【実施例】
【0033】
試料1
ポリプロピレンパウダー100重量部に、アミド系界面活性剤として、ミリスチリルジエタノールアミド(R
1=14)を0重量部、アミン系界面活性剤として、ステアリルジエタノールアミン(R
2=18)を0.15重量部、モノ脂肪酸グリセリドとして、グリセリンモノステアレート(R
3=18)を0.2重量部添加し、スーパーミキサーを用いて混合した。なお、ポリプロピレンパウダーの作製会社、品番、α−オレフィン単位、α−オレフィン種、メルトフローレート(MFR)は表1に記載の通りである。
【0034】
得られたポリプロピレン組成物を溶融混練してペレット化した後、逐次二軸延伸装置を用いて、MDに4倍、TDに10倍延伸して厚さ30μmとし、フィルム表面に30W・min/m
2のコロナ放電処理を施して、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0035】
得られたポリプロピレンフィルムの物性を以下の方法により測定または評価した。結果を表1に示す。
【0036】
(1)動摩擦係数(滑り性)
JIS−K7125に準じて、ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面の動摩擦係数を測定した。
本実施例では、動摩擦係数が0.10以上0.60以下の場合、滑り性が良好であり、0.20以上0.50以下の場合、滑り性がより良好であると評価した。
【0037】
(2)表面固有抵抗(帯電防止能)
ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面の表面固有抵抗値を、HEWLETT−PACKARD社製HIGH RESISTANCE METER−4339Bと、RESISTIVITY CELL−16008Bを用いて、温度23℃、湿度50%の雰囲気で測定した。
本実施例では、表面固有抵抗値が1.0×10
14Ω未満の場合、帯電防止能が良好であり、1.0×10
13Ω未満の場合、帯電防止能がより良好であると評価した。
【0038】
(3)低温印刷性
RKプリントコートインストルメンツ社製印刷および塗装装置−KPPと、KPP用標準版プレートDタイプを用いて、5℃の環境下でポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面へのグラビア印刷法による半調印刷を行った。印刷インキには、下記のインキを用いた。すなわち、ノントルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて2倍の顔料濃度となるように濃縮した後、さらに酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)を用いて、濃縮前の顔料濃度と同等かつインキ中における酢酸エチルの割合が50%を超えるように希釈調製したインクを用いた。なお、このインキ中には、酢酸エチルが58重量%含まれていた。
目視により印刷ムラの有無の検査を行うとともに、光学顕微鏡観察(40倍)による印刷ドットの形状観察、具体的には版深28μmにおけるドットのインキのはじきの程度の観察を行った。4段階の評価基準は下記のとおりである。また、
図1にも目視による印刷ムラの確認とドット形状の顕微鏡観察による各評価基準を示す。
◎:目視で印刷ムラが確認されず、顕微鏡によるドット観察でもインキのはじきが確認されない。
○:目視で若干ムラが確認されるが、ドット観察ではインクのはじきが確認されない。
△:部分的にムラが発生しており、ドット観察でもインキのはじきが確認される。
×:全面にムラが確認でき、ドット観察でインキのはじきが確認される。
本実施例では、◎の場合、低温印刷性が良好であり、○の場合、低温印刷性がより良好であると評価した。
【0039】
【表1】
【0040】
試料2〜23
アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤およびモノ脂肪酸グリセリドの含有量を表1に記載の値に変化させた以外は試料1と同様にしてポリプロピレンフィルムを得て、物性を測定または評価した。結果を表1に示す。
【0041】
試料31
試料6で得られたポリプロピレンフィルムについて、印刷インキとして、下記のインキを用いた以外は、試料1と同様にして低温印刷性を評価した。すなわち、ノントルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて2倍の顔料濃度となるように濃縮した後、さらに酢酸ノルマルプロピル(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)を用いて、濃縮前の顔料濃度と同等かつインキ中における酢酸ノルマルプロピルの割合が50%を超えるように希釈調製したインクを用いた。なお、このインキ中には、酢酸ノルマルプロピルが63重量%含まれていた。結果を表1に示す。
【0042】
試料32
試料6で得られたポリプロピレンフィルムについて、印刷インキとして、下記のインキを用いた以外は、試料1と同様にして低温印刷性を評価した。すなわち、ノントルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて60%以上の溶剤を除去することにより濃縮した後、さらに酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)ならびにイソプロピルアルコール(株式会社トクヤマ製、商品名「トクソーIPA」)とを1:1の割合で混合した溶剤を用いて、濃縮前の顔料濃度と同じになるよう希釈調製したインキを使用した。なお、このインキ中には、酢酸エチルが38重量%、イソプロピルアルコールが32重量%含まれていた。結果を表1に示す。
【0043】
試料33
試料20で得られたポリプロピレンフィルムについて、印刷インキとして、下記のインキを用いた以外は、試料1と同様にして低温印刷性を評価した。すなわち、トルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて60%以上の溶剤を除去することにより濃縮した後、さらに、トルエン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)ならびにメチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)とを2:1の割合で混合した溶剤を用いて、濃縮前の顔料濃度と同じになるよう希釈調製したインクを用いた。なお、このインキ中には、トルエンが53重量%、メチルエチルケトンが22重量%含まれていた。結果を表1に示す。
【0044】
試料42、43
用いたポリプロピレンパウダーを表1に記載のものとした以外は試料6と同様にしてポリプロピレンフィルムの物性を測定または評価した。結果を表1に示す。
【0045】
試料1〜試料8より、アミド系界面活性剤の含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して、0.03重量部より多く、0.3重量部未満の場合、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。
【0046】
試料9〜試料13より、アミン系界面活性剤の含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して、0.05重量部より多く、0.3重量部未満の場合、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。
【0047】
試料14〜試料23より、モノ脂肪酸グリセリドの含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して、0.05重量部より多く、1.1重量部未満の場合、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。
【0048】
試料6、試料20および試料31〜試料33より、インキに含まれる溶剤種が、ノントルエン系の酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合の場合、低温印刷性が良好であることが確認できた。
【0049】
試料6、試料42および試料43より、ポリプロピレンとして、プロピレン単独重合体を用いた場合(試料42)でも、α−オレフィン単位を1.2モル%とした場合(試料43)でも、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。