特許第6018930号(P6018930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018930
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】正極−固体電解質複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20161020BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161020BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20161020BHJP
   C01G 35/00 20060101ALI20161020BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20161020BHJP
   C04B 35/00 20060101ALI20161020BHJP
   C04B 35/48 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/0585
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/1391
   H01M10/052
   H01G11/56
   C01G35/00 C
   C01G53/00 A
   C04B35/00 J
   C04B35/48 B
【請求項の数】24
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-6476(P2013-6476)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-243111(P2013-243111A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】61/648,217
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆太
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
(72)【発明者】
【氏名】七瀧 努
(72)【発明者】
【氏名】武内 幸久
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−311710(JP,A)
【文献】 特開2011−073962(JP,A)
【文献】 特開2011−150974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 − 10/0587
H01M 4/00 − 4/62
C01G 35/00
C01G 53/00
C04B 35/00
C04B 35/48
H01G 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体蓄電素子用の正極−固体電解質複合体の製造方法であって、
正極活物質を含むセラミックス焼結体からなる板状正極と、イオン伝導性を有するセラミックス焼結体からなる板状固体電解質とを積層して積層体を得る工程と、
前記積層体に加熱及び加圧を同時に施して、前記正極と前記固体電解質とを固相反応により一体化させる工程と、
を含んでなり、
前記正極が前記正極活物質のみからなる、方法。
【請求項2】
前記加熱及び加圧がホットプレス法により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱及び加圧が、600〜800℃の温度及び5〜3000kgf/cmの圧力で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱及び加圧が、600〜750℃の温度及び500〜2500kgf/cmの圧力で行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱及び加圧が、675〜725℃の温度及び5〜3000kgf/cmの圧力で行われる、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱及び加圧が、675〜725℃の温度及び1000〜2000kgf/cmの圧力で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱及び加圧が0.05〜10時間行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記正極活物質がリチウム−遷移金属系複合酸化物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記正極活物質が層状岩塩構造又はスピネル構造を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記正極活物質が層状岩塩構造を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウム−遷移金属系複合酸化物が、LiM1O又はLi(M1,M2)O(式中、0.5<x<1.10、M1はNi,Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属元素、M2はMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)で表される組成を有する、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記リチウム−遷移金属系複合酸化物の組成がLi(M1,M2)Oで表され、M1がNi及びCoであり、M2はMg,Al及びZrからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リチウム−遷移金属系複合酸化物の組成がLi(M1,M2)Oで表され、M1がNi及びCoであり、M2がAlである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
M1及びM2の合計量に占めるNiの割合が原子比で0.6以上である、請求項1113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記正極活物質が複数の結晶粒子からなる多結晶体であり、該複数の結晶粒子が配向されてなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記正極活物質が気孔を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記正極活物質が3〜30%の空隙率を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
全気孔に占める開気孔の容積比率が70%以上である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記固体電解質がリチウムイオン伝導性を有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記固体電解質がガーネット系セラミックス材料である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ガーネット系セラミックス材料が、少なくともLi、La、Zr及びOを含んで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造がNb及び/又はTaをさらに含んで構成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記酸化物焼結体がAl及び/又はMgをさらに含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記板状正極が複数用意され、該複数の板状正極が前記板状固体電解質上にタイル状に配列されてなる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極−固体電解質複合体の製造方法に関するものであり、より詳しくは全固体蓄電素子用の正極−固体電解質複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池が高いエネルギー密度の観点から注目されている。しかしながら、現在広く使用されているリチウムイオン二次電池は、可燃性の有機溶媒にリチウム塩を溶解した有機電解液が主流であるため、液漏れ等に対する安全性の確保が重要な課題となっている。これに対して、電解液の代わりに固体電解質を用いた全固体電池が、可燃性の有機溶媒を使用する必要が無い安全性の高い電池として提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2009−193802号公報)には、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層及び負極集電体の各々を圧粉体で構成した全固体電池が開示されている。この圧粉体型の全固体電池は、活物質層及び電解質層の密度が低く、高容量化やレート特性に課題がある。また、接合界面が緻密でないため、高抵抗になるものと考えられる。その上、各部材が圧粉体で構成されるため、それらの部材を押付けする拘束手段が必要になるものと解される。
【0004】
特許文献2(国際公開第2011/132627号)には、正極層、負極層及び固体電解質層が焼結によって接合された全固体二次電池が開示されている。この全固体二次電池は、正極層、負極層及び固体電解質層の各々のグリーンシートを積層し、得られたグリーンシート積層体を同時に焼結させることによって作製されている。このような同時焼結製法で密着性の高い界面を形成するためには熱処理温度を高くせざるを得ず、その結果、界面抵抗が非常に高くなってしまい、各部材が本来有する良好な機能を最大限に発揮させることが困難である。
【0005】
特許文献3(特開2009−009897号公報)には、正極層、負極層及び固体電解質層の各々が気相プロセスによって形成された全固体薄膜電池が開示されている。この薄膜型の全固体電池は、電極内の活物質が少ないため、原理的に高容量化が難しく、エネルギー密度が小さい。また、成膜処理中に界面に高抵抗な反応層が形成され、電池として十分な容量やレート特性が得られない。
【0006】
ところで、リチウムイオン二次電池の正極活物質層として、リチウム複合酸化物焼結体板が提案されている。例えば、特許文献4(特開2012−009193号公報)及び特許文献5(特開2012−009194号公報)には、層状岩塩構造を有し、X線回折における、(104)面による回折強度に対する(003)面による回折強度の比率[003]/[104]が2以下である、リチウム複合酸化物焼結体板が開示されている。このような構成とすることで、リチウムイオン二次電池において、良好なサイクル特性を維持しつつ、高容量化を実現している。また、特許文献6(特許第4745463号公報)には、一般式:Li(Ni,Co,Al)O(式中、0.9≦p≦1.3、0.6<x≦0.9、0.1<y≦0.3、0≦z≦0.2、x+y+z=1)で表され、層状岩塩構造を有する板状粒子が開示されており、(003)面が粒子の板面と交差するように配向されることで、固体型リチウム二次電池の正極材料として用いた際における高容量と高レート特性との同時実現を可能としている。
【0007】
一方、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質として、LiLaZr12(以下、LLZという)系の組成を有するガーネット型のセラミックス材料が注目されている。例えば、特許文献7(特開2011−051800号公報)には、LLZの基本元素であるLi,La及びZrに加えてAlを加えることで、緻密性やリチウムイオン伝導率を向上できることが開示されている。特許文献8(特開2011−073962号公報)には、LLZの基本元素であるLi、La及びZrに加えてNb及び/又はTaを加えることで、リチウムイオン伝導率を更に向上できることが開示されている。特許文献9(特開2011−073963号公報)には、Li、La、Zr及びAlを含み、Laに対するLiのモル比を2.0〜2.5とすることで、緻密性を更に向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−193802号公報
【特許文献2】国際公開第2011/132627号
【特許文献3】特開2009−009897号公報
【特許文献4】特開2012−009193号公報
【特許文献5】特開2012−009194号公報
【特許文献6】特許第4745463号公報
【特許文献7】特開2011−051800号公報
【特許文献8】特開2011−073962号公報
【特許文献9】特開2011−073963号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今般、互いにセラミックス焼結体からなる板状正極及び板状固体電解質を積層して加熱しながら加圧することにより、比較的低温での接合を可能にして界面における高抵抗な反応層の生成を抑制するとともに、界面における板状正極及び板状固体電解質の密着性を高めて接合面積を最大化することができるとの知見を得た。
【0010】
したがって、本発明の目的は、比較的低温での接合を可能にして界面における高抵抗な反応層の生成を抑制するとともに、界面における板状正極及び板状固体電解質の密着性を高めて接合面積を最大化することが可能な、全固体蓄電素子用の正極−固体電解質複合体の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の一態様によれば、全固体蓄電素子用の正極−固体電解質複合体の製造方法であって、
正極活物質を含むセラミックス焼結体からなる板状正極と、イオン伝導性を有するセラミックス焼結体からなる板状固体電解質とを積層して積層体を得る工程と、
前記積層体に加熱及び加圧を同時に施して、前記正極と前記固体電解質とを固相反応により一体化させる工程と、
を含んでなる、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】例3で得られた複合体の断面を1000倍の倍率でSEMにより観察した画像である。
図2】例3で得られた複合体の断面を5000倍の倍率でSEMにより観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
正極−固体電解質複合体の製造方法
本発明による方法は、全固体蓄電素子用の正極−固体電解質複合体の製造方法である。なお、本明細書において、全固体蓄電素子は、電解液の代わりに固体電解質を用いた、蓄電可能な素子であれば特に限定されず、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等の各種キャパシタ、リチウムイオン二次電池等の各種二次電池等を包含する。したがって、本発明の方法により製造される正極−固体電解質複合体は、用途に応じた適切な負極、並びに所望により正極集電体及び/又は負極集電体を更に設けることで、所望の蓄電素子として機能させることができる。例えば負極に活性炭を用いた場合、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタとして機能させることができる。
【0014】
本発明による製造方法は、板状正極及び板状固体電解質を積層して積層体を得る工程と、この積層体に加熱及び加圧を同時に施して固相反応により一体化させる工程とを含む。板状正極は正極活物質を含むセラミックス焼結体からなる。また、板状固体電解質はイオン伝導性を有するセラミックス焼結体からなる。このように、本発明に用いられる板状正極及び板状固体電解質はいずれもセラミックス焼結体で構成されるため、圧粉体、グリーンシート及び気相合成薄膜ではない。本発明の方法では、このセラミック焼結体からなる板状正極及び板状固体電解質の積層体に加熱及び加圧を同時に施すことで、正極と固体電解質とを固相反応により一体化させることができる。このセラミック焼結体同士の接合は、グリーンシートの積層で必要とされるような粉末同士の焼結を要しないので、高活性の異種粉末間で起こりうる高抵抗な反応層の生成を抑制することができる。その上、同時加熱及び加圧により、加熱のみで接合した場合に比べ、焼成温度を低温化する事が可能である。これにより、焼結温度の高い温度域において形成されうる高抵抗な反応層の生成を抑制することができる。また、同時加熱及び加圧により得られる複合体の接合界面の密着性は驚くほど高い。このように、本発明の方法によれば、比較的低温での接合を可能にして界面における高抵抗な反応層の生成を抑制するとともに、界面における板状正極及び板状固体電解質の密着性を高めて接合面積を最大化することができる。このような特徴を有する正極−固体電解質複合体を用いることで、薄型でありながら極めて高い容量の全固体蓄電素子の提供が可能となる。
【0015】
本発明による加熱及び加圧は同時に行われるものであり、加熱しながら加圧している段階を含んでいればよく、加熱及び加圧のタイミングにずれがあってもよい。加熱及び加圧を同時に行う手法の例としては、ホットプレス法(HP)、熱間静水圧プレス法(HIP)、放電プラズマ焼結法(SPS)が挙げられるが、量産性が高く、製造コストを安く抑えることができることからホットプレス法(HP)が好ましい。
【0016】
加熱は600〜800℃の温度で行われるのが好ましく、より好ましくは650〜750℃であり、さらに好ましくは675〜725℃である。加圧は5〜3000kgf/cmの圧力で行われるのが好ましく、より好ましくは500〜2500kgf/cm、より好ましくは1000〜2000kgf/cmである。また、狙いの圧力への到達時間は、0.1〜10hで行われるのが好ましく、より好ましくは1〜7hであり、さらに好ましくは3〜5hである。さらに、加圧開始のタイミングは、焼成プロファイルにおける昇温過程終了後であることが好ましい。加熱及び加圧は0.05〜10時間行われるのが好ましく、より好ましくは1〜8時間、さらに好ましくは2〜5時間である。このような範囲内であると、界面における高抵抗な反応層の生成をより一層確実に抑制するとともに、界面における板状正極及び板状固体電解質の密着性をより一層高めることができる。
【0017】
板状正極
本発明に用いる板状正極は、正極活物質を含むセラミックス焼結体からなる。正極活物質は全固体蓄電素子の正極において活物質として機能しうるものであれば特に限定されないが、リチウム−遷移金属系複合酸化物であるのが好ましい。正極活物質、特にリチウム−遷移金属系複合酸化物は、層状岩塩構造又はスピネル構造を有するのが好ましく、より好ましくは層状岩塩構造を有する。層状岩塩構造は、リチウムイオンの吸蔵により酸化還元電位が低下し、リチウムイオンの脱離により酸化還元電位が上昇する性質があり、好ましく、中でもNiを多く含む組成は特に好ましい。ここで、層状岩塩構造とは、リチウム以外の遷移金属系層とリチウム層とが酸素原子の層を挟んで交互に積層された結晶構造、すなわち、リチウム以外の遷移金属等のイオン層とリチウムイオン層とが酸化物イオンを挟んで交互に積層された結晶構造(典型的にはα−NaFeO型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)をいう。層状岩塩構造を有するリチウム−遷移金属系複合酸化物の典型例としては、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル・マンガン酸リチウム、ニッケル・コバルト酸リチウム、コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム、コバルト・マンガン酸リチウム等が挙げられ、これらの材料に、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi等の元素が1種以上更に含まれていてもよい。
【0018】
すなわち、リチウム−遷移金属系複合酸化物は、LiM1O又はLi(M1,M2)O(式中、0.5<x<1.10、M1はNi,Mn及びCoからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属元素、M2はMg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)で表される組成を有するのが好ましく、より好ましくはLi(M1,M2)Oで表され、M1がNi及びCoであり、M2はMg,Al及びZrからなる群から選択される少なくとも一種である組成であり、さらに好ましくはLi(M1,M2)Oで表され、M1がNi及びCoであり、M2がAlである。M1及びM2の合計量に占めるNiの割合が原子比で0.6以上であるのが好ましい。このような組成はいずれも層状岩塩構造を採ることができる。なお、M1がNi及びCoであり、M2がAlである、Li(Ni,Co,Al)O系組成のセラミックスはNCAセラミックスと称されることがある。特に好ましいNCAセラミックスは、一般式:Li(Ni,Co,Al)O(式中、0.9≦p≦1.3、0.6<x≦0.9、0.1<y≦0.3、0≦z≦0.2、x+y+z=1)で表され、層状岩塩構造を有するものである。
【0019】
典型的には、正極活物質は、複数の結晶粒子からなる多結晶体であり、これら複数の結晶粒子が配向されてなるのが好ましい。この配向は、層状岩塩構造の(003)面が板状正極の板面(主面(principal surface))と交差するように配向しているのが好ましく、より好ましくは(003)以外の面(例えば(104)面)が板状正極の板面と平行に配向しているのが好ましい。これにより、リチウムイオン等のイオンの挿脱が容易となり、蓄電素子を構成した場合におけるレート特性が向上する。このような板状正極における配向度は、板状正極の板面からのX線回折における、(104)面による回折強度に対する(003)面による回折強度(ピーク強度)の比率[003]/[104]で評価することができ、好ましい[003]/[104]比は2以下であり、より好ましくは1以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。なお、このような低い[003]/[104]比は、板状正極の板面や内部において板面と平行に(003)面が出現している割合が減っていることを意味する。
【0020】
板状正極は、正極活物質を含むセラミックス焼結体からなる。このセラミックス焼結体は正極活物質以外にも導電助剤、バインダー等の任意成分を含むものであってもよいが、このような任意成分を実質的に含まない構成とすることも可能である。例えば、結晶粒子が配向されてなる正極活物質を用いる場合には、導電助剤等を使用することなくイオン移動度を向上させることができるので、活物質充填率を最大限に高めることができる。したがって、板状正極は正極活物質のみから実質的になる(consisting essentially of)のが好ましく、より好ましくは正極活物質のみからなる(consisting of)。
【0021】
板状正極及びそれを構成する正極活物質は、気孔を有するのが好ましい。板状正極中に気孔が存在することで、充放電によるリチウムイオンの挿脱に伴う膨張ないし収縮によって生じうる応力を緩和することができる。さらに、接合時に生じる熱膨張係数の違い(例えば後述するNCAセラミックスでは8.0×10−6、LLZセラミックスでは4.0×10−6)に起因する割れやクラックの発生を抑制する。これにより、緻密な板同士の接合で起こりうる界面での剥離も効果的に防止することができる。正極活物質は3〜30%の空隙率を有するのが好ましく、より好ましくは5〜25%であり、さらに好ましくは10〜20%である。空隙率(voidage)は、板状正極おける気孔(開気孔及び閉気孔を含む)の体積比率であり、気孔率(porosity)と称されることもあり、板状正極の嵩密度と真密度とから算出可能である。
【0022】
このような気孔を有する正極活物質は、予め作製された正極活物質前駆体粒子から製造するのが好ましい。この正極活物質前駆体粒子は、リチウムを導入することにより、層状岩塩構造を有するリチウム−遷移金属系複合酸化物を含有する正極活物質となり得る前駆体粒子であるのが好ましい。特に好ましい正極活物質前駆体粒子は、略球状に形成されるとともに内部に多数の空隙がほぼ均一に設けられ、平均粒径D50(体積基準)が0.5〜5μmであり、比表面積が3〜25m/gであり、タップ密度を理論密度で除した値である相対タップ密度が0.25〜0.4である。このような条件を満たすと、その後の成形工程及び焼成工程(リチウム導入工程)を経て正極活物質を生成させる際に、焼成環境が安定化されるとともにリチウム導入(拡散)状態が均一化され、それにより内部の微細構造が可及的に均一化される。また、最終目的物である正極活物質の形状安定性ならびに結晶学的な合成度が良好となる。
【0023】
好ましくは、正極活物質は、(a)リチウム複合酸化物の主原料を構成する遷移金属水酸化物の板状粒子が多数含まれるとともに内部に多数の空隙がほぼ均一に設けられた造粒体を形成する、造粒工程と、(b)造粒体を熱処理することで正極活物質前駆体粒子を形成する、熱処理工程と、(c)多数の正極活物質前駆体粒子を所定形状に成形することで成形体を得る、成形工程と、(d)成形体を焼成することでリチウム複合酸化物を生成させる、焼成工程とを有する方法によって製造される。造粒工程(a)は、遷移金属水酸化物を含む原料粉末を湿式で粉砕しつつ混合することにより調製されたスラリーを噴霧乾燥することで造粒体を形成する工程とするのが好ましい。特に、二流体ノズル方式の噴霧乾燥が好適に使用可能である。原料粉末には、ニッケル及びコバルトの水酸化物が遷移金属水酸化物として含まれていてもよい。また、原料粉末には、アルミニウム酸化物の水和物あるいはアルミニウム水酸化物等の遷移金属以外の金属化合物が含まれていてもよい。リチウム化合物は、成形時あるいは成形後焼成前に添加され得る。すなわち、例えば、リチウム化合物は、成形時に正極活物質前駆体粒子とともに上述の成形用スラリーに添加され得る。あるいは、リチウム化合物を含まない成形体を一旦仮焼成(成形体仮焼成)した後、かかる仮焼成成形体とリチウム化合物とが混合されたものを焼成する(本焼成)という二段階で焼成(リチウム導入)工程が行われてもよい。
【0024】
板状正極の寸法は特に限定されないが、厚さは単位面積当りの活物質容量の観点から、0.1〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは50〜100μmであり、板面の大きさは板面内の反り抑制と電極作製の容易さの観点から、0.2mm×0.2mm〜10mm×10mmが好ましく、より好ましくは0.5mm×0.5mm〜2mm×2mmである。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、板状正極が複数用意され、これら複数の板状正極が板状固体電解質上にタイル状に配列されてなる。これにより、電極内で活物質をより高密度に充填可能になるという利点がある。
【0026】
板状正極には固体電解質と反対側に集電体がさらに設けられていてもよい。集電体としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等で形成された膜や箔であってよく、例えばスパッタリング法により形成される。
【0027】
板状固体電解質
板状固体電解質は、イオン伝導性を有するセラミックス焼結体からなる。正極との間で蓄電可能な程度に電荷の授受が行えるかぎり、伝導されるべきイオンは特に限定されず、リチウムイオン、ナトリウムイオン、水酸化物イオン等であってよいが、好ましい固体電解質はリチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質である。
【0028】
リチウムイオン伝導性無機固体電解質の好ましい例としては、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLaZr12など)、Li−La−Ta−O系材料(具体的には、LiLaTa12など)が挙げられ、特開2011−051800号公報、特開2011−073962号公報及び特開2011−073963号公報に記載されているものも用いることができる。窒化物系セラミックス材料の例としては、LiN、LiPONなどが挙げられる。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLa1−xTi(0.04≦x≦0.14)など)が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、Li−Al−Ti−P−O,Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(具体的には、Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)など)が挙げられる。
【0029】
特に好ましいリチウムイオン伝導性無機固体電解質は、負極リチウムと直接接触しても反応が起きない点で、ガーネット系セラミックス材料である。とりわけ、Li、La、Zr及びOを含んで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体が、焼結性に優れて緻密化しやすく、かつ、イオン伝導率も高いことから好ましい。この種の組成のガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はLLZ結晶構造と呼ばれ、CSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(LiLaZr12)に類似のXRDパターンを有する。なお、No.422259と比較すると構成元素が異なり、またセラミックス中のLi濃度などが異なる可能性があるため、回折角度や回折強度比が異なる場合もある。Laに対するLiのモル数の比Li/Laは2.0以上2.5以下であることが好ましく、Laに対するZrのモル比Zr/Laは0.5以上0.67以下であるのが好ましい。このガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はNb及び/又はTaをさらに含んで構成されるものであってもよい。すなわち、LLZのZrの一部がNb及びTaのいずれか一方又は双方で置換されることにより、置換前に比べて伝導率を向上させることができる。ZrのNb及び/又はTaによる置換量(モル比)は、(Nb+Ta)/Laのモル比が0.03以上0.20以下となる量にすることが好ましい。また、このガーネット系酸化物焼結体はAl及び/又はMgをさらに含んでいるのが好ましく、これらの元素は結晶格子に存在してもよいし、結晶格子以外に存在していてもよい。Alの添加量は焼結体の0.01〜1質量%とするのが好ましく、Laに対するAlのモル比Al/Laは、0.008〜0.12であるのが好ましい。Mgの添加量は0.01〜1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05〜0.30質量%である。Laに対するMgのモル比Mg/Laは、0.0016〜0.07であるのが好ましい。このようなLLZ系セラミックスの製造は、特開2011−051800号公報、特開2011−073962号公報及び特開2011−073963号公報に記載されるような公知の手法に従って又はそれを適宜修正することにより行うことができる。
【0030】
板状固体電解質の寸法は特に限定されないが、厚さは充放電レート特性と機械的強度の観点から、0.005mm〜5mmが好ましく、より好ましくは0.01mm〜2mm、さらに好ましくは0.05〜1mmであり、板面の大きさは充放電容量と機械的強度の観点から、0.2mm×0.2mm〜500mm×500mmが好ましく、より好ましくは0.5mm×0.5mm〜100mm×100mmである。
【0031】
なお、板状正極活物質と板状固体電解質の界面抵抗を低減する目的で、板状正極活物質上、もしくは板状固体電解質上に、板状正極活物質と板状固体電解質を固相反応で一体化する際に形成される反応層の抵抗をより小さくするような元素からなる層(たとえば厚さ数十nm以下の金属Nb、Ta、Tiもしくはそれらの化合物からなる薄膜)を形成しておいてもよい。Nb化合物の場合の形成法としてはとくに限定されないが、たとえばスパッタリング法、CVD法などの気相法、ゾルゲル法、塗布熱分解法などの液相法で形成されうる。また、金属Nbを成膜した後、雰囲気熱処理などにより化合物化してもよい。たとえば酸化物であれば、金属Nbからなる層をいったん形成した後、酸化雰囲気で熱処理することで形成してもよいし、Nb酸化物(たとえばNb)からなる層を直接形成してもよい。
【実施例】
【0032】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0033】
例1:NCAセラミックス板の作製
本発明において板状正極として用いられるNCAセラミックス板を以下の手順で作製した。
【0034】
(1)スラリー調製
Ni(OH)粉末(株式会社高純度化学研究所製)81.6重量部、Co(OH)粉末(和光純薬工業株式会社製)15.0重量部、及びAl・HO粉末(SASOL社製)3.4重量部を秤量して、原料粉末を用意した。次に、純水97.3重量部、分散剤(日油株式会社製:品番AKM−0521)0.4重量部、消泡剤としての1−オクタノール(片山化学株式会社製)0.2重量部、及びバインダー(日本酢ビ・ポバール株式会社製:品番PV3)2.0重量部からなるビヒクルを作製した。こうして得られたビヒクルと原料粉末を湿式で混合及び粉砕することで、スラリーを調製した。この混合及び粉砕は、直径2mmのジルコニアボールを用いたボールミルで24時間処理した後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルで40分間処理することによって行った。
【0035】
(2)造粒
得られたスラリーを二流体ノズル方式のスプレードライヤーに投入することにより、造粒体を形成した。スプレードライヤーの噴出圧力、ノズル径、循環風量等のパラメータを適宜調整することで、種々の大きさの造粒体を形成することが可能である。
【0036】
(3)熱処理(仮焼成)
得られた造粒体を1100℃で3時間(大気雰囲気)熱処理して、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの複合酸化物((Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O)の粒子である、正極活物質前駆体粒子を得た。得られた正極活物質前駆体粒子を以下に示される分析したところ、平均粒径D50(体積基準)は2.3μmであり、比表面積は12m/gであり、相対タップ密度は0.3であった。
<平均粒径D50>
水を分散媒として正極活物質前駆体粒子の粉末試料を分散させたものを、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製 型番「LA−700」)に投入することで、平均粒径D50(体積基準)を測定した。
<相対タップ密度>
正極活物質前駆体粒子の粉末試料を入れたメスシリンダを市販のタップ密度測定装置を用いて200回タッピングした後、(粉末重量)/(粉末のかさ体積)を算出することによって、タップ密度を求めた。その後、得られたタップ密度を理論密度で除することで、相対タップ密度[無次元値]を算出した。
【0037】
(4)成形
得られた正極活物質前駆体粒子粉末100重量部、分散媒(キシレン:ブタノール=1:1)50重量部、バインダーとしてのポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製:品番BM−2、)10重量部、可塑剤としてのDOP(Di(2−ethylhexyl)phthalate:黒金化成株式会社製)4.5重量部、及び分散剤(花王株式会社製 製品名「レオドールSPO−30」)3重量部を秤量し、乳鉢で予備混練した後、トリロールを用いて混練することで、(ブルックフィールド社製LVT型粘度計を用いて測定して)2000〜3000cPの粘度を有する成形用スラリーを調製した。こうして得られた成形用スラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚さ50μmのシートを形成した。乾燥後のシートに対して打ち抜き加工を施すことによって、1mm四方のグリーンシート成形体を得た。
【0038】
(5)焼成(リチウム導入)
上述のようにして得られた1mm四方のグリーンシート成形体を、大気雰囲気中で900℃にて熱処理することで、成形体の脱脂及び仮焼成を行った。かかる成形体仮焼成の温度は、上述の熱処理(造粒体仮焼成)温度よりも低い。これは、成形体の仮焼成時に内部の粒子間の焼結の進行を抑制することで、後続する本焼成時にリチウムが均一に拡散及び反応するようにするためである。
【0039】
一方、水酸化リチウムのエタノール分散液を以下のようにして調製した。まず、LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)を、ジェットミルを用いて、電子顕微鏡観察による目視粒径で1〜5μmになるように粉砕した。この粉末をエタノール(片山化学株式会社製)100重量部に対し1重量部の割合で加えたものを、超音波により、粉末が目視によって確認することができなくなるまで分散させた。
【0040】
上記仮焼成成形体の両面に対して、上記水酸化リチウムのエタノール分散液をエアブラシによって所定量スプレーしたものを、750℃で10時間(酸素雰囲気)熱処理することで、Li(Ni0.8,Co0.15,Al0.05)Oの組成を有するNCAセラミックス板を板状正極として得た。得られた板状正極を以下に示される手順で分析したところ、空隙率は15%、開気孔比率は95%、回折強度(ピーク強度)の比率[003]/[104]は0.5であった。
<空隙率>
空隙率は、相対密度から計算される値(空隙率=1−相対密度)である。相対密度は、アルキメデス法で求めた嵩密度を、ピクノメータを用いて求めた真密度で除して求めた値である。嵩密度の測定では、空隙中に存在する空気を十分に追い出すために、試料を水中で煮沸処理をした。
<開気孔比率>
開気孔比率は、閉気孔率と全気孔率から計算によって求められる値(開気孔比率=開気孔/全気孔=開気孔/(開気孔+閉気孔))である。閉気孔率は、アルキメデス法で測定した見かけ密度より求められる。また、全気孔率は、同じくアルキメデス法で測定した嵩密度より求められる。
<回折強度(ピーク強度)比率>
回折強度(ピーク強度)比率の測定は、φ5〜10mm程度の大きさに加工した正極活物質層用セラミックス板を、XRD測定用の試料フォルダに載せ、XRD装置(株式会社リガク製
製品名「RINT-TTRIII」)を用いて、板状正極の表面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定し、(104)面による回折強度(ピーク高さ)に対する(003)面による回折強度(ピーク高さ)の比率を求めることにより行った。この測定方法によれば、板面の結晶面に平行に存在する結晶面、すなわち板面方向に配向する結晶面による回折プロファイルが得られる。
【0041】
例2:LLZセラミックス板の作製
本発明において板状固体電解質として用いられるLLZセラミックス板を以下の手順で作製した。
【0042】
焼成用原料調製のための各原料成分として、水酸化リチウム(関東化学株式会社)、水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)、酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)、酸化タンタルを用意した。これらの粉末をLiOH:La(OH):ZrO:Ta=7:3:1.625:0.1875になるように秤量及び配合し、ライカイ機にて混合して焼成用原料を得た。
【0043】
第一の焼成工程として、上記焼成用原料をアルミナ坩堝に入れて大気雰囲気で600℃/時間にて昇温し900℃にて6時間保持した。
【0044】
第二の焼成工程として、第一の焼成工程で得られた粉末に対しγ−AlをAl濃度が0.08wt%となるように添加し、この粉末と玉石を混合し振動ミルを用いて3時間粉砕した。この粉砕粉を篩通しした後、得られた粉末を、金型を用いて約100MPaにてプレス成形してペレット状にした。得られたペレットをマグネシア製のセッター上に乗せ、セッターごと表1に示されるとおりマグネシア製のサヤ内に入れて、Ar雰囲気にて200℃/時間で昇温し、1000℃で36時間保持することにより、35mm×18mmのサイズで厚さ11mmの焼結体を得て、そこから10mm×10mmのサイズで厚さ1mmのLLZセラミックス板を板状固体電解質として得た。なお、Ar雰囲気として、事前に容量約3Lの炉内を真空引きした後、純度99.99%以上のArガスを電気炉に2L/分で流した。
【0045】
得られた焼結体試料の上下面を研磨した後、以下に示される各種の評価ないし測定を行った。焼結体試料のX線回折測定を行ったところ、CSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(LiLaZr12)類似の結晶構造が得られた。このことから、得られた試料がLLZ結晶構造の特徴を有することが確認された。また、焼結体試料のAl及びMg含有量を把握するため、誘導結合プラズマ発光分析(ICP分析)により化学分析を行ったところ、Al含有量は0.08wt%、Mg含有量は0.07wt%であった。
【0046】
例3:ホットプレスによるNCA/LLZ複合体の作製
例2で作製された10mm平方に加工した厚さ1mmのLLZセラミックス板上に、例1で作製された1mm平方の厚さ50μmのNCAセラミックス板を3行3列となるように9枚配列した。この配列体の上下面を焼成冶具との癒着防止用Pt箔で挟み、焼成条件700℃で5時間、2000kgf/cmの圧力でホットプレスにより焼成して、NCA/LLZ複合体を得た。得られた複合体の断面を1000倍及び5000倍の倍率でSEMにより観察したところ、それぞれ図1及び2に示される画像が得られた。これらの図から分かるように、得られた複合体において、NCAセラミックス板(板状正極)1とLLZセラミックス板(板状固体電解質)2との界面には剥がれ等が観察されず、極めて密着性が高いことが確認された。また、NCAセラミックス板(板状正極)1が多数の気孔を有することも確認された。さらに、界面において高抵抗となりうる反応層らしき層は全く観察されなかった。
【0047】
例4:コインセルの作製
例3において製造されたNCA/LLZ複合体のNCAセラミックス板の板面にAu膜をスパッタリングにより形成して正極集電体(厚さ:500オングストローム)を形成した。次に、Ar雰囲気のグローブボックス内で、LLZセラミックス板の板面にリチウム金属を200℃で溶融圧着して負極とした。こうして得られたAu/NCA/LLZ/Li接合体をステンレス製CR2032ケースに組み込み、コインセルとした。
【0048】
例5(比較):圧粉体の焼結によるNCA/LLZ複合体及びコインセルの作製
例1において作製したNCAセラミックス板を平均粒径0.1μmとなるまで粉砕した粉末の圧粉体と、例2において作製したLLZセラミックス板を平均粒径0.1μmとなるまで粉砕した粉末の圧粉体と用意した。これらの圧粉体を積層し、焼成条件900℃で5時間焼成することにより、比較試料としてのNCA/LLZ複合体を作製した。この比較試料の断面観察を行ったところ、NCA部及びLLZ部ともに十分に緻密化し、NCA部とLLZ部が接合されていることを確認した。得られたNCA/LLZ複合体を用いて例4と同様にして比較試料としてのコインセルを作製した。
【0049】
例6:インピーダンス評価及びレート特性の評価
例4及び5で作製したコインセルを大気中に取り出し、電気化学測定システム(ソーラトロン社製、ポテンショ/ガルバノスタッド及び周波数応答アナライザの組合せ)を用い、周波数1MHz〜0.01Hz、電圧10mVにて交流インピーダンス測定を行った。得られたインピーダンスカーブの円弧を解析ソフト(Scribner Associates, Inc.社製、Zview2)を用いてフィッティングし、インピーダンス抵抗値を得た。その結果、例4で得られた本発明による試料のインピーダンスは1500Ω・cmである一方、例5で得られた比較試料のインピーダンスは5000000Ω・cmであった。このように、本発明の方法により作製されたNCA/LLZ複合体を用いたコインセルにおいては、比較試料のNCA/LLZ複合体と比較して、作製した電池のインピーダンスが顕著に低くなった。また、本発明のNCA/LLZ複合体を用いた電池においては、充放電時のレート特性が良好であった。
図1
図2