(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る用紙供給装置およびこれを備えた画像形成装置としてのプリンターについて説明する。なお、以下の説明では、便宜上、各図に示す矢印Frをプリンターの正面側(前側)として規定する。
【0022】
まず、
図1および
図2を参照して、プリンター1について説明する。ここで、
図1はプリンター1を示す斜視図であり、
図2はその内部構造を模式的に示す断面図である。
【0023】
図1および
図2に示すように、プリンター1は、箱形状の装置本体2に内蔵される主装置3と、枚葉の用紙Sを収容する給紙カセット21を有する複数の用紙供給装置4と、を含んで構成されている。なお、装置本体2には1台の用紙供給装置4が一体に設けられている(
図2参照)。
【0024】
図1において装置本体2の右前部は、略半円筒状に形成されており、その上面には各種メッセージを表示する液晶表示部やユーザーが直接操作するテンキー等が設けられている。
【0025】
図2に示すように、主装置3は、用紙供給装置4から搬送経路5に送出された用紙Sに感光体ドラム11上のトナー像を転写する画像形成部6と、用紙に転写したトナー像を定着させる定着装置7と、トナー像を定着させた用紙の排出先となる用紙排出部8と、を備えている。
【0026】
画像形成部6は、例えばモノクロの画像形成処理を行うものであり、補給用トナー(ブラック(K))を収納したトナーコンテナ10を備えている。また、画像形成部6は、トナー像を担持する感光体ドラム11と、感光体ドラム11の表面を帯電させる帯電器12と、感光体ドラム11の表面を露光して静電潜像を形成する露光器13と、静電潜像をトナーによりトナー像に現像する現像器14と、トナー像を感光体ドラム11と協働して用紙Sに転写する転写ローラー15と、転写後の感光体ドラム11の表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置16と、含んで構成されている。
【0027】
帯電器12、露光器13、現像器14、転写ローラー15およびクリーニング装置16は、感光体ドラム11の回転方向に沿って転写のプロセス順に配置されている。
【0028】
ここで、プリンター1による画像形成動作について説明する。プリンター1に電源が投入されると、定着装置7の温度設定等の各種パラメーターの初期化が実行される。そして、プリンター1に接続されたパーソナルコンピューター(図示せず)から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0029】
まず、帯電器12によって所定電位に帯電された感光体ドラム11の表面に対し、露光器13により画像データに応じた露光が行われる。これにより感光体ドラム11上に形成された静電潜像は、現像器14によってトナー像に現像される。そして、転写ローラー15に転写バイアスが印加され、搬送経路5を搬送されてきた用紙Sにトナー像が転写される。転写されたトナー像は、定着装置7により用紙Sに定着される。トナー像が定着した用紙Sは、下流側に搬送されて用紙排出部8に排出される。また、転写の完了後、感光体ドラム11の表面に残留したトナーは、クリーニング装置16によって除去される。
【0030】
次に、
図3ないし
図6を参照して、各用紙供給装置4について説明する。ここで、
図3は用紙供給装置4を示す斜視図であり、
図4はその断面図である。
図5は用紙供給装置4のロック機構35を示す斜視図である。
図6は用紙供給装置4の本体ケース20の一部および給紙カセット21を示す斜視図である。
【0031】
本実施形態では、例えば、装置本体2と一体に設けられた1台の用紙供給装置4と、追加オプションとしての4台の用紙供給装置4が上下方向に積み重ねられている。主装置3を内蔵する装置本体2は最上位に配置されている(
図1参照)。5台の給紙カセット21は、それぞれ異なるサイズの用紙Sを収容可能に構成されている。なお、用紙Sには、普通紙、上質紙、コート紙、厚紙およびOHPシート等の種々の記録媒体が含まれる(紙製以外も含む)。
【0032】
図3に示すように、各用紙供給装置4は、主要な外観を成す本体ケース20と、本体ケース20に着脱可能に構成され、用紙Sを積層して収容する給紙カセット21と、を備え、概略扁平な直方体状に形成されている。ここで、各用紙供給装置4は略同一の構成であるため、以降、1つの用紙供給装置4について詳細に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、左右方向を「幅方向」とも呼び、前側を「手前側」とも呼び、後側を「奥側」とも呼ぶこととする。
【0033】
図3ないし
図6に示すように、用紙供給装置4は、給紙カセット21の最外層に位置する用紙Sに当接するピックアップローラー22と、ピックアップローラー22により引き出された用紙Sを1枚ずつ搬送する分離機構23と、分離機構23により送られた用紙Sを搬送経路5に向けて送出する搬送機構24と、給紙カセット21に設けられ、給紙カセット21の着脱方向に延在する摺接部材25と、本体ケース20に設けられ、摺接部材25に沿って相対的に摺動する押圧部材26と、本体ケース20に設けられ、給紙カセット21の着脱方向に延在する左右一対の機構側摺接部材27(
図8参照)と、給紙カセット21に設けられ、機構側摺接部材27に摺接可能な左右一対の機構側押圧部材28(
図8参照)と、を備えている。
【0034】
図5に示すように、本体ケース20は、前端面に開口部20aを有する箱状に形成されている。本体ケース20の上面において左右両端部の前後方向略中央には、一対の連結突起30が突設されている。各連結突起30は、本体ケース20上に載置される用紙供給装置4や装置本体2の底面に形成された凹部(図示せず)に嵌合するようになっている。これにより、複数の用紙供給装置4や装置本体2が位置決めされた状態で積層される。なお、
図5において右側の連結突起30の後側には、積層時に上側の装置と電気的な接続を行うためのコネクター20bが突設されている。また、本体ケース20の左右両内側面には、一対のスライドレール31が形成されている(
図8参照)。
【0035】
図3、
図4および
図6に示すように、給紙カセット21は、正面側に設けられる意匠面32と、意匠面32の背面側に設けられる機構保持部33と、機構保持部33の背面側に設けられるベース部34と、を有している。給紙カセット21は、開口部20aから本体ケース20内に挿入され、本体ケース20に対し前後方向にスライド可能に支持されている。
【0036】
図3において意匠面32の右側は、装置本体2の右前部と同様に、略半円筒状に形成されている。意匠面32は、給紙カセット21を本体ケース20に装着した状態で正面に露出し、装置本体2の前面と略同一面を形成するようになっている(
図1参照)。
【0037】
図6に示すように、機構保持部33は、意匠面32の右側に形成された略半円筒状を除く部分に連設されている。機構保持部33には、上下方向に貫通する装置側搬送経路33aが形成されている(
図4参照)。また、機構保持部33の前側には、ロック機構35が設けられている。
【0038】
図5に示すように、ロック機構35は、本体ケース20の左右側壁に形成された孔(図示せず)に係合する左右一対のフック36と、各フック36に連結される三角形状の左右一対の回動板37と、各フック36を幅方向外側に向かって付勢する左右一対のロックバネ38と、ユーザーが把持してロック解除操作を行う操作部39と、を有している。
【0039】
各フック36は、給紙カセット21の幅方向に長い板状に形成されている。各フック36の幅方向中心側には、前後方向に長い受容孔36aが貫通形成されている。
【0040】
各回動板37は、斜辺を幅方向中心側に向けて配置され、略重心位置に設けられたロック回動軸37aを中心に回動するように機構保持部33に支持されている。各回動板37は、奥側頂部においてフック36と回動可能に連結され、手前側頂部において操作部39の幅方向端部にスライド可能に連結されている。
【0041】
操作部39は、意匠面32の幅方向中央よりやや左側の裏面に配置され、前後方向にスライド可能に設けられている。操作部39の幅方向中央には、操作部39を背面側に向かって付勢する操作バネ39aが取り付けられている。
【0042】
給紙カセット21を引き出す場合、ユーザーは操作部39を手前側に引き寄せる。すると、左右の回動板37は、それぞれロック回動軸37aを中心に内回りに回動する。また、各フック36はロックバネ38の付勢力に抗して幅方向中央に向かって移動する。これにより、各フック36の先端部が本体ケース20の各孔から離脱し、給紙カセット21が本体ケース20から引き出し可能となる。
【0043】
一方、給紙カセット21を押し込む(装着)場合、給紙カセット21を背面側に向かって移動させると、操作部39が操作バネ39aにより背面側に移動し、左右の回動板37は、それぞれ外回りに回動する。また、各フック36はロックバネ38の付勢力によって幅方向外側(中心線から離間する方向)に向かって移動する。これにより、各フック36の先端部が本体ケース20の各孔に係合し、本体ケース20から給紙カセット21が引き出し不能にロックされる。
【0044】
図4および
図6に示すように、ベース部34は、機構保持部33の背面から後方に向かって延出して形成されている。すなわち、ベース部34は、意匠面32の右側に形成された略半円筒状を除く部分に機構保持部33を介して連設されている。
【0045】
ベース部34は、用紙Sが載置(積層)される用紙積層部42を支持する底板部40と、底板部40の左右両端部から上方に向かって立設される一対の側壁部41と、により一体形成されている。
【0046】
用紙積層部42は、後端側に設けられた押上回動軸42aに軸支されている。また、用紙積層部42の前端下側には、底板部40を台座として用紙積層部42を上方に向かって付勢する押上バネ42bが配設されている(
図2参照)。
【0047】
図6に示すように、用紙積層部42の前側には、左右一対の横ガイド42cが左右方向にスライド可能に設けられ、底板部40の後部には縦ガイド42dが前後方向にスライド可能に設けられている。用紙積層部42の所定位置に用紙Sをセットする場合、用紙Sの前端を機構保持部33に当接させ、左右一対の横ガイド42cおよび縦ガイド42dをそれぞれスライドさせ用紙Sの左右端および後端に当接させる。
【0048】
各側壁部41の前端は機構保持部33に接続されている。各側壁部41の外側下部には、それぞれスライド溝43が前後方向に延設されている。左右一対のスライド溝43に、それぞれスライドレール31が摺動可能に係合することにより、給紙カセット21は本体ケース20にスライド可能に支持される(
図8参照)。
【0049】
図6において右側の側壁部41は、意匠面32の略半分の高さまで立設されている。一方、左側の側壁部41は、後側に位置し右側の側壁部41と同一高さに形成される低壁部41aと、前側に位置し意匠面32の略2/3の高さまで立設される高壁部41bと、低壁部41aと高壁部41bとをつなぐ傾斜壁部41cと、により一体形成されている(
図8参照)。低壁部41aおよび高壁部41bの上端面は、それぞれ前後方向に水平に形成され、傾斜壁部41cの上端面は、前方に向かって上傾して形成されている。なお、傾斜壁部41cを省略し、低壁部41aと高壁部41bとを連接されていてもよい。
【0050】
図2および
図4に示すように、ピックアップローラー22は、持ち上げられた用紙積層部42の前端部に対向する位置で、幅方向に延在する軸を中心に回転可能に本体ケース20に支持されている。このため、用紙積層部42に載置された最上位(最外層)の用紙Sは、押上バネ42bに付勢されピックアップローラー22に押し付けられる。また、ピックアップローラー22は、駆動機構44から駆動力により
図4の矢印方向に回転する。
【0051】
図2に示すように、駆動機構44は、モーター44a、クラッチ44bおよびギア列(図示せず)等を有し、
図6において本体ケース20の右側に配設されている。駆動機構44は、制御部(図示せず)からの制御信号を受けて、モーター44aの駆動/停止やクラッチ44bのオン/オフの切り換えを行う。
【0052】
分離機構23は、ピックアップローラー22の前方で本体ケース20に設けられるフィードローラー45と、フィードローラー45の下側から対向する位置で給紙カセット21の機構保持部33に設けられるリタードローラー46と、を有している。
【0053】
各ローラー45,46は、それぞれピックアップローラー22に平行する軸を中心に回転可能に支持され、駆動機構44から駆動力により
図4の実線矢印方向に回転する。
【0054】
リタードローラー46は、分離バネ46aにより斜め後方に付勢され、フィードローラー45に押圧されている。また、リタードローラー46は、外周面への負荷が設定臨界値を超えた場合に駆動機構44からの駆動力を遮断するトルクリミッター(図示せず)を内蔵している。
【0055】
搬送機構24は、本体ケース20の上部前端部に設けられる駆動搬送ローラー47(第2搬送ローラー)と、駆動搬送ローラー47の前側から対向する位置で給紙カセット21の機構保持部33に設けられる従動搬送ローラー48(第1搬送ローラー)と、を有している。
【0056】
各搬送ローラー47,48は、それぞれピックアップローラー22に平行する軸を中心に回転可能に支持されている。駆動搬送ローラー47は、駆動機構44からの駆動力により
図4の実線矢印方向に回転する。従動搬送ローラー48は、搬送バネ48aの付勢力により駆動搬送ローラー47に押圧されて従動回転する。すなわち、従動搬送ローラー48は、給紙カセット21の装着方向に向かって付勢された状態で給紙カセット21に設けられる。
【0057】
ここで、給紙カセット21に載置された最上層に位置する用紙Sの搬送について説明する。ここでは初期状態として、駆動機構44のクラッチ44bがオフに切り換えられ、モーター44aは停止され、各ローラー22,45〜47は停止しているものとする。
【0058】
用紙Sの搬送を行う場合には、クラッチ44bがオンに切り換えられる。これにより、モーター44aの駆動力が各ローラー22,45〜47に伝達され、各ローラー22,45〜47はそれぞれ所定方向に回転する。回転するピックアップローラー22に用紙S1が接触すると、この用紙Sは用紙積層部42から引き出され、分離機構23に送られる。
【0059】
フィードローラー45とリタードローラー46との間に1枚の用紙Sだけが送られた場合、この用紙Sはフィードローラー45に接触することで供給路49に送られる。このとき、リタードローラー46は、用紙Sを介してフィードローラー45からトルクリミッターの設定臨界値を超える負荷を受けるため、
図4の実線矢印方向には回転せず、送出される用紙Sに従動して
図4の破線矢印方向に回転する。
【0060】
供給路49に送出された用紙Sは、駆動搬送ローラー47と従動搬送ローラー48との間を通って搬送経路5(または上側に配置された用紙供給装置4の装置側搬送経路33a)に供給される。なお、装置側搬送経路33aに供給された用紙Sは、その装置側搬送経路33aの下流端に設けられる搬送機構24によって更に上方へ搬送される(
図2参照)。すなわち、駆動搬送ローラー47と従動搬送ローラー48との協働により、給紙カセット21(用紙積層部42)の最外層に位置する用紙Sは搬送経路5に向けて送出される。
【0061】
一方、フィードローラー45とリタードローラー46との間に2枚以上の用紙Sが重送された場合、最上位の用紙Sは、上記と同様に、供給路49を通って搬送経路5(装置側搬送経路33a)へと搬送される。このとき、最下位の用紙Sが存在することでリタードローラー46に加わる負荷が減少し、リタードローラー46は
図4の実線矢印方向への回転を継続する。このため、最下位の用紙Sはリタードローラー46の回転により供給路49に送出されない。すなわち、分離機構23は、フィードローラー45とリタードローラー46との協働により2枚以上の用紙Sを分離して重送を防止する。
【0062】
なお、用紙Sが分離機構23を通過すると、クラッチ44bがオフに切り換えられ、各ローラー22,45〜47の回転は停止される。この後、2枚目の用紙Sに画像形成を行う場合には、所定のタイミングでクラッチ44bがオンに切り換えられ、再び用紙Sの搬送が開始される。
【0063】
次に、
図6ないし
図8を参照して、摺接部材25および押圧部材26について説明する。
図7は用紙供給装置4の給紙カセット21を下方から示す斜視図である。
図8は給紙カセット21が装着される前の状態を示す断面図である。
【0064】
摺接部材25は、
図6において左側の側壁部41の上端面として形成されている。詳細には、摺接部材25は、高壁部41bの上端面50によってレール状に形成されている。
【0065】
押圧部材26は、上側から摺接部材25に対向するように、
図6において本体ケース20の左内面上部に形成されている。詳細に説明すると、本体ケース20の左内面から内側に向かって片持ち梁状に突出すると共に下方に向かってクランク状を成す凸状部51aを有するレール部51が形成されている。押圧部材26は、凸状部51aの前端部分から更に下方に向かって突設されている。押圧部材26は、その先端(下端)面が摺接部材25に摺接可能な位置に固定されている。押圧部材26は、給紙カセット21の着脱過程において駆動搬送ローラー47と従動搬送ローラー48とが離間している場合に摺接部材25に押圧された状態で摺接部材25に沿って相対的に摺動するように設けられている。
【0066】
次に、
図7および
図8を参照して、各機構側摺接部材27および各機構側押圧部材28について説明する。
【0067】
図8に示すように、各機構側摺接部材27は、本体ケース20の開口部20aの近傍において左右両端下部にそれぞれ形成されている。各機構側摺接部材27の前端には、後方に向かって上傾する機構側傾斜面27aが形成され、機構側傾斜面27aの上端には、後方に向かって水平に延出する機構側摺接面27bが形成されている。また、各機構側摺接部材27の後端は垂直に形成されており、各機構側摺接部材27は側面視で略台形状に形成されている。
【0068】
図7および
図8に示すように、各機構側押圧部材28は、左右一対の側壁部41の前側下端面から下方に向かって僅かに突出してそれぞれ形成されている。各機構側押圧部材28は、給紙カセット21の着脱過程において各機構側摺接部材27に摺接して押圧部材26に押圧力を作用させる押圧作用位置P1と、少なくとも給紙カセット21が装着された状態において各機構側摺接部材27に対する摺接を解除して押圧部材26に作用した押圧力を解除させる押圧解除位置P2と、の間で給紙カセット21を移動させるものである。
【0069】
次に、
図9および
図10を参照して、本体ケース20に対する給紙カセット21の着脱過程について説明する。ここで、
図9は用紙供給装置4の給紙カセット21が押圧作用位置に移動する様子を示す断面図であり、
図10は押圧解除位置P2に移動した状態を示す断面図である。
【0070】
まず、給紙カセット21が、本体ケース20から引き出されている状態から押し込まれて装着される過程について説明する。ユーザーが押圧解除位置P2に臨む給紙カセット21を背面側に向かって押し込んで行くと、給紙カセット21は、左右一対のスライドレール31に沿って後方に移動する。このとき、押圧部材26と摺接部材25との上下方向の位置関係は、互いに接触することのないようになっている。
【0071】
ユーザーによる給紙カセット21の押し込みが進むと、各機構側押圧部材28は、各機構側摺接部材27の機構側傾斜面27aに当接する。このとき、押圧部材26は、相対的に移動して摺接部材25(上端面50)の後端側上方に臨む状態となる。
【0072】
更に給紙カセット21の押し込みが進むと、各機構側押圧部材28は機構側傾斜面27a上を摺動して機構側摺接面27bに接触し始める。すると、各機構側押圧部材28の高さ分だけ給紙カセット21全体が持ち上げられ、押圧部材26は、摺接部材25の後端部に押圧される(
図9参照)。すなわち、給紙カセット21は押圧作用位置P1に移動する。これにより、給紙カセット21の押し込みにかかる負荷が増加する。
【0073】
この状態で、更に給紙カセット21の押し込みが進むと、駆動搬送ローラー47に対し従動搬送ローラー48が当接する。上記したように従動搬送ローラー48は、搬送バネ48aにより駆動搬送ローラー47側に付勢されているため、ここで押し込みにかかる負荷が更に増加する。
【0074】
この状態で、ユーザーが給紙カセット21を押し込むと、各機構側摺接面27b上を摺動してきた各機構側押圧部材28が各機構側摺接部材27を乗り越え、各機構側押圧部材28の高さ分だけ給紙カセット21全体が下方に移動する(
図10参照)。これにより、押圧部材26は摺接部材25から上方に僅かに離間する。すなわち、給紙カセット21は押圧解除位置P2に移動する。また、このとき、上記した各ロック機構35がロック状態となる。以上により、本体ケース20に給紙カセット21が装着された状態となる。
【0075】
なお、従動搬送ローラー48が駆動搬送ローラー47に当接する前に、押圧部材26が摺接部材25に当接することができるように、摺接部材25および押圧部材26の配設位置(高さを含む)や前後方向の長さが設定されている。また、同様に、各ローラー46,47の当接前に、各部材25,26が当接できるように、各機構側摺接部材27および各機構側押圧部材28の配設位置(高さを含む)や前後方向の長さが設定されている。
【0076】
具体的には、ユーザーが給紙カセット21の装着が完了していない(押し込みが不十分である)ことを明確に認識可能な状態で、摺接部材25に対する押圧部材26の押圧が開始(給紙カセット21が押圧作用位置P1に移動)されることが好ましい。例えば、給紙カセット21にセットされた用紙Sをユーザーが上方から目視可能な程度の開放された状態で、給紙カセット21が押圧作用位置P1に移動することが好ましい。
【0077】
次に、本体ケース20から給紙カセット21を引き出す場合には、ユーザーは、既に説明した手順で各ロック機構35のロックを解除し、給紙カセット21を手前側に引き出す。このとき、各機構側押圧部材28は、各機構側摺接部材27の後端面に引っ掛かった状態であるが、各機構側押圧部材28の突出量は僅かであるため、給紙カセット21の引き出し操作を妨げることがない。そして、上記した装着過程の逆の順序で、給紙カセット21は、押圧作用位置P1と押圧解除位置P2との間で移動して引き出される。
【0078】
以上の本実施形態に係る用紙供給装置4によれば、例えば、本体ケース20に対し給紙カセット21を装着する場合、駆動搬送ローラー47と従動搬送ローラー48とが接触する前に、摺接部材25に押圧された押圧部材26の相対的な摺動が開始される。したがって、各ローラー46,47同士の接触による大きな負荷変動の前に、摺接部材25と押圧部材26とによる摺動抵抗が生じる。このため、本体ケース20に給紙カセット21を装着する際に発生する負荷を段階的に増加させることができる。これにより、装着にかかる急激な負荷変動が防止され、ユーザーが該負荷変動を給紙カセット21の装着完了であると誤認識することを有効に防止することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る用紙供給装置4によれば、押圧部材26が固定されているため、簡易な構成で摺接部材25との間で安定した摺動抵抗を発生させることができる。これにより、急激な負荷変動を防止可能な用紙供給装置4を低コストで構成することができる。さらに、給紙カセット21が本体ケース20の正しい位置に装着されると、押圧部材26に作用した圧力が解除される。これにより、ユーザーは、給紙カセット21が正しい位置に装着されたことを容易に認識することができる。
【0080】
次に、
図11を参照して、本実施形態に係る用紙供給装置4の変形例について説明する。ここで、
図11は用紙供給装置4の給紙カセット21が装着前の状態を示す断面図である。なお、以降、上記した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
この変形例に係る用紙供給装置4では、摺接部材60は、傾斜壁部41cの上端面としての傾斜面61から高壁部41bの上端面50に亘ってレール状に形成されている。上記したが、傾斜面61は前方に向かって上傾して形成されている。
【0082】
また、押圧部材62は、傾斜面61を含む摺接部材60に摺接するように回動可能に設けられる回動部材63と、回動部材63を摺接部材60に向かって付勢する付勢部材64と、を含んで構成されている。
【0083】
回動部材63は、その前端部に設けられた押圧回動軸65を中心として回動可能な状態で本体ケース20の左内側壁に支持されている。回動部材63の後端部には、下方に向かって突出する当接部66が形成されている。
【0084】
付勢部材64は、所謂コイルバネであり、レール部51の下面に形成された台座部67に上端を固定し、下端を当接部66の反対側に固定して設けられている。
【0085】
次に、本体ケース20に対する給紙カセット21の着脱過程について説明する。
【0086】
ユーザーは、押圧解除位置P2に臨む給紙カセット21を押し込み、給紙カセット21を各スライドレール31に沿って後方に移動させる。すると、回動部材63は、付勢部材64に付勢され、押圧回動軸65を支点に回動して傾斜面61に押圧される。このため、給紙カセット21に押し込み負荷が付与される。
【0087】
ユーザーによる給紙カセット21の押し込みが進むと、回動部材63は傾斜面61上を相対的に摺動して行く。この相対的な摺動に伴って、回動部材63の傾斜面61に対する押圧力は徐々に増加して行く。すなわち、傾斜面61は、給紙カセット21の装着方向に向かって押圧部材62との間の押圧力を増加させる。
【0088】
やがて、各機構側押圧部材28が各機構側摺接部材27上を摺動し始めると、各機構側押圧部材28の高さ分だけ給紙カセット21全体が持ち上げられ、回動部材63の傾斜面61に対する押圧力が更に増加する。更に給紙カセット21の押し込みが進むと、回動部材63は上端面50上を相対的に摺動し始め、回動部材63の上端面50に対する押圧力は略一定となる。その後、駆動搬送ローラー47に対し従動搬送ローラー48が当接して押し込みにかかる負荷が更に増加し、ユーザーが給紙カセット21を押し込むと、上記した実施形態と同様に、本体ケース20に給紙カセット21が装着された状態となる。
【0089】
以上の本実施形態の変形例に係る用紙供給装置4によれば、付勢部材64により付勢された回動部材63は、摺接部材25の傾斜面61に沿って相対的に摺動するため、例えば、給紙カセット21を装着する場合、摺接部材25と回動部材63との間の摺動抵抗は徐々に増加することとなる。したがって、装着にかかる負荷は滑らかに変動するため、ユーザーによる装着完了の誤認識がより適切に防止可能であると共に、ユーザーに良好な操作性を提供することができる。
【0090】
なお、本実施形態およびその変形例に係る用紙供給装置4では、給紙カセット21に摺接部材25が設けられ、本体ケース20に押圧部材26が設けられていたが、本体ケース20に摺接部材25を設け、給紙カセット21に押圧部材26を設けてもよい。また、各部材25,26を
図6において左側にのみ設けていたが、右側に設けてもよいし、左右両側に設けてもよい。
【0091】
なお、傾斜壁部41cの傾斜面61は、摺接部材25の少なくとも一部を構成していればよい。すなわち、傾斜面61の前後方向長さや傾斜角度は任意に設定される。例えば、摺接部材25の全てを傾斜面61で構成してもよい。摺接部材25を主に傾斜した面で構成した場合、変形例に係る押圧部材62に限らず、固定した突起状の押圧部材26であっても押圧力を滑らかに変化させることができる。さらに、本実施形態の変形例では、直線的な傾斜面61であったが、これに限定されるものではなく、例えば上方または下方に突出する放物線状(曲面)に形成されていてもよい。
【0092】
なお、本実施形態およびその変形例に係る用紙供給装置4において、機構側押圧部材28および機構側摺接部材27を省略してもよい。この場合、押圧部材26,62が、摺接部材25,60上を所定の押圧力で摺動するような寸法で配置する。
【0093】
また、本実施形態およびその変形例に係る用紙供給装置4では、機構側押圧部材28および機構側摺接部材27は、摺接部材25,60および押圧部材26,62とは別構成として設けられていたが、摺接部材25,60を機構側摺接部材27として兼用し、押圧部材26,62を機構側押圧部材28として兼用してもよい。例えば、押圧部材26,62が、摺接部材25,60上を所定の押圧力で摺動するように構成し、給紙カセット21の装着が完了したときに、押圧部材26,62の先端が嵌合する凹部を摺接部材25,60上に凹設してもよい。
【0094】
なお、本実施形態(変形例を含む)の説明は、本発明に係る用紙供給装置4を備えたプリンター1における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、且つ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。