特許第6019034号(P6019034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019034多価不飽和化合物の金属触媒モノヒドロシリル化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019034
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】多価不飽和化合物の金属触媒モノヒドロシリル化
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20161020BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20161020BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20161020BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
   C07F7/18 D
   C07F7/08 C
   C07F7/08 X
   C07F7/18 X
   B01J31/22 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-541003(P2013-541003)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2014-502271(P2014-502271A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】US2011061752
(87)【国際公開番号】WO2012071360
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/417,061
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】510243539
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ケンリック,エム
(72)【発明者】
【氏名】トンドロー,アーロン,エム
(72)【発明者】
【氏名】クルーズ,リチャード,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウェラー,キース,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デリス,ヨハネス,ゲー.ペー.
(72)【発明者】
【氏名】ナイ,スーザン,エイ
(72)【発明者】
【氏名】チリク,ポール,ジェイ
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−514765(JP,A)
【文献】 S.C.Bart et al,,Preparation and molecular and electronic structures of iron(0) dinitrogen and silane complexes,J.Am.Chem.Soc.,,米国,American Chemical Society,2004年,126,13794-13807
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
B01J 31/22
B01J 31/16
C07F 7/08
C07D 213/53
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリルヒドリドと多価不飽和化合物を含有する組成物からモノシリル化産物を選択的に製造するプロセスであって、組成物と式(I)の錯体を接触させることによって、シリルヒドリドを多価不飽和化合物と反応させて不飽和化合物の一つの不飽和基に選択的にヒドロシリル化を生じさせ、それによってモノヒドロシリル化産物を製造するステップを含み、ここで多価不飽和化合物が式(IV)
[(CHβCR=CHα (式(IV))
表され、
式中、
が3から25の炭素原子を含む二価または多価脂肪族または芳香族環状炭化水素基、または3から25の炭素原子を含む二価または多価脂肪族または芳香族複素環式炭化水素基であり、ここでヘテロ原子は酸素、窒素、ケイ素および硫黄からなる群より選択され
独立して水素または1〜8の炭素原子を含む炭化水素基であり;
αおよびβの各々が独立して整数であり、αが2〜6、そしてβが0〜6あり;
(I)が:
【化1】

であり、
式中:
GがFeであり;
、R、R、R、R、R、R、R、およびR各々が独立して水素、C1−C18アルキル、またはC1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールまたは不活性な官能基であり、水素以外のR〜R少なくとも一つのヘテロ原子を有していてもよく;
23の各々が独立してC1−C18アルキル、またはC1−C18置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、ここでR23は少なくとも一つのヘテロ原子を有していてもよくそして、
不飽和化合物中のアルケニル官能基に対するシリルヒドリド中のSi−H官能基のモル比が(0.5:α)〜(1.1:α)の間である、プロセス。
【請求項2】
不飽和化合物中のアルケニル官能基に対するシリルヒドリド中のSi−H官能基のモル比が1:αである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
不飽和化合物がトリビニルシクロヘキサン、トリビニルベンゼン、テトラビニルシクロブタントリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
不飽和化合物がトリビニルシクロヘキサンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
シリルヒドリドがRSiH4−a、(RO)SiH4−a、HSiR(OR)3−a、RSi(CH(SiRO)SiRH、(RO)Si(CH(SiRO)SiRH、Q、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、ここでQがSiO4/2であり、TがR’SiO3/2であり、TがHSiO3/2であり、DがR’SiO2/2であり、DがR’HSiO2/2であり、MがHR’3−gSiO1/2であり、MがR’SiO1/2であり、RおよびR’の各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、RおよびR’は少なくとも一つのヘテロ原子を有していてもよく、aの各々が独立して1〜3の値を持ち、fが1〜8の値を持ち、eが1〜11の値を持ち、gが1〜3の値を持ち、pが0〜20であり、uが0〜20であり、vが0〜20であり、wが0〜1000であり、xが0〜1000であり、yが0〜20であり、そしてzが0〜20であり、但し、p+x+y=1〜3000であり、シリルヒドリド内のすべての元素の原子価が飽和している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
シリルヒドリドが下記構造の一つを持つ、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
SiH (式VI)、HSi(OR (式VII)、
【化2】

式中、R、R、R、RおよびRの各々が独立してC1−C20アルキルまたはアリール基であり、Rが水素、C1−C20アルキルまたはアリール基であり、xおよびwが独立して0以上である。
【請求項7】
シリルヒドリドが(CHO)SiH、(CO)SiH、(CHSiOSi(CHH、[(CHSiO]SiH(CH)、[(CHSiO]OSiH(CH)および[(CHSiO]OSiH(CH)からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
23
【化3】

であり、
式中、RおよびRが共にメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基であり、R、RおよびRが請求項1に定義された通りである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
錯体が支持体上に固定されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
1,2,4−トリビニルシクロヘキサンとシリルヒドリドとからモノヒドロシリル化産物を選択的に製造するプロセスであって、トリビニルシクロヘキサンを、式(I)の錯体の存在下にシリルヒドリドと反応させるステップを含み、
ここで、式(I)は、請求項1に定義された通りであり;
1,2,4−トリビニルシクロヘキサン中のアルケニル官能基に対するシリルヒドリド中のSi−H官能基のモル比が(0.5:3)〜(1.1:3)の間であり;そして、
シリルヒドリドのシリル基を1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの4位に選択的に付加する、プロセス。
【請求項11】
シリルヒドリドが、トリエトキシシランである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
シリルヒドリドが、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランである、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
トリビニルシクロヘキサンが、トリビニルシクロヘキサン立体異性体の混合物である、請求項1012のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが、式(XVI)の1,2,4−トリビニルシクロヘキサン異性体Aおよび/または式(XVII)の1,2,4−トリビニルシクロヘキサン異性体Bである、請求項1013のいずれか一項に記載のプロセス。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つのヒドロシリル化され得る不飽和基を持つ分子中の単独のアルケニルまたはアルキニル基の選択的ヒドロシリル化に関する。特に、本発明は、非貴金属系錯体の、トリビニルシクロへキサンのようなポリアルケニル化合物のモノヒドロシリル化に有用な触媒としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
トリビニルシクロへキサンおよび多重炭素−炭素不飽和結合を持つ同様のアルケニル化合物のヒドロシリル化は、例えば、米国特許5,166,298、6,278,011、6,265,497および6,278,011に開示されてきた。これらの特許において、全ての二重結合の完全な反応に重点が置かれてきた。従って、これらの特許に記載された反応において、多価不飽和化合物中の炭素−炭素二重結合に対するシリルヒドリド中の水素化ケイ素のモル比は1.0を超えた。加えて、不飽和基の完全なヒドロシリル化を確実にするため、長い反応時間がしばしば費やされた。
【0003】
近年、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの選択的モノヒドロシリル化産物の需要が浮上している。例えば、米国特許7,696,269は、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンのモノヒドロシリル化産物である(2−トリアルコキシシリルエチル)ジビニルシクロへキサンが、自動車用タイヤに低転がり抵抗を付与するのに有用なサルファシランの合成における重要中間体として利用され得ることを開示している。
【0004】
残念ながら、従来の貴金属系触媒のモノヒドロシリル化に対する選択性は、通常望ましいレベルに満たない。例えば、トリビニルシクロへキサン(シラン:ビニル 比率が0.8:1)の白金触媒によるヒドロシリル化において、準化学量論量のシランが用いられた場合であっても、およそ50重量%の目的のモノヒドロシリル化産物とおよそ30重量%のビスヒドロシリル化誘導体のみを含む混合物が製造される。
【0005】
非貴金属系ヒドロシリル化触媒は当分野において開示されてきた。例示的には、WuらがJ.Am.Chem.Soc.Vol 132(2010)13214において、低原子価のイミノピリジン鉄錯体が1,3−ジエンの1,4−ヒドロシリル化を触媒することを報告した。
【0006】
米国公開特許番号20110009565は、非貴金属ターピリジン錯体およびそれらのヒドロシリル化触媒としての使用を開示している。米国公開特許番号20110009573は、非貴金属ピリジンジイミン錯体およびそれらのヒドロシリル化触媒としての使用を開示している。トリビニルシクロヘキサンは、これらの二出願で言及された不飽和化合物であるが、触媒の、トリビニルシクロヘキサンのような多価不飽和化合物へのモノヒドロシリル化選択性に関して、二出願は述べていない。
【0007】
従って、ヒドロシリル化産業において、多価不飽和化合物とシリルヒドリドからモノヒドロシリル化産物を選択的に製造することが引き続き必要とされている。本発明は、その需要に対する一つの解決策を提供する。
【発明の概要】
【0008】
一つの態様において、本発明は、シリルヒドリドと多価不飽和化合物とを含有する組成物からモノシリル化反応生成物を選択的に製造するプロセスである。そのプロセスは、組成物と式(I)、式(II)または式(III)の錯体とを、触媒の任意存在下で接触させることによって、シリルヒドリドを、不飽和化合物の一つの不飽和基に選択的にヒドロシリル化が起きるような多価不飽和化合物と反応させ、それによってモノヒドロシリル化産物を製造するステップを含み、ここで多価不飽和化合物が式(IV)または式(V):
【0009】
[(CHβCR=CHα (式IV)
【0010】
γ[(CHβCR=CHα (式V)
で表され、
【0011】
式中、
【0012】
が3から25の炭素原子を含む二価または多価脂肪族または芳香族環状炭化水素基、または3から25の炭素原子を含む二価または多価脂肪族または芳香族複素環式炭化水素基であり、ここでヘテロ原子は酸素、窒素、ケイ素および硫黄からなる群より選択され;
【0013】
が38のケイ素原子および3〜8の酸素原子を含む二価または多価環状シリコーンであり;
【0014】
およびRの各々が独立して水素または1〜8の炭素原子を含む炭化水素基であり;
【0015】
α、βおよびγの各々が独立して整数であり、αが2〜6、βが0〜6、そしてγが0〜4であり;
【0016】
式(I)、式(II)および式(III)が:


であり、
【0017】
式中:
【0018】
GがMn、Fe、NiまたはCoであり;
【0019】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R19およびR20の各々が独立して水素、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリールまたは不活性な官能基であり、水素以外のR〜R、R19およびR20は少なくとも一つのヘテロ原子を有していてもよく;
【0020】
23の各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、ここでR23は少なくとも一つのヘテロ原子を有していてもよく;
【0021】
互いに隣接するR、R、R、R、R、R、R、R、R、R19、R20およびR23のいずれか2つが一緒になって、置換または非置換の、飽和または不飽和の環構造である環を形成してもよく;
【0022】
およびLの各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリール、置換アリール、C2−C18アルケニル、C2−C18アルキニル、または、L−Lが一緒に下記の一つであり、
【0023】
式中、R10、R11、R13、R14、R15およびR16の各々が独立して水素、C1−C18アルキル、C2−C18アルケニルまたはC2−C18アルキニルであり、ここで水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16は少なくとも一つのヘテロ原子を有していても良く、水素以外のR10、R11、R13、R14、R15およびR16が置換されていてもよく;
【0024】
12の各々が独立して、C1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、C2−C18アルケニル、C2−C18置換アルケニル、C2−C18アルキニル、C2−C18置換アルキニル、アリール、置換アリールであり、ここでR12は少なくとも一つのヘテロ原子を有していても良く;
【0025】
10、R11、R12、R13、R14、R15、R16のいずれか2つが一緒になって、置換または非置換の、飽和または不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
【0026】
17およびR18の各々が独立して、アルキル、置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、R17およびR18の各々は少なくとも一つのヘテロ原子を有していても良く、R17およびR18が一緒になって、置換または非置換の、飽和または不飽和の、環構造である環を形成しても良く;
【0027】
19およびR20の各々が独立して、SiとCとを結合する共有結合、アルキル、置換アルキル、またはヘテロ原子であり、R19およびR20が少なくとも一つのヘテロ原子を有していても良く;ここでL−Lが不飽和部位SおよびSを介してGと結合し;
【0028】
Xの各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、ここでXは少なくとも一つのヘテロ原子を有していても良く; そして、
【0029】
不飽和化合物中のアルケニル官能基に対するシリルヒドリド中のSi−H官能基のモル比がおよそ(0.5/α)〜およそ(1.1/α)の間である。
【0030】
他の態様において、本発明は、前記のプロセスで製造される組成物であって、その組成物は、モノヒドロシリル化産物とビスヒドロシリル化産物とを含み、ビスヒドロシリル化産物に対するモノヒドロシリル化産物の重量比がおよそ1.8を超える。
【0031】
これらおよび他の態様は、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0032】
本発明は、上記の式(I)、式(II)または式(III)の非貴金属系ピリジンジイミンおよびターピリジン錯体を用いる、多価不飽和化合物のモノヒドロシリル化誘導体の選択的合成を提供する。
【0033】
従って、一つの実施態様において、本発明は、シリルヒドリドと多価不飽和化合物とを含む組成物のヒドロシリル化のプロセスである。そのプロセスは、組成物を式(I)、式(II)または式(III)の金属錯体と溶媒の任意存在下で接触させることによって、シリルヒドリドを、多価不飽和化合物の一つの不飽和基に選択的にヒドロシリル化が起きるような多価不飽和化合物と反応させ、それによって金属錯体を含むモノヒドロシリル化産物を製造するステップを含む。モノヒドロシリル化産物は、その後、例えば蒸留などによって反応混合物から回収することが出来る。
【0034】
多価不飽和化合物が式(IV)または式(V)で表される。
【0035】
[(CHβCR=CHα (式IV)
【0036】
γ[(CHβCR=CHα (式V)
【0037】
式(IV)に関して、Eが3から25の炭素原子を含む二価または多価脂肪族または芳香族環状炭化水素基、または3から25の炭素原子を含む二価または多価脂肪族または芳香族複素環式炭化水素基である。好適なヘテロ原子は酸素、窒素、ケイ素および硫黄を含むが、これらに限定されない。一つの実施態様において、Eが4から20の炭素原子を含む。他の実施態様において、Eが4から15の炭素原子を含む。例示的なEは、シクロヘキシルのような脂肪族環状炭化水素;ベンゼン環のような芳香族環状炭化水素;シアヌレート、イソシアヌレートまたはトリアジン環のような複素環部分を含む。好ましくは、Eがシクロヘキシルまたはベンゼン環である。
【0038】
式(V)に関して、Eが38のケイ素原子および3〜8の酸素原子を含む二価または多価環状シリコーンである。例示的なEは、シクロトリシロキサンおよびシクロテトラシロキサン環を含む。
【0039】
式(IV)および式(V)に関して、RおよびRの各々が独立して水素または1〜8の炭素原子を含む炭化水素基である。一つの実施態様において、Rが水素またはC1−C4アルキル基である。他の実施態様において、Rが水素、メチルまたはエチル基である。
【0040】
α、βおよびγの各々が独立して整数である。αが2〜6の、好ましくは3〜6の値を持ち;βが0〜6の、好ましくは0〜2の値を持ち;そしてγが0〜4の値を持つ。
【0041】
ポリアルケニル化合物の例示はトリビニルシクロヘキサン、トリビニルベンゼン、テトラビニルシクロブタン、トリビニルトリメチルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートである。トリビニルシクロヘキサンが好ましい。
【0042】
ヒドロシリル化反応において使用されるシリルヒドリドは特に限定されない。RSiH4−a、(RO)SiH4−a、HSiR(OR)3−a、Q、RSi(CH(SiRO)SiRH、(RO)Si(CH(SiRO)SiRHおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるいずれの化合物でもよい。シリルヒドリドは、直鎖、分岐または環状の構造、またはそれらの組み合わせを含んでよい。ここで、Rの各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、Rは少なくとも一つのヘテロ原子を有していてよく、aの各々が独立して1〜3の値を持ち、fが1〜8の値を持ち、eが1〜11の値を持ち、p,u,v,yおよびzの各々が独立して0〜20の値を持ち、wおよびxは0〜1000であり、但し、p+x+y=1〜3000であり、シリルヒドリド内のすべての元素の原子価が飽和している。好ましくは、fが2〜4であり、eが1〜3であり、p,u,v,yおよびzが0〜10であり、wおよびxが0〜100であり、ここでp+x+y=1〜100である。
【0043】
ここで、「M」基は、式R’SiO1/2の単官能基を表わし、「D」基は、式R’SiO2/2の二官能基を表わし、「T」基は、式R’SiO3/2の三官能基を表わし、そして「Q」基は、式SiO4/2の四官能基を表わし、「M」基はHR’3−gSiO1/2を表わし、「T」はHSiO3/2を表わし、「D」基はR’HSiO2/2を表わす。ここで、gは0〜3の整数である。R’の各々が独立してC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、R’は少なくとも一つのヘテロ原子を有していてよい。
【0044】
ある実施態様において、多価不飽和化合物の選択的モノヒドロシリル化をもたらす好適なシリルヒドリドは、下記構造の一つを持つ:RSiH (式VI)、HSi(OR (式VII)、
【0045】
式中、R、R、R、RおよびRの各々が独立してC1−C20アルキルまたは置換アリールであり、Rが水素、C1−C20アルキルまたはアリールであり、そしてwおよびxが独立して0以上である。一つの実施態様において、R、R、R、R、RおよびRの各々が独立してC1−C5アルキルまたはベンジル基である。
【0046】
本発明の好適なシリルヒドリドの例示は、(CSiHのようなトリアルキルシラン、(CHO)SiHおよび(CO)SiHのようなトリアルコキシシラン、(CHSiOSi(CHHのようなヒドリドジシロキサン、[(CHSiO]SiH(CH)のようなヒドリドトリシロキサン、および[(CHSiO]OSiH(CH)および[(CHSiO]OSiH(CH)のようなヒドリドシクロシロキサンを含むが、これらに限定されない。
【0047】
本発明のプロセスに好適な触媒は、前述の式(I)、(II)または(III)の錯体である。これらの式に関して、Gは、すべての原子価状態のMn、Fe、NiまたはCoでcan be。好ましくはGは、鉄またはコバルトである。より好ましくは、MはFe(II)およびFe(III)のようなFeである。
【0048】
本願では「アルキル」は、直鎖、分岐および環状のアルキル基を含む。アルキルの非限定的な具体例は、メチル、エチル、プロピル、およびイソブチルを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、アルキル基はC1−C10アルキルである。他の実施態様において、C1−C6アルキルである。
【0049】
ここでは「置換アルキル」は、それらの置換基を含有する化合物が供されるプロセス条件において不活性である、一つまたはそれ以上の置換基を含有するアルキル基を意味する。置換基はまた、ここに記載するヒドロシリル化プロセスには実質的に干渉しない。ある実施態様において、置換アルキル基はC1−C10置換アルキルである。他の実施態様において、C1−C6置換アルキルである。アルキルの置換基は、ここに記載する不活性な官能基を含むが、それらに限定されない。
【0050】
ここでは「アリール」は、一つの水素原子が取り除かれた任意の芳香族炭化水素の基を非限定的に意味する。アリールは一つまたはそれ以上の芳香族環を有していてもよく、それらは縮合しているかまたは単結合または他の基と結合していてもよい。アリールの非限定的な具体例は、トリル、キシリル、フェニルおよびナフタレニルを含むが、これらに限定されない。
【0051】
ここでは「置換アリール」は、それらの置換基を含有する化合物が供されるプロセス条件において不活性である、一つまたはそれ以上の置換基を有する芳香族基である。置換基はまた、ここで記載されるヒドロシリル化のプロセスとは実質的に干渉しない。アリールと同様に、置換アリールは一つまたはそれ以上の芳香族環を含んで良く、それらは縮合しているかまたは単結合または他の基と結合する。しかしながら、置換アリールがヘテロ芳香族環を持つとき、置換アリール基中の自由原子価は、炭素を代替するヘテロ芳香族環のヘテロ原子(たとえば窒素のような)であり得る。特に明記しない限り、ここでは置換アリール基の置換基は、0〜約30の炭素原子を、具体的には0〜20の炭素原子を、さらに具体的には0〜10の炭素原子を持つことが好ましい。一つの実施態様において、置換基はここで記載される不活性な官能基である。
【0052】
ここでは「アルケニル」は、一つまたはそれ以上の炭素−炭素二重結合を持つ、直鎖、分岐または環状のアルケニル基のいずれをも含み、ここで置換位置は炭素−炭素二重結合または基の他の場所のどちらかでよい。アルケニルの非限定的な具体例は、ビニル、プロペニル、アリル、メタリルおよびエチリデニルノルボルナンを含むが、これらに限定されない。
【0053】
「アルキニル」は、一つまたはそれ以上の炭素−炭素三重結合を持つ、直鎖、分岐または環状のアルキニル基のいずれをも含み、ここで置換位置は炭素−炭素三重結合または基の他の場所のどちらかでよい。
【0054】
「不飽和」は、一つまたはそれ以上の二重または三重結合を意味する。好ましい実施態様において、炭素−炭素二重または三重結合を指す。
【0055】
ここでは「不活性な官能基」は、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル以外の基を意味し、それらの基はその基を含有する化合物が供されるプロセス条件において不活性である。不活性な官能基はまた、ここで記載されるどのヒドロシリル化のプロセスにも実質的に干渉しない。不活性な官能基の例は、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモおよびイオド)、−OR30(R30はヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)のようなエーテルを含む。
【0056】
ここでは「ヘテロ原子」は、炭素を除く13〜17族元素のいずれかを意味し、例えば、酸素、窒素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含んでよい。
【0057】
ある実施態様において、ここに開示される錯体は、下記置換基を持つ式(I)および(II)のものを含む。(1)R23が:

および/または(2)Rが水素、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピル;および/または(3)RおよびRが共に水素、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピル;および/または(4)Rがメチル;および/または(5)R〜Rが水素;および/または(6)R10、R11、R13、R14、R15およびR16の水素原子;および/または(7)R22が−CHSiR20であり、ここでR20の各々がC1−C18アルキル、C1−C18置換アルキル、アリールまたは置換アリールであり、好ましくは、R20がメチルまたはエチル基である。
【0058】
式(II)に関して、L−Lは通常、一分子につき少なくとも二つの不飽和部位を含む。L−Lの更なる例示は、ブタジエン、1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、トリビニルシクロヘキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンおよびジビニルテトラメチルジシロキサンを含むが、これらに限定されない。
【0059】
ある実施態様において、L−Lは、一分子につき少なくとも四つの不飽和部位を含む。この場合は、L−Lの二つの不飽和部位に結合する各金属と一緒に、金属−PDIダイマー(PDI−金属−L−L−金属−PDI)を形成することが出来る。金属−PDIダイマーのためのL−Lの例示は、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンである。
【0060】
式(III)に関して、一つの実施態様において、Rがアリールまたは置換アリールであり、R〜R、R〜R、R19およびR20が水素である。他の実施態様において、R〜R、R19およびR20が水素である。
【0061】
また、式(III)において、一つの実施態様において、Xが炭素原子を介してGに共有結合する。他の実施態様において、Xがβ水素を含まない。通常、α炭素はGに結合する炭素をいう。さらに、β炭素はα炭素に結合する炭素をいう。ここで、β水素はβ炭素に結合した水素を意味する。好ましくは、Xの各々が独立して−CHSiR20で表される部位であり、式中、R20の各々がC1−C18、好ましくはC1−C10、さらに好ましくはC1−C6アルキル、C1−C18、好ましくはC1−C10、さらに好ましくはC1−C6置換アルキル、アリールまたは置換アリールである。ある実施態様において、R20がメチルまたはエチル基である。
【0062】
ヒドロシリル化反応の触媒として使用される場合、式(I)、(II)および(III)の錯体は非支持、または、例えば、炭素、シリカ、アルミナ、MgClまたはジルコニアのような支持体、または例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンまたはポリ(アミノスチレン)のようなポリマーまたはプレポリマーに固定化されていてよい。金属錯体はまたデンドリマーに支持されていてもよい。
【0063】
ある実施態様において、本発明の金属錯体を支持体に付着するためには、式(I)、(II)および(III)の金属錯体のR〜Rの少なくとも一つ、好ましくはRが支持体に共有結合をするのに効果的な官能基を持つことが望ましい。官能基の例示は、SH、COOH、NHまたはOH基を含むがこれらに限定されない。
【0064】
ある実施態様において、シリカに支持された触媒は、例えば、Macromol.Chem.Phys.2001,202,No.5,pages645−653,Journal of Chromatography A,1025(2003)65−71の文献に述べられているように、Ring-Opening Metathesis Polymerization (ROMP)の技術によって調製できる。
【0065】
デンドリマーの表面に触媒を固定化する他の方法は、KimらがJournal of Organometallic Chemistry 673(2003)77−83で説明しているように、Si−Clが結合した元のデンドリマーと式(I)、(II)および(III)の官能化錯体との塩基の存在下での反応によるものである。
【0066】
モノヒドロシリル化産物の生成のための反応に用いられる組成物において、多価不飽和化合物中のアルケニル官能基に対するシリルヒドリド中のSi−H官能基のモル比は、およそ(0.5/α)〜およそ(1.1/α)の間であり、ここでαは2〜6の整数である。比率が(0.5/α)より小さいと、反応は大量の未反応の多価不飽和化合物を残して終了してしまう。比率が(1.1/α)より大きいと、反応は過剰なビスヒドロシリル化産物を製造するため、選択性が落ちる。好ましくは、比率はおよそ(1/α)である。選択的モノヒドロシリル化では、前述の通り、多価不飽和化合物と非貴金属系触媒からなる反応混合物にシリルヒドリドをゆっくり添加するのが良い。
【0067】
反応混合物の全質量中の非貴金属触媒に基づいて計算した、反応混合物中の触媒の量は、1−10000パーツ・パー・ミリオン(ppm)であり、具体的には10−5000ppmであり、さらに具体的には20−2000ppmである。
【0068】
選択的モノヒドロシリル化に繋がる反応温度は、およそ−50℃〜およそ120℃であり、具体的には0〜80℃であり、さらに具体的には10〜60℃である。ヒドロシリル化は発熱反応であるため、使用する個々の多価不飽和化合物およびシリルヒドリドに応じて、狭い範囲で温度を管理するため、冷却する必要があると思われる。
【0069】
溶媒は、触媒の溶解を助ける他、反応速度の管理にも役立つ。トルエンおよびペンタンのような炭化水素溶媒が好適である。選択的モノヒドロシリル化はシリルヒドリドを溶媒に溶解し、その溶液を多価不飽和化合物および反応触媒からなる反応混合物にゆっくり添加するのがよい。効率的な添加速度は、反応による発熱とビスヒドロシリル化の程度を共に最小化する添加速度である。
【0070】
他の態様において、本発明は、上記のプロセスから製造される組成物である。組成物において、ビスヒドロシリル化産物に対するモノヒドロシリル化産物の比率はおよそ1.8を超え、具体的にはおよそ3を超え、さらに具体的にはおよそ4を超える。
【0071】
他の好ましい態様は、トリビニルシクロヘキサンのモノヒドロシリル化によって製造される組成物である。その組成物は、下記一般式の一つを持つ、モノシリル化ジビニルシクロヘキサン産物を含む。
【0072】
式 X: (HC=CH)CHCH−Si(OR)
【0073】
式 XI: (HC=CH)CHCH−SiR
【0074】
式 XII: (HC=CH)CHCH−Y
【0075】
式XおよびXIにおいて、Rは分岐または直鎖のC1−C20アルキル、C3−C20脂環式基または芳香族基を示す。それらの基は、単一分子の中で必ずしも全てが同じではない。従って、式XIにおいて、一つのRがオクチル、他がメチル、そして三つ目がtert−ブチルであってよい。式Xおよび式XIの好ましい化合物において、Rはメチル、エチルまたはイソプロピルである。
【0076】
式XIIにおいて、Yは一般式(XIII)、(XIV)または(XV)の一価のシロキサニル基であり、式中、Rは分枝または直鎖のアルキル、1〜20の炭素原子の脂環式または芳香族基であり、xは0以上である。
【0077】
【0078】
式 XIV: RSiO(SiRO)SiR
【0079】
【0080】
式XIIのモノヒドロシリル化化合物の例示は、
【0081】
(HC=CH)CHCH−Si[OSi(CHCH
【0082】
(HC=CH)CHCH−Si(CH−O−Si(CHCHCHSi(CH
である。
【0083】
市販のトリビニルシクロヘキサンは、主として、1、2および4位にビニル基を持つ立体異性体の混合物として存在する。しかしながら、1,2,3−および1,3,5−ビニル置換の立体異性体もまた知られている。以下の詳述は1,2,4−異性体混合物に基づくが、他の二つの3置換異性体混合物にも一般的に適用できる。
【0084】
1,2,4−トリビニルシクロヘキサン立体異性体において、違いは、ビニル基の互いに対する配向性(シス対トランス)、およびシクロヘキサン環に対しての配向性(エカトリアル対アキシアル)である。合計八つの立体異性体をもたらし、これらはエナンチオマーの四つの鏡像対である。各々が互いのジアステレオマーであるこれらの四対は、慎重な蒸留によって混合物中で互いに分離され得る。各対のエナンチオマー間は、蒸留による分離はしない。従って、それぞれ二つの鏡像エナンチオマーのラセミ混合物である4つの組成物が得られる。ここで、これら4つの組成物は、それぞれ異性体A、異性体B、異性体Cおよび異性体Dという。A、B、CまたはDというそれらの記号表示は、多段式蒸留塔を使用して回収される順番に基づいており、Aが最初でDが最後である。
【0085】
原理的に異性体A、B、CおよびDを分離できるにも関わらず、実際には容易ではない。4つ全ての沸点が、およそ3℃以下という非常に狭い温度範囲に入る。さらに、異性体AおよびB,そして異性体CおよびDの二対は、互いに1℃以下の範囲内で十分に沸騰する。この狭い沸点範囲にある二つの成分を分離するのでさえ、優れた蒸留塔とおよび厳しいプロセス管理を必要とする。成分が二つではなく、四つであるため、分離を実質的にさらに困難にしている。さらなる困難は、市販のトリビニルシクロヘキサン混合物は、その大半がトリビニルシクロヘキサンと近い沸点を持つ大量の不純物をさらに含むことから起きる。不純物はトリビニルシクロヘキサンより低沸点のものと高沸点のもの両方からなる。

図1
【0086】
1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの4異性体(A,B,CおよびD)
【0087】
異性体A、B、CおよびDの蒸留フラクション中のビニル基の配向を決めるため、二次元NMR相関分光法(COSY)が用いられてきた。異性体Aのビニル基は全てエカトリアル型である一方、異性体Bでは、1および2位のもののみがエカトリアル型あり、そして4位のものはアキシアル型である。異性体Cでは、2位のビニル基がアキシアル型であり、1および4位のものはエカトリアル型である。異性体Dでは、アキシアル型のビニル基は1位であり、エカトリアル型のビニル基は2および4位である。異性体A、B、CおよびDの構造は図1に表される。これらの異なる構造によって、トリビニルシクロヘキサンの立体異性体の反応性およびモノヒドロシリル化産物への選択性が決まる。
【0088】
トリビニルシクロヘキサン立体異性体の蒸留されていない混合物の、または異性体AおよびBに分類された個々の蒸留フラクションのヒドロシリル化が、例えば鉄ピリジンイミン触媒のような本発明の触媒で触媒される場合、シリル基の最初の付加は、シクロヘキサン環の4位に優先的に起きる。この優先傾向は、フラクションAの立体異性体において顕著に高い。従って、選択的モノヒドロシリル化だけではなく、4位における位置選択的モノヒドロシリル化も実現する。その一方、白金で触媒されたトリビニルシクロヘキサンのヒドロシリル化は、シリル官能基のビニル基への付加は、1、2または4位に特に優先順位はなく、殆どランダム付加である。
【0089】
非貴金属錯体(例えば、ピリジンジイミン鉄)に触媒された、位置選択的なモノヒドロシリル化は、異性体Aとトリエトキシシランから1,2−ジビニル、4−(2−トリエトキシシリル−エチル)シクロヘキサンを少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも75重量%の収率で選択的に合成させる。ビスヒドロシリル化産物に対するモノヒドロシリル化産物の重量比は2を超え、好ましくは4を超え、最も好ましくは6を超える。上記の通り、1,2−ジビニル、4−(2−トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサンは、自動車用タイヤにおける転がり抵抗および摩耗を改善するのに有用なサルファシランの合成における重要中間体である。従って、本発明はこの重要中間体を選択的に調製するための有用な方法を提供する。
【0090】
同様に、ホモ−および共重合フィルムの形成に有用な1,2−ジビニル、4−(2−ヘプタメチルトリシロキサニル)シクロヘキサンは、例えば鉄ピリジンジイミン錯体のような本発明の触媒によって触媒される、異性体Aおよび/または異性体Bとビス(トリメチルシロキシ)メチルシランとの反応から位置選択的に得られる。ビスヒドロシリル化産物に対する物ヒドロシリル化産物の重量比は3を超え、好ましくは4を超え、最も好ましくは6を超える。
【0091】
従って、一つの実施態様において、本発明は、上記の式(I)、式(II)または式(III)の錯体の存在下でトリビニルシクロヘキサンをシリルヒドリドと反応させるステップを含む、トリビニルシクロヘキサンとシリルヒドリドからモノヒドロシリル化産物を選択的に製造するプロセスに関する。ここで、トリビニルシクロヘキサン中のアルケニル官能基に対するシリルヒドリド中のSi−H官能基のモル比は、およそ(0.5:3)〜およそ(1.1:3)の間であり;またここで、シリルヒドリド由来のシリル基はトリビニルシクロヘキサンの4位に選択的に付加する。
【0092】
プロセスに関して、シリルヒドリドは、トリエトキシシランまたはビス(トリメチルシロキシ)メチルシランであってよい。トリビニルシクロヘキサンは、トリビニルシクロヘキサンの立体異性体の混合物、またはトリビニルシクロヘキサン異性体Aおよび/またはトリビニルシクロヘキサン異性体Bであってよい。
【0093】
本発明は、主にモノヒドロシリル化の関連で述べられているが、好ましくは、本発明の触媒は、少なくとも三つの不飽和基を含有する基質から位置選択的なビスヒドロシリル化産物を製造するのに有効であると理解される。
【0094】
例示的には、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの異性体Cにおいて、モノヒドロシリル化はシクロヘキサン環の1および4位のエカトリアル型のビニル基のどちらにも起きる。ビスヒドロシリル化はシクロヘキサン環の1および4位にほぼ独占的に起きる。従って、異性体Cでは、位置選択的ビスヒドロシリル化が実現される。1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの異性体Dでもまた、位置選択的ビスヒドロシリル化が優先される。異性体Dにおいて、シクロヘキサン環の2および4位のビニル基に付加が起きる。
【0095】
以下の実施例は例示を意味し、本発明の範囲の何らかの限定を意味するものではない。他に明示されない限りすべての部およびパーセントは重量に基づくもので、すべての温度は摂氏である。
【実施例】
【0096】
概論
全ての空気および湿気に敏感な操作は、標準の真空ライン、シュレンク、およびカニューレの手法を用いて、または精製窒素雰囲気を含有するMBraun不活性雰囲気ドライボックス中で行った。空気および湿気に敏感な操作に用いる溶媒は、文献の手順を用いて、初めに乾燥させ、そして脱酸素化させた。例えば、Pangborn et al.,J.Organometallics 1996,15,1518参照。
【0097】
[(2,6−Et2PDI)Fe(N)][μ−(N)]は、式(I)の化合物に対応し、式中、全てのR23が2,4−ジエチルフェニルであり、全てのRがメチルであり、全てのRおよびRがエチルであり、全てのR、R、R、R、R、Rが水素であり、そしてGが鉄である。
【0098】
[(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]は、式(I)の化合物に対応し、式中、全てのR23が2,6−ジメチルフェニルであり、全てのR、RおよびRがメチルであり、全てのR、R、R、R、R、Rが水素であり、そしてGが鉄である。
【0099】
[(2−Me,6−iPrPDI)Fe(N)][μ−(N)]は、式(I)の化合物に対応し、式中、全てのR23が2−メチル−6−イソプロピルフェニルであり、全てのRおよびRがメチルであり、全てのRがイソプロピルであり、全てのR、R、R、R、R、Rが水素であり、そしてGが鉄である。
【0100】
[(2,4,6−Me3PDI)Fe(N)][μ−(N)]は、式(I)の化合物に対応し、式中、全てのR23が2,4,6−トリメチルフェニルであり、全てのR、R、RおよびRがメチルであり、全てのR、R、R、R、Rが水素であり、そしてGが鉄である。
【0101】
実施例1 市販のトリビニルシクロヘキサン(TVCH)の分離
【0102】
上記の通り、本実施例は、異性体A、B、CおよびDに対応するフラクションへの分離、およびガスクロマトグラフィ(GC)およびNMR分光法によるフラクションの特性評価を説明する。
蒸留装置
【0103】
バッチ蒸留装置は、TVCH異性体を分離するために設置された。装置は、高さ1700 mmまで316ステンレス鋼 突起付金属パッキング(Propac;0.16インチ(0.41センチメートル) サイズ;H.S.Martin,Inc.品番509100−0016)が充填された50mm径の真空ジャケット付き蒸留カラムに装着された、ボイラーとしての5リットルのフラスコからなる。液体が滴となってボイラーに戻る速度を目視でモニターすることにより、還流循環速度を決めることが出来るように、カラムの下端にはドリップチップを付けた。カラムの頂上に調節可能な蒸留分留去部を装着した。フラスコの加熱は電気加熱マントル(Glas Col)によって行った。加熱マントルの電源は可変電圧制御装置(Staco、Dayton、Ohio)によって加熱マントルに供給された。ボイラーの攪拌はテフロン加工のマグネチックスターラーバーにより、ボイラーを有する加熱マントルを支持する電気攪拌プレートによって駆動した。
蒸留手順
【0104】
通常、ボイラーに4700〜4800ミリリットルのTVCHおよび重合防止剤として4グラムのtert−ブチルカテコールを入れた。蒸留を9トール(〜1200パスカル)の絶対上部圧力にて行った。加熱マントルへの電力は、一秒間に6滴の還流循環において測定およびモニターされる煮沸割合が、2時間に約1リットルを確立および維持するように調整した。この結果、沸点は86〜88℃の範囲であった。
【0105】
20〜25の還流/留去 比率を維持した。最初の100ミリリットルの蒸留物は、低沸点の不純物の濃縮物を含み、廃棄された。その後、さらなる蒸留フラクションが回収され別々の容器に保存された。各フラクションを十分に溜め、再蒸留でフルバッチ稼動をするために、いくつかのバッチがこの方法で蒸留された。多重再蒸留の後、異性体AおよびBが許容できる純度レベルで結果的に得られた。異性体CおよびDは、可変のC/D比率の混合物として得られ、実質、異性体AおよびBを含んでいなかった。
異性体成分の分析
【0106】
TVCHフラクションはガスクロマトグラフィ(GC)で分析した。GC稼動はAgilent6890カラムを使用して行った。カラムは、長さ30メートルのHP−5(5%フェニル、95%メチルポリシロキサン)であった。カラムの内径は0.25ミリメートルであり、膜厚は250マイクロメートルであった。キャリアガスは、スプリット比100/1で、ヘリウムであった。注入部およびGC検出器の温度は、それぞれ250℃および350℃であった。注入量は1マイクロリットルであった。オーブン温度は、1分間に8℃の速度で340℃まで上げる前に、2分間50℃に保ち、その後、6分間その温度に保った。密集しているものの十分に分離された三本のGCピークがクロマトグラムに得られた。異性体AおよびBは蒸留分に同じ順序で溶出した。異性体CおよびDは、単一の、全く分割されていないピークとして最後に溶出した。C−13 NMRは、異性体CおよびDの比率を決めるために用いた。異性体CおよびDにおいて、特徴的な化学シフトでシクロヘキシル環炭素のC−13 NM共鳴が起きる。共鳴の強度は、蒸留物中の異性体Dに対する異性体Cのモル比を決定するのに使用できる。異性体Cの特徴的なC−13 NMRの化学シフトは、26.67、32.44、41.60、42.38および44.15ppmである。異性体Dの特徴的なC−13 NMRのケミカルシフト値は、26.24、35.58、37.79、42.82および44.04ppmである。
【0107】
四つのフラクション中のビニル基の配向を決めるため、二次元H NMR相関分光法(COSY)が用いらた。異性体Aでは、全ての三つのビニル基がエカトリアル型である。異性体Bでは、4位のビニル基がアキシアル型で、1および2位のものがエカトリアル型である。異性体Cでは、アキシアル型のビニル基は2位であり、異性体Dでは、1位である。
【0108】
実施例2 ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(MDM)によるTVCH異性体Aの選択的モノヒドロシリル化
【0109】
本実験で使用した1,2,4−トリビニルシクロヘキサンサンプルは、実施例1に記載の通りに調製した。98.4%の異性体Aと1.6%の異性体Bを含有した。実験は不活性雰囲気において行われた。
【0110】
シンチレーションバイアルに1.0グラム(6.16ミリモル)の1,2,4−トリビニルシクロヘキサンと0.002グラム(0.002ミリモル)の[(2,6−Et2PDI)Fe(N)][μ−(N)](0.03モル%触媒対シラン)を入れた。攪拌中の溶液に、1.370グラム(6.16ミリモル)のMDMを23℃で10分間掛けて滴下した。SiH/ビニル モル比は(1:3)であった。反応を20分間攪拌した後、空気中で急冷し、GCで分析した。主要なGCピークはモノヒドロシリル化産物であり、全質量の76.9%であった。ビスヒドロシリル化産物は17.6%であった。従って、重量比は4.4であった。
【0111】
H NMRは、モノヒドロシリル化産物の90%がシクロヘキサン環の4位のビニル基にシリル化が起こった位置異性体であることを示した。粗生成物を完全真空で蒸留し、90%が4−置換位置異性体である、純度90%<のモノヒドロシリル化産物を得た。この異性体、1,2−ジビニル,4−(2−ヘプタメチルトリシロキサニル)シクロヘキサンは、下記のH NMRパラメータであった。H NMR:δ=5.65−5.74(m,2H,CHCCHおよびCHCCH)、4.95−5.04(m,2H,CHCCHおよびCHCHCH)、1.84(ddd,1H,J=13Hz,3Hz,2Hz,Caxeq)、1.72−1.79(m,2H,CaxeqおよびCaxeq)、1.65(m,1H,CCH)、1.37(m,2H,CHCCHSi)、1.11−1.21(m,2H,CaxおよびCaxeq)、0.76−0.88(m,2H,CaxeqおよびCaxeq)、0.60(m,2H,CHCHCHSi)、0.19(s,18H,SiMe)、0.16(s,3H,SiMe)。13C NMR:143.89、143.85、114.04、113.93、47.81、47.76、40.36、39.82、33.31、32.77、31.34、15.44、2.43、0.32。
【0112】
実施例3 トリエトキシシラン(TES)を用いるTVCH異性体Aのモノヒドロシリル化
【0113】
本実験で使用した1,2,4−トリビニルシクロヘキサンサンプルは、実施例1に記載の通りに調製した。98.4%の異性体Aと1.6%の異性体Bを含有した。TESは、米国特許7,429,672号に開示されている直接法で調製した。
【0114】
23℃で不活性雰囲気において、シンチレーションバイアルに0.150グラム(0.92ミリモル)の1,2,4−トリビニルシクロヘキサンと0.150グラム(0.92ミリモル)のTESを入れた。SiH/ビニル モル比は(1:3)であった。攪拌中の溶液に、0.002グラム(0.002ミリモル)の[(2,6−Et2PDI)Fe(N)][μ−(N)](0.2モル%触媒対シラン)を入れた。発熱が起きた。反応をおよそ60分間攪拌した後、空気中で急冷した。反応混合物をGCおよびGC/MSで分析したところ、TESが完全に消費されたこと、モノ−およびビスヒドロシリル化産物がそれぞれ60.2%および24.4%存在したことが証明された。重量比は2.46であった。
【0115】
H NMR分析により、シクロヘキサン環の4位のビニル基に90%の一選択性を以ってモノヒドロシリル化が起きたことが証明された。
【0116】
実施例4A、4B [(2−Me,6−iPrPDI)Fe(N)][μ−(N)]を用いる、MDMによるTVCHの選択的モノヒドロシリル化
【0117】
実施例3で使用したものと同じ組成(98.4%の異性体Aおよび1.6%の異性体B)の蒸留TVCHが実施例4Aでもまた使用された。実施例4Bで使用された蒸留TVCHは47%の異性体Aと53%の異性体Bを含有した。
【0118】
本実施例の実験は、実施例3の手順に従って、1.0グラムの1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1.37グラムのMDMをシンチレーションバイアル中で混合することによって行った。SiH/ビニル モル比は(1:3)であった。その後、0.002グラムの触媒を加えた。発熱が起きた。SiH官能基の完全な消費は23℃で10分以内に起こった。GC分析データを下記表にまとめた。
【0119】
H NMRは、両実験からのモノヒドロシリル化産物の90〜95%が1,2−ジビニル,4−(2−ヘプタメチルトリシロキサニル)シクロヘキサンであり、そこでMDM付加がシクロヘキサン環の4位のビニル基に位置選択的に起きたことを示した。その結果は、[(2−Me,6−iPrPDI)Fe(N)][μ−(N)]は、ポリアルケニル基質の室温における位置選択的モノヒドロシリル化に有効な触媒であることを裏付ける。
【0120】
実施例5
【0121】
本実施例では、本発明のピリジンジイミン鉄触媒のヒドロシリル化能を、従来の白金触媒と比較する。四つの異性体全てを含む市販のTVCHが、本実施例の実験において使用された。
【0122】
実施例5A Karstedt白金触媒を用いた比較実験
【0123】
トリエトキシシランと1,2,4−トリビニルシクロへキサンから、トリメトキシシランと1,2,4−トリビニルシクロへキサンに関する、米国特許7,696,269の実施例1に記載した手順を用いて、(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロへキサンを調製した。加熱マントル、メカニカルスターラー、添加漏斗、フリードリヒ冷却器、窒素入口および熱電殿温度計/温度調節器を装着した5リットルの三つ口丸底フラスコに、1800グラム(11.1モル)のTVCHと3.6グラムのKarstedt白金触媒のキシレン溶液(1重量%白金)を入れた。フラスコの内容物を攪拌し、90℃まで加熱した。その後、添加漏斗に入れられたトリエトキシシラン(1641グラム、9.99モル)を、発熱を管理するため、4時間掛けてゆっくりと添加した。温度は添加の間、101〜109℃の間に維持した。反応におけるSiH/ビニル モル比は1:3であった。粗反応生成物のGC分析により、21重量%の未反応のTVCH、48重量%のモノヒドロシリル化産物((2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサン)、26重量%のビス((2−トリエトキシシリルエチル)ビニルシクロヘキサンおよび2.7重量%のトリス((2−トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサンが得られた。モノとビスとの重量比は1.82であった。
【0124】
この白金触媒によるTVCHヒドロシリル化の反応生成物のGCは、モノヒドロシリル化産物に対応する保持時間で溶出された、ほぼ等しい強度の三本の密集したピークを示した。これは、ピリジンジイミン鉄触媒で得られた反応生成物とは対照的である。通常、シクロヘキサン環の4位のビニル基のシリル化に伴う位置異性体に対応する一つのピークが、ガスクロマトグラムのこの保持時間部分を独占する。従って、白金触媒は、三つのビニル基にほぼ同じ確率でヒドロシリル化をさせる。すなわち、白金触媒は、ピリジンジイミン鉄触媒で認められる位置選択性を与えない。
【0125】
実施例5B [(2,6−Et2PDI)Fe(N)][μ−(N)]と市販のTVCHを用いる実験
【0126】
本実験は、実施例3に記載の通りに行った。反応は23℃で15分間で完了した。GCとH NMRの両方によって、トリエトキシシランの完全な消費を確認した。GC分析により、63%のモノヒドロシリル化産物と23%のビスヒドロシリル化産物が明らかになった。重量比は2.74であった。H NMRは、シクロヘキサン環の4位のビニル基がシリル化された、〜95%のモノヒドロシリル化産物を示した。すなわち、[(2,6−Et2PDI)Fe(N)][μ−(N)]による触媒作用は、化学選択性と位置選択性の両方を与えた。
【0127】
実施例5C [(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]と市販のTVCHを用いる実験
【0128】
本実験は、実施例3に記載の通りに行った。反応は23℃で15分間で完了した。GCとH NMRの両方によって、トリエトキシシランの完全な消費を確認した。GC分析により、66%のモノヒドロシリル化産物と16%のビスヒドロシリル化産物が明らかになった。重量比は4.13であった。H NMRは、シクロヘキサン環の4位のビニル基がシリル化された、〜90%のモノヒドロシリル化産物を示した。すなわち、[(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)]による触媒作用は、化学選択性と位置選択性の両方を与えた。
【0129】
実施例6 トリエチルシランによる1,2,4−トリビニルシクロヘキサンのヒドロシリル化
【0130】
不活性雰囲気において、シンチレーションバイアルに0.150グラム(0.92ミリモル)の1,2,4−トリビニルシクロヘキサンと0.107グラム(0.92ミリモル、0.99当量)のトリエチルシランを入れた。この攪拌中の溶液に、0.002グラム(0.002ミリモル)の[(2,6−Me2PDI)Fe(N)][μ−(N)](0.5モル%対シラン)を加えた。反応を通常60分間攪拌し、空気中で急冷し、GCで分析した。GCは、大半が4位に起きた、大半(〜75%)の単独付加産物を示した。
【0131】
実施例7 [2,4,6−Me3PDIFe(N)][μ−(N)]を用いる、メチルビス(トリメチルシリルオキシ)シラン(MDM)によるTVCHのモノヒドロシリル化
【0132】
不活性雰囲気において、シンチレーションバイアルに0.100グラム(0.614ミリモル)の1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(大部分が異性体A)と0.136グラム(0.614ミリモル)のMDM、そして攪拌子を入れた。この攪拌中の溶液に、0.002グラムの[2,4,6−Me3PDIFe(N)][μ−(N)](1モル%対シラン)を加えた。反応を15分間攪拌させ、その時点で溶液をGCで分析した。GC出力チャートは、大部分がC4ビニル位でモノヒドロシリル化された生成物が反応混合物の74%であるという、[2,6−Me2PDIFe(N)][μ−(N)]および[2,6−Et2PDIFe(N)][μ−(N)]と同様の分布を示した。
【0133】
上述の記載が多くの具体例を含有するが、これらの具体例は本発明の範囲の限定としては考えられるべきでなく、単にそれらの好ましい実施態様の例示であるとして考えられるべきである。当業者は、ここに添付される請求項によって定義される本発明の範囲および精神に入る多くの他の可能な改変を想到するであろう。