(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ノボラック型フェノール樹脂と、レゾール型フェノール樹脂と、それらフェノール樹脂の硬化反応を促進し得る硬化促進剤との組合せからなり、且つ該ノボラック型フェノール樹脂(A)と該レゾール型フェノール樹脂(B)との使用比率が、質量基準にて、A:B=95:5〜5:95であると共に、該硬化促進剤として、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、及びスクシンイミドのうちから選択されるルイス塩基の少なくとも1種を含んでいることを特徴とする鋳型用有機粘結剤。
前記アレニウス塩基が、硬化促進剤全体の合計量において、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、0.2〜15質量部の割合において用いられる請求項3又は請求項4に記載の鋳型用有機粘結剤。
前記硬化促進剤が、更に、0.1mol/l水溶液のpHが8〜14であるアルカリ金属無機塩のブレンステッド塩基の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の鋳型用有機粘結剤。
前記アルカリ金属無機塩のブレンステッド塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、及びすず酸ナトリウム三水和物のうちから選択されることを特徴とする請求項6に記載の鋳型用有機粘結剤。
前記アルカリ金属無機塩のブレンステッド塩基が、硬化促進剤全体の合計量において、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、0.2〜15質量部の割合において用いられる請求項6又は請求項7に記載の鋳型用有機粘結剤。
前記硬化促進剤が、更に、0.1mol/l水溶液のpHが2〜7.5であるアルカリ金属有機塩のブレンステッド塩基の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の鋳型用有機粘結剤。
前記アルカリ金属有機塩のブレンステッド塩基が、アルギン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1−ナフトール−5−スルホン酸ナトリウム、p−フェノールスルホン酸ナトリウム、及びp−トルエンスルホン酸ナトリウムのうちから選択されることを特徴とする請求項9に記載の鋳型用有機粘結剤。
前記アルカリ金属有機塩のブレンステッド塩基が、硬化促進剤全体の合計量において、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、0.2〜15質量部の割合において用いられる請求項9又は請求項10に記載の鋳型用有機粘結剤。
【背景技術】
【0002】
従来から、シェルモールド鋳造にて代表される砂型鋳造においては、耐火性粒子(鋳物砂)及びフェノール樹脂(バインダー)と共に、更に必要に応じてヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を混練して、得られるレジンコーテッドサンド(以下、「RCS」と略称する)を用いて、それを加熱成形せしめ、所望の形状としてなるシェル鋳型が、一般的に用いられてきている。
【0003】
しかしながら、そのようなRCSの製造に際して、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンが用いられると、鋳型造型に際しての加熱硬化時において、フェノール樹脂を用いることによるホルムアルデヒドの発生に加えて、ヘキサメチレンテトラミンの分解によりアンモニアガスが発生し、そしてそれらのガスが悪臭の原因となって、作業環境を悪化させる一因ともなっているところから、かかる硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミンの添加量を低減させるべく、フェノール樹脂の改質や各種の硬化促進剤の添加等の対策が、種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、ノボラック型フェノール樹脂に、アルカリ金属弱酸塩又はアルカリ金属水酸化物を含有せしめてなるフェノール樹脂組成物を、ヘキサメチレンテトラミンと共に、耐火性粒状材料に混練することにより、シェルモールド鋳型用RCSを製造することが提案され、それによって、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を低減して、アンモニア発生量を少なく為し得ると共に、鋳型造型が可能な硬化性を有し、また造型性にも優れた効果を発揮し得ることが、明らかにされている。しかしながら、そのようなRCSを用いて得られる鋳型の強度を、実用上において充分な程度にまで高めるには、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を比較的多くする必要があり、そのために、アンモニア等の臭気やそれによる刺激の問題が、依然として内在しているのである。
【0005】
また、特許文献2においては、鋳型への注湯時に発生するクラックを防止するRCSを得るために、フェノール樹脂として、ノボラック型フェノール樹脂及び/又はレゾール型フェノール樹脂を用いると共に、ポリエチレングリコールを用い、そしてそれらフェノール樹脂とポリエチレングリコールにて、鋳型用耐火性粒状物を被覆することが提案されているが、そこでは、硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミンが、従来と同様に、多量に用いられているところから、アンモニアやホルムアルデヒドのガス発生量が多く、それらによる臭気や刺激、発煙等の問題を内在すると共に、そのようなRCSで反転排砂造型された中空鋳型において反転時の層間の剥離又は落下に係る耐ピールバック性にも問題があり、鋳込み時の差し込み欠陥やガス欠陥が惹起され易い等の問題を内在している。
【0006】
さらに、特許文献3においては、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とからなるフェノール樹脂系粘結剤と共に、メラミン、尿素、ジシアンジアミドから選ばれるアミン系化合物からなる反応性硬化促進剤を用いて、耐火性骨材の表面を被覆して、RCSを得る手法が明らかにされているが、そのようなRCSを用いて得られる鋳型は、そのハンドリング性が悪く、鋳型の抜型、持ち運び時における折れ、ひび割れ等の問題を惹起し易いことに加えて、耐ピールバック性においても、充分なものではなかったのである。
【0007】
加えて、特許文献4においては、ノボラック型フェノール樹脂にて表面を被覆してなる耐火性骨材を、更に、レゾール型フェノール樹脂エマルジョン又はサスペンションと混練して、かかる耐火性骨材の表面に、更に樹脂被覆を施すことにより、低臭気、高強度、難ブロッキング性を有するシェルモールド鋳型鋳造用RCSを製造する方法が、明らかにされている。即ち、そこでは、レゾール型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として用いられているのであるが、それら二種類のフェノール樹脂にて耐火性骨材の表面を被覆しただけでは、そのようなRCSを用いて得られた鋳型のハンドリング性が悪く、また耐ピールバック性においても劣り、実用上において問題を内在している。また、耐火性骨材の更なる被覆に用いられるレゾール型フェノール樹脂エマルジョン又はサスペンションには、尿素やメラミン等の有機窒素化合物又はヘキサメチレンテトラミンを含有せしめることも、明らかにされているのであるが、そのような有機窒素化合物を含有せしめても、前記したハンドリング性や中空鋳型造型時の耐ピールバック性の向上を充分に図ることは困難であり、更に、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を多くしたりすると、再び、臭気や刺激等の問題も発生するようになるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、鋳型造型時における臭気や刺激、煙等の発生を大幅に低減し、また得られる鋳型のハンドリング性の向上を図りつつ、耐ピールバック性を有利に高め得る鋳型用有機粘結剤を提供することにあり、また、そのような有機粘結剤を用いて得られるRCS、更には、かかるRCSを用いて造型して得られる、優れた特性を有する鋳型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、かくの如き課題の解決のために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
(1) ノボラック型フェノール樹脂と、レゾール型フェノール樹脂と、それらフェノール樹脂の硬化反応を促進し得る硬化促進剤との組合せからなり、且つ該ノボラック型フェノール樹脂(A)と該レゾール型フェノール樹脂(B)との使用比率が、質量基準にて、A:B=95:5〜5:95であると共に、該硬化促進剤として、pKa値が6〜10であるルイス塩基の少なくとも1種を含んでいることを特徴とする鋳型用有機粘結剤。
(2) 前記ルイス塩基のpKa値が、8〜10であることを特徴とする前記態様(1)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(3) 前記ルイス塩基が、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、アンモニア、及びスクシンイミドのうちから選択されることを特徴とする前記態様(2)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(4) 前記ルイス塩基が、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、0.2〜15質量部の割合において用いられる前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の鋳型用有機粘結剤。
(5) 前記硬化促進剤が、更に、0.1mol/l水溶液のpHが10〜14であるアレニウス塩基の少なくとも1種を含むことを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の鋳型用有機粘結剤。
(6) 前記アレニウス塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、及び水酸化カリウムのうちから選択されることを特徴とする前記態様(5)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(7) 前記アレニウス塩基が、硬化促進剤全体の合計量において、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、0.2〜15質量部の割合において用いられる前記態様(5)又は前記態様(6)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(8) 前記硬化促進剤が、更に、0.1mol/l水溶液のpHが8〜14であるアルカリ金属無機塩のブレンステッド塩基の少なくとも1種を含むことを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(7)の何れか1つに記載の鋳型用有機粘結剤。
(9) 前記アルカリ金属無機塩のブレンステッド塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、及びすず酸ナトリウム三水和物のうちから選択されることを特徴とする前記態様(8)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(10) 前記アルカリ金属無機塩のブレンステッド塩基が、硬化促進剤全体の合計量において、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、0.2〜15質量部の割合において用いられる前記態様(8)又は前記態様(9)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(11) 前記硬化促進剤が、更に、0.1mol/l水溶液のpHが2〜7.5であるアルカリ金属有機塩のブレンステッド塩基の少なくとも1種を含むことを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(10)の何れか1つに記載の鋳型用有機粘結剤。
(12) 前記アルカリ金属有機塩のブレンステッド塩基が、アルギン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1−ナフトール−5−スルホン酸ナトリウム、p−フェノールスルホン酸ナトリウム、及びp−トルエンスルホン酸ナトリウムのうちから選択されることを特徴とする前記態様(11)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(13) 前記アルカリ金属有機塩のブレンステッド塩基が、硬化促進剤全体の合計量において、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、0.2〜15質量部の割合において用いられる前記態様(11)又は前記態様(12)に記載の鋳型用有機粘結剤。
(14) 前記態様(1)乃至前記態様(13)の何れか1つに記載の鋳型用有機粘結剤を用いて、それを、鋳物砂に対して混練せしめてなることを特徴とする鋳物砂組成物。
(15) 前記鋳型用有機粘結剤が、前記鋳物砂の100質量部に対して、0.2〜10質量部の範囲内で混練せしめられる前記態様(14)に記載の鋳物砂組成物。
(16) 前記ノボラック型フェノール樹脂と前記レゾール型フェノール樹脂との樹脂混合物が、前記硬化促進剤に先立って、前記鋳物砂に混練せしめられる前記態様(14)又は前記態様(15)に記載の鋳物砂組成物。
(17) 前記硬化促進剤が配合された前記ノボラック型フェノール樹脂と、前記レゾール型フェノール樹脂とが、別個に、前記鋳物砂に混練せしめられる前記態様(14)又は前記態様(15)に記載の鋳物砂組成物。
(18) 前記態様(14)乃至前記態様(17)の何れか1つに記載の鋳物砂組成物を用いて造型し、加熱硬化してなることを特徴とする鋳型。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に従う鋳型用有機粘結剤にあっては、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂と硬化促進剤としてのルイス塩基とを組み合わせて、構成されるものであって、基本的に、ヘキサメチレンテトラミンを硬化剤として用いるものではないところから、そのような硬化剤の熱分解等に基づくところの、アンモニアやホルムアルデヒドの発生を回避し得ることとなり、これによって、粘結剤全体からのアンモニアやホルムアルデヒドの発生量を可及的に低減せしめ得て、臭気や刺激の改善が効果的に達成され、以て、作業環境の改善が有利に図られ得ることとなるのである。
【0013】
しかも、そのような本発明に従う鋳型用有機粘結剤にあっては、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂と硬化促進剤としてのルイス塩基とが組み合わされているところから、そのような粘結剤にて形成される鋳物砂表面の被膜が、より一層迅速に且つ効果的に硬化せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られる鋳型のハンドリング性が有利に向上せしめられ得るのである。そして、そのようなハンドリング性の向上によって、鋳型造型直後の抜型、持ち運び時等における折れ、ひび割れ等の発生が効果的に抑制乃至は阻止され得て、鋳型鋳造時の不良率の削減や生産性の向上が、有利に実現され得るのである。
【0014】
さらに、かかる本発明に従う鋳型用有機粘結剤にあっては、それを用いて得られたRCSにて造型される鋳型において、その耐ピールバック性を効果的に高め得るものであり、これによって、均一な肉厚の鋳型を容易に形成し得ると共に、鋳型の強度を維持して、鋳込み時の差し込み欠陥やガス欠陥の発生を、有利に、抑制乃至は回避し得ることとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ところで、本発明に従う鋳型用有機粘結剤において、それを構成するノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒又は塩基性触媒の存在下において反応させることにより得られる、固体状乃至は液体状(例えば、ワニス状或いはエマルジョン等)の縮合生成物(触媒の種類によってノボラック型又はレゾール型となる)であって、所定の硬化剤乃至は硬化触媒の存在下又は非存在下において加熱することにより、熱硬化性を発現するフェノール樹脂である。
【0016】
そして、そのようなフェノール樹脂の原料として用いられるフェノール類は、フェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであって、例えば、フェノールの他に、クレゾール、キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA等の多価フェノール、及びそれらの混合物等の公知のものを挙げることが出来、そして、それらのうちの1種が単独で或いは2種以上が組み合わされて、用いられることとなる。
【0017】
また、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドの水溶液の形態であるホルマリンの他、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド等を挙げることが出来、更にそれら以外の公知のアルデヒド化合物も、適宜に用いることが出来る。そして、それらアルデヒド類は、単独で用いられても、2種以上を組み合わせて用いられても、何等差し支えない。
【0018】
本発明において用いられる、ノボラック型フェノール樹脂は、上記したフェノール類とアルデヒド類とを用いて、よく知られているように、酸性触媒、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等の有機酸、更には、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛等の酸性物質にて縮合反応させて、形成されるものである。なお、その際、アルデヒド類(F)とフェノール類(P)の配合モル比(F/P)としては、用いられる反応触媒の種類等に応じて、適宜に選定され得るところであるが、好ましくは、0.55〜0.80の範囲内において選定されることとなる。
【0019】
一方、レゾール型フェノール樹脂は、上記のフェノール類とアルデヒド類とを用いて、従来と同様にして、公知の塩基性触媒にて縮合反応せしめることにより、形成されることとなる。なお、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や、アルカリ土類金属の酸化物を用いることが出来る他、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ナフタレンジアミン等のアミン類、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミンや、その他2価金属のナフテン酸塩や2価金属の水酸化物等を、用いることが出来る。また、そのような縮合反応におけるアルデヒド類とフェノール類の配合モル比(F/P)は、用いられる反応触媒の種類等に応じて、適宜に選定されるものであるが、一般に、1.1〜4.0の範囲内において選定されることとなる。
【0020】
本発明に従う鋳型用有機粘結剤においては、その樹脂粘結成分として、上述の如くして得られるノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の両者が、共に用いられて、レゾール型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として機能せしめられると共に、鋳型の曲げ強度等の特性を向上せしめ得る成分として、用いられているのである。そして、それらノボラック型フェノール樹脂(A)とレゾール型フェノール樹脂(B)との併用に際しては、それらの使用比率が、質量基準にて、A:B=95:5〜5:95となるようにする必要があり、特に望ましくは、A:B=30:70〜70:30となる使用比率が、有利に採用されることとなる。
【0021】
なお、かかるレゾール型フェノール樹脂の使用比率が、ノボラック型フェノール樹脂との合計量に対して95質量%を超え、従ってノボラック型フェノール樹脂の使用比率が5質量%未満となると、それら2種のフェノール樹脂を混合して用いる場合に、それらを均一に混合することが困難となると共に、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤として用いられなかったレゾール型フェノール樹脂の残存量が多くなり、粘結剤全体としての硬化速度の向上効果が不充分となる問題が惹起される。また、それとは逆に、レゾール型フェノール樹脂の使用割合が5質量%未満で、ノボラック型フェノール樹脂の使用比率が95質量%を超えるようになると、レゾール型フェノール樹脂にて硬化せしめられ得ないノボラック型フェノール樹脂が多くなり、その余剰のノボラック型フェノール樹脂が硬化せずに残って、粘結剤の完全な硬化が実現され難くなることによって、鋳型の強度低下を招く恐れがある。
【0022】
ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の硬化反応は、基本的に脱水縮合反応であるところから、ルイス塩基より孤立電子対が供与されることによって、ノボラック型フェノール樹脂のベンゼン環が活性化され脱水反応が促進されて、その反応速度が速くなるのである。そして、そのような脱水縮合反応を有利に進行せしめる上において、かかるルイス塩基は、そのpKa(酸解離定数)値が6〜10である必要があり、中でも、8〜10であることが望ましい。このpKaの値が小さい程、強酸であることを示すものであるところから、ルイス塩基のpKaが6未満では、酸性が強くなって塩基性が弱くなるため脱水縮合反応を十分に進行せしめ難くなるのであり、pKaが10を超えるようになると、孤立電子対を供与することが弱くなるという問題が惹起されるようになる。特に、pKa値が8〜10のルイス塩基では、塩基性が強く、孤立電子対を供与することが強くなることにより、上記した脱水縮合反応が有利に進行せしめられ得るものと考えられている。
【0023】
また、そのようなpKa値を有するルイス塩基としては、トリエチレンジアミン(pKa=8.3)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(pKa=9.7)、アンモニア(pKa=9.3)、スクシンイミド(pKa=9.6)等があり、本発明にあっては、それらのルイス塩基が、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の硬化時の脱水縮合反応を有利に加速することが出来るところから、好適に用いられることとなる。なお、それらのルイス塩基は、単独にて使用される他、適宜の組み合わせにても使用され得、更には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、上記範囲外のpKa値を有するルイス塩基を組み合わせて、使用することも可能である。
【0024】
なお、かくの如き所定のpKa値を有するルイス塩基は、硬化促進剤として、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の合計量の100質量部に対して、一般に、0.2〜15質量部の割合において用いられることが望ましく、特に、0.5〜8質量部が有利に用いられることとなる。そのような硬化促進剤としてのルイス塩基の使用量が、0.2質量部未満となると、フェノール樹脂成分の硬化促進に効果が少なくなる問題があり、また15質量部を超えるようになると、鋳型の強度が低下する等の問題が惹起されるようになる。
【0025】
このように、本発明に従う鋳型用有機粘結剤にあっては、硬化促進剤として、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の硬化時における脱水縮合反応を加速する、所定のルイス塩基を用いるものであるが、また、そのようなルイス塩基をベースとして、それにアレニウス塩基及び/又はブレンステッド塩基を組み合わせて、異なる塩基の複数にて、硬化促進剤を構成することも可能であり、それによって、相乗効果を得ることが出来る。
【0026】
ここで、ルイス塩基と共に用いられ得るアレニウス塩基は、水に溶けたときに水酸基イオン(OH
- )を生成することの出来る化合物であって、本発明では、0.1mol/l水溶液のpHが10〜14であるアレニウス塩基が用いられることとなる。そのようなアレニウス塩基の水溶液のpHが10〜14の時に、強アルカリ性を示して、ルイス塩基と同じ機構で、OH
- を供与することにより、ノボラック型フェノール樹脂のベンゼン環を活性化し、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の硬化時の脱水縮合反応を加速するものと考えられている。
【0027】
また、そのようなアレニウス塩基としては、特に、水酸化ナトリウム(0.1mol/l水溶液のpH=13.5。以下同じ)、水酸化リチウム(pH=13.0)、水酸化カルシウム(pH=13.1)、水酸化カリウム(pH=13.4)の何れかであることが望ましく、それらのうちの1種が単独で或いは2種以上が組み合わされて、用いられることとなる。
【0028】
さらに、本発明において、硬化促進剤として、ルイス塩基と共に、所定のブレンステッド塩基、換言すればプロトンを受け取る物質、つまりH
+ を受け入れることが出来る化合物を組み合わせて、用いることが出来る。
【0029】
そして、かかるブレンステッド塩基がアルカリ金属無機塩である場合においては、その0.1mol/l水溶液のpHが8〜14であるものが、用いられることとなる。ブレンステッド塩基であるアルカリ金属無機塩の0.1mol/l水溶液のpHが8〜14の場合において、加水分解によってOH
- イオンを生じることにより、前記したルイス塩基やアレニウス塩基と同様な反応機構にて、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の硬化時の脱水縮合反応が加速されるものと考えられている。
【0030】
なお、そのようなブレンステッド塩基のアルカリ金属無機塩としては、炭酸ナトリウム(0.1mol/l水溶液のpH=11.6。以下同じ)、炭酸水素ナトリウム(pH=8.6)、炭酸カリウム(pH=11.5)、炭酸リチウム(pH=11.5)、亜硫酸ナトリウム(pH=9.3)、アルミン酸ナトリウム(pH=11.4)、すず酸ナトリウム三水和物(pH=11.8)の何れかであることが望ましく、それらのうちの1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられることとなる。
【0031】
また、ブレンステッド塩基がアルカリ金属有機塩である場合において、その0.1mol/l水溶液のpHが2〜7.5であるものが、有利に用いられる。そのようなpH値を与える場合において、ノボラック型フェノール樹脂のベンゼン環のH
+ を受け入れることにより、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の硬化時の脱水縮合反応が加速されるものと考えられている。
【0032】
なお、かかるブレンステッド塩基としてのアルカリ金属有機塩は、アルギン酸ナトリウム(0.1mol/l水溶液のpH=7.3。以下同じ)、サリチル酸ナトリウム(pH=6.3)、安息香酸ナトリウム(pH=7.3)、1−ナフトール−5−スルホン酸ナトリウム(pH=3.3)、p−フェノールスルホン酸ナトリウム(pH=5.8)、p−トルエンスルホン酸ナトリウム(pH=6.5)の何れかであることが望ましく、それらのうちの1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられることとなる。
【0033】
ところで、上述の如きアレニウス塩基やブレンステッド塩基の使用量は、前記したルイス塩基との合計量において、前記硬化促進剤(ルイス塩基)の使用量の範囲内とされることとなる。即ち、ルイス塩基とアレニウス塩基及び/又はブレンステッド塩基との合計量が、樹脂粘結成分の100質量部に対して、一般に、0.2〜15質量部、好ましくは、0.5〜8質量部の範囲内となるように、用いられるのである。なお、そのような硬化促進剤の使用量が少なくなると、その硬化促進効果を充分に発揮し難くなるからであり、また、その使用量が多くなり過ぎると、鋳型の強度が低下するようになるからである。
【0034】
そして、かくの如き構成からなる本発明に従う有機粘結剤は、公知の鋳物砂に配合されて、その表面を被覆することにより、シェルモールド鋳型等の鋳型を造型するためのRCSが形成されることとなる。そのようなRCSを得るための有機粘結剤の使用量としては、そこで用いられるフェノール樹脂の種類や要求される鋳型の強度等を考慮して決定されるものであるため、一概に限定はされないが、一般的には、鋳物砂の100質量部に対して、0.2〜10質量部程度の範囲内であり、好ましくは0.5〜8質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部の範囲内である。
【0035】
また、そのような有機粘結剤にて被覆せしめられる鋳物砂に関して、従来から公知のものが適宜に選択されて、用いられ得るところであって、その種類は、本発明にあっては、特に限定されるものではない。そのような鋳物砂は、鋳型の基材を為すものであるところから、鋳造に耐え得る耐火性と、鋳型形成(造型)に適した粒径を有する無機の耐火性粒子であれば、従来からシェルモールド鋳造に用いられてきた公知の無機粒子が、何れも、用いられ得るものである。また、そのような耐火性粒子としては、例えば、一般的によく用いられているけい砂の他にも、オリビンサンドやジルコンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンド等の特殊砂、フェロクロム系スラグやフェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子、ナイガイセラビーズ(商品名:伊藤忠セラテック株式会社製)のようなムライト系人工粒子、或いは、これらを鋳造後に回収・再生した再生粒子等が挙げられ、これらが単独で或いは2種以上が組み合わされて、用いられることとなる。
【0036】
なお、本発明に従う有機粘結剤を用いて、目的とするRCSを製造するに際して、その製造方法は特に限定されるものではなく、ドライホットコート法やセミホットコート法、コールドコート法、粉末溶剤法等の、従来から公知の方法が、何れも採用され得るところであるが、本発明にあっては、特に、ワールミキサーやスピードミキサー等の混練機内で、予熱された鋳物砂と有機粘結剤を構成する樹脂粘結成分(ノボラック型フェノール樹脂+レゾール型フェノール樹脂)とを混練した後、所定の硬化促進剤の水溶液を加えると共に、送風冷却により、塊状内容物を粒状に崩壊させて、ステアリン酸カルシウム(滑材)を加える、所謂ドライホットコート法の採用が推奨される。また、本発明に従う有機粘結剤を構成する樹脂粘結成分を与える2種のフェノール樹脂や硬化促進剤を、鋳物砂と混練せしめるタイミングは、適宜に選定され得るところであって、単独に順次混練せしめられる他、適宜に組み合わせて混練せしめることも可能である。尤も、硬化促進剤の一つであるルイス塩基を、レゾール型フェノール樹脂に溶融混合せしめると、レゾール型フェノール樹脂の硬化が早期に進行するようになるところから、ルイス塩基は、ノボラック型フェノール樹脂との混合に止めることが望ましい。
【0037】
さらに、上述の如くして得られるRCSを用いて、シェルモールド鋳型の如き所定の鋳型を造型するに際して、かかるRCSの加熱硬化を図るべく、加熱下において、目的とする鋳型の造型が行なわれることとなるが、そのような加熱造型方法としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の手法が、何れも有利に用いられ得ることとなる。例えば、上述せる如きRCSを、目的とする鋳型を与える所望の形状空間を有する、150℃〜300℃に加熱された成形型内に、重力落下方式や吹込方式等によって充填し、硬化させた後、かかる成形型から硬化した鋳型を抜型して、鋳造用鋳型を得ることが出来るのである。そして、そのようにして得られた鋳型にあっては、前述したような優れた特徴が、有利に付与せしめられることとなるのである。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
【0039】
なお、以下の記載において「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味するものである。また、以下において製造されたRCSの各特性は、下記の試験法に従って測定したものである。
【0040】
−ノボラック型フェノール樹脂の製造例−
温度計、攪拌装置及びコンデンサを備えた反応容器に、フェノールの940部、47%ホルマリンの428部、及びシュウ酸の2.8部を投入した。次いで、反応容器を徐々に昇温して、還流温度に到達せしめた後、90分間還流反応させ、更に反応液温度が170℃になるまで加熱及び減圧濃縮することにより、ノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0041】
−レゾール型フェノール樹脂の製造例−
温度計、攪拌装置及びコンデンサを備えた反応容器に、フェノールの680部、47%ホルマリンの535部、及びヘキサメチレンテトラミンの101部を仕込んだ後、約60分を要して70℃まで昇温し、そのまま5時間反応させた。そして、その得られた反応液を、90℃まで昇温して、減圧脱水することにより、レゾール型フェノール樹脂を得た。
【0042】
−実施例1−
145℃に加熱したフラタリーけい砂の7000部を、ワールミキサーに投入し、更に上記で得られたノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂とを、下記表1に示される配合比率(1:1)において、合計量が175部となるように投入して、50秒間混練した。次いで、硬化促進剤としてのトリエチレンジアミンの3.5部を、105部の水に溶解乃至分散させてなるものを、ワールミキサー内に供給して、砂粒が崩壊するまで混練を行ない、そして送風冷却した後、更にステアリン酸カルシウムの7部を添加して、シェルモールド用のRCSを得た。
【0043】
−実施例2〜4−
実施例1におけるトリエチレンジアミンに代えて、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、0.1mol/lのアンモニア水、又はスクシンイミドの3.5部を、硬化促進剤として用いたこと以外は、実施例1と同様な手法に従って、実施例2〜4に係る各RCSを得た。
【0044】
−実施例5〜9−
実施例1において、硬化促進剤として、トリエチレンジアミンの3.5部と共に、アレニウス塩基である水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムの0.5部、或いはブレンステッド塩基である炭酸カルシウム若しくは炭酸水素ナトリウムの0.5部、又はブレンステッド塩基である1−ナフトール−5−スルホン酸ナトリウムの3.5部を、更に用いること以外は、実施例1と同様な手法により、実施例5〜9に係る各RCSを得た。
【0045】
−実施例10〜15−
実施例1において、硬化促進剤として、トリエチレンジアミン若しくはN,N−ジメチル−4−アミノピリジンからなるルイス塩基の3.5部と、下記表2又は表3に示される、アレニウス塩基若しくはブレンステッド塩基の所定量とを用いること以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、実施例10〜15に係る各種のRCSを得た。
【0046】
−実施例16〜17−
実施例1におけるノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂の使用割合を、表3に示される如く変化させたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例16〜17に係る各種のRCSを得た。
【0047】
−実施例18−
145℃に加熱したフラタリーけい砂の7000部を、ワールミキサーに投入し、これに、ノボラック型フェノール樹脂の87.5部とトリエチレンジアミンの3.5部とを予め配合したものを投入して、50秒間混練せしめた後、更に、レゾール型フェノール樹脂の87.5部を添加して、砂粒が崩壊するまで混練し、そして送風冷却した後、ステアリン酸カルシウムの7部を添加して、目的とするRCSを得た。
【0048】
−実施例19〜22−
実施例1において、硬化促進剤として、トリエチレンジアミン若しくはN,N−ジメチル−4−アミノピリジンからなるルイス塩基の1.5部と、ブレンステッド塩基である炭酸カルシウム若しくは炭酸水素ナトリウムの0.5部と、ブレンステッド塩基である1−ナフトール−5−スルホン酸ナトリウム若しくはPトルエンスルホン酸ナトリウムの2.0部とを用いること以外は、実施例1と同様な手法により、実施例19〜22に係る各RCSを得た。
【0049】
−実施例23〜24−
実施例1において、硬化促進剤として、トリエチレンジアミン若しくはN,N−ジメチル−4−アミノピリジンからなるルイス塩基の1.5部と、アレニウス塩基である水酸化ナトリウムの0.2部と、ブレンステッド塩基である炭酸カルシウム若しくは炭酸水素ナトリウムの0.5部と、ブレンステッド塩基である1−ナフトール−5−スルホン酸ナトリウム若しくはPトルエンスルホン酸ナトリウムの1.8部とを用いること以外は、実施例1と同様な手法により、実施例23〜24に係る各RCSを得た。
【0050】
−比較例1−
145℃に加熱したフラタリーけい砂の7000部を、ワールミキサーに投入し、これに、先に製造されたノボラック型フェノール樹脂の175部を投入して、50秒間混練した後、硬化剤として、ヘキサメチレンテトラミンの26.3部を水に溶解させたものを添加して、砂粒が崩壊するまで混練した。そして、送風冷却を行なった後、ステアリン酸カルシウムの7部を添加して、RCSを得た。
−比較例2−
比較例1におけるノボラック型フェノール樹脂に代えて、レゾール型フェノール樹脂を用いること、及び硬化剤を添加しないこと以外は、比較例1と同様にして、目的とするRCSを得た。
−比較例3、4−
実施例1において、硬化促進剤を用いないこと、又は硬化促進剤としてのトリエチレンジアミンに代えて、メラミンの3.5部を用いること以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、目的とするRCSを得た。
【0051】
−RCS特性の評価−
上記実施例1〜24及び比較例1〜4において得られた各種のRCSについて、その特性を、下記の試験法に従って測定乃至は評価し、その結果を、各RCS構成と共に、下記表1〜表5に併せ示した。
【0052】
−曲げ強度の測定−
それぞれのRCSを用いて、JIS−K−6910に準拠して、JIS式テストピース(10mm×10mm×60mm、焼成条件:250℃×60秒間)を作製し、その得られたJIS式テストピースについて、JACT試験法:SM−1に準じて、その曲げ強度(kgf/cm
2 )を測定した。この曲げ強度が高い程、鋳型が高強度となることを示している。
【0053】
−RCS融着点の測定−
それぞれのRCSの融着温度について、JACT試験法:C−1(融着点試験法)に準拠して、測定した。この測定された融着温度が高い程、RCSの耐ブロッキング性が優れていることとなる。
【0054】
−ベンド(500gf)量の測定−
JACT試験法:SM−3の撓み試験法に準拠して、それぞれのRCSを用いて得られた各試験片(180mm×40mm×5mm、焼成条件:250℃×40秒間)に対して、その中央部に500gfの荷重を加えて、3分間放置した後の、試験片中央部の歪み量(mm)をダイヤルゲージで読み、その値をベンド(500gf)量とした。このベンド量(撓み量)は、鋳型造型直後のハンドリング性及び鋳型硬化速度を示す目安指標であり、このベンド量が小さい程、鋳型の硬化速度が速く、ハンドリング性が良くなることを意味している。
【0055】
−耐ピールバック性の評価−
JACT試験法:C−4のピールバック試験法(5−2−1旭有機材工業法)に準拠して、それぞれのRCSの耐ピールバック性を評価する。具体的には、280℃±2℃の温度に加熱した金型上に、ダンプボックスから、それぞれのRCSを供給し、40秒間経過した後、金型をダンプボックスから外し、かかる金型上に付着せるRCSを、電熱器上において淡褐色になるまで焼成して固化させることにより、金型上に試験片を形成する。次いで、金型より外した試験片について、その質量を測定すると共に、その表面のRCSの剥がれ落ち状態を目視にて評価を行ない、耐ピールバック点数を求める。なお、耐ピールバック点数は、試験片の表面剥離面積がない場合を5点とし、表面全体が剥離している場合を1点として、5段階にて評価した。従って、剥離面積が1/4の場合が4点、1/2の場合が3点、3/4の場合が2点とされることとなる。そして、かかる耐ピールバック点数が大きい程、加熱された金型に一旦付着したRCSにて構成される鋳型が、その層間で剥離又は落下することが、より少なくなることを意味するのである。
【0056】
また、かかる金型から取り外された試験片について、その中央部を切断し、その切断面における中央と両端の厚さを、それぞれ測定して、試験片の異なる3部位における肉厚の評価を行なった。それぞれの部位での肉厚がより厚いものが、耐ピールバック性の良好な試験片であり、また4mm以上の厚さの部位の数が多い試験片程、耐ピールバック性が良好であることを示している。
【0057】
−ホルムアルデヒド/アンモニアガス発生量の測定−
それぞれのRCSの1000gを、燃焼管中において、300℃の温度で5分間加熱する一方、かかる燃焼管内の雰囲気を、ポンプにて1L/分の流量において取り出し、そして、その取り出された雰囲気中のホルムアルデヒドガスとアンモニアガスを、40ml×2の純水に分別捕集した。そして、その得られたホルムアルデヒド水溶液を、アセチルアセトン法にて定量する一方、得られたアンモニア水溶液については、滴定法により、アンモニアガス発生量を定量した。かかるホルムアルデヒドガス発生量やアンモニアガス発生量が多くなる程、臭気が強くなり、作業環境を悪化せしめることとなる。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
かかる表1〜表5の結果から明らかなように、実施例1〜24において得られた各RCSは、何れも、ベンド量が低く、また耐ピールバック性の評価においても、耐ピールバック点数が高く、且つ試験片も4mm以上の肉厚の厚い部分を多く有していることが、認められる。従って、実施例1〜24において得られた各RCSにあっては、鋳型の硬化速度が速く且つ造型直後の鋳型のハンドリング性も効果的に高め得ることとなるのであり、以て、鋳型の造型直後の抜型や持ち運び時の折れ、ひび割れ等の発生の防止に、有利に寄与し得るのであり、また鋳型造型時の不良率の削減、更には生産性の向上にも、有利となるのである。しかも、それら実施例1〜24の各RCSは、耐ピールバック性の向上を図り得ることによって、鋳型の肉厚の均一性を効果的に高め得るものであると共に、鋳型の強度を維持して、鋳込み時の差し込み欠陥やガス欠陥の解消にも、有利に寄与し得るものとなるのである。
【0064】
また、そのような実施例1〜24の各RCSは、ホルムアルデヒドガス発生量やアンモニアガス発生量が著しく低減せしめられているところから、比較例1のRCSの如き、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いて得られる従来のRCSのように、臭気による作業環境の悪化の問題も、有利に回避され得ることとなることが認められる。
【0065】
さらに、実施例1〜24の各RCSは、曲げ強度や融着点においても格別の改善が図られており、これによって、鋳型の高強度化が有利に実現され、また、耐ブロッキング性の向上も、有利に達成され得ることなるのである。特に、ルイス塩基としてトリエチレンジアミンを用いた場合において、それら曲げ強度や融着点の改善効果が更に顕著となることが、認められるのである。
【0066】
一方、従来のRCSに相当する、比較例1で得られたRCSにあっては、ホルムアルデヒドガス発生量やアンモニアガス発生量が多く、臭気の問題が内在しているのであり、しかも、比較例1のRCSに加えて、比較例2〜4のRCSにあっては、何れも、耐ピールバック性が悪く、また曲げ強度、融着点、ベンド量においても、実施例1〜24に係るRCSよりも劣るものであることが、認められる。