特許第6018894号(P6018894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018894
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】無線伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20161020BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20161020BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H04N5/225 A
   H04N5/225 C
   H04W16/26
   G08G5/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-264947(P2012-264947)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-110577(P2014-110577A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098132
【弁理士】
【氏名又は名称】守山 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 良太
【審査官】 吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−153249(JP,A)
【文献】 特開2009−081495(JP,A)
【文献】 特開2009−239821(JP,A)
【文献】 特開2003−101488(JP,A)
【文献】 特開2011−187029(JP,A)
【文献】 特開2001−209426(JP,A)
【文献】 特開2009−272935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G08G 5/00
H04W 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段を具備した移動する送信装置と、前記撮影手段による撮影目標の位置を特定する撮影位置情報を前記送信装置から受信する受信装置と、前記受信装置により受信された撮影位置情報に基づく表示を行う表示装置と、を備えた無線伝送システムにおいて、
前記表示装置は、複数の時点の撮影位置情報に基づいて予測される所定時間後の撮影目標の位置を基準にして、当該基準の位置にある撮影目標が見通しとなる位置又は見通し外となる位置の少なくとも一方を示す表示を行う、
ことを特徴とする無線伝送システム。
【請求項2】
前記表示装置は、更に、前記所定時間後の撮影目標の位置を基準にして、当該基準の位置にある撮影目標が見通しとなる位置であって、前記受信装置が見通しとなる位置又は見通し外となる位置の少なくとも一方を示す表示を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線伝送システム。
【請求項3】
前記表示装置は、三次元地図を用いて表示を行う、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線伝送を用いた遠隔制御監視システムなどに適用可能な無線伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る遠隔制御監視システムの例として、FPU(Field Pick-up Unit)を用いた基地局間の固定無線伝送を含むマイクロ基受信地局システムが挙げられる。
ここで、マイクロ受信基地局システムの系統例を図1に示す。図1の例では、送信点A(11)及び送信点B(14)から本社(13)へ素材を伝送する場合を考える。
【0003】
本社に対して遠距離にある送信点A(11)からの素材は、基地局(12)を通して本社(13)へ無線伝送される。
まず、送信点A(11)にある送信部(11−1)は、素材を無線伝送可能なマイクロ波信号に変換し、アンテナ(11−2)から電波を送信する。ここで、送信部(11−1)は、SDI(Serial Digital Interface)信号をFPUでの伝送に用いられる固定長のパケット形式のフレームフォーマットであるTS(Transport Stream)信号に符合化し、それを中間周波信号に変調後、マイクロ波帯へ周波数変換し、アンテナ(11−2)へ伝送する機能を有する。
アンテナ(11−2)から送信された電波は、基地局(12)内の回転受信アンテナ装置(12−1)で受信され、受信部(12−2)に送られる。ここで、受信部(12−2)は、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調し、SDI信号へ復号する機能を有する。ただし、基地局(12)内の受信部(12−2)においては、最小限信号劣化のないTS信号へ変換するまでの機能があればよい。TS信号は、送信部(12−3)へ送られ、固定アンテナ(12−6)から電波で送信される。受信部(12−2)と同様、基地局(12)内の送信部(12−3)は、最小限TS信号をマイクロ波帯へ変換する機能があればよい。
基地局(12)から送信された電波は、本社(13)の固定アンテナ(13−1)で受信され、受信部(13−2)、復号部(13−5)によってSDI信号へ復号され、本線へ送られる。
【0004】
また、本社に対して近距離にある送信点B(14)からの素材は、送信部(14−1)を通ってアンテナ(14−2)から送信され、直接、本社(13)の回転受信アンテナ装置(13−3)で受信され、受信部(13−4)、復号部(13−5)によって復号され、本線へ送られる。
【0005】
このシステムを用いた無線伝送では、基地局(12)において、送信点からの電波を如何に効率よく受信できるかが重要となってくる。つまり、送信点の位置によって、基地局(12)内の受信アンテナ(12−1)は方向を変えられねばならない。そのため、マイクロ受信基地局システムでは、受信アンテナ(12−1)は本社(13)からの遠隔制御により回転が可能な回転架台となっている。その制御監視方法は次の通りである。
【0006】
本社(13)内では、操作端末(13−10)よりネットワークに送信された制御パケットは、制御端局(13−9)で受信され、シリアル信号に変換される。ここで、ネットワークに複数の操作端末(13−10)及び複数の制御端局(13−9)をつなげ、それぞれの機器IDによって送信・受信相手を特定した送受信が可能であることはもちろんである。シリアル信号は、更に変復調部(13−8)において、例えばアナログ信号に変調され、基地局(12)へ向けて送信される。
アナログ信号は、基地局(12)内の変復調部(12−5)で受信され、シリアル信号に復調後、被制御端局(12−4)へ送信される。被制御端局(12−4)は、その制御信号を解読し、回転受信アンテナ装置(12−1)の制御を行う。
【0007】
また、回転受信アンテナ装置(12−1)における角度などの監視情報は、監視信号として被制御端局(12−4)へ送られる。被制御端局(12−4)は、その情報をシリアル信号として変復調部(12−5)へ送信し、変復調部(12−5)は、例えばアナログ信号に変調し、本社(13)に向けて送信する。
本社(13)内の変復調部(13−8)は、受信した信号をシリアル信号へ復調し、制御端局(13−9)へ送信する。制御端局(13−9)は、受信したシリアル信号を解読し、監視パケットをネットワークへ送信する。操作端末(13−10)は、監視パケットを受信し、端末上に情報として表示する。
【0008】
以上のようにして、基地局(12)内の回転受信アンテナ装置(12−1)の制御監視が可能であるが、このマイクロ受信基地局システムでは、基地局(12)に設置された受信部(12−2)や送信部(12−3)における受信・送信レベル、送受信チャンネル(周波数帯)、変調方式、送信出力、復号方式、また例えば信号切替器の接点選択、信号多重・分離装置の信号入力・出力選択などは、回転受信アンテナ装置(12−1)へのそれと同様、操作端末(13−10)−制御端局(13−9)−被制御端局 (12−5)− 制御装置の一連の信号伝達によって制御監視可能である。
また、送信点B(14)からの素材伝送用に本社(13)に直接送信する場合は、操作端末(13−10)−制御端局(13−9)−制御装置という信号伝達経路を用いて、本社(13)に存在する回転受信アンテナ装置(13−3)や受信部(13−4)などの装置に対して制御監視が可能である。
【0009】
また、当該システムでは、受信アンテナの方向調整を行うためのより詳細な情報の提供として、受信部(12−2、13−4)における受信周波数や変調方式などの伝送パラメータを含むTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報、受信レベル、余裕度(Margin Degree)、BER(Bit Error Rate)、MER(Modulation Error Ratio)、遅延プロファイル、コンスタレーションなどのデータをTS信号に重畳させて本社(13)へ伝送し、情報生成部(13−6)によって分離し、情報編集部(13−7)によって編集し、操作端末(13−10)上に表示させる方法がある。
【0010】
このような技術分野の従来技術としては、機上で被災地点などの目標物の位置を特定し、地上で三次元モデルを生成して目標物の空間的な位置を特定できる目標物位置特定装置等に係る発明(特許文献1参照)や、遠隔撮影における撮影指示を容易に行うことができるようにした撮影指示装置等の発明(特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4975003号公報
【特許文献2】特許第3860945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明に関わる従来技術として、マイクロ受信基地局システムにおけるGPS(Global Positioning System)による位置情報取得例を図2に示す。
図2には、撮影素材生成部(21)、撮影情報取得・変換部(22)、位置情報取得・変換部(23)、送信部(24)、送信アンテナ装置(25)を備えた送信移動体(20)、および、回転受信アンテナ装置(31)、受信部(32)、素材操作部(33)、操作手段(34)を備えた受信基地局(30)を示してある。
【0013】
ここで、送信移動体(20)は、図1における送信点A(11)や送信点B(14)に相当し、一例として、ヘリコプターが挙げられる。また、例えば、送信移動体(20)の送信アンテナ装置(25)は、送信点A(11)のアンテナ(11−2)に相当する。
受信基地局(30)は、図1における基地局(12)や本社(13)に相当する。また、例えば、受信基地局(30)の回転受信アンテナ装置(31)は、基地局(12)の回転受信アンテナ装置(12−1)に相当し、受信基地局(30)の操作手段(34)は、本社(13)の操作端末(13−10)に相当する。
【0014】
まず、移動送信体(20)では、撮影素材生成部(21)から送信部(24)へ映像・音声信号が送られる。また、位置情報取得・変換部(23)より、移動送信体(20)の緯度・経度・高度を示す位置情報信号が送られる。ここで、撮影素材生成部(21)としては例えば映像カメラ等が考えられ、位置情報取得・変換部(23)としては例えばGPS端末等が考えられる。
また、撮影情報取得・変換部(22)から、撮影素材生成部(21)である映像カメラ等の撮影装置を制御するPTZ情報信号が送られる。ここで、PTZ情報には、水平方向の制御値(PAN)、垂直方向の制御値(TILT)、拡大率の制御値(ZOOM)、等の情報が含まれる。
【0015】
このとき、映像音声信号を受け取る送信部とPTZ情報及び位置情報を受け取る送信部が同一であれば、各信号を含む電波として送信することが可能である。この方法としては、例えばシリアル信号としてのPTZ情報及び位置情報を音声信号へ変調し、送信部の複数ある音声入力の1つとしてあわせて送信する方式が挙げられる。しかしながら、構成によっては映像音声信号を受け取る送信部とPTZ情報及び位置情報の信号を受け取る送信部は同一である必要は無い。これは、映像・音声信号を含む電波とPTZ情報及び位置情報の信号を含む電波は必ずしも1つの電波で送られる必要は無いことを示している。つまり、受信基地局(30)の回転受信アンテナ装置(31)で受信する電波には、最低限、映像・音声信号を含んでいればよい。
【0016】
移動送信体(20)では、以上により少なくとも映像・音声信号を含む電波を送信アンテナ装置(25)より受信基地局(30)に向けて送信する。また、特に受信基地局(30)に向けた電波にPTZ情報及び位置情報の信号が含まれていない場合は、別途、PTZ情報及び位置情報の信号を電波にのせて送信する。このPTZ情報及び位置情報を送信する電波では、マイクロ受信基地局システムで用いられるSHF周波数帯に限らず、VHFやUHFなどの業務無線等を利用してもかまわない。
【0017】
対して、受信基地局(30)では、映像・音声信号を含む電波を回転受信アンテナ装置(31)で受信する。受信した電波は受信部(32)に送られ、例えばTS信号・SDI信号などに戻され、素材操作部(33)に送られる。このとき、受信部(32)は、回転受信アンテナ装置(31)で受信した受信レベルを検出し、その情報を操作手段(34)に連絡する。また、回転受信アンテナ装置(31)で受信した電波にPTZ情報及び位置情報が含まれている場合は、同様に操作手段(34)へ連絡する。もし、PTZ情報及び位置情報が別電波にて送られている場合は、別途受信手段より、操作手段(34)へPTZ情報及び位置情報が送られてくればよい。
これによって、操作手段(34)は、現在の送信移動体(20)の位置情報、撮影装置(撮影素材生成部(21))のPTZ情報、および、送られてくる電波の受信レベルを取得し、操作手段(34)内の表示手段(例えばモニター画面)上に表示することができる。これは、現在の状況をシステムのユーザに情報提供できるという利点を含んでいる。
【0018】
また、特に、位置情報においては、モニター画面に電子地図をのせて、その地点を表示することが有効である。具体的には、例えば、受信基地局(30)の位置を示す受信基地局ポイント、移動送信体(20)の位置を示す移動送信体ポイント、回転受信アンテナ装置(31)の方向を示す受信アンテナ方向線、移動送信体(20)の移動の経路を示す移動軌跡、回転受信アンテナ装置(31)の方向を数値表現した角度値、送受信間の地形に関する送受信間地形プロフィール、等の情報を電子地図上に表示する構成とする。これにより、移動送信体(20)が移動した軌跡などを地図上で確認することが可能である。
また、PTZ情報及び位置情報に基づいて、移動送信体(20)の撮影素材生成部(21)による撮影目標の位置(撮影位置)を電子地図上に表示する構成とすれば、撮影目標が移動した軌跡などを地図上で確認することが可能である。
【0019】
なお、移動送信体(20)と撮影目標との位置関係によっては、これらの間の地形や建物等の存在によって撮影目標を撮影できない撮影障害が起こるため、移動送信体(20)と撮影目標との間は見通し(障害物が存在しない)であることが求められる。ここで、移動送信体(20)と撮影目標との間が或る時点では見通しであっても別の時点でも見通しであるとは限らず、移動送信体(20)と撮影目標との位置関係の変化によって撮影障害が起こることが懸念される。
【0020】
本発明は、上記のような事情に鑑みて為されたものであり、地形や建物等の障害物に起因して撮影目標の撮影が不可能となる撮影障害の回避に関する支援を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明では、無線伝送システムを以下のような構成とした。
すなわち、撮影手段を具備した移動する送信装置と、前記撮影手段による撮影目標の位置を特定する撮影位置情報を前記送信装置から受信する受信装置と、前記受信装置により受信された撮影位置情報に基づく表示を行う表示装置と、を備えた無線伝送システムにおいて、前記表示装置は、複数の時点の撮影位置情報に基づいて予測される所定時間後の撮影目標の位置を基準にして、当該基準の位置にある撮影目標が見通しとなる位置又は見通し外となる位置の少なくとも一方を示す表示を行う構成とした。
これにより、表示を見たユーザは、所定時間後に撮影目標が見通しとなる位置や見通し外となる位置を把握することができ、撮影目標が見通し外となって撮影が不可能となる撮影障害を回避できる位置に、送信装置を移動させる指示を行うことが可能となる。
【0022】
また、前記表示装置は、更に、前記所定時間後の撮影目標の位置を基準にして、当該基準の位置にある撮影目標が見通しとなる位置であって、前記受信装置が見通しとなる位置又は見通し外となる位置の少なくとも一方を示す表示を行う構成としてもよい。
これにより、表示を見たユーザは、所定時間後に撮影目標が見通しとなる位置のうち、受信装置が見通しとなる位置や見通し外となる位置を把握することができ、撮影目標が見通し外となって撮影が不可能となる撮影障害、及び、受信装置が見通し外となって無線通信が不可能となる通信障害の両方を回避できる位置に、送信装置を移動させる指示を行うことが可能となる。
【0023】
また、前記表示装置は、三次元地図を用いて表示を行う構成としてもよい。
これにより、表示を見たユーザは、撮影障害や通信障害の原因となり得る地形や建物等の障害物の存在を三次元的な位置関係の下で認識することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、地形や建物等の障害物に起因して撮影目標の撮影が不可能となる撮影障害の回避に関する支援を効果的に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】マイクロ受信基地局システムの系統例を示す図である。
図2】マイクロ受信基地局システムにおける位置情報取得例を示す図である。
図3】移動送信体、受信基地局、撮影目標の各位置の基本的な関係を説明する図である。
図4】撮影目標の位置の特定の仕方について説明する図である。
図5】未来の撮影目標の位置で撮影障害が発生する様子を説明する図である。
図6】撮影目標の位置と送信移動体の位置との間に存在する地形や建物等の高度をグラフ表示した例を示す図である。
図7】表示装置による表示の例を示す図である。
図8】表示装置による表示の他の例を示す図である。
図9】撮影目標に追従して送信移動体が移動する様子を説明する図である。
図10】撮影目標に追従して送信移動体が移動する場合の見通し判断を説明する図である。
図11】表示装置による表示の具体例を示す図である。
図12】三次元地図を用いた表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、本発明の一実施形態に係る無線伝送システムは、従来技術等において図1及び図2を参照して説明したものと基本的に同じである。なお、下記の説明における各装置の構成、機能、役割等は例示に過ぎず、この内容に限定することを意図するものではない。
【0027】
まず、図3を参照して、移動送信体(20)、受信基地局(30)、撮影目標の基本的な位置関係について説明しておく。
移動送信体(20)の位置P10と受信基地局(30)の位置P20との間は見通し(地形や建物等の障害物が存在しない)であることが求められる。これは、移動送信体(20)と受信基地局(30)の間で無線伝送路を確立させるためである。
移動送信体(20)の位置P10と撮影目標の位置P30との間も見通しであることが求められる。これは、移動送信体(20)から撮影目標の撮影を行うためである。
なお、図3では、平面的な位置関係の例を示してあるが、高さ方向(高度)の位置関係についても考慮する必要があることは言うまでもない。
【0028】
次に、図4を参照して、受信基地局(30)による撮影目標の位置P30の特定の仕方について説明する。ここでは、地表面に存在する撮影目標を移動送信体(20)が上空から撮影するものとする。
撮影目標の位置P30は、送信移動体(20)の位置情報(緯度・経度・高度)から特定される送信移動体(20)の位置P10を基準にして、送信移動体(20)に搭載された撮影装置(撮影素材生成部(21))のPTZ情報を用いて相対的に求めることができる。
送信移動体(20)の位置P10から撮影目標の位置P30までの距離Lは、送信移動体(20)の高度hと、撮影装置の垂直方向の制御値(TILT)を用いて、下記(式1)により算出できる。
L=h×tan(90°−TILT) ・・・(式1)
また、送信移動体(20)の位置P10から見た撮影目標の位置P30の角度θは、撮影装置の水平方向の制御値(PAN)を用いて、下記(式2)により算出できる。
θ=PAN ・・・(式2)
なお、送信移動体(20)の機体自体が傾いている場合には、その傾き量を表すロール・ピッチを送信移動体(20)から取得して角度θに加算すればよい。
そして、送信移動体(20)の位置P10から角度θの方向に距離Lを移動させた位置が、撮影目標の位置P30となる。
以上のように、受信基地局(30)では、送信移動体(20)から受信した送信移動体(20)の位置情報及び撮影装置のPTZ情報に基づいて、撮影目標の位置P30を特定できる。また、撮影目標の位置P30を中心として、撮影の拡大率の制御値(ZOOM)に応じた大きさのエリアを求めれば、撮影範囲を特定することもできる。なお、撮影目標の位置P30を特定する機能は、受信基地局(30)自身が備える態様に限定されず、受信基地局(30)と通信可能な他の装置が備える態様としてもよい。
【0029】
ここで、移動送信体(20)又は撮影目標の一方或いはその両方の移動により、移動送信体(20)と撮影目標の位置関係が変化すると、これらの間の地形や建物等の障害物の存在によって撮影目標を撮影できない撮影障害が起こる懸念がある。
図5には、未来の撮影目標の位置で撮影障害が発生する様子を示してある。同図では、所定時間後の撮影目標が位置P31に移動すると想定した場合に、当該位置P31と送信移動体(20)の位置P10との間に存在する障害物によって見通し外となり、撮影目標を撮影できない撮影障害が起こると予測された様子を示してある。
【0030】
所定時間後(例えば、1秒後)の撮影目標の位置P31は、例えば、現時点の撮影目標の位置P30と、所定時間前(例えば、1秒前)の時点の撮影目標の位置P32に基づき、所定時間前の位置P32から現在の位置P30への移動と同じ移動成分(移動方向と移動量が同じ)で今後も移動が継続すると仮定して算出する。また、例えば、本例のように直近の2つの時点における撮影目標の各位置(P30,P32)に加え、更に前の時点における撮影目標の位置を考慮して算出するようにしてもよい。
【0031】
また、所定時間後の撮影目標の位置P31と送信移動体(20)の位置P10との間に、撮影障害の原因となり得る地形や建物等の障害物が存在するか否かは、障害物の位置及び高度を規定した障害物位置情報に基づいて判断できる。障害物位置情報としては、種々の形式の情報を用いることができ、例えば、対象区域の地形や建物等を三次元的に表現した情報や、対象区域の平面的な地図上で各地点の地形や建物等の高度を規定した情報などを用いることができる。障害物位置情報は、受信基地局(30)自身が保持する態様に限定されず、受信基地局(30)と通信可能な他の装置が保持する態様としてもよい。
【0032】
図6には、撮影目標の位置P31と送信移動体(20)の位置P10との間に存在する地形や建物等の高度をグラフ表示した例を示してある。図6では、送信移動体(20)の位置P10から撮影目標の位置P31を見た方向を示す方向線を付加してあり、当該方向線が地形や建物等の高度を表す高度線に交差していることから、撮影障害の原因となり得る地形や建物等が障害物として存在することを把握できる。このため、所定時間後に撮影目標の撮影が不可能となる撮影障害が発生すると予測できる。
なお、障害物の高度を考慮せず、平面的な位置関係のみで障害物の有無を判断するように処理を簡略化してもよい。
【0033】
本例の無線伝送システムでは、所定時間後に撮影目標の撮影が不可能となる撮影障害が発生すると予測された場合に、撮影障害の回避に資する情報(後述する)を受信側の表示装置(例えば、受信基地局(30)の操作手段(34)内の表示手段)等に表示出力させる。これにより、送信移動体(20)に対する無線等を使用した連絡によって、撮影障害の警戒情報として飛行ルートに注意を促すことが可能となる。
【0034】
図7には、表示装置による表示の例を示してある。
図7は、所定時間後の撮影目標の位置P31を基準にして、当該位置P31にある撮影目標が見通し外(撮影が不可能)となる位置と、見通し(撮影が可能)となる位置を示す表示を行った例である。
同図における領域R1が、所定時間後における撮影目標(位置P31)が見通し外となる位置を示し、残余の円領域が、所定時間後における撮影目標(位置P31)が見通しとなる位置を示す。
【0035】
ここで、領域R1の特定は、所定時間後の撮影目標の位置P31を中心とし、且つ、現在の撮影目標の位置P30と送信移動体(20)の位置P10との間の距離Lを半径とした円周上にサンプルポイントをとり、各サンプルポイントから撮影目標の位置P31を見た場合に見通しか或いは見通し外かを判断し、見通し外と判断されたサンプルポイントを特定することで行える。
【0036】
上記のような表示を見たユーザは、所定時間後において撮影障害が発生すると予測される位置を把握することができ、撮影障害を回避できる位置に送信移動体(20)を移動させる指示を行うことが可能となる。
【0037】
図8には、表示装置による表示の他の例を示してある。
図8は、更に、所定時間後の撮影目標の位置P31を基準にして、当該位置P31にある撮影目標が見通し(撮影が可能)となる位置であって、受信基地局(30)が見通し外(無線通信が不可能)となる位置と、見通し(無線通信が可能)となる位置を示す表示を行った例である。
同図における領域R1が、所定時間後における撮影目標(位置P31)が見通し外となる位置を示し、領域R2が、所定時間後における撮影目標(位置P31)が見通しとなり且つ受信基地局(30)が見通し外となる位置を示し、残余の円領域が、所定時間後における撮影目標(位置P31)が見通しとなり且つ受信基地局(30)が見通しとなる位置を示す。
【0038】
ここで、領域R2の特定は、所定時間後の撮影目標の位置P31を中心とし、且つ、現在の撮影目標の位置P30と送信移動体(20)の位置P10との間の距離Lを半径とした円周上のサンプルポイントであって、撮影目標の位置P31を見た場合に見通しであると判断されたサンプルポイントについて、更に各サンプルポイントから受信基地局(30)の位置P20を見た場合に見通しか或いは見通し外かを判断し、見通し外と判断されたサンプルポイントを特定することで行える。
また、無線通信に係る他の要因を考慮して、見通し外に関する判断(通信障害が発生するかの判断)を行うようにしてもよい。すなわち、例えば、各々のサンプルポイントについて、そのサンプルポイントに送信移動体(20)が位置する場合の受信基地局(30)による受信レベルを推定して所定の閾値と比較し、受信レベルの推定値が所定の閾値に満たないサンプルポイントを見通し外と見做す(通信障害が発生すると判断する)ようにしてもよい。
【0039】
また、図8では、所定時間後の撮影目標の位置P31を中心とした円周上において、撮影目標の位置P31が見通し外となる部分(領域R1に対応する部分)と受信基地局(30)の位置P20が見通し外となる部分(領域R2に対応する部分)を除いた部分に、送信移動体(20)の移動先の候補として、撮影障害も通信障害も発生しないと推定される送信移動体(20)の位置P11(同図では3箇所)を例示してある。
【0040】
上記のような表示を見たユーザは、所定時間後において撮影障害や通信障害が発生する可能性のある送信移動体(20)の位置を把握することができ、撮影障害や通信障害を回避できる位置に送信移動体(20)を移動させる指示を行うことが可能となる。
【0041】
なお、上記の例では、撮影目標と送信移動体(20)の距離を一定に保って撮影することを想定して、所定時間後の撮影目標の位置P31を中心とした円周の半径を固定(現在の距離Lと同じ)にしているが、円周の半径を変更して上記の判断を行うようにしてもよい。すなわち、送信移動体(20)を位置P31に近づけた状態について判断すべく円周の半径を小さく設定し、或いは、送信移動体(20)を位置P31から遠ざけた状態について判断すべく円周の半径を大きく設定してもよい。この場合には、撮影装置による撮影の拡大率の制御値(ZOOM)等を考慮して、円周の半径(撮影目標と送信移動体(20)の平面距離)について許容範囲を設けておくことが好ましい。
【0042】
また、送信移動体(20)の高度を変更して上記の判断を行うようにしてもよい。すなわち、送信移動体(20)の高度を現時点の高度より高く設定し、或いは、送信移動体(20)の高度を現時点の高度より低く設定してもよい。この場合には、撮影装置による撮影の拡大率の制御値(ZOOM)等を考慮して、送信移動体(20)の高度(撮影目標と送信移動体(20)の高度差)について許容範囲を設けておくことが好ましい。
【0043】
次に、撮影目標に追従して送信移動体(20)が移動している場合について検討する。
すなわち、図9に示すように、位置P30にある撮影目標が所定時間後に位置P31に移動する場合に、この移動と同じ移動成分(移動方向と移動量が同じ)で、位置P10にある移動送信体(20)が位置P12に移動すると想定する。
この場合には、図10に示すように、撮影目標に対する送信移動体(20)の相対的な位置が変わらず、所定時間後の撮影目標の位置P31を中心とした円周上における移動送信体(20)の位置P12は一定であるため、当該位置P12を含む所定幅の範囲(領域R3に対応する部分)について撮影目標の位置P31が見通しか否かを判断すればよい。これにより、処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0044】
図11には、表示装置による表示の具体例を示してある。
図11の表示画面は、送信移動体(20)から送られた電波の受信基地局(30)による受信レベルの値をメータ表示する領域51、受信レベルの値を数値表現する領域52、受信基地局(30)の回転受信アンテナ装置(31)が向いている方向(受信基地局(30)から見た移動送信体(30)の方向)を数値表現する領域53、受信基地局(30)の回転受信アンテナ装置(31)の動作状態(各種の設定値など)を表示する領域54、各種の指示入力をユーザから受け付ける領域55、撮影目標と移動送信体(20)と受信基地局(30)の位置関係等を二次元の電子地図上で表示する領域56、を有している。
【0045】
図示の例における領域56には、現時点における撮影目標の位置P30と移動送信体(20)の位置P10と受信基地局(30)の位置P20、所定時間後における撮影目標の位置P31、所定時間後において撮影目標が見通し外となる領域R1、所定時間後において撮影目標が見通しとなり且つ受信基地局(30)が見通し外となる領域R2、所定時間後における送信移動体(20)の移動先の候補となる複数の位置P11(撮影目標が見通しとなり且つ受信基地局(30)が見通しとなる位置)、現時点における受信基地局(30)の位置P20から移動送信体(20)の位置P10を見た方向を示す方向線61、現時点までの撮影目標の移動の軌跡(経路)を示す移動線62、が表示されている。
【0046】
図12には、領域56における表示内容の他の例を示してある。同図では、撮影目標と移動送信体(20)と受信基地局(30)の位置関係等を三次元の電子地図上で表示している。
このような三次元の電子地図を用いて表示を行う構成とすれば、撮影障害や通信障害の原因となり得る地形や建物の存在を三次元的な位置関係の下で認識可能となる。
【0047】
以上のように、本例の無線伝送システムでは、撮影装置(撮影素材生成部(21))を具備した移動する送信移動体(20)と、撮影装置による撮影目標の位置を特定する撮影位置情報(送信移動体(20)の位置情報及び撮影装置のPTZ情報)を送信移動体(20)から受信する受信基地局(30)と、受信基地局(30)により受信された撮影位置情報に基づく表示を行う表示装置(受信基地局(30)の操作手段(34)内の表示手段)と、を備えた。
【0048】
そして、表示装置が、複数の時点の撮影位置情報に基づいて予測される所定時間後の撮影目標の位置P31を基準にして、当該基準の位置P31にある撮影目標が見通し(撮影が可能)となる位置又は見通し外(撮影が不可能)となる位置の少なくとも一方を示す表示を行うようにした。
【0049】
また、更に、所定時間後の撮影目標の位置P31を基準にして、当該基準の位置P31にある撮影目標が見通し(撮影が可能)となる位置であって、受信基地局(30)が見通し(無線通信が可能)となる位置又は見通し外(無線通信が不可能)となる位置の少なくとも一方を示す表示を行うようにした。
【0050】
以上のような構成により、表示装置による表示を見たユーザは、所定時間後の撮影目標を見通せる位置で且つ受信基地局(30)を見通せる位置に送信移動体(20)を移動させる指示を行えるため、撮影障害や通信障害の回避に関する支援を効果的に実施することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、無線伝送を用いた遠隔制御監視システムなどの種々の形態の無線伝送システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
11:送信点A、 11−1:送信部、 11−2:アンテナ、
12:基地局、 12−1:回転受信アンテナ装置、 12−2:受信部、 12−3:送信部、 12−4:被制御端局、 12−5:変復調部、 12−6:固定アンテナ、
13:本社、 13−1:固定アンテナ、 13−2:受信部、 13−3:回転受信アンテナ装置、 13−4:受信部、 13−5:復号部、 13−6:情報生成部、 13−7:情報編集部、 13−8:変復調部、 13−9:制御端局、 13−10:操作端末、
14:送信点B、 14−1:送信部、 14−2:アンテナ、
20:送信移動体、 21:素材記録生成部、 22:撮影情報取得・変換部、 23:位置情報取得・変換部、 24:送信部、 25:送信アンテナ装置、
30:受信基地局、 31:回転受信アンテナ装置、 32:受信部、 33:素材操作部、 34:操作手段、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12