(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2の記載の自動車では、熱交換器によって冷却された冷却水をバッテリおよびPCUの順に配管中で循環させ、バッテリおよびPCUを冷却するが、当該PDUはインバータやコンバータ等の複数の電気機器を備える。したがって、複数の電気機器の発熱量が異なる場合に、それぞれの電気機器の目標温度に合わせて適切に冷却することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、バッテリや電気機器の発熱量に応じて冷却水量を調整し、適切に冷却可能な電気車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
バッテリを収容するバッテリユニット(例えば後述の実施形態における第1及び第2バッテリユニット31、32)と、
第1電気機器(例えば後述の実施形態におけるDC−DCコンバータ36)及び第2電気機器(例えば後述の実施形態における充電装置37)からなる電気機器を収容する電気機器ケース(例えば後述の実施形態における第1及び第2電気機器ケース40、41)と、
を備え、
前記バッテリ及び前記電気機器を冷却する共通の冷却水が、前記バッテリユニット及び前記電気機器ケースに配設された冷却水配管(例えば後述の実施形態における冷却水配管10)の内部を流通し、
前記バッテリユニットは、第1バッテリユニット(例えば後述の実施形態における第1バッテリユニット31)と第2バッテリユニット(例えば後述の実施形態における第2バッテリユニット32)とを有し、
前記電気機器ケースは、前記第1電気機器を収容する第1電気機器ケース(例えば後述の実施形態における第1電気機器ケース40)と、前記第2電気機器を収容する第2電気機器ケース(例えば後述の実施形態における第2電気機器ケース41)と、を有し、
前記冷却水は、分岐部(例えば後述の実施形態における分岐部11)により前記第1バッテリユニットと前記第2バッテリユニットとに分岐されて第1及び第2流通経路(例えば後述の実施形態における第1及び第2流通経路A、B)を流通し、
前記第1流通経路の前記冷却水は、前記第1バッテリユニットを通過後に前記第1電気機器ケースに流通し、
前記第2流通経路の前記冷却水は、前記第2バッテリユニットを通過後に前記第2電気機器ケースに流通し、
前記分岐部には、前記第1及び第2流通経路を流通する前記冷却水の流量を調整する流量調整手段が配設される
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて
前記流量調整手段は、前記第1及び第2流通経路の前記冷却水が流通する前記冷却水配管の断面積を変更することによって、前記冷却水の流量を調整する
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、
前記第1電気機器の発熱量は、前記第2電気機器の発熱量よりも少なく、
前記第1流通経路の前記冷却水の流量は、前記第2流通経路の前記冷却水の流量よりも少ない
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成に加えて、
前記第2バッテリユニットは、前記第1バッテリユニットの後方に配置され、
前記第1バッテリユニットは、車両前後方向に配置され、
前記第2バッテリユニットは、車両左右方向に配置され、
前記第2バッテリユニットに向かう前記冷却水配管は、前記第1バッテリユニットの車両左右方向における一側面側に、車両前後方向に延びるように配置される
ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加えて、
内燃機関(例えば後述の実施形態における内燃機関3)に接続される排気管(例えば後述の実施形態における排気管7)は、前記第1バッテリユニットの車両左右方向における他側面側に、車両前後方向に延びるように配置される
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加えて、
前記第2バッテリユニットに向かう前記冷却水配管を、前記第2バッテリユニットからの前記冷却水配管よりも下方に配置する
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6の何れか1項に記載の構成に加えて、
前記電気車両は、車両左右方向に並んで配置される一対の第1シート(例えば後述の実施形態におけるフロントシート5)と、前記第1シートの後方に配置される第2シート(例えば後述の実施形態におけるリアシート6)と、を備え、
前記第1バッテリユニットは、一対の前記第1シートの間に配置され、
前記第2バッテリユニットは、前記第2シートの下方に配置され、
前記第1及び第2電気機器ケースは、それぞれ前記第1バッテリユニットの左右に配置され、且つ、一対の前記第1シートの下方に配置される
ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、
前記第1電気機器は、前記第1及び第2バッテリユニットから供給された直流電力の電圧を降圧させるDC−DCコンバータ(例えば後述の実施形態におけるDC−DCコンバータ36)であり、
前記第2電機機器は、外部電源から供給された交流電力を変換して前記第1及び第2バッテリユニットを充電する充電装置(例えば後述の実施形態における充電装置37)である
ことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加えて、
前記第1及び第2バッテリユニット、並びに前記第1及び第2電気機器は、フロアパネル(例えば後述の実施形態におけるフロアパネル21)の下方に配置される。
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、バッテリ及び電気機器を冷却する冷却水の回路を、第1バッテリユニットを通過後に第1電気機器ケースを流通する第1流通経路と、第2バッテリユニットを通過後に第2電気機器ケースを流通する第2流通経路と、からなる並列回路とされる。これにより、第1及び第2流通経路にそれぞれ要求される冷却水量を調整でき、より発熱量の大きな群を積極的に冷却できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、簡素な構造で流量調整でき、大きな重量増加を招くことなく、コストも抑えることが可能である。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、発熱量の大きな群に多量の冷却水を流通させることで、冷却効率が向上し、電気機器の信頼性を確保できる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、第2ユニットへの冷却水配管の取り廻しが容易であり、直線的な配管により圧損を低減できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、冷却水配管及び排気管が、第1バッテリユニットを挟んで車両左右両側に配置されるので、冷却水配管を排気管からの熱影響が少ない位置に配置でき、冷却効率を向上することが可能である。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、第2バッテリユニットを冷却後であり、水温が上昇した冷却水が流通する冷却水配管(戻り配管)を、第2バッテリユニットを冷却前の冷却水が流通する冷却水配管(供給配管)の上方に配置することで、戻り配管からの排熱の影響を抑制し、熱効率を向上することが可能である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、第1及び第2バッテリユニット並びに第1及び第2電気機器ケースを効率よく配置することで、乗員の姿勢や荷室空間に影響を与えることなく第1及び第2バッテリユニット並びに第1及び第2電気機器ケースを配置でき、冷却水配管も短絡してコンパクトに配管できるので、冷却水配管の取り廻しが容易となる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、充電装置はDC−DCコンバータに比べて発熱量が大きいので、充電装置を冷却する第2流通経路の冷却水の流量を、DC−DCコンバータを冷却する第1流通経路の冷却水の流量に比べて多く設定している。これにより、充電装置が積極的に冷却されるので、冷却効率が向上し、電気機器の信頼性を確保できる。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、冷却水配管が配設される第1及び第2バッテリユニット、並びに前方及び後方電気機器を一つのユニットとして構成し、当該ユニットをフロアパネル下に一体搭載することが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先ず、本発明に係る電気車両の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本発明に係る電気車両1は、内燃機関3と電動機4とが接続された前輪駆動装置2を車両前部に有するハイブリッド自動車であり、この前輪駆動装置2の動力が不図示のトランスミッションを介して前輪Wfに伝達される。後輪Wrは、従動輪として機能する。電動機4は、後述するように第1及び第2バッテリユニット31、32に収容されたバッテリに電気的に接続され、当該バッテリからの電力供給と、バッテリへのエネルギー回生が可能となっている。内燃機関3に接続される排気管7は、電気車両1の進行方向右側に、車両前後方向に延びるように配置される。
【0027】
また、電気車両1は、車両左右方向に並んで配置される一対のフロントシート5(第1シート)と、フロントシート5の後方に配置されるリアシート6(第2シート)と、を備える。なお、一対のフロントシート5のうち、一方(車両進行方向右側)は運転席であり、他方(車両進行方向左側)は助手席である。
【0028】
(バッテリ及び電気機器の配置について)
図3も参照し、本実施形態のバッテリ及び電気機器の配置について詳述する。本実施形態の電気車両1は、その電源に係る構成要素として、エネルギー源の第1及び第2バッテリユニット31、32と、第1及び第2バッテリユニット31、32に外部の充電スタンドから急速充電が行われる際に使用される急速充電コネクタ(不図示)と、住宅用交流電源のコンセントからの第1及び第2バッテリユニット31、32への充電に際して使用されるプラグインコネクタ(不図示)と、プラグインコネクタから第1及び第2バッテリユニット31、32への充電を住宅用交流電源の交流から直流に変換して行う高周波方式のAC−DCコンバータの充電装置37と、第1及び第2バッテリユニット31、32に接続され高電圧を低電圧に変換して各サブシステム等にそれぞれ必要な電源を供給するDC−DCコンバータ36と、を備えている。
【0029】
一対のフロントシート5の間には、車両前後方向に第1バッテリユニット31が配置され、第1バッテリユニット31の後方、且つリアシート6の下方には、車両左右方向に第2バッテリユニット32が配置される。これら第1及び第2バッテリユニット31、32は、その内部にバッテリを収容する複数のバッテリユニット片33を異なる向きに整列してなる。
【0030】
より具体的には、バッテリユニット片33は略直方体形状であり、第1バッテリユニット31は、4個のバッテリユニット片33をその長辺が車両前後方向と平行となるように、上下2段で2個ずつ左右1列に配置されてなる。第2バッテリユニット32は、8個のバッテリユニット片33をその長辺が車両左右方向と平行となるように配置されてなり、後方の2列は上下1段で4個のバッテリユニット片33からなる後方バッテリユニット群34を構成し、前方の一列は上下2段で4個のバッテリユニット片33からなる前方バッテリユニット群35を構成する。このように第2バッテリユニット32を、前方に向かうしたがって上方に傾斜するリアシート6の座面形状に沿うように、前方バッテリユニット群35が後方のバッテリユニット群34よりも高くなるように配置することで、リアシート6の座面位置(ヒップポイント)を大きく変えることなく、車室内空間を確保している。なお、第1及び第2バッテリユニット31、32は、共に上下2段のバッテリユニット片33から構成されるので、その高さが略同一となる。
【0031】
第1バッテリユニット31の車両進行方向右側において、フロントシート5(運転席)の下方には、第1及び第2バッテリユニット31、32から供給された直流電力の電圧を高圧するDC−DCコンバータ36(第1電気機器)が配置される。また、第1バッテリユニット31の車両進行方向左側において、フロントシート5(助手席)の下方には、外部電源から供給された交流電力を直流電力に変換して、又は外部電源から供給された直流電力を変換して、第1及び第2バッテリユニット31、32を充電する充電装置37(第2電気機器)が配置される。これらDC−DCコンバータ36及び充電装置37は、前方電気機器を構成すると共に、それぞれ第1及び第2電気機器ケース40、41に収容される。なお、充電装置37は、図示しないがAC−DCコンバータを有し、AC−DCコンバータは、電源コンセントから供給された交流電圧を、第1及び第2バッテリユニット31、32の充電に必要な直流電圧に変換する。
【0032】
第1バッテリユニット31と第2バッテリユニット32の前後方向における間には、後方電気機器としての後方ジャンクションボックス38が配置されている。後方ジャンクションボックス38は、第1及び第2バッテリユニット31、32と、前方電気機器(DC−DCコンバータ36及び充電装置37)と、の間の電力を配電する。すなわち、後方ジャンクションボックス38は、充電装置37によって変換された電力を第1及び第2バッテリユニット31、32に配電すると共に、また、第1及び第2バッテリユニット31、32の直流電力をDC−DCコンバータ36に配電する。
【0033】
DC−DCコンバータ36に配電された直流電力は、降圧されて図示しない補機バッテリに供給される。また、DC−DCコンバータ36は、前方ジャンクションボックスFrJ/Bを有しており、当該前方ジャンクションボックスFrJ/Bによって、配電された第1及び第2バッテリユニット31、32の直流電力を、図示しないパワー駆動ユニット(PDU)に配電する。そして、パワー駆動ユニットは、直流電力を交流電力に変換して電動機4を駆動する。
【0034】
ここで、DC−DCコンバータ36及び充電装置37(前方電気機器)は、後方ジャンクションボックス38(後方電気機器)よりも低いので、一対のフロントシート5の下方に配置した場合であっても、座面位置を大きく変えることなく配置でき、車室内空間を十分に確保できる。なお、DC−DCコンバータ36に含まれる前方ジャンクションボックスFrJ/Bは、後方ジャンクションボックス38と不図示のパワー駆動ユニットとの間の電力を配電する機能を有するのに対し、後方ジャンクションボックス38は、第1及び第2バッテリユニット31、32と、DC−DCコンバータ36及び充電装置37と、の間の電力を配電する複数の機能を有するので、前方ジャンクションボックスFrJ/Bに比べて後方ジャンクションボックス38が高くなる。また、一般的に、DC−DCコンバータ36や充電装置37は第1及び第2バッテリユニット31、32に比べて低く形成される。
【0035】
これらの第1及び第2バッテリユニット31、32、並びに前方電気機器(DC−DCコンバータ36及び充電装置37)及び後方電気機器(後方ジャンクションボックス38)は、一体として積み降ろしできるように、上方から見た形状が土の字形状である基台8の上面に固定されており、基台8とシールされたカバー(不図示)で覆われた単一のユニット20を構成している。カバーの形状は、ユニット20の上面の形状に沿うような凹凸形状とされる。そして、
図4〜
図7に示すように、このユニット20は、フロアパネル21の下方に配置される。フロアパネル21の形状も、ユニット20の上面の形状に沿うような凹凸形状とされる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のバッテリ及び電気機器の配置によれば、第1バッテリユニット31は一対のフロントシート5の間に配置され、第2バッテリユニット32はリアシート6の下方に配置され、前方電気機器(DC−DCコンバータ36及び充電装置37)は一対のフロントシート5の下方に配置され、後方電気機器(後方ジャンクションボックス38)は第1及び第2バッテリユニット31、32の間に配置される。このように、バッテリユニット及び電気機器を効率よく配置することで、乗員の姿勢や荷室空間に影響を与えることなくバッテリユニット及び電気機器を配置できる。また、フロントフロア部とリヤフロア部とのスペースに対して、第1及び第2バッテリユニット31、32の置き方を変更することで、これらのスペースを有効に利用しながら、第1及び第2バッテリユニット31、32を効率良く配置することができることから、可能な限りの多くのバッテリを搭載できる。また、一般的に前方電気機器を構成するDC−DCコンバータ36及び充電装置37は、第1及び第2バッテリユニット31、32に比べ高さを必要とされないことから、フロントシート5の高さを大きく変えることなく、フロントシート5の下方に前方電気機器を配置できる。
【0037】
また、比較的重量部品である前方電気機器を構成するDC−DCコンバータ36及び充電装置37を、車両左右方向に並んだ一対のフロントシート5下に配置することで、車両全体の重心位置をバランスよく得ることができ、特に電気車両1の好ましい前後方向重量バランスを得ることもできる。また、DC−DCコンバータ36及び充電装置37は、比較的高さの抑えることができるので、一対のフロントシート5下への足入れ性を悪化させることもない。これにより、車室内空間を十分に確保することが可能となる。
【0038】
また、第1バッテリユニット31と第2バッテリユニット32との間には、後方ジャンクションボックス38が配置されるので、第1及び第2バッテリユニット31、32からの高圧配線を短絡でき、取り廻しも容易となる。
【0039】
また、前方電気機器(DC−DCコンバータ36及び充電装置37)は後方電気機器(後方ジャンクションボックス38)よりも低いので、比較的低い前方電気機器を一対のフロントシート5の下方に配置し、比較的高い後方電気機器を第1及び第2バッテリユニット31、32の間に配置することにより、フロントシート5及びリアシート6の高さ、すなわち座面位置(ヒップポイント)を大きく変えることなく配置でき、車室内空間を十分に確保できる。これにより、車両全高の制限内において、シート座面と頭上空間を確保することが可能である。
【0040】
第1及び第2バッテリユニット31、32、並びに前方電気機器(DC−DCコンバータ36及び充電装置37)及び後方電気機器(後方ジャンクションボックス38)は、フロアパネル21の下方に配置されるので、これらを一つのユニット20として構成し、当該ユニット20をフロアパネル21下に一体搭載することが容易となる。
【0041】
また、第2バッテリユニット32は、前後で高さの異なる2群以上の前方及び後方バッテリユニット群35、34から構成され、前方バッテリユニット群35は、後方バッテリユニット群34よりも高い。したがって、リアシート6の下方に配置される第2バッテリユニット32を、リアシート6の座面形状に沿った配置とすることで、リアシート6の高さ、すなわち座面位置を大きく変えることなく配置でき、車室内空間を十分に確保できる。これにより、車両全高の制限内において、シート座面と頭上空間を確保することが可能である。
【0042】
(冷却水回路の構成について)
次に、このようなバッテリと電気機器(DC−DCコンバータ36、充電装置37)を冷却するための冷却水回路について説明する。なお、一般的に、冷却水はバッテリから電気機器の順に流れ、電気機器は、DC-DCコンバータ36に対し出力が大きく、発熱量が大きい充電装置37(AC-DCコンバータ)を備えるため、これらバッテリ及び電気機器を効率良く冷却する必要がある。
【0043】
図3に示すように、第1及び第2バッテリユニット31、32、並びに第1及び第2電気機器ケース40、41の側面には冷却水配管10が配設され、当該冷却水配管10の内部には、電動ウォーターポンプ14(
図9参照。)によって、バッテリ及び電気機器を冷却する共通の冷却水が流通する。
【0044】
電動ウォーターポンプ14に接続された冷却水配管10の上流端は、第1バッテリユニット31の車両進行方向左側に、車両前後方向に延びるように配置される。すなわち、冷却水配管10は、第1バッテリユニット31の車両左右方向における一側面側に配置される。これに対し、内燃機関3の排気管7(
図1参照。)は、第1バッテリユニット31の車両左右方向における他側面側に配置されるので、冷却水配管10に対する排気管7からの熱影響が抑制される。また同様に、DC−DCコンバータ36に比べて発熱量が大きい充電装置37も、第1バッテリユニット31の車両左右方向における一側面側に配置されるため、排気管7からの熱影響が抑制できる。
【0045】
また、
図8及び
図9も参照し、冷却水配管10は、分岐部11により第1バッテリユニット31に配設される第1流通経路Aと、第2バッテリユニット32に配設される第2流通経路Bと、に分岐され、2系統の冷却水回路が形成される。なお、図中、第1流通経路Aの一部分を(A及び任意の数字)で表し、第2流通経路Bの一部分を(B及び任意の数字)で表し、第1及び第2流通経路A、Bに分岐する前、及び第1及び第2流通経路A、Bが合流した後の第3流通経路Cの一部分を(C及び任意の数字)で表している。
【0046】
分岐部11には、第1及び第2流通経路A、Bを流通する冷却水の流量を調整する流量調整手段が設けられており、第1流通経路Aの冷却水の流量が、第2流通経路Bの冷却水の流量よりも少なくなるようにしている。より具体的に、流量調整手段は、第1流通経路Aの冷却水配管10の断面積を、第2流通経路Bの冷却水配管10の断面積よりも小さくなるように変更することによって、冷却水の流量を調整している。ここで、冷却水配管10の断面積の変更は、冷却水配管10自体の径を変更することで行ってもよく、同一配管径のオリフィスを追加することによって行ってもよい。なお、
図8及び
図9中の矢印の太さは、冷却水配管10の断面積、すなわち、冷却水の流量を示している。
【0047】
流通経路(C1)の冷却水のうち、第1流通経路Aに分岐した流通経路(A1)の冷却水は、先ず、第1バッテリユニット31を構成する4個のバッテリユニット片33のうち、下段に位置する2個のバッテリユニット片33Aを冷却し、続いて、上段に位置する2個のバッテリユニット片33Bを冷却する。
【0048】
第1バッテリユニット31を通過した流通経路(A2)の冷却水は、第1電気機器ケース40を流通し、その内部に収容されたDC−DCコンバータ36を冷却する。その後、流通経路(A3)の冷却水は、後述するように、流通経路(B4)の冷却水と合流する。
【0049】
また、流通経路(C1)の冷却水のうち、第2流通経路Bに分岐した流通経路(B1)の冷却水は、第2バッテリユニット32に向かって後方に流通する。ここで、
図3に示すように、冷却水配管10は第1バッテリユニット31の車両左右方向における左側面側に、車両前後方向に直線的に延びるように配置されており、第2バッテリユニット32への冷却水配管10の取り廻しを容易化し、直線的な配管により圧損を低減している。
【0050】
そして、冷却水配管10は、他の分岐部12により、第2バッテリユニット32を構成する8個のバッテリユニット片33のうち、上段に位置する2個のバッテリユニット片33Cに配設される流通経路(B2−1)と、下段に位置する6個のバッテリユニット片33D、33E、33Fに配設される流通経路(B2−2)と、に分岐される。ここで、下段に位置する6個のバッテリユニット片33のうち、前方に位置する2個を33D、中間に位置する2個を33E、後方に位置する2個を33Fと表している。
【0051】
ここで、分岐部12は、上述した分岐部11と同様に冷却水の流量を調整する流量調整手段を備えており、流通経路(B2−1)と流通経路(B2−2)の冷却水の流量が略等しくなるように調整する。すなわち、流通経路(B2−1)及び流通経路(B2−2)の冷却水配管10の断面積は、流通経路(B1)の冷却水配管10の断面積の二分の1とされる。
【0052】
そして、流通経路(B2−1)の冷却水は、2個のバッテリユニット片33Cを冷却する。また、流通経路(B2−2)の冷却水は、3組(6個)のバッテリユニット片33F、33E、33Dのうち後方の組から順番に冷却する。そして、流通経路(B2−1)及び流通経路(B2−2)の冷却水は、互いに合流して(図中(B3)参照)、充電装置37を冷却する。
【0053】
このように、流通経路(B1)を分岐部12によって流通経路(B2−1)及び流通経路(B2−2)に分岐させたのは、各バッテリユニット(第1及び第2バッテリユニット31、32)の冷却水量を均一化するべく、第1バッテリユニット31のバッテリユニット片33A、33Bの冷却水量と、第2バッテリユニット32のうち上段に位置するバッテリユニット片33Cの冷却水量と、第2バッテリユニット32のうち下段に位置するバッテリユニット片33D、33E、33Fの冷却水量とを合わせ、各バッテリユニットの温度差を少なくするために、分岐部12によって流通経路(B2−1)及び流通経路(B2−2)に分岐させたのである。
【0054】
例えば、流通経路(C1)の冷却水量を3x(xは任意の数。)とし、流通経路(A1)の冷却水量を1xとし、流通経路(B1)の冷却水量を2xとした場合、流通経路(B2−1)及び流通経路(B2−2)の冷却水量はそれぞれ1xとなる。そして、第1及び第2バッテリユニット31、32、並びにDC−DCコンバータ36を冷却する冷却水量は1xとなり、充電装置37を冷却する冷却水量は2xとなる。この場合、DC−DCコンバータ36よりも発熱量が大きく冷却が必要な充電装置37を十分に冷却することができると共に、第1及び第2バッテリユニット31、32を構成する複数のバッテリユニット片33を等しく冷却することが可能である。なお、流通経路(A1)と流通経路(B1)の冷却水量の割合は上記の例に限定されず、DC−DCコンバータ36や充電装置37の状態に応じて、分岐部11によって流通経路(A1)及び流通経路(B1)への冷却水量を適宜変更すればよい。また、バッテリや電気機器の状態に応じて、電動ウォーターポンプ14から流通経路(C1)に供給される冷却水量も適宜変更される。
【0055】
充電装置37を冷却した流通経路(B4)の冷却水は、DC−DCコンバータ36を冷却した流通経路(A3)の冷却水と合流するが、流通経路(A3)に比べて流通経路(B4)の冷却水量が多いため、第1流通経路Aにおいて冷却水の逆流が発生する可能性がある。そこで、流通経路(A2)の冷却水配管10に一方向弁13を配置することによって、第1バッテリユニット31に冷却水が逆流することを防止している。なお、一方向弁13は、流通経路(A3)に配置しても構わない。
【0056】
第1及び第2流通経路A、Bから合流した冷却水は、流通経路(C2)の冷却水配管10内を流通する。
図3に示すように、この第2バッテリユニット32からの冷却水配管10は、流通経路(C1)を形成して第2バッテリユニット32に向かう冷却水配管10よりも上方に配置される。これにより、バッテリ及び電気機器の冷却後であり、水温が上昇した冷却水が流通する流通経路(C2)の冷却水配管10(戻り配管)を、バッテリ及び電気機器の冷却前である冷却水が流通する流通経路(C1)の冷却水配管10(供給配管)の上方に配置することで、戻り配管からの排熱の影響を抑制し、熱効率を向上することが可能である。
【0057】
そして、流通経路(C2)の冷却水は、ラジエター15により適切な水温まで下げられた後、電動ウォーターポンプ14により、再び流通経路(C1)に供給される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の冷却水回路の構成によれば、第1バッテリユニット31を通過後に第1電気機器ケース40を流通する第1流通経路Aと、第2バッテリユニット32を通過後に第2電気機器ケース41を流通する第2流通経路Bと、からなる並列回路とされる。これにより、第1及び第2流通経路A、Bにそれぞれ要求される冷却水量を調整でき、より発熱量の大きな群(本実施形態では、第2バッテリユニット32と充電装置37。)を積極的に冷却できる。
【0059】
また、分岐部11の流量調整手段は、第1及び第2流通経路A、Bの冷却水が流通する冷却水配管10の断面積を変更することによって、冷却水の流量を調整するので、簡素な構造で流量調整でき、大きな重量増加を招くことなく、コストも抑えることが可能である。
【0060】
また、DC−DCコンバータ36の発熱量は、充電装置37の発熱量よりも少なく、第1流通経路Aの冷却水の流量は、第2流通経路Bの冷却水の流量よりも少ないの、で、発熱量の大きな群に多量の冷却水を流通させることで、冷却効率が向上し、電気機器の信頼性を確保できる。
【0061】
また、第2バッテリユニット32に向かう冷却水配管10は、第1バッテリユニット31の車両左右方向における左側面側に、車両前後方向に直線的に延びるように配置されているので、第2バッテリユニット32への冷却水配管10の取り廻しが容易化し、直線的な配管により圧損が低減する。
【0062】
また、冷却水配管10及び排気管7が、第1バッテリユニット31を挟んで車両左右両側に配置されるので、冷却水配管10を排気管からの熱影響が少ない位置に配置でき、冷却効率を向上することが可能である
【0063】
また、バッテリ及び電気機器の冷却後であり、水温が上昇した冷却水が流通する流通経路(C2)の冷却水配管10(戻り配管)が、バッテリ及び電気機器の冷却前である冷却水が流通する流通経路(C1)の冷却水配管10(供給配管)の上方に配置されるので、戻り配管からの排熱の影響を抑制し、熱効率を向上することが可能である。
【0064】
また、電気車両1は、車両左右方向に並んで配置される一対のフロントシート5と、フロントシート5の後方に配置されるリアシート6と、を備え、第1バッテリユニット31は一対のフロントシート5の間に配置され、第2バッテリユニット32はリアシート6の下方に配置され、第1及び第2電気機器ケース40、41は、それぞれ第1バッテリユニット31の左右に配置され、且つ、一対のフロントシート5の下方に配置される。したがって、第1及び第2バッテリユニット31、32並びに第1及び第2電気機器ケース40、41を効率よく配置することで、乗員の姿勢や荷室空間に影響を与えることなく第1及び第2バッテリユニット31、32並びに第1及び第2電気機器ケース40、41を配置でき、冷却水配管10も短絡してコンパクトに配管できるので、冷却水配管10の取り廻しが容易となる。
【0065】
また、充電装置37はDC−DCコンバータ36に比べて発熱量が大きいので、充電装置37を冷却する第2流通経路Bの冷却水の流量を、DC−DCコンバータ36を冷却する第1流通経路Aの冷却水の流量に比べて多く設定している。これにより、充電装置37が積極的に冷却されるので、冷却効率が向上し、電気機器の信頼性を確保できる。
【0066】
冷却水配管10が配設される、第1及び第2バッテリユニット31、32、並びに前方電気機器(DC−DCコンバータ36及び充電装置37)及び後方電気機器(後方ジャンクションボックス38)は、フロアパネル21の下方に配置されるので、これらを一つのユニット20として構成し、当該ユニット20をフロアパネル21下に一体搭載することが容易となる(
図3〜
図7参照。)。
【0067】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0068】
例えば、上述の実施形態においては本発明が適用される電気車両として、ハイブリッド自動車について説明したが、これに限定されず、例えば、電動機4のみを駆動源とする伝記自動車であってもよい。
【0069】
また、第2バッテリユニット32は、前後で高さの異なる3群以上のバッテリユニット群から構成してもよく、この場合、前方のバッテリユニット群は、後方のバッテリユニット群よりも高くなるように構成される。この場合であっても、リアシート6の下方に配置される第2バッテリユニット32を、リアシート6の座面形状に沿った配置とすることで、リアシート6の高さ、すなわち座面位置を大きく変えることなく配置でき、車室内空間を十分に確保できる。