(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
拡径されている合成樹脂製のチューブが外嵌される嵌合筒部と、前記嵌合筒部の径外側に形成される雄ねじとを備える継手本体、及び、前記雄ねじに螺合する雌ねじと、前記チューブにおける拡径されている部分と拡径されていない部分との間の径変化部を軸心方向に押すチューブ押圧部とを備えるユニオンナットを有し、
前記雌ねじと前記雄ねじとを螺合させての前記ユニオンナットの螺進により前記チューブ押圧部が前記径変化部を押圧する締付完了状態では、前記雄ねじの基端と前記ユニオンナットの先端との互いの軸心方向位置が合致する構成とされ、
前記継手本体は、前記雄ねじのねじ谷以下の外径を有して前記雄ねじの基端に続く小径胴部と、前記小径胴部に続いて形成されて前記継手本体を回動不能に支持可能なトルク受部とを有するとともに、前記トルク受部の径が前記雄ねじのねじ谷の径以下で、かつ、前記小径胴部の径以上となる値に設定され、
前記ユニオンナットの先端と前記トルク受部との間に差込み可能な検査治具を有し、前記検査治具の厚みが、前記締付完了状態からさらに前記ユニオンナットが所定量締付方向に回動された増し締め状態での前記ユニオンナットの先端と前記トルク受部との間の間隙寸法に合致させてある管接続装置。
【背景技術】
【0002】
この種の管接続装置(管継手)は、例えば、特許文献1において開示されたものが知られている。即ち、継ぎ手本体(1)の嵌合筒(4)にチューブ(3)が外嵌されて拡径部(3A)を生じる状態で、雌ねじ(8)と雄ねじ(5)との螺合によるユニオンナット(2)の螺進により、拡径変化領域(9)がチューブ押圧部(シール用押圧部:10)で押圧される構成の樹脂管継手として開示されている。
【0003】
特許文献1にて示される管接続装置は、作業者が手指で握ってユニオンナットを回し操作して締付けられることでチューブを継ぎ手本体にシール状態で接続させるものであり、締付トルクが極力伝わり易くなるように、ユニオンナットの外周には滑り止めの細かい凹凸(ギザギザ)が周方向に連続形成されていた。
人為操作でユニオンナットを回して締付ける手段では、回す工具を必要としないので、工具を忘れて操作不可になる不都合もなく、簡単で便利に管接続装置を組付けできる良さがある。しかしながら、良好にシールできるように管継手用ナットを作業者の人為操作力で十分に締付けるにそれ相応の力が必要であり、大型のものには向かないとか作業者が限定され易いなどの不利はあった。
【0004】
一方、特許文献2にて開示されるように、ユニオンナットを操作簡単で良好に強固に締付けることができる工具も提供されている。即ち、回転操作具である引掛けスパナを使用すれば、比較的簡単な工具操作でありながらユニオンナットの強固な締付けが行えるので、非力であるとか熟練未熟などを問わずに管接続装置の組付け作業が行える利点がある。
しかしながら、引掛けスパナを回動操作するための空間部は必要になるため、管接続装置の回りにあまりスペースが無い場合には不適であり、使用状況が限られてしまう不利がある。なお、特許文献2においては、合成樹脂製のユニオンナットに好適となるように、引掛けスパナもプラスチック製とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、管接続装置において、ユニオンナットの締付けによる螺進により、チューブ押圧部が継手本体に嵌合されているチューブを強く押付けてシールされる状態になれば、その締付作業が完了する。手指の力でユニオンナットを締付ける手段では、相当な労力を必要とはするが、チューブ押圧部がチューブを押すことによる急激なトルク増大により、締付完了状態又はその直前になったことが比較的判り易い利点がある。
これに対して、回しパワーが増幅される引掛けスパナを用いて締付ける手段では、手指で直接に操作する場合に比べて、前記トルク増大が感覚的に判り難い傾向がある。そのため、往々にして締め過ぎてしまうとか、逆に若干緩い状態で締付を終えてしまうという新たな不都合のおそれがあった。
従って、手指で締付ける手段と引掛けスパナで締付ける手段とは何れも一長一短があり、ケースバイケースで適宜に選択して用いられる。
【0007】
前述したように、合成樹脂製の管接続装置は、医療・医薬品や食品といった比較的デリケートな取扱いが要求される流体の配管中に用いられており、複雑に入り組んだ配管設備中に配備されることが多い。そのため、壁際や高所に配置されたポンプとタンクとの間の箇所といった具合に、管継手は非常に狭小なスペースに配置されることが多い。
従って、手指で締付ける手段であっても引掛けスパナで締付ける手段であっても、場所が狭くて操作し難いとか、締付完了状態であるか否かの確認が行い辛いことが多い。特に、締付完了状態であるか否かについては、締付不良による漏れのおそれや締付け過ぎによる部材損傷のおそれがあり、いずれの締付手段を採る場合であっても肝要な事項である。
【0008】
以上のように、作業条件やスペースの点で不利になり易い管接続装置においては、締付完了状態の認識が行い難い傾向にあるため、「如何に締付完了状態であることを正しく認識するか」ということに関しては改善の余地が残されているものであった。
このような実情に鑑みて、本発明の目的は、さらなる構造工夫により、締付完了状態であるか否かの確認が容易化され、所期する継手機能が良好に発揮されるように改善された管接続装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、管接続装置において、
拡径されている合成樹脂製のチューブ3が外嵌される嵌合筒部4と、前記嵌合筒部4の径外側に形成される雄ねじ5とを備える継手本体1、及び、前記雄ねじ5に螺合する雌ねじ9と、前記チューブ3における拡径されている部分3Aと拡径されていない部分3Cとの間の径変化部3Bを軸心Q方向に押すチューブ押圧部11とを備えるユニオンナット2を有し、
前記雌ねじ9と前記雄ねじ5とを螺合させての前記ユニオンナット2の螺進により前記チューブ押圧部11が前記径変化部3Bを押圧する締付完了状態では、前記雄ねじ5の基端5bと前記ユニオンナット2の先端2aとの互いの軸心P,Q方向位置が合致する構成とされていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の管接続装置において、
前記継手本体1は、前記雄ねじ5のねじ谷5a以下の外径を有して前記雄ねじ5の基端に続く小径胴部6と、前記小径胴部6に続いて形成されて前記継手本体1を回動不能に支持可能なトルク受部7とを有するとともに、前記トルク受部7の径が前記雄ねじ5のねじ谷5aの径以下で、かつ、前記小径胴部6の径以上となる値に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の管接続装置において、
前記雄ねじ5、及びこれに螺合する前記雌ねじ9が共に台形ねじに形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の管接続装置において、
前記ユニオンナット2の先端2aと前記トルク受部7との間に差込み可能な検査治具Tを有し、前記検査治具Tの厚みが、前記締付完了状態からさらに前記ユニオンナット2が所定量締付方向に回動された増し締め状態での前記ユニオンナット2の先端2aと前記トルク受部7との間の間隙寸法に合致させてあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、雄ねじの基端とユニオンナットの先端との軸心方向位置が合致したことの目視確認により、締付完了状態であるか否かの判断が容易に行えるから、締付作業性に優れるものとなる。例えば、回動操作して締付けているユニオンナットの先端と継手本体の雄ねじの基端とが合致して、それまで目視できていた雄ねじが見えなくなる状態(参考:
図10の紙面右側に描かれている状態)になればユニオンナットの回し操作を止めればよく、丁度そのときが組付完了状態となる。
その結果、さらなる構造工夫により、締付完了状態であるか否かの確認が容易化され、所期する継手機能が良好に発揮される管接続装置を提供することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、トルク受部が比較的小径なものに構成されているので、周囲スペース条件などにより、雄ねじの基端とユニオンナットの先端との軸心方向位置が合致したことをトルク受部側の斜め方向から目視確認せざるを得ない状況でも、トルク受部が邪魔にならず視認し易いようにできる。
従って、小径胴部やトルク受部に必要となる強度を持たせながらも、トルク受部側からの斜め方向の目視が容易化され、この点からも締付完了状態であるか否かの確認が容易化される管接続装置が実現可能である。
【0015】
請求項3の発明によれば、継手本体の雄ねじ、及びユニオンナットの雌ねじが台形ねじで形成されているので、一般的なねじに比べて、ねじ山の幅やピッチが大きくてねじが視認し易い。従って、ユニオンナットの螺進によって雄ねじがユニオンナット内に螺入されて次第に隠れて行く様が目視確認し易いものとなり、締付作業性が改善される。また、ねじ山(ねじ条)の強度を高くできるので、金属に比べては強度の劣る合成樹脂などの低強度材料での作製にも好適である。
【0016】
請求項4の発明によれば、ユニオンナットの先端面とトルク受部との間に検査治具を差し込んで、ユニオンナットの先端面とトルク受部との間に間隙があるか否かを確認するだけの簡単な操作でありながら、増し締めが完了したことや正規の増し締め量であることを容易にチェックすることができる利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明による管接続装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、継手本体1においては、トルク受部7を中央として軸心P方向で部材の各端となる方向が先端側で、その逆を基端側と定義し、ユニオンナット2においては、雌ねじ9存在側の端が先端側で、その逆を基端側と定義する。
【0019】
〔実施形態1〕
図1,
図11に管接続装置Aが示されている。この管接続装置Aは、フッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製のチューブ3を、ポンプ、バルブ等の流体機器や、異径又は同径のチューブに連通接続するものであって、半透明なフッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製の継手本体1と、半透明なフッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製のユニオンナット2との2部品で構成されている。なお、
図1は、ユニオンナット2を締め込んでチューブ3がシール状態で継手本体1に接続される組付状態(組付完了状態)を示している。
【0020】
継手本体1は、
図1〜
図3に示すように、例として、両端それぞれに互いに同径のチューブ3を接続可能で軸心Pを有する左右対称な筒状の部品であって、それぞれ一対の嵌合筒部4と雄ねじ5と小径胴部6、及びそれぞれ単一のトルク受部7と内部流路8とを備えて構成されている。
嵌合筒部4は、チューブ3の端部を拡径して圧入外嵌装着可能な箇所であって最も軸心P方向で突出している部分である。
雄ねじ5は、嵌合筒部4の径外側で、かつ、軸心P方向で嵌合筒部4の基端側に寄って形成される大径の台形ネジで成る部分である。
【0021】
小径胴部6は、雄ねじ5のねじ谷5a以下の外径を有して雄ねじ5の基端に続く軸心P方向長さの短い円筒部分である。
トルク受部7は、継手本体1を回動不能に支持可能な六角ナット状の部分であって、小径胴部6に続いて両小径胴部6,6の間に形成されている部分である。
内部流路8は、継手本体1の内部を軸心P方向貫く円形のトンネルとなる部分であり、移送対象流体が流れる箇所である。
【0022】
嵌合筒部4は、チューブ3を徐々に拡径させることが可能な先窄まり状のテーパ外周面4aと、チューブ3の拡径部(チューブ3における拡径されている部分)3Aを外嵌する直胴外周面4bと、先端側ほど大径となる状態で内周側先端に形成されるカット面4cとを有している。また、嵌合筒部4の基端側部分と雄ねじ5との径方向の間には、拡径部3Aを入れ込むための周溝mが行止り状にて形成されている。雄ねじ5の先端の軸心P方向位置は、嵌合筒部4における軸心P方向の略中央となる位置に設定されている。
【0023】
小径胴部6は、周溝mの径方向幅で略中央値となる大きさの外径が付与されており、雄ねじ5の基端に形成される径差の大きな側周壁(基端)5bを介して雄ねじ5に連続されている。六角ナット状のトルク受部7は、その対向する二面間寸法(スパナやレンチが掛けられる寸法)が、小径胴部6の径より若干大きくて、かつ、周溝mの最大径よりも小さい値に設定され、望ましくは、対向する両角間寸法(最大径となる箇所)は、雄ねじ5のねじ谷5aの径よりは小さい値とされている。
【0024】
ユニオンナット2は、
図1,
図4〜
図6に示すように、ナット薄肉部2Aと、ナット厚肉部2Bと、雌ねじ9と、押え内周部10と、チューブ押圧部11と、深溝(溝又は凹部の一例)12と、浅溝13とを有しており、継手本体1より透明度に優れる材料で形成されている。
ナット薄肉部2Aは、ユニオンナット2における軸心Q方向で先端側の部分であって、その内周側には、継手本体1の雄ねじ5に螺合可能な台形ネジでなる雌ねじ9が形成され、外周側には、軸心Q方向に沿う状態で周方向の均等角度毎に形成される複数の浅溝13が形成さえれている。また、ナット薄肉部2Aの先端部には、浅溝13が無く平坦な外周面を持つフランジ部23が形成されている。
【0025】
ナット厚肉部2Bは、ユニオンナット2における軸心Q方向で基端側の部分であって、雌ねじ9から軸心Q方向に離れて内周部に形成される最小径のチューブ押圧部11と、チューブ押圧部11と雌ねじ9との軸心Q方向間に、チューブ押圧部11よりも大径で雌ねじ9よりも小径となる状態で形成される押え内周部10とを備えている。
ナット厚肉部2Bの外周側に形成される深溝12は、軸心Q方向長さが極めて短く平坦な外周面を有する状態で基端に形成される小径外周部2bと同径の底面12aを有して、軸心Q方向に沿う状態で周方向の均等角度毎に形成されている。ナット厚肉部2Bの径方向の厚みは、総じてナット薄肉部2Aの径方向の厚みよりも厚い。
【0026】
深溝12は、引掛けスパナSにより、その爪15を係合させて締込み側及び緩み側の双方に強制回動されることが可能となるように、比較的深い深さを有する断面矩形の溝であり(
図10参照)、これら各深溝12に軸心Q方向で連続する状態で複数の浅溝13が形成されている。つまり、深溝12と浅溝13とは互いに同数(8箇所)であり、浅溝13は、引掛けスパナSの爪15を係合させて強制回動することが不能となるように、浅い深さを有する断面矩形の溝としてナット薄肉部2Aの外周に形成されている。
【0027】
ナット厚肉部2Bの内周側に形成されるチューブ押圧部11は、
図1に示す組付状態において、チューブ3における拡径されている部分である拡径部3Aと拡径されていない部分である自然径部3Cとの間の径変化部3Bを軸心P(軸心Q)方向に押すことが可能な部分である。チューブ押圧部11の内径は、ほぼ自然径部3Cの径と略等しい値に設定されており、チューブ押圧部11の基端側には、僅かに径の大きいガイド筒部14が形成されている。
ユニオンナット2の締込みにより、チューブ押圧部11の押圧面11aは軸心Qに直交する側周面とされ、径変化部3Bにおける径の小さい側を軸心P方向に強く押し、径変化部3Bとテーパ外周面4aとを密着させての良好なシール状態を得ることが可能である。
押え内周部10は、
図1に示す組付状態において、嵌合筒部4に圧入外嵌されている拡径部3Aの外周に密接する程度の値で径一定な筒部に形成されている。
【0028】
また、
図5,
図6に示すように、ナット薄肉部2Aの軸心Q方向での端面である先端面(先端)2aに、深溝12(及び浅溝13)の径方向位置と互いに合致する径方向位置を有する目印部kが計8箇所に形成されている。目印部kは、先端面2aの内周側に開口して軸心Q方向視形状が矩形を呈する凹みで形成されている。
【0029】
チューブ3の端部を嵌合筒部4に外嵌挿入するには、常温下で強制的にチューブ3を押し込んで拡径させて装着するか、熱源を用いて暖めて変形し易いようにしてから押し込むか、或いは拡径器(図示省略)を用いて予めチューブ3の端部を拡径させておいてから嵌合筒部4に押し込むかする。
そして、
図1に示すように、チューブ3の端面3tが周溝mのほぼ奥まで入り込む状態となるまで差し込む。ここで、嵌合筒部4に外嵌装着される「チューブ3の端部」とは、直胴外周面4bに外嵌される拡径部3Aと、テーパ外周面4aに外嵌される径変化部3Bとで成る部分のことである。
なお、チューブ3の内部流路3Wの径と、継手本体1の内部流路8の径とは、円滑な流体の流れとすべく互いに同径又はほぼ同径に設定されているが、互いに異なっていても良い。
【0030】
つまり、
図1に示すように、嵌合筒部4にチューブ3が外嵌装着された状態における雌ねじ9を雄ねじ5に螺合させてのユニオンナット2の締込みによる軸心P方向への螺進により、径変化部3Bがチューブ押圧部11で軸心P方向に押され、かつ、拡径部3Aに押え内周部10が外嵌されるように設定されている。
加えて、ユニオンナット2の先端面2aと継手本体1の側周壁5bとが軸心P方向で合致するとき(
図1に示す状態)が、チューブ押圧部11で押される径変化部3Bとテーパ外周面4aとが密着して良好にシールされる組付完了状態となるように設定されている。なお、「合致する」は、「端面が揃う」とか「面一となる」と置き換えても良い。
【0031】
さて、ユニオンナット2を強制回動して締付ける作業は、
図7に示す引掛けスパナSを用いて行う。引掛けスパナSは、約180度湾曲した鉤状の先端部16、手指で握る柄部17、先端部16の内周側に形成される3箇所の爪15とを備える合成樹脂製のナット回し工具である。三箇所の爪15は、ユニオンナット2における周方向に連続した3箇所の深溝12に丁度係合できる離間角度及び大きさ・形状に設定されている。
各爪15の回し方向上手側となる麓には、深溝12との確実な係合を図るための凹入部18が形成されている。
【0032】
引掛けスパナSを用いてユニオンナット2を回すには、まず、
図8に示すように、先ず、最先端の爪15をナット厚肉部2Bのいずれかの深溝12に入れ込み、それから、手指(図示省略)で握っている柄部17を操作して、先端部16がユニオンナット2に近付く方向に回動移動させる。
すると、
図9に示すように、3箇所の爪のそれぞれが、対応する各深溝12に正規に入り込んだ操作可能状態になる。それから、柄部17を握る手指(図示省略)に力を入れて矢印R方向に動かせば、ユニオンナット2を強制回動して締付けることができる。
【0033】
次に、検査治具Tについて説明する。この管接続装置Aにおいては、経時によるユニオンナット2の増し締め時における増し締め完了状態の検査が可能な検査治具Tを伴う場合がある。検査治具Tは、
図12に示すように、二股に分かれた検査部19,19と把持部20とを有する略U字形状を呈する合成樹脂製で板状のものに形成されている。各検査部19は、把持部20と同じ厚さの基端検査部19aと、基端検査部19aよりも厚みが若干小さい先端検査部19bとを備えており、
図12(b)に示されるように、側面視では段付形状の部品に形成されている。
【0034】
検査治具Tの使い方の例としては、
図13に示すように、一対の検査部19,19を、その段の無い平坦面21がユニオンナット2の先端面2aに向く姿勢で小径胴部6に差し込みを開始し、段のある段付面22の段面22aがトルク受部7に当接するまで検査治具Tを差し込む。その状態でトルク受部7と先端面2aとの間に隙間なく先端検査部19bが挟まれておれば、増し締め完了状態であることを認識することができる、というものである。なお、平坦面21がトルク受部7に向く使い方も可能である。
即ち、検査治具Tにおける先端検査部19bの厚みが、締付完了状態(
図1,
図11参照)からさらにユニオンナット2が所定量締付方向に回動された増し締め状態(増し締め完了状態)でのユニオンナット2の先端面(先端の一例)2aとトルク受部7との間の間隙寸法に合致されているのである。
【0035】
一方、検査治具Tを用いて、管接続装置Aの締付完了状態であるか否かの検査を行うこともできる。即ち、
図10の紙面右側の管接続装置Aにて仮想線にて描かれているように、トルク受部7と先端面2aとの間に隙間なく基端検査部19aが差し込まれる状態であれば、側周壁5bと先端面2aとが軸心P,Q方向で互いに同一面となる締付状態(締付完了状態)であることが認識できる。
【0036】
〔作用や効果などについて〕
(1)
図4〜
図6に示すように、透視可能なユニオンナット2を用いてあるので、雌ねじ9と雄ねじ5との螺合状態を透視確認しながら締付け操作が行え、内部見通しができない場合に比べて、狭小な作業環境や入り組んだ箇所での締付完了状態であることや締付完了状態に近付いている状態などを見て確認できて作業性に優れるものとなる。そして、径方向の肉厚がナット薄肉部2Aよりも厚いナット厚肉部2Bに深溝12が形成されるので、ユニオンナット2を強度十分なものにしながらも小径化が行える、という合理的設計が可能となっている。
【0037】
(2) さて、管接続装置Aにおいては、
図1に示すように、雌ねじ9と雄ねじ5とを螺合させてのユニオンナット2の螺進によりチューブ押圧部11が径変化部3Bを押圧する締付完了状態では、雄ねじ5の基端、即ち側周壁5bとユニオンナット2の先端、即ち先端面2aとの互いの軸心P(Q)方向位置が合致する構成とされている。
故に、
図10に示すように、軸心Pに交差する方向視において、回動操作して締付けているユニオンナット2の先端面2aと継手本体1の側周壁5bとが合致して、それまで目視できていた雄ねじ5が見えなくなる状態(
図10の紙面右側に描かれている状態)になればユニオンナット2の回し操作を止めればよく、丁度そのときが組付完了状態となっているのである。
従って、
図11に示すように、軸心P方向に直交する方向である矢印イ方向の目視により、先端面2aと側周壁5bとが合致しているか否か、即ち、組付け完了状態であるか否かを容易に確認することができる。
【0038】
(3) また、
図11に示されるように、管接続装置Aの締付完了状態では、雌ねじ9と略同一長さに設定される雄ねじ5の軸心P方向端と、深溝12の軸心Q方向端との軸心(P,Q)方向での位置がほぼ合致する状態となるように深溝12が形成されている。
従って、
図11に示すように、例えば、斜め方向からの矢印ロ方向の目視により、半透明のユニオンナット2、詳しくはナット薄肉部2Aを見通して、深溝12の先端(深溝12と浅溝13との境目)と雄ねじ5の先端5cとが合致又はほぼ合致しているか否かを見分けることができ、従って、組付け完了状態であるか否かの確認が可能となる。
例えば、矢印イ方向の目視ができないような場合にも有効な視認手段であるとともに、引掛けスパナSをユニオンナット2に係合させた操作状態であっても行えることが可能になる、という優れものである。
【0039】
(4)
図4〜
図6,
図11などに示すように、ユニオンナット2の外周には、深溝12に続けて浅溝13が形成されているので、爪15を浅溝13に引っ掛けてスライド移動させれば爪15を簡単に深溝12に係合さえての回動操作状態を得ることができる。つまり、浅溝13は、引掛けスパナSの爪15を深溝12に導くガイドとして機能させることが可能であるとともに、深溝12と浅溝13とが一直線上に並ぶことでデザイン性の向上にも寄与している。例えば、管接続装置Aが狭小な箇所や見えにくい場所に配置されているような場合でも、深溝12のみが形成されている場合に比べて、容易に引掛けスパナSを使うことができて便利である。
【0040】
(5)
図4〜
図6に示すように、ユニオンナット2の先端面2aには、深溝12及び浅溝13と軸心Qに関する径方向位置を合致させた目印部kが形成されている。従って、その目印部kの目視確認や手指での触診により、ユニオンナット2の先端側(ナット背面側)からの引掛けスパナSの爪15の係合位置確認が行い易い利点がある。
【0041】
(6)
図1や
図3に示すように、雄ねじ5のねじ谷5aの径以下の外径を有する小径胴部6と、ねじ谷5aの径以下で、かつ、小径胴部6の径以上となる値に設定される状態で小径胴部6に連続形成されるトルク受部7とを備えている。これにより、小径胴部6やトルク受部7に必要となる強度を持たせながら、雄ねじ5の基端、即ち側周壁5bとユニオンナット2の先端面2aとの軸心P,Q方向位置が合致したことを斜めから目視確認せざるを得ない状況が生じても、
図11に矢印ハで示すように、小径のトルク受部7が邪魔にならず視認し易く、従って、締付作業性が良いものとなる。
【0042】
(7)
図1や
図4に示すように、継手本体1の雄ねじ5、及びユニオンナット2の雌ねじ9が台形ねじで形成されているので、一般的なねじ(例:メートルねじ)に比べて、ねじ山の幅やピッチが大きくてねじが視認し易いものとなっている。それゆえ、
図10に示すように、ユニオンナット2の螺進によって雄ねじ5がユニオンナット2内に螺入されて次第に隠れて行く様が目視確認し易い利点があり、締付作業性が良い。また、ねじ山(ねじ条)の強度を高くできるので、合成樹脂などの金属に比べて比較的弱いとされる材料での作製にも好適である。
【0043】
(8)
図13に示すように、ユニオンナット2の先端面2aとトルク受部7との間に差込み可能な検査治具Tを有し、検査治具Tの先端検査部19bの厚みが、締付完了状態からさらにユニオンナット2が所定量締付方向に回動された増し締め状態での先端面2aとトルク受部7との間の間隙寸法に合致させてある。これにより、ユニオンナット2の先端面2aとトルク受部7との間に検査治具Tを差し込むだけの簡単な操作で、増し締めが完了したことや正規の増し締め量であることを容易にチェックすることができる。
【0044】
〔別実施形態など〕
実施形態においては、継手本体1やユニオンナット2が透視可能な半透明な材料から形成されているが、これらが透明度がなく見通し不可となる材料製でも良い。また、雄ねじ5や雌ねじ9は、メートルねじやインチねじなどの台形ねじ以外のものであっても良い。さらに、検査治具Tを有さない管接続装置Aでも良い。さらに、管接続装置としては、例えば、エルボ、チーズなど、ユニオン以外の形状であっても良い。