(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成の定着装置において、定着部材の非通紙領域の一部に当接片が当接し続けると、定着部材の非通紙領域の一部が当接片との摺擦によって局所的に摩耗し、定着部材の破断に繋がる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、定着部材の非通紙領域の一部が局所的に摩耗するのを防止し、定着部材の長寿命化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の定着装置は、記録媒体が通過する通紙領域と、前記通紙領域外に設けられる非通紙領域と、を備え、回転軸を中心に回転可能に設けられる定着部材と、前記定着部材に圧接して定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、前記通紙領域と間隔を介して対向し、前記定着ニップを通過した記録媒体を前記通紙領域から分離させる分離板と、前記非通紙領域に当接する当接片と、を備えた分離部材と、前記分離部材を前記回転軸方向に沿って往復移動させる移動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記のように分離部材を回転軸方向に沿って往復移動させることで、定着部材の非通紙領域に対する当接片の当接位置を回転軸方向にずらすことができる。これに伴って、当接片との摺擦によって定着部材の非通紙領域の一部が局所的に摩耗するのを抑制することができ、定着部材の長寿命化を図ることが可能となる。また、分離板が回転軸方向に沿って往復移動することになるため、分離板の一部に未定着トナーが局所的に堆積するような事態を回避しやすくなり、JAM(紙詰まり)の発生を抑制することが可能となる。
【0009】
前記移動機構は、前記回転軸方向一側に前記分離部材を付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して前記回転軸方向他側に前記分離部材を押圧する押圧部材と、を備えていても良い。
【0010】
このような構成を採用することにより、簡易な構成によって分離部材を回転軸方向に沿って往復移動させることが可能となる。
【0011】
前記押圧部材は、前記分離部材の前記回転軸方向一側に配置されると共に回転可能に設けられ、前記押圧部材の前記回転軸方向他側の面には、前記押圧部材の回転に伴って前記分離部材を押圧するカム部が設けられていても良い。
【0012】
このような構成を採用することにより、簡易な構成を用いて分離部材を押圧することが可能となる。
【0013】
前記定着装置は、前記定着部材の回転に伴って回転する駆動ギアを更に備え、前記押圧部材の外周部には、前記駆動ギアと噛合する従動ギアが設けられていても良い。
【0014】
このような構成を採用することにより、定着部材の回転に伴って押圧部材を回転させることが可能となる。そのため、押圧部材を回転させるための専用の駆動源が不要となり、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0015】
前記定着装置は、前記駆動ギアの回転に伴って回転する被検知部材と、前記被検知部材の回転を検知する検知部と、を更に備えていても良い。
【0016】
このような構成を採用することにより、定着部材が回転しているか否かを確実に判断することが可能となる。
【0017】
前記カム部は、円環状を成すと共に、周方向に沿って前記回転軸方向の位置が連続的に変化していても良い。
【0018】
このような構成を採用することにより、分離部材の往復移動の速度が急激に変化するのを回避することが可能となる。
【0019】
前記分離部材は、前記分離板及び前記当接片が固定される支持板と、前記支持板に固定され、前記押圧部材に押圧される被押圧片と、を更に備えていても良い。
【0020】
このような構成を採用することにより、押圧部材によって分離部材を確実に押圧することが可能となる。
【0021】
前記支持板には、前記回転軸方向に沿ってネジ穴が設けられ、前記被押圧片は、前記ネジ穴に螺合するネジ部と、前記ネジ部の前記回転軸方向一側に設けられ、前記押圧部材に押圧される被押圧部と、前記ネジ部の前記回転軸方向他側に設けられ、前記付勢部材が取り付けられる取付部と、を備えていても良い。
【0022】
このような構成を採用することにより、被押圧片を支持板に容易且つ確実に固定することが可能となる。また、付勢部材の取付部材を被押圧片とは別個に設ける場合と比較して、部品点数を削減することが可能となる。
【0023】
前記定着装置は、前記定着部材及び前記加圧部材を回転可能に支持する定着フレームを更に備え、前記定着フレームは、前記分離部材と前記押圧部材の間に配置される壁部を備え、前記壁部には、前記回転軸方向に沿って貫通穴が設けられ、前記被押圧片が前記貫通穴に貫挿されることで、前記被押圧片を中心に回転可能な状態で前記分離部材が前記定着フレームに支持されていても良い。
【0024】
このような構成を採用することにより、分離部材の回転の支点として被押圧片を利用することが可能となり、分離部材の回転の支点を被押圧片とは別個に設ける場合と比較して、部品点数を削減することが可能となる。
【0025】
前記付勢部材は、前記当接片を前記非通紙領域に押し付ける方向に前記分離部材を付勢する部材を兼ねていても良い。
【0026】
このような構成を採用することにより、回転軸方向一側に分離部材を付勢するための部材と当接片を非通紙領域に押し付けるための部材を別個に設ける場合と比較して、部品点数を削減することが可能となる。
【0027】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、定着部材の非通紙領域の一部が局所的に摩耗するのを防止し、定着部材の長寿命化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、
図1を用いて複写機1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。
【0031】
複写機1は、箱型形状の複写機本体2を備えており、複写機本体2の下部には用紙(記録媒体)を収納した給紙カセット3が設けられ、複写機本体2の上部には排紙トレイ4が設けられている。複写機本体2の上端には、排紙トレイ4の上方に画像読取装置5が設けられている。
【0032】
複写機本体2の中央部には中間転写ベルト6が設けられ、中間転写ベルト6の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光装置7が配置されている。中間転写ベルト6の下側には、4個の画像形成部8がトナーの色(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色)ごとに設けられている。各画像形成部8には、感光体ドラム9が回転可能に設けられており、感光体ドラム9の周囲には、帯電器10と、現像器11と、一次転写部12と、クリーニング装置13と、除電器14とが、一次転写のプロセス順に配置されている。現像器11の上方には、各画像形成部8と対応するトナーコンテナ15が、トナーの色(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色)ごとに設けられている。
【0033】
複写機本体2の一側(図面上右側)には、用紙の搬送経路16が上下方向に設けられている。搬送経路16の上流端には給紙部17が設けられ、搬送経路16の中流部には中間転写ベルト6の一端(図面上右端)に二次転写部18が設けられ、搬送経路16の下流部には定着装置19が設けられ、搬送経路16の下流端には排紙口20が設けられている。
【0034】
次に、このような構成を備えた複写機1の画像形成動作について説明する。複写機1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置19の温度設定等の初期設定が実行される。そして、画像読取装置5によって原稿画像が読み取られると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0035】
まず、帯電器10によって感光体ドラム9の表面が帯電された後、露光装置7からのレーザー光(矢印P参照)により感光体ドラム9の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、トナーコンテナ15から供給されるトナーによって現像器11が対応する色のトナー像に現像する。このトナー像は、一次転写部12において中間転写ベルト6の表面に一次転写される。以上の動作を各画像形成部8が順次繰り返すことによって、中間転写ベルト6上にフルカラーのトナー像が形成される。なお、感光体ドラム9上に残留したトナー及び電荷は、クリーニング装置13及び除電器14によって除去される。
【0036】
一方、給紙部17によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて二次転写部18へと搬送され、二次転写部18において、中間転写ベルト6上のフルカラーのトナー像が用紙に二次転写される。トナー像を二次転写された用紙は、搬送経路16を下流側へと搬送されて定着装置19に進入し、この定着装置19において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙口20から排紙トレイ4上に排出される。
【0037】
次に、定着装置19について説明する。以下、説明の便宜上、
図2における紙面手前側を定着装置19の正面側(前側)とする。各図に適宜付される矢印Frは、定着装置19の正面側(前側)を示している。
【0038】
図2に示されるように、定着装置19は、定着ユニット21と、定着ユニット21の左側に設けられるIHユニット22と、を備えている。
【0039】
まず、定着装置19の定着ユニット21について説明する。定着ユニット21は、複写機本体2に対して着脱可能となっている。
図2に示されるように、定着ユニット21は、定着フレーム23と、定着フレーム23の左側部に収容される定着ローラー24と、定着ローラー24に周設される定着ベルト25(定着部材)と、定着フレーム23の右側部に収容される加圧ローラー26(加圧部材)と、定着ベルト25の右上側に設けられる分離部材27と、分離部材27の前端側に設けられる移動機構28(
図2では図示せず)と、を備えている。
【0040】
図3に示されるように、定着フレーム23は、第1支持部30と、第1支持部30の右側に設けられる第2支持部31と、を備えている。
【0041】
第1支持部30の前壁部32(壁部)及び後壁部(図示せず)の右下部には、支点部33が突設されている。第1支持部30の前壁部32の前下側には、支点部33の左側にアイドルギア34が設けられている。アイドルギア34の左側には、被検知部材36が設けられている。被検知部材36は、検知用ギア37と、検知用ギア37の前側に設けられるパルス板38と、を備えている。検知用ギア37は、アイドルギア34と噛合している。パルス板38の外周には、複数個(本実施形態では8個)の被検知片39が周方向に間隔をおいて設けられている。被検知部材36の左側には、検知部40が設けられている。検知部40は、発光部と受光部を備えたPIセンサー(Photo Interrupter Sensor)である。
【0042】
図4等に示されるように、第1支持部30の前壁部32と後壁部(図示せず)の上部には、円形の貫通穴42が前後方向に沿って設けられている。第1支持部30の前壁部32の上部には、貫通穴42の右下側に円形の軸受穴43が前後方向に沿って設けられている。第1支持部30の前壁部32の上部には、貫通穴42の上方に取付穴44が前後方向に沿って設けられている。
【0043】
図3に示されるように、第2支持部31の前端壁49及び後端壁(図示せず)の左下部には、円弧状の係合溝45が設けられている。係合溝45は、第1支持部30の前壁部32及び後壁部(図示せず)に突設された支点部33に係合している。これにより、支点部33を中心に回転可能となるように第2支持部31が第1支持部30に支持されている。
【0044】
定着ローラー24(
図2等参照)は、前後方向に長い円筒状を成している。定着ローラー24は、例えば、円筒状の基材層と、この基材層に周設される円筒状の弾性層と、によって構成されている。定着ローラー24の基材層は、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属によって構成されている。定着ローラー24の弾性層は、例えば、シリコンゴムやシリコンスポンジによって構成されている。
【0045】
図3に示されるように、定着ローラー24の前後両端部は、第1軸受部46を介して第1支持部30の前壁部32と後壁部(図示せず)に取り付けられている。これにより、定着ローラー24が第1支持部30に回転可能に支持されている。定着ローラー24は、前後方向に延びる回転軸Xを中心に回転可能となっている。つまり、本実施形態では、前後方向が定着ローラー24の回転軸方向である。定着ローラー24の前端部には、駆動ギア47が固定されている。
【0046】
定着ベルト25(
図2等参照)は、前後方向に長い円筒状を成している。定着ベルト25は、例えば、基材層と、この基材層に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層(表面層)と、によって構成されている。定着ベルト25の基材層は、例えばニッケル電鋳等の金属によって構成されている。定着ベルト25の弾性層は、例えばシリコンゴムやシリコンスポンジによって構成されている。定着ベルト25の離型層は、例えばPFA、PTFE等のフッ素樹脂によって構成されている。
【0047】
定着ベルト25は、定着ローラー24の外周面に固定されており、定着ローラー24を介して第1支持部30に回転可能に支持されている。定着ベルト25は、前後方向に延びる回転軸Xを中心に定着ローラー24と一体に回転可能に設けられている。つまり、本実施形態では、前後方向が定着ベルト25の回転軸方向である。
【0048】
図5等に示されるように、定着ベルト25の外周面には、用紙(例えば、A3サイズの用紙)が通過する通紙領域R1と、通紙領域R1の前後両側(通紙領域R1外)に設けられ、用紙が通過しない非通紙領域R2と、が形成されている。なお、
図5では、通紙領域R1の前部と前側の非通紙領域R2のみが表示されている。
【0049】
加圧ローラー26(
図2等参照)は、前後方向に長い円筒状を成している。加圧ローラー26は、定着ベルト25に圧接しており、定着ベルト25と加圧ローラー26の間には定着ニップ48が形成されている。加圧ローラー26は、基材層と、この基材層に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層(表面層)と、によって構成されている。加圧ローラー26の基材層は、例えばステンレスやアルミニウム等の金属によって構成されている。加圧ローラー26の弾性層は、例えばシリコンゴムやシリコンスポンジによって構成されている。加圧ローラー26の離型層は、例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂によって構成されている。
【0050】
図3に示されるように、加圧ローラー26の前後両端部は、第2軸受部50を介して第2支持部31の前端壁49と後端壁(図示せず)に取り付けられている。これにより、加圧ローラー26が第2支持部31に回転可能に支持されている。加圧ローラー26は、前後方向に延びる回転軸Yを中心に回転可能に設けられている。つまり、本実施形態では、前後方向が加圧ローラー26の回転軸方向である。
【0051】
図2に示されるように、分離部材27は、用紙の搬送方向(
図2の矢印Z参照)において定着ベルト25の下流側に配置されている。分離部材27は、前後方向に長い形状を成している。なお、
図5、
図6では、分離部材27の前後一対の構成要素については、前側の構成要素のみが表示されている。
【0052】
図5、
図6等に示されるように、分離部材27は、支持板51と、支持板51の右側部に支持される分離板52と、支持板51の前後両端部に固定される当接片53と、支持板51の前後両端部に固定される被押圧片54と、を備えている。
【0053】
分離部材27の支持板51は、前後方向に長い形状を成している。支持板51は、例えば板金によって構成されている。支持板51は、本体部55と、本体部55の前後両端部から左下側に向かって屈曲される側板部56と、本体部55の上端部から左下側に向かって屈曲される屈曲部57と、を備えている。
【0054】
図5等に示されるように、支持板51の本体部55の下縁部の前端部には、係合凹部60が上方に向かって設けられている。支持板51の本体部55の前端部と後端部には、第1位置決め穴61が設けられている。支持板51の本体部55の前端部と後端部には、第1位置決め穴61の前後方向内側に第1挿通穴62が設けられている。
【0055】
図6等に示されるように、支持板51の各側板部56には、円形のネジ穴63が前後方向に沿って設けられている。
図7等に示されるように、支持板51の屈曲部57の上側には、規制部64が設けられている。規制部64は、例えば、定着フレーム23に設けられている。規制部64は、僅かな隙間を介して支持板51の屈曲部57に対向している。
【0056】
図5等に示されるように、分離部材27の分離板52は、前後方向に長い平板状を成している。分離板52は、溶接などの手段によって支持板51の本体部55の右側面に固定されている。分離板52は、板金などによって構成されている。分離板52の前端部と後端部には、支持板51の本体部55の第1位置決め穴61と対応する位置に第2位置決め穴65が設けられている。第2位置決め穴65の前後方向内側には、支持板51の本体部55の第1挿通穴62と対応する位置に第2挿通穴66が設けられている。
図7に示されるように、分離板52の先端部67(下端部)は、定着ベルト25の通紙領域R1と間隔dを介して対向している。
【0057】
分離部材27の当接片53は、固定部68と、固定部68の下端部から右下方に向かって延出する当接部69と、を備えている。固定部68には、第3挿通穴71が設けられている。そして、支持板51の本体部55の第1挿通穴62と分離板52の第2挿通穴66と固定部68の第3挿通穴71を貫通するビス72によって当接片53が支持板51に固定されている。
図5等に示されるように、当接部69は、定着ベルト25の非通紙領域R2に当接している。
【0058】
図8等に示されるように、分離部材27の前側の被押圧片54は、前後方向に沿って延びている。分離部材27の前側の被押圧片54は、ネジ部73と、ネジ部73の前側(前後方向一側)に設けられる被押圧部74と、ネジ部73の後側(前後方向他側)に設けられる取付部75と、を備えている。
【0059】
前側の被押圧片54のネジ部73は、分離部材27の支持板51の前側の側板部56に設けられたネジ穴63(
図6参照)に螺合している。これにより、前側の被押圧片54が分離部材27の支持板51に固定されている。
【0060】
前側の被押圧片54の被押圧部74は、ネジ部73から前後方向に沿って前側に延びている。被押圧部74の外径は、ネジ部73の外径よりも大きい。
図6等に示されるように、被押圧部74は、定着フレーム23の第1支持部30の前壁部32に設けられた貫通穴42に貫挿されている。これにより、被押圧片54を中心に回転可能な状態で分離部材27が定着フレーム23に支持されている。被押圧部74の前端部は、定着フレーム23の第1支持部30の前壁部32よりも前方に突出している。被押圧部74の前端部には、前側に向かって半球状に湾出する湾出部76が設けられている。
【0061】
図8等に示されるように、前側の被押圧片54の取付部75は、ネジ部73から前後方向に沿って後側に延びている。取付部75の外径は、ネジ部73の外径よりも小さい。
【0062】
後側の被押圧片(図示せず)は、前側の被押圧片54と前後対称形状を成している。後側の被押圧片については説明を省略する。
【0063】
図6等に示されるように、移動機構28は、付勢部材77と、付勢部材77の前側に設けられる押圧部材78と、を備えている。
【0064】
付勢部材77は、1本の線材から成るねじりコイルバネによって構成されている。付勢部材77は、巻き線部84と、巻き線部84から上方に向かって延びる第1腕部85と、巻き線部84から下方に向かって延びる第2腕部86と、を備えている。
【0065】
付勢部材77の巻き線部84は、分離部材27の前側の被押圧片54に設けられた取付部75の外周に取り付けられている。付勢部材77の第1腕部85の上端には、第1フック部87が設けられている。第1フック部87は、定着フレーム23の第1支持部30の前壁部32に設けられた取付穴44に貫挿され、前壁部32の前面に当接している。付勢部材77の第2腕部86の下端には、第2フック部88が設けられている。第2フック部88は、分離部材27の支持板51の本体部55に設けられた係合凹部60に係合している。
【0066】
以上のような構成により、付勢部材77は、分離部材27を前側(前後方向一側)に付勢すると共に、当接片53の当接部69を定着ベルト25の非通紙領域R2に押し付ける回転方向(
図5の矢印A参照)に分離部材27を付勢している。
【0067】
図6等に示されるように、押圧部材78は、分離部材27の前側(前後方向一側)に配置されている。分離部材27と押圧部材78の間には、定着フレーム23の第1支持部30の前壁部32が配置されている。
【0068】
図9等に示されるように、押圧部材78は、軸部材79の外周に取り付けられており、軸部材79の軸心Sを中心に回転可能に設けられている。なお、押圧部材78は、軸部材79と一体に回転しても良いし、軸部材79に対して回転しても良い。
図5に示されるように、軸部材79の後端部は、定着フレーム23の第1支持部30の前壁部32に設けられた軸受穴43に取り付けられている。
【0069】
図8等に示されるように、押圧部材78の後面(前後方向他側の面)には、カム部80が形成されている。カム部80は、円環状を成すと共に、周方向に沿って前後方向の位置が連続的に変化している。以下、カム部80のうちで最も後側に突出している部分をカム部80の突出部81と称し、カム部80のうちで最も前側に退避している部分をカム部80の退避部82と称する。カム部80の左側部(
図8の図面上は右側部)は、分離部材27の前側の被押圧片54に設けられた被押圧部74の湾出部76に当接している。
【0070】
押圧部材78の外周部には、従動ギア83が設けられている。
図3に示されるように、従動ギア83は、定着ローラー24の前端部に固定された駆動ギア47と噛合している。
【0071】
次に、定着装置19のIHユニット22(
図2参照)について説明する。IHユニット22は、複写機本体2に固定されている。IHユニット22は、ケース部材91と、ケース部材91内に収納され、定着ベルト25の外周に沿って円弧状に設けられるIHコイル92(熱源)と、ケース部材91内に収納され、IHコイル92の外周に沿って設けられるアーチコア93と、を備えている。
【0072】
上記のように構成された定着装置19において、用紙にトナー像を定着させる際には、駆動源(図示せず)によって加圧ローラー26を回転させる。このように加圧ローラー26を回転させると、加圧ローラー26に圧接する定着ベルト25が加圧ローラー26とは逆方向に回転する。また、用紙にトナー像を定着させる際には、IHコイル92によって定着ベルト25を誘導加熱する。この状態で、未定着のトナー像が転写された用紙が定着ニップ48を通過すると、用紙とトナー像が加熱及び加圧されて用紙にトナー像が定着される。定着ニップ48を通過した用紙は、分離部材27の分離板52によって定着ベルト25の通紙領域R1から分離される。
【0073】
また、上記のように定着ベルト25が回転すると、定着ベルト25と固定された定着ローラー24も回転し、
図3に矢印Bで示されるように、定着ローラー24の前端部に固定された駆動ギア47も回転する。このように駆動ギア47が回転すると、
図3に矢印Cで示されるように、駆動ギア47に噛合するアイドルギア34が駆動ギア47とは逆方向に回転する。このようにアイドルギア34が回転すると、
図3に矢印Dで示されるように、アイドルギア34に検知用ギア37を噛合させる被検知部材36がアイドルギア34とは逆方向に回転する。このように被検知部材36が回転すると、被検知部材36のパルス板38に設けられた複数個の被検知片39が検知部40の発光部と受光部の間を通過する。これに伴って、検知部40が被検知部材36の回転を検知する。このような構成を採用することにより、定着ベルト25が回転しているか否かを確実に判断することが可能となる。
【0074】
ところで、本実施形態の定着装置19では、ウォームアップ時及び印字動作時に、定着ベルト25の非通紙領域R2に分離部材27の当接片53の当接部69が常時一定の荷重で当接している。このような構成を採用する場合に、定着ベルト25の非通紙領域R2の一部に当接片53の当接部69が当接し続けると、定着ベルト25の非通紙領域R2の一部の離型層、弾性層、基材層が順次摩耗していき、定着ベルト25の破断に繋がる恐れがある。そこで、本実施形態では、以下のようにして定着ベルト25の破断を防止している。
【0075】
上記のように定着ベルト25の回転に伴って駆動ギア47が回転すると、
図3に矢印Eで示されるように、駆動ギア47に従動ギア83を噛合させる押圧部材78が駆動ギア47とは逆方向に回転する。ある回転位置に押圧部材78がある時には、
図6に示されるように、押圧部材78のカム部80の退避部82が分離部材27の前側の被押圧片54の被押圧部74に当接している。この時には、付勢部材77の付勢力によって分離部材27が前側に移動している。
【0076】
これに対して、上記の回転位置から押圧部材78が180度回転すると、
図10に示されるように、押圧部材78のカム部80の突出部81が分離部材27の前側の被押圧片54の被押圧部74に当接する。これに伴って、付勢部材77の付勢力に抗して押圧部材78のカム部80が分離部材27の前側の被押圧片54の被押圧部74を後側(前後方向他側)に押圧し、分離部材27が後側に移動する。
【0077】
一方で、押圧部材78が更に180度回転すると、
図6に示されるように、押圧部材78のカム部80の退避部82が分離部材27の前側の被押圧片54の被押圧部74に再び当接する。これに伴って、付勢部材77の付勢力によって分離部材27が前側に移動する。以上のような動作が繰り返されることで、分離部材27が前後方向に沿って連続的に往復移動する。
【0078】
本実施形態ではこのように、移動機構28によって分離部材27を前後方向に沿って連続的に往復移動させている。そのため、定着ベルト25の非通紙領域R2に対する当接片53の当接部69の当接位置を前後方向にずらすことができる。これに伴って、当接片53の当接部69との摺擦によって定着ベルト25の非通紙領域R2の一部が局所的に摩耗するのを抑制することができ、定着ベルト25の長寿命化を図ることが可能となる。また、分離部材27の分離板52が前後方向に沿って往復移動することになるため、分離板52の一部に未定着トナーが局所的に堆積するような事態を回避しやすくなり、JAM(紙詰まり)の発生を抑制することが可能となる。
【0079】
また、分離部材27の分離板52が定着ベルト25の通紙領域R1と間隔dを介して対向している。このような構成を採用する場合、定着ベルト25の通紙領域R1から安定して用紙を分離するためには、分離部材27の分離板52と定着ベルト25の通紙領域R1の位置関係を安定させて、分離部材27の分離板52と定着ベルト25の通紙領域R1の間隔dを精度良く維持することが重要である。この点、本実施形態では、分離部材27の当接片53が定着ベルト25の非通紙領域R2に当接している。そのため、分離部材27の分離板52と定着ベルト25の通紙領域R1の位置関係を安定させることができ、分離部材27の分離板52と定着ベルト25の通紙領域R1の間隔dを精度良く維持することが可能となる。
【0080】
また、移動機構28は、前側(前後方向一側)に分離部材27を付勢する付勢部材77と、付勢部材77の付勢力に抗して後側(前後方向他側)に分離部材27を押圧する押圧部材78と、を備えている。このような構成を採用することにより、簡易な構成によって分離部材27を前後方向に沿って往復移動させることが可能となる。
【0081】
また、押圧部材78の後面(前後方向他側の面)には、押圧部材78の回転に伴って分離部材27を押圧するカム部80が設けられている。このような構成を採用することにより、簡易な構成を用いて分離部材27を押圧することが可能となる。
【0082】
また、押圧部材78の外周部には、定着ベルト25の回転に伴って回転する駆動ギア47と噛合する従動ギア83が設けられている。このような構成を採用することにより、定着ベルト25の回転に伴って押圧部材78を回転させることが可能となる。そのため、押圧部材78を回転させるための専用の駆動源が不要となり、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0083】
また、カム部80は、円環状を成すと共に、周方向に沿って前後方向の位置が連続的に変化している。このような構成を採用することにより、分離部材27の往復移動の速度が急激に変化するのを回避することが可能となる。
【0084】
また、分離部材27は、分離板52及び当接片53が固定される支持板51と、支持板51に固定され、押圧部材78に押圧される前側の被押圧片54と、を備えている。このような構成を採用することにより、押圧部材78によって分離部材27を確実に押圧することが可能となる。
【0085】
また、分離部材27の前側の被押圧片54は、分離部材27の支持板51に設けられたネジ穴63に螺合するネジ部73と、ネジ部73の前側(前後方向一側)に設けられ、押圧部材78に押圧される被押圧部74と、ネジ部73の後側(前後方向他側)に設けられ、付勢部材77が取り付けられる取付部75と、を備えている。このような構成を採用することにより、前側の被押圧片54を支持板51に容易且つ確実に固定することが可能となる。また、付勢部材77の取付部材を前側の被押圧片54とは別個に設ける場合と比較して、部品点数を削減することが可能となる。
【0086】
また、分離部材27の各被押圧片54の被押圧部74が定着フレーム23の第1支持部30の前壁部32と後壁部(図示せず)に設けられた貫通穴42に貫挿されることで、各被押圧片54を中心に回転可能な状態で分離部材27が定着フレーム23に支持されている。このような構成を採用することにより、分離部材27の回転の支点として各被押圧片54を利用することが可能となり、分離部材27の回転の支点を各被押圧片54とは別個に設ける場合と比較して、部品点数を削減することが可能となる。
【0087】
なお、上記のように分離部材27を回転可能とすると、特に印字率の高い用紙に対して印字動作を行う場合などに、用紙によって分離部材27の分離板52が持ち上げられてしまう可能性がある。このように用紙によって分離板52が持ち上げられると、分離板52と定着ベルト25の通紙領域R1の間に用紙が侵入して、JAM(紙詰まり)が引き起こされる恐れがある。
【0088】
しかしながら、本実施形態では
図7に示されるように、規制部64によって分離部材27の回転範囲が規制されている。そのため、分離板52と定着ベルト25の通紙領域R1の間に用紙が侵入してJAM(紙詰まり)が発生するような事態を回避することが可能となる。
【0089】
また、付勢部材77は、定着ベルト25の非通紙領域R2に当接片53の当接部69を押し付ける回転方向に分離部材27を付勢する部材を兼ねている。このような構成を採用することにより、前側(前後方向一側)に分離部材27を付勢するための部材と定着ベルト25の非通紙領域R2に当接片53の当接部69を押し付けるための部材を別個に設ける場合と比較して、部品点数を削減することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態では、IHコイル92を熱源として使用しているため、定着ベルト25の基材層を直接的に誘導加熱することが可能となる。そのため、定着ベルト25の加熱速度を速くして、ウォームアップタイムを短縮することが可能となる。
【0091】
本実施形態では、ねじりコイルバネを付勢部材77として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、コイルバネや板バネ等のねじりコイルバネ以外のバネを付勢部材77として用いても良い。また、ゴム部材などのバネ以外の部品を付勢部材77として用いても良い。
【0092】
本実施形態では、IHコイル92を熱源として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、ハロゲンヒーターやセラミックヒーター等のヒーターを熱源として用いても良い。
【0093】
本実施形態では、定着ベルト25を定着部材として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、定着ローラーを定着部材として用いても良い。
【0094】
本実施形態では、複写機1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、プリンター、ファクシミリ、複合機等の複写機1以外の画像形成装置に本発明の構成を適用しても良い。