【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例について説明する。本実施例は、双方向チョッパ回路を単位変換器とし、前記双方向チョッパ回路を複数直列接続して構成した3つの変換器アームと変圧器の3つの2次巻線をそれぞれ直列接続した回路3つを並列接続し、並列接続点の一方を直流正側端子、他方を直流負側端子とし、前記変圧器の1次巻線を三相電力系統に接続し、前記変圧器の3次巻線をΔ結線した電力変換装置である。
【0019】
また、本実施例は、前記の電力変換装置2つの直流端子どうし、または、前記の電力変換装置1つと他方式の電力変換装置1つの直流端子どうしを、例えば直流送電線を介して接続したHVDC、周波数変換装置(FC)、またはBTB(Back−to−Back)システムの構成である。
【0020】
本実施例によれば、前記の直流送電線での地絡・短絡事故発生時に、直流事故電流が交流系統側に零相直流電流として流出することを防止できるという効果が得られる。
【0021】
まず、
図1を用いて、実施例1の全体構成を説明する。
【0022】
電力変換装置103は変圧器104と遮断器105を介して交流系統101に接続している。交流系統101は接地点102にて接地されている。また、変圧器104の1次巻線のa、b、c点に交流系統101を、2次巻線のu、v、w点に変換器アーム106u、v、wの一端を接続しており、3次巻線はΔ結線されている。なお、変圧器104の詳細構成については
図4〜6を用いて後述する。また、各変換器アーム106u、v、wの他端は直流正側端子(P点)に接続されており、さらに、変圧器2次巻線の中性点は直流負側端子(N点)に接続されている。
【0023】
すなわち、変圧器2次巻線(
図4の402)と各変換器アーム106u、v、wが直列接続された回路が、P点とN点で並列接続されている構成となっている。
【0024】
直流正側端子(P点)と直流負側端子(N点)には直接、あるいは図示されていない直流送電線を介して他端電力変換装置109を接続している。ここで、他端電力変換装置109は、電力変換装置103と同一構成または異なる構成とすることができる。
【0025】
各変換器アーム106u、v、wは複数の単位変換器107の直列回路である。単位変換器107の内部構成については
図2、3を用いて後述する。
【0026】
以下、
図1中に図示した電圧、電流を定義する。
【0027】
交流系統101のa相相電圧をVSa、b相相電圧をVSb、c相相電圧をVScと称する。
【0028】
また、変圧器104のu点とu相変換器アーム106uに流れる電流をIu、変圧器104のv点とv相アーム106vに流れる電流をIv、変圧器104のw点とw相アーム106wに流れる電流をIwと称する。
【0029】
さらに、u相アーム106uに含まれる1つまたは複数の単位変換器107の出力電圧の和をu相アーム106uの出力電圧Vuと称する。同様に、v相アーム106vに含まれる1つまたは複数の単位変換器107の出力電圧の和をv相アーム106vの出力電圧Vv、w相アーム104wに含まれる1つまたは複数の単位変換器107の出力電圧の和をw相アーム106wの出力電圧Vwと称する。
【0030】
直流正側端子(P点)と直流負側端子(N点)の間の電圧をVDCと称する。また、電力変換装置103から他端電力変換装置109に流れる電流を直流電流IDCと称する。
【0031】
電力変換装置103と他端電力変換装置109が電力を融通している場合、直流電流IDCは概ね1/3ずつ変換器アーム106u、v、wに分流し、さらに変圧器2次巻線を零相電流として流れる。
【0032】
さらに、各単位変換器107のコンデンサ電圧をVCjkと称する。ここで、jは該単位変換器が属する変換器アーム106u、v、wを表わしており、例えばj=u、v、wである。また、kは該アーム106u、v、w内での番号であり、例えばk=1、2、…、Mである。ここで、Mはアーム106u、v、wに含まれる単位変換器107の数である。
【0033】
以下、
図2、3を用いて単位変換器107の内部構成の一例を説明する。単位変換器107として、例えば片極性の電圧を出力できる双方向チョッパ回路形単位変換器107cやフルブリッジ回路形単位変換器107fを用いることができる。まず、
図2を用いて双方向チョッパ回路形単位変換器107cの回路構成を説明する。
【0034】
上側スイッチング素子201Hと上側環流ダイオード202Hが逆並列接続された回路と、下側スイッチング素子201Lと下側環流ダイオード202Lが逆並列接続された回路とをa点で直列接続し、該直列接続された回路をコンデンサ203と並列接続している。
【0035】
本明細書では上側スイッチング素子201Hと下側スイッチング素子201L、および後述の
図3で説明するX相上側スイッチング素子201XH、X相下側スイッチング素子201XL、Y相上側スイッチング素子201YH、Y相下側スイッチング素子201YLを総称して単にスイッチング素子201と称する。
【0036】
なお、
図2、3では、スイッチング素子201としてIGBTの記号を描いているが、オン・オフ制御可能なパワー半導体デバイスであれば、GTO、GCT、MOSFET (Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)等、IGBTとは異なる種類のスイッチング素子を用いることも可能である。
【0037】
前記のa点と、コンデンサ203の一端(n点)の間の電圧を単位変換器107の出力電圧Vjkと称する。ただし、j=u、v、w、k=1、2、…、Mであり、Mは各変換器アーム104U、V、Wに含まれる単位変換器107の数を表わす。
【0038】
以下、双方向チョッパ形単位変換器107cの出力電圧Vjkと、スイッチング素子201H、Lのオン・オフ状態の関係を説明する。
【0039】
上側スイッチング素子201Hがオン、下側スイッチング素子201Lがオフの場合、電流Ij(j=u、v、w)に関わらず、出力電圧Vjkをコンデンサ電圧VCjkと概ね等しく制御できる。
【0040】
上側スイッチング素子201Hがオフ、下側スイッチング素子201Lがオンの場合、電流Ijに関わらず、出力電圧Vjkを零と概ね等しく制御できる。
【0041】
以下、直流正側端子(P点)と直流負側端子(N点)の間を短絡する直流事故108が発生した場合の電流について説明する。
【0042】
直流事故108が発生すると、直流電流IDCが増加する。したがって、各変換器アーム106u、v、wと変圧器2次巻線402を流れる零相電流も増加する。
【0043】
特開2010−239723にて開示されているように、各単位変換器107のスイッチング素子201を全てオフすると、コンデンサ203(またはコンデンサ301)から、直流事故108への電流の流出を防止できる。
【0044】
各単位変換器107のスイッチング素子を全てオフした後、各変換器アーム106u、v、wは、各単位変換器107cの下側還流ダイオード201Lが存在するために、半波整流器として動作する。このため、交流系統101から直流事故108に交流事故電流が流入する。この交流事故電流は、遮断器105によって遮断可能であり、交流事故電流が遮断された後、直流側事故電流は減衰する。
【0045】
本発明の発明者らは、前記交流事故電流が流れている期間おいて、前記交流事故電流に加えて、変圧器104の各巻線の自己・相互インダクタンスに依存して、零相直流電流が交流系統101に流出する場合があることを見出した。この原理と解決方法について、以下で説明する。
【0046】
まず、
図4〜6を用いて、変圧器104の内部構成の一例を説明する。
【0047】
最初に、
図4を用いて、変圧器104の各巻線の結線状態の一例について説明する。
【0048】
a相鉄心脚404aに、a相1次巻線401a、a脚u相2次巻線402au、a脚w相2次巻線402aw、rs相3次巻線403rsを巻回している。また、b相鉄心脚404bに、b相1次巻線401b、b脚v相2次巻線402bv、b脚u相2次巻線402bu、st相3次巻線403stを巻回している。同様に、c相鉄心脚404cに、c相1次巻線401c、c脚w相2次巻線402cw、c脚v相2次巻線402cv、st相3次巻線403tsを巻回している。
【0049】
すなわち、変圧器104は、1次巻線、2つの2次分割巻線、3次巻線という、4つの三相巻線を備えている。
【0050】
また、変圧器104の各鉄心脚404a、b、cが独立した磁路を構成し、3つの単相変圧器として構成されている場合、言い換えれば、電力変換装置102は、4つの単相巻線を有する3つの単相変圧器を備えていると言える。
【0051】
1次巻線401a、b、cをスター結線しており、g点で接地している。
【0052】
また、2次分割巻線402aw、bu、cvはN点でスター結線している。
【0053】
さらに、2次分割巻線402au、bv、cwのそれぞれの一端は、u点、v点、w点を介して変換器アーム106u、v、wに接続している。
【0054】
2次分割巻線402au、bv、cwの、変換器アーム106u、v、wと反対側の端は、それぞれ2次分割巻線402aw、bu、cvのN点とは反対側の端に接続している。
【0055】
言い換えれば、6つの2次分割巻線402au、bv、cw、aw、bu、cvは千鳥結線を構成している。本実施例では、6つの2次分割巻線402au、bv、cw、aw、bu、cvを総称して単に2次巻線と称する。ここで、2次分割巻線402au、bv、cw、aw、bu、cvの巻数は概ね等しい。
【0056】
なお、
図4では、2次分割巻線402au、bv、cw、aw、bu、cvの結線として、例えば402auと402buが接続している場合を描いているが、2次巻線402が
図4とは異なる2次分割巻線の組み合わせを用いた千鳥結線となっている場合にも、本発明は適用可能であり、本実施例はこのような場合も含んでいるものとする。
【0057】
3次巻線403の各巻線403rs、st、trはΔ結線されている。
図4では、r、s、tの各点に何も接続していないが、本実施例はr、s、t点に補機等の負荷や電源を接続した場合も含んでいるものとする。r、s、t点に負荷を接続した場合、3次巻線403をからこれらの負荷に電力を供給できるという効果を得られる。また、r、s、t点に電源を接続した場合、3次巻線403から各変換器アーム106u、v、wの単位変換器107に含まれるコンデンサ203(および
図3のコンデンサ301)を充電できるという効果を得られる。
【0058】
3つの鉄心脚404a、b、cが、3脚鉄心を構成していても、図示していない他の2脚とともに5脚鉄心を構成していても、本発明は適用可能である。また、3つの鉄心脚404a、b、cが独立した磁路を構成し、変圧器104が3つの単相変圧器として構成されている場合にも本発明は適用可能である。
【0059】
ここで、本明細書では、変圧器104の巻線のうち、交流系統101に接続されている巻線を1次巻線と称し、変換器アーム106u、v、wに接続されている巻線を2次巻線、Δ結線されている巻線を3次巻線と称しているが、「1次」、「2次」、「3次」は説明のための便宜的な呼称であって、呼称が異なっていても本発明は適用可能である。
【0060】
次に、
図5、6を用いて、各巻線と鉄心脚の配置について説明する。
【0061】
図5、6は、変圧器104の一相分の鉄心脚と巻線の配置例の1つを示した概略断面図である。
図5と
図6では巻線配置が異なる。後述するように、本発明の発明者らは、
図5の巻線配置では、前述の直流事故電流の交流系統への零相直流電流として流出するが、
図6では流出する電流を低減できることを見出した。
【0062】
図5では、a相鉄心脚404aに対して近い側から、rs相3次巻線403rs、a脚u相2次分割巻線402au、a脚w相2次分割巻線402aw、a相1次巻線401aの順序で配置している。
【0063】
一方、
図6では、a相鉄心脚404aに対して近い側から、rs相3次巻線403rs、a相1次巻線401a、a脚u相2次分割巻線402au、a脚w相2次分割巻線402awの順序で配置している。
【0064】
以下、
図7を用いて、
図5、6の巻線配置で、直流事故電流の交流系統への零相直流電流としての流出の大きさが異なる原理を説明する。
【0065】
図7は、変圧器104の一相分の各巻線の自己・相互インダクタンスを用いた等価回路である。
【0066】
なお、L1をa相1次巻線401aの自己インダクタンスであるとし、L2をa脚u相2次分割巻線402auの自己インダクタンスであるとし、L3をa脚w相2次分割巻線402awの自己インダクタンスであるとし、L4をrs相3次巻線403rsの自己インダクタンスであるとする。
【0067】
さらに、M12(=M21)をa相1次巻線401aとa脚u相2次分割巻線402auの相互インダクタンスであるとし、M13(=M31)をa相1次巻線401aとa脚w相2次分割巻線402awの相互インダクタンスであるとし、M14をa相1次巻線401aとrs相3次巻線403rsの相互インダクタンスであるとし、M23(=M32)をa脚u相2次分割巻線402auとa脚w相2次分割巻線402awの相互インダクタンスであるとし、M24(=M42)をa脚u相2次分割巻線402auとrs相3次巻線403rsの相互インダクタンスであるとし、M34をa脚w相2次分割巻線402awとrs相3次巻線403rsの相互インダクタンスであるとする。
【0068】
L1を流れる電流をi1とし、L2を流れる電流をi2とし、L3を流れる電流をi3とし、L4を流れる電流をi4とする。
【0069】
また、a相1次巻線401aに誘起される電圧をv1、a脚u相2次分割巻線402auに誘起される電圧をv2、a脚w相2次分割巻線402awに誘起される電圧をv3、rs相3次巻線403rsに誘起される電圧をv4とする。
【0070】
さらに、i1によってL2、L3、L4に誘起される電圧をそれぞれv12、v13、v14とし、i2によってL1、L3、L4に誘起される電圧をそれぞれv21、v23、v24とし、i3によってL1、L2、L4に誘起される電圧をそれぞれv31、v32、v34とし、i4によってL1、L2、L3に誘起される電圧をそれぞれv41、v42、v43とする。
【0071】
なお、外部回路701〜704は、それぞれa相1次巻線401a、a脚u相2次分割巻線402au、a脚w相2次分割巻線402aw、rs相3次巻線403rsの外部回路を代表して描いたものである。
【0072】
図7の変圧器等価回路において(1)式が成立する。
【0073】
【数1】
【0074】
相互インダクタンスM12(=M21)、M13(=M31)、M14(=M41)、M23(=M32)、M24(=M42)、M34(=M43)を結合係数を用いて表わせば、(1)式は(2)式〜式(7)で表わすことができる。
【0075】
【数2】
【0076】
【数3】
【0077】
【数4】
【0078】
【数5】
【0079】
【数6】
【0080】
【数7】
【0081】
以下、
図1、4、7、(1)〜(7)式を用いて、直流事故108が発生した場合に、各巻線に流れる電流について説明する。ただし、変圧器2次側の直流電流は零相成分のみであるとして、各電圧・電流の零相成分のみに着目して説明する。
【0082】
直流事故108が発生すると、IDCが増加し、
図4のN点からu、v、wの各点に向かって1/3ずつ2次巻線402を流れる直流電流(IDC/3)も増加する。
【0083】
図4に示すように、IDC/3の方向は、a脚u相2次分割巻線402auとa脚w相2次分割巻線402awとで逆向きとなる。
【0084】
したがって、
図7の等価回路では、i2=−i3=−IDC/3となる。
【0085】
ここで、直流事故108が発生した場合の1次巻線401と3次巻線403に印加される零相電圧について説明する。
【0086】
交流系統101の相電圧VSa、VSb、VScは零相成分を含まないとすると、1次巻線401に印加される零相電圧は概ね零である。したがって、
図7においてv1は概ね零である。
【0087】
また、3次巻線403はΔ結線されているため、3次巻線403に印加される零相電圧は概ね零である。したがて、
図7においてv4は概ね零である。
【0088】
前述のように、i2=−i3=−IDC/3とすると、
図7および(1)〜(7)式より、i1、i4は(8)、(9)式で表わされる。
【0089】
【数8】
【0090】
【数9】
【0091】
また、(8)、(9)式のそれぞれの第2項中の(v21+v31)と(v24+v34)は(10)、(11)式で表わされる。
【0092】
【数10】
【0093】
【数11】
【0094】
(9)、(10)、(11)式を(8)式に代入すれば、(12)式を得る。
【0095】
【数12】
【0096】
ここで、M12、M13、M14、M24、M34に(2)〜(4)、(6)、(7)式を代入すれば、(13)式を得る。
【0097】
【数13】
【0098】
すなわちi1は(14)式で表わされる。
【0099】
【数14】
【0100】
ただし、(13)、(14)式中のA、Bは(15)、(16)式で表わされる。
【0101】
【数15】
【0102】
【数15】
【0103】
ここで、各結合係数k12、k13、k14、k24、k34の組み合わせによって、(14)〜(16)式のAとBが強め合う場合(A>0、B>0またはA<0、B<0)と弱めあう場合(A>0、B<0またはA<0、B>0)がある。
【0104】
k12>k13かつ、k24>k34の場合、(15)、(16)式の括弧内が共に正となる。これによってA>0、B<0となり、AとBは異符号となるためA+Bは弱めあう。すなわちi1は小さくなる。
【0105】
k12<k13かつ、k24<k34の場合、(15)、(16)式の括弧内が共に負となる。これによってA<0、B>0となり、AとBは異符号となるためA+Bは弱めあう。すなわちi1は小さくなる。
【0106】
k12>k13かつ、k24<k34の場合、(15)式の括弧内が正、(16)式の括弧内が負となる。これによってA>0、B>0となり、AとBは同符号となるためA+Bは強め合う。すなわちi1は大きくなる。
【0107】
k12<k13かつ、k24>k34の場合、(15)式の括弧内が負、(16)式の括弧内が正となる。これによってA<0、B<0となり、AとBは同符号となるためA+Bは強め合う。すなわちi1は大きくなる。
【0108】
以上をまとめると、結合係数k12、k13の大小関係が、結合係数k24、k34の大小関係と等しい場合、i1は小さくなる。
【0109】
逆に、結合係数k12、k13の大小関係が、結合係数k24、k34の大小関係と異なる場合、i1は大きくなる。
【0110】
以下、
図5、6に示した2つの巻線配置と、以上で説明した結合係数の大小関係の対応を説明する。
前述のように、
図5では、a相鉄心脚404aに対して近い側から、rs相3次巻線403rs、a脚u相2次分割巻線402au、a脚w相2次分割巻線402aw、a相1次巻線401aの順序で配置している。
【0111】
図5では、a相1次巻線401aに対して、a脚u相2次分割巻線402auがより遠くに、a脚w相2次分割巻線402awがより近くに配置されている。したがって、a相1次巻線401aとa脚u相2次分割巻線402auの結合係数k12は、a相1次巻線401aとa脚w相2次分割巻線402awの結合係数k13より小さい(k12<k13)。
【0112】
また、rs相3次巻線403rsに対して、a脚u相2次分割巻線402auがより近くに、a脚w相2次分割巻線402awがより遠くに配置されている。したがって、rs相3次巻線403rsとa脚u相2次分割巻線402auの結合係数k24は、rs相3次巻線403rsとa脚w相2次分割巻線402awの結合係数k34より大きい(k24>k34)。
【0113】
以上から、
図5の巻線配置ではk12<k13かつk24>k34となっているため、(14)式のAとBが共に負となる。したがって、直流事故108が発生した場合にIDCが増加し、これに伴って1次巻線401を介して大きな零相直流電流が交流系統101に流出してしまう。
【0114】
一方、
図6では、a相1次巻線401aに対して、a脚u相2次分割巻線402auがより近くに、a脚w相2次分割巻線402awがより遠くに配置されている。したがって、a相1次巻線401aとa脚u相2次分割巻線402auの結合係数k12は、a相1次巻線401aとa脚w相2次分割巻線402awの結合係数k13より大きい(k12>k13)。
【0115】
また、rs相3次巻線403rsに対して、a脚u相2次分割巻線402auがより近くに、a脚w相2次分割巻線402awがより遠くに配置されている。したがって、rs相3次巻線403rsとa脚u相2次分割巻線402auの結合係数k24は、rs相3次巻線403rsとa脚w相2次分割巻線402awの結合係数k34より大きい(k24>k34)。
【0116】
以上から、
図6の巻線配置ではk12>k13かつk24>k34となっているため、(14)式のAが負、Bが正となる。したがって、直流事故108が発生した場合にIDCが増加し、これに伴って1次巻線401を介して零相直流電流が交流系統101に流出することを低減できる。
【0117】
なお、
図6において、2次分割巻線402auと402awの位置を入れ替えても同様の効果が得られる。
【0118】
以上、
図6の巻線配置を用いることによって、直流事故108の発生時に交流系統101に流出する零相直流電流を低減できる原理を説明した。
【0119】
以下、
図8、9の概略波形を用いて、
図5の巻線構成と
図6の巻線構成を用いた場合の影響と効果を説明する。
【0120】
図8は、
図5の巻線構成を用いた場合の
図1の電力変換装置102において、直流事故108が発生し、その後、遮断器105によって事故電流を遮断するまでの概略波形である。ただし、交流系統101として、理想電源を仮定したため、直流事故発生時(時刻T1<t<T2)においても交流系統101の相電圧VSa、VSb、VScは変化しない波形を描いた。
【0121】
図8の各波形は、上から交流系統101の相電圧VSa、VSb、VSc、交流系統101に流れる電流ISa、ISb、ISc、交流系統に流れる零相電流ISa+ISb+ISc(=Ig)、直流電圧VDC、直流電流IDCの概略波形である。
【0122】
時刻t=T1以前では、電力変換装置102は交流系統101から有効電力を受電し、図示されていない直流送電線を介して他端電力変換装置109に直流電力を送電する整流器運転を行っていた。
【0123】
時刻t=T1で直流事故108が発生すると、直流電圧VDCが概ね零まで低下し、交流系統101から交流事故電流が流入する。したがって、ISa、ISb、IScの振幅が増加する。
【0124】
前述のように、各変換器アーム106u、v、wは、直流事故発生中には半波整流器として動作し、直流電流IDCの振幅も増加する。
【0125】
ここで、
図5の巻線配置を用いた変圧器104では、前述のようにIDCの増加によって、1次巻線401a、b、cに大きな零相直流電流が誘導されるため、零相電流ISa+ISb+IScが流出してしまう。ISa+ISb+ISc(=Ig)は変圧器104の接地点(g点)と交流系統101の接地点102の間を流れる。この零相電流ISa+ISb+ISc(=Ig)によって、交流系統101に流れる電流ISa、ISb、IScはオフセットが重畳された波形となるため、遮断器105の遮断性能に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0126】
時刻t=T2で遮断器105が三相とも開放し、ISa、ISb、IScは零となる。その後、IDCは減衰する。
【0127】
一方、
図9は、
図6の巻線構成を用いた場合の
図1の電力変換装置102において、直流事故108が発生し、その後、遮断器105によって事故電流を遮断するまでの概略波形である。
図8と同じく、交流系統101として、理想電源を仮定したため、直流事故発生時(時刻T1<t<T2)においても交流系統101の相電圧VSa、VSb、VScは変化しない波形を描いた。
【0128】
図9の各波形は、
図8と同様に、上から交流系統101の相電圧VSa、VSb、VSc、交流系統101に流れる電流ISa、ISb、ISc、交流系統に流れる零相電流ISa+ISb+ISc(=Ig)、直流電圧VDC、直流電流IDCの概略波形である。
【0129】
時刻t=T1以前では、電力変換装置102は交流系統101から有効電力を受電し、図示されていない直流送電線を介して他端電力変換装置109に直流電力を送電する整流器運転を行っていた。
【0130】
時刻t=T1で直流事故108が発生すると、直流電圧VDCが概ね零まで低下し、交流系統101から交流事故電流が流入する。したがって、ISa、ISb、IScの振幅が増加する。
【0131】
前述のように、各変換器アーム106u、v、wは、直流事故発生中には半波整流器として動作し、直流電流IDCの振幅も増加する。
【0132】
ここで、
図6の巻線配置を用いた変圧器104では、前述のようにIDCの増加によって、1次巻線401a、b、cに誘導される零相直流電流を低減できるという効果を得られる。したがって、ISa、ISb、IScに重畳するオフセットも低減できるため、遮断器105の遮断性能を、交流電流のみの場合と大略等しくできるという効果を得られる。
【0133】
時刻t=T2で遮断器105が三相とも開放し、ISa、ISb、IScは零となる。その後、IDCは減衰する。
【0134】
以上、
図8、
図9の概略波形を用いて、
図6の巻線配置によって、直流事故時の零相直流電流を低減できるという効果を説明した。
【0135】
なお、本実施例では、単位変換器107として、双方向チョッパセル形単位変換器107cを用いた場合について主に説明したが、
図4に示すフルブリッジ回路形単位変換器104fを用いた場合にもIDCが増加するような場合には同様の効果を得られる。
【0136】
また、
図2の双方向チョッパセル形単位変換器107cや、
図4のフルブリッジ回路形単位変換器104fとは異なる方式の単位変換器であっても、本発明は適用可能である。
【0137】
さらに、結合係数の大小関係が前述の条件を満たしていれば、
図6に示す巻線配置以外の巻線配置を有する変圧器を用いた場合にも、
図6と同様の効果が得られる。
【0138】
実施例1において、直流負側端子(N点)を接地することができる。この場合、変圧器2次巻線の対地直流電位を概ね零とすることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0139】
本発明の第2の実施例について説明する。
【0140】
本実施例は、双方向チョッパ回路を単位変換器とし、前記双方向チョッパ回路を複数直列接続して構成した3つの変換器アームと変圧器の3つの2次巻線をそれぞれ直列接続した回路3つを並列接続し、並列接続点の一方を直流正側端子、他方を直流負側端子とし、前記変圧器の1次巻線を三相電力系統に接続し、前記変圧器の3次巻線をΔ結線した電力変換装置である。
【0141】
また、本実施例は、前記の電力変換装置2つの直流端子どうし、または、前記の電力変換装置1つと他方式の電力変換装置1つの直流端子どうしを、例えば直流送電線を介して接続したHVDC、周波数変換装置(FC)、またはBTB(Back−to−Back)システムの構成である。
【0142】
実施例1との相違点は、変換器アームと変圧器2次巻線を直列接続する位置を変更した点である。
【0143】
本実施例によれば、実施例1と同様に、前記の直流送電線での地絡・短絡事故発生時に、直流事故電流が交流系統側に零相直流電流として流出することを防止できるという効果が得られる。
【0144】
また、本実施例では、電力変換装置の直流正側端子と直流負側端子の中点を接地した場合に、変圧器2次巻線の対地直流電位を概ね零にできるという効果を得られる。
【0145】
まず、
図10を用いて、実施例1の全体構成を説明する。
【0146】
電力変換装置1001は変圧器1002と遮断器1003を介して交流系統101に接続している。交流系統101は接地点102にて接地されている。また、変圧器1002の1次巻線のa、b、c点に交流系統101を、2次巻線のup、vp、wp点とun、vn、wn点の間に変換器アーム1004u、v、wを接続しており、3次巻線はΔ結線されている。なお、変圧器1002の詳細構成については
図11を用いて後述する。また、各変換器アーム1004u、v、wのup、vp、wp点の反対側の端は直流正側端子(P点)に接続されており、さらに、各変換器アーム1004u、v、wのun、vn、wn点の反対側の端は直流負側端子(N点)に接続されている。
【0147】
すなわち、変圧器2次巻線(
図11の1102)と各変換器アーム1004u、v、wが直列接続された回路が、P点とN点で並列接続されている構成となっている。
【0148】
直流正側端子(P点)と直流負側端子(N点)には直接、あるいは図示されていない直流送電線を介して他端電力変換装置109を接続している。ここで、他端電力変換装置109は、電力変換装置1001と同一構成または異なる構成とすることができる。
【0149】
各変換器アーム1004u、v、wは複数の単位変換器107の直列回路である。単位変換器107の内部構成については
図2、3に示した通りである。
【0150】
以下、
図11を用いて、変圧器1002の各巻線の結線状態の一例について説明する。
【0151】
a相鉄心脚1104aに、a相1次巻線1101a、a脚u相2次巻線1102au、a脚w相2次巻線1102aw、rs相3次巻線1103rsを巻回している。また、b相鉄心脚1104bに、b相1次巻線1101b、b脚v相2次巻線1102bv、b脚u相2次巻線1102bu、st相3次巻線1103stを巻回している。同様に、c相鉄心脚1104cに、c相1次巻線1101c、c脚w相2次巻線1102cw、c脚v相2次巻線1102cv、st相3次巻線1103tsを巻回している。
【0152】
すなわち、変圧器1002は、1次巻線、2つの2次分割巻線、3次巻線という、4つの三相巻線を備えている。
【0153】
また、変圧器1002の各鉄心脚1104a、b、cが独立した磁路を構成し、3つの単相変圧器として構成されている場合、言い換えれば、電力変換装置1001は、4つの単相巻線を有する3つの単相変圧器を備えていると言える。
【0154】
1次巻線1101a、b、cをスター結線しており、g点で接地している。
【0155】
また、2次分割巻線1102aw、bu、cvのそれぞれの一端は、wn、un、vnを介して変換器アーム1004u、v、wに接続している
さらに、2次分割巻線1102au、bv、cwのそれぞれの一端は、up点、vp点、wp点を介して変換器アーム1004u、v、wに接続している。
【0156】
2次分割巻線1102au、bv、cwの、変換器アーム1004u、v、wと反対側の端は、それぞれ2次分割巻線1102aw、bu、cvの変換器アーム1004w、u、vの反対側の端に接続している。
【0157】
言い換えれば、6つの2次分割巻線1102au、bv、cw、aw、bu、cvはオープン千鳥結線を構成している。本実施例では、6つの2次分割巻線1102au、bv、cw、aw、bu、cvを総称して単に2次巻線と称する。ここで、2次分割巻線1102au、bv、cw、aw、bu、cvの巻数は概ね等しい。
【0158】
なお、
図11では、2次分割巻線1102au、bv、cw、aw、bu、cvの結線として、例えば1102auと1102buが接続している場合を描いているが、2次巻線1102が
図11とは異なる2次分割巻線の組み合わせを用いた千鳥結線となっている場合にも、本発明は適用可能であり、本実施例はこのような場合も含んでいるものとする。
【0159】
3次巻線1103の各巻線1103rs、st、trはΔ結線されている。
図11では、r、s、tの各点に何も接続していないが、本実施例はr、s、t点に補機等の負荷や電源を接続した場合も含んでいるものとする。r、s、t点に負荷を接続した場合、3次巻線403をからこれらの負荷に電力を供給できるという効果を得られる。また、r、s、t点に電源を接続した場合、3次巻線403から各変換器アーム1004u、v、wの単位変換器107に含まれるコンデンサ203(および
図3のコンデンサ301)を充電できるという効果を得られる。
【0160】
3つの鉄心脚1104a、b、cが、3脚鉄心を構成していても、図示していない他の2脚とともに5脚鉄心を構成していても、本発明は適用可能である。また、3つの鉄心脚1104a、b、cが独立した磁路を構成し、変圧器1002が3つの単相変圧器として構成されている場合にも本発明は適用可能である。
【0161】
ここで、本明細書では、変圧器1002の巻線のうち、交流系統101に接続されている巻線を1次巻線と称し、変換器アーム1004u、v、wに接続されている巻線を2次巻線、Δ結線されている巻線を3次巻線と称しているが、「1次」、「2次」、「3次」は説明のための便宜的な呼称であって、呼称が異なっていても本発明は適用可能である。
【0162】
本実施例では、実施例1の説明に用いた
図5、
図6において、各符号を次のように置き換えた巻線配置を用いるものとする。すなわち、401aを1101aに、402auを1102auに。402awを1102awに、403rsを1103rsにそれぞれ置き換えたものとする。
【0163】
各符号を前述のように置き換えた
図6の巻線配置を用いると、実施例1と同様に、直流事故108が発生した場合に1次巻線1101に誘導され、交流系統101に流出する零相直流電流を低減できるという効果を得られる。
【0164】
なお、本実施例では、単位変換器107として、双方向チョッパセル形単位変換器107cを用いた場合について主に説明したが、
図4に示すフルブリッジ回路形単位変換器104fを用いた場合にもIDCが増加するような場合には同様の効果を得られる。
【0165】
また、
図2の双方向チョッパセル形単位変換器107cや、
図4のフルブリッジ回路形単位変換器104fとは異なる方式の単位変換器であっても、本発明は適用可能である。
【0166】
さらに、結合係数の大小関係が前述の条件を満たしていれば、
図6に示す巻線配置以外の巻線配置を有する変圧器を用いた場合にも、
図6と同様の効果が得られる。
【0167】
ここで,本実施例の
図6のように,千鳥結線となっている2次巻線402を鉄心脚404a,b,cから遠い位置に配置することによって,例えば落雷等によって2つの2次分割巻線の間に生じるサージ電圧に対する絶縁性の確保を容易にできるという効果も得られる。
【実施例3】
【0168】
本発明の第3の実施例について説明する。
【0169】
本実施例は、双方向チョッパ回路を単位変換器とし、前記双方向チョッパ回路を複数直列接続して構成した3つの変換器アームと変圧器の3つの2次巻線をそれぞれ直列接続した回路3つを並列接続し、並列接続点の一方を直流正側端子、他方を直流負側端子とし、前記変圧器の1次巻線を三相電力系統に接続し、前記変圧器の3次巻線をΔ結線した電力変換装置である。
【0170】
また、本実施例は、前記の電力変換装置2つの直流端子どうし、または、前記の電力変換装置1つと他方式の電力変換装置1つの直流端子どうしを、例えば直流送電線を介して接続したHVDC、周波数変換装置(FC)、またはBTB(Back−to−Back)システムの構成である。
【0171】
実施例2との相違点は、変圧器2次巻線の結線状態を変更した点である。
【0172】
本実施例によれば、実施例1、2と同様に、前記の直流送電線での地絡・短絡事故発生時に、直流事故電流が交流系統側に零相直流電流として流出することを防止できるという効果が得られる。
【0173】
また、本実施例では、実施例2と同様に、電力変換装置の直流正側端子と直流負側端子の中点を接地した場合に、変圧器2次巻線の対地直流電位を概ね零にできるという効果を得られる。
【0174】
まず、
図12を用いて、実施例3の全体構成を説明する。
【0175】
電力変換装置1201は変圧器1202と遮断器1203を介して交流系統101に接続している。交流系統101は接地点102にて接地されている。また、変圧器1202の1次巻線のa、b、c点に交流系統101を、2次巻線のup、vp、wp点に正側変換器アーム1204up、vn、wnを接続しており、2次巻線のun、vn、wn点に負側変換器アーム1204un、vn、wnを接続しており、3次巻線はΔ結線されている。なお、変圧器1202の詳細構成については
図13を用いて後述する。また、各正側変換器アーム1204up、vp、wpのup、vp、wp点と反対側の端は直流正側端子(P点)に接続されており、さらに、各負側変換器アーム1204のun、vn、wn点と反対側の端は直流負側端子(N点)に接続されている。
【0176】
すなわち、変圧器2次巻線(
図13の1302)と各変換器アーム1004up、vp、wp、un、vn、wnが直列接続された回路が、P点とN点で並列接続されている構成となっている。
【0177】
直流正側端子(P点)と直流負側端子(N点)には直接、あるいは図示されていない直流送電線を介して他端電力変換装置109を接続している。ここで、他端電力変換装置109は、電力変換装置1201と同一構成または異なる構成とすることができる。
【0178】
各変換器アーム1204up、vp、wp、un、vn、wnは複数の単位変換器107の直列回路である。単位変換器107の内部構成については
図2、3に示した通りである。
【0179】
以下、
図13を用いて、変圧器1202の各巻線の結線状態の一例について説明する。
【0180】
a相鉄心脚1304aに、a相1次巻線1301a、u相正側2次巻線1302up、u相負側2次巻線1302un、rs相3次巻線1303rsを巻回している。また、b相鉄心脚1304bに、b相1次巻線1301b、v相正側2次巻線1302vp、v相負側2次巻線1102vn、st相3次巻線1303stを巻回している。同様に、c相鉄心脚1304cに、c相1次巻線1301c、w相正側2次巻線1302wp、w相負側2次巻線1302wn、st相3次巻線1303tsを巻回している。
【0181】
すなわち、変圧器1202は、1次巻線、正側2次巻線、負側2次巻線、3次巻線という、4つの三相巻線を備えている。
【0182】
また、変圧器1202の各鉄心脚1304a、b、cが独立した磁路を構成し、3つの単相変圧器として構成されている場合、言い換えれば、電力変換装置1201は、4つの単相巻線を有する3つの単相変圧器を備えていると言える。
【0183】
1次巻線1301a、b、cをスター結線しており、g点で接地している。
【0184】
また、2次分割巻線1302un、vn、wnのそれぞれの一端は、wn、un、vnを介して負側変換器アーム1204un、vn、wnに接続している
さらに、2次分割巻線1302up、bp、wpのそれぞれの一端は、up点、vp点、wp点を介して正側変換器アーム1204u、v、wに接続している。
【0185】
2次分割巻線1302up、vp、wpの、正側変換器アーム1204up、vp、wpと反対側の端は、それぞれ2次分割巻線1302un、vn、wnの負側変換器アーム1204un、vn、wnの反対側の端に接続している。
【0186】
言い換えれば、6つの2次分割巻線1302up、vp、wp、un、vn、wnはダブルスター結線を構成している。本実施例では、6つの2次分割巻線1302up、vp、wp、un、vn、wnを総称して単に2次巻線と称する。ここで、2次分割巻線1302up、vp、wp、un、vn、wnの巻数は概ね等しい。
【0187】
なお、
図13では、2次分割巻線1302up、vp、wp、un、vn、wnの結線として、例えば402auと402buが接続している場合を描いているが、2次巻線1302が
図13とは異なる2次分割巻線の組み合わせを用いたダブルスター結線となっている場合にも、本発明は適用可能であり、本実施例はこのような場合も含んでいるものとする。
【0188】
3次巻線1303の各巻線1303rs、st、trはΔ結線されている。
図13では、r、s、tの各点に何も接続していないが、本実施例はr、s、t点に補機等の負荷や電源を接続した場合も含んでいるものとする。r、s、t点に負荷を接続した場合、3次巻線403をからこれらの負荷に電力を供給できるという効果を得られる。また、r、s、t点に電源を接続した場合、3次巻線403から各変換器アーム1204up、vp、w
p、un、vn、wnの単位変換器107に含まれるコンデンサ203(および
図3のコンデンサ301)を充電できるという効果を得られる。
【0189】
3つの鉄心脚1304a、b、cが、3脚鉄心を構成していても、図示していない他の2脚とともに5脚鉄心を構成していても、本発明は適用可能である。また、3つの鉄心脚1304a、b、cが独立した磁路を構成し、変圧器1202が3つの単相変圧器として構成されている場合にも本発明は適用可能である。
【0190】
ここで、本明細書では、変圧器1203の巻線のうち、交流系統101に接続されている巻線を1次巻線と称し、変換器アーム1004u、v、wに接続されている巻線を2次巻線、Δ結線されている巻線を3次巻線と称しているが、「1次」、「2次」、「3次」は説明のための便宜的な呼称であって、呼称が異なっていても本発明は適用可能である。
【0191】
本実施例では、実施例1の説明に用いた
図5、
図6において、各符号を次のように置き換えた巻線配置を用いるものとする。すなわち、401aを1301aに、402auを1302auに。402awを1302awに、403rsを1303rsにそれぞれ置き換えたものとする。
【0192】
各符号を前述のように置き換えた
図6の巻線配置を用いると、実施例1、2と同様に、直流事故108が発生した場合に1次巻線1301に誘導され、交流系統101に流出する零相直流電流を低減できるという効果を得られる。
【0193】
なお、本実施例では、単位変換器107として、双方向チョッパセル形単位変換器107cを用いた場合について主に説明したが、
図4に示すフルブリッジ回路形単位変換器104fを用いた場合にもIDCが増加するような場合には同様の効果を得られる。
【0194】
また、
図2の双方向チョッパセル形単位変換器107cや、
図4のフルブリッジ回路形単位変換器104fとは異なる方式の単位変換器であっても、本発明は適用可能である。
【0195】
さらに、結合係数の大小関係が前述の条件を満たしていれば、
図6に示す巻線配置以外の巻線配置を有する変圧器を用いた場合にも、
図6と同様の効果が得られる。