【実施例1】
【0015】
本発明の第1の実施例とする点火コイルの斜視図を
図1に、点火コイルの第1のケースと第2のケースの接続を表す斜視図を
図2に、(a)第2のケースと2次コイルと2次コイルカバーの組み立てを表す斜視図、(b)絶縁樹脂の充填と1次コイルの組み立てを表す斜視図を
図3に、点火コイルのフランジに加わるボルトの回転に対する応力を表す斜視図を
図4に、点火コイルのコネクタに加わるハーネスの差し込みに対する応力を表す斜視図を
図5にそれぞれ示す。
【0016】
図1乃至
図3において、点火コイル100は珪素鋼板を30枚程度積層して形成したI字型の中心鉄芯10と略円形型の外周鉄芯20を組み合わせて閉磁路機構とする鉄芯と、当該中心鉄芯10の外周に樹脂で成形した1次ボビンの外周に1次巻線を100ターン程度巻き回した1次コイル30と、当該1次コイル30の外周に樹脂で成形した2次ボビンの外周に2次巻線を8000〜15000ターン巻き回した2次コイル40と、からなるコイル部から構成する。また、当該コイル部は絶縁樹脂から成形される第1のケース50と第2のケース60とを組み合わせて箱型となるケースに収容される。さらに、当該第1のケース50及び当該第2のケース60内には当該1次コイル30への点火信号を供給するスイッチング素子から構成されるイグナイタ70を収容し、当該第1のケース50及び当該第2のケース60は当該コイル部と当該イグナイタ70に沿った形状とする。
【0017】
また、前記第1のケース50は前記コイル部の外周方向の6面に対して底面側に配置する形状とし、前記第2のケース60は前記コイル部の外周方向の前記第1のケース50配置面を除く5面側に配置する形状とする。さらに、前記第1のケース50には前記2次コイル40からの高電圧をエンジン上部に形成されたプラグホール内に備えられる点火プラグに供給するための高圧タワーが当該プラグホール内に突出する形状で形成される。
【0018】
また、前記第2のケース60の側面には前記点火コイル100をボルトでエンジンブロックに取り付けるための略三角柱状のフランジ62が形成され、当該フランジ62には当該ボルトを通す差し込み孔62aが形成される。さらに、前記第2のケース60の当該フランジ62形成面と対向する面には樹脂成形したコネクタ64が取り付けられ、当該コネクタ64には前記1次コイル30への電源電圧や前記イグナイタ70への点火信号を供給するハーネスを取り付ける差し込み口64aが形成される。
【0019】
また、前記第1のケース50には前記2次コイル40の上部を覆う2次コイルカバー80が装着され、当該2次コイルカバー80は前記2次コイル40上部に沿った形状としている。さらに、前記第1のケース50及び前記第2のケース60には前記コイル部及び前記イグナイタ70の物理的固定と電気的絶縁するために前記点火コイル100内部に充填する熱硬化性樹脂を注入するための開口部60bを形成する。
【0020】
図2に戻って、前記第1のケース50のプラグホール側面は前記第2のケース60と接続する接合面50aを有すると共に、前記第2のケース60のプラグホール対向面は前記第1のケース50と接続する接合面60aを有し、当該接合面50a,60aを摩擦攪拌接合で接続している。摩擦攪拌接合は前記第1のケース50及び前記第2のケース60を組み立て後に当該接合面50a,60aに対して先端部に突起を有した円柱状の工具を回転させながら圧力を加えることで軟化させる接合方法である。工具の先端部の回転力によって当該接合面50a,60a付近を塑性流動させて練り混ぜることで一体化させる。
【0021】
また、前記第1のケース50に形成される前記接合面50aは前記高圧タワー52の軸方向に対して垂直方向に形成される。さらに、前記第2のケース60に形成される前記接合面60aは前記フランジ62の前記差し込み孔62aを貫通するボルトの回転方向に対して平行に形成される。
【0022】
図3に戻って、
図3(a)では、前記2次コイル40は前記第1のケース50に挿入され、前記2次コイル40の上部に前記2次コイルカバー80を装着して覆う。
図3(b)では、組み立てた前記2次コイル40、前記第1のケース50、及び、前記2次コイルカバー80に矢印P方向から熱硬化性樹脂を充填する。そして、熱硬化性樹脂が固化した後、前記中心鉄芯10及び前記1次コイル30を組み立てたものを装着する。この工程により、前記2次コイル40の内部の細部に熱硬化性樹脂が浸透する。
【0023】
図4において、前記第1のケース50及び第2のケース60の前記接合面50a,60aは前記ボルト差し込み孔62aを貫通するボルトの回転力F
1が働くことで応力S
1が生じる。しかし、前記第1のケース50は前記高圧タワー52が点火プラグとの接続によって固定されているので前記第2のケース60のみがボルトの回転力F
1の影響を受け、第1のケース50との接合面50a,60aの接続を破壊することとなる。
【0024】
図5において、前記第1のケース50及び第2のケース60の前記接合面50a,60aは前記ハーネス差し込み口64aに挿入される際のハーネスの差し込み圧力F
2が働くことで応力S
2が生じる。しかし、前記第1のケース50は前記高圧タワー52が点火プラグとの接続によって固定されているので前記第2のケース60のみがハーネスの差し込み圧力F
2の影響を受け、第1のケース50との接合面50a,60aの接続を破壊することとなる。
【0025】
上記構成によって、前記第1のケース50及び前記第2のケース60は前記コイル部と前記イグナイタ70に沿った形状とし、前記第1のケース50と前記第2のケース60は前記接合面50a,60aを有し、前記接合面50a,60aを摩擦攪拌接合で接続することで、前記点火コイル100の小型軽量化を達成する如く、前記第1のケース50と前記第2のケース60の形状を前記コイル部に沿った形状としてケース内に充填する前記熱硬化性樹脂の量を減らしても熱硬化性樹脂にクラックが生じ難く前記コイル部の絶縁性を保つ事ができる。また、前記第1のケース50と前記第2のケース60とを有して前記コイル部を収容するため、前記コイル部をケースに挿入するための開口を必要とせず、前記熱硬化性樹脂を注入する前記開口部60bのみ備えるだけでよいので前記熱硬化性樹脂にクラックが生じた場合でも、前記コイル部からの前記開口部60bに波及するクラックによる前記1次コイル30及び前記2次コイル40のリーク電流や水の浸入等の不良を防ぐことができる。
【0026】
また、前記第1のケース50と前記第2のケース60は前記接合面50a,60aを摩擦攪拌接合で接続することで、
図4における前記第1のケース50及び第2のケース60の前記接合面50a,60aは前記ハーネス差し込み口64aに挿入される際のハーネスの差し込み圧力F
2が働くことで応力S
2が生じても前記第1のケース50と前記第2のケース60の接続が破壊されることを防ぐことができる。さらに、
図5における前記第1のケース50及び第2のケース60の前記接合面50a,60aは前記ハーネス差し込み口64aに挿入される際のハーネスの差し込み圧力F
2が働くことで応力S
2が生じても前記第1のケース50と前記第2のケース60の接続が破壊されることを防ぐこともできる。
【0027】
なお、実施例1の変形例として、前記コイル部の構成は前記点火コイル100に求められる出力や寸法の応じて任意に変更してもよい。また、前記第1のケース50は前記コイル部の外周方向の6面に対して底面側に配置する形状とし、前記第2のケース60は前記コイル部の外周方向の前記第1のケース50配置面を除く5面側に配置する形状としたが、設計事情によって適宜変更してもよいし、前記点火コイル100は2つ以上のケースを組み合わせる構成としてもよい。さらに、前記第1のケース50には前記2次コイル40の上部を覆う前記2次コイルカバー80を装着したが、前記2次コイル40の内部の細部に熱硬化性樹脂が浸透するのであれば、省略してもよい。
【0028】
また、前記第1のケース50に形成される前記接合面50aは前記高圧タワー52の軸方向に対して垂直方向に形成したが、前記点火コイル100の取り付け時に前記第2のケース60を支持する構成であれば前記接合面50aが前記高圧タワー52の軸方向に対して略垂直方向として実施例1と同様の効果を得てもよい。さらに、前記第2のケース60に形成される前記接合面60aは前記フランジ62の前記差し込み孔62aを貫通するボルトの回転方向に対して平行に形成したが、前記接合面60aが前記フランジ62の前記差し込み孔62aを貫通するボルトの回転方向に対して略平行として実施例1と同様の効果を得てもよい。
【0029】
また、前記第2のケース60に形成される前記接合面60aは前記コネクタ64の前記差し込み口64aの差し込み方向に対して略平行として実施例1と同様の効果を得てもよい。さらに、前記点火コイル100は前記2次コイル40のみを先に熱硬化性樹脂を充填する工程を行ったが、これは、前記2次コイル40の内部の細部に熱硬化性樹脂を浸透させるためであって、全ての組み立てを完了させてから熱硬化性樹脂を充填する工程としても本実施例1の効果を得ることができる。