(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図12は従来のコネクタの一例を示すもので、
図12(a)〜
図12(d)は第1のコネクタと第2のコネクタとが嵌合するまでの経過を示している。
【0003】
図12(a)に示すように、このコネクタは、コネクタハウジング510の端子収容室512に雌端子520を収容固定した第1のコネクタ500と、雄端子620を有する第2のコネクタ600とから構成されている。雌端子520には、雄端子620が挿入されてきたとき、雄端子620に押されて弾性変形させられることで、雄端子620に圧接して、雄端子620との間に接触荷重を生成する湾曲形状のバネ部521が設けられている。
【0004】
図12(b)に示すように、雄端子620が第1のコネクタ500に挿入されると、雄端子620の前端が雌端子520のバネ部521に接触する。雄端子620が更に挿入されると、
図12(c)及び
図12(d)に示すように、雌端子520のバネ部521が雄端子620に押されることよって、弾性変形しながら押し広げられる。雄端子620は、バネ部521による弾性反力(バネ荷重)を受けながら、バネ部521と摺動して挿入完了位置に至り、これにより第1のコネクタ500と第2のコネクタ600の嵌合が成立する。
【0005】
この種のコネクタとしては、特許文献1に、雌端子が径方向に弾性変形可能な筒状壁を有するものとして構成され、雄端子が前記筒状壁に挿入されるピン状の端子として構成され、雄端子を雌端子の筒状壁の内部に挿入したとき、筒状壁が弾性変形して接触荷重を発生するものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来のコネクタでは、雄端子を雌端子に挿入するとき、バネ荷重を受けながら雄端子を雌端子に挿入する必要があるので、バネ荷重が摩擦抵抗となり、挿入荷重が高くなってしまうという問題がある。また、摩擦抵抗を受けながら挿入することから、雄端子と雌端子の接点部が摩耗しやすいという問題もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、雄端子を雌端子に挿入するときの摩擦抵抗を減らすことができ、それにより、挿入荷重を小さくすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことのできるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) ピン状の雄端子と、
自由状態で内径が前記雄端子の外径よりも小さく設定され、拡径操作されることで、前記雄端子の外径よりも内径が拡大させられて前記雄端子の挿入を許容するコイルスプリングを有する雌端子と、
前記雌端子と前記雄端子との間に設けられ、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入動作に伴って前記コイルスプリングに拡径力を与えて前記コイルスプリングを拡径させ、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入完了に伴って前記拡径力を解除して前記コイルスプリングを
弾性復元力により自由状態のときの径に向けて縮径させる拡径操作手段と、
を備え
、
前記拡径操作手段は、
前記コイルスプリングの前記雄端子が挿入されて来る方向の前端に設けられると共に軸中心に向けて折れ曲がった係合片と、
前記雄端子の外周に形成されると共に前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入時に前記係合片がスライド自在に係合する係合溝であって前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入方向に沿って延在し且つ途中で湾曲している係合溝と、
により構成されることを特徴とするコネクタ。
【0010】
(2)
ピン状の雄端子と、
自由状態で内径が前記雄端子の外径よりも小さく設定され、拡径操作されることで、前記雄端子の外径よりも内径が拡大させられて前記雄端子の挿入を許容するコイルスプリングを有する雌端子と、
前記雌端子と前記雄端子との間に設けられ、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入動作に伴って前記コイルスプリングに拡径力を与えて前記コイルスプリングを拡径させ、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入完了に伴って前記拡径力を解除して前記コイルスプリングを自由状態のときの径に向けて縮径させる拡径操作手段と、
を備え、
前記コイルスプリングが、前記雄端子が挿入されて来る方向の前端を自由端、後端を固定端として、雌コネクタハウジングに軸線周り回転不能且つ軸線方向移動不能に固定され、
前記雄端子が、雄コネクタハウジングに軸線周り回転不能且つ軸線方向移動不能に固定され、
前記拡径操作手段として、前記コイルスプリングの自由端である前端に軸中心に向けて折れ曲がった係合片が設けられると共に、前記雄端子の外周に、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入時に前記係合片がスライド自在に係合する係合溝が形成され、
前記係合溝は、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入方向に沿って延在し且つ途中で湾曲しており、
前記係合溝の経路が、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入初期に前記係合片が前記係合溝に進入し、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入途中で、挿入動作に応じて、前記コイルスプリングの前端に軸線方向の圧縮力と回転方向の捻り力を与えて、前記コイルスプリングを軸方向に圧縮させると共に巻き戻し方向に捻り、それにより、前記コイルスプリングを弾性的に拡径させ、前記コイルスプリングに対する前記雄端子の挿入後期から挿入完了までの間に、前記軸線方向の圧縮力と回転方向の捻り力を解除して、前記コイルスプリングを弾性復元力により自由状態に向けて縮径させるように形成されていることを特徴とする
コネクタ。
【0011】
(3) 前記コイルスプリングが、帯板を螺旋状に巻いたものとして形成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のコネクタ。
【0012】
(4) 前記雄コネクタハウジングは、片持ち支持された弾性片と該弾性片の先端に設けられた係合突起とからなる係止アームが設けられ、
前記雄端子は、前記係合突起が係合する係合孔が設けられ、
前記コイルスプリングは、外方に突出する回り止め片が設けられ、
前記雌コネクタハウジングは、前記回り止め片が係合する係合凹部が設けられ、
前記雄端子は、前記雄コネクタハウジングに設けられた前記係止アームの前記係合突起が前記係合孔に係合することで前記雄コネクタハウジングに対する回転が規制され、
前記コイルスプリングは、前記回り止め片が前記雌コネクタハウジングの前記係合凹部に係合することで前記雌コネクタハウジングに対する回転が規制される
ことを特徴とする上記(2)に記載のコネクタ。
【0013】
上記(1)の構成のコネクタによれば、雌端子が、ピン状の雄端子の挿入されるコイルスプリングからなり、拡径操作手段により、コイルスプリングに対する雄端子の挿入動作に伴ってコイルスプリングを拡径させるので、コイルスプリングとの間に隙間を確保した状態で、雄端子をコイルスプリングに挿入することができる。従って、ほとんどコイルスプリングとの間に摩擦抵抗を受けずに、雄端子をコイルスプリング(雌端子)に挿入することができ、挿入抵抗を低くすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことができる。また、雄端子の挿入完了に伴ってコイルスプリングを縮径させるので、コイルスプリングによる締め付け力により、コイルスプリングの内周を雄端子の外周に圧接させることができ、電気的に安定した雌端子と雄端子の接続状態を成立させることができる。また、螺旋状に巻かれたコイルスプリングの多数の点が雄端子との接点部となるので、多接点構造により接触抵抗を低減でき接点部の温度上昇の低減を図ることができる。
【0014】
上記(2)の構成のコネクタによれば、コイルスプリングに雄端子を挿入するに従って、係合溝と係合片の摩擦力及び係合溝のカム作用により、係合片を介して、コイルスプリングに軸方向の圧縮力と巻き戻し方向の捻り力とを与えることができ、それにより、コイルスプリングを拡径させることができる。従って、拡径したコイルスプリングとの間に隙間を確保した状態で、雄端子をコイルスプリングに挿入することができ、雌端子と雄端子を嵌合する際の挿入抵抗を低くすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことができる。また、雄端子の挿入完了時に、コイルスプリングを圧縮と捻りから解放することにより、コイルスプリングの弾性復元力による締め付け力によって、コイルスプリングを雄端子に接触導通させることができる。このように電気接続のための接触部(コイルスプリングの内周と雄端子の外周)と、雄端子と雌端子を嵌合させるときの接触部(係合片と係合溝)とを異ならせたことにより、繰り返し挿抜による接点摩耗を少なくすることができると共に、挿入力も小さい力に留めることができる。
【0015】
上記(3)の構成のコネクタによれば、帯板を螺旋状に巻いたコイルスプリングを使用しているので、断面円形の線材を螺旋状に巻いたコイルスプリングを使用した場合と比べ、雄端子とコイルスプリングとの接触面積を大きくすることができ、雄端子と雌端子の接続抵抗を減らすことができる。
【0016】
上記(4)の構成によれば、雄端子は雄ハウジングに回転不能に収容保持され、雌端子は雌ハウジングに回転不能に収容保持されているので、雄ハウジングと雌ハウジングとを嵌合操作するだけで、コイルスプリングを拡径及び縮径させることができ、雄端子と雌端子の接続状態を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、雌端子を構成するコイルスプリングに雄端子を挿入するとき、コイルスプリングを拡径状態にすることにより、コイルスプリングと雄端子との間に隙間を確保できるようにするので、挿入時の摩擦抵抗を減らすことができる。従って、挿入荷重を小さくすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことができる。また、挿入後にコイルスプリングを拡径状態から自由状態に戻れるようにするので、コイルスプリングを雄端子に圧接させることができ、雌端子と雄端子の電気接続を容易に行うことができる。しかも、コイルスプリングは多数の点で筒状壁に接触するので、多接点構造により接触抵抗を低減でき接点部の温度上昇の低減を図ることができる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のコネクタに使用する雄端子と雌端子の構成図で、
図1(a)は雌端子の斜視図、
図1(b)は雌端子の平面図、
図1(c)は雄端子の平面図である。
【0021】
実施形態のコネクタは、
図1(a)及び
図1(b)に示す金属製の雌端子10と、
図1(c)に示す金属製の雄端子20と、雌端子10を収容する樹脂製の雌コネクタハウジング30(
図2参照)と、雄端子20を収容する樹脂製の雄コネクタハウジング40(
図6参照)と、から構成されている。
【0022】
雌コネクタハウジング30と雄コネクタハウジング40は、雌端子10と雄端子20の嵌合方向と一致する方向に沿って互いに嵌合可能に構成されている。
【0023】
雄端子20は、
図1(c)に示すように、前部にピン状の電気接触部21を有し、後部に電線加締部22を有しており、電線加締部22が、電線Wの端末の被覆が除去されて導体Waが露出した部分に加締め固定されている。電気接触部21は、外径Dの円筒周壁23を有しており、円筒周壁23の周方向の1カ所には、軸線方向に延在する係合溝26が形成されている。この雄端子20は、雄コネクタハウジング40に、軸線周り回転不能且つ軸線方向移動不能に固定されている。
【0024】
図6〜
図8に示すように、雄コネクタハウジング40は、雌端子10側の端部近傍に片持ち支持されたランス(係止アーム)42が設けられている。ランス42は雌端子10側に向けて片持ち支持された弾性片42aと該弾性片42aの先端に設けられた係合突起42bとからなる。
【0025】
図6に示すように、雄端子20の電気接触部21の後部には、ランス42の係合突起42bが係合する係合孔27が形成されている。
【0026】
雄端子20を、電気接触部21が雄コネクタハウジング40から露出するように雄コネクタハウジング40の奥まで挿入すると、ランス42の係合突起42bが雄端子20の係合孔27に係合する。これにより、雄端子20は雄コネクタハウジング40に対する軸方向の移動及び回転が規制される。
【0027】
雌端子10は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、前部に、コイルスプリング15よりなる電気接触部11を有し、後部に端子ベース12を有している。端子ベース12には、電線加締部13と回り止め片14とが設けられており、電線加締部13が、電線Wの端末の被覆が除去されて導体Waが露出した部分に加締め固定されている。この雌端子10は、
図2〜
図5に示すように、雌コネクタハウジング30に形成された係合凹部32に、回り止め片14が係合することで軸線周り回転不能に固定されている。
【0028】
また、
図10に示すように、雌コネクタハウジング30の係合凹部32の、軸方向奥部には、前端側に向けて片持ち支持されたランス(係止アーム)34が設けられている。ランス34は前端側に向けて片持ち支持された弾性片34aと該弾性片34aの先端に設けられた係合突起34bとからなる。雌端子10は、雌コネクタハウジング30の後端側から挿入されて、回り止め片14が当接により弾性変位したランス34の係合突部34bを乗り越えた後に、弾性復帰した係合突部34bに係合して、係合突部34bにより後方への移動を阻止されている。
【0029】
コイルスプリング15は、帯板を螺旋状に巻いたもので、自由状態で内径d0が雄端子20の電気接触部21の外径Dよりも小さく設定されており、拡径操作されることで、雄端子20の外径Dよりも内径が拡大するよう弾性変形させられて、それにより、雄端子20の挿入を許容するようになっている。
【0030】
コイルスプリング15は、雄端子20が挿入されて来る方向の前端を自由端、後端を固定端として、端子ベース12に一体形成されている。コイルスプリング15の自由端である前端には、軸中心に向けて折れ曲がった係合片16が設けられている。この係合片16は、コイルスプリング15に対し雄端子20の電気接触部21が挿入されて来たときに、係合溝26にスライド自在に係合する部分である。
【0031】
雌端子10側の係合片16と雄端子20側の係合溝26は、コイルスプリング15に対する雄端子20の挿入動作に伴ってコイルスプリング15に拡径力を与えてコイルスプリング15を弾性的に拡径させ、コイルスプリング15に対する雄端子20の挿入完了に伴って拡径力を解除して、コイルスプリング15を弾性復元力により自由状態のときの径に向けて縮径させる拡径操作手段を構成しており、係合溝26は、係合片16に対してカム作用をなすように、途中が湾曲形状に形成されている。
【0032】
係合溝26の経路は、
図1(c)に示すように、入口26aと終点26cとが、周方向における同じ位置とされ、途中の湾曲状の山部26bが、入口26a及び終点26cに対し周方向の片側にずれた位置にある。湾曲状の山部26bの位置する方向は、係合片16を介してコイルスプリング15の前端に巻き戻し方向(巻き締め方向と逆方向)の捻り力を与える方向である。そして、係合溝26は、係合片16がスライドする際に、係合片16に対してカム作用(周方向への誘導作用)を及ぼして回転方向の変位を与え、それにより、コイルスプリング15の前端に巻き戻し方向の捻り力を与えることができるようになっている。係合溝26のカムプロフィールの役目は、以下の作用の説明で明らかにする。
【0033】
次に作用を説明する。
図9は雌端子10を構成するコイルスプリング15にピン状の雄端子20を挿入する際の作用説明図で、
図9(a)は挿入初期の状態、
図9(b)は挿入途中でコイルスプリング15が軸線方向に圧縮され始めた状態、
図9(c)は更に挿入が進んでコイルスプリング15が軸線方向に最大に圧縮され且つ係合溝26のカム作用でコイルスプリング15に巻き戻し方向の捻りが生じてコイルスプリング15が拡径している状態、
図9(d)は挿入完了しコイルスプリング15が自由状態に向けて縮径し雄端子20を締め付けている状態をそれぞれ示す平面図である。また、
図10は雄端子20と雌端子10の嵌合状態を示す斜視図である。
【0034】
雌端子10を雌コネクタハウジング30に保持させた雌コネクタと、雄端子20を雄コネクタハウジング40に保持させた雄コネクタとを嵌合させると、雌端子10と雄端子20が次の経過をたどって互いに嵌合する。
【0035】
まず、最初の段階では、
図9(a)に示すように、雌端子10のコイルスプリング15に雄端子20の前端が挿入されるに従い、コイルスプリング15の先端の係合片16が、雄端子20の係合溝26の入口26aに進入する。
【0036】
雄端子20を更に挿入しようとすると、コイルスプリング15の内径d0が雄端子20の電気接触部21の外径Dより小さいので、
図9(b)に示すように、コイルスプリング15の前端が雄端子20の前端により押されて、コイルスプリング15に軸線方向の圧縮力F1が加わり、コイルスプリング15が軸線方向に圧縮する。コイルスプリング15は軸方向に圧縮すると、内径が拡大するので、雄端子20を挿入できるようになる。
【0037】
また、挿入が進んで、係合片16が係合溝26の入口26aから山部26bへ向かう初期の位置にスライドすると、挿入動作に応じて、係合溝26の溝壁が、係合片16に摩擦抵抗による軸線方向の圧縮力F1を与え、これにより、コイルスプリング15が軸線方向に圧縮する。
【0038】
図9(c)に示すように、コイルスプリング15の圧縮が最大になって、更に雄端子20がコイルスプリング15に対して挿入されると、係合片16が、係合溝26の山部26bに向かってスライドし始める。すると、雌端子10が雌コネクタハウジング30に対して回転方向に位置規制され、雄端子20が雄コネクタハウジング40に対して回転方向に位置規制されているので、係合溝26のカム作用によって係合片16が回転方向に変位する。係合片16が回転方向に変位すると、コイルスプリング15の前端に対して回転方向の捻り力F2が与えられて、コイルスプリング15が巻き戻し方向(巻き締め方向と逆方向)に捻られる。このように、コイルスプリング15が軸線方向に圧縮し、コイルスプリング15が巻き戻し方向に捻られることで、コイルスプリング15が弾性的に拡径し、内径がd1(>D)になる。
【0039】
従って、拡径したコイルスプリング15の中に、隙間を確保しながら雄端子20の電気接触部21を挿入することができる。そして、
図2(d)に示すように、最後の段階であるコイルスプリング15に対する雄端子20の挿入後期から挿入完了までの間に、係合片16が係合溝26の山部26bから終点26cに向けてスライドすることにより、前述した軸線方向の圧縮力F1と回転方向の捻り力F2が解除されて、コイルスプリング15が自由状態に向けて弾性復元力により縮径する。これにより、
図10に示すように、コイルスプリング15の巻き締め力によって、コイルスプリング15の内周が雄端子20の電気接触部21の外周に圧接し、雌端子10と雄端子20とが接続される。
【0040】
以上の説明のように、実施形態のコネクタによれば、雌端子10に対して雄端子20を挿入するだけで、コイルスプリング15に軸方向の圧縮力F1と巻き戻し方向の捻り力F2とを与えることができ、それにより、コイルスプリング15を拡径させることができる。従って、コイルスプリング15との間に隙間を確保した状態で、雄端子20の電気接触部21をコイルスプリング15に挿入することができ、その結果、ほとんどコイルスプリング15との間に摩擦抵抗を受けずに、雄端子20をコイルスプリング15(雌端子10)に挿入することができ、挿入抵抗を低くすることができると共に、雌端子10と雄端子20の接点部の摩耗を減らすことができる。
【0041】
また、雄端子20の挿入完了時に、コイルスプリング15を捻りと圧縮から解放することにより、コイルスプリング15の弾性復元力による締め付け力によってコイルスプリング15を雄端子20に接触導通させることができ、電気的に安定した雌端子10と雄端子20の接続状態を成立させることができる。特に、本実施形態のコネクタでは、帯板を螺旋状に巻いたコイルスプリング15を使用しているので、断面円形の線材を螺旋状に巻いたコイルスプリングを使用した場合と比べ、雄端子20とコイルスプリング15との接触面積を大きくすることができ、雄端子20と雌端子10の接続抵抗を減らすことができる。また、螺旋状に巻かれたコイルスプリング15の多数の点が雄端子20との接点部となるので、多接点構造により接触抵抗を低減でき接点部の温度上昇の低減を図ることができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0043】
例えば、上記実施形態では、コイルスプリング15として、帯板を螺旋状に巻いたものを使用しているが、断面円形の線材を螺旋状に巻いたコイルスプリングを使用してもよい。
【0044】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0045】
[1] ピン状の雄端子(20)と、
自由状態で内径(d0)が前記雄端子(20)の外径(D)よりも小さく設定され、拡径操作されることで、前記雄端子(20)の外径(D)よりも内径(d1)が拡大させられて前記雄端子(20)の挿入を許容するコイルスプリング(15)を有する雌端子(10)と、
前記雌端子(10)と前記雄端子(20)との間に設けられ、前記コイルスプリング(15)に対する前記雄端子(20)の挿入動作に伴って前記コイルスプリング(15)に拡径力を与えて前記コイルスプリング(15)を拡径させ、前記コイルスプリング(15)に対する前記雄端子(20)の挿入完了に伴って前記拡径力を解除して前記コイルスプリング(15)を自由状態のときの径に向けて縮径させる拡径操作手段(16、26)と、
を備えることを特徴とするコネクタ。
【0046】
[2] 前記コイルスプリング(15)が、前記雄端子(20)が挿入されて来る方向の前端を自由端、後端を固定端として、雌コネクタハウジング(30)に軸線周り回転不能且つ軸線方向移動不能に固定され、
前記雄端子(20)が、雄コネクタハウジング(40)に軸線周り回転不能且つ軸線方向移動不能に固定され、
前記拡径操作手段として、前記コイルスプリング(15)の自由端である前端に軸中心に向けて折れ曲がった係合片(16)が設けられると共に、前記雄端子(20)の外周に、前記コイルスプリング(15)に対する前記雄端子(20)の挿入時に前記係合片(16)がスライド自在に係合する係合溝(26)が形成され、
前記係合溝(26)は、前記コイルスプリング(15)に対する前記雄端子(20)の挿入方向に沿って延在し且つ途中で湾曲しており、
前記係合溝(26)の経路が、前記コイルスプリング(15)に対する前記雄端子(20)の挿入初期に前記係合片(16)が前記係合溝(26)に進入し、前記コイルスプリング(15)に対する前記雄端子(20)の挿入途中で、挿入動作に応じて、前記コイルスプリング(15)の前端に軸線方向の圧縮力と回転方向の捻り力を与えて、前記コイルスプリング(15)を軸方向に圧縮させると共に巻き戻し方向に捻り、それにより、前記コイルスプリング(15)を弾性的に拡径させ、前記コイルスプリング(15)に対する前記雄端子(20)の挿入後期から挿入完了までの間に、前記軸線方向の圧縮力と回転方向の捻り力を解除して、前記コイルスプリング(15)を弾性復元力により自由状態に向けて縮径させるように形成されていることを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ。
【0047】
[3] 前記コイルスプリング(15)が、帯板を螺旋状に巻いたものとして形成されていることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のコネクタ。
【0048】
[4] 前記雄コネクタハウジング(40)は、片持ち支持された弾性片(42a)と該弾性片(42a)の先端に設けられた係合突起(42b)とからなる係止アーム(42)が設けられ、
前記雄端子(20)は、前記係合突起(42b)が係合する係合孔(27)が設けられ、
前記コイルスプリング(15)は、外方に突出する回り止め片(14)が設けられ、
前記雌コネクタハウジング(30)は、前記回り止め片(14)が係合する係合凹部(32)が設けられ、
前記雄端子(20)は、前記雄コネクタハウジング(40)に設けられた前記係止アーム(42)の前記係合突起(42b)が前記係合孔(27)に係合することで前記雄コネクタハウジング(40)に対する回転が規制され、
前記コイルスプリング(15)は、前記回り止め片(14)が前記雌コネクタハウジング(30)の前記係合凹部(32)に係合することで前記雌コネクタハウジング(30)に対する回転が規制される
ことを特徴とする上記[2]に記載のコネクタ。