特許第6018950号(P6018950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018950
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】円筒形カットアウト
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/20 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   H01H85/20 B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-39542(P2013-39542)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167874(P2014-167874A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博光
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−152035(JP,A)
【文献】 特開2003−303537(JP,A)
【文献】 実開昭48−72433(JP,U)
【文献】 実開昭51−28428(JP,U)
【文献】 特開2006−218839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に上部電極が固定されるとともに、下部側面に下部電極が固定される円筒状の本体碍子と、前記本体碍子の下端に形成された開口部を閉蓋する有底筒状の閉蓋部材と、を備えた円筒形カットアウトにおいて、
前記閉蓋部材の底部には、放射状の切り込みによって複数の切片が形成され、
前記閉蓋部材の底部は、前記切片によって開閉可能な開閉部となり、
前記開閉部の下面には、複数の突起又は突条が設けられている
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記閉蓋部材の底部には、放射状の溝が設けられ、
前記溝に前記切り込みが形成される
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記閉蓋部材は、前記本体碍子の下部内壁に装着される円筒状の固定筒部と、
前記固定筒部に連続して前記本体碍子の外部に露出するとともに、前記開閉部を有する露出筒部と、を備え、
前記固定筒部の内径よりも前記露出筒部の内径を大きく形成する
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項4】
請求項3に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記閉蓋部材の前記露出筒部の内壁のうち、前記開閉部よりも前記固定筒部側は、前記固定筒部の内壁と連続するテーパ面となっている
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記下部電極には、固定部材により下部モールドコーンが固定接続され、
前記閉蓋部材の前記固定筒部の外壁上部には、前記固定部材を収容する収容溝を形成する
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記閉蓋部材の前記露出筒部の外壁上部に鍔部を備えた
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項7】
請求項6に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記鍔部の下面には、前記閉蓋部材の取付方向を示す突部又は溝部が設けられている
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記閉蓋部材の前記開閉部は、中央を頂点とする円錐状に形成されている
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の円筒形カットアウトにおいて、
前記閉蓋部材の前記開閉部の上面には、複数の突起又は突条が形成されている
ことを特徴とする円筒形カットアウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧配電線路において柱上用変圧器の保護装置として使用される円筒形カットアウトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電用変圧器を保護するために設置される磁器製の本体碍子内にヒュ−ズ筒が収納された円筒形カットアウトが知られている(例えば、特許文献1参照)。この円筒形カットアウトは、上部電極と下部電極とが設けられる。ヒューズ筒は、上部電極と下部電極とを接続する。ヒューズ筒の上端には、管状の上部接触子を固定した絶縁筒が設けられる。絶縁筒には、環状の接触部を有する下部接触子が貫装される。絶縁筒の下端には、表示筒が固着される。下部接触子と表示筒との間には付勢部材が介在される。絶縁筒内には、ヒューズが上部接触子と下部接触子との間に付勢部材によって張設される。ヒューズは、ヒューズエレメントとヒューズリード線とが直列に接続されている。ヒューズリード線の先端には、接続端子が設けられる。下部接触子に設けられる固定部には、接続端子が締付固定される。
【0003】
本体碍子の下端には、閉蓋部材が固定されている。閉蓋部材は、本体碍子の下端開口部を閉蓋する。閉蓋部材の底面には、放射状に切り込みが形成されたことで開閉する開閉部が設けられている。円筒形カットアウトにおける配電線路の負荷開放操作やヒュ−ズ筒の交換などの着脱作業を行う際には、作業員が電柱に上がって安全に行えるように操作棒を使用する。操作棒を使用してヒューズ筒を着脱する際には、操作棒を閉蓋部材の開閉部に押し当てて、開閉部を開いて本体碍子内に挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−152035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の円筒形カットアウトでは、操作棒を閉蓋部材の開閉部に押し当てて本体碍子内に挿入する際に、開閉部の切り込みによって切り分けられた切片が操作棒の外周に接触するために抵抗が大きく、挿入が難しいことがある。また、上記の円筒形カットアウトでは、本体碍子内に挿入した操作棒を抜き出す際に、操作棒の外周に接触した開閉部の切片が閉じる方向に変位することで取り出しが難しいことがある。特に開閉部が2枚の切片で形成されている場合は挿入、抜出ができないことがある。したがって、本体碍子に対する操作棒の挿入と抜出とが容易な円筒形カットアウトが望まれていた。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配電線路の負荷開放操作やヒューズ筒の交換などの着脱作業を行う際に、本体碍子に対する操作棒の挿入と抜出とが容易な円筒形カットアウトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決する円筒形カットアウトは、上端に上部電極が固定されるとともに、下部側面に下部電極が固定される円筒状の本体碍子と、前記本体碍子の下端に形成された開口部を閉蓋する有底筒状の閉蓋部材と、を備えた円筒形カットアウトであって、前記閉蓋部材の底部には、放射状の切り込みによって複数の切片が形成され、前記閉蓋部材の底部は、前記切片によって開閉可能な開閉部となり、前記開閉部の下面には、複数の突起又は突条が設けられていることをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、閉蓋部材の開閉部の下面に複数の突起又は突条を設けた。このため、配電線路の負荷開放操作やヒューズ筒の交換などの着脱作業を行う際に、複数の突起又は突条が設けられた閉蓋部材の開閉部に操作棒を押し当てて本体碍子内に挿入する。この時、複数の突起又は突条が操作棒の外周に接触することで、切片は操作棒の外周と面接触ではなく点接触又は線接触となり、接触面積を減少させることができるので、接触抵抗を軽減できる。また、本体碍子内に挿入した操作棒を抜き出す際に、操作棒の外周に接触して開いた開閉部の切片が閉じる方向に変位する。この時、複数の突起又は突条が操作棒の外周に接触することで、切片は操作棒の外周と面接触ではなく点接触となり、接触面積を減少させることができるので、接触抵抗を軽減できる。よって、本体碍子に対して操作棒を容易に挿入できるとともに、本体碍子から操作棒を容易に抜出できる。
【0009】
上記円筒形カットアウトについて、前記閉蓋部材の底部には、放射状の溝が設けられ、前記溝に前記切り込みが形成されることが好ましい。
同構成によれば、切り込みが形成される放射状の溝が閉蓋部材の底部に設けられる。このため、溝に沿って切り込みを行えるので、切り込み作業が容易である。また、切り込みの切断面が溝によって見え難いので、見栄えをよくできる。
【0010】
上記円筒形カットアウトについて、前記閉蓋部材は、前記本体碍子の下部内壁に装着される円筒状の固定筒部と、前記固定筒部に連続して前記本体碍子の外部に露出するとともに、前記開閉部を有する露出筒部と、を備え、前記固定筒部の内径よりも前記露出筒部の内径を大きく形成することが好ましい。
【0011】
同構成によれば、固定筒部の内径よりも露出筒部の内径を大きく形成する。このため、固定筒部に開閉部を形成した場合よりも、開閉部の切片を長くすることができる。これにより、折り曲がりが容易となるので、接触抵抗を小さくできる。
【0012】
上記円筒形カットアウトについて、前記閉蓋部材の前記露出筒部の内壁のうち、前記開閉部よりも前記固定筒部側は、前記固定筒部の内壁と連続するテーパ面となっていることが好ましい。
【0013】
同構成によれば、閉蓋部材の露出筒部の内壁はテーパ面となっている。このため、操作棒やヒューズ筒を挿入する際に、テーパ面によって本体碍子の中央に誘導され、挿入作業が容易である。
【0014】
上記円筒形カットアウトについて、前記下部電極には、固定部材により下部モールドコーンが固定接続され、前記閉蓋部材の前記固定筒部の外壁上部には、前記固定部材を収容する収容溝を形成することが好ましい。
【0015】
同構成によれば、閉蓋部材の固定筒部の外壁上部に収容溝を形成した。このため、固定部材に閉蓋部材が当接して湾曲することがなく、閉蓋部材を本体碍子に確実に固定できる。
【0016】
上記円筒形カットアウトについて、閉蓋部材の露出筒部の外壁上部には、鍔部が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、閉蓋部材の前記露出筒部の外壁上部に鍔部を備えた。このため、閉蓋部材を本体碍子内に取り付ける際に、鍔部が本体碍子の下端に当接することで、閉蓋部材の挿入を規制して閉蓋部材の取付位置を決めることができる。
【0017】
上記円筒形カットアウトについて、前記鍔部の下面には、前記閉蓋部材の取付方向を示す突部又は溝部が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、鍔部の下面に突部又は溝部を設けた。このため、突部又は溝部を目印にして閉蓋部材を本体碍子に取り付けることで、閉蓋部材の収容溝を固定部材に合わせることができる。
【0018】
上記円筒形カットアウトについて、前記閉蓋部材の前記開閉部は、中央を頂点とする円錐状に形成されていることが好ましい。
同構成によれば、閉蓋部材の開閉部が円錐状に形成されている。このため、切片が経年劣化によって垂れ下がり、開閉部が開口することを抑制する。これにより、閉蓋部材の開閉部から本体碍子内に粉塵や雨水等の侵入を抑制できる。
【0019】
上記円筒形カットアウトについて、前記閉蓋部材の前記開閉部の上面には、複数の突起又は突条が形成されていることが好ましい。
同構成によれば、閉蓋部材の開閉部の上面に複数の突起又は突条が形成されている。このため、本体碍子内に挿入した操作棒を抜き出す際に、複数の突起又は突条が設けられた開閉部の上面に操作棒の外周が接触する可能性がある。この時、複数の突起又は突条が操作棒の外周に接触することで、切片全面で接触するよりも接触面積を減少することができ、接触抵抗を軽減できる。よって、本体碍子から操作棒を容易に抜出できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配電線路の負荷開放操作やヒューズ筒の交換などの着脱作業を行う際に、本体碍子に対する操作棒の挿入と抜出とが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】円筒形カットアウトの概略構成を示す断面図。
図2】円筒形カットアウトの閉蓋部材の構造を示す拡大断面図。
図3】円筒形カットアウトの閉蓋部材の開閉部の構造を示す拡大断面図。
図4】円筒形カットアウトの閉蓋部材の下面を示す下面図。
図5】円筒形カットアウトの閉蓋部材の構造を示す側面図。
図6】円筒形カットアウトに対する操作棒の挿入状態を示す断面図。
図7】円筒形カットアウトの閉蓋部材の構造を示す断面図。
図8】円筒形カットアウトの閉蓋部材の開閉部の構造を示す拡大断面図。
図9】円筒形カットアウトの閉蓋部材の構造を示す断面図。
図10】円筒形カットアウトの閉蓋部材の下面を示す下面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
さて、図1に示されるように、円筒形カットアウト1の磁器製の本体碍子10は円筒状に形成されている。本体碍子10の外周面には複数個の絶縁襞18が形成されている。本体碍子10の下端は開口され、下端開口部14を形成している。本体碍子10の内部には、円柱状の上部室11と、上部室11の下部に連通するとともに上部室11の内径よりも拡径された円柱状の下部室12とが形成されている。円筒形カットアウト1は、取付金具55によって電柱の腕金に取り付けられる。取付金具55は、本体碍子10の上下方向中央の外周に固定されている。
【0023】
円筒形カットアウト1は、本体碍子10内の上部室11と下部室12とにヒュ−ズ筒40が収納されている。円筒形カットアウト1には、上部電極23と下部電極34とが設けられている。本体碍子10の上端部13には、円錐状の上部モールドコーン21が接着剤によって接着されている。上部モールドコーン21の引出線21aには、配電線路の外部電線が接続される。また、本体碍子10の下部側壁15には、円錐状の下部モールドコーン31が接着剤によって接着されている。下部モールドコーン31の引出線31aの基端には、接続線32が接続されている。下部モールドコーン31の接続線32は、下部電極34に螺子止めされている。接続線32は、固定部材である四角ナット33によって接続線32を本体碍子10内に固定されている。下部モールドコーン31は、四角ナット33によって本体碍子10に固定されている。下部モールドコーン31の引出線31aには、配電線路に設けられた変圧器等の機器が外部電線を介して接続される。下部電極34は、本体碍子10内の下部室12に嵌合係止されている。下部電極34の上部には、樹脂製の緩衝部材36が配置されている。緩衝部材36は、緩衝板37を介して下部室12の上部に当接されている。
【0024】
ヒューズ筒40は、上部電極23と下部電極34とを接続する。ヒューズ筒40の上端には、管状の上部接触子41を固定した絶縁筒42が設けられている。絶縁筒42には、環状の接触部47aを有する下部接触子47が貫装される。絶縁筒42の下端には、表示筒48が固着される。下部接触子47と表示筒48との間にはばね49が介在される。絶縁筒42内には、ヒューズ44が上部接触子41と下部接触子47との間にばね49によって張設される。ヒューズ44は、ヒューズエレメント45とヒューズリード線46とが直列に接続されている。ヒューズリード線46の先端には、接続端子46aが設けられる。下部接触子47に設けられる固定部47bには、接続端子46aが締付螺子50によって締付固定される。ヒューズ筒40の上部接触子41と下部接触子47とは、ヒューズエレメント45、ヒューズリード線46を介して電気的に接続されている。ヒューズエレメント45は、規定値を越える電流が流れると溶断される。ヒューズ筒40には、円筒状の消弧筒35が環装されている。消弧筒35の下端は、緩衝板37の上面に当接している。
【0025】
本体碍子10の下部室12の内壁12aには、本体碍子10の下端開口部14を閉蓋する閉蓋部材60が接着剤17によって固着されている。閉蓋部材60は、耐トラッキング性のゴム材や軟質合成樹脂等の弾性部材によって有底円筒状に形成されている。
【0026】
図2に示されるように、閉蓋部材60は、本体碍子10に固定される固定筒部61と、固定筒部61に連続して本体碍子10の外部に露出する露出筒部62とを備えている。露出筒部62内には、本体碍子10の下端開口部14を閉蓋する底部が設けられている。閉蓋部材60の外周面の上下方向中央には、径方向外側に突出する鍔部63が全周に亘って形成されている。鍔部63は、固定筒部61と露出筒部62との連続部分に位置している。固定筒部61と露出筒部62と鍔部63とは、弾性を有する絶縁材料にて一体に成形されている。固定筒部61の外周には、溝部61aが形成されている。露出筒部62の内径D2は、固定筒部61の内径D1よりも大きく(D2>D1)形成されている。このため、固定筒部61に開閉部を設けたときよりも開閉部64を大きくすることができる。
【0027】
閉蓋部材60と対向する下部室12の内壁12aには、微細突起16が形成されている。微細突起16は、下部室12の内壁12aに碍子の破砕片を固着させて形成されている。閉蓋部材60を本体碍子10の下端開口部14に装着する際には、下部室12の内壁12aに接着剤17を塗布し、閉蓋部材60の固定筒部61を本体碍子10の下部室12に装着する。この装着時には、閉蓋部材60の鍔部63の上面63aと本体碍子10の下端面14aとを当接させることで閉蓋部材60の取り付け位置を決める。閉蓋部材60の外周面と溝部61aと本体碍子10の下部室12の内壁12aとの隙間が所定量の接着剤17によって埋められる。これにより、閉蓋部材60は、本体碍子10の下部室12の内壁12aに固着され、下部室12が閉蓋される。このとき、閉蓋部材60の露出筒部62は、本体碍子10の下端開口部14よりも下方に突出している。
【0028】
露出筒部62の内壁には、開閉部64よりも固定筒部61側が固定筒部61の内壁と連続するテーパ面62aが設けられている。このため、操作棒やヒューズ筒40を挿入する際に、テーパ面62aによって本体碍子10の中央に誘導できる。露出筒部62の開閉部64よりも下方部分は、下方へ突出した円筒状の突部62bである。閉蓋部材60に付着した雨水は、突部62bに伝って落ちる。
【0029】
図3及び図4に示されるように、閉蓋部材60の底部の下面には、底部を8等分とする放射状の溝65が形成されている。この溝65には、切り込み66が入れられて複数の切片67が形成されている。切り込み66は、溝65に沿って手又は機械により入れられる。このため、溝65によって切り込み66を容易に入れることができる。また、切り込み66の切断面は溝65によって見え難くなっている。
【0030】
閉蓋部材60の底部は、切片67によって開閉可能な開閉部64となっている。開閉部64は、切り込み66によりヒューズ筒40や操作棒等が当接して挿入されると開き、ヒューズ筒40や操作棒等の引き抜き通過後に閉じる。開閉部64は、閉蓋部材60が弾性部材で形成されているので弾性変形によって開閉可能である。
【0031】
開閉部64の下面64aには、各切片67に対して複数の突起68が設けられている。開閉部64の切片67の下面64aは、操作棒等が接触した際に、複数の突起68が接触して、切片67は操作棒の外周と面接触ではなく点接触となる。このため、本体碍子10に対して操作棒を容易に挿入できるとともに、本体碍子10から操作棒を容易に抜出できる。
【0032】
図5に示されるように、閉蓋部材60の固定筒部61の溝部61aの外壁上部には、四角ナット33を収容する収容溝61bが形成されている。このため、閉蓋部材60の固定筒部61が四角ナット33に当接して変形することがない。また、収容溝61b及び接着剤17が四角ナット33の回転を抑制するので、下部モールドコーン31の回転を抑制できる。
【0033】
図4及び図5に示されるように、閉蓋部材60の鍔部63の下面63bには、本体碍子10に対する閉蓋部材60の取付方向を示す突部としての突条部63cが設けられている。突条部63cは、閉蓋部材60の周方向において収容溝61bと同じ位置に設けられている。突条部63cは、露出筒部62の外面から鍔部63の縁部に向かう径方向に延出して設けられている。このため、閉蓋部材60を本体碍子10に固着する際に、突条部63cを目印として収容溝61bが四角ナット33を収容するように取り付けることができる。
【0034】
次に、前述のように構成された円筒形カットアウト1の作用について説明する。
円筒形カットアウト1に過電流が流れると、ヒューズ44のヒューズエレメント45が溶断する。このとき、ヒューズリード線46の緊張状態が解除され、ヒューズ筒40の絶縁筒42がばね49の弾性力により下方に向かって移動する。ヒューズ筒40の絶縁筒42は、下部接触子47に係止される位置まで強制移動する。上部電極23から上部接触子41が外れるとともに、絶縁筒42が本体碍子10の下方へ突出する。このとき、表示筒48の押圧によって閉蓋部材60の開閉部64が押し開かれ、表示筒48が閉蓋部材60から突出する。したがって、円筒形カットアウト1のヒューズエレメント45が溶断したことが外部に報知される。作業員は、本体碍子10の下方へ突出した表示筒48にて過電流通過の旨を視認することができる。
【0035】
次に、例えば工事等で配電線路を負荷開放操作する際の作業を示す。
図6に示されるように、例えば工事等で配電線路を負荷開放操作する際には、ヒューズ筒40の下部接触子47に嵌合する操作棒70を使用する。操作棒70の先端部には、下部接触子47を嵌合する嵌合筒部材71が設けられている。
【0036】
操作棒70の嵌合筒部材71を閉蓋部材60の開閉部64に押し当てて、開閉部64の切片67を内側に押し開きながら、操作棒70を閉蓋部材60の内部に挿入する。そして、操作棒70の嵌合筒部材71を下部接触子47に嵌合する。この時、閉蓋部材60の内部に挿入された操作棒70の嵌合筒部材71の外面には、開閉部64の切片67の突起68が接触しながら挿入されていく。このため、切片67は操作棒70の嵌合筒部材71の外周と面接触ではなく点接触となり、操作棒70を容易に挿入できる。
【0037】
続いて、この嵌合状態で、操作棒70を下方へ引っ張れば、下部電極34と下部接触子47との係合が外れるため、ヒューズ筒40を円筒形カットアウト1から引き抜くことができる。この時、閉蓋部材60の内部に挿入された操作棒70の嵌合筒部材71及びヒューズ筒40の外面には、開閉部64の切片67の突起68が接触しながら引き出されていく。そして、操作棒70の嵌合筒部材71及びヒューズ筒40の引き出しにより開閉部64の切片67が閉じる方向に変位する。しかしながら、切片67は、操作棒70の嵌合筒部材71及びヒューズ筒40の外周と点接触であるので、操作棒70の嵌合筒部材71及びヒューズ筒40を容易に引き出しできる。
【0038】
ヒューズ筒40を円筒形カットアウト1に装着する際には、ヒューズ筒40の下部接触子47に操作棒70の嵌合筒部材71を嵌合する。閉蓋部材60の開閉部64にヒューズ筒40の先端を押し当てて、開閉部64の切片67を内側に押し開きながら、下部室12の内部にヒューズ筒40及び操作棒70の嵌合筒部材71を挿入する。この挿入時、複数の切片67やテーパ面62aによって本体碍子10の中央に誘導される。そして、下部電極34と下部接触子47とを係合挟持させて、ヒューズ筒40を本体碍子10内に保持させる。
【0039】
その後、下部接触子47と操作棒70の嵌合筒部材71との嵌合を解除し、円筒形カットアウト1にヒューズ筒40を装着した状態のまま、操作棒70のみを本体碍子10内から抜き出す。この時も、ヒューズ筒40の取り外し時と同様に、切片67は、嵌合筒部材71及びヒューズ筒40の外周と点接触となり、容易に挿入及び引き出しができる。また、ヒューズエレメント45の溶断時のヒューズ筒40の交換等でヒュ−ズ筒40を取り外す際や、ヒューズ筒40を円筒形カットアウト1に装着する際も同様である。
【0040】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)閉蓋部材60は、本体碍子10に固定される固定筒部61と、固定筒部61に連続して本体碍子10の外部に露出する露出筒部62とを備える。露出筒部62内には、本体碍子10の閉蓋する底部が設け、本体碍子10の下端開口部14を閉蓋する。そして、閉蓋部材60の底部に切り込み66を形成することで閉蓋部材60の底部を開閉部64とした。このため、円筒形カットアウト1を製造する際に、本体碍子10の下部室12の内壁12aに固定筒部61を装着することで、閉蓋部材60を容易に取り付けることができる。
【0041】
また、ヒューズ筒40が突出する際や、操作棒70を挿入する際に閉蓋部材60の底部(開閉部64)を内外に開くことができる。このため、閉蓋部材60の底部(開閉部64)は、通常時には閉じて埃等が内部に侵入することを抑制しながら、ヒューズ筒40や操作棒70が通過する必要時には内外に開いて、ヒューズエレメント45の溶断表示や、操作棒70による着脱ができる。よって、連結紐で吊り下げられた密閉栓が不要となるとともに、本体碍子10下部の閉蓋作業が不要となる。また、閉蓋部材60によって本体碍子10の下部が閉蓋されるので、課電部が露出することがなくなり安全であるとともに、本体碍子10内部の汚損を抑制できる。
【0042】
(2)閉蓋部材60の外周面の下方に径方向外側に突出する鍔部63を全周に亘って形成した。そして、鍔部63の上端面と本体碍子10の下端面とを当接させるよう閉蓋部材60を取り付けする。このため、本体碍子10に対する閉蓋部材60の取り付け位置を決めることができる。
【0043】
(3)閉蓋部材60の露出筒部62を本体碍子10の下端開口部14から下方に突出して形成した。このため、閉蓋部材60の底部の開閉部64とヒューズ筒40の絶縁筒42の下端とを離間させることができる。よって、閉蓋部材60の内部に操作棒70を挿入して開閉部64を内側に押し開いた際に開閉部64がヒューズ筒40の絶縁筒42に接触することを抑制できる。
【0044】
(4)閉蓋部材60の露出筒部62の下部を下方へ突出した円筒状の突部62bとした。このため、閉蓋部材60に付着した雨水は下方へ突出した突部62bに伝って落ちるので、開閉部64から本体碍子10内に進入することはない。よって、雨水の進入が更に抑制されるので、本体碍子10内部の汚損を抑制できる。
【0045】
(5)閉蓋部材60の開閉部64の下面64aに複数の突起68を形成した。このため、配電線路の負荷開放操作やヒューズ筒40の交換などの着脱作業を行う際に、閉蓋部材60の開閉部64に操作棒70を押し当てる。そして、複数の突起68が操作棒70の外周に接触することで、切片67は操作棒70の外周と面接触ではなく点接触となる。これにより、接触面積を減少させることができ、接触抵抗を軽減できる。また、本体碍子10内に挿入した操作棒70を抜き出す際に、操作棒70の外周に接触して開いた開閉部64の切片67が閉じる方向に変位する。この場合も複数の突起68が操作棒70の外周に接触することで、切片は操作棒70の外周と面接触ではなく点接触となり、接触面積を減少させることができ、接触抵抗を軽減できる。よって、本体碍子10に対して操作棒70を容易に挿入できるとともに、本体碍子10から操作棒70を容易に抜出できる。
【0046】
(6)切り込み66が形成される放射状の溝65が閉蓋部材60の底部に設けられる。このため、溝65に沿って切り込み66を行えるので、切り込み66が容易である。また、切り込み66の切断面が溝65によって見え難いので、見栄えをよくできる。
【0047】
(7)固定筒部61の内径D1よりも露出筒部62の内径D2を大きく形成する。このため、固定筒部61に開閉部64を形成した場合に比べて、開閉部64の切片67を長くすることができる。よって、切片67の長さが長くなるため、折り曲がりが容易となるので、接触抵抗を小さくできる。
【0048】
(8)閉蓋部材60の露出筒部62の内壁はテーパ面となっている。このため、操作棒70やヒューズ筒40を挿入する際に、テーパ面によって本体碍子10の中央に誘導され、挿入作業が容易である。
【0049】
(9)閉蓋部材60の固定筒部61の外壁上部に収容溝61bを形成した。このため、固定部材である四角ナット33に閉蓋部材60が当接して変形及び湾曲することがなく、閉蓋部材60を本体碍子10に確実に固定できる。
【0050】
(10)鍔部63の下面63bに突部として突条部63cを設けた。このため、突条部63cを目印にして閉蓋部材60を本体碍子10に取り付けることで、閉蓋部材60の収容溝61bを固定部材である四角ナット33に合わせることができる。
【0051】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、閉蓋部材60の鍔部63の下面63bに突条部63cを設けたが、突条の突部に限らず、直方体状の突部や円柱状の突部であってもよい。また、突部に限らず溝部であってもよい。
【0052】
・上記実施形態では、閉蓋部材60の鍔部63の下面63bに突条部63cを突部として設けたが、閉蓋部材60の鍔部63の側面に設けてもよい。
・上記実施形態では、下部モールドコーン31を固定する固定部材としての四角ナット33を収容する収容溝61bを閉蓋部材60の固定筒部61に形成した。閉蓋部材60の固定筒部61が四角ナット33と接触しない長さであれば、収容溝61bの構成を省略してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、閉蓋部材60の露出筒部62の内壁に固定筒部61の内径D1と露出筒部62の内径D2との異なる内径を接続するテーパ面62aを設けた。しかしながら、露出筒部62の内壁にテーパ面62aを設けず、内径の異なる固定筒部61と露出筒部62とから段部を形成してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、閉蓋部材60の固定筒部61の内径D1よりも露出筒部62の内径D2を大きく(D1<D2)した。固定筒部61の内径D1と露出筒部62の内径D2とを同一(D1=D2)としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、閉蓋部材60の開閉部64が8等分となるように溝65を設け、切り込み66を入れたが、8等分に限らず、4等分や6等分等の他の等分としてもよい。また、開閉部64を等分とせず、開閉部64の切片67が異なる大きさとなってもよい。
【0056】
・上記実施形態では、閉蓋部材60の開閉部64の底部の下面に溝65を設けたが、切り込み66を容易に入れることができるならば、どのような形状でもよい。また、溝65の構成を省略してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、閉蓋部材60の開閉部64を水平に形成したが、図7に示されるように、閉蓋部材60の開閉部64を上方に円錐状に形成してもよい。このようにすれば、切片67が経年劣化によって垂れ下がった場合、開閉部64が開くことを抑制することができる。よって、閉蓋部材60の開閉部64から本体碍子10内に粉塵や雨水等の侵入を抑制できる。
【0058】
・上記構成において、図8に示されるように、閉蓋部材60の開閉部64の上面64bの中央付近に複数の突起68を形成してもよい。このようにすれば、本体碍子10内に挿入した操作棒70及びヒューズ筒40を抜き出す際に、切片67が裏返り、操作棒70及びヒューズ筒40の外周が閉蓋部材60の開閉部64の上面64bに接触したとしても、複数の突起68が操作棒70の外周に接触する。これにより、切片67は操作棒70及びヒューズ筒40の外周と面接触ではなく点接触となり、接触面積を減少させることができ、接触抵抗を軽減できる。よって、本体碍子10から操作棒70及びヒューズ筒40を容易に抜出できる。
【0059】
・上記実施形態では、開閉部64の上面64bの中央付近のみに突起68を形成したが、開閉部64の上面64bの全体に突起68を形成してもよい。
・上記実施形態では、開閉部64の下面64aの全面に突起68を形成したが、開閉部64の下面64aの中央付近のみに突起68を形成してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、閉蓋部材60に1個の開閉部64を設けたが、図9に示されるように、閉蓋部材60に複数の開閉部64を設けてもよい。このとき、切り込み66の位置は同一でも異なってもよい。このようにすれば、閉蓋部材60の開閉部64から本体碍子10内に粉塵や雨水等が侵入することを更に抑制できる。
【0061】
・上記実施形態では、開閉部64に複数の突起68を設けたが、図10に示されるように、開閉部64に複数の突条69を設けてもよい。例えば、突条69は、開閉部64の中央から放射状に設けられている。このようにすれば、複数の突条69が設けられた閉蓋部材60の開閉部64に操作棒70及びヒューズ筒40を押し当てると、複数の突条69が操作棒70及びヒューズ筒40の外周に接触する。これにより、切片67は操作棒70の外周と面接触ではなく線接触となり、接触面積を減少させることができ、接触抵抗を軽減できる。また、操作棒70及びヒューズ筒40の外周に接触して開いた開閉部64の切片67が閉じる方向に変位しても、複数の突条69が操作棒70及びヒューズ筒40の外周に接触する。これにより、切片67は操作棒70及びヒューズ筒40の外周と面接触ではなく線接触となり、接触面積を減少させることができ、接触抵抗を軽減できる。
【0062】
・上記実施形態において、開閉部64の同一面で突起と突条とを組み合わせて設けてもよく、開閉部64の上下面で突起と突条とを異ならせて設けてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…円筒形カットアウト、10…本体碍子、11…上部室、12…下部室、12a…内壁、13…上端部、14…下端開口部、14a…下端面、15…下部側壁、16…微細突起、17…接着剤、18…絶縁襞、21…上部モールドコーン、21a…引出線、23…上部電極、31…下部モールドコーン、31a…引出線、32…接続線、33…四角ナット、34…下部電極、35…消弧筒、36…緩衝部材、37…緩衝板、40…ヒューズ筒、41…上部接触子、42…絶縁筒、44…ヒューズ、45…ヒューズエレメント、46…ヒューズリード線、46a…接続端子、47…下部接触子、47a…接触部、47b…固定部、48…表示筒、49…ばね、50…締付螺子、55…取付金具、60…閉蓋部材、61…固定筒部、61a…溝部、61b…収容溝、62…露出筒部、62a…テーパ面、62b…突部、63…鍔部、63a…上面、63b…下面、63c…突条部、64…開閉部、64a…下面、64b…上面、65…溝、66…切り込み、67…切片、68…突起、69…突条、70…操作棒、71…嵌合筒部材、D1,D2…内径。
図1
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図10