(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、下水道管などの地中に埋設された既設管路(以下では、単に管路と称す)に補修又は補強のための内張り材を設置する場合に、本発明を適用した一例である。管路Pは、マンホールM1,M2を介して、地上と接続されている(
図1、
図2、
図9、
図10参照)。以下では、2つのマンホールM1,M2間の管路P内に内張り材1を設置する場合について説明する。
【0020】
本実施形態では、まず、硬質熱可塑性樹脂層を含む筒状の内張り材1を、マンホールM1に設置された加熱筒体2内に通して加熱し、軟化させた上で管路P内に挿入する(挿入工程:
図1、
図2参照)。次に、管路P内に挿入された内張り材1を膨張させる(膨張工程:
図9参照)。これにより、筒状の内張り材1を管路Pの内面に沿うように設置する(
図10参照)。
【0021】
(1)挿入工程
図1は、加熱筒体の設置工程を示す図、
図2は、内張り材の引き込み工程を示す図である。
図1に示すように、まず、マンホールM1の開口近くに、筒状の内張り材1が巻かれたリール4を収容した加熱ボックス3を設置する。
【0022】
図3は、内張り材の断面図である。
図3に示すように、内張り材1は、硬質の熱可塑性樹脂層6の厚さ方向に筒状織物5が配置された構成を有する。
図3では、筒状織物5の内面と外面にそれぞれ熱可塑性樹脂層6が貼り合わされた構成が示されているが、内面と外面の何れか一方にのみ熱可塑性樹脂層6が貼り合わされてもよい。あるいは、熱可塑性樹脂層6内に筒状織物5が埋め込まれた構成であってもよい。また、
図3に示すように、筒状の内張り材1は、偏平な形状に押し潰された状態でリール4に巻かれている。
【0023】
硬質熱可塑性樹脂層6は、例えば、硬質塩化ビニル樹脂や高密度ポリエチレン等で形成される。この硬質熱可塑性樹脂層6は、常温(例えば20℃)ではほとんど可撓性を示さず、変形もしない。筒状織物5は、経糸(筒軸方向の糸)に対して緯糸がスパイラル状に織り込まれ、経糸がほぼ直線状に延びる一方で、緯糸は屈曲した構造を有する。経糸及び緯糸には、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系の糸を使用できる。また、緯糸には、伸びのある嵩だか加工糸を使用する。そのため、筒状織物5が内側から加圧されたときには、緯糸が周方向に伸びるとともに屈曲部分が直線状に近づくため、筒状織物5は拡径することになる。
【0024】
尚、筒状織物5は、後述する内張り材1の挿入時に、硬質熱可塑性樹脂層6を加熱して軟化させたときに、内張り材1の引張強度を確保する役割を果たす。硬質熱硬化性樹脂である硬質塩化ビニル樹脂の熱変形温度は54〜74℃であり、また、高密度ポリエチレンは40〜54℃である、これに対して、筒状織物5で使用されるポリエチレンテレフタレートの熱変形温度は、240〜245℃である。従って、加熱によって硬質熱硬化性樹脂が軟化しても筒状織物5を構成する糸は軟化していないことから、内張り材1全体の引張強度が維持される。従って、挿入時に内張り材1に引っ張り力が作用しても、内張り材全体が伸びることが抑えられ、また、伸びることによる厚みの減少や樹脂のひずみに起因する冷却時の収縮も抑制される。
【0025】
図1に戻り、加熱ボックス3は図示しない加熱装置を有し、この加熱装置を用いて加熱ボックス3内の内張り材1を所定温度に加熱しておく。尚、この加熱ボックス3では、内張り材1を、リール4から引き出しやすくなる程度に軟化すれば十分であり、その加熱温度は、硬質熱可塑性樹脂層6のビカット軟化点未満の温度でよい。また、その程度の加熱にとどめることによって、内張り材1の収納状態が崩れず、加熱ボックス3内からの内張り材1の引き出し時の抵抗が大きくならない。例えば、硬質熱可塑性樹脂層6が塩化ビニル樹脂(ビカット軟化点65℃)である場合、加熱ボックス3での加熱温度は55〜60℃程度とする。
【0026】
(加熱筒体の設置)
次に、
図1に示すように、加熱ボックス3の、内張り材1が引き出される引出部3aに、可撓性を有する加熱筒体2の一端部を固定するとともに、この加熱筒体2をマンホールM1内に設置する。
図4は、内張り材が挿通される加熱筒体の平面図である。
図5は、
図4のV-V線断面図である。
【0027】
加熱筒体2は、耐熱性及び気密性を具備する素材で形成された、可撓性を有するホースであり、例えば、内面又は外面が熱可塑性樹脂で被覆されたホース状物等で形成できる。また、加熱筒体2には、その長手方向に沿ってファスナー7(開閉手段)が設けられ、このファスナー7によって加熱筒体2の内部を開放することが可能である。ファスナー7は、線ファスナーであってもよいし、面ファスナーであってもよい。尚、線ファスナーの場合は、加熱筒体2を、その長手方向の任意の位置で開放できるように、複数のスライダ(引き手部)を有することが好ましい。また、
図4に示すように、加熱筒体2の長手方向に並ぶ2つのファスナー7が、加熱筒体2の全長にわたって設けられ、これら2つのファスナー7によって、加熱筒体2はその全長にわたって内部開放可能となっている。また、2つのファスナー7のうちの一方のみを開いて加熱筒体2の一方側のみを開放し、他方側は閉止したままとすることも可能である。
【0028】
加熱筒体2の内部には、2本の蒸気供給管8が、加熱筒体2の長手方向に沿って配されている。蒸気供給管8は、耐熱性と保形性に加え、可撓性も兼ね備えたフレキシブルパイプである。
【0029】
2本の蒸気供給管8は、加熱筒体2の中心に関してほぼ点対称な位置に配置されている。各蒸気供給管8の、加熱筒体2の中心側に向いた部分には、その長手方向(
図5の紙面垂直方向)に沿って複数の蒸気噴射孔8aが形成されている。2本の蒸気供給管8は図示しないボイラとそれぞれ接続される。ボイラから各蒸気供給管8に供給された蒸気は、複数の蒸気噴射孔8aから加熱筒体2内へ蒸気が噴出する。さらに、蒸気供給管8は、加熱筒体2に適宜の間隔(例えば長手方向1m置きに)で、適宜の固定手段(例えば紐状物やインシュロックなど)により固定しておくことが好ましい。この固定によって、蒸気供給管8が絡まったり、折れ曲がることがなく、内張り材1の引き込みを阻害することがない。
【0030】
蒸気供給管8としては、例えば、経糸がポリエステル繊維等からなる一般繊維、緯糸がポリエステル等のモノフィラメント糸で織成された筒状織物の内面に、熱可塑性樹脂(例えばウレタン樹脂)のチューブを接着一体化したホース状物を使用できる。緯糸のモノフィラメント糸の線径が太いことから保形性(剛性)を有するパイプ状となる。そして、このホース状物の外面から、適宜熱した針状物で蒸気噴射孔8aとなる細孔を形成する。
【0031】
加熱筒体2をマンホールM1内に設置する前に、このマンホールM1の下部の、管路Pとの接続部9に管口ガイド10を設置しておく。
図6は、管口ガイドの斜視図、
図7(a)はマンホール下部の鉛直断面図、(b)はマンホール下部の水平断面図である。
【0032】
図6、
図7に示すように、管口ガイド10は、棒状の第1フレーム部11と、T字状の第2フレーム部12と、ガイド部13とを有する。第1フレーム部11は、筒部14と、この筒部14の内部に挿通されたネジ棒15と、ネジ棒15に螺合されたナット部材16とを有する。第1フレーム部11の両端部(筒部14の端部及びネジ棒15の端部)にはそれぞれ受圧板17,18が取り付けられている。T字状の第2フレーム部12は、筒状の基部19と、この基部19の内部に挿通されたネジ棒20と、ネジ棒20に螺合されたナット部材21とを有する。第2フレーム部12の基部19の端部にも受圧板22が取り付けられている。ガイド部13は、第1フレーム部11とT字状の第2フレーム部12の両方に連結されており、また、このガイド部13は、中心角が略90度の湾曲面23を有する。
【0033】
図7に示すように、棒状の第1フレーム部11が管路Pと直交し、且つ、T字状の第2フレーム部12の基部19が管路Pと平行となる姿勢で、管口ガイド10を、マンホールM1の下部の、管路Pとの接続部9に設置する。このとき、ガイド部13は、その湾曲面23が、鉛直方向から水平方向に向けて延びるように配置される。この状態で、2つのナット部材16,21をそれぞれ回転させて2本のネジ棒15,20を延ばし、3つの受圧板17,18,22をマンホールM1の内面にそれぞれ押し付けることにより、管口ガイド10の位置を固定する。
【0034】
上記の管口ガイド10の設置後に、加熱筒体2をマンホールM1内に挿入し、管路Pの管路口Pa付近まで加熱筒体2を設置する。加熱筒体2は可撓性を有するホースであるから、マンホールM1内への加熱筒体2の設置は容易である。また、マンホールM1の下部の、管路Pとの接続部9においては、加熱筒体2を管口ガイド10に掛けて、接続部9の角部9aに加熱筒体2が接触しないようにする。より具体的には、加熱筒体2を管口ガイド10の第1フレーム部11に掛け、さらに、加熱筒体2をガイド部13の湾曲面23に沿って配置し、湾曲面23によって加熱筒体2が鉛直方向から水平方向に案内されるようにする。また、管口ガイド10から先の加熱筒体2の先端部は、管路口Paから管路Pの内部まで挿入しておく。加熱筒体2の管路Pへの挿入長さは、例えば、100〜200mm程度とする。
【0035】
尚、加熱筒体2が剛直な材料で形成されていると、加熱筒体2が設置されているマンホールM1内の作業スペースが小さく、内張り材1の挿通作業等が行いにくいという問題がある。本実施形態では加熱筒体2は可撓性を有するため、加熱筒体2に外力を加えてマンホールM1内で加熱筒体2を押しのけたり、加熱筒体2を変形させたりして、加熱筒体2の周囲に作業スペースを確保することは比較的容易である。
【0036】
(内張り材の引き込み)
加熱筒体2の設置が完了したら、次に、
図2に示すように、内張り材1を、加熱筒体2に挿通し、加熱筒体2を介して管路P内に挿入する。まず、加熱ボックス3から引き出した内張り材1の先端部に引き込み用のワイヤ30を接続する。加熱筒体2には長手方向に延びる2つのファスナー7が設けられており、加熱筒体2をその全長にわたって開放可能であることから、内張り材1の挿入前の準備工程において、ファスナー7を開いて、加熱筒体2内にワイヤ30を簡単に通線することができる。ワイヤ30の通線が完了すると、2つのファスナー7を閉じてから2本の蒸気供給管8に蒸気を供給し、加熱筒体2内で2本の蒸気供給管8から蒸気を噴出させる。
【0037】
この状態で、加熱筒体2を通過する間に加熱されて軟化した内張り材1を、加熱筒体2を経由して管路P内へ挿入する。具体的には、内張り材1の挿入側とは反対側のマンホールM2から、ワイヤ30をウインチ31で巻取る。すると、内張り材1が、まず、加熱筒体2内へ挿入されていく。加熱筒体2内では、2本の蒸気供給管8から内張り材1へ向けて蒸気が噴出することにより、内張り材1が蒸気で直接加熱される。尚、内張り材1を加熱筒体2内に挿入する際には、
図4、
図5に示すように、加熱筒体2内において、内張り材1が2本の蒸気供給管8の間に内張り材1が位置するようにする。
【0038】
ここで、加熱筒体2に供給する蒸気量(蒸気圧力)等を制御することによって、加熱筒体2内において、加熱ボックス3内の加熱温度よりも高い温度まで内張り材1を加熱する。また、内張り材1の硬質熱可塑性樹脂層6が十分に軟化するように、加熱筒体2内の加熱温度は、硬質熱可塑性樹脂層6のビカット軟化点以上の温度であることが好ましい。例えば、硬質熱可塑性樹脂層6が塩化ビニル樹脂である場合、加熱筒体2内での加熱温度は80℃以上とする。これにより、内張り材1を十分に軟化させることができ、管路口Paまでの間に屈曲や段差などがあっても、管路Pへの内張り材1の挿入作業が容易になる。
【0039】
尚、蒸気供給管8が加熱筒体2内に存在することによって、加熱筒体2の内部に適当な空間が形成される。そのため、加熱筒体2内への内張り材1の挿入時に、特に、内張り材1の先端部を通す際の抵抗が小さくなり、蒸気も供給されやすくなる。また、蒸気供給管8の剛性によって加熱筒体2が極端に折れ曲がることもないため、挿入時に加熱筒体2内で内張り材1が引っ掛かることもない。また、加熱筒体2には長手方向に延びるファスナー7が設けられていることから、内張り材1の挿入作業中に何らかの異常が生じたときには、一旦内張り材1の挿入と蒸気の供給を止めて、ファスナー7を開き、内張り材1の状態を直ちに確認することが可能である。
【0040】
加熱筒体2を通って管路P内に挿入された内張り材1の先端部が、マンホールM2の管路口Pbまで到達したら、ワイヤ30の巻取りを終了し、挿入工程を完了する。
図8は、内張り材が挿入された管路の断面図である。
【0041】
(2)膨張工程
図8のように管路P内に内張り材1が挿入された後に、この内張り材1を内側から加熱しつつ内圧を作用させて内張り材1を膨張させる。まず、マンホールM1において管口ガイド10を取り外し、次いで、内張り材1を取り囲むように配置されている加熱筒体2を取り外す。具体的には、加熱筒体2のファスナー7を開いて加熱筒体2の内部を開放してから、加熱筒体2をマンホールM1から引き抜いて取り外す。
【0042】
図9は、内張り材の膨張工程を示す図である。加熱筒体2を取り外したら、次に、
図9に示すように、マンホールM1側の内張り材1の端部を切断して端部金具33を装着し、端部金具33とボイラ32とをホース34で接続する。また、反対側のマンホールM2側の内張り材1の端部には、消音器36付きの排気部35を備えた端部金具37を取り付ける。この状態で、ボイラ32から内張り材1の内部に蒸気を供給し、内張り材1を加熱しながら内圧を作用させる。尚、この際、マンホールM2側の端部においても内張り材1が十分に加熱されるように、マンホールM2側の排気部35から蒸気を少しずつ排出しつつ、マンホールM1側から蒸気を供給する。これにより、内張り材1の硬質熱可塑性樹脂層6をビカット軟化点以上に加熱して軟化させながら、内張り材1を断面円形に膨張させて管路Pの内面に沿わせる。
【0043】
内張り材1を膨張させた後は、内張り材1を冷却する。すると、内張り材1が管路Pの内面に沿った状態で、樹脂層6が硬化する。内張り材1の樹脂層6の硬化後、管路Pからはみ出した部分を切断し、内張り材1の設置を完了する。
図10は、内張り材の設置が完了した状態を示す図である。
図10では、
図9とは異なり、内張り材1を断面で示している。尚、内張り材1の冷却期間を短縮するために、内張り材1に内圧が作用した状態を保ちながら、内張り材1内に大量のエアや水を供給して排出することで、内張り材1を強制的に冷却することも可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、管路Pへ挿入される前の内張り材1が挿通される加熱筒体2に、その長さ方向に沿ってファスナー7が設けられている。そのため、ファスナー7を開いて加熱筒体2の内部を開放することによって、内張り材1を加熱筒体2内に挿入する前のワイヤ30の通線作業や、内張り材1の挿入工程後に内張り材1から加熱筒体2を取り外す作業が容易になる。また、内張り材1の管路Pへの挿入作業中に何らかの異常が生じたときには、ファスナー7を開いて、加熱筒体2内の内張り材1の状態を直ちに確認することが可能である。
【0045】
また、加熱筒体2には、その長手方向に2つのファスナー7が設けられている。そのため、加熱筒体2の上半部と下半部とでそれぞれ個別に加熱筒体2を開放することができ、作業性が向上する。例えば、加熱筒体2の下半部において内張り材1が引っ掛かっていると想定される場合に、この引っかかりを解消するために、加熱筒体2の全体を開放するのではなく、下側のファスナー7だけを開いて加熱筒体2の下半部のみを開放することができる。
【0046】
また、2つのファスナーは、加熱筒体2の全長にわたって設けられており、加熱筒体2をその全長にわたって開放することができる。これにより、作業性が一層向上し、内張り材1を挿通する前のワイヤの通線や、内張り材1の挿入工程後の加熱筒体2の取り外し等の作業がかなり容易になる。
【0047】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0048】
1]ファスナー7の設置位置や設置数は適宜変更可能である。例えば、
図11に示すように、加熱筒体2の周方向に、2つのファスナー7が間隔を空けて設けられていてもよい。この構成では、加熱筒体2の、2つのファスナー7の間に位置する部分2aを手前(図の上方)に大きく開くことができるため、作業性が向上する。また、加熱筒体2を大きく開いて作業性を向上させるという観点では、周方向における2つのファスナー7の間隔が大きい方が好ましい。
【0049】
また、加熱筒体2にファスナー7が複数設けられている必要はなく、ファスナー7の数が1つであってもよい。例えば、1つのファスナー7が、加熱筒体2の全長にわたって延びている構成であってもよい。
【0050】
また、ファスナー7が、加熱筒体2の全長にわたって設けられている必要もなく、加熱筒体2の長さ方向の一部にのみファスナー7が設けられていてもよい。この場合、加熱筒体2の一部のみしか開放できないが、それでも、加熱筒体2を開放できない場合と比べれば、ワイヤ30の通線作業等の作業性は向上する。また、加熱筒体2の内部を確認する目的で使用する場合は、内張り材1が引っ掛かる等の問題が生じやすい位置にファスナー7を設けておけばよい。また、前記実施形態のように、加熱筒体2が全長にわたって開放される場合、特に、長さや径が大きい大型の加熱筒体2では、一旦、全長にわたって完全に開放すると、筒体2が大きくて且つ重いためファスナー7の端部を合わせて再び筒状に戻す作業が大変である。これに対して、一部のみしか開放されない場合は、開放されたファスナー7の端部を合わせるといった作業が不要であるから、加熱筒体2を筒状に戻す作業が容易である。
【0051】
また、加熱筒体2が、長手方向の途中部において、部分的に横方向(周方向)に切断され、この切断部分にもファスナーが取り付けられて局部的に開放可能であってもよい。例えば、
図12では、加熱筒体2の長手方向に沿って3つのファスナー7が設けられ、さらに、これら3つのファスナー7が加熱筒体2の周方向に間隔を空けて配置されている。つまり、加熱筒体2には、その長手方向に延びるファスナー7が合計6つ設けられている。さらに、左右のファスナー7の接続部50の間において、加熱筒体2は横方向に沿って部分的に切断され、この切断部分に周方向に延びるファスナー40が設けられている。
【0052】
この構成では、加熱筒体2の長手方向途中部を局所的に開放可能である。従って、前記実施形態の
図9のように、内張り材1を管路P内に設置した後に内張り材1に端部金具33を取り付ける際に、加熱筒体2を取り外さなくても、加熱筒体2を局部的に開放することで端部金具33の取付が可能となる。加熱筒体2の取り外し工程を省略することで、内張り材1の設置後、速やかに、内張り材1の温度が高い軟化状態で膨張工程を開始できる。また、加熱筒体2を取り外さないことで内張り材1の保温効果が持続する。
【0053】
2]2枚以上の複数枚の加熱筒体2を重ねて使用してもよい。特に、加熱筒体2の全長にわたってファスナー7が設けられていると、加熱筒体2の外側に別の加熱筒体2を被せることが容易である。このように、複数枚の加熱筒体2を重ねて使用することで、内張り材1の保温効果が高まり、真冬など外気温が著しく低い場所でも所定の温度を維持することができる。
【0054】
3]
図1、
図2に示すように、前記実施形態では、加熱筒体2の一端部が加熱ボックスに固定されているが、さらに、加熱筒体2の途中部にベルト等を取り付け、このベルト等によって加熱筒体2の途中部をマンホールM1のステップ等に固定してもよい。この場合、固定される加熱筒体2の途中部よりも上の部分には、内張り材1が加熱筒体2内を通過する際の張力が加わらずフリーとなるため、その内部に空間が形成されやすくなって蒸気が流れやすくなり、加熱効率が良くなる。また、内張り材1と加熱筒体2との摩擦抵抗が低減されるという効果もある。さらに、万が一、加熱ボックス3に固定している加熱筒体2の一端部が外れてしまったときに、加熱筒体2の途中部がマンホールM1に固定されていることで、加熱筒体2が管路P内に引き込まれてしまうことが防止される。
【0055】
4]前記実施形態では、ファスナー7を開いた状態で加熱筒体2内にワイヤ30を通線し、その後、ファスナー7を閉じてからワイヤ30を引っ張って、ワイヤ30に接続された内張り材1を加熱筒体2内に挿通していた。これに対して、ワイヤ30を用いずに、加熱筒体2内に内張り材1を直接挿通することも可能である。この場合でも、加熱筒体2のファスナー7を開いて、内張り材1を置いてからファスナー7を再び閉めることで、加熱筒体2内に内張り材1を容易に挿通することができる。
【0056】
5]内張り材1が挿通される筒体は、前記実施形態のような内張り材1を加熱するものには限られず、管路Pへ挿入される前の内張り材1の保温用、あるいは、保護用の筒体であってもよい。つまり、筒体の内部に、前記実施形態の蒸気供給管8のような加熱手段が設けられている必要はなく、また、外部から加熱媒体が供給される必要もない。特に、
図1、
図2におけるマンホールM1のエッジ部や管口ガイド10、あるいは、加熱ボックス3の出入口などに、内張り材1が直接接触しないため、外傷などから内張り材1を保護できる。
【0057】
6]前記実施形態の加熱筒体2は、その先端部が管路口Paから管路Pの内部まで挿入されていたが、内張り材1が挿通される筒体は、内張り材1が収容された加熱ボックス3から管路口Paの間のどの位置に設置されてもよい。例えば、マンホールM1の途中まで設置される筒体であってもよいし、さらには、上述した特許文献1に開示のもののように、地上にのみ設置される筒体であってもよい。
【0058】
7]前記実施形態の内張り材1は、硬質熱可塑性樹脂の層と筒状織物とを有するものであったが、筒状織物を有さない内張り材1を使用する場合でも、本発明は適用可能である。
【0059】
8]本発明の適用は、地中に埋設された既設管路の補修には限られない。即ち、地上や水中に敷設された管路や、建物等において上下方向に沿って配された管路など、様々な管路の補修に本発明を適用することも可能である。あるいは、未使用の新設管路の補強に適用することも可能である。