(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非接触ICメディアへの電子情報の書き込み及び当該電子情報の読み出しを阻害しない材質の弾性素材で支持体を製造するとともに、この支持体に前記非接触ICメディアを組み込む支持体製造工程と、
第1の半球面を有する第1の金型に、前記非接触ICメディアを収容した支持体を装着するとともに、この支持体と前記第1の半球面との空隙部に、磁石の影響を受けずにほぼ全表面にわたって電磁波を透過させる9.0[g/cm3]以上の高比重粉末と熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種以上のものとを主とする混合物を注入して加熱溶融することにより、平面部を有する略半球状の第1構成体を製造する第1構成体製造工程と、
前記第1の半球面と組み合わせることにより球形をなす第2の半球面を有する第2の金型を前記第1構成体に被せ、前記支持体と前記第2の半球面との空隙部に、前記混合物を注入して加熱溶融することにより、その重心が前記支持体の重心と一致する略球状の球本体を製造する球本体製造工程と、
を有する遊技球の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ICタグを内蔵した特殊遊技球の用途等については詳しく紹介されているが、特殊遊技球がどのような工程で製造されるのか、特に、ICタグの内蔵の仕方については開示されていない。特許文献1では、特殊遊技球の構成材料は、ステンレス鋼やアルミニウム合金とされているが、これらは電磁波を透過させないので、ICタグが球外の通信装置と通信を行うためには、球外面をアンテナとして利用するしかない。そうすると、球外面と球内のICタグとの導通が必要となるため、構造が複雑となり、量産することができない。表面にクロムメッキ加工した場合も同様である。そのため、球表面をアンテナにする等の特別の工夫が必要となるが、そうすると、製造工程が複雑となり、量産することができない。
【0005】
また、弾球遊技機用の遊技球は、メダル状の遊技媒体と異なり、遊技時の姿態が常に変化する。また、打球の際、あるいは釘等で反射される際に、常に衝撃を受け、アンテナや内蔵のICタグが壊れやすくなる。全体質量の制約もある。さらに、遊技球が真球状でなかったり、重心が球の中心からずれていたりすると、予期しない動きを招くため、遊技場において使用できなくなる場合がある(現在のパチンコ球は、真球状の無垢の鋼とされている。)。そのため、この全体質量の制約のもとで、遊技球内にICタグを組み込み、球外の通信装置と安定的に通信する環境を作ることは、一般的には困難である。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために、球外の外部装置との間で、高精度で安定的な電子情報の受け渡しができる非接触ICメディアを搭載した遊技球の量産を可能にする、製造方法を提供することを、主たる課題とする。
本発明の他の課題は、球外の外部装置との間で、高精度で安定的な電子情報の受け渡しが可能な遊技球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が提供する遊技球の製造方法は、以下の工程を有する方法である。
(1)非接触ICメディアへの電子情報の書き込み及び当該電子情報の読み出しを阻害しない材質の弾性素材で支持体を製造するとともに、この支持体に前記非接触ICメディアを組み込む支持体製造工程、
(2)第1の半球面を有する第1の金型に、前記非接触ICメディアを収容した支持体を装着するとともに、この支持体と前記第1の半球面との空隙部に、磁石の影響を受けずにほぼ全表面にわたって電磁波を透過させる9.0[g/cm
3]以上の高比重粉末と熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種以上のものとを主とする混合物を注入して加熱溶融することにより、平面部を有する略半球状の第1構成体を製造する第1構成体製造工程、
(3)前記第1の半球面と組み合わせることにより球形をなす第2の半球面を有する第2の金型を前記第1構成体に被せ、前記支持体と前記第2の半球面との空隙部に、前記混合物を注入して加熱溶融することにより、その重心が前記支持体の重心と一致する略球状の球本体を製造する球本体製造工程。
前記球本体をその表面に金属光沢の電磁波透過膜を積層して真球状に成形する膜形成工程を有しても良い。
【0008】
「略半球状」とは厳密に半球状であることまで要求されないことをいう。「略球状」についても同様である。つまり、その表面に若干の突起、窪み等のデザインがあるようなものも、略半球状又は略球状である。この製造方法によれば、磁石の影響を受けずにほぼ全表面にわたって電磁波を透過させる9.0[g/cm
3]以上の高比重粉末と熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種以上のものとを主とする混合物を注入して加熱溶融することにより第1構成体及び球本体を製造することができるので、球表面にアンテナを設けたり、そのアンテナと内部の非接触ICメディアとに導通手段を講ずる必要が無くなり、製造工程が著しく簡略化される。また、磁石の影響を受けないので、磁石を使用した不正を防止することができる上に、全方位に亘って電磁波を送受信できるので、外部装置との間で、安定的な電子情報の受け渡しが可能となる。外部からの衝撃は、支持体で緩和されるので、非接触ICメディアの破壊を防止することができる。
【0009】
前記第1構成体製造工程では、例えば、前記第1構成体の平面部に、その基端部よりも先端部のサイズが大きい突起体、又は、その開口端よりも底面部のサイズが大きい窪みを形成する。そして、前記球本体製造工程は、前記混合物を前記突起体又は前記窪みに注入することにより、第1構成体を一体化した球本体を製造する。これにより、第1構成体と残部の構成体との離脱を防止することができる。
【0010】
また、前記支持体を、前記混合物と同じ材質で構成することにより、球本体の製造時に、支持体が第1構成体等と一体化され、非接触ICメディアを安定的に固定することができる。
【0011】
ある実施の態様では、前記支持体は、前記非接触ICメディアを収容するメディア収容部と、各々その基端が前記メディア収容部に接合され又は当該メディア収容部と一体に形成され、その先端が前記球本体の表面に向かって放射状に延びる複数の支持足とで構成されており、前記複数の支持足は、その先端から前記メディア収容部の中央部までの重量が、各々他の支持足と略均等になる形状に成形されている。
このような態様の製造方法では、支持足を位置決めの指標として用いることができるので、第1構成体への支持体の取付を正確且つ簡略なものにすることができる。
他の実施の態様では、前記支持体は、その角部が前記球本体の表面と一致するサイズの略立方体状に成形され、その重心部に前記非接触ICメディアを収容するためのメディア収容部が形成されている。
このような態様の製造方法では、いわゆる「内径角決め」によって支持体を第1構成体に装着することができるので、製造工程での重心ずれを防止することができる。
【0012】
前記膜形成工程は、例えば、前記球本体の表面に加飾用の不連続膜を形成し、さらにこの不連続膜上に、透光色の樹脂膜を積層した後、所定温度で加圧する工程を含む。これにより、内部の非接触ICメディアとの間の電磁波の受け渡しを阻害することなく、遊技球を所望の色に加飾することができる。また、第1構成体の離脱を防止することができる。
【0013】
ある実施の態様では、前記膜形成工程は、前記樹脂膜と同じ素材で前記球本体を収容する、窪みを有する半球殻形状のカバーを予め製造し、このカバーと前記球本体とを第3の半球面を有する第3の金型に装着して溶融状態の前記樹脂膜と同じ素材を注入することにより、前記第3の半球面と前記球本体のカバーで覆われていない部分及び前記窪みの部分に生じる空隙に樹脂膜を形成する。
このような態様の製造方法では、球本体を、半球殻形状のカバーを付した状態で第3の金型に装着し、溶融状態の樹脂膜と同じ素材を挿入することで、球本体の表面に均一な厚みの膜を容易に形成することができる。
【0014】
本発明の遊技球は、弾球遊技機に使用される遊技球であって、磁石の影響を受けずにほぼ全表面にわたって電磁波を透過させる9.0[g/cm
3]以上の高比重粉末と熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種以上のものとを主成分とする混合物で構成された略球状の球本体を有し、前記球本体の中央部には、球外の外部装置との間で電子情報の受け渡しを行う非接触ICメディアが、電磁波を透過させる弾性部材で製造された支持体を通じて固定されており、前記非接触ICメディアは、互いに直交する2面に形成されたアンテナパタンを含み、前記支持体の重心部が、前記球本体の重心部と一致する遊技球である。前記支持体は、上述した態様のものを使用することができる。ある実施の態様では、前記球本体の表面に金属光沢の電磁波透過膜が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遊技時に姿態が変化しても、球外の外部装置との間で、高精度で安定的な電子情報の受け渡しができる非接触ICメディアを搭載した遊技球を提供することができる。
本発明の遊技球は、圧延等を伴う従来の鋼製の遊技球と異なり、主たる工程が射出成形により実現することができるので、量産が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
[構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る遊技球の構造説明図である。この遊技球1は、例えば封入循環式のパチンコ遊技に使用される。サイズおよび質量は、鋼製の既存のパチンコ球と同等のものである。すなわち、国家公安委員会規則に従い、直径11[mm]で、5.4[g]以上5.7[g]以下のものである。一般的な鋼(例えば鉄あるいはステンレス)から成る既存のパチンコ球と大きく異なるのは、球本体11が、ほぼ全表面にわたって電磁波を透過させ且つ磁石の影響を受けない高比重材で製造される点、球本体11における略等重心点の部位、すなわち略中心部に、支持体12aを通じて非接触ICメディアの一例となるRFID(Radio Frequency IDentification)12が組み込まれ、固定されている点、球本体11の表面に電磁波透過膜、本例では2層構造の膜体13,14,15a,15bが形成されている点である。
「略等重心点」,「略中心部」とは、厳密に等重心点、中心部であることまで要求されないことをいう。
【0018】
既存の遊技球(鉄又はステンレス)の比重は約「7」なので、同じ材料の遊技球の中心部に非接触ICメディアを組み込むと、直径11[mm]では、全体質量は必ず5.4[g]未満となり、上記規則にしたがうことができない。
また、既存の遊技球(鉄又はステンレス)は、電磁波の透過を遮断する。表面にクロムメッキ加工した場合も同様である。そのため、球表面をアンテナにする等の特別の工夫が必要となる(特許文献1参照)。そうすると、製造工程が複雑となり、量産することができない。そこで、本実施形態の遊技球1では、球本体11を、全体質量の調整が容易で、ほぼ全表面にわたって電磁波を透過させ且つ磁石の影響を受けない高比重粉末とその固化材との混合物で製造することとした。
【0019】
混合物を組成する高比重粉末としては、タングステン粉末を用いることができる。タングステンそれ自体は、比重「19.3」の金属であるが、電磁波シールド効果、すなわち導電性、透磁率が、鉄やニッケルよりも格段に低い非磁性材料でもある。また、タングステンは、化学的にも非常に安定している。そのため、タングステンを粉末にして、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種以上のものを固化材としても、化学的な影響を受けない。
【0020】
固化材は、例えば、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、ポリエステル、ポリフェレニンサルファイドあるいはABS樹脂等を用いることができる。熱可塑性エラストマーには、例えば、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系、アイオノマー系がある。
【0021】
本実施形態では、タングステン粉末を、完成品の全体質量が上記規則に従うものとなる量に調合した上で、上記固化材とを均一に混合し、これにより得られる混合物を加熱、溶融、成形、固化することにより、球本体11を形成することとした。
【0022】
非接触ICメディアは、例えばICメモリ及びアンテナを有する非接触式のメディアであり、例えば、所定形状の支持体12aにより支持されるRFID12である。RFID12は、好ましくはパッシブ型のRFIDである。
【0023】
球本体11自体は、高比重材(粉末+固化材)の色なので、本実施形態では、その全表面に金属光沢をもたせるための不連続膜13が、第1層の膜体として形成される。この不連続膜13は、非導通で電磁波を透過させる金属薄膜、例えば錫やインジウムであり、約30[μm]の厚みのものである。
【0024】
不連続膜13は、さらに第2層の膜体となる樹脂カバー14及び樹脂膜15a、15bにより被覆されている。上述したように不連続膜13は約30[μm]の薄膜なので、遊技中の剥離を防止するために、第2層の膜体が必要となる。
樹脂カバー14及び樹脂膜15a、15bは、いずれも同じ材料の透明硬質樹脂である。樹脂カバー14は、透光色、例えば透明の略半球殻形状のものであり、殻の外側には、
図2に例示される形状の凸部14aが形成されている。凸部14aは、樹脂膜15aの厚みを、全表面にわたって均一にするためのガイドとして使用される。不連続膜13が形成された球本体11は、この殻の内側の空間に収容される。つまり、樹脂カバー14は、遊技球1を製造するときの球本体11の位置決め、つまり、完成後に球本体11が膜体の中央部となるように、その位置を固定するために用いられる。そのため、樹脂カバー14は、複数存在しても良い。
【0025】
樹脂カバー14は、望ましくは、縁部が樹脂膜15bとの接触部分の面積が大きくなるように、複雑な形状に成形される。
図2の例では、樹脂カバー14の縁部が波形に形成されているが、この形状は任意であって良い。
【0026】
図1に戻り、樹脂膜15a、15bは、樹脂カバー14に、不連続膜13が形成された球本体11が装着された後に形成される。樹脂膜15aは、樹脂カバー14の凸部14aの高さに応じた高さまで形成される。一例として、樹脂カバー14は、凸部14a部分の厚さを0.5[mm]、凸部14a以外の部分の厚さを0.15[mm]にする場合、樹脂膜15aの厚さは、0.35[mm]とする。樹脂膜15bの厚さは、樹脂カバー14と樹脂膜15aとを足した厚さである0.5[mm]に形成する。
【0027】
樹脂カバー14及び樹脂膜15a、15bが透明の同じ材料により構成されるため、不連続膜13による金属光沢はそのまま維持される。その結果、遊技球1は、従来の遊技球と同様に、金属光沢を持つ球体となる。
また、図中では説明のために樹脂カバー14と樹脂膜15a、15bとを分けているが、完成品ではこの分け目がなく、遊技球1が樹脂により被覆されたものとなる。
【0028】
遊技球1は、このような構成により、例えば、高比重粉末と固化材との混合物が密度9.0g/cm
2以上で、直径11[mm]、重さが5.4[g]以上5.7[g]以下の球として構成される。
【0029】
次に、遊技球1に組み込まれるRFID12について説明する。
図3(a)はRFID12の断面図、同(b)は同(a)と直交する方向に切断したときの断面図、同(c)はRFID12に発生する磁界の様子を示す図である。
【0030】
RFID12は、電気的絶縁性を有する薄い矩形状の筐体123中に、IC(半導体集積回路)チップ121と、同心円盤状のアンテナコイル122とが、プリント回路基板等を介さずに、接着剤等で接着固定されて形成される。
筐体123は、耐熱性で、電磁波を透過させ且つ磁石の影響を受けない素材で構成されている。アンテナコイル122は、銅線が単線巻きで径方向に多重層をなして同心状に巻かれており、そのインダクタンスは、周波数13.56[MHz]となるように設計される。この周波数の電磁波は、指向性が比較的ブロードなので、広い範囲(広角)の読み取りに向く。このアンテナコイル122に発生する磁界Hは、概ね
図3(c)に示されるようになる。
【0031】
ICチップ121には、
図4に示されるとおり、アンテナコイル122に接続される送受信回路1211、制御部となるCPU1212、不揮発性のメモリ1213及びコンデンサ1214が設けられている。図示しない外部の通信装置(例えばリーダライタ)から発信された信号は、送受信回路1211を介してCPU1212に伝達される。電力はコンデンサ1214に蓄電され、動作電源となる。このように、本例のRFID12は、パッシブ型のRFIDである。そのため、電池切れの心配がなく、送信電力も微弱であるため、混信も抑制される。
なお、コンデンサ1214が無く、通信装置から連続的にICチップ121に電力が供給される構成であっても良い。
【0032】
メモリ1213には、CPU1212が動作するための各種プログラムや固有のタグ情報を含む電子情報が記録される。CPU1212は、このメモリ1213に格納されたプログラムに従って各種制御動作を行う。
【0033】
このようなRFID12はサイズが小さいので、球本体11に内蔵される支持体12aへの収容が可能である。
図5は、RFID12を収容する支持体12aの一例を示す説明図である。
図5(a)はRFID12及び支持体12aの各々の外観図、同(b)は、RFID12を支持体12aに装着したときの外観図である。
【0034】
支持体12aは、RFID12へのデータ書込等に影響を与えない弾性素材、例えばPPSU樹脂やポリイミド等の耐熱性樹脂で構成される。重量調整が必要となる場合は、タングステン粉末を混合させることもできる。
【0035】
この支持体12aは、メディア収容部124と、各々その基端がメディア収容部124に接合又は一体形成され、その先端がメディア収容部124から放射状に延びる複数の支持足125〜128とを備えたものとなっている。メディア収容部124は、RFID12の筐体123の形状に適合する収容空間を有している。支持足125〜128は、その先端からメディア収容部124までの重量が、各々他の支持足と略均等になる形状に形成される。
【0036】
支持体12aが弾性素材で構成されているので、メディア収容部124を弾性変形させるだけで、RFID12を収容空間に収容させることができる。また、支持足125〜128で位置決めをしながら球本体11に組み込むことができる。そのため、RFID12の組み込む際の作業性を高めることができる。球本体11の直径は10[mm]程度であり、重心のバランスが多少でもずれると、遊技場において遊技球1として使用できなくなる場合があることから、作業時における支持体12aの果たす意義はきわめて大きいものである。
【0037】
[遊技球の製造方法]
次に、上記のように構成される遊技球1の製造方法の一例を、
図6及び
図7a〜
図7hの工程説明図により説明する。
本実施形態では、まず、RFID12を組み込んだ球本体11を製造する。球本体11の製造手法は様々であるが、本実施形態では、平面部を有する略半球状の第1構成体を製造し、その平面部に、支持体12aに収容(支持)されたRFID12を配備した後、その第1構成体の上に、もう一つの略半球体を形成していくことにより、球本体11を製造する場合の例を示す。
【0038】
第1構成体の製造には、専用の金型16aを用いる。この金型16aは、半球形の窪み部161、すなわち、第1の半球面が形成されている。窪み部161は、直径が球本体11の直径と同じに形成される。窪み部161からは、金型16aの縁部に向けて、溝部162が形成されている。この溝部162は、窪み部161(半球面)全体に、高比重粉末とその固化材との混合物を注入するためのものであるが、支持体12aの支持足を載置する際の位置決めガイドとしても機能する。この溝部162から溶融した混合物を流し込み、所定温度で加熱溶融した後、冷却させて固化させる(S10、
図7a)。
【0039】
混合物は、タングステン粉末を、完成品の全体質量が上記規則に従うものとなる量に調合した上で、上記固化材とを均一に混合し、これにより得られる混合物を加熱、溶融、成形、固化することにより、球本体11の一部である第1構成体を形成する。
【0040】
次に、第1構成体の平面部の中央部に、RFID12を支持した支持体12aを配備する(S11、
図7b)。支持体12aの配備は、混合物が完全に固化する前に押し込むようにして行っても良く、また、第1構成体の形成時に支持体12aの形状に適合する凹部を形成しておき、固化後に、その凹部に支持体12aを嵌め込むようにしても良い。また、支持体12aの位置決めを容易にするために、金型16aに、窪み部161から放射状に延びる位置決め用のガイドを設けても良い。ガイドに、支持足125〜128が適正に嵌ることで、支持体12aに収容されたRFID12を、容易に第1構成体の平面の略中央に配置することができる。
【0041】
その後、金型16aと同じ形状となる窪み部、すなわち半球面を有する金型16bを、窪み部161の開口部分が合致するように向かい合わせて、第1構成体の平面部及び支持体12aを覆う(S12)。この状態で、溝部162から混合物を注入する(S13、
図7c)。この混合物は、第1構成体を製造したときのものと同じものである。この混合物を金型16bの窪み部161に注入し、加熱溶融後、冷却して固化させることにより、第1構成体の平面部及び支持体12aがモールドされた、略球体の球本体11が形成される。「略球体」とは、厳密に球体であることまで要求されないことをいう。例えば球本体11の表面に突起や窪み(記号形成等)を設ける場合も、「略球体」となる。
【0042】
なお、金型16aと金型16bとを向かい合わせて配置する際に、溝部162は、必ずしも合致させる必要は無い。合致させない場合には、混合物の注入時に、一方が空気抜き用の穴になり、合致する場合には、溝部162で形成される注入ゲートが大きくなるため、いずれにしても混合物の注入に支障が無いためである。
【0043】
その後、金型16a、16bを取り除く。その際、支持体12aの支持足125〜128が、球本体11から突出する場合には、突出部分を切断する。また、必要に応じて、バリ取りなどの球本体11の整形を行う(S14、
図7d)。
【0044】
このようにして形成された球本体11の表面に、不連続膜13を、例えば蒸着により形成する(S15)。その後、不連続膜13が蒸着された球本体11を樹脂カバー14にセットする(S16、
図7e)。その状態で、樹脂カバー14を樹脂膜形成用の金型17aに装着する(S17、
図7f)。樹脂膜形成用の金型17aは、半球形の窪み部171が形成されている。窪み部171の直径は、遊技球1の直径と同じである。窪み部171からは、金型17aの縁部に向けて、溝部172が形成されている。
【0045】
この金型17aの窪み部171に樹脂カバー14を装着した後、樹脂カバー14と窪み部171aとの間隙に、樹脂カバー14と同じ材料の樹脂を注入する(S18、
図7f)。これにより、樹脂カバー14が装着された側の樹脂15aが形成される。
【0046】
次いで、金型17aと同じ構造の金型17bを、窪み部171の開口部分が合致するように、向かい合わせてセットし、球本体11を覆う(S19)。位置決めが完了した時点で、溝部172を注入ゲートとして樹脂を注入する(S20、
図7g)。これにより、金型17bの窪み部171と球本体11との間隙に樹脂が注入され、不連続膜13の表面の残部に樹脂15bが形成される。
【0047】
なお、金型17aと金型17bとを向かい合わせて配置する際に、溝部172は、必ずしも合致させる必要は無い。合致させない場合には、樹脂の注入時に、一方が空気抜き用の穴になり、合致する場合には、溝部172で形成される注入ゲートが大きくなり、いずれにしても樹脂の注入に支障が無いためである。所定時間経過後、金型17a、17bを取り除くことで、2層構造の膜体が形成された遊技球1が得られる。必要に応じて、バリ取りなどの遊技球1の整形を行う(S21、
図7h)。
【0048】
[記録情報の読取試験]
次に、本実施形態の遊技球1の性能について説明する。本発明者らは、
図8に示す読取試験システムにより、上記のようにして製造した遊技球1に記録されている電子情報の読取試験を試みた。
読取試験システムは、遊技球1を基端部から上部方向へ循環移動させるエレベータM1と、エレベータM1で最上部まで運ばれた遊技球1を下部方向へ案内する搬送路M2と、搬送路M2により搬送された遊技球をエレベータM1の基端部へ案内するガイドM3と、ガイドM3の所定部位に配設された一対の光電センサM4,M5と、遊技球1に記録された電子情報を読み取るアンテナM6およびリーダライタM7と、読み取った電子情報の解析を行う試験装置M8とを有するものである。
光電センサM4,M5は、ガイドM3における遊技球1の通過を検出し、検出結果を試験装置M8に送る。試験装置M8は、この検出結果により読取動作のタイミングを決める。ガイドM3を通過する遊技球1とアンテナM6との距離は、約20[mm]である。
【0049】
読取試験に用いた遊技球1は、球組成(密度8[g/cc])は、タングステン粉末が38[%]、ナイロンが62[%]である。支持体12a及び膜体13,14,15a,15bを含めた重さは5.4[g]であり、予め試験用の電子情報がRFID12に記録されている。
試験装置M8には、参照用の電子情報が記録されており、遊技球1から読み取った試験用の電子情報との一致性を判定することにより、読取率を算定した。
【0050】
この試験システムによる読取試験の結果を
図9に示す。遊技球はすべて同じ混合成分および質量のものである。このように、タングステン粉末を用いた遊技球1は、電磁波を透過させるため、ほぼ100[%]の読取率であった。これにより、リーダライタM7とRFID12との間で、何ら支障なく電子情報の受け渡しを行えることが立証された。
なお、鉄等、既存の鋼製の遊技球は電磁波シールド効果が高いため、たとえその内部にRFIDを組み込んでも、アンテナを露出させない限り、遊技球の外部との間で電磁波の受け渡しは不可能である。
【0051】
[運用例]
上記のようにして製造された遊技球1には、事後的に電子情報の記録あるいは更新が可能である。例えば、図示しないリーダライタで、遊技球1内のRFID12のICチップ121(メモリ1213)に、例えば遊技店の情報、使用する遊技台の情報、1個あたりの球価値、製造年、使用可能期間等を記録させることができる。そして、遊技台内部の遊技球1の搬送路の所定部位にアンテナを近接させておき、リーダライタ等で記録情報を受信して監視するという運用が可能となる。あるいは、リーダライタを内蔵した携帯試験器で遊技台内の遊技球1の電子情報を読み取ってその内容を確認する運用が可能である。
【0052】
これにより、他店からの遊技球の持込みや不正行為を防止したり、交換時期を確認したりすることが容易となる。また、記録させる電子情報を適宜更新することができるので、球価値を代えたり、保守する者の権限情報を埋め込んで認証に用いることも可能となる。
【0053】
[第2実施形態]
図10(a)は、第2実施形態に係る遊技球(球本体)に封入される支持体の外観斜視図、同(b)はその組立説明図、同(c)は球本体に封入した際の球本体の断面図である。
この実施形態による遊技球は、RFIDの支持体が耐熱性及び絶縁性を有する樹脂から成る略立方体状である点が第1実施形態のものと異なる。
この支持体22は、絶縁性樹脂から成る略立方体状のもので、その中央部に第1実施形態で説明したICチップ121を埋め込むとともに、略立方体の6面の少なくとも1つの面、好ましくは2面以上にアンテナパタン222を形成したものである。「略立方体」とは、厳密に立方体である必要がないという意味である。良く知られたサイコロ形状のものが、ここにいう略立方体である。
【0054】
支持体22が略立方体なので、それを埋め込んだ遊技球の重心の偏りが抑制される。また、アンテナパタン222が面上に形成されるので、アンテナパタン222の装着が容易であり、量産性を高めることができる。アンテナパタン222を互いに直交する2面に形成する場合は、電磁気の放射特性が互いに直交するので、電磁波の覆域が拡張する。アンテナパタン222を互いに直交する3面に形成する場合は、ほぼ全方向の指向性を得ることができる。そのため、遊技球3がどのような姿態であっても、ICチップ121に記録された電子情報を読み取ることができる。
【0055】
支持体22にICチップ121を組み込む手順は、まず、
図10(b)に示すように、それを接合すれば略立方体となる一対の三角柱状の支持部品を生成する。その際、一方の支持部品にICチップ121とアンテナパタン222とをモールドし、他方の支持部品には、アンテナパタン222をモールドして、両者を接合したときに、
図10(a)のような構造になるようにすれば良い。
【0056】
なお、略直方体状の2つの支持部品の少なくとも一方にアンテナパタン222と補助エレメントとをモールドし、アンテナコイルが形成された既存のRFIDチップと、補助エレメントおよびアンテナパタン222とを電磁的に結合するようにしても、略立方体状の支持体22を構成することができる。
このような形状の支持体22は、第1実施形態の
図7bの段階で、第1構成体の平面上の略中心に形成される収容空間に収容される。その結果、支持体22は、
図10(c)に示されるように、その重心が球本体21の重心と一致するようになる。
遊技球21の表面に電磁波を透過する膜13,14,15a,15bが形成されることは、第1実施形態と同じである。
また、ICチップ121やアンテナパタン222等を支持する支持体は、正三角形その他の多角形のものであっても良い。
【0057】
[第3実施形態]
図11(a)〜(c)は、第3実施形態にかかる遊技球31の製造工程説明図である。
この遊技球は、それぞれ略半球状となる第1構成体31aと第2構成体31bとで球本体を構成する。第1構成体31aは、その平面に、RFIDを支持する支持体33の収容空間311及び第2構成体32と基端部よりも先端部のサイズが大きい突起312が形成されている。突起312及び収容空間311は、例えば第1実施形態の
図7aの段階で、
図12に示す金型40及び平面加工用治具41を用いることで形成可能である。
【0058】
金型40には、直径が球本体11と同じで深さが球本体11の半径よりもやや大きい略半球型の窪み部43と、窪み部43に混合物を注入するための注入ゲート44とが設けられている。窪み部43の深さは、第1構成体31及び第2構成体に形成される突起312の高さにより決まる。つまり、窪み部43の深さは、球本体11の半径に突起312の高さを加算した値よりもやや深くなるように決められる。
【0059】
平面加工用治具41は、底面の直径が球本体11と同じ略円柱形で、底面に第1構成体31aの収容空間311及び突起312を形成するための凹凸が形成される。第1構成体31の形成時に、平面加工用治具41の底面を、金型40の窪み部43に挿入する。この状態で、注入ゲート44から混合物を注入することで、
図11(a)にその断面が示される第1構成体31aを形成することができる。
【0060】
このように形成された第1構成体31aに、支持体33を配備し、半球型の窪み部を有するもう一つの金型(図示省略)をセットして上記の混合物を注入、加熱溶融、固化させることで、突起312に対応する形状の結合穴322、及び収容空間321が形成された第2構成体32(
図12(b))が形成される。
このように、それぞれ第1構成体31aに突起312、第2構成体31bに結合穴322を形成することにより、突起312及び結合穴322が鉤として機能し、
図12(c)のように固化された状態での第1構成体31aと第2構成体31bとの分離が確実に防止される。
この遊技球31の表面に膜体13,14,15a,15bが形成されることは、第1実施形態と同じである。
【0061】
第1構成体31aの平面形状には、様々な変形例がある。
図13は平面形状が異なる第1構成体51aの例示図である。第1構成体51aの平面には、RFIDが収容される収容空間511及び4個の突起512〜515が形成される。第2構成体については、図示しないが、その平面には、4個の突起512〜515に対応する形状の結合穴が形成されることになる。第1構成体51a上にRFIDの支持体が配備され、さらに第2構成体が形成されることで、球本体が完成する。
【0062】
図14は平面形状が異なる第1構成体61aの例示図である。第1構成体61aの平面には、RFIDが収容される収容空間611、2個の突起612、614及び2個の結合穴613、615が形成される。第2構成体については、図示しないが、その平面には、突起623、625に対応する形状の2個の結合穴が形成されることになる。なお、図示のような構造の球本体の場合、予め第2構成体も製造しておき、第1構成体と接合して球本体を構成することもできる。この場合、突起612、614及び結合穴613、615は、位置決め用のガイドとして機能する。
【0063】
[第4実施形態]
図15〜
図18を参照して、第4実施形態について説明する。この実施形態では、第1実施形態において説明した樹脂カバー14の構造を
図15のように代えたものである。この樹脂カバー70は、第1実施形態の樹脂カバー14から、凸部14aを削除している。
【0064】
この樹脂カバー70に、
図16に示すように球本体11を装着し、さらにこれを
図17に示す金型17aの窪み部(半球面)にセットする。第1実施形態では、ここで、樹脂を注入する工程があるが、第4実施形態では、樹脂カバー70に凸部14aが形成されていないために、この工程が省略される。第4実施形態では、金型17aにセットした後、
図18に示すように、直ちにもう一つの金型17bで球本体11を覆う。その後、樹脂カバー70と同じ材質の樹脂を注入し、熱を加えた状態で加圧することで、樹脂膜を形成する。
このように第4実施形態では、第1実施形態よりも、工程を少なくすることができる。
【0065】
[第5実施形態]
図19は、第5実施形態による遊技球の断面説明図である。破線で示される部分は電磁波透過膜、すなわち、第1実施形態等で説明した不連続膜13,樹脂カバー14,70、樹脂膜15a,15bである。
この実施形態の遊技球は、これまで説明した球本体11,21,31と同様のサイズの球本体51の中央部に、その角部が球本体51の表面と一致するサイズの略立方体状に成形され、その重心部にRFID52を収容するためのメディア収容部55bが形成された略立方体状の支持体55を内蔵したものである。
【0066】
球本体51は、タングステン粉末とその固化材(例えばナイロン)との混合物を射出成形により製造したものである。支持体55もまた、球本体51と同じ材質の一対の収容体55a,55cで構成される。収容体55a,55cは、両者を接合すると略立方体となるものであり、一方の収容体55aの厚みは、他方の収容体55cよりも、メディア収容部55bの厚み分だけ大きくなっている。結局、メディア収容部bは、支持体55の重心部に形成されている。
【0067】
RFID52の球本体51への組み込みは、
図20のようにして行われる。すなわち、支持体55を構成する一方の収容体55aのメディア収容部55cにRFID52を挿入した後、他方の収容体55cで蓋することで、略立方体の支持体55を構成する。この支持体55を金型16aの半球面状の窪み161にセットし、さらに、図示しないもう一つの金型を被せた上で、金型内部の空間に向けて、溝部162を第1実施形態で説明した混合物を注入し、射出成形する。その後、冷却過程を経て、金型16aから取り出す。このようにして球本体51を得る。もう一つの金型を被せる前に、第1実施形態で説明したように第1構成体を製造し、その上にもう一つの金型を被せて、球本体51を製造するようにしても良い。
この球本体51に電磁波透過膜を形成する過程については、第1ないし第4実施形態で説明したとおりである。
【0068】
このような製造方法では、支持体55の角部が球本体51の表面と一致する略立方体なので、その金型55を金型16aの窪み161にセットするだけで位置決めが可能であり、しかも、金型への装着時及び射出成形時における重心部のずれを生じさせない。また、支持体55の材質は、球本体51の残部の材質と同じであり、支持体55の重心部にはRFID52が収容されているため、RFID52は、結局、球本体51の重心部に、正確且つ安定的に位置決めされることとなる。これにより、球本体51の量産化が容易になる。
【0069】
[変形例]
以上の説明は、所要の重量確保のためにタングステン粉末を用い、このタングステン粉末をナイロン等の固化材と混合した場合の例であるが、本発明の遊技球は、主たる成分が非磁性体で且つほぼ全表面にわたって電磁波を透過させる材料で球本体を形成することにより実施が可能なので、他の高比重材料、例えばジルコニア粉末等を固化材と混合した混合物を用いても良い。全体質量が軽くなる場合は、支持体12a,22,33,55を、高比重材料を含有した樹脂により製造し、その際に、高比重材料の含有量を増加させれば良い。
【0070】
また、非接触ICメディアは、RFIDだけでなく、データキャリア等、他の非接触ICメディアで代用することもできる。また、上述した各実施形態では、13.56[MHz]のRFIDを用いた場合の例を示したが、2.45[GHz]あるいは860[MHz]〜960[MHz]のものを用いても良い。但し、前者の周波数を使用周波数とするRFIDは、ICチップの小型化が可能であるが、指向性を持つため、第2実施形態のような全方向性に近い覆域を持つアンテナパタン222にすることが好ましい。第5実施形態の支持体55においても同様である。
また、860[MHz]〜960[MHz]を使用周波数とするRFIDは、指向性を問題にする必要が無くなるが、反面、所定長のアンテナ長を確保する必要があるため、支持体22,55の射出成形の際に、必要な長さのアンテナエレメントを予め生成しておき、これをモールドすることが望ましい。