特許第6018895号(P6018895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018895接地抵抗計および接地抵抗測定方法、ならびにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018895
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】接地抵抗計および接地抵抗測定方法、ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/20 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   G01R27/20
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-268207(P2012-268207)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-115142(P2014-115142A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 竜太
【審査官】 川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−248076(JP,A)
【文献】 特開2012−26896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の補助接地極に接続される第1の接続端子と、第2の補助接地極に接続される第2の接続端子と、被測定接地体と接続される第3の接続端子とを有し、被測定接地体の接地抵抗を測定する接地抵抗計において、
交流電圧を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する電流測定手段と、
前記信号生成手段により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する電圧測定手段と、
前記第1の接続端子、前記第2の接続端子、および、前記第3の接続端子が接続される回路を切り替えるスイッチング手段と、
前記スイッチング手段による回路の切り替えを制御するスイッチング制御手段と、
前記スイッチング手段により切り替えられた所定の回路において、前記電流測定手段により測定された前記電流値、および、前記電圧測定手段により測定された前記電圧値に基づいて、前記第1の補助接地極の接地抵抗値、および、前記第2の補助接地極の接地抵抗値を算出する第1の算出手段と、
前記スイッチング手段により切り替えられた所定の回路において、前記電流測定手段により測定された前記電流値、および、前記電圧測定手段により測定された前記電圧値に基づいて、前記被測定接地体の接地抵抗値を算出する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段により算出された、前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値を、所定の値と比較する比較手段と、
前記比較手段の処理結果に基づいて、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するか、または、最小値を制限して、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする接地抵抗計。
【請求項2】
請求項1に記載の接地抵抗計であって、
前記比較手段は、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値を所定の第1の値と比較するとともに、前記第1の算出手段により算出された前記第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の第2の値と比較し、
前記表示手段は、前記比較手段の処理結果に基づいて、前記第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値未満であり、かつ、前記第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値未満である場合、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するとともに、前記第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値以上であるか、前記第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値以上であるかの少なくともいずれかである場合、最小値を制限して、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する
ことを特徴とする接地抵抗計。
【請求項3】
請求項1に記載の接地抵抗計であって、
前記比較手段は、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の範囲と比較し、
前記表示制御手段は、前記比較手段の処理結果に基づいて、または、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値の少なくともいずれかが前記所定の範囲内である場合、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するとともに、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値の両方が前記所定の範囲内ではない場合、最小値を制限して、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する
ことを特徴とする接地抵抗計。
【請求項4】
請求項3に記載の接地抵抗計であって、
前記所定の範囲は、100Ω±3%である
ことを特徴とする接地抵抗計。
【請求項5】
請求項1に記載の接地抵抗計であって、
前記比較手段は、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値を所定の第1の値と比較するとともに、前記第1の算出手段により算出された前記第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の第2の値と比較し、かつ、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の範囲と比較し、
前記表示制御手段は、前記比較手段の処理結果に基づいて、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値未満であり、かつ、前記第1の算出手段により算出された前記第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値未満である場合、または、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値の少なくともいずれかが前記所定の範囲内である場合、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するとともに、前記第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値以上であるか、前記第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値以上であるかの少なくともいずれかであり、かつ、前記第1の算出手段により算出された前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値の両方が前記所定の範囲内ではない場合、最小値を制限して、前記第2の算出手段により算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する
ことを特徴とする接地抵抗計。
【請求項6】
請求項5に記載の接地抵抗計であって、
前記所定の範囲は、100Ω±3%である
ことを特徴とする接地抵抗計。
【請求項7】
請求項1に記載の接地抵抗計において、
前記スイッチング制御手段は、前記第1の算出手段により前記第1の補助接地極の接地抵抗値、および、前記第2の補助接地極の接地抵抗値が算出される場合と、前記第2の算出手段により前記被測定接地体の接地抵抗値が算出される場合とにおいて、前記第1の接続端子、前記第2の接続端子、および、前記第3の接続端子が接続される回路が異なるものとなるように、前記スイッチング手段を制御する
ことを特徴とする接地抵抗計。
【請求項8】
第1の補助接地極に接続される第1の接続端子と、第2の補助接地極に接続される第2の接続端子と、被測定接地体と接続される第3の接続端子とを有し、被測定接地体の接地抵抗を測定する接地抵抗計の接地抵抗測定方法において、
前記第1の接続端子、前記第2の接続端子、および、前記第3の接続端子が接続される回路を切り替える第1の切り替えステップと、
交流電圧を生成する第1の信号生成ステップと、
前記第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第1の電流測定ステップと、
前記第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第1の電圧測定ステップと、
前記第1の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、前記第1の電流測定ステップの処理により測定された前記電流値、および、前記第1の電圧測定ステップの処理により測定された前記電圧値に基づいて、前記第1の補助接地極の接地抵抗値、および、前記第2の補助接地極の接地抵抗値を算出する第1の算出ステップと、
前記第1の接続端子、前記第2の接続端子、および、前記第3の接続端子が接続される回路を切り替える第2の切り替えステップと、
交流電圧を生成する第2の信号生成ステップと、
前記第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第2の電流測定ステップと、
前記第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第2の電圧測定ステップと、
前記第2の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、前記第2の電流測定ステップにより測定された前記電流値、および、前記第2の電圧測定ステップにより測定された前記電圧値に基づいて、前記被測定接地体の接地抵抗値を算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップにより算出された、前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値を、所定の値と比較する比較ステップと、
前記比較ステップの処理結果に基づいて、前記第2の算出ステップにより算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するか、または、最小値を制限して、前記第2の算出ステップにより算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する表示制御ステップと
を含むことを特徴とする接地抵抗測定方法。
【請求項9】
第1の補助接地極に接続される第1の接続端子と、第2の補助接地極に接続される第2の接続端子と、被測定接地体と接続される第3の接続端子とを有し、被測定接地体の接地抵抗を測定する接地抵抗計が実行するプログラムであって、
前記第1の接続端子、前記第2の接続端子、および、前記第3の接続端子が接続される回路を切り替える第1の切り替えステップと、
交流電圧を生成する第1の信号生成ステップと、
前記第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第1の電流測定ステップと、
前記第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第1の電圧測定ステップと、
前記第1の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、前記第1の電流測定ステップの処理により測定された前記電流値、および、前記第1の電圧測定ステップの処理により測定された前記電圧値に基づいて、前記第1の補助接地極の接地抵抗値、および、前記第2の補助接地極の接地抵抗値を算出する第1の算出ステップと、
前記第1の接続端子、前記第2の接続端子、および、前記第3の接続端子が接続される回路を切り替える第2の切り替えステップと、
交流電圧を生成する第2の信号生成ステップと、
前記第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第2の電流測定ステップと、
前記第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第2の電圧測定ステップと、
前記第2の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、前記第2の電流測定ステップにより測定された前記電流値、および、前記第2の電圧測定ステップにより測定された前記電圧値に基づいて、前記被測定接地体の接地抵抗値を算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップにより算出された、前記第1の補助接地極の接地抵抗値および前記第2の補助接地極の接地抵抗値を、所定の値と比較する比較ステップと、
前記比較ステップの処理結果に基づいて、前記第2の算出ステップにより算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するか、または、最小値を制限して、前記第2の算出ステップにより算出された前記被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する表示制御ステップと
を含むことを特徴とするプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地抵抗計および接地抵抗測定方法、ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備に施される接地工事は、人体への保安および機器の保全のために必要不可欠とされている。接地工事の際には、地面に埋められる接地体の接地抵抗の大きさを測るために、接地抵抗計を用いる。この接地抵抗計には、交流電位差法によるものがある。
【0003】
接地抵抗の測定に際して、接地抵抗計の測定端子Eには、地面に埋め込まれた接地体である被測定接地体が接続され、測定端子Pおよび測定端子Cには、別の場所でそれぞれ地面に埋め込まれた補助接地極がそれぞれ接続される。
【0004】
従来、補助接地抵抗の良否判定を簡単に行なうことができ、地面に埋め込まれた接地体の接地抵抗を高精度に測定し得るようにした接地抵抗計が用いられていた(例えば、特許文献1)。
【0005】
上述の接地抵抗計においては、合成接地抵抗Rep(=Re+Rp)を利用して第1の補助接地極の接地状態を判別し、また合成接地抵抗Rec(=Re+Rc)を利用して第2の補助接地極の接地状態を判別している。このため、被測定接地体Eの接地抵抗Reが大きいときには、第1の補助接地極および第2の補助接地極の接地状態が実際には良好であっても、接地状態が良好でないと判別されてしまう。これに対して、少なくとも第1の補助接地極および第2の補助接地極の接地状態を確実に判別し得る接地抵抗計が用いられていた(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−118851号公報
【特許文献2】特開2011−226983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
接地抵抗計が実際の測定に用いられる場合、上述したように、接地抵抗計の測定端子Eには、地面に埋め込まれた接地体である被測定接地体が接続され、測定端子Pおよび測定端子Cには、別の場所でそれぞれ地面に埋め込まれた第1の補助接地極および第2の補助接地極がそれぞれ接続される。
【0008】
接地抵抗の測定においては、測定端子Cに接続された第2の補助接地極と測定端子Eに接続された被測定接地体との間に電圧が印加されることにより、測定端子Cに接続された第2の補助接地極に流れる電流が計測されるとともに、測定端子Pに接続された第1の補助接地極と測定端子Eに接続された被測定接地体との間の電圧が測定される。この電流と電圧の測定結果を用いて、測定端子Eに接続された被測定接地体の接地抵抗が測定され、その測定結果が表示されるようになされている。
【0009】
この時、被測定接地体の接地抵抗が良好で、かつ、接地抵抗計が真値よりも低い値を表示する場合においては、測定値として、「0.00Ω」が表示される場合がある。
【0010】
例えば、測定確度が±2%rdg、±0.1Ωである接地抵抗計で、接地抵抗0.1Ωの被測定接地体が測定された場合、測定値は、0〜0.2Ωとなり、実際に接地抵抗が0Ωではないのにもかかわらず、測定値として、「0.00Ω」が表示される場合がある。
【0011】
このように、接地抵抗計の仕様により、測定値として、「0.00Ω」となることはあり得るのであるが、接地抵抗が0Ωであることはあり得ないと一般的に認知されているため、上述した接地抵抗計の確度が鑑みられることはほぼなく、測定値としての「0.00Ω」は、現実的には受け入れられない。測定結果の報告は、接地抵抗計の表示部を写真撮影して行われることも多く、「0.00Ω」と表示された測定結果は用いることができない。
【0012】
これに対して、接地抵抗計の校正時や、故障していないかをチェックするような場合、測定端子E、測定端子P、および、測定端子Cをすべて短絡した状態において、測定結果として「0Ω」が表示されることが確認される。また、接地抵抗計の国際規格IEC61557−5で、製品の仕様を満たしているか否かの試験は、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が、100Ω±3%の範囲内であるという条件において実行されるように定められている。このように、測定条件が定められた試験においても、測定結果として、必要に応じて「0Ω」が表示されなければならない。すなわち、接地抵抗計において、単純に「0.00Ω」等の表示を禁止することはできない。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、補助接地極の状態に基づいて、必要に応じて、測定結果の最小値を制限することができる、接地抵抗計および接地抵抗測定方法、ならびにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の接地抵抗計の一側面は、交流電圧を生成する信号生成手段と、信号生成手段により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する電流測定手段と、信号生成手段により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する電圧測定手段と、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路を切り替えるスイッチング手段と、スイッチング手段による回路の切り替えを制御するスイッチング制御手段と、スイッチング手段により切り替えられた所定の回路において、電流測定手段により測定された電流値、および、電圧測定手段により測定された電圧値に基づいて、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値を算出する第1の算出手段と、スイッチング手段により切り替えられた所定の回路において、電流測定手段により測定された電流値、および、電圧測定手段により測定された電圧値に基づいて、被測定接地体の接地抵抗値を算出する第2の算出手段と、第1の算出手段により算出された、第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値を、所定の値と比較する比較手段と、比較手段の処理結果に基づいて、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するか、または、最小値を制限して、被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の側面は、比較手段が、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値を所定の第1の値と比較するとともに、第1の算出手段により算出された第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の第2の値と比較し、表示手段が、比較手段の処理結果に基づいて、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値未満であり、かつ、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値未満である場合、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するとともに、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値以上であるか、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値以上であるかの少なくともいずれかである場合、最小値を制限して、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明の他の側面は、比較手段が、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の範囲と比較し、表示制御手段が、比較手段の処理結果に基づいて、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の少なくともいずれかが所定の範囲内である場合、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するとともに、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の両方が所定の範囲内ではない場合、最小値を制限して、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御することを特徴とする。
【0017】
本発明の他の側面は、所定の範囲が100Ω±3%であることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の側面は、比較手段が、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値を所定の第1の値と比較するとともに、第1の算出手段により算出された第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の第2の値と比較し、かつ、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値を所定の範囲と比較し、表示制御手段が、比較手段の処理結果に基づいて、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値未満であり、かつ、第1の算出手段により算出された第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値未満である場合、または、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の少なくともいずれかが所定の範囲内である場合、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するとともに、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値以上であるか、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値以上であるかの少なくともいずれかであり、かつ、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の両方が所定の範囲内ではない場合、最小値を制限して、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御することを特徴とする。
【0019】
本発明の他の側面は、所定の範囲が100Ω±3%であることを特徴とする。
【0020】
本発明の他の側面は、スイッチング制御手段が、第1の算出手段により第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値が算出される場合と、第2の算出手段により被測定接地体の接地抵抗値が算出される場合とにおいて、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路が異なるものとなるように、スイッチング手段を制御することを特徴とする。
【0021】
本発明の接地抵抗測定方法の一側面は、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路を切り替える第1の切り替えステップと、交流電圧を生成する第1の信号生成ステップと、第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第1の電流測定ステップと、第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第1の電圧測定ステップと、第1の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、第1の電流測定ステップの処理により測定された電流値、および、第1の電圧測定ステップの処理により測定された電圧値に基づいて、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値を算出する第1の算出ステップと、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路を切り替える第2の切り替えステップと、交流電圧を生成する第2の信号生成ステップと、第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第2の電流測定ステップと、第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第2の電圧測定ステップと、第2の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、第2の電流測定ステップにより測定された電流値、および、第2の電圧測定ステップにより測定された電圧値に基づいて、被測定接地体の接地抵抗値を算出する第2の算出ステップと、第1の算出ステップにより算出された、第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値を、所定の値と比較する比較ステップと、比較ステップの処理結果に基づいて、第2の算出ステップにより算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するか、または、最小値を制限して、第2の算出ステップにより算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する表示制御ステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明のプログラムの一側面は、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路を切り替える第1の切り替えステップと、交流電圧を生成する第1の信号生成ステップと、第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第1の電流測定ステップと、第1の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第1の電圧測定ステップと、第1の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、第1の電流測定ステップの処理により測定された電流値、および、第1の電圧測定ステップの処理により測定された電圧値に基づいて、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値を算出する第1の算出ステップと、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路を切り替える第2の切り替えステップと、交流電圧を生成する第2の信号生成ステップと、第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定する第2の電流測定ステップと、第2の信号生成ステップの処理により生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定する第2の電圧測定ステップと、第2の切り替えステップの処理により切り替えられた所定の回路において、第2の電流測定ステップにより測定された電流値、および、第2の電圧測定ステップにより測定された電圧値に基づいて、被測定接地体の接地抵抗値を算出する第2の算出ステップと、第1の算出ステップにより算出された、第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値を、所定の値と比較する比較ステップと、比較ステップの処理結果に基づいて、第2の算出ステップにより算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御するか、または、最小値を制限して、第2の算出ステップにより算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示を制御する表示制御ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、補助接地極の状態に基づいて、必要に応じて、測定結果の最小値を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】接地抵抗計の第1の構成例を示す図である。
図2】制御部が有する機能について説明するための機能ブロック図である。
図3】接地抵抗測定処理1について説明するためのフローチャートである。
図4】接地抵抗計の第2の構成例を示す図である。
図5】制御部が有する機能について説明するための機能ブロック図である。
図6】接地抵抗測定処理2について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、図1図2、および図3を参照して、補助接地極の状態に基づいて、必要に応じて、測定結果の最小値を制限することができる接地抵抗計の第1の例である接地抵抗計1について説明する。
【0026】
図1を参照して、接地抵抗計1の構成について説明する。
【0027】
接地抵抗計1は、信号生成部11、電流測定部12、電圧測定部13、制御部14、記憶部15、表示部16、操作入力部17、スイッチング処理部18、および、接続端子31,32,33を備えている。接地抵抗計1は、接地抵抗の測定において、接続端子31に接続される第1の補助接地極P、および、接続端子32に接続される第2の補助接地極Cを用いて、接続端子33に接続される被測定接地体Eの接地抵抗Reを、3電極法によって繰り返し測定する。
【0028】
信号生成部11は、後述する制御部14の制御に基づいて、一定の周波数(既知の周波数)で、かつ一定の振幅の交流電圧(一例として正弦波電圧)V1を生成して一対の出力端子(不図示)から出力する。また、信号生成部11は、一対の出力端子のうちの第1の出力端子が後述する電流測定部12に、第2の出力端子が後述するスイッチング処理部18のスイッチ42にそれぞれ接続されている。
【0029】
電流測定部12は、一例として交流電流計で構成されて、一対の入力端子(不図示)のうちの第1の入力端子が信号生成部11の第1の出力端子に接続され、かつ第2の入力端子が後述するスイッチング処理部18のスイッチ41にそれぞれ接続されることにより、信号生成部11に直列に接続されて、信号生成部11を含む電流経路(測定ループ)を流れる交流電流I1の電流値を予め決められた周期(一例として、交流電圧V1の周期に同期した周期)で測定する。また、電流測定部12は、電流値を測定する都度、測定した電流値(以下、「測定電流値」とも称する)を、後述する制御部14に出力する。
【0030】
電圧測定部13は、一例として交流電圧計で構成されて、一対の入力端子(不図示)のうちの第1の入力端子が後述するスイッチング処理部18のスイッチ43に接続されると共に、第2の入力端子が電流測定部12の第2の入力端子(後述するスイッチング処理部18のスイッチ41に接続されている端子)に接続され、その両端に発生する交流電圧の電圧値を予め決められた周期(一例として、交流電圧V1の周期に同期した周期)で測定する。また、電圧測定部13は、電圧値を測定する都度、測定した電圧値(以下、「測定電圧値」とも称する)を後述する制御部14に出力する。
【0031】
制御部14は、例えば、CPUなどの演算素子、および、内部メモリなどを備えて構成され、後述する操作入力部17からユーザの操作入力に対応する信号の入力を受け、電流測定部12から供給される測定電流値、および、電圧測定部13から供給される測定電圧値に基づいて、図3を用いて後述する接地抵抗測定処理1を含む処理を実行する。この場合、内部メモリは、CPUのワークメモリとして機能する。
【0032】
すなわち、制御部14は、信号生成部11およびスイッチング処理部18を制御して、接続端子31に接続される第1の補助接地極Pの接地抵抗Rp、および、接続端子32に接続される第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcを測定したのち、接続端子33に接続される被測定接地体Eの接地抵抗Reを、3電極法により測定する。そして、制御部14は、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rp、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcが、いずれも所定の値より低かった場合、被測定接地体Eの接地抵抗Reの測定値を表示部16に表示させ、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rp、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの少なくともいずれかが所定の値より高かった場合、被測定接地体Eの接地抵抗Reの測定値が表示部16に0Ωと表示されるのを禁止し、例えば、「0.01Ω」などの値に測定結果の最小値を制限して、被測定接地体Eの接地抵抗Reの測定値を表示部16に表示させる。
【0033】
制御部14が有する機能の詳細については、図2の機能ブロックを用いて後述する。
【0034】
記憶部15は、例えば、半導体メモリやハードディスクなどで構成され、CPUなどの制御部14の演算素子が実行する動作プログラムと、図3を用いて説明する接地抵抗測定処理において利用される第1の補助接地極Pの接地抵抗Rp、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの閾値などが予め記憶されている。
【0035】
表示部16は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイ装置で構成されて、制御部14が実行した各処理での結果を画面上に表示させる。
【0036】
操作入力部17は、例えば、ボタン、レバー、ダイヤル、タッチパネルなどの入力デバイスにより構成され、ユーザからの操作入力を受け、ユーザからの操作入力を示す信号を制御部14に供給する。
【0037】
スイッチング処理部18は、スイッチ41、スイッチ42、および、スイッチ43を含んで構成され、制御部14の制御に基づいて、例えば、単極双投型(1回路2接点型)の切り替えスイッチで構成されているスイッチ41、スイッチ42、および、スイッチ43を切り替える。具体的には、スイッチ41は、第1のコモン接点com1に接続されている電流測定部12の第2の入力端子および電圧測定部13の第2の入力端子を、制御部14の制御に基づいて、接続端子31または接続端子33と接続する。スイッチ42は、第2のコモン接点com2に接続されている信号生成部11の第2の出力端子およびスイッチ43を、制御部14の制御に基づいて、接続端子31または接続端子32と接続する。そして、スイッチ43は、第3のコモン接点com3に接続されている電圧測定部13の第1の入力端子を、制御部14の制御に基づいて、スイッチ42または接続端子31と接続する。
【0038】
接続端子31には、第1の補助接地極Pが接続され、接続端子32には、第2の補助接地極Cが接続され、接続端子33には、被測定接地体Eが接続される。
【0039】
図2は、制御部14が有する機能について説明するための機能ブロック図である。
【0040】
制御部14は、電圧印加制御部51、スイッチング制御部52、補助接地極接地抵抗算出部53、比較部54、被測定接地体接地抵抗算出部55、および、表示制御部56を含む機能を有している。
【0041】
電圧印加制御部51は、信号生成部11を制御して、その両端に電圧V1を印加させる。
【0042】
スイッチング制御部52は、スイッチング処理部18による回路の切り替えを制御する。
【0043】
補助接地極接地抵抗算出部53は、電流測定部12により測定された測定電流値、および、電圧測定部13により測定された測定電圧値に基づいて、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値を算出し、比較部54に出力する。
【0044】
具体的には、補助接地極接地抵抗算出部53は、スイッチング処理部18により切り替えられる所定の回路において得られる測定電流値および測定電圧値に基づいて、合成接地抵抗Repの抵抗値、合成接地抵抗Recの抵抗値、および、合成接地抵抗Rpcの抵抗値を算出する。そして、補助接地極接地抵抗算出部53は、次の式(1)、式(2)、および、式(3)に示される連立方程式を解くことにより、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値を算出して、比較部54に供給する。
【0045】
Rep=Re+Rp
・・・ (1)
Rec=Re+Rc
・・・ (2)
Rpc=Rp+Rc
・・・ (3)
【0046】
比較部54は、補助接地極接地抵抗算出部53により算出された、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値を、記憶部15に記憶されている第1の閾値と比較するとともに、補助接地極接地抵抗算出部53により算出された、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値を、記憶部15に記憶されている第2の閾値と比較し、その比較結果を表示制御部56に供給する。
【0047】
被測定接地体接地抵抗算出部55は、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に電圧V1が印加された状態において、電流測定部12により測定された第2の補助接地極Cに注入される電流値と、電圧測定部13により測定された被測定接地体E−第1の補助接地極P間の電圧値を取得する。そして、被測定接地体接地抵抗算出部55は、取得された測定電流値および測定電圧値に基づいて、3電極法により被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を算出し、表示制御部56に供給する。
【0048】
表示制御部56は、比較部54の処理により、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値が第1の閾値未満であり、かつ、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が第2の閾値未満である場合、被測定接地体接地抵抗算出部55により算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の、表示部16への表示を制御するとともに、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値が第1の閾値以上であるか、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が第2の閾値以上であるかの少なくともいずれかである場合、0Ωとならないように、例えば、「0.01Ω」や「0.001Ω」など、接地抵抗計1の分解能に応じた桁数で最小値を制限して、被測定接地体接地抵抗算出部55により算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の、表示部16への表示を制御する。
【0049】
次に、図3のフローチャートを参照して、接地抵抗計1が実行する接地抵抗測定処理1について説明する。
【0050】
接地抵抗測定処理1は、接地抵抗計1のユーザにより、第1の補助接地極Pおよび第2の補助接地極Cが大地の所定の位置に打ち込まれて、接続端子31には、第1の補助接地極Pが接続され、接続端子32には、第2の補助接地極Cが接続され、接続端子33には、被測定接地体Eが接続された状態で実行されるか、または、接地抵抗計1の動作チェックや校正のために、接続端子31、接続端子32、および、接続端子33が短絡された状態において実行される。
【0051】
ステップS1において、制御部14は、被測定接地体E−第1の補助接地極P間に交流電圧V1を印加して、合成接地抵抗Repの抵抗値を算出する。
【0052】
具体的には、制御部14のスイッチング制御部52は、スイッチング処理部18を制御して、スイッチ41の第1のコモン接点com1を接続端子33と接続させ、スイッチ42の第2のコモン接点com2を接続端子31と接続させるとともに、スイッチ43の第3のコモン接点com3をスイッチ42と接続させる。そして、電圧印加制御部51が、信号生成部11に交流電圧V1を出力させることにより、被測定接地体E−第1の補助接地極P間に交流電圧V1を印加する。このとき、信号生成部11、電流測定部12、スイッチ41、接続端子33と接続された被測定接地体E、および、接続端子31と接続された第1の補助接地極Pを含む直列回路に交流電流I1が流れる。電流測定部12は、交流電流I1の電流値を測定し、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53に供給する。電圧測定部13は、被測定接地体E−第1の補助接地極P間に印加される交流電圧Vepの電圧値を測定し、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53に供給する。
【0053】
そして、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53は、電流測定部12による測定電流値、および、電圧測定部13による測定電圧値に基づいて、(測定電圧値/測定電流値)の演算により、合成接地抵抗Repの抵抗値を算出し、内部メモリに記憶する。その後、制御部14の電圧印加制御部51は、信号生成部11に対して交流電圧V1の出力を停止させる。
【0054】
ステップS2において、制御部14は、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加して、合成接地抵抗Recの抵抗値を算出する。
【0055】
具体的には、制御部14のスイッチング制御部52は、スイッチング処理部18を制御して、スイッチ41の第1のコモン接点com1を接続端子33と接続させ、スイッチ42の第2のコモン接点com2を接続端子32と接続させるとともに、スイッチ43の第3のコモン接点com3をスイッチ42と接続させる。そして、電圧印加制御部51が、信号生成部11に交流電圧V1を出力させることにより、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加する。このとき、信号生成部11、電流測定部12、スイッチ41、接続端子33と接続された被測定接地体E、および、接続端子32と接続された第2の補助接地極Cを含む直列回路に交流電流I1が流れる。電流測定部12は、交流電流I1の電流値を測定し、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53に供給する。電圧測定部13は、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に印加される交流電圧Vecの電圧値を測定し、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53に供給する。
【0056】
そして、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53は、電流測定部12による測定電流値、および、電圧測定部13による測定電圧値に基づいて、(測定電圧値/測定電流値)の演算により、合成接地抵抗Recの抵抗値を算出し、内部メモリに記憶する。その後、制御部14の印加電圧制御部51は、信号生成部11に対して交流電圧V1の出力を停止させる。
【0057】
ステップS3において、制御部14は、第1の補助接地極P−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加して、合成接地抵抗Rpcの抵抗値を算出する。
【0058】
具体的には、制御部14のスイッチング制御部52は、スイッチング処理部18を制御して、スイッチ41の第1のコモン接点com1を接続端子31と接続させ、スイッチ42の第2のコモン接点com2を接続端子32と接続させるとともに、スイッチ43の第3のコモン接点com3をスイッチ42と接続させる。そして、電圧印加制御部51が、信号生成部11に交流電圧V1を出力させることにより、第1の補助接地極P−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加する。このとき、信号生成部11、電流測定部12、スイッチ41、接続端子31と接続された第1の補助接地極P、および、接続端子32と接続された第2の補助接地極Cを含む直列回路に交流電流I1が流れる。電流測定部12は、交流電流I1の電流値を測定し、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53に供給する。電圧測定部13は、第1の補助接地極P−第2の補助接地極C間に印加される交流電圧Vpcの電圧値を測定し、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53に供給する。
【0059】
そして、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53は、電流測定部12による測定電流値、および、電圧測定部13による測定電圧値に基づいて、(測定電圧値/測定電流値)の演算により、合成接地抵抗Rpcの抵抗値を算出し、内部メモリに記憶する。その後、制御部14の電圧印加制御部51は、信号生成部11に対して交流電圧V1の出力を停止させる。
【0060】
ステップS4において、制御部14は、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値を算出する。
【0061】
具体的には、制御部14の補助接地極接地抵抗算出部53は、ステップS1〜ステップS3の処理により内部メモリに記憶されている合成接地抵抗Repの抵抗値、合成接地抵抗Recの抵抗値、および、合成接地抵抗Rpcの抵抗値を用いて、上述した式(1)、式(2)、および、式(3)に示される連立方程式を解くことにより、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値を算出し、比較部54に供給する。
【0062】
上述したステップ1〜ステップS4の処理により、測定準備が終了し、実測定が可能となる。この時、例えば、表示部16に、測定準備完了を示す表示を行うことなどにより、ユーザに、例えば、操作入力部17に設けられた「Measure」ボタンの押下などの実測定の開始を指示するための操作入力を行うことを促すようにしてもよい。
【0063】
ステップS5において、制御部14は、操作入力部17から供給される、ユーザの操作入力を示す信号に基づいて、測定開始が指示されたか否かを判断する。ステップS5において、測定開始が指示されていないと判断された場合、測定開始が指示されたと判断されるまで、ステップS5の処理が繰り返される。
【0064】
ステップS5において、測定開始が指示されたと判断された場合、ステップS6において、制御部14は、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加して、電流測定部12は、第2の補助接地極Cに注入される交流電流I1の電流値を測定し、電圧測定部13は、被測定接地体E−第1の補助接地極P間の電圧値を測定する。
【0065】
具体的には、制御部14のスイッチング制御部52は、スイッチング処理部18を制御して、スイッチ41の第1のコモン接点com1を接続端子33と接続させ、スイッチ42の第2のコモン接点com2を接続端子32と接続させるとともに、スイッチ43の第3のコモン接点com3を接続端子31と接続させる。そして、電圧印加制御部51は、信号生成部11に交流電圧V1を出力させることにより、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加する。電流測定部12は、第2の補助接地極Cに注入される交流電流I1の電流値を測定し、制御部14の被測定接地体接地抵抗算出部55に供給する。電圧測定部13は、交流電流I1が大地G中を流れることに起因して被測定接地体Eと第1の補助接地極Pとの間に発生する交流電圧Vepを測定し、制御部14の被測定接地体接地抵抗算出部55に供給する。
【0066】
ステップS7において、制御部14の被測定接地体接地抵抗算出部55は、ステップS6の処理により得られた第2の補助接地極Cに注入される電流値と、被測定接地体E−第1の補助接地極P間の電圧値Vepを用いて、3電極法により、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を求め、表示制御部56に供給する。
【0067】
ステップS8において、制御部14の比較部54は、ステップS4の処理により得られた接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値が、ともに、記憶部15に記憶されている所定の値以下であったか否かを判断し、判断結果を、表示制御部56に供給する。記憶部15に記憶されている所定の値、すなわち、上述した第1の閾値および第2の閾値は、同一の値であっても異なる値であってもよく、その値は、例えば、10Ω程度であるものとすると好適である。
【0068】
ステップS8において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値が、ともに、記憶部15に記憶されている所定の値以下であったと判断された場合、この測定は、接地抵抗計1の動作チェックや校正であると推定されるので、ステップS9において、制御部14の表示制御部56は、表示部16を制御して、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値をそのまま表示させ、処理が終了される。
【0069】
ステップS8において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、記憶部15に記憶されている所定の値以下ではなかったと判断された場合、この測定は実測定であると推定されるので、ステップS10において、制御部14の表示制御部56は、表示部16を制御して、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、最小値を制限して表示させ、処理が終了される。
【0070】
具体的には、制御部14の表示制御部56は、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、記憶部15に記憶されている所定の値、すなわち、第1の閾値または第2の閾値以下ではなかった場合、演算の結果得られた被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値が「0Ω」となる場合であっても、表示部16を制御して、その分解能に応じて、例えば、「0.01Ω」や「0.001Ω」などの値を表示させる。
【0071】
実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時においては、第1の補助接地抵抗Pの接地抵抗Rpの値、または、第2の接地抵抗Cの接地抵抗Rcの値は、ある程度の値をとることが想定される。それに対して、接地抵抗計1の校正や動作チェックなどにおいては、接続端子31,32、および33が短絡されるので、第1の補助接地抵抗Pの接地抵抗Rpの値、または、第2の接地抵抗Cの接地抵抗Rcの値は、0Ωに近い値となることが想定される。
【0072】
したがって、このような処理を実行することにより、実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時に、接地抵抗計の確度により「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が表示部16に表示されることを防止することができるので、ユーザは、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定結果を報告できないような事態に陥ることがなくなる。そして、接地抵抗計1の校正や動作チェックなど、接続端子31,32、および33が短絡された場合においては、「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が表示部16に表示可能となるので、故障と判断されることはない。
【0073】
また、このような処理により、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値を、合成接地抵抗Rep(=Re+Rp)および合成接地抵抗Rec(=Re+Rc)を用いずに、より正確に求めることが可能となる。
【0074】
ところで、接地抵抗計の国際規格IEC61557−5で、製品の仕様を満たしているか否かの試験は、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が、100Ω±3%の範囲内であるという条件において実行されるようにきめられている。よって、製品の仕様を満たしているか否かの試験において故障であると誤認識されないように、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の少なくともいずれか一方が、例えば、100Ω±3%などの試験条件に定められた所定の範囲内である場合、算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、その最小値を制限することなく、表示させるようにすると好適である。
【0075】
次に、図4図5、および図6を参照して、補助接地極の状態に基づいて、必要に応じて、測定結果の最小値を制限することができる接地抵抗計の第2の例である接地抵抗計71について説明する。
【0076】
接地抵抗計71は、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値がいずれも所定の値以下である場合に加えて、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の少なくともいずれか一方が、例えば、100Ω±3%などの所定の範囲内である場合、算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、その最小値を制限することなく、表示させることができるとともに、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくとも一方が所定の値以上であり、かつ、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の両方が、例えば、100Ω±3%などの所定の範囲内ではない場合、算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、その最小値を制限して表示させることができる。以下、一例として、所定の範囲が100Ω±3%である場合について説明する。
【0077】
図4を参照して、接地抵抗計71の構成について説明する。
【0078】
なお、図1の接地抵抗計1と同一の部分には、同一の番号を付し、その詳細な説明は省略する。すなわち、図4の接地抵抗計71には、制御部14に代えて、制御部81が設けられている。他の構成は、図1に示した接地抵抗計1と同様の構成を有する。
【0079】
制御部81は、例えば、CPUなどの演算素子、および、内部メモリなどを備えて構成され、操作入力部17からユーザの操作入力に対応する信号の入力を受け、電流測定部12から供給される測定電流値、および、電圧測定部13から供給される測定電圧値に基づいて、図6を用いて後述する接地抵抗測定処理2を含む処理を実行する。この場合、内部メモリは、CPUのワークメモリとして機能する。
【0080】
すなわち、制御部81は、信号生成部11およびスイッチング処理部18を制御して、接続端子31に接続される第1の補助接地極Pの接地抵抗Rp、および、接続端子32に接続される第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcを測定したのち、接続端子33に接続される被測定接地体Eの接地抵抗Reを、3電極法により測定する。そして、制御部81は、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rp、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcが、いずれも所定の値より低かった場合に加えて、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の少なくともいずれか一方が100Ω±3%の範囲内である場合、被測定接地体Eの接地抵抗Reの測定値を表示部16に表示させ、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rp、および、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの少なくともいずれかが所定の値より高く、かつ、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の両方が100Ω±3%の範囲内ではない場合、被測定接地体Eの接地抵抗Reの測定値が表示部16に0Ωと表示されるのを禁止し、例えば、「0.01Ω」などの値に測定結果の最小値を制限して、被測定接地体Eの接地抵抗Reの測定値を表示部16に表示させる。
【0081】
制御部81が有する機能の詳細は、図4を用いて説明する。
【0082】
図4は、図3の接地抵抗計71の制御部81が有する機能を説明するための機能ブロック図である。なお、図2の制御部14と同一の部分には、同一の番号を付し、その詳細な説明は省略する。すなわち、制御部81には、比較部54に代えて、比較部91が設けられるとともに、表示制御部56に代えて、表示制御部92が設けられている。他の機能は、図2に示した制御部14と同様の機能を有する。
【0083】
比較部91は、補助接地極接地抵抗算出部53により算出された、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値を、記憶部15に記憶されている第1の閾値と比較するとともに、補助接地極接地抵抗算出部53により算出された、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値を、記憶部15に記憶されている第2の閾値と比較し、その比較結果を表示制御部92に供給する。また、比較部91は、補助接地極接地抵抗算出部53により算出された、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値を、100Ω±3%と比較し、その比較結果を表示制御部92に供給する。
【0084】
表示制御部92は、比較部91の処理により得られる比較結果に基づいて、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値が第1の閾値以下であり、かつ、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が第2の閾値以下であるか、または、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の、少なくともいずれか一方が100Ω±3%の範囲内である場合、被測定接地体接地抵抗算出部55により算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の、表示部16への表示を制御する。また、表示制御部92は、比較部91の処理により得られる比較結果に基づいて、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値が第1の閾値以下ではないか、第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が第2の閾値以下ではないかの少なくともいずれかであり、かつ、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が、共に100Ω±3%の範囲内ではない場合、0Ωとならないように、例えば、「0.01Ω」や「0.001Ω」など、接地抵抗計71の分解能に応じた桁数で最小値を制限して、被測定接地体接地抵抗算出部55により算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の、表示部16への表示を制御する。
【0085】
接地抵抗計の国際規格IEC61557−5で、製品の仕様を満たしているか否かの試験は、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が、100Ω±3%の範囲内であるという条件において実行されるようにきめられている。よって、製品の仕様を満たしているか否かの試験において故障であると誤認識されないように、接地抵抗計71においては、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の少なくともいずれか一方が100Ω±3%の範囲内である場合、被測定接地体接地抵抗算出部55により算出された被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、その最小値を制限することなく、表示部16へ表示させる。換言すれば、接地抵抗計71は、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値の少なくともいずれか一方が100Ω±3%の範囲内である場合、「0.00Ω」が測定結果であれば、その測定値を、表示部16へ、そのまま表示させる。
【0086】
次に、図6のフローチャートを参照して、接地抵抗計71が実行する接地抵抗測定処理2について説明する。
【0087】
接地抵抗測定処理2は、接地抵抗計71のユーザにより、第1の補助接地極Pおよび第2の補助接地極Cが大地の所定の位置に打ち込まれて、接続端子31には、第1の補助接地極Pが接続され、接続端子32には、第2の補助接地極Cが接続され、接続端子33には、被測定接地体Eが接続された状態で実行されるか、または、接地抵抗計71の動作チェックや校正のために、接続端子31、接続端子32、および、接続端子33が短絡された状態において実行されるか、または、製品の仕様を満たしているか否かの試験のために、第1の補助接地極Pの接地抵抗Rpの抵抗値および第2の補助接地極Cの接地抵抗Rcの抵抗値が、100Ω±3%の範囲内であるという条件において実行される。
【0088】
ステップS21〜ステップS27において、図3を用いて説明した、接地抵抗測定処理1のステップS1〜ステップS7と同様の処理が実行される。
【0089】
すなわち、ステップS21において、制御部81は、被測定接地体E−第1の補助接地極P間に交流電圧V1を印加して、合成接地抵抗Repの抵抗値を算出する。
【0090】
ステップS22において、制御部81は、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加して、合成接地抵抗Recの抵抗値を算出する。
【0091】
ステップS23において、制御部81は、第1の補助接地極P−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加して、合成接地抵抗Rpcの抵抗値を算出する。
【0092】
ステップS24において、制御部81は、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値を算出する。
【0093】
ステップS25において、制御部81は、操作入力部17から供給される、ユーザの操作入力を示す信号に基づいて、測定開始が指示されたか否かを判断する。ステップS25において、測定開始が指示されていないと判断された場合、測定開始が指示されたと判断されるまで、ステップS25の処理が繰り返される。
【0094】
ステップS25において、測定開始が指示されたと判断された場合、ステップS26において、制御部81は、被測定接地体E−第2の補助接地極C間に交流電圧V1を印加して、電流測定部12は、第2の補助接地極Cに注入される交流電流I1の電流値を測定し、電圧測定部13は、被測定接地体E−第1の補助接地極P間の電圧値を測定する。
【0095】
ステップS27において、制御部81の被測定接地体接地抵抗算出部55は、ステップS6の処理により得られた第2の補助接地極Cに注入される電流値と、被測定接地体E−第1の補助接地極P間の電圧値Vepを用いて、3電極法により、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を求め、表示制御部92に供給する。
【0096】
そして、ステップS28において、制御部81の比較部91は、ステップS4の処理により得られた接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値が、ともに、記憶部15に記憶されている所定の値以下であったか否かを判断し、判断結果を、表示制御部92に供給する。記憶部15に記憶されている所定の値、すなわち、上述した第1の閾値および第2の閾値は、同一の値であっても異なる値であってもよく、その値は、例えば、10Ω程度であるものとすると好適である。
【0097】
ステップS28において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、記憶部15に記憶されている所定の値以下ではなかったと判断された場合、ステップS29において、制御部81の表示制御部92は、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内であるか否かを判断する。
【0098】
ステップS29において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内であると判断された場合、処理は、ステップS31に進む。
【0099】
ステップS29において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの両方が、100Ω±3%の範囲内ではないと判断された場合、この測定は実測定であると推定されるので、ステップS30において、制御部81の表示制御部92は、表示部16を制御して、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、最小値を制限して表示させ、処理が終了される。
【0100】
具体的には、制御部81の表示制御部92は、演算の結果得られた被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値が「0Ω」となる場合であっても、表示部16を制御して、その分解能に応じて、例えば、「0.01Ω」や「0.001Ω」などの値を表示させる。
【0101】
ステップS28において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値が、ともに、記憶部15に記憶されている所定の値以下であったと判断された場合、この測定は、接地抵抗計71の動作チェックや校正であると推定される。また、ステップS29において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内であると判断された場合、製品の仕様を満たしているか否かの試験が行われている可能性がある。したがって、ステップS31において、制御部81の表示制御部92は、表示部16を制御して、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値をそのまま表示させ、処理が終了される。
【0102】
実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時においては、第1の補助接地抵抗Pの接地抵抗Rpの値、または、第2の接地抵抗Cの接地抵抗Rcの値は、ある程度の値をとることが想定される。それに対して、接地抵抗計71の校正や動作チェックなどにおいては、接続端子31,32、および33が短絡されるので、第1の補助接地抵抗Pの接地抵抗Rpの値、または、第2の接地抵抗Cの接地抵抗Rcの値は、0Ωに近い値となることが想定される。また、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内である場合、製品の仕様を満たしているか否かの試験が行われている可能性がある。
【0103】
したがって、このような処理を実行することにより、実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時に、接地抵抗計の確度により「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が表示部16に表示されることを防止することができるので、ユーザは、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定結果を報告できないような事態に陥ることがなくなる。そして、接地抵抗計71の校正や動作チェックなどにおいて、接続端子31,32、および33が短絡された場合や、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値が100Ω±3%の範囲内において、製品の仕様を満たしているか否かの試験が行われる場合においては、「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が表示部16に表示可能となるので、故障と判断されることはない。
【0104】
また、このような処理により、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値を、合成接地抵抗Rep(=Re+Rp)および合成接地抵抗Rec(=Re+Rc)を用いずに、より正確に求めることが可能となる。
【0105】
なお、ここでは、ステップS28において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、記憶部15に記憶されている所定の値以下であるか否かが判断され、ステップS29において、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内であるか否かが判断されるものとして説明したが、先に、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内であるか否かを判断したのち、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、記憶部15に記憶されている所定の値以下であるか否かを判断するものとしてもよいことは言うまでもない。
【0106】
また、さらに、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、記憶部15に記憶されている所定の値以下であるか否かの判断を行わずに、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内であるか否かの判断結果のみに応じて、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値のうちの少なくともいずれかが、100Ω±3%の範囲内である場合以外は、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、最小値を制限して表示させるものとしてもよい。
【0107】
また、ここでは、所定の範囲の一例として、100Ω±3%を用いて説明したが、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値を、最小値を制限して表示させるか否かの判断を行うための所定の範囲はこの限りではなく、他のいかなる値の範囲を用いてもよいことは言うまでもない。
【0108】
以上のように、交流電圧を生成し、生成された交流電圧により所定の回路に流れる電流の電流値を測定するとともに、生成された交流電圧により所定の回路に印加される電圧の電圧値を測定し、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路を切り替えて、所定の回路において、測定された電流値、および、測定された電圧値に基づいて、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値が算出される。そして、所定の回路において、測定された電流値、および、測定された電圧値に基づいて、被測定接地体の接地抵抗値が算出される。そして、第1の補助接地極の接地抵抗値と第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の値と比較され、その比較結果に基づいて、算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるか、または、最小値が制限されて、被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるようにしたので、補助接地極の状態に基づいて、必要に応じて、測定結果の最小値を制限することができる。
【0109】
また、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値と比較されるとともに、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値と比較され、その比較結果に基づいて、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値未満であり、かつ、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値未満である場合、算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるとともに、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値以上であるか、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値以上であるかの少なくともいずれかである場合、最小値が制限されて、算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるようにしたので、演算の結果得られた被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値が「0Ω」となる場合であっても、実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時には、その分解能に応じて、最低値が制限された値、すなわち、例えば、「0.01Ω」や「0.001Ω」などの値が表示部16に表示されるとともに、接続端子31、接続端子32、および、接続端子33を短絡して、接地抵抗計71が故障していないか否かを確認したり、校正を行う場合においては、「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が、表示部16に表示可能となる。
【0110】
また、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値と比較されるとともに、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値と比較され、さらに、第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の範囲と比較され、比較結果に基づいて、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値未満であり、かつ、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値未満である場合、または、第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の少なくともいずれかが所定の範囲内である場合、算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるとともに、第1の補助接地極の接地抵抗値が所定の第1の値以上であるか、第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の第2の値以上であるかの少なくともいずれかであり、かつ、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の両方が所定の範囲内ではない場合、最小値が制限されて、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるようにしたので、演算の結果得られた被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値が「0Ω」となる場合であっても、実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時には、その分解能に応じて、最低値が制限された値、すなわち、例えば、「0.01Ω」や「0.001Ω」などの値が表示部16に表示されるとともに、接続端子31、接続端子32、および、接続端子33を短絡して、接地抵抗計71が故障していないか否かを確認したり、校正を行う場合や、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値が、例えば、100Ω±3%などの試験条件に定められた所定の範囲内において、製品の仕様を満たしているか否かの試験が行われる場合においては、「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が、表示部16に表示可能となる。
【0111】
また、第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値が所定の範囲と比較され、第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の少なくともいずれかが所定の範囲内である場合、算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるとともに、第1の算出手段により算出された第1の補助接地極の接地抵抗値および第2の補助接地極の接地抵抗値の両方が所定の範囲内ではない場合、最小値が制限されて、第2の算出手段により算出された被測定接地体の接地抵抗値の表示が制御されるようにした場合、演算の結果得られた被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値が「0Ω」となる場合であっても、実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時には、その分解能に応じて、最低値が制限された値、すなわち、例えば、「0.01Ω」や「0.001Ω」などの値が表示部16に表示されるとともに、接地抵抗Rpの抵抗値および接地抵抗Rcの抵抗値が、例えば、100Ω±3%などの試験条件に定められた所定の範囲内において、製品の仕様を満たしているか否かの試験が行われる場合においては、「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が、表示部16に表示可能となる。
【0112】
したがって、接続端子31、接続端子32、および、接続端子33を短絡して、接地抵抗計71が故障していないか否かを確認したり、校正を行う場合や、製品の仕様を満たしているか否かの試験が行われる場合において、故障であると誤認識されることなく、実際の被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定時に、接地抵抗計の確度により「0.00Ω」や「0.000Ω」などの値が表示部16に表示されることを防止することができるので、ユーザは、被測定接地体Eの接地抵抗Reの抵抗値の測定結果を報告できないような事態に陥ることがなくなる。
【0113】
また、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値が算出される場合と、被測定接地体の接地抵抗値が算出される場合とにおいて、第1の接続端子、第2の接続端子、および、第3の接続端子が接続される回路が異なるものとなるように、スイッチを制御するようにしたので、第1の補助接地極の接地抵抗値、および、第2の補助接地極の接地抵抗値を、合成接地抵抗Rep(=Re+Rp)および合成接地抵抗Rec(=Re+Rc)を用いずに、より正確に求めることが可能となる。
【0114】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0115】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0116】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0117】
1…接地抵抗計、
11…信号生成部(信号生成手段)、
12…電流測定部(電流測定手段)、
13…電圧測定部(電圧測定手段)、
14…制御部、
15…記憶部、
16…表示部、
17…操作入力部、
18…スイッチング処理部(スイッチング手段)、
31,32,33…接続端子、
41,42,43…スイッチ、
51…電圧印加制御部、
52…スイッチング制御部(スイッチング制御手段)、
53…補助接地極接地抵抗算出部(第1の算出手段)、
54…比較部(比較手段)、
55…被測定接地体接地抵抗算出部(第2の算出手段)、
56…表示制御部(表示制御手段)
71…接地抵抗計、
81…制御部、
91…比較部(比較手段)、
92…表示制御部(表示制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6