特許第6018980号(P6018980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6018980
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】自立電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20161020BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H02J7/00 B
   H02J7/00 303Z
   H02J15/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-141840(P2013-141840)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-15848(P2015-15848A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年1月22日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤森 司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康
(72)【発明者】
【氏名】倉田 英明
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 秀明
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/153415(WO,A1)
【文献】 特開平11−055870(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3083167(JP,U)
【文献】 特開2011−036081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電素子で発電した電力を負荷装置に供給する自立電源システムにおいて、
前記発電素子の発電効率を制御する発電制御回路と、
前記発電素子で発電した電力を充電する蓄電素子群と、
該蓄電素子群の充電動作と放電動作を制御する充電制御回路とを備え、
前記蓄電素子群は、前記発電制御回路と前記充電制御回路に電力を供給する1次蓄電素子と、前記負荷装置に電力を供給する2次蓄電素子を有し、
前記発電素子で発電した電力は前記1次蓄電素子に優先して充電された後、該1次蓄電素子から前記2次蓄電素子に充電されることを特徴とする自立電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自立電源システムにおいて、
前記1次蓄電素子の容量値は、前記2次蓄電素子の容量値よりも小さいことを特徴とする自立電源システム。
【請求項3】
請求項2に記載の自立電源システムにおいて、
前記2次蓄電素子は、前記負荷装置の複数の負荷ブロックに電力を供給する複数の蓄電素子を有することを特徴とする自立電源システム。
【請求項4】
請求項3に記載の自立電源システムにおいて、
前記複数の蓄電素子は、前記複数の負荷ブロックの優先度に応じて充電する順序に優先度を設けたことを特徴とする自立電源システム。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の自立電源システムにおいて、
前記蓄電素子群は、さらに、前記1次蓄電素子と前記2次蓄電素子が充電された後、前記1次蓄電素子から充電される3次蓄電素子を有し、
前記発電素子が発電しない場合、前記3次蓄電素子から前記1次蓄電素子と前記2次蓄電素子に電力を供給することを特徴とする自立電源システム。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の自立電源システムにおいて、
前記充電制御回路は、前記蓄電素子群に含まれる各蓄電素子の電圧を閾値と比較して放電可否状態を判定し、放電不可と判定した蓄電素子に対し、予め設定した各蓄電素子の優先度に従って充電を行うことを特徴とする自立電源システム。
【請求項7】
請求項3に記載の自立電源システムにおいて、
前記2次蓄電素子に含まれる前記複数の蓄電素子の間では、相互に充電を行わないことを特徴とする自立電源システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の自立電源システムにおいて、
前記発電素子は、環境光、振動、熱、電波の少なくとも1つの環境エネルギーを収集し電気エネルギーに変換する素子であることを特徴とする自立電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電素子を用いて電子機器に電力を供給する自立電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給が困難な隔離された場所に電子機器を設置する場合、太陽電池等の発電素子を有する自立電源システムを搭載することで、外部から商用電源の供給を受けずに無人運転することができるので有用である。このような電源システムとして、特許文献1には、曇天時の日照時間の変動が多い場合においても効率良く太陽電池から電力を取り出すことが可能な電源装置が記載されている。そのため特許文献1では、日射量の変動に応じて蓄電部を構成する蓄電池及び複数のキャパシタ(キャパシタモジュール)のいずれか一方に太陽電池で発生した電力を充電すること、また、太陽電池から取り出せる充電電流からキャパシタの充電時間を計算して、複数のキャパシタを順次切り替えることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、太陽電池から電力を効率良く取り出すためにMPPT(Maximum Power Point Tracking;最大電力点追従)充電部と呼ばれる発電制御回路を備えている。自立電源システムではこの発電制御回路も、当然ながら太陽電池の発電電力の一部が供給されて動作する構成となる。しかし、発電制御回路が正常に動作するためには最低限の電圧(以下、制御開始電圧と呼ぶ)を供給する必要がある。太陽電池の発電量が小さい場合は、供給電圧が制御開始電圧に達するまで長時間を要し、それまでの期間は、発電制御回路が起動せずに太陽電池を効率の低い状態で使用せざるを得ない。よってその分、電子機器(負荷装置)への電力供給が遅延するという課題があった。この課題については特許文献1では考慮されていない。以下、この課題について、図面を用いて説明する。
【0005】
図5は、従来の一般的な自立電源システムを備えた電子機器として、後述の実施例で取り上げる無線センサ端末の構成を示す図である。無線センサ端末200は自立電源システムとして、発電素子2、発電制御回路4、蓄電素子C0、電圧監視回路11、電源出力部9を有し、負荷装置10に電力を供給する。負荷装置10はセンサ機能を実現するため、センサ10a、AD変換器10b、CPU10c、無線部10dを有する。
【0006】
発電素子2が発電した電力は、発電制御回路4を通して蓄電素子C0に充電される。発電制御回路4は、MPPT制御や昇圧などを行い、発電素子2が効率的に発電できるよう制御する。電圧監視回路11は、蓄電素子C0に充電された電圧V0を監視し、負荷装置10を駆動するのに十分な電圧に到達したことを検出したら、スイッチS0を操作し、電源出力部9を介して負荷装置10に電力を供給する。ここで自立電源システムは、発電制御回路4についても、発電素子2が発電し蓄電素子C0に充電された電力で動作する。しかし発電制御回路4が正常に動作するのには、所定の電圧(制御開始電圧)を印加する必要がある。発電素子2が発電を開始し、蓄電素子C0の電圧V0が制御開始電圧に達するまでに所定の時間を要し、その分負荷装置10への電力供給タイミングが遅れることになる。
【0007】
図6は、図5における蓄電素子C0の蓄電電圧V0の時間変化を示す図である。発電制御回路4を起動するための制御開始電圧をVcとする。時間t0で発電を開始し、蓄電電圧V0が制御開始電圧Vcに到達する時間をt1とする。t0〜t1の期間は発電制御回路4が起動しないため、発電素子2の発電効率(単位時間当たりの発電量)が低い。時間t1以降は発電制御回路4が起動するため、発電素子2の発電効率は高くなる。蓄電電圧V0がVcに到達する時間t1は、発電素子2の発電量と蓄電素子C0の容量値で決まる。
【0008】
発電素子2が環境エネルギー(例えば環境光)を収集して発電する方式では、発電量が元々微小であるため、t1までの期間が長くならざるを得ない。一方蓄電素子C0は、負荷装置10の電源として使用することから、負荷装置10の消費電力に合わせて十分な容量値で構成する必要がある。蓄電素子C0の容量を大きくすると、それに比例して時間t1はt1’に増加してしまう。すなわち、いずれの要因を見ても、負荷装置10に必要な電力を供給するまでの待機時間が長くなるという課題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、発電素子の発電量が小さい場合でも、発電制御回路を短時間で起動させ、負荷装置へ短時間で電力を供給できる自立電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発電素子で発電した電力を負荷装置に供給する自立電源システムにおいて、発電素子の発電効率を制御する発電制御回路と、発電素子で発電した電力を充電する蓄電素子群と、蓄電素子群の充電動作と放電動作を制御する充電制御回路とを備え、蓄電素子群は、発電制御回路と充電制御回路に電力を供給する1次蓄電素子と、負荷装置に電力を供給する2次蓄電素子を有し、発電素子で発電した電力は1次蓄電素子に優先して充電された後、1次蓄電素子から2次蓄電素子に充電される構成とした。ここに1次蓄電素子の容量値は、2次蓄電素子の容量値よりも小さくする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発電素子の発電量が小さい場合でも、発電制御回路を短時間で起動させ、負荷装置へ短時間で電力を供給できる自立電源システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の自立電源システムを備えた無線センサ端末の構成を示す図。
図2】各蓄電素子の放電可否判定方法を説明する図。
図3】充電する蓄電素子を決定するための充電制御ルールを示す図。
図4】蓄電素子を順に充電するときの各蓄電素子の電圧変化を模式的に示す図。
図5】一般的な自立電源システムを備えた無線センサ端末の構成を示す図。
図6図5における蓄電素子C0の蓄電電圧V0の時間変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、自立電源システムを備えた無線センサ端末の例で説明する。
図1は、本実施例の自立電源システムを備えた無線センサ端末の構成を示す図である。無線センサ端末100は自立電源システム1を備え、その発電電力で負荷装置10を動作させてセンサ機能を実現する端末である。センサ機能は、周囲の各種物理量を測定し、測定した結果を無線で外部機器に送信するものとする。
【0014】
自立電源システム1は、太陽電池などの発電素子2と、発電素子2からの発電電力を負荷装置10に供給する電源制御回路3を備える。
【0015】
発電素子2は、環境光、振動、熱、電波などの環境エネルギーを収集し電気エネルギーに変換する素子である。太陽電池のほかに、例えば振動発電素子、熱電素子なども可能である。また、単一種類の環境エネルギーだけでなく、複数種類の環境エネルギーを収集するように異なる発電素子を接続して構成しても良い。一般に環境エネルギーは微小かつ不安定である。よって、発電素子2が供給できる電力は、数10〜数100μWと微小であり、また、環境の変動により安定して供給することも難しい。従って、後述の発電制御回路4により、電力を効率良く取出すことが必要となる。
【0016】
電源制御回路3は、発電素子2の発電を制御するとともに、発電素子2からの発電電力を蓄電素子に充電した上で、負荷装置10の各負荷ブロックに電力を供給する。電源制御回路3は、発電制御回路4、充電制御回路5、蓄電素子C1〜C6、電源出力部9、スイッチS1〜S10で構成される。
【0017】
発電制御回路4は発電素子2を制御し、例えばMPPT(最大電力点追従)制御により効率的な発電を行わせる。環境エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子2は、一般に、負荷の大きさにより取り出せるエネルギー量が変化する。そのため発電制御回路4は、発電状態により負荷抵抗を調整することで、発電素子2の発電効率を最大化させる。また発電制御回路4は、必要に応じて発電素子2の発電電圧の昇圧、降圧、整流を行う。発電制御回路4から出力された発電電力は、蓄電素子C1に充電される。
【0018】
充電制御回路5は、蓄電素子C1に充電された電力を、スイッチS1〜S6を操作して蓄電素子C2〜C6に順次充電する。またこの充電動作と並行して、蓄電素子C2〜C5に充電された電力を、スイッチS7〜S10(スイッチ群8)を操作して電源出力部9の各ブロック9a〜9dに出力し、対応する負荷装置10の各負荷ブロック10a〜10dに供給する。その際、蓄電素子C1〜C6のそれぞれの電圧状態V1〜V6を監視して、予め設定した閾値Va、Vbと比較して放電可/放電不可を判定する。そして、充電制御ルールと負荷装置10側の要求仕様に基づき、スイッチS1〜S10を操作して蓄電素子C1〜C6の充電と放電の制御を行う。また、充電制御ルールでは、蓄電素子C1〜C6に対する充電動作の優先順位を設け、C1が最も優先度が高く、続いてC2、C3、・・・の順としている。充電制御回路5の充電制御については、詳細を後述する。
【0019】
ここでスイッチS1〜S10は、蓄電素子に出入りする電荷に対し、オン状態で流れ、オフ状態で流れを遮断するよう制御する。スイッチには電界効果トランジスタ等の一般的なスイッチング素子を用いるが、オン時の抵抗が小さく、オフ時の抵抗が大きいことが望ましい。
【0020】
蓄電素子C1〜C6は機能的に3種類の素子に分類され、蓄電素子C1は「1次蓄電素子」、蓄電素子C2〜C5(符号7で示す)は「2次蓄電素子」、蓄電素子C6は「3次蓄電素子」と呼ぶことにする。1次蓄電素子である蓄電素子C1は、発電素子2が発電し発電制御回路4から出力される電力を充電する(すなわち電荷を蓄積する)。蓄電素子C1の電圧が所定値に達すると、蓄電素子C1に蓄積された電荷をスイッチS1〜S6を介して、2次蓄電素子である蓄電素子C2〜C5、および3次蓄電素子である蓄電素子C6に供給する。2次蓄電素子は、負荷装置10のブロック構成に対応して複数の蓄電素子C2〜C5を並列に接続している。3次蓄電素子である蓄電素子C6は、発電素子2が発電できない状況となった時、蓄電素子C1および蓄電素子C2〜C5に電荷を供給するバックアップ用の蓄電素子である。2次蓄電素子である蓄電素子C2〜C5に対する入力側スイッチS2〜S5をスイッチ群6、出力側スイッチS7〜S10をスイッチ群8で示す。以下、各蓄電素子の容量設定と動作について説明する。
【0021】
1次蓄電素子である蓄電素子C1は、蓄積されている電荷を2次蓄電素子C2〜C5および3次蓄電素子C6に供給するとともに、発電制御回路4と充電制御回路5に対しそれらを動作させるための電力を供給する。発電制御回路4と充電制御回路5が動作するには制御開始電圧Vc,Vc’以上の電圧を必要とするので、蓄電素子C1の電圧を短時間でVc,Vc’に到達させ、発電制御回路4および充電制御回路5を短時間で起動させねばならない。
【0022】
ここで、蓄電素子の電圧Vは、V=Q/C(Qは蓄積電荷量、Cは容量)で決まるから、蓄電素子C1の容量を小さくするほど電圧Vは速く上昇する。よって、蓄電素子C1の容量は、発電制御回路4および充電制御回路5が動作するのに必要な最低限の容量であり、かつ、蓄電素子C2〜C6よりも小さい容量とした。具体的には、発電素子2の発電能力および発電制御回路4と充電制御回路5の消費電力を考慮し、10〜500μF程度とした。これにより、発電制御回路4および充電制御回路5を短時間で起動させ、かつ安定的に動作させることができる。
【0023】
2次蓄電素子である蓄電素子C2〜C5は、蓄電素子C1から供給された電荷を蓄積するとともに、負荷装置10の各負荷ブロック10a〜10dを動作させる電源となる。本例では、蓄電素子C2はセンサ10aへ、蓄電素子C3はAD変換器10bへ、蓄電素子C4はCPU10cへ、蓄電素子C5は無線部10dへ、スイッチ群8と電源出力部9を介して接続される。よって蓄電素子C2〜C5は、接続先である負荷ブロックの動作仕様に合わせてその容量を決定する。本例の場合には、センサ機能にかかる一連の動作をどれだけの頻度で行うかを考慮し、これに必要な最低限の電荷を蓄積すればよい。具体的には、各負荷ブロックの消費電力に合わせて、500〜10000μF程度とした。
【0024】
3次蓄電素子である蓄電素子C6は、2次蓄電素子である蓄電素子C2〜C5が充電を完了した後に、蓄電素子C1からさらに供給される電荷を蓄積する。そして、発電素子2が発電できない状況となった際に、発電素子2に代わって蓄電素子C2〜C5を充電するためのバックアップ用素子として用いる。蓄電素子C6から蓄電素子C2〜C5への電荷の移動は、スイッチS6とスイッチS2〜S5(スイッチ群6)を介して行う。ここで蓄電素子C6の容量は、発電素子2が発電した電力を無駄なく蓄積するために、蓄電素子C1〜C5の合計値よりも大きい容量とする。具体的には、10〜1000mF程度とすることで、発電電力を無駄なく蓄積できる。
【0025】
これらの蓄電素子C1〜C6は、それぞれ適切な種類のコンデンサで構成する。例えば、電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、積層セラミックコンデンサ、電気二重層コンデンサ等を用いる。必要に応じて、複数個のコンデンサを並列に接続して適切な容量にする。特に蓄電素子C1〜C5は、リーク電流が小さくかつ内部抵抗が小さいことが望ましいことから、積層セラミックコンデンサが適する。また蓄電素子C6は、電気二重層コンデンサ等の大容量の蓄電素子が適する。なお、蓄電素子C6については二次電池を適用することも考えられるが、コンデンサと比較して一般に充放電の繰り返し寿命が短いことから、コンデンサの方が望ましい。もし二次電池を用いる場合は、充放電の繰り返し寿命の長い、全固体型の薄膜リチウムイオン二次電池等が望ましい。
【0026】
電源出力部9は、蓄電素子C2〜C5から供給される電力を安定化し、負荷装置10の各負荷ブロック10a〜10dへ所定の電圧で供給する電圧安定化回路である。本例では、蓄電素子C2〜C5は相互に独立であるため、負荷ブロック毎に異なる電圧安定化回路で構成する。接続先の負荷ブロックの動作頻度や消費電流を踏まえ、最適な電圧安定化回路を選択する。具体的には、センサ10a、AD変換器10b、CPU10cのように、初期化動作に消費電流を多く使う回路や、データ保持や安定動作のために通電時間の長い負荷ブロックに対しては、自己消費電流の少ない低損失(ロードロップアウト)レギュレータ回路9a〜9cを用いる。また、無線部10dのように常時通電する必要がない負荷ブロックに対しては、自己消費電流が大きいが高効率であるDC/DC変換回路9dを用いる。
【0027】
負荷装置10の構成について述べる。本例のセンサ機能を実現する負荷装置10は、センサ10a、AD変換器10b、CPU10c、無線部10dで構成される。
【0028】
センサ10aは、無線センサ端末100が設置された周囲の環境情報や機器の稼動状況を測定する。例えば、温度、湿度、振動、加速度、音波、ガス、塵埃、照度、光、磁界、電流等の各種物理量を測定し、アナログ信号へと変換する。単一のセンサだけでなく、複数種のセンサで構成しても良い。もちろん、測定の対象は上記の物理量に限定されない。また、アナログ信号として出力するセンサだけでなく、デジタル信号として出力するセンサも適用可能である。この場合はAD変換器10bが不要となるので、センサ10aのデジタル出力信号をCPU10cに接続すれば良い。
【0029】
AD変換器10bは、センサ10aの出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。必要に応じて、適切な増幅回路をセンサ10aとAD変換器10bの間に挿入し、アナログ信号を増幅しても良い。なお、AD変換器10bは、センサ10aもしくはCPU10cのいずれかに含めて構成することもできる。
【0030】
CPU10cは、負荷装置10内の各負荷ブロックの起動タイミングの制御を行う。また、AD変換器10bを通して得られるセンサ10aの測定信号に対して、必要に応じて、データの蓄積、信号処理、暗号化、符号化等を施し、無線送信可能なデータの生成を行う。
【0031】
無線部10dは、CPU10cが生成したデータを外部機器に送信する。用途や設置環境に合わせて、適当な無線方式を選択して用いる。
【0032】
本実施例の無線センサ端末100が備える自立電源システム1では、環境エネルギーを利用することから、発電素子2から得られる電力は微小かつ不安定となる。よって、本構成の負荷装置10を連続動作させることは困難であり、予め設定した間隔でセンサ測定と無線送信動作を間欠的に実行する。
【0033】
例えば、負荷装置10の初期設定動作を実行した後に、センサ10a、AD変換器10b、CPU10c、無線部10dについて、最低限の回路動作のみを維持するスリープ状態とする。そして、CPU10cに内蔵されるタイマ回路を用いて、例えば60秒に1回程度の間隔で割り込み信号を生成させる。割り込み信号により、まずCPU10cの主動作を開始させる。CPU10cは、センサ10a、AD変換器10bを順次動作させる信号を生成し、センサ測定を行う。CPU10cは、予め設定されたプログラムに従い、取得したセンサ測定信号に対して必要な信号処理や符号化を実行した上で、無線部10dを起動させて、データ送信を行う。その後、センサ10a、AD変換器10b、CPU10c、無線部10dは、再びスリープ状態に移行し、次の割り込み信号発生まで待機する。
【0034】
次に、充電制御回路5の行う充電制御動作を詳細に説明する。
図2は、各蓄電素子の放電可否判定方法を説明する図である。縦軸は蓄電素子の電圧、横軸は時間である。放電可否判定のために2つの閾値電圧Va,Vb(ただし、Va<Vbとする)を設定する。閾値電圧VaとVbは、発電制御回路4の制御開始電圧Vcおよび充電制御回路5の制御開始電圧Vc’よりも高く、また負荷装置10内の各負荷ブロックの動作電圧より高い値とする。時間t0で充電を開始すると蓄電素子の電圧が上昇し、時間t1で閾値Vbに達したとする。電圧が閾値Vbに達するまでの区間(t0〜t1)は放電不可、閾値Vbに達した後は放電可と判定する。すなわち、閾値Vbは蓄電素子の充電完了点を意味する。充電完了後の蓄電素子は放電により電圧が降下し、時間t2で閾値Vaに達したとする。電圧が閾値Vaに達するまでの区間(t1〜t2)は放電可、閾値Vaに達した後は放電不可と判定する。このように放電可否判定は、2つの閾値Va,Vbと比較するヒステリシス判定で行う。このような動作は、ヒステリシスコンパレータ回路等を用いて実現できる。
【0035】
図3は、充電する蓄電素子を決定するための充電制御ルールを示す図である。充電制御回路5は、図2で判定した各蓄電素子の放電可否状態に基づき、図3を参照し、どの蓄電素子に充電すべきかを決定する。各蓄電素子C1〜C6の放電可否状態を、放電可(○印)、放電不可(×印)、無関係(−印)で示す。ここでは6通りのルールを示しているが、各蓄電素子C1〜C6の放電可否状態の任意の組み合わせは、いずれかのルールに該当する。
【0036】
ルールを上から順に説明すると、蓄電素子C1が放電不可の場合は、他の蓄電素子の状態に関係なく、蓄電素子C1を充電する。C1が放電可、C2が放電不可の場合は、他の蓄電素子の状態に関係なく、C1からC2へ充電する。C1とC2が放電可、C3が放電不可の場合は、他の蓄電素子の状態に関係なく、C1からC3へ充電する。以下の説明は省略するが、このような充電制御ルールを設けることで、蓄電素子C1、C2、C3、・・・C6の順に優先的に充電を行うことができる。
【0037】
従って、例1に示すように、C1〜C4の充電を完了した後にC2が放電不可になったような場合には、C5への充電を中断して優先度の高いC2への充電に切り替える。また例2に示すように、バックアップ用のC6が放電可、C1とC2が放電不可となった場合には、C6から優先度の高いC1に充電する。
【0038】
優先順位の設定に関しては、蓄電素子C1の優先度を最も高くして、発電制御回路4や充電制御回路5を短時間で起動させる。負荷装置10に電力を供給する蓄電素子C2〜C5については、負荷ブロックの動作の優先順に対応して決定する。よって図1の例では、センサ10aは優先度が高く、無線部10dは優先度が低いことになる。
【0039】
充電制御回路5は充電すべき蓄電素子を決定したら、対応するスイッチS1〜S6を操作して、所定の蓄電素子への充電を行う。なお、上記の充電動作において、スイッチ群6(S2〜S5)に対し、2つ以上のスイッチが同時にオン状態とならないように操作する。これは、2次蓄電素子であるC2〜C5の間で相互に電荷の移動が発生して、充電量の優先順位がくずれることを防止するためである。
【0040】
また、発電素子2が発電できない状況となり、バックアップ用の蓄電素子C6から蓄電素子C1〜C5へ充電するときは、充電制御回路5は、スイッチS1とS6をオン状態に維持したままスイッチ群6(S2〜S5)を選択し、蓄電素子C2〜C5の優先順位に従って充電動作を行う。
【0041】
図4は、蓄電素子を順に充電するときの各蓄電素子の電圧変化を模式的に示す図である。ここでは充電制御ルールに従い、蓄電素子C1、C2、C3・・・の順に充電する場合を示している。
【0042】
初期状態(時間t0)では、全ての蓄電素子C1〜C6は未充電(放電不可)の状態とし、スイッチS1〜S10は全てオフ状態とする。そして、発電素子2により蓄電素子C1が充電され、蓄電素子C1の電圧V1が上昇して閾値Vbに達するまで待機する。
【0043】
時間t1にて蓄電素子C1の電圧V1が閾値Vbに達したら、充電制御回路5は放電可と判定し、スイッチS1、S2をオン状態として蓄電素子C1と蓄電素子C2を接続する。これによりC1に蓄積されていた電荷がC2に移動するが、C1よりC2の容量が大きいので、C1の電圧V1は大きく降下し、C2の電圧V2は僅かに上昇する。C1の電圧V1が閾値Vaまで降下したら、充電制御回路5は放電不可と判定し、スイッチS1、S2をオフ状態とし、再びC1を充電して電圧V1が閾値Vbに上昇するまで待機する。以後充電制御回路5は、C1からC2への電荷の移動とC1への充電とを繰返し、C2の電圧V2が閾値Vbに達し放電可となるまで継続する。
【0044】
時間t2にて蓄電素子C2の電圧V2が閾値Vbに達したら、充電制御回路5はC2が放電可と判定し、スイッチS1をオン状態、S2をオフ状態、S3をオン状態とし、蓄電素子C1と蓄電素子C2の接続を解除するとともに、蓄電素子C1と蓄電素子C3を接続する。これによりC1に蓄積されていた電荷がC3に移動するが、C1よりC3の容量が大きいので、C1の電圧V1は大きく降下し、C3の電圧V3は僅かに上昇する。C1の電圧V1が閾値Vaまで降下したら、充電制御回路5は放電不可と判定し、スイッチS1、S3をオフ状態とし、再びC1を充電して電圧V1が閾値Vbに上昇するまで待機する。以後充電制御回路5は、C1からC3への電荷の移動とC1への充電とを繰返し、C3の電圧V3が閾値Vbに達し放電可となるまで継続する。
【0045】
以下同様に、蓄電素子C4〜C6についても順次充電する。なお、例えば蓄電素子C3への充電動作中に、それよりも優先度の高い蓄電素子C2の電圧V2が閾値Vaまで低下し放電不可となった場合は、蓄電素子C3への充電動作を中断して蓄電素子C2への充電動作に切り替える。
【0046】
このように本実施例の充電制御回路5は、蓄電素子C1〜C6に対して、蓄電素子C1からC6の順に優先順位を付けた充電動作を行う。特に蓄電素子C1(1次蓄電素子)は最も優先的に充電され、かつ容量値が他より小さいことから、発電素子2が発電を開始してから短時間で発電制御回路4を起動し、その状態を維持することができる。よって、発電素子2が発電しているほとんどの期間において、発電素子2は高効率で発電を行うことができる。
【0047】
また、蓄電素子C2〜C5(2次蓄電素子)についても、接続する負荷装置10の各負荷ブロック10a〜10dに必要な最低限の容量値とし、かつ優先順位に従って順次充電されることから、各負荷ブロックはその優先順位に従って、短時間で起動することができる。
【0048】
さらに発電素子2が発電していない期間は、蓄電素子C6(3次蓄電素子)に蓄積した電荷を蓄電素子C2〜C5(2次蓄電素子)へ供給することで、各負荷ブロックへの給電が中断することを防止し、または中断期間を最小限とすることができる。
【0049】
本実施例の自立電源システムによれば、発電素子が微小かつ不安定な環境エネルギーから発電する方式であっても、発電制御回路が起動するまでの期間、または停止している期間は最小限となるので、発電素子からの発電量を最大化することができる。よって、このような自立電源システムを備えた無線センサ端末では、装置起動から短時間でセンサ機能の動作を開始し、かつ発電素子の発電が停止しても、センサ動作が中断せず、または動作の中断期間を最小限とすることができる。
【0050】
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0051】
上記した実施例において、各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線やデータ線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:自立電源システム、
2:発電素子、
3:電源制御回路、
4:発電制御回路、
5:充電制御回路、
9:電源出力部、
10:負荷装置、
11:電圧監視回路、
100,200:無線センサ端末、
C0〜C6:蓄電素子、
S0〜S10:スイッチ。
図1
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図3
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図6