【文献】
YAGHMUE, A. et al.,Characterization and potential applications of nanostructured aqueous dispersions,Advances in Colloid and Interface Science,2009年,Vol.147-148,p.333-342
【文献】
荒牧賢治,エマルションの調製と応用に関する最新の研究動向,FRAGRANCE JOURNAL,2009年,Vol.11,P.17-22
【文献】
中島英夫 他,超微細エマルションおよびその化粧品への応用,J. Soc. Cosmet. Chem. Japan.,1990年,Vol.23, No.4,p.288-294
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.本発明のエマルション
本発明は、高濃度であるにもかかわらず長期にわたり分散質を安定に維持するエマルション(以下、本発明のエマルションとも称する)に関する。本発明のエマルションは、分散質の平均粒子径が5nm〜100nmの範囲であることにより、長期にわたるエマルションの安定性を維持することができ、その結果、透明又は半透明の外観を呈している。ここで、本明細書で使用する「透明又は半透明」とは、分散質が分散媒に適切に分散されている状態の指標を指し、具体的には光透過率が対水溶媒比で70%以上の状態をいう。本発明において、本発明のエマルションの光透過率は、対水溶媒比で80%以上、より好ましくは90%以上であることが好ましい。
【0025】
また、本発明のエマルションは、両親媒性分子と水とから調製されるミセル溶液に比較して、油分の包接能が格段に高いことを特徴としている。より具体的には、本発明のエマルションは、両親媒性分子の配合量に対して、重量比で約2.0倍程度の油分まで相分離を引き起こすことなく安定に保持することができる。
【0026】
すなわち、本発明のエマルションは、両親媒性分子と水とから調製されるミセル溶液の油分に対する可溶化限界量を超えた大量の分散質である油分を包接する安定分散溶液である。なお、両親媒性分子の油分に対する可溶化限界量は、両親媒性分子、油分の種類に応じて、下記のようにして特定することができる。例えば、任意の量で配合された両親媒性分子水溶液に油分を混合・溶解した際に、該水溶液の光透過率が対水溶媒比で70%以下になる量が可溶化限界量と定められる。
【0027】
したがって、本発明のエマルションは、油分の配合量が両親媒性分子の配合量に対して、重量比で0.1倍以上、0.2倍以上、0.3倍以上、0.4倍以上、0.5倍以上、0.6倍以上、0.7倍以上、0.8倍以上、0.9倍以上、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上であるものを包含する。
【0028】
一方、本発明のエマルションに配合可能な油分の上限は、両親媒性分子の配合量に対して、重量比で2.0倍以下である。下記実施例に示す通り、油分の配合量が前記量を上回る場合には、分散質の粒子径が大きくなるか、又は分散質内部に油分を包接できずに分散媒に漏出してしまい、エマルションの安定性が低下するからである。
【0029】
さらに、本発明のエマルションは、撹拌処理や超音波処理など、高剪断力を負荷すると、分散質内の油分が漏出して白濁する特性を有している。したがって、本発明のエマルションは、前記特性を応用した外部環境応答型ナノカプセルとして、皮膚外用剤(例えば化粧品)、医薬部外品又は医薬品製剤に応用することができる。
【0030】
もちろん、本発明のエマルションが上記応用分野に限定されることはなく、塗料、インキ、洗剤、食料品、エネルギー等の工業製品にも適用できる。
【0031】
2.エマルション構成成分
本発明のエマルションは、両親媒性分子、水及び油分を含んでいる。本発明のエマルションにおいて、両親媒性分子及び油分は分散質を構成し、水は分散媒を構成する。
【0032】
本発明で使用することができる両親媒性分子は、親水基と疎水基とを有する任意のイオン性または非イオン性化合物であり、本発明においてはいずれの化合物を用いてもよい。好ましくは、両親媒性分子として界面活性剤を使用する。
【0033】
本発明で使用できる界面活性剤は、水及び油分、並びに必要に応じて、多価アルコール、補助界面活性剤等と組み合わせることでディスコンティニュアス・キュービック液晶を形成できるものであれば特に制限されず、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いてもよい。好ましくは、非イオン界面活性剤を使用する。
【0034】
本発明で使用される非イオン界面活性剤は、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型、及びアミノ酸系の非イオン界面活性剤のいずれであってもよい。例えば、これに限定されるものではないが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0035】
本発明で使用されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、酸化エチレンの平均重合度が任意のものであることができる。好ましくは、酸化エチレンの平均重合度の下限は約10以上であり、酸化エチレンの平均重合度の上限は約200以下である。好ましいポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80が挙げられる。なお、この数字は、酸化エチレンの重合度を表し、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40は、酸化エチレンの平均重合度が40であることを示す。
【0036】
本発明で使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、酸化エチレンの平均重合度が任意のものであることができる。好ましくは、酸化エチレンの平均重合度の下限は約10以上であり、酸化エチレンの平均重合度の上限は約20以下である。好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(POEステアリルエーテルとも称する)、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(POEオクチルドデシルエーテルとも称する)及びポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(POEイソステアリルエーテルとも称する)が挙げられる。
【0037】
本発明で使用されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、酸化エチレンの平均重合度が任意のものであることができる。酸化エチレンの平均重合度の下限は約10以上であり、酸化エチレンの平均重合度の上限は約20以下である。好ましいポリオキシエチレンソルビタン酸エステルの例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(POEソルビタンモノオレエートとも称する)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(POEソルビタンモノラウレートとも称する)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(POEソルビタンモノステアレートとも称する)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(POEソルビタンモノパルミテートとも称する)及びポリオキシエチレンソルビタントリオレート(POEソルビタントリオレートとも称する)が挙げられる。
【0038】
本発明で使用されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、酸化エチレンの平均重合度が任意のものであることができる。好ましくは、ポリオキシエチレン部分の平均重合度の下限は約10以上であり、ポリオキシエチレン部分の平均重合度の上限は約20以下である。好ましくは、ポリオキシプロピレン部分の平均重合度の下限は約4以上であり、ポリオキシプロピレン部分の平均重合度の上限は約8以下である。好ましいポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル及びポリオキシエチレンイソステアリルエーテルが挙げられる。
【0039】
本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノオレート及びデカグリセリンモノステアレートが挙げられる。
【0040】
本発明に使用されるショ糖脂肪酸エステル類としては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル及びショ糖ラウリン酸エステルが挙げられる。
【0041】
本発明に使用されるアミノ酸系界面活性剤は、これに限定されるものではないが、例えばこれに限定されるものではないが、例えばラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス−2、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス−5、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス−2、ラウロイルグルタミン酸ジステアレス−5、PCAイソステアリン酸PEG−30水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG−40水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸PEG−60水添ヒマシ油、PCAイソステアリン酸グリセレス−25よりなる群から選択することができる。
【0042】
ところで、本発明で使用される非イオン界面活性剤は、このような化学構造に限定されるだけでなく、物性的には約10以上のHLB値を有するものが好ましく用いられる。非イオン界面活性剤のHLB値が約10を下回る場合には、適切にキュービック液晶を調製できない場合がある。なお、本明細書で用いられる用語「HLB値」とは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)をいい、一般に、20×M
H/M(式中、M
H=親水基部分の分子量であり、M=分子全体の分子量である)により算出される。HLB値は、分子中の親水基の量が0%のとき0であり、100%のとき20である。HLB値は、界面活性剤では界面活性剤分子を形成する親水性及び疎水性の基の大きさと強さを表し、疎水性の高い界面活性剤はHLB値が小さく、親水性の高い界面活性剤はHLB値が大きい。
【0043】
非イオン界面活性剤は上記の1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。本発明において、好ましい非イオン界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
一方、本発明で使用することができる陽イオン界面活性剤は、アミン塩型、アルキル4級アンモニウム塩型、環式四級アンモニウム塩型のいずれの陽イオン界面活性剤を用いてもよい。具体的には、これらに限定されるものではないが、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどを挙げることができる。
【0045】
本発明に使用することができる陰イオン界面活性剤は、脂肪酸塩型、アルキルエーテルカルボン酸塩型、アシル乳酸塩型、N−アシルサルコシン酸塩型、N−アシルグルタミン酸塩型、N−アシルメチルアラニン塩型、N−アシルメチルタウリン塩型、アルカンスルホン酸塩型、α−オレフィンスルホン酸塩型、アルキルスルホコハク酸塩型、アシルイセチオン酸塩型、アルキル硫酸エステル塩型、アルキルエーテル硫酸エステル塩型、脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩型、モノアシルグリセリン硫酸エステル塩型、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩型のいずれを用いてもよい。具体的には、これらに限定されるものではないが、ヤシ油脂肪酸カリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸カリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン、ココイルメチルアミノエチルスルホン酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、アルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸トリエタノールアミンから選択することができる。
【0046】
本発明で使用することができる両性界面活性剤は、ベタイン型、スルホベタイン型、アルキルベタイン型、イミダゾリン型、レシチンのいずれの両性界面活性剤を用いてもよい。具体的には、これらに限定されるものではないが、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、卵黄レシチン、大豆レシチン、などを挙げることができる。
【0047】
本発明で使用される水は、当業者に公知の任意の水である。例えば、これに限定されるものではないが、水道水、蒸留水、イオン交換水、殺菌水などを使用することができる。
【0048】
本発明で使用できる油分としては、小麦胚芽油やトウモロコシ油やヒマワリ油やダイズ油などの植物油、シリコーン油、イソプリピルミリステートやグリセリルトリオクタノエートやジエチレングリコールモノプロピレンペンタエリスリトールエーテルやペンタエリスリチルテトラオクタノエートなどのエステル油、スクアラン、スクアレン、流動パラフィン、ポリブテンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。油分は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
3.その他の成分
本発明のエマルションは、補助界面活性剤、又は水溶性添加物、例えば多価アルコール、無機塩、水溶性ポリマー、その他の水溶性化合物など、をさらに含むことができる。
【0050】
補助界面活性剤は、界面膜曲率を低減させて、安定な分散質形成の容易化を図ることができる点で有用である場合がある。本発明で使用することができる補助界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、例えば、コレステロール、フィトステロール、高級アルコールなどを挙げることができる。
【0051】
多価アルコールは、分散質の安定化を図ることができる点で有用である場合がある。本発明で使用することができる多価アルコールとしては、これに限定されるものではないが、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
無機塩は、両親媒性分子の親水基の水和状態を変化させることによって、分散質の安定化を図ることができる点で有用である場合がある。本発明で使用することができる無機塩としては、これに限定されるものではないが、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、臭化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化鉄、酢酸亜鉛などが挙げられる。無機塩は1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
水溶性ポリマーは、その排除体積効果又は電気的斥力効果によって、分散質の安定化を図ることができる点で有用である場合がある。本発明で使用することができる水溶性ポリマーとしては、これに限定されるものではないが、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリリジン、キトサン、ポリペプチド、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。水溶性ポリマーは1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明のエマルションに使用することができるその他の水溶性化合物として、これに限定されるものではないが、例えば、尿素、乳酸、グリコール酸、水溶性アミノ酸、糖類などを挙げることができる。
【0055】
本発明のエマルションは、上記成分の他に、化粧品や医薬品に又はその原料に通常用いられる水性又は油性の付加成分を含むことができる。そのような付加成分の例には、保湿剤や防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美容成分、ビタミン類、香料、保香剤、増粘剤、着色顔料、光輝性顔料、有機粉体、金属酸化物、タール色素などが含まれる。
【0056】
以下、本発明のエマルションを構成する各成分の配合量の例示的な範囲を記載する。
−両親媒性分子の配合量は、本発明のエマルションの総重量あたり、0.001〜25重量%、好ましくは0.01〜20重量%である。
−水の配合量は、本発明のエマルションの総重量あたり、10〜99.9重量%、好ましくは30〜99.9重量%である。
−油分の配合量は、本発明のエマルションの総重量あたり、0.0001〜50重量%、好ましくは0.001〜40重量%、更に好ましくは0.001〜35重量%である。
−補助界面活性剤の配合量は、本発明のエマルションの総重量あたり、0〜20重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。
−多価アルコールの配合量は、本発明のエマルションの総重量あたり、0〜80重量%、好ましくは0.1〜70重量%である。
−無機塩の配合量は、本発明のエマルションの総重量あたり、0〜15重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。
−水溶性ポリマーの配合量は、本発明のエマルションの総重量あたり、0〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%である。
【0057】
4.用途
本発明のエマルションは、分散質に化粧品や医薬品の有効成分をさらに配合することにより、外部環境応答型ナノカプセルとして、皮膚外用剤(例えば化粧品、皮膚外用の医薬部外品、医薬品)、医薬品を提供することができる。
【0058】
本発明で使用することができる前記有効成分は、油溶性の化合物であれば特に制限されず、例えば、レチノイン酸、リポ酸、プレドニゾロン、グリチルレチン酸、インドメタシン、ナプロキセン、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、タミバロテン、クロロゲン酸、レチノール、フィナステリド、アザチオプリン、クロルプロマジン、フェニトイン、ジアゼパム、塩酸ドネペジル、アスピリン、レボドパ、プロスタグランジン誘導体、プロピオン酸ベクロメタゾン、テオフィリン、塩酸リドカイン、ニコチン酸、ナテグリニド、コルヒチン、ビタミンD、フラボノイド、エストロゲン、アザチオプリン、メトトレキサート、フルオロウラシル、メルカプトプリン、パクリタキセル、塩酸ドキソルビシン、メシル酸イマチニブ、シロリムス、油溶性ペプチド、テストステロン、エストロゲン、トコフェロール、カロテノイド類、リノール酸、ペンタデカン酸、生薬エキス、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、エラグ酸、レチノールパルミテート、セラミドなどを使用することができる。
【0059】
もちろん、本発明のエマルションが上記応用分野に限定されることはなく、塗料、インキ、洗剤、食料品、エネルギー等の工業製品にも適用できる。
【0060】
5.エマルションの調製方法
以下、本発明のエマルションの調製方法について例示する。
【0061】
本発明のエマルションは、ディスコンティニュアス・キュービック(Discontinuous Cubic)液晶を調製する第1の工程と、前記液晶を水又は水溶性添加物を含む水溶液で希釈して透明又は半透明な水溶液を調製する第2の工程とによって調製することができる。なお、ディスコンティニュアス・キュービック液晶とは、液晶構造ユニットにおける疎水性領域と親水性領域のうち、一方の領域は連続的な構造をとっているが、もう一方は不連続な構造となっているものをいう。
【0062】
第1の工程は、両親媒性分子、水及び油分を混合して、ディスコンティニュアス・キュービック液晶を調製する工程である。その際、油分の量は、両親媒性分子に対して重量比で2倍以下であるように配合量を調整する。油分の配合量が前記割合を上回る場合、下記実施例で示すように、本発明のエマルションを形成することができないからである(例えば
図3及び
図4参照)。
【0063】
任意の補助界面活性剤及び水溶性添加物(多価アルコール、無機塩、水溶性ポリマー、その他の水溶性化合物)は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶を調製する第1の工程で両親媒性分子、水及び油分と共に配合すればよい。また、化粧品や医薬品の有効成分として油溶性化合物を配合する場合も、この時点で配合すればよい。
【0064】
第1の工程において、ディスコンティニュアス・キュービック液晶は、上述した両親媒性分子、水及び油分、並びに他の任意の成分(補助界面活性剤及び水溶性添加物)を添加・混合することにより調製することができ、特別な方法を要しない。また、両親媒性分子や補助界面活性剤を添加する際、適宜加温等の処理を施してもよい。
【0065】
ディスコンティニュアス・キュービック液晶を構成する各成分の量は、油分が両親媒性分子に対して重量比で2倍以下とすることを除いて、ディスコンティニュアス・キュービック液晶が形成できる限り特に制限されない。そのような各成分の量は、使用する両親媒性分子、油分等の種類に応じて、適宜適切な量を選択することができる。例えば、使用する両親媒性分子及び油分、並びに水を項目とする相平衡図を作成することにより、ディスコンティニュアス・キュービック液晶を形成する配合比を見出すことができる。
【0066】
以下、ディスコンティニュアス・キュービック液晶を調製するために使用される例示的な各成分量を記載する。
−両親媒性分子の配合量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の総重量あたり、10〜60重量%、好ましくは15〜45重量%である。
−水の配合量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の総重量あたり、5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%である。
−油分の配合量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の総重量あたり、1〜60重量%、好ましくは5〜45重量%である。
−補助界面活性剤の配合量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の総重量あたり、0〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
−多価アルコールの配合量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の総重量あたり、0〜75重量%、好ましくは5〜50重量%である。
−無機塩の配合量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の総重量あたり、0〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
−水溶性ポリマーの配合量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の総重量あたり、0〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0067】
本発明において、上記のようにして調製した混合物がディスコンティニュアス・キュービック液晶を形成していることは、例えば偏光顕微鏡観察、小角X線散乱測定、粘度測定、及び色素染色法によって確認することができる。
【0068】
続く第2の工程は、第1の工程で調製したディスコンティニュアス・キュービック液晶を水又は水溶性添加物を含む水溶液で希釈して透明又は半透明な水溶液(すなわち、エマルション)を調製する工程である。
【0069】
添加する水又は水溶性添加物を含む水溶液の量は、ディスコンティニュアス・キュービック液晶を希釈して、透明又は半透明な水溶液が生じる量であれば特に制限されず、例えばディスコンティニュアス・キュービック液晶と等倍以上の量で選択すればよい。あるいは、添加する水又は水溶性添加物を含む水溶液の量は、例えばディスコンティニュアス・キュービック液晶に有効成分として配合させた油溶性化合物の量が、化粧品や医薬品などの製品に応じて適切な濃度まで希釈されるように選択すればよい。
【0070】
なお、水溶性添加物を含む水溶液を用いてディスコンティニュアス・キュービック液晶を希釈する場合、該水溶液中の水溶性添加物の量は、第1の工程で調製するディスコンティニュアス・キュービック液晶中の水溶性添加物の有無又はその量に応じて変化する。すなわち、上記で例示した本発明のエマルションに配合される水溶性添加物の合計量の範囲内となるように設定すればよい。
【0071】
第2の工程において、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の希釈は、過剰な剪断力を与えないことが好ましい。過剰な剪断力を負荷すると、後述するように、エマルションの分散状態が崩壊してしまい、適切なエマルションを形成することができないからである。具体的には、撹拌速度で3000rpm未満の剪断力を使用して、透明なエマルションを調製することが好ましい。
【0072】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
(1)試薬
本試験で使用した試薬は以下の通りである。
ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル : 花王ケミカル社製エマルゲン2020G−HA (HLB:13.0)
グリセリン : 花王ケミカル社製濃グリセリン
スクワラン : 日光ケミカルズ社製精製オリーブスクワラン
エチルヘキサン酸セチル : 日光ケミカルズ社製CIO
【0074】
(2)エマルションの調製
ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(30g)、スクワラン(15g)、グリセリン(38g)、精製水(17g)を秤量後、80℃で加熱混合した溶液を室温まで冷却した。組成物の液晶構造は、目視観察、偏光顕微鏡法観察、小角X線散乱法及び色素染色法を組み合わせて利用することにより特定した。
【0075】
上記に従って調製したディスコンティニュアス・キュービック液晶と精製水とを、重量比で5:95(=ディスコンティニュアス・キュービック液晶:精製水)で混合し、スターラーバーを用いた弱い撹拌力で溶解・分散し、透明な水溶液(調製例1)を得た。
【0076】
調製例1のエマルション及び調製例1と同一組成の単純混合物の外観図を
図1に示す。
図1から明らかな通り、本発明の方法で調製されたエマルション(右図)は高い透明性を有している。
【0077】
したがって、調製例1のエマルションは分散質の平均粒子径が極めて小さなものであることが示された。
【0078】
(3)エマルションの安定性検証
高剪断力ホモミキサー(プライミクス社製、ロボミックスMII−2.5)を用いて、調製例1のエマルションの安定性を評価した。安定性の指標として分光光度計(島津製作所社製、UVmini−1240、波長=550nm)で計測される光透過率を用いた。各剪断力(撹拌速度)におけるエマルションの光透過率の経時変化を
図2に示す。なお、光透過率は水の光透過率を100%として算出している。
【0079】
図2から分かるように、4000rpm以上の剪断力を負荷することにより、エマルションの光透過率が経時的に低下することが分かった。
【0080】
さらに、超音波発生装置(シャープ社製、35kHz)を用いて、調製例1のエマルションに超音波を照射し、当該エマルションの安定性を評価した。照射エネルギー量と光透過率の関係を表1に示す。
【表1】
【0081】
表1から明らかなように、調製例1のエマルションは、照射エネルギーの増加とともに光透過率が低下することが分かった。
【0082】
上記結果によれば、調製例1のエマルション中の分散質は、剪断力を負荷することにより崩壊し、内部の油分を漏出することが分かった。したがって、当該エマルションの分散質は、油分を包接するミセル様粒子である可能性が示唆された。
【0083】
(4)エマルションの油分包接能
油分の含有量が異なるディスコンティニュアス・キュービック液晶を調製し、グリセリン水溶液(グリセリン重量分率=0.69)で希釈した時のエマルションの粒子径と透明度を評価した。具体的には、下記表2の成分及び組成(重量分率)においてディスコンティニュアス・キュービック液晶を調製し、重量比でディスコンティニュアス・キュービック液晶:グリセリン水溶液=5:95のエマルションを作製した。
【表2】
【0084】
エチルヘキサン酸セチルの重量分率(Xo)に対して粒子径をプロットしたものを
図3に示す。
図3から分かるように、Xo=0.5以上で粒子サイズは極端に大きくなる。
【0085】
また、エチルヘキサン酸セチルの重量分率(Xo)に対して光透過率をプロットしたものを
図4に示す。
図4から分かるように、Xo=0.5以上で光透過率は急激に低下する。
【0086】
これらの結果から、当該エマルション中の分散質は、界面活性剤に対して約2倍まで油分を安定に包接できることが分かった。
【0087】
(5)エマルションの構造特性の検証
動的光散乱(DLS、大塚電子社製、ELS−710TY)、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製)を用いて、調製例1のディスコンティニュアス・キュービック液晶を調製し、グリセリン水溶液(グリセリン重量分率=0.69)で希釈した時のエマルションの構造を評価した。ディスコンティニュアス・キュービック液晶の各重量%に対する平均粒子径を表3に示す。
【表3】
【0088】
表3から分かるように、ディスコンティニュアス・キュービック液晶の濃度に依存せず、15〜40nmの球状粒子であった。