(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態である第1実施形態について、図を参照しながら以下に説明する。ただし、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。まず、熱硬化性封止樹脂シートについて説明した後、該熱硬化性封止樹脂シートを用いる電子部品パッケージの製造方法について説明する。
【0022】
<熱硬化性封止樹脂シート>
図1は、本発明の一実施形態に係る熱硬化性封止樹脂シートを模式的に示す断面図である。封止樹脂シート1は、代表的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の支持体1a上に積層された状態で提供される。なお、支持体1aには封止樹脂シート1の剥離を容易に行うために公知の離型剤による離型処理が施されていてもよい。また、長尺の支持体1a上に封止樹脂シート1を連続して形成し、これをロール状に巻き取った巻回体としてもよい。
【0023】
封止樹脂シート1では、所定の熱処理1及び2を経た後の表面反り量がともに−0.6mm以上0.1mm以下であればよいものの、好ましい下限は−0.5mm以上であり、より好ましい下限は−0.4mm以上である。一方、表面反り量の好ましい上限は0.08mm以下であり、より好ましい上限は0.05mm以下である。封止樹脂シート1の表面反り量が上記範囲となっているので、樹脂封止時の熱硬化収縮作用及びはんだリフロー時の熱膨張作用が抑制され、その結果、基板の反り等が抑制された高信頼性の電子パッケージを製造することができる。
【0024】
封止樹脂シート1を150℃で1時間熱処理した後の線膨張率は、熱処理後のサンプルのガラス転移温度以下では特に限定されないものの、その下限は15ppm/K以上が好ましく、14ppm/K以上がより好ましい。上記線膨張率の上限は30ppm/K以下であることが好ましく、25ppm/K以下がより好ましい。所定の熱処理後の熱処理物のガラス転移温度以下での線膨張率を上記範囲とすることより、封止処理後にPoP構造に対して高温処理を施しても、封止樹脂シートと、特に低線膨張率を有する基板との線膨張率差を小さくすることができ、基板の反り等を防止することができる。
【0025】
熱硬化性封止樹脂シートを形成する樹脂組成物は、上述のような特性を好適に有し、半導体チップ等の電子部品の樹脂封止に利用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば以下のA成分からE成分を含有するエポキシ樹脂組成物が好ましいものとして挙げられる。なお、C成分は必要に応じて添加しても添加しなくてもよい。
A成分:エポキシ樹脂
B成分:フェノール樹脂
C成分:エラストマー
D成分:無機充填剤
E成分:硬化促進剤
【0026】
(A成分)
エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0027】
エポキシ樹脂の硬化後の靭性及びエポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、中でも、信頼性の観点から、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂(A成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して1〜10重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0029】
(B成分)
フェノール樹脂(B成分)は、エポキシ樹脂(A成分)との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂、等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0030】
フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂(A成分)との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0031】
エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂(B成分)中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0032】
(C成分)
エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)とともに用いられるエラストマー(C成分)は、熱硬化性封止樹脂シートによる電子部品の封止に必要な可撓性をエポキシ樹脂組成物に付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を限定するものではない。例えば、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。中でも、エポキシ樹脂(A成分)へ分散させやすく、またエポキシ樹脂(A成分)との反応性も高いために、得られる熱硬化性封止樹脂シートの耐熱性や強度を向上させることができるという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0033】
なお、アクリル系共重合体は、例えば、所定の混合比にしたアクリルモノマー混合物を、定法によってラジカル重合することにより合成することができる。ラジカル重合の方法としては、有機溶剤を溶媒に行う溶液重合法や、水中に原料モノマーを分散させながら重合を行う懸濁重合法が用いられる。その際に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド及びメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が用いられる。なお、懸濁重合の場合は、例えばポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールのような分散剤を加えることが望ましい。
【0034】
エラストマー(C成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の1〜15重量%である。エラストマー(C成分)の含有量が1重量%未満では、封止樹脂シート1の柔軟性及び可撓性を得るのが困難となり、さらには熱硬化性封止樹脂シートの反りを抑えた樹脂封止も困難となる。逆に上記含有量が15重量%を超えると、封止樹脂シート1の溶融粘度が高くなって電子部品の埋まり込み性が低下するとともに、封止樹脂シート1の硬化体の強度及び耐熱性が低下する傾向がみられる。
【0035】
また、エラストマー(C成分)のエポキシ樹脂(A成分)に対する重量比率(C成分の重量/A成分の重量)は、3〜4.7の範囲に設定することが好ましい。上記重量比率が3未満の場合は、封止樹脂シート1の流動性をコントロールすることが困難となり、4.7を超えると封止樹脂シート1の電子部品への接着性が劣る傾向がみられるためである。
【0036】
(D成分)
無機質充填剤(D成分)は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種充填剤を用いることができ、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素の粉末が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0037】
中でも、エポキシ樹脂組成物の硬化体の熱線膨張係数が低減することにより内部応力を低減し、その結果、電子部品の封止後の封止樹脂シート1の反りを抑制できるという点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることがより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。
【0038】
無機充填剤(D成分)の平均粒径は特に限定されないものの、0.1μm以上35μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.3μm以上30μm以下の範囲のものを用いることがより好ましい。
【0039】
なお、平均粒径は、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0040】
無機質充填剤(D成分)の含有量は、好ましくはエポキシ樹脂組成物全体の70〜80重量%であればよく、より好ましくは72〜78重量%である。無機質充填剤(D成分)の含有量が70重量%未満では、はんだリフロー時の反りが大きくなり上下のパッケージで接続不良が発生する可能性が高まる。一方、上記含有量が80重量%を超えると150℃で1時間加熱し硬化させた後に25℃へ冷却した際の反り量が大きくなり,搬送不良やダイシング不良が発生する可能性が高まる。
【0041】
(E成分)
硬化促進剤(E成分)は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されるものではないが、硬化性と保存性の観点から、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物や、イミダゾール系化合物が好適に用いられる。これら硬化促進剤は、単独で用いても良いし、他の硬化促進剤と併用しても構わない。
【0042】
硬化促進剤(E成分)の含有量は、エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0043】
(その他の成分)
また、エポキシ樹脂組成物には、A成分からE成分に加えて、難燃剤成分を加えてもよい。難燃剤組成分としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物等の各種金属水酸化物を用いることができる。
【0044】
金属水酸化物の平均粒径としては、エポキシ樹脂組成物を加熱した際に適当な流動性を確保するという観点から、平均粒径が1〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmである。金属水酸化物の平均粒径が1μm未満では、エポキシ樹脂組成物中に均一に分散させることが困難となるとともに、エポキシ樹脂組成物の加熱時における流動性が十分に得られない傾向がある。また、平均粒径が10μmを超えると、金属水酸化物(E成分)の添加量あたりの表面積が小さくなるため、難燃効果が低下する傾向がみられる。
【0045】
また、難燃剤成分としては上記金属水酸化物のほか、ホスファゼン化合物を用いることができる。ホスファゼン化合物としては、例えばSPR−100、SA−100、SP−100(以上、大塚化学株式会社)、FP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。
【0046】
少量でも難燃効果を発揮するという観点から、式(1)又は式(2)で表されるホスファゼン化合物が好ましく、これらホスファンゼン化合物に含まれるリン元素の含有率は、12重量%以上であることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、nは3〜25の整数であり、R
1及びR
2は同一又は異なって、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する1価の有機基である。)
【化2】
(式(2)中、n及びmは、それぞれ独立して3〜25の整数である。R
3及びR
5は同一又は異なって、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する1価の有機基である。R
4は、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する2価の有機基である。)
【0047】
また、安定性及びボイドの生成抑制という観点から、式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーを用いることが好ましい。
【化3】
(式(3)中、nは3〜25の整数であり、R
6及びR
7は同一又は異なって、水素、水酸基、アルキル基、アルコキシ基又はグリシジル基である。)
【0048】
上記式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーは、例えばFP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。
【0049】
ホスファゼン化合物の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(D成分)、硬化促進剤(E成分)及びホスファゼン化合物(その他の成分)を含む有機成分全体の10〜30重量%であることが好ましい。すなわち、ホスファゼン化合物の含有量が、有機成分全体の10重量%未満では、封止樹脂シート1の難燃性が低下するとともに、被着体(例えば、電子部品を搭載した基板等)に対する凹凸追従性が低下し、ボイドが発生する傾向がみられる。上記含有量が有機成分全体の30重量%を超えると、封止樹脂シート1の表面にタックが生じやすくなり、被着体に対する位置合わせをしにくくなる等作業性が低下する傾向がみられる。
【0050】
また、上記金属水酸化物及びホスファゼン化合物を併用し、シート封止に必要な可撓性を確保しつつ、難燃性に優れた封止樹脂シート1を得ることもできる。両者を併用することにより、金属水酸化物のみを用いた場合の十分な難燃性と、ホスファゼン化合物のみを用いた場合は、十分な可撓性を得ることができる。
【0051】
上記難燃剤のうち、樹脂封止の成型時における熱硬化性封止樹脂シートの変形性、電子部品や被着体の凹凸への追従性、電子部品や被着体への密着性の点から有機系難燃剤を用いるのが望ましく、特にホスファゼン系難燃剤が好適に用いられる。
【0052】
なお、エポキシ樹脂組成物は、上記の各成分以外に必要に応じて、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0053】
(熱硬化性封止樹脂シートの作製方法)
熱硬化性封止樹脂シートの作製方法を以下に説明する。まず、上述の各成分を混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製する。混合方法は、各成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。その後、例えば、各成分を有機溶剤等に溶解又は分散したワニスを塗工してシート状に形成する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより混練物を調製し、このようにして得られた混練物を押し出してシート状に形成してもよい。
【0054】
ワニスを用いる具体的な作製手順としては、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜混合し、有機溶剤に均一に溶解あるいは分散させ、ワニスを調製する。ついで、上記ワニスをポリエステル等の支持体上に塗布し乾燥させることによりBステージ状態の封止樹脂シート1を得ることができる。そして必要により、熱硬化性封止樹脂シートの表面を保護するためにポリエステルフィルム等の剥離シートを貼り合わせてもよい。剥離シートは封止時に剥離する。
【0055】
上記有機溶剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の各種有機溶剤、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。また通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0056】
有機溶剤乾燥後のシートの厚みは、特に制限されるものではないが、厚みの均一性と残存溶剤量の観点から、通常、5〜100μmに設定することが好ましく、より好ましくは20〜70μmである。
【0057】
一方、混練を用いる場合には、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤の各成分をミキサーなど公知の方法を用いて混合し、その後、溶融混練することにより混練物を調製する。溶融混練する方法としては、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機により、溶融混練する方法などが挙げられる。
【0058】
混練条件としては、温度が、上記した各成分の軟化点以上であれば特に制限されず、例えば30〜150℃、エポキン樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは40〜140℃、さらに好ましくは60〜120℃であり、時間が、例えば1〜30分間、好ましくは5〜15分間である。これによって、混練物を調製することができる。
【0059】
得られる混練物を押出成形により成形することにより、Bステージ状態の封止樹脂シート1を得ることができる。具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、押出成形することで、封止樹脂シート1を形成することができる。このような押出方法としては、特に制限されず、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。押出温度としては、上記した各成分の軟化点以上であれば、特に制限されないが、エポキシ樹脂の熱硬化性および成形性を考慮すると、例えば40〜150℃、好ましくは、50〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃である。以上により、封止樹脂シート1を形成することができる。
【0060】
このようにして得られた熱硬化性封止樹脂シートは、必要により所望の厚みとなるように積層して使用してもよい。すなわち、熱硬化性封止樹脂シートは、単層構造にて使用してもよいし、2層以上の多層構造に積層してなる積層体として使用してもよい。
【0061】
<電子部品パッケージの製造方法>
本実施形態の電子部品パッケージの製造方法は、電子部品が搭載された実装基板を準備する準備工程、前記電子部品を覆うように前記実装基板上に上記熱硬化性封止樹脂シートを積層して総厚さ0.75mm以下の積層体を形成する積層体形成工程、及び前記熱硬化性封止樹脂シートを熱硬化させる封止工程を含む。
【0062】
図2に示すようなPonP構造とするには、下段パッケージである第1パッケージ及び上段パッケージである第2パッケージを予め別々に作製しておき、最後に両パッケージを積層する手順を好適に採用することができる。第1パッケージと第2パッケージとの作製手順の相違としては、主に、第1パッケージにおける樹脂封止部分(すなわち、半導体チップ及びこれを覆う封止樹脂)が第2パッケージと比較して小さい点、及び基板裏面に設けられるバンプが第2パッケージでは第1パッケージより大きい点が挙げられ、これ以外はほぼ共通するので、第1パッケージの作製手順を中心に、以下、
図2を参照しつつ説明する。本実施形態では、電子部品として半導体チップを用いる態様を説明する。
【0063】
(第1パッケージの作製)
準備工程では、電子部品である半導体チップが搭載された実装基板を準備する。
図2に示すように、基板15上には少なくとも1つの第1半導体チップ12を固定されている。第1半導体チップ12はダイボンドフィルム13を介して基板15に固定されている。
図2中では第1半導体チップ12は、1つのみ示されているものの、目的とするパッケージの仕様に応じて2つ、3つ、4つ又は5つ以上の複数の第1半導体チップ12を基板15に固定してもよい。
【0064】
(第1半導体チップ)
第1半導体チップ12としては、第2パッケージに搭載される半導体チップ22より平面視寸法が小さくなってりいること以外は種々のチップを用いることができ、パッケージデザインに応じて、例えば半導体チップの一種であるロジックチップやプロセッサを好適に用いることができる。第1半導体チップ12の厚さは特に限定されないものの、通常100μm以下の場合が多い。また、近年の半導体パッケージの薄型化に伴い75μm以下、さらには50μm以下の第1半導体チップ12も用いられつつある。
【0065】
(基板)
基板15としては、プリント配線基板等の従来公知の基板を使用することができる。また、ガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本実施形態はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。基板15の厚さは特に限定されず、100〜500μmの範囲から適宜選択することができる。また、基板15は単層構造でも多層構造であってもよく、厚さ方向に貫通する貫通電極が形成されていてもよい。
【0066】
第1パッケージの上面には、第2パッケージに形成されたバンプとの電気的接続のために電極が形成されている(図示せず)。この電極形成のためのスペースを基板15の上面の樹脂封止部分の周囲に設けるため、半導体チップ12及び封止樹脂シート11の平面視面積は第2パッケージより小さくなっている。
【0067】
(ダイボンドフィルム)
ダイボンドフィルム13としては、従来公知の半導体チップ固定用のダイボンドフィルムを用いることができる。ダイボンドフィルム13の厚さとしては5μmから60μm程度であればよい。
【0068】
(固定方法)
第1半導体チップ12を基板15上に固定する方法としては、例えば基板15上にダイボンドフィルム13を積層した後、このダイボンドフィルム13上に、ワイヤーボンド面が上側となるようにして第1半導体チップ12を積層する方法が挙げられる。また、予めダイボンドフィルム13が貼り付けられた第1半導体チップ12を基板15上に配置して積層してもよい。
【0069】
ダイボンドフィルム13は半硬化状態であるので、ダイボンドフィルム13の基板15上への載置後、所定条件下での熱処理を行うことにより、ダイボンドフィルム13を熱硬化させて第1半導体チップ12を基板15上に固定させる。熱処理を行う際の温度は、100〜200℃で行うのが好ましく、120℃〜180℃の範囲内で行うのがより好ましい。また、熱処理時間は0.25〜10時間で行うことが好ましく、0.5〜8時間で行うことがより好ましい。
【0070】
(ワイヤーボンディング工程)
ワイヤーボンディング工程は、基板15の端子部(例えばインナーリード)の先端と第1半導体チップ12上の電極パッド(図示せず)とをボンディングワイヤー14で電気的に接続する工程である(
図2参照)。ボンディングワイヤー14としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となるように加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。
【0071】
(積層体形成工程)
積層体形成工程では、半導体チップ12を覆うように基板15へ封止樹脂シート11を積層する。この封止樹脂シート11は、半導体チップ12及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能する。
【0072】
封止樹脂シート11の積層方法としては特に限定されず、封止樹脂シートを形成するための樹脂組成物の溶融混練物を押出成形し、押出成形物を基板15上に載置してプレスすることにより封止樹脂シート11の形成と積層とを一括にて行う方法や、封止樹脂シート11を形成するための樹脂組成物を離型処理シート上に塗布し、塗布膜を乾燥させて封止樹脂シート11を形成した上で、この封止樹脂シート11を基板15上に転写する方法などが挙げられる。
【0073】
本実施形態では、上記封止樹脂シート11を採用することにより、半導体チップ12の被覆に基板15上に貼り付けるだけで半導体チップ12を埋め込むことができ、パッケージの生産効率を向上させることができる。この場合、熱プレスやラミネータなど公知の方法により封止樹脂シート11を基板15上に積層することができる。熱プレス条件としては、温度が、例えば、40〜120℃、好ましくは、50〜100℃であり、圧力が、例えば、50〜2500kPa、好ましくは、100〜2000kPaであり、時間が、例えば、0.3〜10分間、好ましくは、0.5〜5分間である。また、封止樹脂シート11の半導体チップ12及び基板15への密着性および追従性の向上を考慮すると、好ましくは、減圧条件下(例えば10〜2000Pa)において、プレスすることが好ましい。
【0074】
(封止工程)
封止工程では、上記封止樹脂シート11を熱硬化処理して樹脂封止を行う。熱硬化性封止樹脂シートの熱硬化処理の条件は、加熱温度として好ましくは100℃から200℃、より好ましくは120℃から180℃、加熱時間として好ましくは10分から180分、より好ましくは30分から120分の間、必要に応じて加圧しても良い。加圧の際は、好ましくは0.1MPaから10MPa、より好ましくは0.5MPaから5MPaを採用することができる。
【0075】
(後硬化工程)
本実施形態においては、封止工程の後に、封止樹脂シートをアフターキュアする後硬化工程を行ってもよい。本工程においては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂を完全に硬化させる。本工程における加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。封止工程又は後硬化工程を経ることにより半導体パッケージを作製することができる。
【0076】
(バンプ形成)
最後に、基板15の半導体チップ12搭載面とは反対側の面に複数のバンプ16を形成する。バンプ16は、半田ボールや半田メッキなど公知の方法で設けることができる。バンプの材質は特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0077】
(第2パッケージの作製)
第2パッケージに搭載される第2半導体チップ22としては特に限定されず、例えばメモリチップを用いることができる。また、
図2に示すように、半導体チップ22を1個搭載するだけでなく、複数の半導体チップを多段に積層してもよい。この半導体チップ22を基板25にダイボンドフィルム23を介して固定した後、半導体チップ22と基板25とをボンディングワイヤー24により電気的に接続する。次いで、封止樹脂シート21を半導体チップ22を覆うように基板25に貼り合わせ、封止樹脂シート21の熱硬化処理を行うことにより樹脂封止を行う。最後に、基板25の裏面(半導体チップ22の搭載面とは反対側の面)に複数のバンプ26を形成する。この際、バンプ26の高さは、第1パッケージ上の樹脂封止部分の高さより大きくし、スタンドオフ(パッケージ間のスペース)を確保するようにする。これらの工程は、第1パッケージの工程と同様に行うことができる。
【0078】
(パッケージ積層)
第1パッケージと第2パッケージとの積層は、PoP構造対応のパッケージマウンターなどの公知の装置を用いて行うことができる。その際のリフロー工程の加熱温度は特に限定されないが、240〜270℃程度であればよい。
【0079】
[第2実施形態]
第1実施形態では、半導体チップの基板への固定をダイボンドフィルムにより行い、両者間の電気的接続をワイヤーボンディングにより図っていたが、第2実施形態では、半導体チップに設けられた突起電極を用いたフリップチップ接続により両者間の固定及び電気的接続を図ってもよい。従って、第2実施形態は、固定工程における固定様式のみ第1実施形態と異なるので、以下では主にこの相違点について説明する。
【0080】
本実施形態では、前記固定工程において、第1半導体チップを基板にフリップチップ接続により固定する(図示せず)。フリップチップ接続では、第1半導体チップの回路面が基板と対向するいわゆるフェイスダウン実装となる。第1半導体チップにはバンプ等の突起電極が複数設けられており、突起電極と基板上の電極とが接続されている。また、基板と第1半導体チップとの間には、両者間の熱膨張率の差の緩和や両者間の空間の保護を目的として、アンダーフィル材が充填されている。
【0081】
接続方法としては特に限定されず、従来公知のフリップチップボンダーにより接続することができる。例えば、第1半導体チップに形成されているバンプ等の突起電極を、基板の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、第1半導体チップと基板との電気的導通を確保し、第1半導体チップを基板に固定させることができる(フリップチップボンディング)。一般的に、フリップチップ接続の際の加熱条件としては240〜300℃であり、加圧条件としては0.5〜490Nである。
【0082】
突起電極としてバンプを形成する際の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0083】
アンダーフィル材としては従来公知の液状又はフィルム状のアンダーフィル材を用いることができる。
【0084】
(その他の実施形態)
フリップチップ接続の態様としては、第2実施形態で説明した突起電極としてのバンプによる接続に限定されず、導電性接着剤組成物による接続や、バンプと導電性接着剤組成物とを組み合わせた突起構造による接続等も採用することができる。なお、本発明では、第1半導体チップの回路面が基板と対向して接続されるフェイスダウン実装となる限り、突起電極や突起構造等の接続様式の相違にかかわらずフリップチップ接続と称することとする。導電性接着剤組成物としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に金、銀、銅等の導電性フィラーを混合させた従来公知の導電性ペースト等を用いることができる。導電性接着剤組成物を用いる場合、基板への第1半導体チップの搭載後、80〜150℃で0.5〜10時間程度熱硬化処理することにより第1半導体チップを固定することができる。
【実施例】
【0085】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0086】
[実施例1]
(封止樹脂シートの作製)
以下の成分をミキサーにてブレンドし、2軸混練機により120℃で2分間溶融混練し、続いてTダイから押出しすることにより、厚さ200μmの封止樹脂シートAを作製した。
【0087】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV−80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 5.6重量%
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7851−SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃))
5.9重量%
硬化促進剤:硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製、2PHZ−PW) 0.2重量%
エラストマー((株)カネカ製、SIBSTAR 072T) 5.0重量%
無機充填剤:球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454FC、平均粒子径19μm) 79.9重量%
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403) 0.1重量%
有機系難燃剤((株)伏見製薬所製、FP−100) 3.0重量%
カーボンブラック(三菱化学(株)製、#20) 0.3重量%
【0088】
[実施例2]
(封止樹脂シートの作製)
以下の成分をミキサーにてブレンドし、2軸混練機により120℃で2分間溶融混練し、続いてTダイから押出しすることにより、厚さ200μmの封止樹脂シートBを作製した。
【0089】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV−80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 7.0重量%
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7851−SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃))
7.4重量%
硬化促進剤:硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製、2PHZ−PW) 0.2重量%
エラストマー((株)カネカ製、SIBSTAR 072T) 6.3重量%
無機充填剤:球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454FC、平均粒子径19μm) 74.9重量%
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403) 0.1重量%
有機系難燃剤((株)伏見製薬所製、FP−100) 3.7重量%
カーボンブラック(三菱化学(株)製、#20) 0.3重量%
【0090】
[実施例3]
(封止樹脂シートの作製)
以下の成分をミキサーにてブレンドし、2軸混練機により120℃で2分間溶融混練し、続いてTダイから押出しすることにより、厚さ200μmの封止樹脂シートCを作製した。
【0091】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV−80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 8.4重量%
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7851−SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃))
8.9重量%
硬化促進剤:硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製、2PHZ−PW) 0.3重量%
エラストマー((株)カネカ製、SIBSTAR 072T) 7.6重量%
無機充填剤:球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454FC、平均粒子径19μm) 69.9重量%
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403) 0.1重量%
有機系難燃剤((株)伏見製薬所製、FP−100) 4.5重量%
カーボンブラック(三菱化学(株)製、#20) 0.3重量%
【0092】
[比較例1]
(封止樹脂シートの作製)
以下の成分をミキサーにてブレンドし、2軸混練機により120℃で2分間溶融混練し、続いてTダイから押出しすることにより、厚さ200μmの封止樹脂シートDを作製した。
【0093】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV−80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 3.3重量%
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7851−SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃))
3.5重量%
硬化促進剤:硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製、2PHZ−PW) 0.1重量%
エラストマー((株)カネカ製、SIBSTAR 072T) 3.0重量%
無機充填剤:球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454FC、平均粒子径19μm) 87.9重量%
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403) 0.1重量%
有機系難燃剤((株)伏見製薬所製、FP−100) 1.8重量%
カーボンブラック(三菱化学(株)製、#20) 0.3重量%
【0094】
[比較例2]
(封止樹脂シートの作製)
以下の成分をミキサーにてブレンドし、2軸混練機により120℃で2分間溶融混練し、続いてTダイから押出しすることにより、厚さ200μmの封止樹脂シートEを作製した。
【0095】
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製、YSLV−80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 11.3重量%
フェノール樹脂:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7851−SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃))
11.9重量%
硬化促進剤:硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製、2PHZ−PW) 0.4重量%
エラストマー((株)カネカ製、SIBSTAR 072T) 10.1重量%
無機充填剤:球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454FC、平均粒子径19μm) 59.9重量%
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403) 0.1重量%
有機系難燃剤((株)伏見製薬所製、FP−100) 6.0重量%
カーボンブラック(三菱化学(株)製、#20) 0.3重量%
【0096】
(封止樹脂シートの線膨張率及びガラス転移温度(Tg)の測定)
線膨張率の測定は、熱機械分析装置((株)リガク社製:形式:TMA8310)を用いて行った。具体的には、各封止樹脂シートを150℃で1時間加熱して熱硬化させ、この硬化物からサンプルサイズを長さ25mm×幅4.9mm×厚さ200μmとして測定試料を得た後、測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし、引張荷重4.9mN、昇温速度10℃/minの条件下で測定し、線膨張率を得た。また、同様の測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし、−50〜300℃の温度域での引張貯蔵弾性率及び損失弾性率を、周波数1Hz、昇温速度10℃/minの条件下で測定し、当該測定におけるtanδ(G”(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率))の値を算出することによりガラス転移温度(Tg)を得た。結果を表1に示す。
【0097】
(表面反り量の測定)
表面反り量の測定用のサンプルとしては、
図3に示すように、シリコンチップ2がダイボンドフィルム3を介して基板5上に搭載され、基板5の全面が封止樹脂シート1により樹脂封止された半導体パッケージ10を用いる。
【0098】
(表面反り量の測定用の半導体パッケージの作製)
以下の仕様の半導体チップにダイボンドフィルムを下記ラミネート条件にて貼り合わせた。
【0099】
<半導体チップ>
半導体チップサイズ:35mm□(厚さ200μm(=0.2mm))
【0100】
<ダイボンドフィルム>
フィルムサイズ:35mm□(厚さ25μm)
メーカー:三菱樹脂株式会社
製品名:EM−710
【0101】
<ラミネート条件>
ラミネート温度:120℃
ラミネート速度:1000rpm
施工数:1回
【0102】
別途、以下の仕様の乾燥TF−BGA(Thin Fine−Pitch Ball Grid Array)基板を準備した。
【0103】
<TF−BGA基板>
メーカー:日本サーキット工業
製品名:TFBGA032T(AUS5)
基板サイズ:50mm□(厚さ320μm(=0.32mm))
基板材質:BT Resin、Cu、Ni、Au、ソルダーマスク
パッド数:225
パッドピッチ:1000μm
乾燥条件::150℃×3時間、次いでシリカゲル存在下、常温まで冷却
【0104】
次に、上記半導体チップを以下のラミネート条件にて乾燥TF−BGA基板に貼り合わせた後、ダイボンドフィルムを以下の熱処理により硬化させることで半導体チップを基板上に実装した。
【0105】
<ラミネート条件>
ラミネート温度:120℃
ラミネート速度:1000rpm
施工数:2回
【0106】
<熱硬化条件>
熱硬化条件:150℃×1時間
【0107】
次いで、得られた半導体チップ実装基板の表面を下記条件にてプラズマ処理し、表面改質を行った。
【0108】
<プラズマ処理>
動作ガス:アルゴン
ガス流量:40cc/min
出力:100W
照射時間:1分間
【0109】
プラズマ処理後の半導体チップ実装基板上に、以下に示す貼り付け条件下、封止樹脂シートA〜Eのそれぞれを真空プレスにより貼付けた。このときの基板、ダイボンドフィルム及び封止樹脂シート(半導体チップが内在)の総厚さは750μmであった。
【0110】
<貼り付け条件>
温度:90℃
加圧力:1.5MPa
真空度:25Torr(3333Pa)
プレス時間:1分
【0111】
大気圧に開放した後、熱風乾燥機中、150℃、1時間の条件で封止樹脂シートを熱硬化させた後、25℃で1時間静置することで、熱処理1を経た表面反り量測定用の半導体パッケージを作製した。
【0112】
さらに、上記熱処理1を経た半導体パッケージを240℃の雰囲気下へ投入することで、熱処理2の際の表面反り量測定用の半導体パッケージを作製した。
【0113】
(封止樹脂シートの表面反り量の測定手順)
表面反り量測定用のサンプルとして上記熱処理1を経た段階の半導体パッケージ及び熱処理2を経た段階の半導体パッケージを用い、温度可変レーザ三次元測定器((株)ティーテック社製)を用いて封止樹脂シートの表面中央部(
図4Aに示す平面視での対角線の交点)の高さ及び表面四隅の高さを測定し、封止樹脂シート表面中央部の高さと表面四隅との差を表面反り量Wとした(
図4B及び
図4C参照)。具体的には、
図4A〜
図4Cに示すように、封止樹脂シートの2本の対角線に沿って表面を2回スキャニングすることにより各対角線に沿った表面形状を求め、計4点の表面四隅の高さの平均と中央部の高さの差を求めることにより表面反り量Wを算出した。半導体パッケージの表面反り量が許容範囲(−0.6mm以上0.1mm以下)である場合を「○」、反りが該許容範囲外である場合を「×」として評価した。なお、熱処理2に用いた加熱チャンバの上蓋はガラス製であり、これを通してレーザによる240℃雰囲気下での表面反り量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表1より分かるように、実施例1〜3の封止樹脂シートにより作製した半導体パッケージでは樹脂封止時及びはんだリフローに対応する熱処理時の表面反り量がともに小さく、封止樹脂シートの反りが抑制されていることから、これらにより作製した半導体パッケージでは良好な信頼性が得られると考えられる。一方、比較例1では樹脂封止時における表面反り量が大きく、また、比較例2でははんだリフローに対応する熱処理時の反りが大きいことから、比較例1及び2のシートでは、いずれかの要因の影響が大きくなって、得られるパッケージ全体の信頼性が劣ることになると考えられる。