(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンクリート製の外槽の内側において、ジャッキアップ装置による内槽側板の上昇と、前記上昇した内槽側板の下側への次の内槽側板の取り付けと、を交互に繰り返して金属製の内槽を組み立てる工程を有し、前記外槽の側壁に前記ジャッキアップ装置を吊るための吊り点を設けて、タンク屋根部と前記内槽側板とを接続するためのナックル部を前記ジャッキアップ装置により吊り上げることで、前記内槽側板を上昇させる円筒型タンクの構築方法であって、
前記内槽側板を支持するための脚付架台を、前記外槽の底部であって前記組み立てられた内槽が下ろされるべきアニュラー領域を跨ぐように設置する工程と、
前記脚付架台の下で、前記アニュラー領域に、前記組み立てられた内槽を支持するためのアニュラー部を形成する工程と、
前記アニュラー部の形成後に、前記アニュラー部よりもタンク内側に配置されていた前記脚付架台の脚部を前記アニュラー部の上に挿げ替える工程と、を有し、
さらに、
前記ジャッキアップ装置の吊り点を順次上方に変更していく工程と、
前記吊り点を変更する間、前記ナックル部及び前記内槽側板を含むタンク構成部材を保持手段によって前記外槽の側壁に保持させる工程と、を有し、
前記保持手段は、
前記タンク構成部材側に設けられた被吊側保持架台と、
前記外槽の側壁側に設けられた吊側保持架台と、
前記被吊側保持架台と吊側保持架台との間に設置された高さ調節手段と、を有する、ことを特徴とする円筒型タンクの構築方法。
前記内槽側板の取り付けにおいては、前記外槽の外側で複数の前記内槽側板を予め横方向に連結し、これを前記外槽の内側に取り込んで環状に形成したものを、前記上昇した内槽側板の下側に取り付ける、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の円筒型タンクの構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術においては、ジャッキアップ装置によって上昇した内槽側板の下側に取り付けられる次の内槽側板を支持するために、脚付架台を設置している(特許文献1の
図8参照)。そして、内槽屋根に内槽側板を最下段のものまで取り付けた後に、当該脚付架台を撤去し、内槽が下ろされるべきアニュラー領域にパーライトコンクリートブロック及びアニュラープレートを組み立てている(特許文献1の
図11参照)。すなわち、上記従来技術では、脚付架台を外槽の底部に設置しているために、外槽の底部に保冷材を敷設する保冷作業がクリティカルパスとなっており、円筒型タンクの工期の短縮を十分に図ることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、内槽の組み立て作業と外槽底部の保冷作業との干渉をなくして工期の短縮を図ることができる円筒型タンクの構築方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、コンクリート製の外槽の内側において、ジャッキアップ装置による内槽側板の上昇と、前記上昇した内槽側板の下側への次の内槽側板の取り付けと、を交互に繰り返して金属製の内槽を組み立てる工程を有する円筒型タンクの構築方法であって、前記内槽側板を支持するための脚付架台を、前記外槽の底部であって前記組み立てられた内槽が下ろされるべきアニュラー領域を跨ぐように設置する工程と、前記脚付架台の下で、前記アニュラー領域に、前記組み立てられた内槽を支持するためのアニュラー部を形成する工程と、前記アニュラー部の形成後に、前記アニュラー部よりもタンク内側に配置されていた前記脚付架台の脚部を前記アニュラー部の上に挿げ替える工程と、を有する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、内槽側板を支持するための脚付架台の下に形成された空間において、外槽の底部にアニュラー部を形成する。そして、アニュラー部の形成後、アニュラー部よりもタンク内側に配置されていた脚付架台の脚部をアニュラー部の上に挿げ替えることにより、タンク内側の外槽の底部における保冷作業との干渉をなくすことができる。このため、本発明では、内槽の組立作業と外槽底部の保冷作業との干渉を回避することができる。
【0008】
また、本発明においては、前記外槽の側壁に前記ジャッキアップ装置を吊るための吊り点を設けて、タンク屋根部と前記内槽側板とを接続するためのナックル部を前記ジャッキアップ装置により吊り上げることで、前記内槽側板を上昇させる、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、ナックル部を介して内槽側板をジャッキアップする。ナックル部は、タンク屋根部と内槽側板とを接続するためのもので比較的強度(板厚)があり、内槽側板を含む重量が入力されても座屈等の懸念をなくすことができる。
【0009】
また、本発明においては、前記ジャッキアップ装置の吊り点を順次上方に変更していく工程と、前記吊り点を変更する間、前記ナックル部及び前記内槽側板を含むタンク構成部材を保持手段によって前記外槽の側壁に保持させる工程と、を有する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、ジャッキアップ装置の吊り点を変更する間、ナックル部及び内槽側板を含むタンク構成部材の重量を保持手段を介して外槽の側壁に受けさせる。これにより、ジャッキアップ装置の次の吊り点への変更が可能となり、ジャッキアップストロークが長い大型のジャッキアップ装置を設置しなくてもナックル部及び内槽側板を含むタンク構成部材の吊り上げが可能となる。
【0010】
また、本発明においては、前記保持手段は、前記タンク構成部材側に設けられた被吊側保持架台と、前記外槽の側壁側に設けられた吊側保持架台と、前記被吊側保持架台と吊側保持架台との間に設置された高さ調節手段と、を有する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、ジャッキアップ装置の吊り点を変更する間、ナックル部及び内槽側板を含むタンク構成部材の保持手段による保持高さを調節する。これにより、ジャッキアップ装置の次の吊り点への変更にかかる位置調節及び接続作業性の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記高さ調節手段は、ネジ部材を有する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、ネジ部材による連続的な高さ調節を行う。これにより、ナックル部及び内槽側板を含むタンク構成部材の高さ調節を精度よく行うことができる。
【0012】
また、本発明においては、前記タンク構成部材の外周縁部を、前記保持手段により複数箇所で保持する、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、複数の保持手段により保持したタンク構成部材の外周縁部の複数箇所において選択的に高さ調節を可能とする。これにより、ナックル部及び内槽側板を含むタンク構成部材の傾き調節ができ、内槽の組み立て精度の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記内槽側板の取り付けにおいては、前記外槽の外側で複数の前記内槽側板を予め横方向に連結し、これを前記外槽の内側に取り込んで環状に形成したものを、前記上昇した内槽側板の下側に取り付ける、という手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、複数の内槽側板同士を作業空間の制限の少ないタンク外で行うことができ、効率よく内槽を組み立てることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内槽の組み立て作業と外槽底部の保冷作業との干渉をなくして工期の短縮を図ることができる円筒型タンクの構築方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態における構築方法の第1工程を示す鉛直断面図である。
【
図2】(a)は本発明の実施形態における構築方法の第2工程を示す鉛直断面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
【
図3】本発明の実施形態における構築方法の第3工程を示す鉛直断面図である。
【
図4】本発明の実施形態における構築方法の第4工程を示す鉛直断面図である。
【
図5】本発明の実施形態における構築方法の第5工程を示す鉛直断面図である。
【
図6】本発明の実施形態における構築方法の第6工程を示す鉛直断面図である。
【
図7】本発明の実施形態における構築方法の第7工程を示す鉛直断面図である。
【
図8】本発明の実施形態における構築方法の第8工程を示す鉛直断面図である。
【
図9】本発明の実施形態における構築方法の第9工程を示す鉛直断面図である。
【
図10】本発明の実施形態における脚付架台及びジャッキアップ装置を示す鉛直断面図である。
【
図11】(a)は本発明の実施形態におけるジャッキアップ時の鉛直断面図、(b)はジャッキアップ時の側面展開図である。
【
図12】(a)は本発明の実施形態におけるジャッキアップ装置の吊り点変更時の鉛直断面図、(b)はジャッキアップ装置の吊り点変更時の側面展開図である。
【
図13】本発明の実施形態における脚付架台の脚部の挿げ替え時の鉛直断面図である。
【
図14】本発明の実施形態における構築方法の第10工程を示す鉛直断面図である。
【
図15】本発明の実施形態における構築方法の第11工程を示す鉛直断面図である。
【
図16】(a)は本発明の実施形態における構築方法の第12工程を示す鉛直断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【
図17】本発明の実施形態における構築方法の第13工程を示す鉛直断面図である。
【
図18】本発明の実施形態における構築方法を示す全体のフロー図である。
【
図19】本発明の一別実施形態におけるジャッキアップ時の側面展開図である。
【
図20】本発明の一別実施形態におけるジャッキアップ時の側面展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の円筒型タンクの構築方法について図面を参照して説明する。以下の説明では、円筒型タンクとして、LNGを貯蔵する地上式のPC(プレストレスコンクリート)二重殻貯槽を例示する。
【0017】
先ず、
図1に示すように、略円板状の基礎版(外槽の底部)1の工事を行う。基礎版1の外周縁部には、後述するPC壁(外槽の側壁)2を組み立てる基礎部3を凸設する。また、基礎部3の内側に沿って内槽アンカーストラップ4を設置する。
【0018】
次に、
図2(a)に示すように、基礎版1上に側ライナー(外槽側板)5を組み立てる。なお、側ライナー5は、コンクリート型枠を兼ねている。側ライナー5は、通常板厚が6mm程度の鋼材であるが、本実施形態では板厚を20mm程度もしくは強度を上げた強め材にして、強度を向上させている。
【0019】
側ライナー5は、基礎部3の内側に沿って組み立てる。
図2(b)に示すように、基礎部3の基端部に埋め込みプレート6を設置し、その上に側ライナー5を据え付ける。
また、
図2(a)に示すように、基礎版1上に底部ライナー7を敷設する。
図2(b)に示すように、底部ライナー7の縁部は、埋め込みプレート6上に重ねて敷設する。
【0020】
次に、
図3に示すように、側ライナー5をさらに組み立てる。また、側ライナー5の基端部の内側に沿って、内槽側板組立用の脚付架台8を設置する。脚付架台8は、後述する内槽側板9を支持するための門型架台である。この脚付架台8を、内槽側板9が複数組み合わされてなる円筒状の内槽が基礎版1上に最終的に下ろされるべき領域であるアニュラー領域Xを跨ぐように設置する。
【0021】
次に、
図4に示すように、側ライナー5を最下段のものから最上段のものへと順々に組み立てる。なお、ここでは、側ライナー5を例えば4段目まで組み立てる。
そして、
図5に示すように、先行して4段目まで組み立てた側ライナー5に沿って、基礎部3上にPC壁2を最下段のものから最上段のものへと順々に、例えば側ライナー5と同数だけ(図では4段目まで)打設して組み立てる。
【0022】
また、脚付架台8上に内槽側板(内槽の側壁でもある)9をタンク周方向に沿って複数立設し、これら各内槽側板9の隣り合うもの同士を横方向において一体的に溶接することで、これら各内槽側板9を環状に組み立てる。なお、ここで組み立てる内槽側板9は、最上段(本実施形態では9段目)に対応するものである。内槽側板9は、優れた靱性と強度を備えるNi鋼材から形成されている。
【0023】
次に、
図6に示すように、基礎版1の中央部に屋根架台10を組み立てる。また、最上段の内槽側板9の上端部にナックルプレート(ナックル部)11を組み付ける。また、基礎版1上に高所作業車12を乗り入れる。また、脚付架台8の下のアニュラー領域Xにパーライトコンクリートブロックや構造用軽量コンクリートブロック等のアニュラー部13の構成部材を仮置きする。
【0024】
次に、
図7に示すように、屋根架台10上に内槽屋根ブロックを搭載し、内槽屋根(タンク屋根部)14を組み立てる。また、内槽屋根14の外周縁部には、ナックルプレート11を介して最上段の内槽側板9を取り付ける。ナックルプレート11は、内槽屋根14の外周縁部で下方に向けて湾曲するように形成されるものである。このナックルプレート11の下端縁部を最上段の内槽側板9の上端縁部に接続する。
【0025】
次に、基礎版1よりも上方であって、内外槽間(PC壁2と内槽側板9との間)15において、ナックルプレート11よりも上方のPC壁2に、吊側ジャッキ架台(吊り点)16をタンク周方向で複数設置する。吊側ジャッキ架台16は、所定高さのPC壁2からタンク内方に向けて略水平に凸設されるものである。この吊側ジャッキ架台16を例えばPC壁2に埋め込んだアンカープレート等に強固かつ着脱可能に締結固定する。
【0026】
また、ナックルプレート11に、複数の吊側ジャッキ架台16に対応する複数の被吊側ジャッキ架台21を設置する。被吊側ジャッキ架台21は、ナックルプレート11から内外槽間15に向けて略水平に凸設されるものである。この被吊側ジャッキ架台21をナックルプレート11に着脱可能に固定する。また、ナックルプレート11に被吊側ジャッキ架台21を取り付けることで、被吊側ジャッキ架台21が強度上大型になる場合でも、内外槽間15と比べて、ナックルプレート11の湾曲形状によりPC壁2に対するクリアランスが確保し易くなり、作業を容易に行える。
【0027】
そして、内槽屋根14を組み立てた後、任意のタイミングで、
図8に示すように、内槽屋根14上で外槽屋根17を組み立てる。外槽屋根17は、内槽屋根14と不図示の連結材で連結され、内槽屋根14と一体的に組み立てられる。
【0028】
また、側ライナー5をさらに組み立てると共に、側ライナー5の外側に片足足場(足場)18を設けて、PC壁2の打設を継続する。PC壁2は、従来のような両足足場ではなく片足足場18とすることができる。このようにすることで、側ライナー5の内側で行われる、後述するジャッキアップ作業との干渉を回避することができる。
【0029】
次に、
図9に示すように、吊側ジャッキ架台16と被吊側ジャッキ架台21との間に渡って、ジャッキアップ装置19を設置する。ジャッキアップ装置19は、
図10に示すように、センターホールジャッキとして構成され、被吊側ジャッキ架台21の下方に吊下される円筒状のジャッキ本体19aと、上下に延在してジャッキ本体19aにストローク可能に保持されると共に上端部を吊側ジャッキ架台16にイコライザ20aを介して係合させるジャッキアップロッド20と、を有する。
【0030】
上記構成のジャッキアップ装置19を、
図9に示すように、内外槽間15においてタンク周方向に所定間隔で複数設置する。このようにジャッキアップ装置19を設置したら屋根架台10を除去する。屋根架台10を除去すると、内槽屋根14及び外槽屋根17の重量の一部又は全部が複数のジャッキアップ装置19によって支持された状態となる。
【0031】
次に、
図11(a)に示すように、ジャッキアップ装置19によってナックルプレート11を吊り上げることで、内槽側板9を上昇させる。具体的には、ジャッキ本体19aが正転駆動することで、このジャッキ本体19aが被吊側ジャッキ架台21と共にジャッキアップロッド20を伝うように上昇し、もって組み立て途中のタンク構成部材(本実施形態では内槽側板9、ナックルプレート、内槽屋根14及び外槽屋根17を含む)をジャッキアップさせる。
【0032】
ジャッキアップ装置19によって吊り上げられるナックルプレート11は、内槽屋根14と内槽側板9とを接続するためのもので、内槽側板9よりも比較的強度(板厚)があるため、内槽側板9を含む重量が入力されても座屈等の懸念をなくすことができる。すなわち、下段側の内槽側板9はタンク完成後における内容液の比較的大きな液圧に対応して板厚を厚くしているが、上段側(特に最上段)の内槽側板9は内溶液の比較的小さな液圧に対応して板厚を薄くしているからである。このように、内槽側板9の座屈の懸念を無くすことで、内槽側板9の最適設計による軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0033】
次に、
図11(b)に示すように、ジャッキアップ装置19によりジャッキアップロッド20の1ストローク分(本実施形態では内槽側板9単体の上下幅に相当)だけ上昇させたタンク構成部材を、保持手段22によってPC壁2に保持させる。本手法では内外槽の同時施工を行っているため、例えばPC壁2の完成を待ってその頂部にジャッキアップ装置19を設置する等できないので、ジャッキアップ装置19の吊り点となる吊側ジャッキ架台16の位置を
図12に示すように変更する必要があるためである。
【0034】
保持手段22は、隣り合うジャッキアップ装置19の間にそれぞれ配置する。本実施形態の保持手段22は、タンク構成部材側に設けられた被吊側保持架台23と、PC壁2側壁側に設けられた吊側保持架台24と、被吊側保持架台23と吊側保持架台24との間に設置された高さ調節手段25と、を有する。本実施形態の高さ調節手段25は、ネジ部材26を有する。
【0035】
被吊側保持架台23は、ナックルプレート11から内外槽間15に向けて略水平に対となって凸設されるものである。この被吊側保持架台23をナックルプレート11に着脱可能に固定する。吊側保持架台24は、所定高さのPC壁2からタンク内方に向けて略水平に対となって凸設されるものである。この吊側保持架台24を例えばPC壁2に埋め込んだアンカープレート等に強固かつ着脱可能に締結固定する。
【0036】
ネジ部材26は、ボルトナット構造を有しており、被吊側保持架台23と吊側保持架台24との間に渡って設置されるものである。このネジ部材26のボルト部分を被吊側保持架台23の間及び吊側保持架台24の間に挟むように配置し、ネジ部材26のナット部分は被吊側保持架台23及び吊側保持架台24に係止させる。これにより、タンク構成部材をPC壁2に吊下げるようにして保持させる。
【0037】
このようにタンク構成部材をPC壁2に保持させたら、
図12に示すように、ジャッキアップ装置19の吊り点を変更する。なお、この前に、高さ調節手段25によりタンク構成部材の保持高さを調節することが望ましい。タンク構成部材の傾きは、次のジャッキアップに影響するためである。また、タンク構成部材が傾いたままであると、次の内槽側板9の取り付けに影響し、ひいては出来上がった内槽の精度に影響するためである。
【0038】
高さ調節手段25によるタンク構成部材の保持高さ調節は、ネジ部材26のナット部分を回すことにより行うことができる。このようにネジ部材26を用いることで、離散的でなく連続的な高さ調節を行うことができ、タンク構成部材の高さ調節を精度よく行うことができる。また、タンク構成部材の外周縁部は、複数の保持手段22によって保持されているため、当該外周縁部の複数箇所において選択的に高さ調節をすることにより、タンク構成部材の傾き調節を任意に行うことができる。このように高さ調節することで、ジャッキアップ装置19の次の吊り点への変更にかかる位置調節及び接続作業性の向上を図ることができる。
【0039】
タンク構成部材の保持高さ調節を行ったら、吊側ジャッキ架台16のPC壁2への固定を解除し、ジャッキ本体19aを逆転駆動させる。これにより、
図12(a)及び(b)に示すように、ジャッキアップロッド20及び吊側ジャッキ架台16を1ストローク分だけ上昇させる。その後、PC壁2の対応する位置に設けたアンカープレート等を用いることで、吊側ジャッキ架台16をPC壁2に再び着脱可能に固定することにより、ジャッキアップ装置19の吊り点を変更する。
【0040】
このようにジャッキアップ装置19の逆転駆動によってジャッキアップロッド20を上昇させることにより、ジャッキアップ装置19の吊り点の変更時に、比較的重いジャッキ本体19a側の上昇や着脱を不要とすることができる。このため、ジャッキ本体19aよりも比較的軽いジャッキアップロッド20側の上昇や着脱のみで、ジャッキアップ装置19の吊り点の変更を容易に行うことができる。
【0041】
ジャッキアップ装置19の吊り点の変更が終わったら、保持手段22によるタンク構成部材の保持を解除する。具体的には、ネジ部材26を取り外し、次のジャッキアップの際に被吊側保持架台23が干渉してしまう吊側保持架台24のPC壁2への固定を解除して除去する。保持手段22による保持を解除すると、タンク構成部材の重量が再び複数のジャッキアップ装置19によって支持された状態となる。
【0042】
このようなジャッキアップ装置19の吊り点の変更までの間に、
図13に示すように、ジャッキアップにより内槽側板9の下部にできた空間に次の内槽側板9を搬入する。内槽側板9の搬入は、PC壁2の下段に設けられた工事口(開口部)29を介して行う。工事口29には搬送装置30を設ける。搬送装置30は、工事口29からPC壁2の外側に延在するレール31と、レール31に沿って移動自在なトロリー32とを有する。
【0043】
レール31は、タンク周方向(接線方向)に沿うように延在するものであり、このレール31に沿って内外槽間15に搬入された内槽側板9は、内外槽間15でタンク周方向に沿って延在する環状のレールを有する第2搬送装置(何れも不図示)を介して、タンク周方向で所定位置に搬送される。この内槽側板9を脚付架台8上に降ろし、ジャッキアップされた内槽側板9の下方に環状に配置する。
【0044】
次に、環状に配置した複数の内槽側板9同士を溶接し、かつ上下に並ぶ内槽側板9同士を溶接することで、これら内槽側板9を一体の円筒状に形成する。なお、複数の内槽側板9同士をタンク外で予め横方向に連結し、これを内外槽間15に取り込んで環状に形成した後、上下に並ぶ内槽側板9同士を溶接するようにしてもよい。このように複数の内槽側板9同士を作業空間の制限の少ないPC壁2の外側で行うことで、溶接作業が容易になり、効率よく内槽を組み立てることができる。
【0045】
内槽側板9の取り付け後、ジャッキアップ装置19の吊り点の変更が終わったら、
図11に示す如くジャッキアップ装置19を作動させ、ナックルプレート11を介して内槽側板9を1ストローク分だけ上昇させて、
図13に示す如く次の内槽側板9を取り付けるための空間を形成する。そして、その空間に、また新たに取り付けるべき内槽側板9を搬入する。このようにして、ジャッキアップ装置19による内槽側板9の上昇と、上昇した内槽側板9の下側への次の内槽側板9の取り付けとを、交互に繰り返し、内槽側板9を最上段のものから最下段のものまで順々に取り付ける。
【0046】
ところで、これらの工程中、基礎版1上で、アニュラー部13の保冷工事及び中央部の保冷工事を並行して行う。アニュラー部13の保冷工事は、
図10に示すように、脚付架台8の下で、底部冷熱抵抗緩和材39の上にパーライトコンクリートブロック41A,41B、構造用軽量コンクリートブロック42を組み立て、その上にアニュラープレート43を取り付けることにより行う。アニュラー部13は、組み立てられた内槽側板9を最終的に支持するものであり、アニュラープレート43が厚く形成され、またその保冷構造もコンクリートブロック等の硬質なもので形成される。
【0047】
アニュラー部13の保冷工事が終わったら、アニュラー部13よりもタンク内側に配置されていた脚付架台8の脚部8aを
図13に示すようにアニュラー部13の上に挿げ替える。脚部8aはアニュラー部13の高さを考慮して短くし、高さ調節のためのライナー材27を間に挟んで、脚付架台8の支持面を一定高さに保持する。このような挿げ替えによって、アニュラー部13よりもタンク内側には干渉物がなくなるため、
図14に示すように、基礎版1上の中央部に保冷材33を敷設する保冷工事を行うことができる。
【0048】
本手法では、このように内槽側板9を支持するための脚付架台8の下に形成された空間において、基礎版1上にアニュラー部13を形成するため、内槽側板9の組み付け作業とアニュラー領域Xにおける保冷作業との干渉を回避することができる。また、本手法では、アニュラー部13の形成後、アニュラー部13よりもタンク内側に配置されていた脚付架台8の脚部8aをアニュラー部13の上に挿げ替えるため、タンク内側中央部の基礎版1上における保冷作業との干渉をなくすことができる。したがって、内槽側板9の組立作業と基礎版1上の保冷作業との干渉を回避し、両作業の同時施工が可能となる。
【0049】
なお、この工程中、
図14に示すように、片足足場18を設けつつ、PC壁2を最上段まで組み立てる。また、この工程中、昇降階段34をPC壁2の外部に設ける。また、この工程中、外槽屋根17に、屋根階段35、パーライトマンホール36や内外槽屋根マンホール37等を設ける。
【0050】
次に、
図15に示すように、内槽側板9の最下段までの取り付けが終了したら、脚付架台8を撤去し、内槽側板9の最下段の下端部をアニュラー部13上に降ろし、基礎版1に設置された内槽アンカーストラップ4に取り付ける。また、内槽屋根14と共にジャッキアップされた外槽屋根17は、連結材による内槽屋根14との連結を解除し、最上段まで組み立てられたPC壁2の上端部に不図示の頂部ライナープレートを介して取り付ける。最上段のPC壁2上には、外槽屋根17を取り付け高さまで上昇させるための仮架台(不図示)を予め設置しておくことが望ましい。その後、当該脚付架台、ジャッキアップ装置19、吊側ジャッキ架台16及び被吊側ジャッキ架台21等を撤去する。
【0051】
また、上記工程中に、
図16(a)に示すように、内槽底板38を敷設する。これにより、底部の保冷工事が終了する。なお、
図16(b)において、符号1は基礎版を、符号7は底部ライナーを、符号38は内槽底板を、符号39は底部冷熱抵抗緩和材を、符号40はあわガラスを、符号41は軽量気泡コンクリートを、符号41A及び41Bはパーライトコンクリートブロックを、符号42は構造用軽量コンクリートブロックを、符号43はアニュラープレートをそれぞれ示す。
【0052】
その後、PC壁2の緊張工事を行う。そして、不図示の内槽工事口の閉鎖、不図示のポンプバレルの設置を経た後、水張りをして耐圧・気密試験を実施する。
最後に、
図17に示すように、内外槽間15に保冷材44(例えばパーライト)を充填して内外槽間保冷工事を行い、その後、塗装工事、配管保冷工事を経て円筒型タンク100が構築される。
【0053】
図18は、本発明の実施形態における構築方法を示す全体のフロー図である。なお、
図18において、ハッチを付した工程(基礎、PC壁、側PUF)は、土木事業者による工程である。本図に示すように、基礎を工事した後、ライナー(側ライナー5)をPC壁よりも先行して工事し、かつPC壁構築中に屋根、内槽及び底板を工事することで、工期を大幅に短縮することができる。
【0054】
したがって、上述の本実施形態によれば、コンクリート製の外槽の内側において、ジャッキアップ装置19による内槽側板9の上昇と、上昇した内槽側板9の下側への次の内槽側板9の取り付けと、を交互に繰り返して金属製の内槽を組み立てる工程を有する円筒型タンク100の構築方法であって、内槽側板9を支持するための脚付架台8を、基礎版1上であって組み立てられた内槽が下ろされるべきアニュラー領域Xを跨ぐように設置する工程と、脚付架台8の下で、アニュラー領域Xに、組み立てられた内槽を支持するためのアニュラー部13を形成する工程と、アニュラー部13の形成後に、アニュラー部13よりもタンク内側に配置されていた脚付架台8の脚部8aをアニュラー部13の上に挿げ替える工程と、を有する、という手法を採用することによって、基礎版1に保冷材を敷設する保冷作業がクリティカルパスとならないため、内槽の組み立て作業と基礎版1の保冷作業との干渉をなくして工期の短縮化を図ることができる。
【0055】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0056】
例えば、
図19及び
図20に示すような手法を採用してもよい。なお、
図19及び
図20においては、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0057】
図19に示す別実施形態において、保持手段22の対となった吊側保持架台24は、被吊側保持架台23が上下に通過可能な隙間を開けて配置されている。そして、この対となった吊側保持架台24の上面に渡って保持ブロックBを配置し、この保持ブロックBにネジ部材26を係合させることで、タンク構成部材の重量を受けるようになっている。この保持手段22によれば、ジャッキアップによっても被吊側保持架台23と吊側保持架台24とが干渉しなくなるため、上記実施形態のようにジャッキアップの前に吊側保持架台24を除去する必要がなくなり、ジャッキアップ装置19の吊り点の変更作業が容易になる。
【0058】
また、
図20に示す別実施形態においては、保持手段22に代わり、PC壁2にタンク構成部材の重量を受けるジャッキアップ装置19Bを別途設け、ジャッキアップ装置19Aとジャッキアップ装置19Bとで交互にタンク構成部材を持ち替えつつこれを上昇させるようにしてもよい。また、ジャッキアップ装置19A,19Bは、それ自体で高さ調節が可能であるため、ネジ部材26のような高さ調節を別途設けなくてもよくなる。
【0059】
また、例えば、最上段の内槽側板9の組み付け作業は、ジャッキアップ作業の後に行うように(すなわち、内槽側板9に先行してナックルプレート11を組み立てるように)してもよい。
【0060】
また、例えば、内槽屋根14,外槽屋根17の組み立てをジャッキアップ作業と並行して行うようにしてもよい。
【0061】
また、例えば、ジャッキアップロッド20及び吊側ジャッキ架台16を上昇させる手法は、ジャッキ本体19aの逆転駆動に限定されず、場合によっては別の吊り上げ装置で実施してもよい。
【0062】
また、例えば、ジャッキアップ装置19の1ストローク毎に内槽側板9の組み付け作業を行うと説明したが、ジャッキアップ装置19の1ストローク中に複数の内槽側板9の組み付け作業を行うようにしてもよい。
【0063】
また、例えば、脚付架台8の脚部8aの挿げ替えは、上述したナックルプレート11をジャッキアップさせる手法だけでなく、従来技術の内槽側板を直接ジャッキアップさせる手法にも適用することができる。