(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019038
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】膨張式スノーシュー及びその格納用リュックサック
(51)【国際特許分類】
A63C 13/00 20060101AFI20161020BHJP
A45F 3/04 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
A63C13/00
!A45F3/04
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-552072(P2013-552072)
(86)(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公表番号】特表2014-510564(P2014-510564A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】BG2012000003
(87)【国際公開番号】WO2012103605
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】110843
(32)【優先日】2011年2月4日
(33)【優先権主張国】BG
(73)【特許権者】
【識別番号】513196326
【氏名又は名称】“イグジット・スモール・フット”・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ディミトロフ,ペタル
【審査官】
中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−112512(JP,A)
【文献】
実開昭55−002352(JP,U)
【文献】
米国特許第06763617(US,B1)
【文献】
米国特許第06367674(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 13/00−13/02
A43B 15/00−15/18
A45F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、靴の前方部分用の固定ベルトとを有する膨張式スノーシューであって、該本体は、閉じた輪郭を成す円筒形エアチャンバであり、エアチャンバにはエアバルブが取付けられている、スノーシューにおいて、
エアチャンバ(1)が成す閉じた輪郭が、断面円形の楕円形リング状であり、エアチャンバ(1)は、強固な耐摩耗性材料で作製された外形が円筒形の保護ケース(2)内に配置され、保護ケース(2)は、互いに着脱不能に接続された長さの異なる個別区画(A、B、C、D、E、F、G)からなり、該区画のうち保護ケース(2)の前方部分を成す三つ(A、B、C)は、水平軸に対して角度αだけ上方に起こされており、保護ケースの内縁全体に、エアチャンバ(1)にアクセスするためのジッパー(3)が設けられ、靴の前方部分用の固定ベルト(4a)が、保護ケース(2)の外側表面の前方部分において、ジッパー(3)の高さよりも下方に、着脱不能に横方向に取付けられており、靴の前方部分用の固定ベルト(4a)の下方部分に金属製スパイク(9)が着脱可能に取り付けられ、保護ケース(2)の外側表面の後方部分においてに横方向に、ジッパー(3)の高さよりも下方に、靴のかかと用の固定ベルト(4b)が永久的に固定されており、保護ケース(2)の後方部分には、エアバルブ(6)の端部ノズル(11)を保持する開口部(10)が形成されていることを特徴とする、膨張式スノーシュー。
【請求項2】
靴の前方部分用の固定ベルト(4a)及び後方部分用の固定ベルト(4b)が、ロック可能なバックル(5)を備え、調節具(7、7')で調節可能であることを特徴とする、請求項1に記載の膨張式スノーシュー。
【請求項3】
前記ロック可能なバックル(5)が、ケース(8)によって凍結から保護されている、請求項2に記載の膨張式スノーシュー。
【請求項4】
保護ケース(2)の前方部分と水平軸との間の角度αが、35°〜40°の範囲内である、請求項1〜3に記載の膨張式スノーシュー。
【請求項5】
地面に接触する固定ベルト(4a、4b)の下方部分が、保護ケース(2)の外側表面の高さよりも距離「h」だけ下方に位置している、請求項1〜4に記載の膨張式スノーシュー。
【請求項6】
保護ケース(2)の側部区画の外側側面、並びに地面に接触する固定ベルト(4a、4b)の下面に、補強ストリップが取付けられていることを特徴とする、請求項1〜5に記載の膨張式スノーシュー。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のスノーシューを格納するためのリュックサックであって、
本体(13)と、本体(13)の上方及び下方部分に着脱不能に取り付けられた調節可能な締付けストリップ(14、14')とを有し、該ストリップ(14、14')の自由端には、ロック可能なバックル(5')が設けられ、本体(13)は、互いに永久的に接続された個別の区画(15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g)から形成され、本体(13)の外形が、スノーシューのケース(2)の前方部分を成す三つ(A,B,C)の外形に対応するように、該区画のうち本体(13)の上方部分における三つ(15a、15b、15c)は、側部区画に対して角度βだけ起こされて配置されており、
本体(13)の外側側面の周囲の少なくとも1/3には、ジッパー(16)が設けられており、リュックサックの本体(13)は、主区画(17)と付加区画(18)とを有し、該主区画と付加区画とは隔壁によって隔てられており、本体(13)の側壁の外側表面に沿って、リング(19、19')が、取付けられている
ことを特徴とする、リュックサック。
【請求項8】
本体(13)及びスノーシューのケース(2)は、同じ耐摩耗性材料で作製されていることを特徴とする、請求項7に記載のリュックサック。
【請求項9】
主区画(17)が付加区画(18)よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜6に記載のスノーシューを格納するためのリュックサック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ分野、特に雪に覆われた若しくは氷結した地面でのスポーツの分野に用途を有するスノーシュー及びその格納用リュックサックに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6763617号には、本体と、この本体を覆って水平方向の基部を成す多数の横方向及び縦方向のストラップとを備える膨張式スノーシューが開示されている。この本体は空気で満たされた円筒形のチャンバであり、その自由両端は、ドロップ型の閉じた輪郭を形成するようにクランプで結合されている。本体にはエアバルブが設けられている。靴の前方部分用に固定ベルトが設けられている。
【0003】
既知のスノーシューは、平坦な土地や緩い傾斜地のみを意図して作られている。より傾斜の大きい土地では、エアチャンバが圧力で屈曲してしまい、不安定になる傾向がある。スノーシューの底部を成す多数の横方向及び縦方向のストラップを利用することがその安定性に影響を与える。靴の後方部分は自由であるので、このスノーシューの使用者は相当な安定性を享受することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6763617号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、様々な地面で使用するための安定性及び信頼性の高い構造であり、搬送が容易で且つ組立て及び畳むのが容易な膨張式スノーシューを作製することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、このスノーシューを膨張させた状態で格納するためのリュックサックであると共に効果的な背部プロテクターとしても機能するリュックサックを設計することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本体と、靴を固定するためのベルトとを備える膨張式スノーシューによって解決される。本発明によれば、本体は、円筒形のエアチャンバと保護ケースとからなる。エアチャンバは、断面円形の楕円形リング状の閉じた輪郭を成し、保護ケース内に配置される。エアチャンバにはエアバルブが設けられ、このバルブの端部は、保護ケースの後方に形成された開口を通っている。このケースは、強固で耐摩耗性の材料で作製された個別区画からなり、この個別区画は様々な長さであり、互いに永久的に接合されている。この個別区画のうち、保護ケースの前方部分を成す三つは、水平軸から角度αだけ上方に起こされており、この角度αは35°〜40°の範囲内である。内縁全体に沿ってジッパーが設けられており、これによってエアチャンバにアクセス可能となっている。保護ケースの前方部分において、内側表面に対して横向きに、ジッパーの高さよりも下方に、靴の前方部分用の固定ベルトが取付けられている。保護ケースの後方部分において、外側表面に対して横向きに、ジッパーの高さよりも下方に、靴のかかと用の固定ベルトが取付けられている。靴の前方及び後方用の固定ベルトは、調節具を備えたロック可能なバックルを有する。ロック可能なバックルは、保護ケースによって凍結から保護されている。固定ベルトの下方部分は、地面と接触する部分であり、保護ケースの外側高さよりも距離「h」だけ下方に配置されている。着脱式の金属製スパイクが、靴の前方部分用の固定ベルトの下方部分に取付けられている。保護ケースの側部区画の外側側面、並びに地面に接触する固定ベルトの下面には、補強ストリップが取付けられている。
【0008】
スノーシューを膨張させた状態で格納するために特別に設計されたリュックサックは、ケースと、ケースの上方及び下方背側部分に着脱不能に取付けられた調節可能な締付けストリップとからなる。ストリップの自由端には、ロック可能なバックルが設けられている。ケースは個別の区画からなり、これらの区画は互いに着脱不能に接続されている。ケースの外形がスノーシューのケースに対応するように、ケース上方部分の三つの区画は、側部区画に対して角度βで配置されている。ケースの外側周囲表面の側面の周囲の少なくとも1/3には、ジッパーが設けられている。リュックサックのケースは、主区画と付加区画とを有し、これらは隔壁によって隔てられている。主区画は付加区画よりも大きく、膨張した状態のスノーシューを一つ格納することができるようになっている。側壁の外側表面にはリングが取付けられている。リュックサックのケース及びスノーシューの保護ケースは、同じ耐摩耗性材料で作製されている。
【0009】
保護ケースは、耐摩耗性材料で作製されており、硬く鋭利な物体による損傷や穿刺からエアチャンバを保護する。補強ストリップが、損傷に対するさらなる安全性をスノーシューに付加する。保護ケースのジッパーにより、ケースからエアチャンバを迅速且つ容易に格納/取出しすることができる。
【0010】
保護ケースの前方部分が上方に起こされており、ここからスノーシュー自体の前方部分も上方に起こされているので、この前方部分によって靴の前部が雪に埋もれないようになるため、傾斜した土地を容易且つスムーズに登ることが容易になる。
【0011】
スパイクを容易且つ迅速に取付けることができるので、氷結した土地での動作が妨げられなくなる。
【0012】
靴の前方及び後方部分に固定ベルトを使用するので、靴をスノーシューにしっかり締付けることができ、安定した歩行が保証される。ベルトの調節具により、スノーシューを様々のサイズの靴に使用することができる。
【0013】
保護ケースの高さよりも下方に固定ベルトの下方部分が位置することにより、地面をより確実にグリップすることができる。
【0014】
ロック可能なバックルは、雪が積もったり、それによって凍結したりすることから保護するために、保護ケースを備えている。
【0015】
膨張した状態のスノーシューを内部に格納したリュックサックは、使用者(この用具を装着している人)が滑落した場合に望ましくない外傷から保護する。よって背部プロテクターが不要となるので、長い行程でも用具の総重量を顕著に減少させることができる。
【0016】
本発明を、添付図面に示した好ましい実施態様の例と共にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、スパイクなしのスノーシューの概略不等角投影図である。
【
図2】
図2は、スノーシューの前方部分の不等角投影図である。
【
図3】
図3は、エアチャンバを内部に配置した保護ケースの一部を示す。
【
図4】
図4は、靴を配置した状態のスノーシューの側面図である。
【
図5】
図5は、スパイクを装着したスノーシューを下方から見た図である。
【
図6】
図6は、膨張させたスノーシューを格納したリュックサックの概略図である。
【
図6a】
図6aは、リュックサックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面に示した膨張式スノーシューは、本体と固定ベルトとを含む。本体は、円筒形エアチャンバ1と保護ケース2とからなる。エアチャンバ1は、断面円形で、楕円形リング状の閉じた輪郭を成し、保護ケース2内に配置される。エアチャンバ1にはバルブ6が設けられ、その端部11は、保護ケース2の後方部分に形成された開口10を通っている。このバルブ6を介して、エアチャンバ1を膨張させる。保護ケース2は、強固で耐摩耗性の材料で作製された個別区画からなる。この個別区画は様々な長さであり、保護ケース2に円筒形の外形を与えるように互いに縫い合わされている。保護ケース2の側部区画は、前方及び後方区画よりも長い。保護ケース2の前方部分は、水平軸に対して角度αだけ起こされている三つの区画を含み、この角度αは35°〜40°の範囲内である。保護ケース2の内縁全体に渡ってジッパー3が設けられており、ケース2内にエアチャンバ1を迅速且つ容易に配置することができるようになっている。保護ケース2の前方部分の内側表面に対して横向きに、ジッパー3の高さよりも下方において、靴の前方部分用の固定ベルト4aが永久的に取り付けられている。保護ケース2の後方部分の外側表面に対して横向きに、ジッパー3の高さよりも下方において、靴のかかと用の固定ベルト4bが永久的に取付けられている。それぞれ靴の前方及び後方部分用の固定ベルト4a及び4bは、保護ケース8によって凍結から保護されている。バックル用の調節具7、7’は、靴のサイズに合わせて拡げたり狭めたりすることができる。固定ベルト4a及び4bの下方部分は、地面と接触する部分であり、保護ケース2の外側表面の高さよりも距離「h」だけ下方に配置されている。表面の前方部分用の固定ベルト4aの下方部分には、金属製スパイク9が着脱式に取付けられており、氷結した地面におけるグリップを良くしている。保護ケース2の側部区画の外側側面、並びに地面と接触する固定ベルト4a及び4bの下面には、補強ストリップ12が配置されている。
【0019】
図6及び
図6aに示すリュックサックは、スノーシューを膨張させた状態で格納するために特別に設計されており、所定条件下において背部プロテクターとしての役割も果たす。リュックサックの外形はスノーシューの外形に完全に対応している。リュックサックは、本体13と、着脱不能で本体13の上方及び下方部分に取付けられている調節可能な締付けストリップ14、14’とを含む。ストリップ14、14’の自由端には、ロック可能なバックル5’が取付けられている。本体13は、個別区画15a、15b、15c、15d、15e、15f、15gからなり、これらの区画は永久的に互いに接続されている。本体13の外形がスノーシューのケース2の外形に対応するように、本体13の上方部分の三つの区画15a、15b、15cは、側部区画15d及び15gに対して角度βで配置されている。本体13の外側表面の周囲の少なくとも1/3には、ジッパー16が設けられている。リュックサックの本体13は、主区画17と付加区画18とを有し、これらは隔壁によって隔てられている。主区画17は付加区画18よりも大きく、膨張した状態のスノーシューを格納することができるようになっている。このように膨張したスノーシューによって補強されて、本体13は背部プロテクターとして機能する。本体13の側壁の外側表面に沿って、リング19、19’が取付けられている。本体13及びスノーシューの保護ケース2は、同じ耐摩耗性材料で作製されている。
【0020】
本発明の使用方法
スノーシューは、畳んだ状態ではサイズ20−15−5の小さなザックに入る。ザックから取出して、保護ケース2のジッパー3を開き、バルブ6の端部11がケース2に設けた開口部10を通るように、ケース2の内部にエアチャンバ1を配置する。そしてジッパー3を閉じる。エアチャンバ1がケース2の内部容積を完全に満たすまで、ポンプで圧縮空気をエアチャンバ1に導入する。その後、スノーシューを装着し、固定ベルト4a及び4b及びバックル5によって、靴の前方部分及び後方部分を固定する。
【0021】
必要に応じて、また急勾配で険しい場所を越えて行く場合には、ベルト4aの下方部分にスパイク9を取付けることができる。
【0022】
使用後には、バルブ6を開けてエアチャンバ1から空気を抜く。畳んだスノーシューをザックに戻す。
【0023】
場合により、スノーシューの使用者は、スノーシューを畳むことなく、脱いだ後にリュックサック本体13の主区画17内に格納することもある。付加区画18には、エアポンプを入れておくことができる。険しい場所を越えて行く際に上手く支えられるよう、使用者の両手を自由にするために、リング19、19’はスキーのストック等の道具を保持するのに使用する。その後、リュックサックを使用者の背に担ぎ、締付けストリップ14によって体に固定する。このようにして、本体13は、膨張させたスノーシューで補強され、外傷や負傷に対する背部プロテクターとして機能する。