特許第6018866号(P6018866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018866
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】管路の補修方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20161020BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20161020BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20161020BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   E03F7/00
   F16L57/00 B
   B29C63/02
   E03F3/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-217800(P2012-217800)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70435(P2014-70435A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392008884
【氏名又は名称】芦森エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 仁
(72)【発明者】
【氏名】関根 伸二
(72)【発明者】
【氏名】麻生 孝治
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/081167(WO,A1)
【文献】 特開2005−307452(JP,A)
【文献】 特開2003−314197(JP,A)
【文献】 特開2005−308100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00−7/12
B29C 63/00−63/48
E03F 3/04
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内壁面に、それぞれが前記管路の周方向に沿って延びた複数の補強部材を、前記管路の長さ方向に沿って間隔をあけて取り付ける補強部材取付工程と、
前記複数の補強部材によって形成される枠に前記管路の内壁面を覆う複数の被覆部材を取り付ける被覆部材取付工程と、を備えた管路の補修方法であって、
前記補強部材取付工程が、
前記内壁面に、前記複数の補強部材に共通の、前記複数の補強部材の前記管路の周方向における位置の基準となる基準部材を取り付ける基準部材取付工程と、
前記基準部材を用いて、前記複数の補強部材位置決めを行う位置決め工程と、
位置決めされた前記複数の補強部材を、前記内壁面に固定する固定工程と、を備えていることを特徴とする管路の補修方法。
【請求項2】
前記基準部材が、前記管路の長さ方向に沿って延びた棒状の部材であって、
前記補強部材取付工程が、
前記基準部材取付工程よりも前に、前記内壁面に、前記管路の長さ方向において、前記複数の補強部材よりも大きな間隔で、前記基準部材を保持するための複数の保持部材を取り付ける保持部材取付工程をさらに備え、
前記基準部材取付工程において、前記基準部材を前記複数の保持部材に取り付けることによって、前記基準部材を前記内壁面に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の管路の補修方法。
【請求項3】
前記補強部材取付工程が、
前記管路内に、前記管路の長さ方向における互いに離隔した2点において位置決めされた糸を張る糸張り工程をさらに備え、
前記保持部材取付工程において、前記糸の位置を基準として、前記複数の保持部材のうち少なくとも一部の保持部材を前記内壁面に取り付けることを特徴とする請求項2に記載の管路の補修方法。
【請求項4】
前記補強部材取付工程が、前記固定工程の後、前記基準部材を前記管路の内壁面から取り外す取り外し工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の管路の補修方法。
【請求項5】
前記補強部材には、前記複数の被覆部材を取り付けるための複数の凹部が、前記管路の周方向に沿って複数形成されており、
前記基準部材は、前記凹部と係合可能に構成されており、
前記位置決め工程において、前記複数の補強部材の互いに対応する凹部を、前記基準部材に係合させることによって、前記複数の補強部材の位置決めを行うことを特徴とする請求項4に記載の管路の補修方法。
【請求項6】
前記基準部材が、前記凹部と係合可能な略円柱形状の部材であることを特徴とする請求項5に記載の管路の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管路の内壁面の補修を行う管路の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、既設管路を補修するために、まず、当該管路の内壁面にその周方向に沿って延びたリング状の補強部材を、当該管路の長さ方向に沿ってほぼ等間隔に複数配置するとともに、これら複数の補強部材同士を、管路の長さ方向に沿って延びた複数の連結部材によって連結する。各補強部材には、それぞれ、その内周面に、管路の周方向に沿って配列された複数の凹部(嵌合部)が形成されている。そして、上述したように、管路内に複数の補強部材を配置した後、複数の補強部材にまたがって管路の長さ方向に延びた、略コの字の断面形状を有する複数の被覆部材(内面部材)を、補強部材の隣接する2つの凹部にまたがるように取り付ける。これにより、管路の内壁面が被覆部材で覆われ、既設管路が補修される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、上述したように、補強部材の凹部に、複数の補強部材にまたがって延びた被覆部材を取り付けるため、複数の補強部材の互いに対応する凹部が、管路の長さ方向から見て同じ位置に位置している必要がある。そして、そのためには、部材を管路内に配置する際に、補強部材の管路の周方向における位置決めを正確に行う必要がある。このとき、例えば、各補強部材について、個別に管路の内壁面からの距離などを測定し、その測定結果に基づいて位置決めを行うなどすると、管路の長さが長い場合などに、作業時間が膨大なものとなってしまう。
【0005】
また、管路は経年劣化などにより部分毎にその形状が異なってしまうこともあり、このような場合に、補強部材を、管路の内壁面を基準として位置決めを行うと、複数の補強部材の互いに対応する凹部の位置が、管路の長さ方向から見て互いにずれてしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、管路の長さ方向に沿って配列される複数の補強部材の、管路の周方向における位置決めを、精度よく且つ簡単に行うことが可能な管路の補修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る管路の補修方法は、管路の内壁面に、それぞれが前記管路の周方向に沿って延びた複数の補強部材を、前記管路の長さ方向に沿って間隔をあけて取り付ける補強部材取付工程と、前記複数の補強部材によって形成される枠に前記管路の内壁面を覆う複数の被覆部材を取り付ける被覆部材取付工程と、を備えた管路の補修方法であって、前記補強部材取付工程が、前記内壁面に、前記複数の補強部材に共通の、前記複数の補強部材の前記管路の周方向における位置の基準となる基準部材を取り付ける基準部材取付工程と、前記基準部材を用いて、前記複数の補強部材位置決めを行う位置決め工程と、位置決めされた前記複数の補強部材を、前記内壁面に固定する固定工程と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、複数の補強部材に共通の基準部材を基準として各補強部材の位置決めを行うため、各補強部材を、それぞれ個別に、内壁面を基準として位置決めを行う場合と比較して、補強部材の管路の内壁面に対する位置決めを簡単に行うことができる。また、複数の補強部材の互いの位置関係を正確なものとすることができる。
【0009】
第2の発明に係る管路の補修方法は、第1の発明に係る管路の補修方法において、前記基準部材が、前記管路の長さ方向に沿って延びた棒状の部材であって、前記補強部材取付工程が、前記基準部材取付工程よりも前に、前記内壁面に、前記管路の長さ方向において、前記複数の補強部材よりも大きな間隔で、前記基準部材を保持するための複数の保持部材を取り付ける保持部材取付工程をさらに備え、前記基準部材取付工程において、前記基準部材を前記複数の保持部材に取り付けることによって、前記基準部材を前記内壁面に取り付けることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、基準部材が、管路の長さ方向に延びた棒状の部材である場合に、複数の保持部材を精度よく位置決めして内壁面に取り付け、保持部材に基準部材を取り付けることにより、基準部材の内壁面に対する位置決めを精度よく行うことができる。
【0011】
第3の発明に係る管路の補修方法は、第2の発明に係る管路の補修方法において、前記補強部材取付工程が、前記管路内に、前記管路の長さ方向における互いに離隔した2点において位置決めされた糸を張る糸張り工程をさらに備え、前記保持部材取付工程において、前記糸の位置を基準として、前記複数の保持部材のうち少なくとも一部の保持部材を前記内壁面に取り付けることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、管路の長さ方向に沿って延びた糸を張り、この糸の位置を基準として保持部材を管路の内壁面に取り付けるため、これらの保持部材を個別に内壁面に対して位置決めして管路の内壁面に取り付ける場合と比較して、保持部材の取付を簡単に行うことができる。
【0013】
第4の発明に係る管路の補修方法は、第1〜第3のいずれかの発明に係る管路の補修方法において、前記補強部材取付工程が、前記固定工程の後、前記基準部材を前記管路の内壁面から取り外す取り外し工程をさらに備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明によると、補強部材を管路の内壁面に固定した後、基準部材を取り外すため、被覆部材を取り付ける際に基準部材が邪魔になることがない。
【0015】
第5の発明に係る管路の補修方法は、第4の発明に係る管路の補修方法において、前記補強部材には、前記複数の被覆部材を取り付けるための複数の凹部が、前記管路の周方向に沿って複数形成されており、前記基準部材は、前記凹部と係合可能に構成されており、前記位置決め工程において、前記複数の補強部材の互いに対応する凹部を、前記基準部材に係合させることによって、前記複数の補強部材の位置決めを行うことを特徴とする。

【0016】
本発明によると、補強部材の被覆部材を取り付けるための凹部を、基準部材に係合させることによって、補強部材の位置決めを行うことができるため、補強部材に基準部材を取り付けるための部分を別途設ける必要がない。
【0017】
第6の発明に係る管路の補修方法は、第5の発明に係る管路の補修方法において、前記基準部材が、前記凹部と係合可能な略円柱形状の部材であることを特徴とする。
【0018】
本発明によると、補強部材の凹部に係合可能な基準部材を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の補強部材に共通の基準部材を基準として各補強部材の位置決めを行うため、各補強部材を、それぞれ個別に、内壁面を基準として位置決めを行う場合と比較して、補強部材の管路の内壁面に対する位置決めを簡単に行うことができる。また、複数の補強部材の互いの位置関係を正確なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】補修済みの管路の、長さ方向を含む鉛直面に沿った断面図である。
図2図1に断面で示される筒状の内張り材を拡大した図であり、上半分が内張り材を内側から見た図、下半分が内張り材を外側から見た図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図3のA部拡大図である。
図5図2の内張り材を構成する補強部材を示す図である。
図6】両端の保持部材を配置する工程を示す図である。
図7】水糸を張り、水糸を基準として残りの保持部材を取り付ける工程を示す図である。
図8】保持部材に基準部材を取り付ける工程を示す図である。
図9】基準部材に補強部材を取り付ける工程を示す図である。
図10図9(a)のB部拡大図である。
図11】(a)が補強部材の残りの部分を取り付ける工程を示す図であり、(b)が保持部材及び基準部材を取り外す工程を示す図である。
図12】一変形例における図10(a)相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0022】
本実施の形態は、地中に埋設された下水道管など、既設の管路の内壁面を内張りして被覆することによって、当該管路の内壁面を補修する場合に本発明を適用した一例である。本実施の形態は、管路の径が1.5m〜2.0m程度の比較的大径の管路を対象としており、図1に示すマンホールHから管路P内に各種部材を搬入して内張り材1を組み立て、管路P内の所定の補修空間において、内張り材1により管路Pの内壁面P1をその全周にわたって被覆することによって補修を行う。
【0023】
内張り材1の構造について説明する。内張り材1は、図2図5に示すように、複数の補強部材2と、複数の内面部材3(被覆部材)とを備えている。
【0024】
図3に示すように、補強部材2は、図3における、管路Pの内壁面P1の右側部、左側部、下部及び上部に沿ってそれぞれ配される4つの部材2a、2b、2c、2dからなるリング状の部材であり、これら4つの部材2a〜2dは、図5に示される結合部材11によって周方向に連結されている。なお、部材2a〜2dは、炭素鋼、ステンレス鋼、硬質合成樹脂等の剛性の高い材料で形成されている。また、図2図5に示すように、複数のリング状の補強部材2が管路Pの長さ方向に互いに間隔D1の間隔で配設されてアンカー部材35によって管路Pの内壁面P1に固定されているとともに、互いに隣り合う補強部材2同士がパイプ状の複数の連結部材12によって連結されている。これにより、複数のリング状の補強部材2が一体化されて筒状の補強枠体を構成している。
【0025】
図3図4に示すように、補強部材2(部材2a〜2d)の内周面には、複数の凹部13が周方向に沿って間隔を空けて形成され、これら複数の凹部13には、隣接する2以上の補強部材2にまたがって管路Pの長さ方向に延びた複数の嵌合部材4がそれぞれ嵌合されている。さらに、補強部材2の内面には、隣接する2以上の補強部材2にまたがって管路Pの長さ方向に延びた複数の内面部材3が周方向に並べて配されている。内面部材3は、図4に示すように、1つの嵌合部材4に、周方向に隣接する2つの内面部材3の端部が接した状態で嵌合することで、補強部材2の内面に固定されている。
【0026】
なお、嵌合部材4及び内面部材3の材質は、耐腐食性に優れ、軽量で施工性にも優れ、かつコストも安価なポリエチレン樹脂をはじめとするオレフィン系等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂とすることが好ましいが、より強度の高い繊維強化プラスチック、難燃性を有する熱可塑性樹脂、ステンレス鋼をはじめとする金属とすることもできる。
【0027】
また、内面部材3、及び、この内面部材3を補強部材2に取り付ける嵌合部材4は、それぞれ管路Pの長さ方向に複数本連結されており、これによって内面部材3が補修区間の全長にわたって管路Pの内面を覆うようになっている。複数の内面部材3や嵌合部材4を管路Pの長さ方向に連結する方法の詳細については説明を省略するが、例えば、特開2002−310378号公報や特開2009−14092号公報に記載されているように、1つの連結材の両端部に、2つの内面部材3(嵌合部材4)の端部をそれぞれ挿入して両者を連結する方法を採用することができる。
【0028】
次に、上記内張り材1を用いて管路Pを補修する方法について説明する。
【0029】
内張り材1を用いて管路Pを補修するためには、まず、図6(a)、(b)に示すように、内壁面P1の一部である管路Pの図3の方向から見て右側の側壁面P1aの、上記補修区間(図1参照)の両端部に位置する部分に、それぞれ、保持部材31aを取り付ける。保持部材31aは、山形鋼などの略L字の部材であり、折れ曲がり部分を挟んだ2つの部分のうち、一方の部分が、側壁面P1aへの固定を行うための固定部41となっており、他方の部分が、後述する基準部材33a、33bを取り付けるための取付部42となっている。そして、保持部材31aを、固定部41が管路Pの側壁面P1aに沿って延び、取付部42が側壁面P1aから管路Pの内側に向かって略水平に延びるように配置した状態で、アンカー部材32により、固定部41を側壁面P1aに固定する。このとき、2つの保持部材31aが、管路Pの長さ方向から見て同じ位置にくるように保持部材31aを取り付ける。
【0030】
また、上述したのと同様にして、内壁面P1の一部である管路Pの図3の方向から見て左側の側壁面P1bにも2つの保持部材31bを取り付ける。
【0031】
次に、図7(a)に示すように、側壁面P1aに取り付けた2つの保持部材31aの間に水平線を示す水糸Yを張る(糸配置工程)。続いて、図7(b)に示すように、管路Pの側壁面P1aの上記2つの保持部材31aの間に位置する部分に、取り付けられた後の補強部材2同士の間隔D1よりも大きい間隔D2で、ほぼ等間隔に複数の保持部材31aを取り付ける(保持部材取付工程)。このとき、水糸Yを基準として各保持部材31aを取り付けることにより、全ての保持部材31aを、管路Pの長さ方向から見て完全に重なるように管路Pの側壁面P1aに取り付けることができる。
【0032】
また、側壁面P1bに取り付けられた2つの保持部材31bの間にも、上述したのと同様にして水糸Yを張り、水糸Yを基準として、側壁面P1bの2つの保持部材31bの間に位置する部分に、複数の保持部材31bを取り付ける。そして、全ての保持部材31a、31bの取付が完了した後、水糸Yを取り外す。
【0033】
次に、図8(a)、(b)に示すように、側壁面P1aに取り付けられた複数の保持部材31aのうち、隣接して配置される2以上の保持部材31aの取付部42の上面に、これら2以上の保持部材31aにまたがって管路Pの長さ方向に延びた略円柱形状(棒状)の基準部材33aを配置し、図示しないシャコ型万力などを用いて、基準部材33aをこれら2以上の保持部材31aに取り付ける。また、同様にして、側壁面P1bに取り付けられた複数の保持部材31bのうち、隣接して配置される2以上の保持部材31bにも、基準部材33aと同様の基準部材33bを取り付ける。ここで、基準部材33a、33bは、管路PにつながるマンホールHから管路P内に導入可能な長さ(例えば、5m程度)を有するものである。
【0034】
次に、図9図10に示すように、複数の補強部材2の部材2aの互いに対応する凹部13を、それぞれ、基準部材33aに係合させることによって、複数の部材2aを、管路Pの長さ方向に間隔D1ずつあけて配置する。このとき、複数の部材2aは、互いに対応する凹部13が基準部材33aと係合することにより、管路Pの長さ方向において互いに対応する凹部13が、管路Pの長さ方向から見て同じ位置にくるように、管路Pの周方向において位置決めされる。そして、管路Pの周方向において位置決めされた複数の部材2aをアンカー部材35によって管路Pの側壁面P1aに固定する。
【0035】
同様に、複数の補強部材2の部材2bの互いに対応する凹部13を、それぞれ、基準部材33bに係合させることによって、複数の部材2bを、管路Pの周方向において位置決めしつつ、管路Pの長さ方向にほぼ等間隔に配置する。そして、位置決めされた複数の部材2bをアンカー部材35によって管路Pの側壁面P1bに固定する。
【0036】
なお、本実施の形態では、部材2a、2bの凹部13を、それぞれ、基準部材33a、33bに係合させることによって、部材2a、2bの管路Pの周方向における位置決めを行う工程が、本発明に係る位置決め工程に相当する。
【0037】
次に、図11(a)に示すように、部材2a、2bに部材2c、2dを取り付けることによって補強部材2を形成するとともに、部材2c、2dを、アンカー部材35によって管路Pの内壁面P1に固定する。また、これと並行して、連結部材12により、補強部材2同士を連結させる。なお、本実施の形態では、アンカー部材35により、部材2a〜2dを内壁面P1に固定する工程が、本発明に係る固定工程に相当する。また、上述の保持部材31a、31bの取付から、アンカー部材35による補強部材2の固定までの工程を合わせたものが、本発明に係る補強部材取付工程に相当する。
【0038】
そして、この後、基準部材33a、33bが配置されている領域内において、アンカー部材35による部材2c、2dの固定が完了したとき(補強部材2の取付が完了したとき)に、基準部材33a、33bの保持部材31a、31bへの固定を解除するとともに、基準部材33a、33bを管路Pの長さ方向にずらして(アンカー部材35による部材2c、2dの固定が完了した領域から取り外して)、次に補強部材2を取り付ける領域まで移動させる。また、図11(b)に示すように、アンカー部材35による部材2c、2dの固定が完了した領域に配置された保持部材31a、31bを管路Pの内壁面P1から取り外す。
【0039】
なお、本実施の形態では、上述の基準部材33a、33bをずらし、保持部材31a、31bを取り外す工程が、本発明に係る取り外し工程に相当する。そして、管路Pの長さ方向にずらされた基準部材33a、33bが配置された領域において、上述したのと同様にして、部材2a〜2dの内壁面P1への取付を行う。
【0040】
一方、補強部材2の取付が完了し、保持部材31a、31bが取り外された領域においては、連結部材12により互いに連結された複数の補強部材2によって形成された枠に、図3などに示すように、嵌合部材4及び内面部材3を取り付けることによって、管路Pの内壁面P1を被覆して(被覆部材取付工程)、内張り材1を完成させる。そして、内張り材1の完成後、内張り材1と管路Pの内壁面P1との間の隙間にモルタルなどを充填することにより、当該隙間を埋める。
【0041】
以上に説明した実施の形態によると、管路Pの長さ方向に沿って延びた基準部材33a、33bに、それぞれ、複数の補強部材2の部材2a、2bの凹部13を係合させることによって、部材2a、2bの管路Pの周方向における位置決めを行うため、各補強部材2の部材2a、2bを個別に管路Pの内壁面P1を基準として位置決めを行う場合と比較して、部材2a、2bを管路Pの内壁面P1に取り付ける作業にかかる時間を短くすることができる。
【0042】
また、管路Pの内壁面P1は、経年劣化等により、部分毎にその径等にばらつきがあることもあり得るため、各補強部材2の部材2a、2bを個別に管路Pの内壁面P1を基準として位置決めすると、補強部材2間で、管路Pの長さ方向から見て、凹部13が同じ位置に来ず、嵌合部材4や内面部材3を取り付けられない虞がある。
【0043】
これに対して、本実施の形態では、上述の通り、基準部材33a、33bに、それぞれ、複数の補強部材2の部材2a、2bの凹部13を係合させることによって、部材2a、2bの管路Pの周方向における位置決めを行うため、複数の補強部材2の互いに対応する凹部13が、管路Pの長さ方向から見て確実に同じ位置にくるように、補強部材2を管路Pの内壁面P1に取り付けることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、管路Pの長さ方向から見て同じ位置にくるように、内壁面P1に、管路Pの長さ方向に並ぶ複数の保持部材31a、31bを取り付け、保持部材31a、31bに略円柱形状(棒状)の基準部材33a、33bを取り付けるため、複数の保持部材31a、31bを精度よく位置決めして内壁面P1に取り付けることにより、保持部材31a、31bに取り付けられる基準部材33a、33bの位置決めを精度よく行うことができる。
【0045】
また、このとき、複数の保持部材31a、31bのうち、管路Pの長さ方向における両端に位置する2つの保持部材31a、31bを内壁面P1に取り付けるとともに、これら2つの保持部材31a、31bの間に水糸Yを張り、水糸Yを基準として残りの保持部材31a、31bを内壁面P1に取り付けるため、上記残りの保持部材31a、31bについては、それぞれ個別に位置決めして内壁面P1に取り付ける場合と比較して、内壁面P1への取付が簡単になる。
【0046】
また、本実施の形態では、各補強部材2の部材2a、2bの凹部13を基準部材33a、33bに係合させることによって、部材2a、2bの位置決めを行うことができるため、部材2a、2bに、凹部13とは別に基準部材33a、33bと係合させるための部分などを設ける必要がない。また、このとき、基準部材33a、33bが、管路Pの長さ方向に延びた略円柱形状の部材であるので、部材2a、2bの凹部13に係合可能な基準部材33a、33bの構造を簡単なものとすることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、補強部材2を管路Pの内壁面P1に固定した後、嵌合部材4や内面部材3を取り付ける前に、基準部材33a、33b及び保持部材31a、31bを内壁面P1から取り外すため、嵌合部材4や内面部材3を取り付ける際に、基準部材33a、33bや保持部材31a、31bが邪魔になることがない。
【0048】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0049】
上述の実施の形態では、基準部材33a、33bが略円柱形の棒状の部材であったが、これには限られない。基準部材33a、33bは、部材2a、2bの凹部13と係合可能な別の形状を有するものであってもよい。
【0050】
また、上述の実施の形態では、部材2a、2bの凹部13を基準部材33a、33bに係合させることによって、補強部材2の位置決めを行ったがこれには限られない。例えば、部材2a、2bに、凹部13とは別に、基準部材33a、33bと係合可能な部分が設けられており、当該部分を基準部材33a、33bと係合させることによって、補強部材2の位置決めを行ってもよい。また、この場合には、基準部材33a、33bは、補強部材2の上記部分と係合可能な形状であればよく、凹部13と係合不可能な形状であってもよい。
【0051】
さらには、基準部材33a、33bに部材2a、2bを取り付けることにも限られない。例えば、部材2a、2bの基準部材33a、33bへの取付は行わず、単に、部材2a、2bを基準部材33a、33bからの距離を測定するなどして位置合わせをしてもよい。
【0052】
また、上述の実施の形態では、アンカー部材35によって、補強部材2(部材2a〜2d)を管路Pの内壁面P1に固定した後、嵌合部材4及び内面部材3を取り付ける前に、基準部材33a、33b及び保持部材31a、31bを管路Pの内壁面P1から取り外したが、これには限られない。例えば、上述したように、部材2a、2bに、凹部13とは別に、基準部材33a、33bと係合可能な部分が設けられており、当該部分を基準部材33a、33bと係合させることによって、補強部材2の位置決めを行う場合で、基準部材33a、33b及び保持部材31a、31bが、嵌合部材4及び内面部材3の取付に邪魔とならないようなものである場合には、基準部材33a、33b及び保持部材31a、31bを残したまま、嵌合部材4及び内面部材3の取付を行ってもよい。
【0053】
また、上述の実施の形態では、先に管路Pの長さ方向において両端に位置する2つの保持部材31a、31bを管路Pの内壁面P1に取り付けた後に、これら2つの保持部材31a、31bに水糸Yを取り付け、水糸Yを基準として、これら2つの保持部材31a、31bの間に、残りの保持部材31a、31bを取り付けたがこれには限られない。
【0054】
例えば、補修区間の全長にわたって、保持部材31a、31bとは別の部材にその両端が固定された水糸Yを張り、この水糸を基準として、全ての保持部材31a、31bを内壁面P1に取り付けてもよい。あるいは、水糸Yは張らずに、各保持部材31a、31bを個別に位置決めして管路Pの内壁面P1に取り付けてもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、複数の保持部材31a、31bを、管路Pの長さ方向に沿って配置し、複数の保持部材31a、31bに基準部材33a、33bを取り付けることによって、基準部材33a、33bを管路Pの内壁面に取り付けたが、これには限られない。例えば、保持部材31a、31bを位置合わせしながら、直接、管路Pの内壁面P1に取り付けてもよい。
【0056】
また、上述の実施の形態では、管路P内に2本の基準部材33a、33bを配置し、基準部材33a、33bに、それぞれ、部材2a、2bの凹部13を係合させることにより、部材2a、2bの管路Pの周方向における位置合わせを行ったが、これには限られず、部材2a、2bのうちいずれか一方の部材のみを位置合わせし、部材2a、2bのうち他方の部材、及び、部材2c、2dを部材2a、2bのうち上記一方の部材に取り付けることによって補強部材2を形成してもよい。
【0057】
また、上述の実施の形態では、管路Pの内壁面P1に、管路Pの長さ方向に沿って並ぶ複数の保持部材31a、31bを取り付け、保持部材31a、31bに、それぞれ、基準部材33a、33bを取り付けることによって、基準部材33a、33bを内壁面P1に取り付けたが、これには限られない。例えば、基準部材33a、33bが、上述の実施の形態とは異なり、管路Pの内壁面P1への取り付け部分を有するものであって、基準部材33a、33bを内壁面P1に直接取り付けてもよい。
【0058】
また、上述の実施の形態では、管路Pが略円形の管路であり、管路Pの内壁面P1を全周にわたって補修したが、これには限られず、管路の壁面の周方向における一部分のみを補修してもよい。例えば、一変形例では、図12に示すように、補修を行う管路Qがいわゆる馬蹄形の管路である。すなわち、管路Qが、長さ方向から見て、上部から両側部に至る部分においてアーチ状に形成されているとともに、底部において緩やかに湾曲した曲面状に形成されている。そして、管路Qがこのような形状の場合に、管路Qの内壁面Q1のうち、底部を除くアーチ状となった部分のみを補修する。
【0059】
ここで、本変形例では、補強部材102が、図12の方向から見て、右下側の部分を形成する部材102a、左下側の部分を形成する部材102b、右上側の部分を形成する部材102c及び左上側の部分を形成する部材102dの4つの部材によって構成されている。そして、部材102a、102bを、それぞれ、基準部材33a、33bに対して位置合わせして管路Q内に配置し、アンカー部材35によって管路Qの内壁面Q1に固定する。そして、その後、部材102c、102dを、部材102a、102bに取り付け、アンカー部材35によって管路Qの内壁面Q1に固定する。なお、図12は、馬蹄形の管路Pを補修する場合の、図11(a)に対応する状態を示している。
【符号の説明】
【0060】
2 補強部材
2a〜2d 部材
3 内面部材
13 凹部
31a、31b 保持部材
33a、33b 基準部材
102 補強部材
102a〜102d 部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12