(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018962
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】水晶振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
H03H3/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-70050(P2013-70050)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-195134(P2014-195134A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 純
【審査官】
石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−277483(JP,A)
【文献】
特開2008−079033(JP,A)
【文献】
特開2002−033639(JP,A)
【文献】
特開2003−313091(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0073318(US,A1)
【文献】
特開昭57−188120(JP,A)
【文献】
特開2009−212670(JP,A)
【文献】
特開昭57−170897(JP,A)
【文献】
特開2003−257929(JP,A)
【文献】
特開2009−218567(JP,A)
【文献】
特開2003−028645(JP,A)
【文献】
特開昭58−020020(JP,A)
【文献】
特開2009−150678(JP,A)
【文献】
特開2009−159517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエットエッチング法で、水晶ウエハーに複数の水晶振動子を形成する水晶振動子の製造方法であって、前記水晶振動子は、少なくとも一つの凹部を備え、前記水晶ウエハー上には、複数の前記水晶振動子とともに寸法測定部が設けられ、前記寸法測定部には、上層のAu膜と下層のCr膜とからなる耐蝕膜が設けられ、前記水晶振動子の外形を形成する外形エッチング工程と、前記水晶振動子に前記凹部を形成する凹部エッチング工程とを備え、前記凹部エッチング工程の前に、前記寸法測定部に設けられた前記Cr膜上の前記Au膜を除去する工程と、前記凹部エッチング工程における凹部エッチング開始時の前記寸法測定部の前記Cr膜の寸法を測定する工程と、前記凹部エッチング工程における所定時間経過後の前記寸法測定部の前記Cr膜の寸法を測定する工程と、前記凹部エッチング開始時と前記凹部エッチング工程における前記所定時間経過後の前記寸法測定部の前記Cr膜の寸法変化量から、エッチングレートを算出し、凹部エッチング時間を決定する工程とを有すること特徴とする水晶振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの発振回路に用いられる水晶振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットエッチング法による水晶振動子の製造方法において、希望の振動周波数に合うような外形寸法を得るためのエッチング時間の管理方法として、各ロットで周波数測定専用のウエハーを作成し、第1回のエッチング後に振動周波数を測定し、残りのエッチング時間を算出する手法がある。
【0003】
また、周波数測定専用ウエハーを用いない方法としては、水晶振動子と同一のウエハー上に寸法測定のためのダミーパターンを配置し、そのダミーパターンの外形寸法を測定することで、目的とする水晶振動子の外形寸法を得るまでの残りのエッチング時間を算出する手法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、水晶振動子としては、振動腕に溝を備える音叉型水晶振動子や、薄肉の振動部と厚肉の支持部とを備える逆メサ型の厚みすべり振動子などが知られていて、水晶振動子の外形と溝や薄肉の振動部などの凹部とは、それぞれ異なる加工工程で行われるのが一般的であり、水晶ウエハーに、Cr膜やAu膜などからなる耐食膜や、レジスト膜を、所定形状にパターニングして、所望の水晶振動子を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4482203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水晶ウエハーをエッチングして水晶振動子の外形を形成し、再びエッチングして凹部を形成すると、凹部を形成するエッチングで、水晶振動子の外形も再びエッチングされるため、凹部形成時には、凹部寸法のみではなく、外形寸法も含めて、エッチング条件を算出する必要がある。
【0007】
ウエハー上のダミーパターンの外形寸法を測定する手法では、水晶ウエハーを複数回エッチングした場合、Au膜は、電飾効果によるサイドエッチングの影響によって、実際の下地の水晶の寸法との相関はとれないので、ダミーパターンのレジスト膜やAu膜部の寸法を測定しても、エッチングレートや残りのエッチング時間の算出には利用できない。
【0008】
ダミーウエハーを同時にエッチングし、レジスト膜や耐蝕膜を剥離して、ダミーウエハ上の水晶振動子の寸法を測定する手法もあるが、レジスト膜や耐蝕膜を剥離する工数やウエハーの費用がかかってしまう。
【0009】
本発明は、水晶ウエハのエッチング時間を、水晶ウエハー上に設けた寸法測定部の耐蝕膜の寸法から算出することで、容易に高精度のエッチングを可能とした水晶振動子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ウエットエッチング法で、水晶ウエハーに複数の水晶振動子を形成する水晶振動子の製造方法であって、水晶振動子は、少なくとも一つの凹部を備え、水晶ウエハー上には、複数の水晶振動子とともに寸法測定部が設けられ、
寸法測定部には、上層のAu膜と下層のCr膜とからなる耐蝕膜が設けられ、水晶振動子の外形を形成する外形エッチング工程と、水晶振動子に凹部を形成する凹部エッチング工程とを備え、
凹部エッチング工程の前に、寸法測定部に設けられたCr膜上のAu膜を除去する工程と、凹部エッチング工程における凹部エッチング開始時の寸法測定部のCr膜の寸法を測定する工程と、凹部エッチング工程における所定時間経過後の寸法測定部のCr膜の寸法を測定する工程と、凹部エッチング開始時と凹部エッチング工程における所定時間経過後の寸法測定部のCr膜の寸法変化量から、エッチングレートを算出し、凹部エッチング時間を決定する。
【発明の効果】
【0014】
耐食膜であるCr膜の寸法は下地の水晶の寸法と相関があるため、寸法測定部のCr膜の寸法を測定することで現在の水晶の寸法を予測することができ、エッチング液の濃度や温度等の要因で変動するエッチングレートと目的とする寸法までの残りのエッチング時間とを容易に算出することができる。また、測定専用のウエハーを用いないので、水晶振動子の部材をロスすることなく水晶振動子を製造できる。
【0015】
本発明によって、水晶ウエハのエッチング時間を、容易に算出できる水晶振動子の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の水晶振動子の製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施例では、水晶ウエハーから複数の溝付き音叉型水晶振動子を製造する工程を例に説明する。
図1は、本発明の水晶振動子の製造方法を説明するための図であり、凹部エッチング工程開始時の水晶振動子と寸法測定部を示す拡大図である。
図2は、外形エッチング工程を説明するための図である。
図3は、凹部エッチング工程を説明する図である。尚、
図2、
図3は、
図1に示す寸法測定部のA−A断面のイメージ図である。
【0018】
まず水晶ウエハー9を用意する。水晶ウエハー9は、水晶原石から所定のカット角で切り出され、例えば、約100μmの厚さに調整されている。
【0019】
水晶ウエハー9の表裏面に、Au膜6、Cr膜7からなる耐食膜を形成する。Cr膜7はAu膜6と水晶の密着させるためのバインダーの役目をしている。耐食膜をパターニングするために、耐食膜を形成した水晶ウエハー9の表裏面に、レジスト膜8を形成する。
図2(a)参照。
【0020】
次いで、水晶ウエハー上に、音叉型水晶振動子形状や、枠部形状、寸法測定部形状などを形成するための露光マスクを用いて、レジスト膜8を露光し、現像する。レジスト膜8のパターニングで露出した部分のAu膜6、Cr膜7をエッチングし、所定の形状とする。
図2(b)参照。
【0021】
外形エッチング工程では、所定の形状にした耐蝕膜を形成した水晶ウエハー9を水晶エッチング液に投入し、水晶ウエハー9に、音叉型水晶振動子1の外形や、枠部5、寸法測定部2などを形成する。寸法測定部2は、振動腕4と同じ幅で形成している。
【0022】
外形エッチング工程の後、
図1に示すように、音叉型水晶振動子1の振動腕4上に電界効率を上げるための溝(凹部)10を形成するため露光マスクを用いて、レジスト膜8を露光し、現像する。その際、寸法測定部2のレジスト膜8にも同等の溝(凹部)10を形成するためのパターニングと、寸法測定部2のCr膜7の寸法を測定するためのパターニングを行う。
図3(a)参照。
【0023】
レジスト膜8のパターニングで露出したAu膜6をエッチングする。
図3(b)参照。Au膜6のエッチング時に、溝形成部だけでなく、Au膜6の側部もエッチングされてしまうため、音叉型水晶振動子1の寸法との相関を取るには、耐食膜のCr膜7の寸法を用いることが望ましい。溝エッチング工程の前に、寸法測定部2のCr膜7の幅寸法W1を測定する。
【0024】
溝エッチング工程では、振動腕4に溝(凹部)10を形成するために露出しているCr膜6と水晶とをエッチングすると同時に、耐食膜で覆われていない振動腕4の側面、および基部3の側面なども同時にエッチングされる。寸法測定部も同様にエッチングされる。所定時間、例えば10分経過した時点で、寸法測定部2のCr膜の寸法W2を測定する。
図3(c)参照。溝エッチング工程の前に測定した幅寸法W1との差から、幅方向のエッチングレートを算出し、所望の溝付き音叉型水晶振動子形状とする残りのエッチング時間を決定する。
【0025】
溝エッチング工程を再開し、必要な残りのエッチング時間で、エッチングを行う。
図3(d)参照。
【0026】
溝エッチング工程の後、レジスト膜8、Au膜6、Cr膜7を除去し、水晶ウエハー9に複数の溝付き音叉型水晶振動子形状が形成される。
図3(e)参照。尚、レジスト膜8の除去は、溝エッチング工程の前に行なってもよい。
【0027】
本発明の水晶振動子の製造方法によれば、水晶振動子を形成する水晶ウエハーと同一面内に残りのエッチング時間を算出に利用する寸法測定部を設け、その耐食膜の寸法変化量から、エッチング液の濃度や温度等の要因で変動するエッチングレート及びエッチング時間の算出が可能である。また、各ロットでダミーウエハーを必要とせず、部材を無駄にすることもなく、製造待ち時間をロスすることなく水晶振動子を製造できる。
【0028】
以上、本発明の水晶振動子の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、寸法測定部の幅は、エッチングレート及び残りのエッチング時間を算出するものであるため、所望の形状に形成するのに要するエッチング時間でエッチングされてなくならない程度の幅であれば、水晶振動子の振動腕と同じ幅でなくとも良い。
また、下地の耐食膜はCrでなくともNiなどの素材でも良い。
【0029】
また、水晶振動子として音叉型水晶振動子を例として説明したが厚みすべり振動子等でも良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1 水晶振動子
2 寸法測定部
3 基部
4 振動腕
5 枠部
6 Au膜
7 Cr膜
8 レジスト膜
9 水晶ウエハー
10 溝(凹部)