つのロック部材36は、下方傾斜の案内溝31内に配置されているので、アンロック状態への移動力を受けており、さらに、回転カム47の2つのカム突起49が、2つのロック部材36の対応するカム溝38に係合して対応するロック部材36を
図22に示す非噛合位置まで径方向内側に移動させる。この回転カム47のカム突起49とロック部材36のカム溝38は、ロック部材36をアンロック位置に移動させるサブ強制アンロック保持機構を構成する。従って、ロック部材36、37の外歯40と内歯63の噛合が解除されベースプレート27とラチェットプレート57の相対回転が可能になる。なお、ロック部材37は、その係合突起40aとラチェットプレート57のアンロック状態保持用突部57aとによってアンロック位置に保持される。
【0029】
一方、シートバック12が
図1に実線で示した初段ロック位置又は初段ロック位置より後方に位置するときに、(車両用シート10に着座した乗客の背中等で)シートバック12に対して後ろ向きの力を及ぼしながら非作動位置に位置する操作レバー21を作動位置まで回転させてリクライニング装置25をアンロック状態にすると、シートバック12が後方に回転する。そしてシートバック12が所望の位置まで後傾したときに操作レバー21を非作動位置に戻せば、ロックスプリング68の回転付勢力によって回転カム47がロック位置に移動復帰しかつロック部材36、37が噛合位置に移動復帰するので、シートバック12(シートバック側フレーム16)の傾動位置が当該位置に保持される。
【0030】
図26、
図27は、ロック部材37の係合突起40aをアンロック位置に強制的に保持するラチェットプレート57のアンロック状態保持用突部57bの別の実施形態を示している。この実施形態では、3つに分割されていたアンロック状態保持用突部57aをラチェットプレート57のほぼ半周に渡って連続するアンロック状態保持用突部57bとしている。
【0031】
以上の実施形態では、ロック部材36、37の数が3つで、そのうち係合突起40aを有するロック部材37が1つ、係合突起40aに対応する係合突起を持たないロック部材36が2つであるが、ロック部材の数は増減可能である。より一般に、ロック部材の数をN(2以上)としたとき、強制ロック突起を持たないロック部材の数Xは、1≦X≦N-1とする。
【0032】
以上の実施形態では、係合突起40aを有するロック部材37は楔部材41と一緒に1本の案内溝31内に配置されているが、本発明は、案内溝31内に係合突起40aを有するロック部材37だけを配置する場合にも適用できる。逆に、以上の実施形態では、ロック部材37の係合突起40aに相当する突起を持たないロック部材36を案内溝31内に単独で配置しているが、ロック部材36と楔部材41を組み合わせて案内溝31内に配置してもよい。
【0033】
また、以上の実施形態は、ベースプレート27を後部フレーム13側に固定する実施形態に本発明を適用したものであるが、ベースプレート27をシートバック側フレーム16側に固定する実施形態でも本発明は成立する。
【0034】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
左側の後部フレーム13とシートバック側フレーム16の間をリクライニング装置25で接続してもよい。また、左右の後部フレーム13とシートバック側フレーム16の間をリクライニング装置25で接続し、左右のリクライニング装置25の回転中心軸51同士を連結パイプ等で接続して、左右のリクライニング装置25の動きを連動させるようにしてもよい。
【0035】
楔部材41は直線L1に関して対称な形状なので、車両用シート10が左右にリクライニング装置25を具備する場合(又は左側にのみリクライニング装置25を具備する場合)に、左側のリクライニング装置25に対しても楔部材41を適用可能である。