特許第6019029号(P6019029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019029エマルジョンの調製及び爆発によるナノ物質の合成方法、及びエマルジョン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019029
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】エマルジョンの調製及び爆発によるナノ物質の合成方法、及びエマルジョン
(51)【国際特許分類】
   B01J 3/08 20060101AFI20161020BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20161020BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20161020BHJP
【FI】
   B01J3/08 D
   B01J3/08 L
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-533320(P2013-533320)
(86)(22)【出願日】2011年10月14日
(65)【公表番号】特表2014-501601(P2014-501601A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】IB2011054567
(87)【国際公開番号】WO2012049660
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】105339
(32)【優先日】2010年10月15日
(33)【優先権主張国】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】510314057
【氏名又は名称】イノブナノ−マテリアイス アバンサドス,ソシエダッド アノニマ
【氏名又は名称原語表記】INNOVNANO−MATERIAIS AVANCADOS,S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドス・サントス・アントゥネス,エルザ・マリーザ
(72)【発明者】
【氏名】カラド・ダ・シルヴァ,ジョアン・マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】コスタ・ラゴア,アナ・ルシア
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/040770(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/144665(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/059070(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/082844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/08
B01J 2/00−04
B01J 19/00、19/08
C01B 13/14
B82Y 30/00
B82Y 40/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエマルジョンの爆発による固相でのナノ物質の合成方法であって、
a)内相及び外相からなる合成エマルジョンの、前記内相及び前記外相の乳化をもたらす調製工程と、
b)増感工程と、
c)爆発着火工程とを備え、
前記内相は、エマルジョン合成物の70%〜98%を占め、かつ、前記エマルジョン合成物が組成物内に水を含有する油中水滴(w/o)型エマルジョンである場合、固体の不水溶性プリカーサが、前記エマルジョン合成物が組成物中に水を除去した融液/油(m/o)型エマルジョンである場合、水と接触して加水分解する不溶性プリカーサが事前にフィードされ、
前記内相の前記固体の不水溶性プリカーサは、炭酸塩、水酸化物、又は酸化物であり、
前記内相の水と接触して加水分解する前記不溶性プリカーサは、アルコキシド、又は金属炭酸塩であることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記増感工程において、中空シリカ、ポリマー、又はガス球を添加することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記爆発着火は、4000〜6000m/sの間の速度で作動し、50000〜115000barの範囲の圧力を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記合成エマルジョンは硝酸アンモニウム又は尿素をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記合成エマルジョンの外相は、少なくとも1つの炭化水素誘導体を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記合成エマルジョンの外相は、界面活性剤を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法であって、
爆発が着火エマルジョンを使用することによって着火されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法で使用される合成エマルジョンであって、
前記エマルジョンは、
組成物内に水を含有する油中水滴(w/o)型エマルジョン、又は、組成物中に水を除去した融液/油(m/o)型エマルジョンであり、
前記エマルジョンの内相は、前記エマルジョンが組成物内に水を含有する油中水滴(w/o)型エマルジョンである場合、固体の不水溶性プリカーサから、前記エマルジョンが組成物中に水を除去した融液/油(m/o)型エマルジョンである場合、水と接触して加水分解する不溶性プリカーサから構成されることを特徴とするエマルジョン。
【請求項9】
請求項8記載のエマルジョンであって、
プリカーサの総重量が前記エマルジョンの組成物全体の重量の70%未満であることを特徴とするエマルジョン。
【請求項10】
請求項8又は9記載のエマルジョンであって、
前記エマルジョンの内相に硝酸アンモニウムをさらに含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載のエマルジョンであって、
水に溶解した硝酸アンモニウムを含み、前記硝酸アンモニウムは液相に存在することを特徴とするエマルジョン。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のエマルジョンであって、
硝酸アンモニウムの融点を降下する化合物を含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載のエマルジョンであって、
炭化水素誘導体ベース外相を備え、
前記炭化水素誘導体は、パラフィン系ワックス、微晶質ワックス、及びワックス/ポリマーの群から選択されることを特徴とするエマルジョン。
【請求項14】
請求項13記載のエマルジョンであって、
前記外相中の炭化水素誘導体が、液化されると、0.004〜0.020Pa・sの間の粘度指数を有することを特徴とするエマルジョン。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか一項に記載のエマルジョンであって、
前記外相は、界面活性剤をさらに含むことを特徴とするエマルジョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョンの内相に含まれる不溶性プリカーサ、又は、水と接触して加水分解するプリカーサの中で、エマルジョン爆発をもたらす衝撃での分解及びその後の反応によるナノ物質の合成方法に関し、広範囲のナノ物質に本方法が実行できる。
【背景技術】
【0002】
100nm未満のナノ物質は、ナノテクノロジーと称される、新規かつ最近創成された主題領域の構成ブロックである。実際、世界中で大きな関心が「微小(very small)」に現在認められている。科学分野から政策自身まで、ナノテクノロジーはまた、しばしば主要な世界のリーダーの話に現れる。技術的な不連続性を提供する可能性があると、例えば、蒸気機関、列車、自動車、コンピュータ、バイオテクノロジー等の過去の歴史的出来事と同様、市民生活に関連するプラスの意義が示される。このような重要性は、例えば、所定の材料中のフィルム、孔又はナノメートル寸法の表面等の粒子又は構造の結果であり、より大きな寸法を有する同じ材料の一群の電気的、光学的、磁気的及び機械的な特性と異なる特性を示す。特に、我々は、例えば、高塑性、超硬度、低融点、触媒活性に結果として生じる改良を伴う、体積単位毎の透過性及び高表面積、低熱伝導性、磁気効果の増加、半導体の高ルミネセンス、色の変化、及び、包括的に量子力学の法則への適合性等の特性に言及する。何人かの科学者は包括的に、物質の推定状態に対する理論を提案する。
【0003】
近年、このような新規な特性に関する知識の結果として、徹底的な調査が、複数のアプリケーションにおいて、これらのナノ物質の大規模組み込みをサポートする工業規模での生産率(トン/日)を有する、新規なナノ物質の製造方法の開発に向けて行われている。文献において十分に言及された公知の方法は、3種類の主要なカテゴリーに枠組みされる。
【0004】
[I−液相方法(liquid-phase Methods)]
本カテゴリーは、既に規定された、又は工業化中である一群の方法、すなわち、a)ゾル−ゲル(sol-gel)、b)共沈(co-precipitation)、c)熱水及び電気化学合成から構成される。これらは、一般的原則として、溶液又はゲルフォーム(gel form)に出発物質を有し、プリカーサは分子レベルの極小サイズで溶解又は所望の化学量論比で分散させられる。次の工程では、これらのプリカーサは制御された方法で分解され、通常、所望の結晶構造を備えた酸化物に変えるために、例えば焼成等の幾つかの後処理工程を要求する水酸化物として沈殿物が形成され、続いて粉砕処理(grinding process)によって最終分解物にする。
【0005】
このような液相方法における主な欠点/制限は、低い生成率(g/h)を別として、低い凝集レベルでナノ粒子を維持するように後で除去又は取り除かなければならない多量の液体/溶媒量に関連する。このような除去処理において、注意深く、細心の注意を払って、溶媒はナノ粒子から分離されなければならず、そして、沢山のエネルギーを消費し、多大な時間を費やす操作の複雑な装置を要求する、液体排出物用の強制リサイクル及び処理のシステムがいることを意味する。さらに、ナノ物質に関連する質量単位毎の表面積を増加することによって、(酸化物の溶解度を含む)ナノ物質の溶解度が大幅に増加し、結果として生じる排出液体の毒性問題を引き起こす。
【0006】
[III−気相方法(Gaseous-phase methods)]
これらの方法は、個々のナノ粒子の製造処理と、表面コーティング、すなわち、a)燃焼合成、b)噴霧熱分解、c)金属の蒸発/酸化、プラズマ、CVD、PVD、レーザー蒸着等の直接利用処理とを含む。一般的に、これらの方法は、様々な溶媒に導入されるプリカーサの蒸発に基づいている。気相状態に変化した後、プリカーサ中で所望の化学反応が起き、続いて、形成されたナノ粒子の、回避できず望ましくない合体及び凝固の段階を意味する、結果として生じる放熱によるナノ物質の濃縮が起き、凝集体形成を引き起こし、従って本方法の主な欠点を示す。
【0007】
濃縮されたナノ粒子の第1安定分子がガス状態からもたらされた場合、このような手法は通常、「ボトム・ツウ・トップ(bottom-to-top)」アプローチと称され、すなわち、個々の分子を第1安定構造にする。
【0008】
気相で、長い間市販された最も一般的なナノ物質は、シリカと二酸化チタン(顔料)であり、いずれもそれぞれの塩化物の加水分解から生じる。後者の分解はまた、反応副産物として塩素及び塩酸の製造に関連した複雑な環境問題を外部へもたらす。一方、大きな表面積にも関わらず、このような物質の高い凝集度は、凝集しない粒子を要求するアプリケーション(無触媒)の使用を妨げる。
【0009】
[II−固相方法(solid-phase Methods)]
本カテゴリーでは、ナノ粒子は通常、例えば、炭素塩、酸化物等の種々のプリカーサの固体状態で、第1のゆっくりした反応で作成される。また、「メカノ合成(mechanosynthesis)」と称され、反応活性化エネルギーがミルによって供給され、200nm未満の粒子が得られるまで、強力な粉砕処理が行われる。このような低コスト方法の主な制限、さらに、0.2ミクロン未満の寸法を得るために見られる困難性は、特に、試薬間の種々の不完結な拡散反応によって生じる合成物、並びに三元構造又はそれ以上の構造を合成するとき、不均質な粒子サイズの分布を有し、かつ本質的に不十分な均一化度での、不純物の存在に関連する。概念的観点から、そして上記方法とは異なり、トップ・ツウ・ボトム(top-to-bottom)」アプローチであり、出発点はマイクロメートルサイズの構造であり、その寸法は機械的エネルギーのアプリケーションによって連続して縮小される。
【0010】
ナノ物質の合成方法としてエマルジョン爆発の概念の使用は、一連の最近の文献に開示されている。
【0011】
特許文献1は、おそらくエマルジョン(w/o)である酸化剤と混合した粒状のアルミニウムの周期的な爆発方法による、マイクロメートルサイズのアルミナの工業的製造方法を開示している。本方法は、クラス−1の(爆発性)物質の事前調製と湿式収集とを含む、特異な工程を有する。本方法は本質的に、粒状の物質をリアクタにフィードし、爆発が続き、そして得られた生産物が湿式チャンバに移動し、その後、物質の冷却と最終的収集の工程を含む。従って、記載された本方法は、方法が、気相で実行され、かつ水と接触すると安定又は不安定な不溶性プリカーサを含まない点で、本発明の方法とは相違する。
【0012】
特許文献2は、形成した酸化物の融点より高い爆発温度でのエマルジョン(w/o)の爆発により、粒子を球体とみなすことができる、ナノ結晶構造を有する球状のマイクロメートル寸法の粒子の合成方法を開示している。
【0013】
この方法は、気相でもっぱら実行され、主に溶解性プリカーサ又は金属を使用する合成方法である。この方法は唯一、マイクロメートルサイズの寸法の酸化物を得ることができる。この方法は、方法が、気相で実行され、かつ水と接触すると安定又は不安定な不溶性プリカーサを含まない点で、本発明で記載された溶液の技術的特性と相違する。
【0014】
特許文献3は、エマルジョン形成後、(内相の)酸化相(oxidizing phase)において溶解性の金属プリカーサの溶解により、又は外相(external phase)への溶解性の推進剤(soluble propellant)の添加により、あるいは金属又は金属合金の添加により、低い温度(セラミックスのナノ物質の融点未満)で(w/o)エマルジョン爆発によって、例えば、二元酸化物、三元酸化物、高級酸化物、硝酸塩、炭酸塩等の、ナノ物質の合成方法を開示している。この方法は、上記文献に記載された方法と同じように、気相でもっぱら実行され、主に溶解性プリカーサ又は金属を使用する合成方法である。従って、この方法は、方法が、水と接触すると安定又は不安定な不溶性プリカーサを用いる固相合成に基づく本発明で記載された方法と相違する。
【0015】
非特許文献1は、(硝酸鉄及びマンガンそれぞれの)プリカーサが事前に内相に溶解されている、爆薬(RDX)によって着火される(w/o)エマルジョンの爆発によってフェライト(MnFe)のナノ粒子合成を開示している。上記方法と同じく、この方法は、もっぱら気相で実行され、かつ主にエマルジョンの酸化段階で溶解性プリカーサを使用する合成方法である。結果として、明細書で開示される方法とは相違する。
【0016】
非特許文献2は、硝酸リチウム鉄及び硝酸亜鉛が内相に溶解されているエマルジョンの爆発によってZnO及びLiOのナノ粒子を形成する方法を開示している。このようなエマルジョンは後で、爆薬(RDX)の内部に配置されるNo.8起爆装置によって着火される。上記方法と同じく、この方法は、もっぱら気相で実行され、かつ主にエマルジョンの酸化段階で溶解性プリカーサを使用する合成方法であり、また爆発性物質(クラス1)、RDX及び起爆装置を使用する。このような方法は、この方法が、気相で実行され、かつ水と接触すると安定又は不安定な不溶性のプリカーサを含まない点で、本発明で記載された手段の技術的特性と相違する。
【0017】
本発明の方法は、一般的に「固相方法」の範囲に含まれ、このようなカテゴリーの方法に関連する制約、すなわち、試薬間での不十分な拡散反応による、0.2μm未満の寸法を得ることの困難さ、エマルジョン中に存在する不純物、時間のかかる反応時間、及び、合成物又は三元構造物の低い均質度(homogeneity degree)を解消し、そして、例えば、炭酸塩、金属水酸化物等の一般的で安価な不溶性プリカーサの使用することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1577265号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/040770号
【特許文献3】国際公開第2009/144665号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Xiao Hong Wang et al. “Nano-MnFe2O4 powder synthesis by detonation of emulsion explosive”, Applied Physics A: Materials Science & Processing, Vol. 90, no. 3, March 2008
【非特許文献2】Xinghua Xie et al. “Detonation synthesis of zinc oxide nanometer powders”, Materials Letters, Vol. 60, issues 25-26, November 2006.Pp 3149-3152
【発明の概要】
【0020】
本発明は、不溶性のプリカーサが事前にフィードされ、反応がエマルジョンの爆発による衝撃波によって引き起こされる、固相でのナノ物質の合成に関する。
【0021】
本発明の方法は、エマルジョン中に存在する不水溶性の(water-insoluble)プリカーサ中での吸熱分解及び後続の反応に基づく。
【0022】
本発明において、「不溶性プリカーサ(insoluble precursor)」は次の2つの特性の一つを示す一連の合成物を表す。
−合成物を合成する塩に溶解しない水中での不溶性。炭酸塩、水酸化物、又は酸化物である。
−水と接触するとき、合成物がそれぞれの酸化物中の加水分解によって溶解する。アルコキシド、金属炭酸塩である。
【0023】
分解が吸熱反応であるプリカーサであるので、エネルギーが所望の反応をさせるために提供されなければならない。従って、本方法では、エネルギーは、プリカーサが事前に添加されたエマルジョンの爆発の間で引き起こされる衝撃波によって提供される。
【0024】
実際、4000〜6000m/sの間の爆発反応速度が、50,000〜115,000barの圧力を反応の先端で引き起こし、圧力はそれぞれ、プリカーサを圧縮し、結果としてプリカーサの化学結合とその後の反応を妨害することにより、所望の固体状態のナノ物質の形成をもたらす。
【0025】
結果として生じたナノ粒子は、ガスによって指向されたホット反応領域(hot reaction zone)で瞬時に分離し、高速で径方向に散乱する。
【0026】
固体状態での従来の方法と同様、本発明の方法はまた、出発物質として、例えば、水酸化物、酸化物、炭酸塩、又は、水と接触して加水分解する化合物(例えば、カルボン酸塩、金属アルコキシド等)等の一般的な不水溶性の固体状プリカーサを使用する。従って、本方法は、新規なサブカテゴリーの高圧固相方法に適用できる。本方法において、ナノ物質は、エマルジョン爆発の衝撃波によって引き起こされる出発物質のプリカーサの熱分解とそれに続く反応の結果物である。不溶性固体状プリカーサは事前に内相にフィードされ、すなわち、固体状態での吸熱分解反応によって、プリカーサはいわゆる反応の先端で反応せず、衝撃波の進行をサポートするガス種を提供しない。所望の構造を有するナノ物質の転換反応のみが、ガスの等エントロピー膨張の間、チャップマン・ジュゲ点(Chapman-Jouget point (C,J))に続いて起きる。50,000〜115,000barのかなり高圧で起きるので、このような固相反応は、プロシージャ・レベルと得られた物質の最終特性に関して、メカノ合成(mechanosynthesis)の観点で次の一連の利点を提供する。
−マイクロ秒での、ほぼ瞬間的な反応時間。
−二元構造、三元構造、又は高級構造と同様の合成物の獲得。
−粒子結晶相合成という意味で、高度に均質なナノ物質の獲得。本発明の範囲の「高度に均質なレベル」は、前記プロセスによって得られた物質が90%を超える結晶層割合を有することを意味する。
−ナノ結晶化度、無定形(amorphism)、相図の変化、又は固有の結晶層の発生等の高圧製造特性を有するナノ物質。
−高圧に関連する現象の結果として、例えば、PIM(プリカーサ誘導金属化:Pressure Induced Metalization)、超電導性、PIA(圧力誘導無形化:Pressure Induced Amorphization)、相転換(グラファイト−ダイヤモンド)等の低圧で得られたナノ物質に関連する電気的、熱的、磁気的、機械的、及び他の値の変化。
【0027】
本発明の方法は、出発物質である不溶性プリカーサ間の固相反応による小さな寸法の均質な一次粒子の、合成物、あるいは、二元構造、三元構造又は高級構造の形状のナノ物質の多様性を獲得することを目的とする。
【0028】
要約すると、本明細書で提案した方法は、次の工程を備える(図1)。
a)プリカーサの選択は、化学量論比で、エマルジョンの内相におけるプリカーサの取り込み、外相の調製、及び2つの相の乳化が含まれる、エマルジョンの調製
b)好ましくは、中空シリカの取り込み、高分子化、ガス化、又は他の公知の方法による、エマルジョンの増感
c)好ましくは、ベース着火エマルジョンと同様、起爆装置、あるいは、レーザー又は容量放電等の他の着火方法を使用することによる、エマルジョン爆発の着火
【0029】
結果として、次のようなことが起きる。
1.衝撃波効果でそれぞれの酸化物におけるプリカーサの分解
2.酸化物間の反応により、所望の構造を有するナノ物質が得られる
3.膨張及び大気圧への冷却
4.例えば湿式プロセスで、形成されたナノ物質の収集
【0030】
[1.合成エマルジョンの調製]
本発明の調製された合成エマルジョンは2つのタイプに分類される。
a)エマルジョン組成中に水を含有する場合、油中水滴型(w/o)
b)エマルジョン組成中に水を含有しない場合、融液/油型(m/o)
【0031】
いずれの場合でも、エマルジョンは、硝酸アンモニウム系で酸素リッチな内相と、炭化水素の誘導体によって形成された推進剤の外相とを備える。外相は、2つの相の間で表面張力を低減する界面活性剤が添加され、後続の乳化を可能にする。
【0032】
[1.1 プリカーサの選択]
エマルジョン中の含有物用のナノ物質は、水酸化物、酸化物、炭酸塩、又は、カルボン酸塩又はアルコキシド等の、水と接触すると加水分解する不溶性化合物等の一群から選択される。その相対量及び特性は、所望の最終化合物の経験式、及び化学反応の化学量論によって決定され、これら2つのパラメータによって、所望の化合物の形成のために、プリカーサ毎の所望量を計算することができる。原則として、エマルジョン中のプリカーサの総量は、爆発反応の進行及びサポートのための十分なエネルギーの存在を保証するように、化合物全体の重量の70%未満であるべきである。
【0033】
[1.2 エマルジョンの内相の調製]
[1.2.1 溶解状態のプリカーサ]
後続の爆発工程の間に固体状態で完全な反応を行うために、ナノ物質合成のために選択されたプリカーサがエマルジョンの内相の調製の間に添加されることが基本である。このような革新的な工程は次の2つの重要な結果を招来する。
a)エマルジョン構造に応じてプリカーサ分布を改善し、後続のより高速な爆発反応を提供し、この結果、(爆発速度範囲に比例する)衝撃波エネルギーの開放の増加をもたらす。このような解放されたエネルギーの増加が完全な爆発反応を達成させ、非常に優れた均質な結晶構造を有するナノ物質が得られる。
b)同量のプリカーサが添加され、後続の乳化で均質化される同様の状態と比較すると、エマルジョンの粘度が低いこと。粘度は本発明の方法にとって重要なパラメータであるとともに、幾つかの処理工程でエマルジョンの安定性を保証する。
【0034】
[1.2.2 硝酸アンモニウムの物理状態]
これは、水と接触すると安定な又は不安定な、広範囲の典型的な不溶性プリカーサを使用することができれば、本発明の方法の他の重要な側面である。この特性は、硝酸アンモニウムがエマルジョンにフィードされ、2つの異なる形態で導入される物理状態に関連し、2つの特異なエマルジョンの概念を生じさせる。
a)油中水滴型(w/o)エマルジョン。固体の硝酸アンモニウムが事前に水に溶解され、約105℃で水溶液を形成し、その後、エマルジョンの外相(推進剤)とともに乳化する。このような種類のエマルジョン、例えば、水酸化物、炭酸塩、酸化物等の、水と接触しても安定であるプリカーサが選択されたときに、形成される(図2)。
b)融液/油型(m/o)エマルジョン(melt/oil (m/o) emulsion)。硝酸アンモニウムが化合物と混合された溶融液体に残存する。後に加熱され、この化合物が硝酸アンモニウムの融点(160℃)未満の融点を有する液体の混合物を形成し、後で無水エマルジョン(water-free emulsion)をもたらす。このタイプのエマルジョンは、選択されたプリカーサが、アルコキシド、カルボン酸塩、有機金属化合物等の水/湿潤(water/moist)の存在下で分解するときに使用される(図3)。
【0035】
合成物の融点を降下させるために硝酸アンモニウムに添加され、不水溶性でもある化合物(推進剤)は、無機塩類、アルコール、又は、グリシン、コハク酸、尿素等の中から選択されてもよい。
【0036】
一般的に、選択は、コストと安全基準とに基づいて実行され、そして、130℃未満の融点の混合物を得ることを目的とする。尿素は、上述した全ての基準に適合すれば、本発明の目的のために、好ましい化合物の一つである。
【0037】
[1.3 エマルジョンの外相の調製]
エマルジョンの一般的な物理的そして化学的特徴を決定する一つの原因となる外相の適切な選択及び調製は、本発明固有の一連の要求を順守するために非常に重要である。
a)熱分解が最終的なナノ物質中に不純物の存在をもたらすのを回避するように、エマルジョンは、リアクタ内でハウジングを用いることなく爆発させるべきである。このような目的のために、エマルジョンの最終的な流動は、安定した爆発を保証するように、合成のサポートと不可欠な自己閉じ込め(self-confinement)を保証する200,000cpsを超える粘度を有するかなり高濃度であるべきである。
b)一方で、乳化した合成物は、シンプルな処理(乳化、ポンピング、空気噴射等)を保証するように、処理の初期段階で比較的低い粘度/濃度を有するべきである。
c)さらに、乳化した合成物は、様々な幾何学的形状、すなわち、円筒状、平面状、球状に形成されなければならない。
【0038】
これら相反する要求を達成するために、エマルジョンの外相は、炭化水素の誘導体、例えば、パラフィン系又は微晶質のワックス等のワックス、あるいは、鉱油とワックスの混合物又は加熱及び液化によりかなり低い粘度指数(40℃で4〜20cpsの範囲)を示すポリマーとミネラルワックスの混合物に基づくことが好ましい。そして、エマルジョンのシンプルな形成とその処理を保証し、急冷に固体状態へ変化させ、予備成形ハウジングを必要としない爆発工程にとって重要な要求であるエマルジョンに高濃度を提供する。本発明の好ましい実施形態では、パラフィン系ワックスが液体状態で65〜95℃の広い温度範囲内で機能するならば、低い融点(65℃未満)を有するパラフィン系ワックスが使用され、また、内相/外相の調製、乳化等のために要求される全ての処理工程を、低い粘度指数で実行できる。
【0039】
[1.4 乳化]
油中水滴型(w/o)又は融液/油型(m/o)マトリックスエマルジョンは、静的ミキサー、ジェットミキサー、又はコロイドミル等の装置内で機械的エネルギー効果によって、エマルジョンの内相及び外相で得られる乳化により調製される。内相は、水を含みかつ酸素リッチであり、これに対して、外相は、界面活性剤が事前に添加され、2つの相の間の表面張力を低減できる、パラフィン系ワックス、又は鉱油とパラフィン系ワックスとの混合物から構成される推進剤である。安定したエマルジョンを得るために、ミセルは1〜10マイクロメートルのサイズ分布と、85℃で60,000〜100,000cpsの範囲の粘度を有しなければならない。
【0040】
[2.エマルジョンの増感]
エマルジョンの増感は通常、最終密度を1.30g/m未満の値に調節し、多数の微小球をエマルジョンにフィードして分散させることによって実行される。このようなフィードは、化学反応、あるいは、内部にガスが残存する固体粒子の添加によって、ガスの直接噴射及び均質化により起きてもよい。
【0041】
機械的エネルギー又は外部からの衝撃で断熱圧縮されると、これらの微小球は内部に約400〜600℃に達する一群の「ホットポイント(hot points)」を形成する。このような工程は、10-3〜10-5sのかなり短時間で実行され、4000m/sを超える速度でエマルジョンの爆発の進行を作動及びサポートする。
【0042】
[3.爆発の着火]
エマルジョンの爆発着火は、起爆装置、又は、例えば容量放電又はレーザー放電等の同様の効果を奏する他のシステムにより行われる。しかしながら、爆発理論により、4000m/sを超える速度で安定化するために、衝撃波は(円筒形状の場合)その直径の2〜5倍の長さを要求する。従って、他のエマルジョン(w/o)は、不純物の固体の形成を回避するように、プリカーサを含むエマルジョンに結合され、内相中の硝酸アンモニウム及び水と、外相中の鉱油及び乳化剤とからなる、指定されたベース又は着火エマルジョンに調製されることが好ましい。このようなベース又は着火エマルジョンは、2次エマルジョンを得るとき、衝撃波が4000m/sを超えるレベルで完全に安定化されることを保証するように、実務上の酸素比率を有し、その直径の2〜5倍の長さを有するべきである。(プリカーサを含む)合成エマルジョンは、ナノ物質の合成中に不均質化が起こらないことを保証する。
【0043】
このような一次エマルジョン(ベース又は着火エマルジョン)は、次のものからなることが好ましい。
硝酸アンモニウム:70〜80%
水:10〜15%
鉱油:3〜4%
乳化剤:0.75〜1.5%
【0044】
さらに、一次エマルジョンは、1.15〜1.30g/cmの範囲の密度を有する。
【0045】
そして、本発明の方法の爆発着火は、レーザー放電又は容量放電によって作動され得る。エマルジョン合成物の増感に応じて、直接着火されても、又は他の不純物を有さずより増感したエマルジョン(着火エマルジョン)によって着火されてもよく、本発明のエマルジョンを爆発させるために必要な衝撃波エネルギーを提供する。本発明の好ましい実施形態では、合成エマルジョンの爆発着火は、着火エマルジョンによって達成される。
【0046】
[4.ナノ物質の収集及び処理]
粉末は、爆発反応由来のガスを膨張チャンバに入れることによって引き込まれ、空気中に粉末蓄積することを回避するように湿式収集されることが好ましい。次に、収集された粉末は、ふるいにかけられ、70℃未満の温度一定で乾燥され、最終的に凝集体にされ(deagglomerated)、収容される。
【0047】
[5.ナノ物質]
本発明の方法は、合成物(2つの異なるナノ物質の組合せ)のみならず、一元構造(1要素)、二元構造(2要素)、三元構造(3要素)、又は高級構造を有し、10m/gを超える表面積を有し、5〜80nmの範囲の一次粒子から構成されるナノ物質を得ることができる。このような特性は、エマルジョンに従う衝撃波から得られ、その効果は次のメカニズムをほとんど同時に作動させる。
a)個別の酸化物の転換による、可溶性プリカーサの分解及び分裂
b)所望の最終合成物を形成するために、いくつかの酸化物での反応
c)爆発、及び、約100,000ケルビン/sでの最終化合物の急冷。そして、合体(coalescence)/凝固(coagulation)の最小化。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】エマルジョン形成のための一連の(内相及び外相の)ナノ物質の合成工程と、ナノ物質の合成の後工程とを示す図。
図2】炭酸塩、水酸化物、又は酸化物等の、水と接触して取り込まれる安定した不溶性プリカーサを有する合成エマルジョンの内相の調製工程を示す図。外相はパラフィン系ワックス、鉱油、及び乳化剤から構成される。
図3】アルコキシド、カルボン酸塩、及び有機金属化合物等の、加水分解し、水の存在下で分解する安定した不溶性プリカーサを有する合成エマルジョンの内相の調製工程を示す図。外相はパラフィン系ワックス、鉱油、及び乳化剤から構成される。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の理解をより明らかにするために、本発明の好ましい実施形態を示し、かつ本発明の範囲を限定することを意図するものではない添付図面を用いて説明する。
【0050】
ナノメートル物質を得る方法は、適切な化学量論比の不溶性プリカーサと、合成エマルジョンの残留合成物とを選択し、着火エマルジョンを調製することによって開始される。
【0051】
[1.エマルジョンの調製]
[1.1 着火エマルジョン]
エマルジョンの調製は、撹拌加熱タンク内で、脱塩水に硝酸アンモニウムを溶解することによって開始され、硝酸アンモニウム溶液(内相)が形成される。次に、鉱油及び乳化剤との混合物(外相)によって内相の乳化が起き、乳化剤内部で、エマルジョンマトリックスが得られる。最終的に、0.5%ポリマー微小球が、起爆装置、又は他のタイプの着火システム(レーザー放電又は容量放電)に感受性があるエマルジョンをもたらすように、低い撹拌速度でプラスチックタンクに添加される。
【0052】
[1.2 合成エマルジョンの内相の調製]
[1.2.1]
選択されたプリカーサと水との間の親和性基準に応じて、硝酸アンモニウムが、
a)溶解され、カルボン酸塩、酸化物、及び水酸化物等の、水と親和するプリカーサの場合、目に見える結晶を除外して十分に透明な溶液を形成するように、脱塩水に、約80〜90%濃度で、混合物の結晶化温度を超える95〜105℃の温度に達するまで加熱される。
b)融点を降下させる化合物と混合され、続いて110℃の温度まで蒸気でゆっくりと徐々に加熱され、液体状態が達成される。
【0053】
[1.2.2]
連続的に、選択されたプリカーサは、水溶液又は液化した溶液中の硝酸アンモニウムに添加され、合成されるナノ物質の結晶構造の化学量論比で、混合物が均一性を保証するように攪拌しながら混合物を維持する。
【0054】
[1.3 エマルジョンの外相の調製]
外相又は推進剤は、鉱油、及び/又は、パラフィン系ワックス、微晶質ワックス、ポリマーを有するワックス混合物、好ましくは40〜70℃の間に融点を有するパラフィン系ワックス、HLB(親水性物質/脂肪親和性物質)が油中水滴型(w/o)エマルジョンの形成に適している乳化剤を有するワックス混合物等のワックス等の炭化水素誘導体を事前に融解することによって調製される。外相は一般的に、エマルジョン組成の約2〜30%を示す。
【0055】
[2 乳化]
乳化されたマトリクスにおけるエマルジョンの内相の乳化は、公知の乳化剤で実行される。結果として、マトリックスは、エマルジョンをリストリクタ静的ミキサー(restrictor static mixer)に通すことによって、約60〜150psiで不純物が取り除かれる。
【0056】
[3 エマルジョンの増感]
後に、エマルジョンの感度を保証するために、所望の最終密度(通常、1.25g/cm未満)に応じて、発泡スチロール球、又は不純物のないポリマー球等の有機増感物質の添加が実行され(0.2〜2%)、また、エマルジョン構造内部で空気を添加して均質化することが、空気/エマルジョン混合物を静的ミキサーに通過させることによって保証される。
【0057】
[4 ナノ物質の収集及び処理]
粉末は、爆発反応由来のガスを膨張チャンバに入れることによって引き込まれ、空気中に粉末蓄積することを回避するようにその中で湿式収集されることが好ましい。次に、収集された粉末は、ふるいにかけられ、70℃未満の温度一定で乾燥され、最終的に凝集体にされ、収容される。
【0058】
[5 ナノ物質の特徴]
本方法によって得られるナノ物質は次のように特徴付けられる。
a)多重結晶構造
二元結晶構造、例えば、立方晶、六方晶、ホタル石、ルチル等
三元結晶構造、例えば、スピネル、ペロブスカイト、方解石、かんらん石等
高級結晶構造、例えば、ザクロ石、擬板チタン石等
b)100nm未満、好ましくは70nm、より好ましくは20nm又は5nm未満の一次粒子のサイズ
c)10m/gを超える、好ましくは50m/gを超える、より好ましくは10〜500m/gの範囲の表面積
【0059】
[実施例]
本発明の好ましい実施形態では、エマルジョン1と表される一次エマルジョン、又は爆発反応の安定化の原因である着火エマルジョンが提供され、後に、エマルジョン2又は合成エマルジョンが異なるプリカーサを構成する化合物を含む。これらの実施例では、50gのエマルジョン1が使用され、続いてエマルジョン1は約400gのエマルジョン2を備えた。
【0060】
[実施例1:エマルジョン1又は着火エマルジョンの調製]
パラフィン系ワックス(融点56℃)(80%)+乳化剤(20%):4.975%
NHNO: 84.575%
O:9.95%
プラスチック増感物質(ポリマー球):0.5%
【0061】
エマルジョン1は、撹拌加熱タンク内で脱塩水中にNHNOを溶解することによって調製され、硝酸アンモニウム溶液が形成される(内相)。そして、内相の乳化が、パラフィン系ワックスと乳化剤との混合物(外相)を用いて実行され、75℃まで乳化剤の適切な粘度範囲内で加熱され、そして乳化されたマトリックスが得られる。その後、1.15g/cmの密度を得るように、約0.5%のポリマー球がかなり遅い撹拌速度でタンクに添加され、要求される濃度を有するエマルジョンを提供するように、35mmの円筒形状にプレフォーム工程及び急冷工程が後に続く。そして、爆発目的でハウジングの使用を回避し、同時に、上述したように起爆装置又は他のタイプの着火システムによる着火に反応する。
【0062】
[実施例2:エマルジョンの内相にフィードされた不溶性プリカーサ由来の、イットリア8Y(8mol)と安定化したナノ物質のキュービックジルコニアの合成]
[1]400gのエマルジョンは次のように調製され、次の化合物/数量を有する。
−パラフィン系ワックス(70%)+乳化剤(30%):5.5%
−硝酸アンモニウム:57.42%
−脱塩水:7.83%
−炭酸ジルコニウム:25%
−炭酸イットリウム:3.75%
−ポリマー増感物質:0.5%
【0063】
[1.1 エマルジョンの内相の調製]
固体の硝酸アンモニウム(純度99.9%)は、蒸気で加熱されるステンレス鋼タンク内で88%濃度の脱塩水に溶解され、混合物は、(結晶を除去し)完全に精製された溶液が得られるように、約98℃の温度で撹拌される。溶液のpH値は5〜6の範囲の値まで炭酸アンモニウムを用いて調整される。25%炭酸ジルコニウムと3.75%炭酸イットリウムの固体プリカーサが添加され、溶液が98℃に戻るまで、蒸気による加熱が維持される。そして、内相の調製が完了する。
【0064】
[1.2 エマルジョンの外相の調製]
調製は、56℃の融点を有する(外相の重量の70%を占める)パラフィン系ワックスを溶融することに基づく。続いて、温度が65℃まで上昇し、そして、PIBSA系乳化剤(ポリイソブチレン無水コハク酸)が(外相の総重量の30%)添加される。混合物は、75℃で他のステンレス鋼タンク内で加熱された状態で維持されるが、乳化した分子を分解することなく、混合物を液体状態で維持することができる。
【0065】
[1.3 乳化]
まず、内相が、ゆっくりと撹拌する撹拌器と、85℃まで加熱する外部スリーブとを有する乳化剤タンクに配置される。連続的に、外相は、ゆっくりと、かつ一定のペースで添加され、固体の炭酸塩堆積物を回避するように撹拌状態を維持する。添加が完了すると、80,000〜100,000cpsの粘度に達するまで、必要な機械的エネルギー(700rpm)が、5分間、エマルジョンに適用される。
【0066】
[1.4 増感]
その後、1.05g/cmの密度を得るように、約0.75%のポリマー球がかなり遅い撹拌速度でタンクに添加され、要求される濃度を有するエマルジョンを提供するように、35mmの円筒形状にプレフォーム工程及び急冷工程が後に続き、ハウジングの使用を回避する。
【0067】
[1.5 着火]
爆発を作動するために、No.8起爆装置が円筒形状で高濃度の合成エマルジョン400gに適用される。
【0068】
[1.6 爆発/分解/反応]
爆発を作動することによって、衝撃波由来のエネルギーは、二酸化炭素を放出して、炭酸ジルコニウムと炭酸イットリウムをそれぞれの酸化物に分裂及び分解し、連続的に爆発領域内において固体状態でこのような反応を誘発し、キュービックジルコニアはその構造内で完全分散した8molのイットリアを有する。
【0069】
表Iは、手続のパラメータ、及びキュービックジルコニアのナノ物質特性の要約を示す。
【0070】
[実施例3 エマルジョンの内相に適用されるプリカーサを用いたナノ物質のLiMnスピネルの合成]
[1]400gのエマルジョンは次のように調製され、次の化合物/数量を有する。
−パラフィン系ワックス(70%)+乳化剤(30%):5.5%
−硝酸アンモニウム:65.06%
−脱塩水:8.87%
−炭酸リチウム:2.77%
−炭酸マンガン:17.3%
−ポリマー増感物質:0.5%
【0071】
[1.1 エマルジョンの内相の調製]
固体の硝酸アンモニウム(純度99.9%)は、蒸気で加熱されるステンレス鋼タンク内で88%濃度の脱塩水に溶解され、混合物は約98℃の温度で撹拌される。溶液のpH値は5〜6の範囲の値まで炭酸アンモニウムを用いて調整される。17.3%炭酸マンガンと2.77%炭酸リチウムが添加され、溶液が98℃に戻るまで、蒸気による加熱が維持される。そして、内相の調製が完了する。
【0072】
[1.2 エマルジョンの外相の調製]
実施例2のアイテム1.2と同じである。
【0073】
[1.3 乳化]
まず、内相が、ゆっくりと撹拌する撹拌器と、85℃まで加熱する外部スリーブとを有する乳化剤タンクに配置される。連続的に、外相は、ゆっくりと、かつ一定のペースで添加され、固体の炭酸塩堆積物を回避するように撹拌状態を維持する。添加が完了すると、80,000〜100,000cpsの粘度に達するまで、必要な機械的エネルギー(700rpm)が、5分間、エマルジョンに適用される。
【0074】
[1.4 増感]
その後、1.15g/cmの密度を得るように、約0.5%のポリマー球がかなり遅い撹拌速度でタンクに添加され、要求される濃度を有するエマルジョンを提供するように、35mmの円筒形状にプレフォーム工程及び急冷工程が後に続き、ハウジングの使用を回避する。
【0075】
[1.5 着火]
次いで、35mmの円筒形状を有し、50gのエマルジョン1又は着火エマルジョンによって形成される400gの合成エマルジョンが添加され、その中に爆発を作動するNo.8起爆装置が適用される。
【0076】
[1.6 爆発/分解/反応]
爆発を作動することによって、衝撃波由来のエネルギーは、炭酸リチウムと炭酸マンガンをそれぞれの酸化物に分裂及び分解し、連続的に爆発領域内において固体状態でこのような反応を誘発し、LiMnスピネルが得られる。
【0077】
表Iは、手続のパラメータ、及びナノ物質である酸化リチウム/酸化マンガンのスピネルの特性の要約を示す。
【0078】
[実施例4 無水マトリックスの爆発によるTiOの合成]
[1]400gのエマルジョンは次のように調製され、次の化合物/数量を有する。
−パラフィン系ワックス(70%)+乳化剤(30%):5.5%
−硝酸アンモニウム:59.2%
−尿素:14.8%
−チタンイソプロポキシド:20%
−ポリマー増感物質:0.5%
【0079】
[1.1 エマルジョンの内相の調製]
固体の硝酸アンモニウム(純度99.9%)と尿素(純度99.8%)の混合物は、ステンレス鋼タンク内で蒸気により約110℃で加熱され、混合物は撹拌されたまま維持される。液体状態のチタンイソプロポキシドは最終的に添加されて均質化される。そして、内相の調製が完了する。
【0080】
[1.2 エマルジョンの外相の調製]
外相は、実施例2及び実施例3と同様に調製される。
【0081】
[1.3 乳化]
乳化は、実施例2及び実施例3と同様に行われる。
【0082】
[1.4 増感]
その後、1.15g/cmの密度を得るように、約0.5%のポリマー球がかなり遅い撹拌速度でタンクに添加され、要求される濃度を有するエマルジョンを提供するように、35mmの円筒形状にプレフォーム工程及び急冷工程が後に続き、ハウジングの使用を回避する。
【0083】
[1.5 着火]
次いで、35mmの円筒形状を有し、50gの着火エマルジョンによって形成される400gの合成エマルジョンが添加され、その中に爆発を作動するNo.8起爆装置が適用される。
【0084】
[1.6 爆発/分解/反応]
爆発を作動することによって、衝撃波由来のエネルギーは、二酸化炭素を放出して、酸化チタン中にイソプロポキシドを分裂及び分解する。
【0085】
表Iは、手続のパラメータ、及びナノ物質であるTiOの特性の要約を示す。
【0086】
【0087】
実施例2は、約15nmのナノ物質である一次粒子のサイズを有し、着火エマルジョンを用いないZrOの二元構造を提供するように、エマルジョンの内相にフィードされる固体の不溶性プリカーサを示す。
【0088】
実施例3は、内相内に存在する幾つかの不溶性プリカーサ(炭酸塩)の性能を示し、爆発の衝撃波の効果で三元構造を合成する。
【0089】
実施例4は、内相に無水化合物を有する爆発エマルジョンの性能を表し、水で加水分解するプリカーサ(アルコキシド)を含み、所望の酸化物(TiO)の分解を爆発の衝撃波の効果によって後工程でのみ起こすことを可能にする。
図1
図2
図3