特許第6019010号(P6019010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019010
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ムカデ用毒餌剤入り容器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   A01M1/20 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-253644(P2013-253644)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-112020(P2015-112020A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】安台 梨乃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優八
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−148177(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0107297(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0091911(US,A1)
【文献】 特開2002−125562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムカデに食べさせる毒餌剤と、前記毒餌剤を収容する毒餌剤収容凹部と前記毒餌剤収容凹部の全周囲から外周側の載置面へ向って延設されて所定の傾斜角で取り囲み、ムカデが全周囲から前記毒餌剤に接近可能な傾斜部とを備えた容器本体と、を有するムカデ用毒餌剤入り容器であって、
前記傾斜部の頂部の高さを超え、かつ、前記傾斜部の傾斜角の延長線上に形成される仮想延長面を越えないように前記毒餌剤が前記毒餌剤収容凹部に収容されていることを特徴とするムカデ用毒餌剤入り容器。
【請求項2】
前記傾斜角が、前記容器本体を設置する載置面から45°以下であることを特徴とする請求項1に記載のムカデ用毒餌剤入り容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムカデを効率的に毒餌剤に導き、食べさせることができるムカデ用毒餌剤入り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ムカデは、林の落ち葉の中などに生息し、小型の虫などを捕食しており、日本では、本州、四国、九州に分布し、体長が60〜80mmのアオズムカデや、本州〜南西諸島に分布し、体長が80〜150mmのトビズムカデが知られている。これらのムカデは、第1胴節に毒腺のある顎肢を持ち、これを用いて虫などを捕らえたり、敵から身を守ったりする。通常、ムカデは、上記のように林などに生息するが、自然環境の変化などによっては餌を求めるなどの目的で人家の庭や、家屋に侵入することがある。そのため、人が不用意にムカデに接触すると、ムカデに噛まれて、その際に毒による強い痛みを伴うことがある。
【0003】
このような事情から、ムカデなどの節足動物が家屋などへ侵入することを防止するための節足動物忌避剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。この節足動物忌避剤を、侵入の予想される場所に塗布などして使用すれば、人の生活環境への侵入を防止して、咬害を防ぐことが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、忌避剤による侵入の防止効果では必ずしも十分とは言えず、ムカデが忌避剤の間隙をすり抜けて人の生活環境へ侵入すれば接触することも起こり得る。そうすれば、ムカデとの接触による咬害が発生する可能性がある。そこで、ムカデが忌避剤の間隙をすり抜けないようにムカデが侵入しそうな広い範囲に忌避剤を予め処理することは、大変に手間がかかり、とても煩わしいものであった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ムカデを忌避させるのではなくて、ムカデに毒餌剤を食べさせて殺虫することができるムカデ用毒餌剤入り容器を提供することにある。
本発明に係るムカデ用毒餌剤入り容器は、ムカデの習性、行動についていろいろと研究をした結果、完成されたものである。
通常、アリやゴキブリなどは、地面や床などの平らな面に餌を置いておけば、集まってきてこれを食べる習性がある。ところがムカデは地面や床などの平らな面に餌を置いただけでは、この餌を食べないとの知見を得た。この習性、行動についてさらに追究したところ、ムカデは移動中に触角に餌が触れても餌とは認識せず、障害物と認識してこれを回避して進むような行動をとるからであると推察される。そこでムカデの触角が餌に触れずに口に触れるようにしたところ、ムカデは餌を食べることを見出した。本発明に係るムカデ用毒餌剤入り容器は、ムカデのこのような習性、行動に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成(1)および(2)により達成される。
(1)ムカデに食べさせる毒餌剤と、前記毒餌剤を収容する毒餌剤収容凹部と前記毒餌剤収容凹部の全周囲から外周側の載置面へ向って延設されて所定の傾斜角で取り囲み、ムカデが全周囲から前記毒餌剤に接近可能な傾斜部とを備えた容器本体と、を有するムカデ用毒餌剤入り容器であって、前記傾斜部の頂部の高さを超え、かつ、前記傾斜部の傾斜角の延長線上に形成される仮想延長面を越えないように前記毒餌剤が前記毒餌剤収容凹部に収容されていることを特徴とするムカデ用毒餌剤入り容器。
【0008】
上記(1)の構成のムカデ用毒餌剤入り容器(以下、単に「容器」と略称する。)によれば、ムカデが容器の傾斜部に達するとその傾斜部を登り始めるので、ムカデの触角は斜め上方を向くことになる。ムカデはそのまま進むと、毒餌剤は傾斜部の傾斜角の延長線上に形成される仮想延長面を越えないように毒餌剤収容凹部に収容されているから、ムカデの触角が餌に触れないまま、ムカデの口が餌に近づく状態となるので、ムカデがその餌を食べることができる。
【0009】
(2) 上記(1)の構成のムカデ用毒餌剤入り容器であって、前記傾斜角が、前記容器本体を設置する載置面から45°以下であることを特徴とするムカデ用毒餌剤入り容器。
【0010】
上記(2)の構成のムカデ用毒餌剤入り容器によれば、傾斜角が45°以下の傾斜部なので、ムカデはこの傾斜部を登るようになる。したがって、ムカデはその触角が餌に触れないまま、ムカデの口に餌が近づく状態を作り出すことができる。
ところが、この傾斜部が60°以上になると、ムカデの触角が傾斜部に当たるようになって、障害物と誤認して傾斜部を登らないことがある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るムカデ用毒餌剤入り容器によれば、このようにムカデを効率的に毒餌剤に導き、食べさせることができるので、庭や窓などの所期の場所に配置しておくだけで、簡単に、効果的にムカデを防除することができる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明したが、以下で本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について、図面を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ムカデの習性、行動を説明するための図であり、ムカデの触角に触れる餌をムカデは食べない状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るムカデ用毒餌剤入り容器の分解斜視図である。
図3図2に示したムカデ用毒餌剤入り容器の組立斜視図及び正面図である。
図4図2に示した屋根体を下側から見た下面図である。
図5】本発明に係るムカデ用毒餌剤入り容器における、容器の傾斜部と餌とムカデの触角とムカデの口の位置関係を説明するための図である。
図6】(a)は毒餌剤の本発明に係る収容の仕方を傾斜角の異なる2種類の傾斜部について説明する図で、(b)はムカデが食べない収容の仕方を傾斜角の異なる2種類の傾斜部について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、ムカデ13は、頭部23の先端に一対の触角15を有する。頭部23の後方には複数の胴節25が連なり、それぞれの胴節25に一対の歩肢27を両側に有する。また、第1胴節29には、毒腺(図示略)のある一対の顎肢31を有する。
そして、ムカデ13の習性、行動を研究した結果、歩肢27によって載置面(床や地面)19を移動するムカデ13は、ムカデ13の好物の餌剤11aの場合であっても、餌剤11aに最初に触角15が触れると、ムカデ13は回避する行動を示して餌剤11aを食べようとはしない。
【0015】
さらに追求したところ、ムカデ13はその触角先端部21が餌剤11aに触れても餌剤11aと認識せず、障害物と認識してこれを回避して進むからであり、ムカデ13の触角15が餌剤11aに触れないで進み、最初にムカデ13の口17に餌剤11aが触れると餌剤11aであると認識するからではないか、と推察される。
そこで、本発明に係るムカデ用毒餌剤入り容器33は、ムカデ13のこのような習性、行動に基づいて、ムカデ13の触角15が餌剤11aに触れないで、最初にムカデ13の口17に餌剤11aが触れるように創意工夫したものである。
【0016】
図2図4に基づいて、本発明の一実施形態に係るムカデ用毒餌剤入り容器33を説明する。
本実施形態に係るムカデ用毒餌剤入り容器33は、容器本体37と、容器本体37の上を覆う屋根体35とを有する。容器本体37は、餌である毒餌剤11が収容された毒餌剤収容凹部39と、毒餌剤収容凹部39の全周囲から外周側の載置面19へ所定の角度で延設される傾斜部61と、を有する。
【0017】
容器本体37は、底板部43の周囲に周壁部45が起立する。本実施形態において、底板部43は四角形に形成されている。図示例では、正方形となっている。周壁部45は、この底板部43の各辺に沿って連なることで、中央部に凹状の空間を形成する。この凹状の空間が、毒餌剤収容凹部39となる。周壁部45は、延在方向に直交する面の断面形状において、外側が歩行面部41となり、内側が収容部内壁面部47となる。歩行面部41と収容部内壁面部47との間には、僅かな幅で、底板部43と平行な頂部平坦面49が形成されている。
【0018】
周壁部45の4つの角部には、軸線が底板部43に垂直となる屋根体支持軸51が起立する。屋根体支持軸51は、起立先端が先細りのテーパー軸53となる。屋根体支持軸51の基部は、上端面55が頂部平坦面49よりも高くなる。周壁部45のそれぞれの角部には、頂部平坦面49より起立して屋根体支持軸51の基部の上端面55と同じ高さとなる仕切壁57が起立して設けられている。仕切壁57は、底板部43の対角線に沿う方向に形成されている。
【0019】
毒餌剤収容凹部39には、毒餌剤11が収容される。毒餌剤11は、誘引剤、賦形剤、誤食防止剤、防腐剤、pH調整剤などを含む。毒餌剤11は、例えば、ジェル状の固体となる。毒餌剤11は、傾斜部61の傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えないように配置される。
また毒餌剤上端面には、使用時には剥がされる保護フィルム(図示略)等を貼ることもできる。保護フィルムは、使用前における毒餌剤11の乾燥や異物の接触による損傷を低減させる。勿論、毒餌剤11を密封袋に収納し、使用時に開封して容器本体37の毒餌剤収容凹部39に収容することもできる。
【0020】
また、毒餌剤収容凹部39の底となる底板部43には、放射方向に複数の固定壁59が起立している。固定壁59は、毒餌剤11に埋入されることで、毒餌剤11の容器本体37に対する保持性を高めることができる。
【0021】
本実施形態に係る容器本体37は、毒餌剤収容凹部39の全周囲から外周側の載置面である載置面19へ延設される歩行面部41が、載置面19から毒餌剤11に向かって上り傾斜を有する傾斜部61であり、傾斜部61の頂部に頂部平坦面49が形成されている。この頂部平坦面49は、上述した保護フィルムを容器本体37に貼る際の貼代となるもので、その幅が10mm以下とするのがよい。幅が10mmを超えると、ムカデ13の頭部23が頂部平坦面49に達した際に触角15が水平を向いてしまい、回避する行動をとる可能性がある。勿論、本実施形態では、歩行面部41が頂部平坦面49を有するが、頂部平坦面49は省略されてもよい。また、歩行面部41の高さLは、4〜10mm程度が好ましい。
【0022】
容器本体37の上を覆う屋根体35は、底板部43と略同一サイズの正方形に形成される。屋根体35の上面は、中央部から各辺部に向かって傾斜勾配を有して形成される。これにより、雨水等が良好に排水される。屋根体35の下面のそれぞれの角部には、円筒状の支柱部65が垂設されている。図4に示すように、支柱部65の下面開口穴67には、容器本体37における屋根体支持軸51のテーパー軸53が挿入される。屋根体35は、それぞれの支柱部65が、屋根体支持軸51に嵌合することで、容器本体37と一体となって屋根を構成する。
【0023】
屋根体35には支柱部65に接続する屋根体側仕切壁69が、容器本体37の仕切壁57に一致するようにして垂設されている。従って、屋根体35が容器本体37と一体に組み付けられると、図3の(a),(b)に示すように、屋根体35と容器本体37との間には、屋根体35と頂部平坦面49とによって上下が挟まれ、仕切壁57及び屋根体側仕切壁69によって左右が挟まれる四角形の侵入口71が各辺に形成される。ここで、侵入口71は、20mm以上の侵入口幅Wと、10mm以上の高さAと、を有することが望ましい。
【0024】
容器本体37及び屋根体35は、それぞれが合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)からなり、透明・半透明・不透明のいずれでもよい。容器本体37と屋根体35では、材質が異なってもよい。
また、合成樹脂には、帯電防止剤・紫外線防止剤・防黴剤などの各種添加剤を添加してもよい。
容器本体37及び屋根体35の形状及びサイズは、特に限定されず、図例の正方形の他、長方形・円形・楕円形などであってもよい。屋根体35は、ドーム状・逆椀状などとしてもよい。
容器本体37と屋根体35との接合は、上記の嵌合構造の他、超音波熔着や薄肉ヒンジによる連結などとしてもよい。勿論、本実施形態に係るムカデ用毒餌剤入り容器33は、屋内使用時など屋根体35を外して使用することもできる。
【0025】
次に、図5を用いて上記構成を有するムカデ用毒餌剤入り容器33に収容する毒餌剤11の効果的な収容の仕方を説明する。
図5において、容器本体37は中央に毒餌剤11を収容する毒餌剤収容凹部39が設けられており、毒餌剤収容凹部39の周囲を傾斜部61が所定の傾斜角で取り囲んでいる。本実施の形態では、傾斜部61の傾斜角θは45°に形成されている。
毒餌剤収容凹部39に収容される毒餌剤11の量は、傾斜部61の成す傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面S(本実施形態においては、四角錐状面)を越えないような量となっている。
このようにすることにより、傾斜角45°の傾斜部61をムカデ13が登り始めると、傾斜があるため、ムカデ13の頭部23が傾斜部61の頂部に接近しても触角先端部21は毒餌剤11に触れることはない。そして、ムカデ13が頂部に到達したとき、ムカデ13の口17が毒餌剤11へ接近することとなる。
【0026】
図6は(a)における毒餌剤11の効果的な収容の仕方と、(b)における効果的でない収容の仕方を説明する図である。両図において、(1)は傾斜角が45°の傾斜部61の容器33、(2)は傾斜角が45°より小さい傾斜部61の容器33を示している。
図6の(a)(1)において、毒餌剤11は容器33の傾斜部61の傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えない量が設置されている。このようにすることで、ムカデ13が傾斜部61の頂部に到達したとき、ムカデ13の触角先端部21が毒餌剤11に接触することなくムカデ13の口17が毒餌剤11へ接近することとなるため、毒餌剤11を食べる確率が高まる。
図6の(a)(2)において、容器33は傾斜部61の傾斜角が45°よりも小さい容器を使った場合でも、毒餌剤11は同じく延長線上に形成される仮想延長面Sを越えない量だけ設置されている。このようにすることで、ムカデ13の口17が最初に毒餌剤11へ接近することとなるため、毒餌剤11を食べる確率が高まる。
一方、図6の(b)(1)においては、毒餌剤11は容器33の傾斜部61の傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えて多量の毒餌剤11が設置されている。このようにすると、ムカデ13が傾斜部61の頂部に到達したとき、ムカデ13の触角先端21が毒餌剤11に接触してしまい、ムカデ13は忌避反応を示してしまい、図1のように毒餌剤11食べようとしなくなる。
図6の(b)(2)において、傾斜部61の傾斜角が45°よりも小さい容器33を使った場合でも、毒餌剤11は同じく延長線上に形成される仮想延長面Sを越えた量が設置されると、ムカデ13の触角先端21が毒餌剤11に接触してしまい、ムカデ13は忌避反応を示してしまい、毒餌剤11食べなくなる。
【0027】
また、本実施形態に係るムカデ用毒餌剤入り容器33では、容器本体37の上を覆う屋根体35を備える。そこで、容器本体37が、特に屋外に設置される場合には、屋根体35を取り付けることで、雨や、土埃、落ち葉などの異物が毒餌剤収容凹部39へ入ることを防止できる。これにより、毒餌剤11の効力を長期間に渡って持続させることができる。
従って、本実施形態に係るムカデ用毒餌剤入り容器33によれば、ムカデ13に対する喫食性を飛躍的に向上させることができる。
【0028】
ここで、上述した本発明に係るムカデ用毒餌剤入り容器の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] ムカデ13に食べさせる毒餌剤11と、前記毒餌剤11を収容する毒餌剤収容凹部39と前記毒餌剤収容凹部39の周囲を所定の傾斜角で取り囲む傾斜部61とを備えた容器本体37と、を有するムカデ用毒餌剤入り容器33であって、
前記傾斜部61の傾斜角の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えないように前記毒餌剤11が前記毒餌剤収容凹部39に収容されていることを特徴とするムカデ用毒餌剤入り容器33。
[2] 上記[1]の構成のムカデ用毒餌剤入り容器33であって、前記傾斜角が、前記容器本体37を設置する載置面19から45°以下であることを特徴とするムカデ用毒餌剤入り容器33。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態においては、容器本体37の底板部43が四角形に形成されているため、傾斜部61の傾斜角の延長線上に形成される仮想延長面Sが四角錐状面に形成されたが、底板部が円形に形成されている場合は仮想延長面Sが円錐状面に形成される。このように本発明の傾斜部及び仮想延長面は、本発明の趣旨に基づいて種々の形状を採りうることは勿論である。
【0030】
(実施例)
次に、上記構成のムカデ用毒餌剤入り容器33を用いた場合(図5参照)と、載置面19上に上端部高さが7mmの餌剤11aを直接設置した場合(図1参照)のムカデによる喫食の有無を調べた結果を説明する。
【0031】
[餌剤処方]
餌剤11aの処方は、下記表1に示す通りとした。
【0032】
【表1】
【0033】
[ムカデ用毒餌剤入り容器]
図3(b)に示すように、侵入口71の高さAを10mm、歩行面部41の高さLを7mm、侵入口71の横幅Wを20mmとしたムカデ用毒餌剤入り容器33を用いた。
そして、上記餌剤11aが傾斜部61の成す傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えないぎりぎりの量となるように上記餌剤11aを毒餌剤収容凹部39に収容した。
【0034】
[試験方法]
縦50cm、横30cm、高さ40cmのプラスチック製のバット内に土を敷き、検体(餌剤11a、又はムカデ用毒餌剤入り容器33に収容された餌剤11a)をバットの壁に沿わして設置した。
アオズムカデ1匹をバットの中に静かに放ち、壁沿いに歩く様子を観察した。
検体に接触したとき、餌剤11aを食べるか否かを確認した。
その結果を下記表2に示す。なお、表2中の「×」は検体の餌剤11aに接触したが食べなかった場合を示し、「○」は検体の餌剤11aに接触し食べた場合を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すように、載置面19上に餌剤11aを直接設置した検体では、n1〜n6の6回の検体への接触に対し、食べた回数はわずか1回であった。
ムカデ用毒餌剤入り容器33を用いた検体では、n1〜n6の6回の検体への接触に対し、食べた回数は6回であった。
載置面19上に餌剤11aを直接設置した検体では、餌剤11aに触角先端部21が触れることによる忌避反応で、食する回数が少なくなることが確認された。
ムカデ用毒餌剤入り容器33を用いた検体では、触角先端部21より先に口17が餌剤11aに接触することで、食する回数が飛躍的に増加することが分かった。
【0037】
[歩行面となる傾斜部の傾斜角について]
次に、検体である傾斜部の傾斜角度θを、15°、30°、45°、60°、90°に変えてムカデ13の傾斜部通過率を調べた。
縦50cm、横30cm、高さ40cmのプラスチック製のバット内に土を敷き、上記表1の処方の餌剤11aを頂部に置いたスロープ台をバットの壁に沿わして設置した。
スロープ台は、傾斜部の横幅が30mm、長さ100mmとなるように発泡スチロール板を用いて作成した。
アオズムカデ1頭をバットの中に静かに放ち、ムカデ13が検体であるスロープ台を通過する様子を観察した。
その結果を下記表3に示す。なお、表6中の「○」はスロープ台の傾斜部を登った場合を示し、「×」はスロープ台の傾斜部を登らずに脇へそれるか、引き返した場合を示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3に示すように、スロープ角度θが、60°以上の場合、傾斜部通過率が著しく低下した。
スロープ角度θは、60°よりも小さく、望ましくは45°以下であることが傾斜部通過率は高くなることが分かった。従って、容器本体37における歩行面部41の傾斜角度は、設置面から45°以下であることが望ましい。
【0040】
[餌剤の収容の仕方について]
次に、検体である餌剤11の収容の仕方において、ムカデ用毒餌剤入り容器33の傾斜部61の傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えない場合、と超える場合について、ムカデ13の喫食率を調べた。
【0041】
[餌剤処方]
餌剤11aの処方は、上記表1に示す通りとした。
【0042】
[ムカデ用毒餌剤入り容器]
図3(b)に示した歩行面部41の高さLを7mm、侵入口71の横幅Wを20mmとしたムカデ用毒餌剤入り容器33の容器本体37を用いた。
そして、上記餌剤11aが傾斜部61の成す傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えないように約1gの量の餌剤11aを毒餌剤収容凹部39に収容した容器本体37(図6(a)(1)参照)と、仮想延長面Sを越える約5gの量の餌剤11aを毒餌剤収容凹部39に収容した容器本体37(図6(b)(1)参照)とを用意した。
【0043】
[試験方法]
縦50cm、横30cm、高さ40cmのプラスチック製のバット内に土を敷き、検体(約1gの餌剤11aを収容した容器本体37と、約5gの餌剤11aを収容した容器本体37)をバットの壁に沿わして設置した。
アオズムカデ1匹をバットの中に静かに放ち、壁沿いに歩く様子を観察した。
検体に接触したとき、餌剤11aを食べるか否かを確認した。
その結果を下記表4に示す。なお、表4中の「×」は検体の餌剤11aに接触したが食べなかった場合を示し、「○」は検体の餌剤11aに接触し食べた場合を示す。
【0044】
【表4】
【0045】
表4に示すように、餌剤11aが傾斜部61の成す傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えないように毒餌剤収容凹部39に収容されている場合は、喫食率が100%であったのに対し、餌剤11aが傾斜部61の成す傾斜角45°の延長線上に形成される仮想延長面Sを越えるように毒餌剤収容凹部39に収容されている場合は、喫食率が17%であった。
【符号の説明】
【0046】
11…毒餌剤
13…ムカデ
19…載置面
33…ムカデ用毒餌剤入り容器
35…屋根体
37…容器本体
39…毒餌剤収容凹部
41…歩行面部
61…傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6