特許第6018910号(P6018910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6018910ポリプロピレン印刷体およびその製造方法
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  • 特許6018910-ポリプロピレン印刷体およびその製造方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018910
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン印刷体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20161020BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20161020BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08K5/20
   C08K5/17
   C08K5/103
   C08J5/18CES
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-285467(P2012-285467)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125612(P2014-125612A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】596104050
【氏名又は名称】サン・トックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 仁志
(72)【発明者】
【氏名】上田 直紀
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−084737(JP,A)
【文献】 特開平01−048833(JP,A)
【文献】 特開平08−020766(JP,A)
【文献】 特開平02−187441(JP,A)
【文献】 特開2003−268166(JP,A)
【文献】 特開昭48−054155(JP,A)
【文献】 特開平02−080488(JP,A)
【文献】 特開平06−009835(JP,A)
【文献】 特開2012−158677(JP,A)
【文献】 特開昭58−079044(JP,A)
【文献】 特開2002−146113(JP,A)
【文献】 特開平11−029666(JP,A)
【文献】 特開2003−292693(JP,A)
【文献】 特開2006−241351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08J 5/00−5/02
C08J 5/12−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン100重量部と、
下記一般式(1)で示されるアミド系界面活性剤0.04〜0.25重量部と、
下記一般式(2)で示されるアミン系界面活性剤0.1〜0.2重量部と、
下記一般式(3)で示されるモノ脂肪酸グリセリド0.1〜1.0重量部と、
を含むポリプロピレン組成物を有するポリプロピレンフィルム上に、酢酸エチルおよび酢酸ノルマルプロピルから選ばれる少なくとも1種を含むインキにて印刷がされているポリプロピレンフィルム印刷体
−CO−N(CHCHOH) (1)
−N(CHCHOH) (2)
【化1】
(ただし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わす。)
【請求項2】
ポリプロピレン100重量部と、
下記一般式(1)で示されるアミド系界面活性剤0.04〜0.25重量部と、
下記一般式(2)で示されるアミン系界面活性剤0.1〜0.2重量部と、
下記一般式(3)で示されるモノ脂肪酸グリセリド0.1〜1.0重量部と、
を含むポリプロピレン組成物を延伸してポリプロピレンフィルムを得る工程と、
得られたポリプロピレンフィルム上に、酢酸エチルおよび酢酸ノルマルプロピルから選ばれる少なくとも1種を含むインキにて印刷する工程を有するポリプロピレンフィルム印刷体の製造方法。
−CO−N(CHCHOH) (1)
−N(CHCHOH) (2)
【化2】
(ただし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り性および低温での印刷適性に優れたポリプロピレンフィルム、ポリプロピレンフィルム印刷体およびこれらの製造方法ならびにポリプロピレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、機械的強度、透明性、表面光沢、および化学安定性等の優れた物性を有するため、食品をはじめ、衣料、工業部品等、各種包装用素材として広く使用されている。
【0003】
一方で、このようなポリプロピレンフィルムは、化学的安定性のため表面エネルギーが小さく、静電気を帯び易く、また、10℃以下の低温での印刷適性に劣るという欠点がある。
【0004】
これに対し、例えば、特許文献1では、帯電防止能に優れる延伸ポリプロピレンフィルムを開発することを目的とした技術が開示されている。具体的には、α−オレフィン単位を0.3〜2モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体100重量部、所定のアミン系界面活性剤0.05〜0.5重量部、所定のアミド系界面活性剤0.3〜1.2重量部、及び所定のモノ脂肪酸グリセリド0.3〜2重量部からなるポリプロピレン組成物よりなる延伸ポリプロピレンフィルムが開示されている。しかし、特許文献1では、低温での印刷適性を向上させる技術については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−154286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の問題を解決すべくなされたものであり、滑り性が良好であり、なおかつ10℃以下の低温での印刷適性(低温印刷性)に優れたポリプロピレンフィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリプロピレンに特定の所定量の界面活性剤を組み合わせて含有させると、滑り性が良好であり、なおかつ低温印刷性に優れたポリプロピレンフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、下記事項を要旨として含む。
[1]ポリプロピレン100重量部と、
アミド系界面活性剤0.04〜0.25重量部と、
アミン系界面活性剤0.1〜0.2重量部と、
モノ脂肪酸グリセリド0.1〜1.0重量部と、
を含むポリプロピレン組成物を有するポリプロピレンフィルム。
[2]前記アミド系界面活性剤は下記一般式(1)で示され、
前記アミン系界面活性剤は下記一般式(2)で示され、
前記モノ脂肪酸グリセリドは下記一般式(3)で示される[1]に記載のポリプロピレンフィルム。
−CO−N(CHCHOH) (1)
−N(CHCHOH) (2)
【化1】
(ただし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わす。)
[3]前記[1]または[2]に記載のポリプロピレンフィルム上に、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、およびイソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種を含むインキにて印刷がされているポリプロピレンフィルム印刷体。
[4]ポリプロピレン100重量部と、
アミド系界面活性剤0.04〜0.25重量部と、
アミン系界面活性剤0.1〜0.2重量部と、
モノ脂肪酸グリセリド0.1〜1.0重量部と、
を含むポリプロピレン組成物。
[5]前記アミド系界面活性剤は下記一般式(1)で示され、
前記アミン系界面活性剤は下記一般式(2)で示され、
前記モノ脂肪酸グリセリドは下記一般式(3)で示される[4]に記載のポリプロピレン組成物。
−CO−N(CHCHOH) (1)
−N(CHCHOH) (2)
【化1】
(ただし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表わし、Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わす。)
[6]上記[4]または[5]に記載のポリプロピレン組成物を延伸してプロピレンフィルムを得る工程を有するポリプロピレンフィルムの製造方法。
[7]上記[6]に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法により得られたポリプロピレンフィルム上に、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、およびイソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種を含むインキにて印刷する工程を有するポリプロピレンフィルム印刷体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、滑り性が良好であり、なおかつ低温印刷性に優れたポリプロピレンフィルムを得ることができ、特に、本発明のポリプロピレンフィルム上に上記のインキにて印刷をした場合に低温印刷性の高さがより顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本実施例の低温印刷性評価の判定基準を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、主に包装用フィルムの基材として用いられる。本実施形態のポリプロピレンフィルムは無延伸であっても、一軸延伸であっても、二軸延伸であっても良いが、包装用途での作業性や外観の観点から二軸延伸が好ましい。また、前記包装用フィルムとしては、前記ポリプロピレンフィルムの片面または両面にヒートシール性を付与するヒートシール層を有したものも使用できる。ヒートシール層を構成する樹脂は、前記ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン樹脂よりも、融点が低いポリオレフィン系樹脂が使用できる。
【0012】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの厚みは特に制限されるものではないが、包装時の作業性の観点から、5〜250μmであることが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。
【0013】
前記ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンおよび所定の界面活性剤からなるプロピレン組成物を含む。前記ポリプロピレンのmmmm分率(ペンタッド分率)は、好ましくは0.85〜0.95である。mmmm分率を上記の範囲とすることにより、ポリプロピレンフィルムの製膜を可能とし、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好なポリプロピレンフィルムを得ることができる。また、mmmm分率が低すぎると、基材を構成するポリプロピレン組成物に添加した界面活性剤が、ヒートシール層にブリードしてしまい、前記ポリプロピレン組成物に特定の所定量の界面活性剤を添加する本実施形態の効果が得られないことがある。しかし、mmmm分率を上記の範囲とすることにより、ブリードを抑えることができ、本実施形態の効果を確実に得ることができる。上記の観点から、mmmm分率は、より好ましくは0.88〜0.94であり、さらに好ましくは0.90〜0.94である。
【0014】
また、前記ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体でもよく、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体でもよいが、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を用いるのが好ましい。これにより、界面活性剤のブリードを促進し、滑り性、帯電防止性を発現し易くすることができる。上記の観点から、α−オレフィン単位を0.1〜2モル%とすることが好ましく、0.1〜1.5モル%とすることがより好ましい。なお、α−オレフィンとしては、特に限定されないが、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、エチレンがより好ましい。
【0015】
本実施形態のポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR)が、0.5〜15g・10min−1であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10g・10min−1である。メルトフローレートが上記範囲より大きいと、溶融樹脂の粘度が低くなりすぎて、フィルム製膜が困難となる。一方、上記範囲未満では、溶融樹脂の押出し負荷が大きくなり、フィルムの製膜が困難となる。
【0016】
また、本実施形態のポリプロピレンは、昇温溶離分別法(TREF)におけるポリマーの結晶性分別測定において、20℃以下で溶出する非結晶性成分の割合が、0〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜10重量%である。これにより、非結晶性成分のブリードによるフィルム表面のベタつきを抑制することができる。
【0017】
本実施形態のポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン100重量部に対して、アミド系界面活性剤を0.04〜0.25重量部含む。アミド系界面活性剤を上記の範囲で含有することにより、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好なポリプロピレンフィルムを得ることができる。上記の観点から、ポリプロピレン100重量部に対して、アミド系界面活性剤を0.05〜0.24重量部含むことが好ましく、より好ましくは、0.06〜0.22重量部含む。
【0018】
本実施形態のアミド系界面活性剤は、好ましくは下記一般式(1)で示される。
−CO−N(CHCHOH) (1)
前記Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わす。Rの炭素数が上記の範囲であることにより、ペレットを製造する際の効率、樹脂との相溶性、印刷性、滑り性の発現が良好となる。上記の観点から、Rの炭素数は好ましくは14〜18である。
【0019】
本実施形態において、好適に使用されるアミド系界面活性剤としては、具体的にはミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、アラキジルジエタノールアミド、ヘンイコサルジエタノールアミンが挙げられ、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミドがより好ましく、これらの中から2種以上を選択して混合物として使用してもよい。
【0020】
本実施形態のポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン100重量部に対して、アミン系界面活性剤を0.1〜0.2重量部含む。アミン系界面活性剤を上記の範囲で含有することにより、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好なポリプロピレンフィルムを得ることができる。上記の観点から、ポリプロピレン100重量部に対して、アミン系界面活性剤を0.12〜0.2重量部含むことが好ましく、より好ましくは、0.12〜0.18重量部含む。
【0021】
本実施形態のアミン系界面活性剤は、好ましくは下記一般式(2)で示される。
−N(CHCHOH) (2)
前記Rは炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表わす。Rの炭素数が上記の範囲であることにより、ペレットを製造する際の効率、樹脂との相溶性、印刷性、滑り性の発現が良好となる。上記の観点から、Rの炭素数は好ましくは14〜20である。
【0022】
本実施形態において、好適に使用されるアミン系界面活性剤としては、具体的にはミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、アラキジルジエタノールアミン、ベヘルジエタノールアミンが挙げられ、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミンがより好ましく、これらの中から2種以上を選択して混合物として使用してもよい。
【0023】
本実施形態のポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン100重量部に対して、モノ脂肪酸グリセリドを0.1〜1.0重量部含む。モノ脂肪酸グリセリドを上記の範囲で含有することにより、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好なポリプロピレンフィルムを得ることができる。上記の観点から、ポリプロピレン100重量部に対して、モノ脂肪酸グリセリドを0.2重量部以上かつ0.3重量部未満含むことが好ましく、より好ましくは0.2〜0.25重量部含む。
【0024】
本実施形態のモノ脂肪酸グリセリドは、好ましくは下記一般式(3)で示される。
【化1】
【0025】
前記Rは炭素数11〜21の脂肪族炭化水素基を表わす。Rの炭素数が上記の範囲であることにより、ペレットを製造する際の効率、樹脂との相溶性、滑り性の発現が良好となる。上記の観点から、Rの炭素数は好ましくは14〜20である。
【0026】
本実施形態において、好適に使用されるモノ脂肪酸グリセリドとしては、具体的には、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリスチレート、グリセリンモノパルミチレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノアラキジレート、グリセリンモノベヘレートが挙げられ、グリセリンモノステアレートがより好ましく、これらの中から2種以上を選択して混合物として使用してもよい。
【0027】
本実施形態において、ポリプロピレン組成物には、上記各成分の他、必要に応じて、アミンエステル、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、核剤、抗菌剤等を適宜添加することができる。また、前記アミンエステルは、前記アミン系界面活性剤とモノ脂肪酸グリセリドが反応することによっても得られ、帯電防止性や滑り性の発現に寄与する。
【0028】
以下では、本実施形態のポリプロピレンフィルムの製造方法の一例として、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法を示す。
【0029】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法としては、例えば、Tダイ法またはインフレーション法等で成形したシートを逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法等の公知の方法で二軸延伸すれば良い。延伸倍率については特に限定するものではないが、熱収縮性や外観の観点から、長手方向で3〜7倍、幅方向で5〜15倍が好ましい。
【0030】
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面には、必要に応じて表面処理を施す。表面処理の方法は特に限定するものではないが、一般的に印刷インキとの密着性を向上させる目的でコロナ放電処理、火炎処理等を行っても構わない。また、表面処理を施す面も特に制限はなく、片面、両面のいずれでも構わない。
【0031】
本実施形態のポリプロピレンフィルム上への印刷方法は、特に限定されず、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷が挙げられ、表面処理された面に対して施す。インキは特に限定されないが、含まれる主溶剤がノントルエンのものを用いることが好ましい。ノントルエンとしては、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンなどが挙げられ、これらを2種以上混合して用いてもよい。これらの溶剤をインキの主溶剤として用いることにより、本実施形態のポリプロピレンフィルム上への低温印刷性の高さがより顕著になる。このような観点から、インキに含まれる主溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変できる。
【実施例】
【0033】
試料1
ポリプロピレンパウダー100重量部に、アミド系界面活性剤として、ミリスチリルジエタノールアミド(R=14)を0重量部、アミン系界面活性剤として、ステアリルジエタノールアミン(R=18)を0.15重量部、モノ脂肪酸グリセリドとして、グリセリンモノステアレート(R=18)を0.2重量部添加し、スーパーミキサーを用いて混合した。なお、ポリプロピレンパウダーの作製会社、品番、α−オレフィン単位、α−オレフィン種、メルトフローレート(MFR)は表1に記載の通りである。
【0034】
得られたポリプロピレン組成物を溶融混練してペレット化した後、逐次二軸延伸装置を用いて、MDに4倍、TDに10倍延伸して厚さ30μmとし、フィルム表面に30W・min/mのコロナ放電処理を施して、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0035】
得られたポリプロピレンフィルムの物性を以下の方法により測定または評価した。結果を表1に示す。
【0036】
(1)動摩擦係数(滑り性)
JIS−K7125に準じて、ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面の動摩擦係数を測定した。
本実施例では、動摩擦係数が0.10以上0.60以下の場合、滑り性が良好であり、0.20以上0.50以下の場合、滑り性がより良好であると評価した。
【0037】
(2)表面固有抵抗(帯電防止能)
ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面の表面固有抵抗値を、HEWLETT−PACKARD社製HIGH RESISTANCE METER−4339Bと、RESISTIVITY CELL−16008Bを用いて、温度23℃、湿度50%の雰囲気で測定した。
本実施例では、表面固有抵抗値が1.0×1014Ω未満の場合、帯電防止能が良好であり、1.0×1013Ω未満の場合、帯電防止能がより良好であると評価した。
【0038】
(3)低温印刷性
RKプリントコートインストルメンツ社製印刷および塗装装置−KPPと、KPP用標準版プレートDタイプを用いて、5℃の環境下でポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面へのグラビア印刷法による半調印刷を行った。印刷インキには、下記のインキを用いた。すなわち、ノントルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて2倍の顔料濃度となるように濃縮した後、さらに酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)を用いて、濃縮前の顔料濃度と同等かつインキ中における酢酸エチルの割合が50%を超えるように希釈調製したインクを用いた。なお、このインキ中には、酢酸エチルが58重量%含まれていた。
目視により印刷ムラの有無の検査を行うとともに、光学顕微鏡観察(40倍)による印刷ドットの形状観察、具体的には版深28μmにおけるドットのインキのはじきの程度の観察を行った。4段階の評価基準は下記のとおりである。また、図1にも目視による印刷ムラの確認とドット形状の顕微鏡観察による各評価基準を示す。
◎:目視で印刷ムラが確認されず、顕微鏡によるドット観察でもインキのはじきが確認されない。
○:目視で若干ムラが確認されるが、ドット観察ではインクのはじきが確認されない。
△:部分的にムラが発生しており、ドット観察でもインキのはじきが確認される。
×:全面にムラが確認でき、ドット観察でインキのはじきが確認される。
本実施例では、◎の場合、低温印刷性が良好であり、○の場合、低温印刷性がより良好であると評価した。
【0039】
【表1】
【0040】
試料2〜23
アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤およびモノ脂肪酸グリセリドの含有量を表1に記載の値に変化させた以外は試料1と同様にしてポリプロピレンフィルムを得て、物性を測定または評価した。結果を表1に示す。
【0041】
試料31
試料6で得られたポリプロピレンフィルムについて、印刷インキとして、下記のインキを用いた以外は、試料1と同様にして低温印刷性を評価した。すなわち、ノントルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて2倍の顔料濃度となるように濃縮した後、さらに酢酸ノルマルプロピル(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)を用いて、濃縮前の顔料濃度と同等かつインキ中における酢酸ノルマルプロピルの割合が50%を超えるように希釈調製したインクを用いた。なお、このインキ中には、酢酸ノルマルプロピルが63重量%含まれていた。結果を表1に示す。
【0042】
試料32
試料6で得られたポリプロピレンフィルムについて、印刷インキとして、下記のインキを用いた以外は、試料1と同様にして低温印刷性を評価した。すなわち、ノントルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて60%以上の溶剤を除去することにより濃縮した後、さらに酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)ならびにイソプロピルアルコール(株式会社トクヤマ製、商品名「トクソーIPA」)とを1:1の割合で混合した溶剤を用いて、濃縮前の顔料濃度と同じになるよう希釈調製したインキを使用した。なお、このインキ中には、酢酸エチルが38重量%、イソプロピルアルコールが32重量%含まれていた。結果を表1に示す。
【0043】
試料33
試料20で得られたポリプロピレンフィルムについて、印刷インキとして、下記のインキを用いた以外は、試料1と同様にして低温印刷性を評価した。すなわち、トルエン系インキをロータリーエバポレーターを用いて60%以上の溶剤を除去することにより濃縮した後、さらに、トルエン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)ならびにメチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級グレード)とを2:1の割合で混合した溶剤を用いて、濃縮前の顔料濃度と同じになるよう希釈調製したインクを用いた。なお、このインキ中には、トルエンが53重量%、メチルエチルケトンが22重量%含まれていた。結果を表1に示す。
【0044】
試料42、43
用いたポリプロピレンパウダーを表1に記載のものとした以外は試料6と同様にしてポリプロピレンフィルムの物性を測定または評価した。結果を表1に示す。
【0045】
試料1〜試料8より、アミド系界面活性剤の含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して、0.03重量部より多く、0.3重量部未満の場合、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。
【0046】
試料9〜試料13より、アミン系界面活性剤の含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して、0.05重量部より多く、0.3重量部未満の場合、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。
【0047】
試料14〜試料23より、モノ脂肪酸グリセリドの含有量が、ポリプロピレン100重量部に対して、0.05重量部より多く、1.1重量部未満の場合、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。
【0048】
試料6、試料20および試料31〜試料33より、インキに含まれる溶剤種が、ノントルエン系の酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合の場合、低温印刷性が良好であることが確認できた。
【0049】
試料6、試料42および試料43より、ポリプロピレンとして、プロピレン単独重合体を用いた場合(試料42)でも、α−オレフィン単位を1.2モル%とした場合(試料43)でも、滑り性および低温印刷性が良好であり、なおかつ帯電防止能が良好であることが確認できた。
図1