(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開口孔が、積層シートの少なくとも一方の主表面において、規則的にかつ周期的に設けられており、前記開口孔の開口径(直径)が1〜200μmである、請求項1または2に記載の積層シート。
前記開口孔が、積層シートの少なくとも一方の主表面において、規則的にかつ周期的に設けられており、前記開口孔の中心間の距離(ピッチ)が100〜100,000μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層シート。
前記第1の樹脂層および前記第2の樹脂層は、それぞれ独立して、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上の材料から形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層シート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一形態によれば、第1の樹脂層と、第2の樹脂層と、第1の樹脂層と第2の樹脂層との間に介在する第1の接着剤層とを含む積層シートが提供される。そして、当該積層シートは:
(1)第1の接着剤層に連通するように、積層シートの少なくとも一方の主表面側に開口する開口孔が設けられている;および、
(2)23℃50%RHにおける透気抵抗度が10秒以上である、
の2つの特徴を有するものである。
【0014】
以下、図面を参照しながら、上記形態に係る積層シートについて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに限定されるわけではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層シートの断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る積層シート1は、例えばポリオレフィンなどからなる第1の樹脂層2および第2の樹脂層3と、当該第1の樹脂層2および当該第2の樹脂層3との間に介在する、第1の接着剤層4と、を備えるものである。この第1の接着剤層4は接着剤を含み、これにより、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3とが接着されている。さらに、第2の樹脂層3の、第1の接着剤層4とは対向する側の表面に第2の接着剤層6が設けられている。
【0016】
そして、第1の特徴として、本実施形態に係る積層シート1では、第1の接着剤層4に連通するように、積層シート1の第1の樹脂層2の露出した主表面側に開口する開口孔5が設けられている。一方、やはり第1の接着剤層4に連通するように、積層シート1の第2の樹脂層3および第2の接着剤層6を貫通して第2の接着剤層6の露出した主表面側に開口する開口孔5が設けられている。
【0017】
図1に示す実施形態では、開口孔5が第1の樹脂層2の側と、第2の樹脂層3および第2の接着剤層6の側とのそれぞれに多数設けられている。その結果、第1の樹脂層2を貫通する開口孔5により、第1の樹脂層2の露出した主表面側と第1の接着剤層4とが連通され、一方、第2の樹脂層3および第2の接着剤層6を貫通する開口孔5により、第2の接着剤層6の露出した主表面側と第1の接着剤層4とが連通されている。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態(
図1に示す実施形態)に係る積層シートの平面図であり、
図1において第1の樹脂層2の露出した主表面側から見た平面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る積層シート1において、第1の樹脂層2の露出した主表面側に開口する開口孔5は、規則的にかつ周期的に配置されている。
【0019】
以下、本発明の積層シートを構成する各構成要素について、より詳細に説明する。
【0020】
[樹脂層]
樹脂層(第1の樹脂層2および第2の樹脂層3)は、積層シート1における主要な構成要素であり、積層シート1が用いられる用途に応じて各種の材料から構成されうる。後述するような凹凸被着体の表面に真空成形法等によって貼付される場合を考慮すると、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3を構成する材料は、凹凸被着体の三次元形状に追従できる程度で延伸可能であるものであることが好ましい。具体的な材料として特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、エチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。これらのうち、延伸性(立体形状追従性)を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。真空成形、圧空成形または真空・圧空成形のしやすさの観点から、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の構成材料は無延伸フィルムであることが好ましい。ここで、上記材料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3は、それぞれ、単独の樹脂層から構成されてもよいし、異なる種類の樹脂層が積層されてなるものであってもよい。さらに、第1の樹脂層2の構成材料と、第2の樹脂層3の構成材料とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の厚みは、特に制限されないが、延伸性(立体形状追従性)を考慮すると、10〜300μmであることが好ましく、25〜150μmであることがより好ましい。このような厚みであれば、真空成形、圧空成形または真空・圧空成形を容易に行うことができ、また、当該成形によってもこれら樹脂層は凹凸被着体への立体形状追従性を十分発揮できる。
【0022】
第1の樹脂層2と第2の樹脂層3とを第1の接着剤層4を介して積層する典型的な例として、第2の樹脂層3が装飾層であり、第1の樹脂層2が透明な保護層である場合が挙げられる。この場合、第1の樹脂層2は高い透明性を有するものであることが、視認性の確保の観点から好ましく、具体的には、第1の樹脂層2の可視光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0023】
[接着剤層]
第1の接着剤層4は、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3とを接着できるものであれば特に制限はない。また、第2の接着剤層6は、凹凸被着体に接着できるものであれば制限はない。本発明において、接着剤は感圧性接着剤を含むものとする。
【0024】
接着剤として、具体的には、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニルエーテル系接着剤などが挙げられる。これらの接着剤は、溶剤型またはエマルジョン型のいずれであってもよい。これらのうち、アクリル系接着剤としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上と、それら(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の官能性モノマーとの共重合物等が挙げられる。シリコーン系接着剤の具体例としては、ジメチルシロキサンガムとジメチルシロキサンレジンとの混合物および/または重合物により構成されるもの等が挙げられる。ゴム系接着剤の具体例としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブテンゴム、ブチルゴム等の合成ゴムや天然ゴムを主成分とするもの等が挙げられる。ビニルエーテル系接着剤の具体例としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0025】
これらの接着剤は、厚さが薄く均一な層である必要があり、水または有機溶剤によって希釈し、塗布・乾燥することによって形成される。
【0026】
後述したように、本発明の構成とすることにより奏される作用効果は、複数の樹脂層が接着剤層を介して積層されてなる積層シートを用いて真空成形法等により凹凸被着体に対する成形加工を行った場合であっても、積層シート中への気泡の発生が効果的に防止されうる、というものである。ここで、本発明によってかような作用効果が奏されるメカニズムは完全には明らかではないが、
図1に示すような開口孔5を設けておくことで、真空成形法等の実施時において積層シートが加熱された際に、接着剤層に微量ながら含まれている溶剤等の揮発性成分が揮発しても、積層シート1に設けられた開口孔5から当該開口孔5が連通する側の積層シート1の主表面側から当該揮発性成分が抜け出すことができるものと考えられる。
【0027】
従来技術においては、このような開口孔が形成されていなかったことから、低圧下で加熱されることにより体積が膨張した残留溶剤が、軟化した樹脂層を押し上げることにより、気泡が発生したものと考えられる。
【0028】
このような本発明の作用効果を考慮すると、第1の接着剤層が、水に分散または有機溶剤に溶解された接着剤が塗布・乾燥されることによって形成され、不可避的に水または有機溶剤が残留する場合に、本発明の効果が発揮される。
【0029】
[開口孔]
開口孔5は、第1の接着剤層4(つまり、2つの樹脂層(
図1に示す実施形態では第1の樹脂層2および第2の樹脂層3)の間に位置する接着剤を含む層)に連通するように、積層シート1の少なくとも一方の主表面側に開口する孔である。
【0030】
上述の定義を満たすものである限り、開口孔5の具体的な形状について特に制限はない。
【0031】
図3は、
図2に示す本発明の一実施形態に係る積層シートの平面図を拡大した拡大平面図である。
図2および
図3に示すように、開口孔5は、規則的にかつ周期的に設けられているものであることが好ましい。かような形態によれば、大量生産時における生産性が格段に向上しうる。開口孔5のサイズや配置形態についても特に制限はないが、一例として、開口孔5の開口径(直径;
図3に示す「D」)は、好ましくは1〜200μmであり、より好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは10〜50μmである。開口孔5の開口径(直径D)がかような範囲内の値であると、肉眼で開口孔を認識できないという利点がある。なお、開口孔5の開口径(直径D)は、開口孔5の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち最大のものとして定義される。また、それぞれの開口孔5の直径が同一ではない場合には、開口径(直径D)は、数十個の開口孔5の開口径(直径D)の平均値として算出されるものとする。
【0032】
また、開口孔5の中心間の距離(ピッチ;
図3に示す「P」)は、好ましくは100〜100,000μmであり、より好ましくは500〜80,000μmであり、さらに好ましくは1,000〜50,000μmである。開口孔5どうしの中心間の距離(ピッチP)がかような範囲内の値であると、接着剤層中から揮発した気体を効率よく積層シートの外部に逃すことができるという利点がある。また、隣接する2つの開口孔5の組み合わせによって開口孔5どうしの中心間の距離(ピッチP)が同一ではない場合には、開口孔5どうしの中心間の距離(ピッチP)は、数十組の開口孔5どうしの中心間の距離(ピッチP)の平均値として算出されるものとする。
【0033】
開口孔を形成する方法としては、レーザ、熱針、プレス、ドリル又は放電などが挙げられる。
【0034】
開口孔5は、第1の樹脂層2または第2の樹脂層3の表面から、第1の接着剤層4に連通していれば、第1の接着剤4の中から揮発した気体を、積層シート1の外部に逃すことができるが、第1の樹脂の表面から第2の樹脂の表面まで貫通しないことが好ましい。これは、貫通してしまうと、後に説明するように真空・圧空成形により、積層シート1を凹凸被着体12に圧着できなくなるためである。
【0035】
開口孔を形成する際に、不可避的に孔が貫通してしまうことがあるが、次に述べる透気抵抗度が一定の値よりも小さい場合には、本発明の効果を発揮することができる。
【0036】
[透気抵抗度]
本発明に係る積層シート1は、他の特徴として、23℃50%RHにおける透気抵抗度が10秒以上であるという特徴を有している。真空・圧空成形法等によって積層シート1を凹凸被着体12の表面に圧着するには、メカニズム上、積層シート1によって仕切られた2つの空間の間で圧力差が生じることが必要である。したがって、積層シート1を介して空気が透過し、この圧力差が解消されてしまっては成形が達成されないことから、積層シート1が真空成形法等による成形時に生じる圧力差にも耐えうるものであることを規定するためのパラメータとして、上述した透気抵抗度が規定されるのである。つまり、透気抵抗度が10秒未満の積層シート1は、真空成形法等による成形には不向きである。
【0037】
なお、本明細書において、「透気抵抗度」の値としては、ガーレー法(JIS P8117:2009又はISO5636−5:2003)により測定された値を採用するものとする。透気抵抗度は、体積100mLの空気が試験片を通り抜けるのに要した時間(秒)を表し、数値が大きいほど空気が通り抜けにくいことを表す。
【0038】
積層シート1の透気抵抗度は、10秒以上であれば圧力差を維持して積層シートを凹凸被着体の表面に圧着することができるが、作業性の観点から、好ましくは100秒以上、より好ましくは1,000秒以上である。開口孔が一方の主表面から他方の主表面まで貫通していない場合には、実質的には10,000秒以上である。なお、透気抵抗度の上限値について特に制限はない。
【0039】
[剥離シート]
図示はしていないが、第2の接着剤層6の露出した主表面側には、剥離シートがさらに配置されてもよい。この剥離シートは、意図しない接着を防ぐものであり、積層成形する際には剥離される。
【0040】
剥離シートの具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。剥離シートは一般的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙などの紙といった材料を基材として構成される。これらの基材の厚みは、通常10〜400μm程度である。また、剥離シートの表面には、第2の接着剤層6の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層(図示せず)が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01〜5μm程度である。
【0041】
[積層シートの製造方法]
積層シート1の製造方法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、第1の樹脂層2を形成する樹脂フィルムの上に、第1の接着剤層4、第2の樹脂層3、第2の接着剤層6を順に積層した後、第1の樹脂層の表面から第1の接着剤層4に連通する開口孔が、第1の樹脂層の表面に形成される。
【0042】
[積層成形品の製造方法]
本発明の他の形態によれば、上述した形態に係る積層シート1を用いた積層成形品の製造方法もまた、提供される。なお、本明細書において「積層成形品」とは、被着体の表面に、上述した形態の積層シート1が、第2の樹脂層3または第2の接着剤層6と当該被着体とが接するように貼り付けられてなる成形品を意味する。
【0043】
本形態に係る積層成形品の製造方法は、真空成形、圧空成形または真空・圧空成形により、第1の樹脂層に対して第2の樹脂層の側が被着体側に配置されるように、上記形態に係る積層シートを被着体の表面に積層する積層工程を有する。
【0044】
被着体の具体的な構成について特に制限はなく、後述する積層工程において上記積層シートを貼り付けることが可能な物品等であればよい。なお、本発明に係る積層成形品の製造方法では、形状の入り組んだ凹凸を有する被着体に対しても、確実に積層シートを貼り付けることができるという利点がある。したがって、本発明に係る製造方法における被着体は、このような凹凸を有するもの(「凹凸被着体」とも称する)であることが好ましい。以下、被着体が凹凸である場合を例に挙げて本発明に係る製造方法の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに限定されるわけではない。
【0045】
[積層成形工程]
積層成形工程では、上述した形態の積層シート1を、真空成形、圧空成形または真空・圧空成形により、第2の接着剤層6が凹凸被着体側に配置されるように、凹凸被着体の表面に積層する。本明細書において、「真空成形」とは、積層シートを加熱などにより軟化させ、凹凸被着体に配置して、積層シートと凹凸被着体との間の空間を真空にすることによって、積層シートを凹凸被着体に吸着して成形する方法を指す。真空成形の例としては、特に限定されないが、ストレート法、ドレープ法、プラグアシスト法、エアースリップ法、スナップバック法、リバースドロー法、プラグアシスト・リバースドロー法、エアークッション法等が挙げられる。「圧空成形」とは、積層シートを加熱などにより軟化させ、凹凸被着体に配置して、積層シート側から凹凸被着体方向にガスを流して積層シートより上方(積層シートの凹凸被着体がない側)の空間を加圧して、積層シートを凹凸被着体に圧着して成形する方法を指す。「真空・圧空成形」とは、上記真空成形および圧空成形を組み合わせた方法であり、積層シートを加熱などにより軟化させ、凹凸被着体に配置して、積層シートと凹凸被着体との間の空間を真空にするとともに、積層シート側から凹凸被着体方向にガスを流して積層シートより上方(積層シートの凹凸被着体がない側)の空間を加圧して、積層シートを凹凸被着体に吸着・圧着して成形する方法を指す。
【0046】
このように、真空成形、圧空成形または真空・圧空成形は、目的とする凹凸被着体表面上に、積層シートを加熱軟化しつつ展張し、積層シートの貼り合わせる側の空間を減圧する(真空成形)若しくは反対側の空間を加圧する(圧空成形)またはこれらを組み合わせる(真空・圧空成形)ことにより、積層シートを凹凸被着体表面の三次元立体形状に沿って成形しつつ貼着・積層することが可能である。ゆえに、本発明の製造方法によると、目的とする凹凸被着体の立体形状に追従させて凹凸被着体表面全体に積層シートを密着させることができる。また、本発明の製造方法は目的とする凹凸被着体の立体形状追従性に優れるため、積層シートに局所的な延性を生じさせることなく、微細な構造に対しても積層シートを凹凸被着体の形状に密に対応して積層(貼着)することが可能である。また、本発明に係る真空成形、圧空成形、真空・圧空成形は、減圧または加圧下でかつ短時間に積層(貼着)工程が行われるため、積層(貼着)時の気泡の混入を抑制・防止できる。
【0047】
以下、
図4A〜
図4Eを参照しながら、真空・圧空成形による本発明に係る積層成形工程を説明する。なお、成形を真空成形または圧空成形により行う場合には、加圧または真空を省略する以外は、下記方法と同様に行うことができる。
【0048】
図4A〜
図4Eは、本発明に係る積層成形工程を説明する概略図である。まず、真空/圧空成形機10内に、積層シート1および凹凸被着体12を設置する(
図4A)。ここで、真空/圧空成形機10は、テーブル15が配置される容器14および蓋16を有する。積層シート1は、容器14と蓋16の内部の空間を仕切るように配置し、この際、第2の接着剤層6が凹凸被着体12側になるように配置する。また、凹凸被着体12はテーブル15内に設置する。次に、ヒーター13により積層シート1を加熱し、軟化させると共に、容器14および蓋16内の空気を抜き取って装置内を減圧/真空にする(
図4B)。ここで、加熱条件は、真空および/または圧空成形時に凹凸被着体12の形状に十分追従できる程度にまで積層シート1を軟化できる条件であれば特に制限されず、第1の樹脂層2及び第2の樹脂層3の材料などによって適宜選択される。具体的には、加熱温度は、70〜150℃であることが好ましく、80〜130℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、10〜300秒であることが好ましく、20〜180秒であることがより好ましい。次に、テーブル15を積層シート1側に持ち上げる(
図4C)。次に、蓋16内に空気を導入して、蓋16内の空間を加圧状態にして、蓋16内の空間と容器14内の空間との間に圧力差を生じさせる。この圧力差により、積層シート1は凹凸被着体12の形状に沿って圧着される(
図4D)。
【0049】
次に、蓋16を持ち上げて、真空/圧空成形機10内の圧力を大気圧に戻す(
図4E)。この操作により、積層シート1は、凹凸被着体12の形状に追従して、第2の接着剤層6を介して凹凸被着体12の表面に積層(貼着)される。次いで、凹凸被着体12の外部にはみ出した余分な積層シート1部分をサーモカッター、カッター等の適当な切断手段を用いて切り取り(トリミング処理)、凹凸被着体12上に積層シート1が接着された積層成形品を得る。
【0050】
本発明に係る製造方法では、上述した積層シートを用いて積層成形品の製造を行うため、真空成形等の加熱時において揮発・膨張した第1の接着剤層4中の揮発性成分が積層シート1の外へ抜け出ることができる。したがって、第1の接着剤層4の中に気泡が発生することが防止され、その結果、得られた積層成形品は外観がきわめて優れたものとなる。
【実施例】
【0051】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0052】
実施例1
接着剤の溶液として、官能基を有するアクリル酸エステル共重合体の溶液(日本合成化学工業社製、コーポニール N−2147、固形分35質量%)100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL、固形分75質量%)1質量部、および希釈溶剤として酢酸エチル25質量部を配合した。
【0053】
第1の樹脂層を形成する厚さ100μmの透明なアクリルフィルムの一方の面に、前記溶液を塗布し、90℃で1分間乾燥することにより、厚さ20μmの第1の接着剤層を形成した。
【0054】
上記で作製した第1の接着剤層の上に、第2の樹脂層を形成する厚さ100μmの塩化ビニルフィルムを貼り合わせ、さらに当該塩化ビニルフィルムの露出表面上に、上述した第1の接着剤層と同一組成の厚さ20μmの第2の接着剤層を形成した。
【0055】
炭酸ガスレーザ照射機を用い、アクリルフィルムの露出表面に、開口孔(直径30〜300μm、ピッチ5mm;アクリルフィルムを貫通し、第1の接着剤層には連通するが塩化ビニルフィルムを貫通しない)を形成して、実施例1に係る積層シートを作製した。
【0056】
このようにして作製された積層シートについて、ガーレー法(JIS P8117:2009又はISO5636−5:2003)により23℃50%RHにおける透気抵抗度を測定したところ、50秒であった。
【0057】
また、真空/圧空成形機の容器及び蓋の内部の圧力を0.1kPaに減圧し、積層シートを120℃に加熱して軟化させても、積層シートの内部に気泡は発生しなかった。
【0058】
実施例2
実施例1において、さらに第2の接着剤層の露出表面からレーザを照射することにより、第2の接着剤層の露出表面に開口孔(第2の接着剤層および塩化ビニルフィルムを貫通し、第1の接着剤層に連通するが、アクリルフィルムの露出表面には開口しない)を形成し、実施例2に係る積層シートを作製した。
【0059】
このようにして作製された積層シートについて、上記と同様にして透気抵抗度を測定したところ、40秒であった。
【0060】
また、上記と同様にして減圧下で加熱しても、気泡は発生しなかった。
【0061】
比較例1
実施例1において、アクリルフィルムの露出表面に開口孔を形成しなかったこと以外は同様にして、比較例1に係る積層シートを作製した。
【0062】
このようにして得られた積層シートを、上記と同様にして減圧下で加熱すると、積層シートの内部に気泡が発生した。
【0063】
比較例2
実施例1において、炭酸ガスレーザの出力を上げることによって、アクリルフィルムの露出表面に開口孔(アクリルフィルム、第1の接着剤層および塩化ビニルフィルムを貫通し、第2の接着剤層の露出表面に開口する)を形成したこと以外は同様にして、比較例2に係る積層シートを作製した。
【0064】
このようにして作製された積層シートについて、上記と同様にして透気抵抗度を測定したところ、5秒であった。
【0065】
また、真空/圧空成形機の容器及び蓋の内部を0.1kPaに減圧し、120℃に加熱しても積層シートに気泡は発生しなかったが、蓋の内部を加圧しても、蓋の内部の空気が積層シートを透過してしまうため、積層シートに圧力がかからず、積層シートを被着体の表面に圧着することができなかった。