(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動機によって回転される駆動ねじと、前記駆動ねじと噛み合うボールナットと、前記ボールナットによって上下運動し、制御棒に連結される中空ピストンとを備えた制御棒駆動機構の前記駆動ねじを平滑化処理する平滑化処理方法であって、
水中環境下で使用される前記駆動ねじを、地面に対して垂直状態に配置して平滑化処理装置の架台に回転可能に設置し、
前記平滑化処理装置の架台に回転可能に設置された前記駆動ねじに噛み合っている前記ボールナットに所定の重量の重りを搭載し、
前記平滑化処理装置の架台に回転可能に設置された前記駆動ねじを回転させて前記ボールナットを所定の回数上下に昇降させることにより、前記駆動ねじの走行面の平滑化処理を実施し、
前記駆動ねじの走行面の平滑化処理が、前記ボールナットを上下に昇降させる際に、前記駆動ねじと前記ボールナットの摺動部に潤滑剤を用いることによって、実施されることを特徴とする平滑化処理方法。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(BWR)の原子炉圧力容器(RPV)内には、複数の燃料集合体が装荷された炉心が配置されており、この炉心の内部には減速材を兼ねた冷却水(軽水)が存在する。
【0003】
原子炉圧力容器内に装荷された燃料集合体の相互間には制御棒(CR)が挿入配置される。この制御棒は、原子炉の起動及び停止、反応度補償及び負荷追従等における原子炉出力の制御を行うものであり、制御棒の炉心からの引き抜き、及び制御棒の炉心への挿入によって行われる。
【0004】
制御棒は、原子炉圧力容器の底部に設けられた制御棒駆動機構に連結されており、この制御棒駆動機構よって上下方向に移動される。
【0005】
CRDの一例は、特開2009−174941号公報(特許文献1)の
図3に示されている。
【0006】
この特許文献1に記載された制御棒駆動機構は、ガイドチューブがアウターチューブ内に配置され、ガイドチューブ内には中空ピストンが配置されている。この中空ピストンの先端には原子炉圧力容器内の制御棒と連結している。中空ピストンはボールナットと係合している。このボールナットは中空ピストン内の駆動ねじと噛み合っている。
【0007】
即ち、制御棒駆動機構の下部に取り付けられた電動機の回転によって駆動ねじが回転すると、ボールナットは駆動ねじの回転によって上下動することになる。ボールナットが上下動すると中空ピストンも同じように上下動するため原子炉圧力容器内の制御棒を上下動させることになる。
【0008】
このように特許文献1のボールナットは、駆動ねじの回転によって上下動し、中空ピストンを上下動させる。これにより、中空ピストンと連結した制御棒が炉心に出し入れされ、原子炉出力が制御されることになる。
【0009】
従来の制御棒駆動機構内に設けられている駆動ねじには平滑化処理が施されていない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ところで、炉心内で生成される中性子の数を調整する手段として制御棒が使われる。この制御棒は中性子を吸収する物質(ホウ素、カドミウム、ハフニウムなど)が収納されており、この制御棒が炉心の深く入れば中性子が多く吸収され、浅く入れば少なく吸収される(なお、中性子の数を緊急に抑えなくてはならない事態が発生した場合は、高圧水を使用するなどして短時間で制御棒を動作させる場合もある)。
【0018】
このように、制御棒は炉心の中で絶えず上下動作を繰り返すものであり、この上下動作を行っているのが炉心を形成する圧力容器の底面に複数台取り付けられた制御棒駆動機構である。この制御棒駆動機構は圧力容器を貫通し、一部は炉心内の冷却水に浸った状態となっている。
【0019】
制御棒駆動機構は上部と下部とモータユニットとに大別され、上部は駆動ねじとボールナットが収納された部分である。下部は駆動ねじに回転力伝える駆動軸が収納された部分である。モータユニット部は駆動軸の駆動源となる部分である。
【0020】
上述したように、制御棒駆動機構の上部と下部が連通しているため、炉心内の冷却水が上部と下部に侵入し、常時水で浸された状態となっている。したがって、特にボールネジは通常、潤滑油の中で使用するのが一般的であるにもかかわらず、制御棒駆動機構のボールナットは高い水圧の水中内で動作することになる。そのため、潤滑油のない環境では溝の走行面に発生した表面粗さ(凹凸)によってボールナットの回転トルクが上昇してしまうという問題があることが分かった。
【0021】
そこで、この問題を解決すべく本発明の発明者らは、ボールナットを制御棒駆動機構の実機に組み込む前に、実環境と同じ圧力をボールネジの溝の走行面に加えることを考えたものである。つまり、初期状態のボールナットの溝に発生している凹凸面を、実機に組み込む前にあらかじめ平滑化させておくというものである。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の一実施例を備えた制御棒駆動機構を図にしたがって説明する。
【0023】
図1は本発明の実施例1に係る制御棒駆動機構の縦断面図である。
【0024】
図1において、制御棒駆動機構1は圧力容器100の下部にはハウジング9が接続されている。このハウジング9の下部にはアウターチューブ11が取り付けられている。このアウターチューブ11の下方には耐圧部を介して磁力により回転駆動力を伝達する磁気継手15を有するスプールピース12と、駆動源である電動機7を有するモータユニット8から接続されている。
【0025】
モータユニット8は電動機7を備えており、この電動機7の駆動軸6は磁気継手15の構成要素である外側磁気継手14に接続されている。この外側磁気継手14は、制御棒駆動機構ハウジング9の下端の耐圧部であるスプールピース12の圧力隔壁を介して磁気継手15の構成要素である内側磁気継手13と磁気的に結合している。
【0026】
内側磁気継手13は駆動軸5と接続され、駆動軸5の上方には駆動ねじ3が結合される。この駆動ねじ3に螺合されたボールナット4が駆動ねじ3の回転によって昇降する。ボールナット4の上面には、中空ピストン10が載置され、中空ピストン10の先端には、制御棒2が係合されている。
【0027】
制御棒駆動機構1は、モータユニット8の電動機7の回転駆動力を磁気継手15を介し駆動ねじ3に伝達し、ボールナット4を上下動させることにより、制御棒2を昇降駆動する構造となっている。この制御棒2の昇降により、炉心への挿入・引抜量が調整され、炉出力が調整される。
【0028】
前記制御棒駆動機構1の駆動ねじ3の平滑化処理方法を
図1〜2に基づいて説明する。
【0029】
図2は本発明の実施例1に係る平滑化処理装置の縦断面図である。
【0030】
図2において、平滑化処理装置16の架台20の軸受18、及び架台19の軸受17を用いて駆動ねじ3を地面に対して垂直な状態に保持させている。この駆動ねじ3と電動機21とは連結されている。平滑化処理装置16にはボールナット4の回転を抑制し、ボールナット4を上下にガイドするためのガイドレール24が取り付けられている。また平滑化処理装置16にはボールナット4に対して荷重を加えるための重り22を取り付けるための架台23が備え付けられている。
【0031】
この平滑化処理装置16を用いて、架台23に制御棒2の重量と中空ピストン10の重量の合計値と同程度の重り22を左右均等に設置されている。この重り22によって、ボールナット4に実使用時と同程度の荷重がボールナット4の左右に均等に加えられることになる。駆動ねじ3とボールナット4の摺動部に潤滑材を塗布した状態でボールナット4を所定の回数上下に昇降させることで駆動ねじ3の走行面に平滑化処理を施すことができる。
【0032】
図3は
図2のA部拡大断面図である。
【0033】
図3において、ボールナット4はナット4aの内壁に螺旋状の溝4bが形成されている。ナット4aの内壁には駆動ねじ3が貫通するように挿入されている。この駆動ねじ3の外周には螺旋状の溝3aが形成されている。この溝3aとナット4aの溝4bによって螺旋状の空間25が形成される。この空間25内にボール4cが多数収納されている。ナット4aにはボール4cを回収するための通路26が形成されている。この通路26と空間25とはタング27によって連通するようになっている。
【0034】
つまり、
図2に示した電動機21の回転によって駆動ねじ3が矢印方向(反時計方向)に回転するとボールナット4のボール4cが空間25内を移動する。移動範囲内を移動完了したボール4cは回収のためのタング27から通路26を通って元の空間25に戻る。
【0035】
ナット4aの上部に取り付けられた架台23の上部には重り22が搭載されている。
図3では重り22を左右均等に搭載している。矢印で示すように、重り22によってナット4aとボール4cに対して加重28が上から加わることになる。
【0036】
図4は
図2の部分的な拡大断面図である。
【0037】
図4において、加重28が加わったボール4cが反時計方向に回転すると、駆動ねじ3の溝3aであるボール走行面に発生した凹凸面3bを押し潰しながら回転することになる。
【0038】
このように本実施例による平滑化処理では、実使用時に近い条件のもと平滑化処理を施すことができるため、潤滑材を用いることで平滑化処理時の駆動ねじの走行面の摩耗状態の進行のリスクを低減することができる。
【0039】
また、前記平滑化処理を施した駆動ねじ3を制御棒駆動機構1に取り付けることで、駆動ねじの走行面の摩耗による電動機に対するトルク増加を抑制することができる。
【実施例2】
【0040】
図5は本発明の実施例2に係る平滑化処理装置の縦断面図である。
【0041】
なお、実施例1と同一番号は同一物であるため、その説明は省略する。
【0042】
図5において、本実施例においては平滑化処理装置16を用いて、架台23に制御棒2の重量と中空ピストン10の重量の合計値と同程度の重り22を左右不均一に設置したものである。
【0043】
これにより、ボールナット4に実使用時と同程度の荷重をボールナット4の左右不均一に加え、潤滑材を駆動ねじとボールナット4の間に塗布した状態で平滑化処理を施すことになる。
【0044】
このように本実施例では、左右の荷重の比率を変化させることで、駆動ねじの走行面の平滑化される箇所が変化するため、左右の荷重の比率を変化させ複数回平滑化処理を行うことができる。したがって、幅広い駆動ねじの走行面を平滑化することができるので、本実施例においても実施例1の平滑化処理で生じる効果を得ることができる。
【実施例3】
【0045】
本実施例は
図1と共通であるため、
図2を例として説明する。
【0046】
本実施例は平滑化処理装置16を用いて、架台23に制御棒2の重量と中空ピストン10の重量の合計値よりも重い荷重をボールナット4に加えたものである。
【0047】
さらに、駆動ねじ3とボールナット4の摺動部に潤滑材を塗布した状態でボールナット4を所定の回数上下に昇降させることで駆動ねじ3の走行面を平滑化処理したものである。
【0048】
このように本実施例の平滑化処理によれば、駆動ねじ3の走行面を硬化させ、走行面の摩耗を低減できるので、本実施例においても実施例1の平滑化処理で生じる効果を得ることができる。
【実施例4】
【0049】
図6は本発明の実施例3に係る軸封型制御棒駆動機構の縦断面図である。
【0050】
図6において、本図に示した制御棒駆動機構29は
図1に示した制御棒駆動機構1とは構成が若干異なる。つまり、
図1に示した制御棒駆動機構1は上部と下部に侵入した冷却水がモータユニト8側に侵入しないように内側磁気継手13と外側磁気継手14とを完全に隔離した。しかし
図6の制御棒駆動機構29は電動機30により駆動される回転軸6に軸封パッキン31を装着して水密にシールされた軸封型の制御棒駆動機構29となっている。
【0051】
本実施例では、この軸封型の制御棒駆動機構29においても平滑化処理を行うことによって実施例1と同じ平滑化処理で生じる効果を得ることができる。
【0052】
次に、本発明による平滑化処理方法を
図7を使って説明する。
【0053】
図7は本発明に係る平滑化処理方法を説明するためのフロー図である。
【0054】
図7において、
(1)市販のボールナットを入手する(ステップ101)。
(2)平滑化が必要なボールナットを平滑化処理装置に組み込む(スッテプ102)。
(3)平滑化処理装置で駆動ねじの平滑化処理を行う(ステップ103)。
(4)平滑化処理完了(ステップ104)。
(5)面粗さが良好な場合は制御棒駆動機構の実機に組み込む(ステップ105)。
【0055】
以上ごとく本発明によれば、ボールナットを制御棒駆動機構の実機に組み込む前に平滑化処理を施すため、冷却水の環境の中でも駆動ねじの磨耗による電動機のトルク増加を抑制することができるものである。
【0056】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されたものではない。またある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、またある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。