【実施例1】
【0025】
以下、本発明に係る魚掴み器の実施例を図に基づき説明する。図において、魚掴み器1は、釣り人が片手で握る握り部2と、この握り部2から先方(前方)へ延びた本体ベース部3と、本体ベース部3には、回動可能に配置され相互挟持動作にて魚の口部を挟持する第1及び第2の挟持部5A、5Bをそれぞれ先端に形成した一対の挟持部材(挟持アームともいう)4A、4Bと、前進操作可能に本体ベース部3に配置され後退にて挟持部5A、5B相互が閉じ前進にて挟持部5A、5B相互が開くように一対の挟持部材4A、4Bを作動する作動部材6と、挟持部5A、5B相互が閉じるように作動部材6を後退位置に保持するよう付勢するバネ部材7を備え、作動部材6は前方へ押す操作部20を備えている。片方の手で握り部2を握った状態で、その手の親指で操作部20をバネ部材7のバネ力に抗して前進操作することに伴い、作動部材6が前進して挟持部5A、5B相互の開度が大きくなり、操作部20から親指を離すことにより、バネ部材7のバネ力により作動部材6が後退して挟持部5A、5B相互が閉じる構成である。握り部2は別名、グリップ2と称する。
【0026】
この魚掴み器1の挟持部5A、5Bは、魚の口部を挟持することによって魚を掴む部分であるが、実質的に掴むこととなる魚の部分は、魚の顎の部分であり、通常は魚の下顎部を挟持部5A、5Bによって挟持することにより、魚を安定して掴むことができる。
【0027】
この魚掴み器1の構成を更に具体的に説明する。魚掴み器1は、通常の操作として、釣り竿で吊り上げられて釣り糸にぶら下がった魚の下顎目掛けて挟持部5A、5Bを近づける操作を行なう場合、挟持部5A、5Bが上下位置関係においてその操作が行なわれる。このため、挟持部5A、5Bが上下位置関係になる状態を基準として、以下、魚掴み器1の各部の配置関係を具体的に説明することとする。なお、
図2、
図3、
図5、
図6、
図8、
図9は、各部の動作を認識し易くするために、本体ベース部材3Aを透視した状態で図示している。
【0028】
実施例では、本体ベース部3は、握り部2から先方(前方)へ向けて所定の間隔Tを保った状態で左右並行配置の本体ベース部材3A、3Bにて構成され、左側の第1本体ベース部材3Aと右側の第2本体ベース部材3Bの対向面(内側面)はそれぞれ平面状をなし、第1本体ベース部材3Aと右側の第2本体ベース部材3Bは、所定間隔Tを保って略平行配置である。また、上下一対の第1の挟持部材4Aと第2の挟持部材4Bは、本体ベース部材3A、3B間に同軸にて回動可能に軸支されるために、本体ベース部材3A、3Bに亘る横方向軸8に回動可能に支持されている。軸8の部分は、
図8に拡大で示すように、軸8の大径部にワッシャ部材WSを挟んで挟持部材4A、4Bが回動可能に支持された状態であり、軸8の大径部にて本体ベース部材3A、3Bが所定の間隔Tに保持され、本体ベース部材3A、3Bを貫通した軸8の小径部8Sにネジ8Nが螺合することによって、この部分が組み立てられている。本体ベース部材3A、3Bは平板状であるが、これに限定されず、外面は弧状、多角形状等にて外観デザインを向上させてもよい。
【0029】
また、挟持部材4A、4Bに連結された作動部材6は、本体ベース部材3A、3B間に配置され、手動操作に伴って直線的に前進後退運動をする直線作動部材6Aと、後部が直線作動部材6Aの前部に回動可能に連結された上下一対の第1及び第2の回動作動部材6B、6Cにて構成されている。この直線作動部材6Aは、本体ベース部材3A、3Bの対向面に前後方向に直線状に形成した直線状ガイド溝9に案内されて前後方向に動くように、直線作動部材6Aの左右両側に横方向に突出した前後配置のガイドピン10が直線状ガイド溝9に前後移動可能に嵌合している。直線状ガイド溝9は、本体ベース部材3A、3Bの一方に形成してもよいが、実施例では本体ベース部材3A、3Bの両方に対向位置に形成している。バネ部材7は、直線作動部材6Aが後退位置に保持されるように、本体ベース部材3A、3B間に取り付けられている。
【0030】
また、下側の第1の回動作動部材6Bは、後部が直線作動部材6Aの前部に軸11Aにて回動可能に連結され、上側の第2の回動作動部材6Cは、後部が直線作動部材6Aの前部に軸11Bにて回動可能に連結されている。第1の回動作動部材6Bは、本体ベース部材3A、3Bのうちの一方または両方(実施例では左側の本体ベース部材3A)に斜め下方溝にて形成した第1ガイド部12Aに沿って移動する第1ガイドピン13Aを前部に備えると共に、第1の挟持部材4Aの後部に長孔にて形成したガイド孔14Aに沿って移動する第2ガイドピン15Aを中間部に備えている。また、第2の回動作動部材6Cは、本体ベース部材3A、3Bのうちの一方または両方(実施例では右側の本体ベース部材3B)に斜め上方溝にて形成した第2ガイド部12Bに沿って移動する第1ガイドピン13Bを前部に備えると共に、第2の挟持部材4Bの後部に長孔にて形成したガイド孔14Bに沿って移動する第2ガイドピン15Bを中間部に備えている。
【0031】
直線作動部材6Aの後部には、握り部2に近接して本体ベース部材3A、3B間から上方へ突出した押圧操作部(プッシュレバーともいう)20を備え、片方の手で握り部2を握った状態で、その手の親指で操作部20をバネ部材7のバネ力に抗して前方へ押す前進操作に伴って、挟持部5A、5B相互の開度が大きくなる。このようにバネ部材7のバネ力に抗して親指で操作部20を前進操作することとなるが、その場合、下部に固定指掛け部(トリガともいう)21を備えれば、その前進操作を更にし易くすることができる。具体的には、操作部20に対応して本体ベース部材3A、3Bのうちの一方または両方に固定された固定指掛け部(トリガともいう)21を備える構成とする。図示の実施例では、固定指掛け部21は、それぞれ並行配置の本体ベース部材3A、3Bの間に取り付け部21Aを挿入した状態で、下部に設けた各結合孔24を利用してネジ29にて固定した構成である。固定指掛け部21の取り付け部21Aは、前記所定の間隔Tと同じ厚さに形成されているため、取り付け部21Aが本体ベース部材3A、3B間に挿入された状態で、ネジ29による固定指掛け部21の取り付けによって、本体ベース部材3A、3Bが所定の間隔Tを保つこととなる。本体ベース部材3A、3Bが安定して所定の間隔Tを保つためには、他の部分でも、本体ベース部材3A、3B間に所定の間隔Tを保つスペーサを介在させた状態で、その部分をネジにより締め付ける部分を形成してもよい。
【0032】
操作部20は、直線作動部材6Aの一部分であり、実施例では、操作部20を直線作動部材6Aに取り付けた構成としている。押圧操作のし易さを考慮して、操作部20の上端には、親指で押し易い形状に形成した合成樹脂製の押圧部20Pを備えており、操作部20の取り付け基部20Aと直線作動部材6Aとは、この両者に形成した結合孔23を利用してネジ又は鳩目等にて固定した構成である。この場合、取り付け基部20Aの上下幅と直線作動部材6Aの上下幅が同一に形成されており、
図15に示すように、取り付け基部20Aは、直線作動部材6Aを挟む構成でもって、結合孔23にてネジ又は鳩目等にて固定している。なお、操作部20は、直線作動部材6Aと一体に形成したものであっても差し支えない。
【0033】
また、バネ部材7は、円筒形状に巻回されたコイルスプリングであり、コイルスプリング7の後端が操作部20の前部の保持部27にて保持され、コイルスプリング7の前端は、本体ベース部材3A、3Bに対向位置に形成した窪み26に保持されたスプリングホルダ22にて保持されており、直線作動部材6Aを後退位置に付勢している。このようにスプリングホルダ22が本体ベース部材3A、3B間に保持された状態で、本体ベース部材3A、3Bが所定の間隔Tを保つように、スプリングホルダ22の厚さが設定されている。この状態は、
図8に拡大図で示している。
【0034】
上記のように、本体ベース部材3A、3Bは、所定の間隔Tを保つように組み合わされている。すなわち、本体ベース部材3A、3Bの前部では、上記のように軸8の大径部にて本体ベース部材3A、3Bが所定の間隔Tに保持され、また、本体ベース部材3A、3Bの後部は、上記のように結合孔24にて取り付ける固定指掛け部21の厚さと、スプリングホルダ22の厚さによって、所定の間隔Tを保っている。
【0035】
なお、握り部2を本体ベース部材3A、3Bに取り付ける結合孔25の部分(本体ベース部材3A、3Bの後端部と握り部2の先端部を連結する連結部分)でも、本体ベース部材3A、3Bが所定の間隔Tに保持されるようにするために、握り部2の一部分に所定の間隔Tに相当する厚さに形成された連結部2Aが握り部2の先端部分に形成されており、
図16に示すように、この連結部2Aが本体ベース部材3A、3B間に進入した状態で、本体ベース部材3A、3Bの結合孔25を利用してネジ28にて固定する構成である。
【0036】
上記の構成において魚を掴む操作について説明する。操作部20を前進操作する前の初期状態は
図2に示す。この状態において、直線作動部材6Aは、バネ部材7にて握り部2の方向へ付勢され後退位置に保持されている。この後退位置は、
図2に示すように挟持部5A、5B相互が当接したときの位置、即ち、挟持部5A、5B相互が閉じたときの位置である。
【0037】
この状態は、
図2に示すように、第1及び第2の回動作動部材6B、6Cは、直線作動部材6Aによって後退位置へ引っ張られていて、第1の回動作動部材6Bの第1ガイドピン13Aは、対応する第1ガイド部12Aの初期位置へ後退し、且つ第2ガイドピン15Aがガイド孔14Aの初期位置へ後退している。また、第2の回動作動部材6Cの第1ガイドピン13Bは、対応する第2ガイド部12Bの初期位置へ後退し、且つ第2ガイドピン15Bがガイド孔14Bの初期位置へ後退している。この状態で挟持部5A、5B相互が閉じた状態を保持している。
【0038】
この状態において、片方の手で握り部2を握り、その手の人差し指をピストルの引き金を引くような形で固定指掛け部21の前側に掛けた状態で、その手の親指を押圧部20Pに当てて、操作部20をバネ部材7のバネ力に抗して前方へ押すよう前進操作する。この操作は、握り部2を握った手の人差し指にて固定指掛け部21を手前に引く作用と、その手の親指で押圧部20Pによって操作部20を前方へ押す作用とが同時に行われることとなり、バネ部材7のバネ力に抗して操作部20を前方へ押す操作が容易となる。
【0039】
この操作部20の前進操作によって、ガイドピン10が直線状ガイド溝9に案内されつつ直線作動部材6Aが前進し、その前進に伴って、第1の回動作動部材6Bの第1ガイドピン13Aは、対応する第1ガイド部12Aに沿って初期位置から前進し、且つ第2ガイドピン15Aがガイド孔14Aに沿って初期位置から前進する動作が、軸11Aを中心とした第1の回動作動部材6Bの回動によって得られる。これと同時に、第2の回動作動部材6Cの第1ガイドピン13Bは、対応する第2ガイド部12Bに沿って初期位置から前進し、且つ第2ガイドピン15Bがガイド孔14Bに沿って初期位置から前進する動作が、軸11Bを中心とした第2の回動作動部材6Cの回動によって得られる。この一連の動作によって、第1の回動作動部材6B及び第2の回動作動部材6Cが回動しつつ直線作動部材6Aと共に前進し、第1及び第2の挟持部材4A、4Bが軸8を中心として回動することにより、挟持部5A、5B相互が徐々に開く。この途中の状態を
図5に示す。この
図5の状態から更に操作部20を前進操作することによって、
図8に示すように、挟持部5A、5B相互が最大に開く。
【0040】
常時バネ部材7のバネ力によって挟持部5A、5B相互が閉じるように、直線作動部材6Aがバネ部材7にて握り部2の方向へ後退するように付勢されているため、
図5のように挟持部5A、5B相互が途中まで開いた状態、または
図8のように挟持部5A、5B相互が最大に開いた状態のいずれにおいても、その状態から操作部20を押していた親指を押圧部20Pから離せば、バネ部材7のバネ力によって直線作動部材6Aが後退し、その作用が第1の回動作動部材6Bを介して第1の挟持部材4Aに伝達され、且つ、第2の回動作動部材6Cを介して第2の挟持部材4Bに伝達され、それによって、
図2に示すように、挟持部5A、5B相互が当接して挟持部5A、5B相互が閉じた状態に復帰する。
【0041】
このため、釣り竿で釣り上げている状態の魚の口を目掛けて挟持部5A、5Bを近づけつつ、操作部20を前方へ押して素早く
図8に示すように最大に開き、この開いた挟持部5A、5Bのうちの一方を魚の口中に差し込んだ状態で、操作部20を押していた親指を押圧部20Pから離せば、上記のように、バネ部材7のバネ力によって直線作動部材6Aが後退し、その作用にて挟持部5A、5B相互が閉じる方向へ作動するため、挟持部5A、5B相互によって魚の口を挟持すること、通常は魚の下顎を挟持することができる。この状態で、釣り針を魚の口から外すことができる。
【0042】
このように、後退方向へバネ部材7にて付勢された直線作動部材6Aが、一対の回動作動部材6B、6Cを介して一対の挟持部材4A、4Bに連結され、直線作動部材6Aの前進後退運動に応じて挟持部5A、5B相互を開く動作と閉じる動作を行なうように一対の挟持部材4A、4Bを回動するため、直線作動部材6Aを前進させる操作によって一対の挟持部材4A、4Bを回動するための伝達がスムースになり、速やかに魚の口部を挟むことができる動作が得られ、釣り上げた魚を逃がす事態が生じ難くなり、操作のし易い魚掴み器となる。
【0043】
上記のように、片方の手で握り部2を握った状態で、その手の親指で操作部20を前方へ押すことにより、魚の口を掴み易くなるまで挟持部5A、5B相互を大きく開くことが必要であるが、操作部20を前方へ押す距離(長さ)は、この魚掴み器1の使用者の手の大きさによって多少の差異はあるが、多くの使用者に使い易くするためには、操作部20を前方へ押す距離(長さ)をある程度の範囲に設定することが好ましい。このため、操作部20を前方へ押す距離(長さ)を例えば20mmに設定した場合には、その範囲で
図8に示すように挟持部5A、5B相互が最大に開くことが要求される。この目的達成のために、挟持部5A、5B相互が閉じた
図2の状態から挟持部5A、5B相互が若干開いた
図5の状態までは、操作部20の前進距離に比例して、挟持部5A、5B相互が徐々に開くようにし、
図5のようにある程度開いた時点からは、急激に最大開度となるように構成している。即ち、操作部20が同一長さを進むときの挟持部5A、5B相互の開く度合いが、最初は遅く途中から急激に速くなる2段階構成である。
【0044】
このための具体的な構成として、
図3、
図4等に示すように、第1ガイド部12A及び第2ガイド部12Bは、それぞれ前端部が互いに近づく方向へ屈曲した屈曲ガイド部12A1及び12B1を形成している。また、ガイド孔14A及び14Bも、それぞれ前端部が互いに近づく方向へ屈曲した屈曲ガイド部14A1及び14B1を形成している。この構成によって、
図5の状態から更に操作部20を前進操作することによって、第1の回動作動部材6Bの第1ガイドピン13Aは、対応する第1ガイド部12Aの屈曲ガイド部12A1の前端に当接し、且つ第2ガイドピン15Aがガイド孔14Aの屈曲ガイド部14A1に進入する。これと同時に、第2の回動作動部材6Cの第1ガイドピン13Bは、対応する第2ガイド部12Bの屈曲ガイド部12B1の前端に当接し、且つ第2ガイドピン15Bがガイド孔14Bの屈曲ガイド部14B1に進入する。この一連の動作によって、挟持部5A、5B相互の開度が最大となる。この状態を
図8〜
図10に示す。
【0045】
上記のように、挟持部5A、5B相互が開く度合いを2段階構成とすることによって、操作部20の前進距離が短くても、魚の口を掴み易くなるまで挟持部5A、5B相互を大きく開くことが可能となる。また、魚の口を掴んだ状態では、挟持部5A、5B相互が若干開いた状態(
図5の状態よりも挟持部5A、5B相互の開度が小さい状態)であるが、常時バネ部材7のバネ力によって挟持部5A、5B相互が閉じる方向に付勢された状態である。この状態で魚が暴れて、挟持部5A、5B相互が開く方向に引っ張られても、挟持部5A、5B相互がそれ以上開かないようにしなければならない。
図5を参照すれば、挟持部5A、5B相互が魚の口を掴んだ状態では、第1ガイドピン13A、13Bがそれぞれ対応する屈曲ガイド部12A1、12B1に到達していない状態である。このため、魚が暴れて挟持部5A、5B相互が開く方向に引っ張られたとき、その作用によって、第2ガイドピン15Aがガイド孔14Aの側壁によって下方へ押されるため、第1ガイドピン13Aが第1ガイド部12Aの下側側壁に押圧される。これと同時に、第2ガイドピン15Bがガイド孔14Bの側壁によって上方へ押されるため、第1ガイドピン13Bが第1ガイド部12Bの上側側壁に押圧される。このような動作によって直線作動部材6Aが後退する動きが阻止され、挟持部5A、5B相互によって魚の口を掴んだ状態が維持される。
【0046】
図示の実施例では、挟持部材4A、4Bの先端部の挟持部5A、5Bは、挟持部材4A、4Bの先端部に別部材を取り付けた構成としている。これは、
図8に拡大で示すように、挟持部材4A、4Bが軸8の部分で重なって保持されているため、先端部の挟持部5A、5Bがその厚さ部分の全体で当接するように補正するためと、更に、挟持部5A、5Bに十分な厚さを持たせるためである。挟持部5A、5Bの厚さが薄い場合は、魚の口、具体的には下顎を挟持したとき、その下顎に挟持部5A、5Bが食い込んで、下顎が破れる虞があるため、
図2に拡大で示すように、それぞれ十分な厚さを持たせた挟持部5A、5Bを構成する別部材を、挟持部材4A、4Bにネジ又は鳩目38にて取り付けている。なお、挟持部材4A、4Bの先端部を十分な厚さの形状とし、
図2に拡大で示すような相互に対等な当接が得られれば、挟持部5A、5Bを挟持部材4A、4Bと一体部品でもって構成することができる。
【0047】
また、操作部20は、直線作動部材6Aと操作部20に形成した結合孔23を利用してネジ固定した構成であるが、直線作動部材6Aと一体に操作部20を形成したものであっても差し支えない。また、ガイドピン10は、実質的に直線作動部材6Aから左右両側に水平方向に突出した形態であればよいため、直線作動部材6Aのみから水平方向に突出した形態であってもよく、また、直線作動部材6Aの一部をなす操作部20の取り付け基部20Aから左右両側に水平方向に突出した形態であってもよい。
【0048】
図示の実施例では、第1の回動作動部材6Bと第2の回動作動部材6Cは、直線作動部材6Aの先端部に上下対称位置に軸11A、11Bにて回動可能に連結しているが、魚が暴れて挟持部5A、5B相互が開く方向に引っ張られても挟持部5A、5B相互がそれ以上開かないようにできれば、第1の回動作動部材6Bと第2の回動作動部材6Cは、直線作動部材6Aの先端部に同軸にて回動可能に連結した構成でもよい。
【0049】
上記実施例では、第1及び第2の挟持部材4A、4Bは、本体ベース部材3A、3B間に同じ軸8に軸支される構成であるが、上記のように挟持部5A、5Bを開閉できるならば、これに限定されず、第1及び第2の挟持部材4A、4Bは、本体ベース部材3A、3B間において、それぞれ別個の軸に回動可能に支持される構成でもよい。
【0050】
上記のように、閉じている挟持部5A、5Bを釣り竿で釣り上げている状態の魚の口を目掛けて近づけつつ、操作部20を前方へ押して素早く
図8に示すように最大に開き、この開いた挟持部5A、5Bのうちの一方を魚の口中に差し込んだ状態で、操作部20を押していた親指を押圧部20Pから離すことにより、バネ部材7のバネ力によって挟持部5A、5B相互が閉じる方向へ作動し、魚の下顎を挟持することができる。しかし、釣り竿で釣り上げている状態の魚が暴れたときには、開いた挟持部5A、5Bのうちの一方を魚の口中に差し込むことがなかなかできず、その時間中、親指にて操作部20を押し続けなければならない。このような場合に対処するために、挟持部5A、5Bが
図8に示すように大きく開いた状態(厳密に最大に開いた状態でなく最大に近い状態でもよいため、これを実質的に最大に開いた状態と表現する)に保持する開状態保持装置30を設けている。
【0051】
この開状態保持装置30は、第1及び第2挟持部材4A、4Bの挟持部5A、5B相互が実質的に最大に開く位置へ直線作動部材6Aが前進したとき、直線作動部材6Aの後退を阻止する阻止位置へバネ32のバネ力にて進出して、直線作動部材6がバネ部材7のバネ力によって後退することを阻止するストッパ31を有する。このストッパ31は、挟持部5A、5B相互が実質的に最大に開く状態に至る前は、この阻止位置から退避した状態である。
【0052】
この開状態保持装置30の具体的な構成を
図13乃至
図16に基づき説明する。
図13乃至
図16において、ストッパ31は、第1及び第2本体ベース部材3A、3Bのそれぞれの対向面の下端部に形成した上下に長い収容凹部33に左右両側が収容され、第1及び第2本体ベース部材3A、3Bを貫通した上下に長いガイド溝34に案内されるようにガイド部35が左右に突出形成されている。コイルバネ32は、下部が固定指掛け部21内の収容部21Bに収容され、上部がストッパ31の収容部31Bに収容され、常時、ストッパ31を上方へ付勢している。ストッパ31のガイド部35の外側端には、それぞれ第1及び第2本体ベース部材3A、3Bの外側面に沿って配置した阻止解除操作部36がネジ37によって取り付けられている。
【0053】
この構成によって、ストッパ31は、コイルバネ32にて上方へ付勢され、第1及び第2本体ベース部材3A、3B間において上下動可能に支持されており、挟持部5A、5Bが
図8に示すように実質的に最大に開く状態に至る前の状態では、
図13及び
図15に示すように、ストッパ31の上面は直線作動部材6Aの下面に当接した後退位置である。この状態で、操作部20を前方へ押して直線作動部材6Aが前進する間は、ストッパ31の上面と直線作動部材6Aの下面はスライド接触状態である。
【0054】
そして、更に直線作動部材6Aが前進して、挟持部5A、5Bが
図8に示すように最大に開いた状態に至ると、直線作動部材6Aによるストッパ31の上面の押さえが開放され、ストッパ31はコイルバネ32によって直線作動部材6Aの後面に対向する上方位置へ進出する。この時点で、操作部20を前方へ押す操作を止めれば、直線作動部材6Aはバネ部材7のバネ力によって初期位置へ後退しようとするが、その後退はストッパ31によって阻止される。このように、挟持部5A、5Bが
図8に示すように実質的に最大に開いた状態で、ストッパ31は直線作動部材6Aの後退を阻止する阻止位置へバネ32のバネ力にて進出し、操作部20を前方へ押す操作を止めても、挟持部5A、5Bが
図8に示すように実質的に最大に開いた状態を保持する。
【0055】
この状態で、挟持部5A、5Bのうちの一方を魚の口中に差し込んだとき、親指等によって阻止解除操作部36をバネ32のバネ力に抗して下方へ押し、ストッパ31を直線作動部材6Aの後面との対向位置よりも下方へ移動して、前記阻止位置から退避させることにより、直線作動部材6Aはバネ部材7のバネ力によって初期位置へ向けて後退する。この動作によって、瞬時に挟持部5A、5Bが魚の口中、具体的には魚の下顎を挟持するように作動する。
【0056】
上記の構成では、ストッパ31による直線作動部材6Aの後退阻止は、直線作動部材6Aの後面がストッパ31に当接して達成されるが、この構成に替えて、直線作動部材6Aの下面の後部にストッパ31が侵入する係止凹部を形成し、挟持部5A、5Bが
図8に示すように最大に開いた状態で、ストッパ31がこの係止凹部に侵入する構成でもよい。
【0057】
なお、開状態保持装置30を使用する状態(作動する状態)と、使用しない状態(作動しない状態)とを、選択できる選択機構を設け、使用者がこの選択機構によって、開状態保持装置30を作動可能状態とするか、作動しない状態にするかを選択できるようにすることもできる。なお、開状態保持装置30をオプション機能とすることにより、魚掴み器1は、この機能を備えた特別機種と、この機能を備えない通常機種とに区分した品揃えができる。
【0058】
なお、
図2に示すように、直線作動部材6Aが前進後退運動をする直線の延長線PLに対して、握り部2の軸線NLが角度αで交差するように、握り部2が固定指掛け部21側へ変位した配置である。これによって、片方の手で握り部2を握ったとき、その手は角度αの分だけ上向きになるため、その手の人差し指を固定指掛け部21に掛け、その手の親指で操作部20を前進操作する場合に、手首への負担が軽減され、操作がし易くなる。
【0059】
本発明では、挟持部5A、5B相互によって魚を掴んだ状態で、魚が暴れることによって本体ベース部材3(3A、3B)に所定値以上の回転方向の作用力が作用したとき、握り部2を握った手の負担を少なくし、且つ、先端に一対の挟持部5A、5Bを備えた一対の挟持部材4A、4Bに変形が生じないようにするために、握り部2に対して本体ベース部材3(3A、3B)が回転可能となる構成を採用している。
【0060】
上記のように、開いた状態の挟持部5A、5Bを魚の口を目掛けて前進させる際に、操作部20の操作性と、魚の口を挟持することに適した好ましい方向性を以って前進させることが重要である。特に本発明では、本体ベース部材3が並列配置の本体ベース部材3A、3Bで構成されているため、握り部2を握った方の片手の親指で操作部20を操作する関係から、その方向性を維持することが重要となる。このため、握り部2に対して本体ベース部3が殆んど抵抗なく自由に回転する構成であれば、この方向性を保つことが難しく、片方の手で握り部2を握った状態で他方の手で、挟持部5A、5Bが好ましい方向になるように本体ベース部3を回転操作して維持する必要が生じ、片手操作であるべき魚掴み器が両手操作となり好ましくない。
【0061】
そこで本発明では、開いた状態の挟持部5A、5Bを魚の口を目掛けて前進させる際には、挟持部5A、5Bの方向性が維持でき、挟持部5A、5B相互によって魚を掴んだ状態で魚が暴れたときは、握り部2に対して本体ベース部3を回転可能に連結するジョイント2Jを備えた構成とする。そして、特に、本発明では、本体ベース部3に所定値以上の回転方向の作用力が作用するまで、握り部2に対して本体ベース部3が回転しないように保持する作用をする制動装置をジョイント2Jに備えた構成としている。以下、この構成について記載する。
【0062】
図16乃至
図18に示すように、握り部2の先端部分の中央部には、握り部2と本体ベース部3とを連結する連結部分として、本体ベース部材3A、3B間の間隔Tに相当する厚さに形成された連結部2Aを備えている。この連結部2Aが本体ベース部材3A、3B間に進入した状態で、本体ベース部材3A、3Bの結合孔25を利用して結合ネジ28にて固定する構成である。結合ネジ28は、その胴部が本体ベース部材3Bの結合孔25と連結部2Aの貫通孔を貫通して、本体ベース部材3Aの結合孔25に形成したネジ部に螺合することにより、連結部2Aと本体ベース部材3A、3Bが一体化し、握り部2と本体ベース部3が連結される。
【0063】
上記のように、握り部2に対して本体ベース部3に所定値以上の回転方向の作用力が働いたとき、握り部2に対して本体ベース部3を回転可能に連結するための連結部材としてジョイント2Jが握り部2内に収容されている。ジョイント2Jは、本体ベース部3と一体化するための連結部2Aを備えた円筒状の合成樹脂製の第1ジョイント部材2J1と、第1ジョイント部材2J1と一体化するように組み合わせた円柱状の金属製の第2ジョイント部材2J2と、第2ジョイント部材2J2に対して回転可能に取り付けた円筒状の金属製の第3ジョイント部材2J3と、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との間に所定の圧縮状態に保持されたコイルバネ2Sとを備えている。
【0064】
このようにコイルバネ2Sが圧縮状態に保持されことにより生じるコイルバネ2Sの反発作用力が、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3とに掛かる。これによって、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3とは自由に相互回転がし難い状態になるため、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3とが相互回転を開始するためには、このコイルバネ2Sの反発作用力に打ち勝った作用力が働いたとき、即ち、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との間に所定値以上の回転方向の作用力が働いたときのみ、この相互回転が可能となる。このようにコイルバネ2Sの反発作用力が付与される装置が制動装置であり、この制動装置が、後述のように、本体ベース部3に所定値以上の回転方向の作用力が働くまで握り部2に対して本体ベース部3が回転しない制動作用をつかさどる機能を有することとなる。
【0065】
このような制動機能を有する制動装置を備えたジョイント2Jは、上記のように、握り部2内に収容された構成であるため、握り部2を小型化できるものとなる。
【0066】
第1ジョイント部材2J1は、後方に開口した円筒状の外観を呈し、先端部分に連結部2Aが形成された構成である。第1ジョイント部材2J1の円筒状の内側に第2ジョイント部材2J2の円柱状の大径部2Dが嵌挿された状態で、第1ジョイント部材2J1の円筒状部と第2ジョイント部材2J2の円柱状の大径部2Dとを貫通する孔に圧入された第1ロックピン2L1によって、第2ジョイント部材2J2が第1ジョイント部材2J1に回り止め状態に結合され一体化される。
【0067】
第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3は、軸受け2Uを介して相互に回転可能状態に組み合わされている。この具体的構成として、第2ジョイント部材2J2は、中央軸線上を後方に延びた小径軸部2Kの先端側に軸受け2Uが嵌挿され、小径軸部2Kの先端部のネジ部に螺合したナット部材2Nによって、軸受け2U及び第3ジョイント部材2J3が小径軸部2Kに抜け止め状態に保持されている。コイルバネ2Sは、第2ジョイント部材2J2の大径部2Dと、軸受け2Uを介して第3ジョイント部材2J3との間に、所定の圧縮状態を保つように小径軸部2Kの外側に遊嵌されており、これによって、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との間に、コイルバネ2Sの反発作用力が働く状態となる。このようにコイルバネ2Sが圧縮状態を保つことによって生じる反発作用力によって、握り部2と本体ベース部3との間に、握り部2に対して本体ベース部3が自由回転しないように制動作用(制動力)が働く状態を作り出している。これによって後述のように、この制動作用(制動力)に打ち勝つように、握り部2に対して本体ベース部3に所定値以上の回転方向の作用力が働いたときのみ、握り部2に対して本体ベース部3が回転する構成となる。なお、ナット部材2Nは、小径軸部2Kの先端部の円形溝に嵌合保持したC形またはE形等の抜け止め部材2Eによって、抜け止め状態に保持される。
【0068】
軸受け2Uは、一つでもよいが、実施例では、組み立て等を考慮して、ステンレス製の第1軸受け2U1と、この第1軸受け2U1の外側に回転可能に嵌挿された真鍮製の第2軸受け2U2とで構成されている。コイルバネ2Sを小径軸部2Kの外側に遊嵌し、合成樹脂製の消音用ワッシャ43を介して第2軸受け2U2を小径軸部2Kの外側に遊嵌し、第3ジョイント部材2J3の前端部側に形成したフランジ2J31を第2軸受け2U2の外側に嵌合させ、第1軸受け2U1を後方(
図17の右方)から第2軸受け2U2内に挿入しつつ小径軸部2Kの外側に嵌合することによって、フランジ2J31を第1軸受け2U1の後端の環状フランジと第2軸受け2U2の前端の環状フランジとで挟む。この状態で、ナット部材2Nを小径軸部2Kの先端部のネジ部に螺合することによって、第1軸受け2U1のフランジ部が締め付けられて第1軸受け2U1が小径軸部2Kの段部2K1に当接状態に取り付けられる。この第1軸受け2U1の取り付けに伴って、第1軸受け2U1の後端フランジによって第3ジョイント部材2J3の前端部側に形成したフランジ2J31が前方(
図17で左方)へ押され、フランジ2J31が第2軸受け2U2の前端部のフランジを前方(
図17で左方)へ押す。これによって、コイルバネ2Sが、第2ジョイント部材2J2の大径部2Dと消音用ワッシャ43を介して第2軸受け2U2とで所定の圧縮状態となる。この状態において、小径軸部2Kの先端部に、ナット部材2Nの緩み止め部材2Eを取り付ける。
【0069】
このように、圧縮状態に保持されたコイルバネ2Sの反発力が消音用ワッシャ43と第2軸受け2U2を介してフランジ2J31に作用し、フランジ2J31と第1軸受け2U1の後端フランジとが当接する。これによって、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との相互回転部は、主として、第1軸受け2U1と第2軸受け2U2との間で達成される。一方、コイルバネ2Sが圧縮状態となることによって生じる反発作用力によって、消音用ワッシャ43が第2軸受け2U2の前端フランジ部に強く圧接し、消音用ワッシャ43と第2軸受け2U2の前端フランジ部との間に、所定の制動作用(制動力)が働く状態となる。この制動作用(制動力)によって、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との相互回転が制限される。即ち、この制動作用(制動力)に打ち勝つ作用力が第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との間に働いたとき、この相互回転が可能となり、消音用ワッシャ43と第2軸受け2U2の前端フランジ部との間で滑りが生じる。このような相互回転は、後述のように、握り部2に対する本体ベース部3の回転を意味する。
【0070】
この場合、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との相互回転時に発生するかも知れないコイルバネ2Sと消音用ワッシャ43との間で生じる軋み音の低減のために、消音用ワッシャ43は合成樹脂製であり、実施例ではポリアセタール樹脂を採用している。これによって、上記のような滑りを円滑に達成すると共に、上記相互回転時に発生する軋み音の低減を行なうことができることとなる。なお、47はコイルバネ2Sの前端が当接するステンレス等の金属製ワッシャである。
【0071】
このように第1軸受け2U1と第2軸受け2U2を介して第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3とを組み立てた後、第1ジョイント部材2J1内に第2ジョイント部材2J2の大径部2Dを挿入した状態で、第1ロックピン2L1によって、第2ジョイント部材2J2が第1ジョイント部材2J1に回り止め状態に結合される。この状態で、第3ジョイント部材2J3の前端部が第1ジョイント部材2J1に侵入した状態である。この組み立ての後、第1ジョイント部材2J1の連結部2Aが本体ベース部材3A、3B間に進入した状態で、本体ベース部材3A、3Bと連結部2Aを結合ネジ28にて固定する。
【0072】
この組み立て状態において、本発明における発音装置40が組み込まれる。発音装置40は、握り部2に対して本体ベース部3が回転する際に、その状態を音で把握できるようにするためのものである。発音装置40は、ジョイント2Jに設けている。具体的には、第3ジョイント部材2J3の外側に嵌挿した円筒状の歯体41と、この歯体41の歯41Aと噛み合うように第1ジョイント部材2J1の後端面に配置した板バネ42で構成している。
【0073】
板バネ42は、突起部42Aが後方に向く状態で、第1ジョイント部材2J1の後端面の一部に形成した係止受け部44に係止部42Kが係止することにより、第1ジョイント部材2J1に保持される取り付けであり、この板バネ42の取付け後、歯体41を後方(
図17の右方)から第3ジョイント部材2J3の外側に嵌挿する。その状態で握り部2のグリップベースと称する前方に開口した円筒状の握り主体部2Bを後方から、歯体41、板バネ42及び第1ジョイント部材2J1の外側に挿入し、ナット部材2Nよりも後方位置にて、握り主体部2Bの後部と、歯体41と、第3ジョイント部材2J3とを貫通する孔に圧入された第2ロックピン2L2によって、握り主体部2B、歯体41及び第3ジョイント部材2J3とが相互に回り止め状態に結合される。なお、他の組み立て方法として、予め握り主体部2B内に歯体41を収容した状態で、歯体41が第3ジョイント部材2J3の外側に挿入されるように、握り主体部2Bを後方から、板バネ42及び第1ジョイント部材2J1の外側に挿入し、ナット部材2Nよりも後方位置にて、握り主体部2Bの後部と、歯体41と、第3ジョイント部材2J3とを貫通する孔に圧入された第2ロックピン2L2によって、握り主体部2B、歯体41及び第3ジョイント部材2J3とを相互に回り止め状態に結合することができる。
【0074】
この組み立ての後、自己の有する若干の弾性を利用してグリップカバーと称する装飾表皮2Hを、握り主体部2Bの後方から握り主体部2Bの外側に密着状態に嵌挿し、装飾表皮2Hの前端が握り主体部2Bの段部2B1に当接した状態で、飾りリング2Rを握り主体部2Bに嵌め合わせ、握り主体部2Bの後部外面に形成したネジ部2BNに締め付けキャップ2Cを螺合することによって、飾りリング2Rを介して装飾表皮2Hが抜け止め状態に保持される。これによって握り部2と本体ベース部3との組み立てが終了する。なお、組み立ての順序は上記の順序に限定されず、他の組み立てし易い順序によることでも差し支えない。
【0075】
釣り人が装飾表皮2Hの外側から握り部2を握持した状態で、装飾表皮2Hが握り主体部2Bに対して円周方向にスリップしないようにするために、握り主体部2Bの外表面には、略90度間隔で握り部2の長さ方向(前後方向)に延びた平坦部2BHが形成されている。これによって、握り部2を握持した状態で、この平坦部2BHに装飾表皮2Hが密着するため、上記のスリップが防止される。
【0076】
上記のように握り部2と本体ベース部3が組み立てられた状態で、本体ベース部3に固定した第1ジョイント部材2J1に、第1ロックピン2L1によって第2ジョイント部材2J2が一体化されているため、第1ジョイント部材2J1と第2ジョイント部材2J2は、本体ベース部3側ジョイント部材と称することができる。一方、第2ロックピン2L2によって、握り主体部2Bと第3ジョイント部材2J3とが一体化されているため、第3ジョイント部材2J3は、握り部2側ジョイント部材と称することができる。このような構成によって、上記の握り部2側ジョイント部材と本体ベース部3側ジョイント部材は、軸受け2Uの部分で相互に回転可能な結合である。
【0077】
そして、コイルバネ2Sが所定の圧縮された状態を維持する組み立て状態であるため、コイルバネ2Sの圧縮によって生じる反発力が、軸受け2Uの部分(第1軸受け2U1と第2軸受け2U2の部分)を介して握り部2側と本体ベース部3側との間に所定の制動負荷として作用し、制動作用(制動力)が働いた状態となる。実施例では、上記のように、消音用ワッシャ43と第2軸受け2U2の前端フランジ部との間に、所定の制動作用(制動力)が働く状態となり、即ち、握り部2側ジョイント部材側の第2軸受け2U2と本体ベース部3側ジョイント部材側の第1軸受け2U1を介して、第2ジョイント部材2J2と第3ジョイント部材2J3との間に所定の制動作用(制動力)が働いた状態である。このため、コイルバネ2Sの圧縮によって生じる反発力が、握り部2に対して本体ベース部3が自由回転しないための所定の制動作用(制動力)として働く。
【0078】
上記のように所定の制動作用(制動力)が働いている状態において、握り部2を固定した状態で挟持部材4A、4Bを掴んで本体ベース部3を回そうとする作用力を加える場合、この作用力が上記所定の制動作用(制動力)に打ちかったとき(上記所定の制動作用(制動力)以上または超えたとき)、本体ベース部3が回り始める。この場合、挟持部材4A、4Bが変形しては意味がないので、上記所定の制動作用(制動力)の値は、握り部2に対して本体ベース部3が回り始める際に、挟持部材4A、4Bが変形しない範囲に設定される。このような所定の制動作用(制動力)は、一つの実施例では、本体ベース部3を回そうとする作用力が3kgまでは本体ベース部3が回らず、3kgを超えたとき回り始めるように設定している。このため、魚掴み器1の構成に応じた値に設定すればよく、その場合、バネ定数の異なるコイルバネ2Sを選択することにより、所定の制動作用(制動力)を希望する状態に設定できる。
【0079】
このような構成であるため、魚掴み器1の使用に際しては、予め前記所定の制動作用(制動力)に抗して、握り部2に対して本体ベース部3を回転させ、握り部2を握った方の片手の親指で操作部20を操作することに適する位置関係になるように、握り部2に対して本体ベース部3の方向性を定めておく。この準備によって、釣り上げた魚の口を目掛けて挟持部5A、5Bを前進させる際の操作部20の操作性と、挟持部5A、5Bが魚の口を挟持した段階で速やかに操作部20から親指を離す操作が確実となり、的確な操作が達成できる状態となる。
【0080】
そして、握り部2を握り締めた状態で、且つ挟持部5A、5B相互によって魚を掴んだ状態で、魚が暴れることによって、前記所定の制動作用(制動力)に抗する所定値以上の回転方向の作用力が本体ベース部3に働いたときは、前記握り部2側ジョイント部材と、前記本体ベース部3側ジョイント部材との間で相互に回転可能となり、握り部2に対して本体ベース部3が回転するため、魚が暴れた場合に握り部2を握った手に掛かる負担を少なくできる。また、魚が暴れた際に大きな作用力が掛かっても、本体ベース部3が回転するため、一対の挟持部材4A、4Bに変形が生じる虞はない。前記所定値を強くまたは弱く設定する場合は、線径を含むバネ定数の異なるコイルバネ2Sを予め組み込んでおくことにより達成できる。
【0081】
上記のことから、魚が暴れた際に掛かる大きな作用力に抗するために、挟持部材4A、4Bやその他の関連部分の強度を増す目的のために、挟持部材4A、4Bやその他の関連部分を高価な金属で構成したり、厚さの厚い金属で構成したり等、種々の高価な対応を講じる必要もなく、片手操作に適した魚掴み器を提供できるものとなる。
【0082】
上記のように、発音装置40は、前記本体ベース部3側ジョイント部材に設けた板バネ42と、前記握り部2側ジョイント部材の外側に嵌挿した円筒状の歯体41とで構成され、握り部2内に発音装置40が組み込まれている。このため、握り部2に対して本体ベース部3が回転する際、本体ベース部3側に支持された板バネ42の突起部42Aが、握り部2側の歯体41の歯41Aの山と谷を摺動することによってカチカチ音が発生する。この発生音によって、握り部2に対して本体ベース部3の回転状態を把握することができる。このため、このカチカチ音の発生周期によって、本体ベース部3の回転状態が盛んか否かを認識できるため、夜間における釣りに適するものとなる。
【0083】
なお、発音装置40を不要とする場合は、板バネ42と歯体41を取り外した構成とするだけで達成できる。