特許第6019080号(P6019080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019080
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車両の足回り部材の連結構造
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/02 20060101AFI20161020BHJP
   F16B 21/16 20060101ALI20161020BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20161020BHJP
   F16B 7/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B60G7/02
   F16B21/16 B
   F16B2/06 A
   F16B7/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-196790(P2014-196790)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-68602(P2016-68602A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】石田 斗志
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 創
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 芳明
(72)【発明者】
【氏名】小暮 勝
(72)【発明者】
【氏名】塚崎 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】日向 俊行
(72)【発明者】
【氏名】林 憲孝
(72)【発明者】
【氏名】大島 健介
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−208230(JP,A)
【文献】 特開平02−200508(JP,A)
【文献】 実開昭48−041706(JP,U)
【文献】 特開2013−208986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/0
F16B 2/06
F16B 7/00
F16B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる第一足回り部材と第二足回り部材とを連結する構造であって、
前記第一足回り部材に設けられる略円柱外形の連結部と、
略円柱外形の前記連結部の外周面において全周にわたって形成されるボルト溝と、
前記第二足回り部材に形成され、前記連結部を挿入するための略円柱内形の連結穴と、
前記第二足回り部材において前記連結穴と交差する向きであって且つ前記連結穴と連通して形成されるピンチボルト用のボルト孔と、
前記第二足回り部材において前記ボルト孔を分断するとともに前記連結穴に割りを入れるように形成される部材スリットと、
前記第一足回り部材および前記第二足回り部材と別体に形成され、略円柱外形の前記連結部の外周面に被せられる略円筒形状のカラーと、
略円筒形状の前記カラーに形成されるボルト逃げ孔と、
を有し、
前記第一足回り部材と前記第二足回り部材とは、
略円筒形状の前記カラーが被せられた状態において前記連結部が略円柱内形の前記連結穴内に配置され
前記ボルト孔に挿入されるピンチボルトは、前記ボルト孔と前記連結穴とによる連通孔と、前記ボルト逃げ孔とを通じて前記カラーの内側へ突出し、前記カラーとともに前記連結穴に挿入されている前記連結部の前記ボルト溝と係合することにより、
連結される、
車両の足回り部材の連結構造。
【請求項2】
前記第二足回り部材において前記連結穴の奥側に形成される締付用の逃げ穴、を有し、
前記締付用の逃げ穴は、前記連結穴より小径に形成されて、前記連結穴との境界部分にカラー止め用の段差が形成される、
請求項1記載の、車両の足回り部材の連結構造。
【請求項3】
略円筒形状の前記カラーに形成され、該略円筒形状による円筒面を軸方向に沿って分断するカラースリット、を有し、
前記カラースリットは、前記カラーの前記円筒面において前記ボルト逃げ孔と交差する、
請求項1または2記載の、車両の足回り部材の連結構造。
【請求項4】
前記連結穴に挿入される前の略円筒形状の前記カラーの外形は、前記連結穴より大きく形成される、
請求項3記載の、車両の足回り部材の連結構造。
【請求項5】
前記カラーは、前記第二足回り部材の前記連結穴が形成される部分より歪み難い材料で形成される、
請求項から4のいずれか一項記載の、車両の足回り部材の連結構造。
【請求項6】
前記カラーは、前記第一足回り部材の前記連結部と同種の金属材料で形成され、
前記第二足回り部材と接触する前記カラーの外周面には、電蝕対策処理が施される、
請求項1から5のいずれか一項記載の、車両の足回り部材の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の足回り部材の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、たとえば車輪の車軸を支持するアクスルハウジングと車体のフレームまたはクロスメンバとを、リンク部材またはアーム部材により連結する。また、アクスルハウジング、リンク部材またはアーム部材と車体との間に、サスペンションといった緩衝部材を介在させる。
これにより、車輪やアクスルハウジングといった足回り部材は、車体に対して可動可能に支持される。
車輪や足回り部材は、操舵や路面の変化に起因して車輪に入力される様々な方向の力により可動する。その結果、車体は安定化する。
【0003】
また、たとえばアクスルハウジングとリンク部材といった足回り部材の相互の連結には、ボールジョイント部材が用いられる(特許文献1、2)。
ボールジョイント部材は、一般的に、略球形のボールと、ボールに立てて連結される円柱外形のスタッドと、ボールが嵌め合わされる略球形の穴が形成される円柱外形のソケットと、を有する。また、円柱外形のソケットの外周面と、円柱外形のスタッドの外周面とには、その全周にわたってピンチボルトと係合可能な凹溝が形成される。ボールジョイント部材は、円柱外形のソケットまたはスタッドが他の足回り部材の連結穴に挿入され、凹溝が他の足回り部材に取り付けられたピンチボルトと係合することにより、他の足回り部材と連結される。
このようなボールジョイント部材を用いてたとえばアクスルハウジングとリンク部材とを連結することにより、外力の入力によりアクスルハウジングが様々な方向へ可動する際に、アクスルハウジングとリンク部材との間にストレスを生じ難くできる。
なお、このようなボールジョイント部材も足回り部材の一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−115331号公報
【特許文献2】特開2013−208986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車などの車両では、車体の軽量化が望まれている。このため、たとえば従来鉄といった重金属材料を用いて鋳造されていたアクスルハウジングといった足回り部材を、たとえばアルミニウムなどの軽金属材料を用いて形成することが考えられる。
【0006】
しかしながら、アクスルハウジングといった足回り部材を軽金属材料で形成した場合、軽金属材料は重金属材料と比べて柔らかいので、足回り部材としての強度が懸念される。すなわち、車両の足回り部材に対しては、様々な方向から瞬時的に大きな力が入力される場合がある。そして、たとえば軽金属製の柔らかいアクスルハウジングの連結穴に対して、鉄などで形成されたボールジョイント部材のソケットを挿入してこれらを連結した場合、ボールジョイント部材からアクスルハウジングへ向かう入力により、軽金属製のアクスルハウジングが連結穴内において局所的に変形してしまう懸念がある。操舵感や乗り心地に影響を与える懸念がある。
【0007】
このように自動車などの車両では、車両の足回り部材の連結構造を改善することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両の足回り部材の連結構造は、車両に用いられる第一足回り部材と第二足回り部材とを連結する構造であって、前記第一足回り部材に設けられる略円柱外形の連結部と、略円柱外形の前記連結部の外周面において全周にわたって形成されるボルト溝と、前記第二足回り部材に形成され、前記連結部を挿入するための略円柱内形の連結穴と、前記第二足回り部材において前記連結穴と交差する向きであって且つ前記連結穴と連通して形成されるピンチボルト用のボルト孔と、前記第二足回り部材において前記ボルト孔を分断するとともに前記連結穴に割りを入れるように形成される部材スリットと、前記第一足回り部材および前記第二足回り部材と別体に形成され、略円柱外形の前記連結部の外周面に被せられる略円筒形状のカラーと、略円筒形状の前記カラーに形成されるボルト逃げ孔と、を有し、前記第一足回り部材と前記第二足回り部材とは、略円筒形状の前記カラーが被せられた状態において前記連結部が略円柱内形の前記連結穴内に配置され、前記ボルト孔に挿入されるピンチボルトは、前記ボルト孔と前記連結穴とによる連通孔と、前記ボルト逃げ孔とを通じて前記カラーの内側へ突出し、前記カラーとともに前記連結穴に挿入されている前記連結部の前記ボルト溝と係合することにより、連結される。
【0009】
好適には、前記第二足回り部材において前記連結穴の奥側に形成される締付用の逃げ穴、を有し、前記締付用の逃げ穴は、前記連結穴より小径に形成されて、前記連結穴との境界部分にカラー止め用の段差が形成される、とよい。
【0010】
好適には、略円筒形状の前記カラーに形成され、該略円筒形状による円筒面を軸方向に沿って分断するカラースリット、を有し、前記カラースリットは、前記カラーの前記円筒面において前記ボルト逃げ孔と交差する、とよい。
【0011】
好適には、前記連結穴に挿入される前の略円筒形状の前記カラーの外形は、前記連結穴より大きく形成される、とよい。
【0013】
好適には、前記カラーは、前記第二足回り部材の前記連結穴が形成される部分より歪み難い材料で形成される、とよい。
【0014】
好適には、前記カラーは、前記第一足回り部材の前記連結部と同種の金属材料で形成され、前記第二足回り部材と接触する前記カラーの外周面には、電蝕対策処理が施される、とよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、車両に用いられる第一足回り部材と第二足回り部材とを連結した状態では、略円柱外形の連結部に、略円筒形状のカラーが被さる。そして、このカラーが被せられた連結部が、該カラーとともに、車両に用いられる第二足回り部材の略円柱内形の連結穴に配置される。第二足回り部材では、略円柱内形の連結穴において略円筒形状のカラーが全面的に接触する。
これに対して、仮にたとえば第一足回り部材の略円柱外形の連結部を直接に第二足回り部材の略円柱内形の連結穴に対して挿入する場合、第一足回り部材の略円柱外形の連結部にはその全周にわたってボルト溝が形成されるため、第二足回り部材が他の部材と接触する接触面積が少なくなる。
このように、本発明では、第一足回り部材の略円柱外形の連結部を直接的に第二足回り部材の略円柱内形の連結穴に対して挿入する場合と比べて、第二足回り部材が他の部材と接触する接触面積を増やすことができる。
そして、第二足回り部材の接触面積が増えるため、たとえば車両の走行中に第一足回り部材から第二足回り部材へ向かう力が作用しても、第二足回り部材において力が作用する範囲は、略円筒形状のカラーが接触している面状の範囲に広がる。第二足回り部材に作用する力は分散される。その結果、第二足回り部材に対して局所的に力が作用して、その局所的に力が作用する部分が変形してしまうことを、効果的に抑制できる。
これに対して、仮にたとえば連結穴に対して連結部が直接的に挿入される場合、連結部の外周面は、ボルト溝により分断される。第二足回り部材が他の部材と接触する接触面積は、ボルト溝が形成されていない場合より小さくなる。この場合、第二足回り部材には、その小さい接触面積を通じて力が局所的に入力される。第二足回り部材では、局所的に強い力が入力されることにより、該局所的に強い力が入力される部分において局所的に変形してしまう懸念が生じ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車の一例を示す説明図である。
図2図2は、図1の自動車の左前側の足回り構造の説明図である。
図3図3は、図2の足回り構造に用いられる一般的なボールジョイント部材の一例を示す説明図である。
図4図4は、図2のアクスルハウジングについての、ボールジョイント部材との連結部分の拡大図である。
図5図5は、図2の足回り構造に用いられるカラーの説明図である。
図6図6は、図2のアクスルハウジングとボールジョイント部材との連結方法の説明図である。
図7図7は、図2のアクスルハウジングとボールジョイント部材との連結状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の一例を示す説明図である。図1は、自動車1を左側から見た図である。自動車1は、車両の一例である。
図1の自動車1の車体2は、前室3と乗員室4との隔壁(トーボード)から前へ突出する一対のフロントサイドメンバ6、乗員室4と荷室5との隔壁から後へ突出する一対のリアサイドメンバ7、を有する。エンジン、バッテリ、モータといった駆動部品は、たとえば一対のフロントサイドメンバ6の上に取り付けられる。
一対のフロントサイドメンバ6の間には、フロントクロスメンバ8が架け渡される。フロントクロスメンバ8の左右には、前側の一対の車輪10が配置される。車輪10は、後述する足回り構造により車体2に支持され、フロントクロスメンバ8に対して上下左右前後方向へ可動可能に取り付けられる。
一対のリアサイドメンバ7の間には、リアクロスメンバ9が架け渡される。リアクロスメンバ9の左右には、後側の一対の車輪10が配置される。車輪10は、後述する足回り構造により車体2に支持され、リアクロスメンバ9に対して上下左右前後方向へ可動可能に取り付けられる。
このように、一対の車輪10および一対の車輪10といった車輪は、車体2に対して可動可能に取り付けられる。そして、たとえば操舵の際や路面からの入力に応じて車輪10および車輪10が上下左右前後方向へ可動する。車体2が安定化する。
【0019】
図2は、図1の自動車1の左前側の足回り構造の説明図である。図2(A)は、該足回り構造を前から見た図である。図2(B)は、該足回り構造を下から見た図である。
図2の足回り構造は、自動車1の左前の車輪10を可動可能に支持する。自動車1の他の車輪、すなわち右前の車輪10、左後の車輪10および右後の車輪10についても、同様の足回り構造により可動可能に支持されている。
図2には、足回り構造を構成する足回り部材として、ハブキャリア11、アクスルハウジング12、ロアアーム13、ロアボールジョイント部材14、複数のトレーリングリンク15、複数のアッパボールジョイント部材16、サスペンション装置17、が図示されている。車体2に対して可動可能に取り付けられる足回り部材には、この他にもたとえば、ハンドル操作を伝達するためのナックルアームなどがある。
【0020】
ハブキャリア11には、車輪10のホイールが取り付けられる。ハブキャリア11は、フロントサイドメンバ6から外向きに突出するアクスル軸18の先端に取り付けられる。ハブキャリア11は、アクスル軸18とともに回転する。なお、アクスル軸18は、屈曲可能とするためのメカニカルジョイントを有する。これにより、アクスル軸18およびハブキャリア11は、アクスルハウジング12とともに上下左右前後方向へ従動可能である。
【0021】
アクスルハウジング12は、ハブキャリア11およびアクスル軸18を回転可能に支持するハウジングである。アクスルハウジング12の中央部を貫通する貫通孔にアクスル軸18が挿入される。アクスルハウジング12の左右方向外側に、ハブキャリア11が位置する。
【0022】
ロアアーム13および複数のトレーリングリンク15は、アクスルハウジング12を車体2に対して上下左右前後方向へ可動可能に支持させるソケット24材である。
ロアアーム13は、一般的には鉄などの高剛性の重金属材料を用いて、略Y型に形成される。略Y型による2つの先端部分には、ゴムブッシュ19が取り付けられる。2つのゴムブッシュ19を介して該2つの先端部分は、フロントクロスメンバ8の下面に取り付けられる。残りの1つの先端部分は、アクスルハウジング12の下側に位置する。ロアアーム13とアクスルハウジング12とは、ロアボールジョイント部材14により連結される。
【0023】
トレーリングリンク15は、一般的には鉄などの高剛性の重金属材料を用いて、略I型に形成される。略I型のトレーリングリンク15の一端は、フロントクロスメンバ8の上面に回動可能に取り付けられる。他端は、アクスルハウジング12の上側に位置する。トレーリングリンク15とアクスルハウジング12とは、アッパボールジョイント部材16により連結される。
【0024】
このように、ロアボールジョイント部材14およびアッパボールジョイント部材16といったボールジョイント部材21を用いてアクスルハウジング12を他の足回り部材と連結することにより、アクスルハウジング12が上下左右前後方向へ可動した際に、アクスルハウジング12の姿勢を立てた状態に維持できる。
【0025】
サスペンション装置17は、アクスルハウジング12や車輪10の上下左右前後方向への移動を抑制し、吸収する。ここでは、サスペンション装置17は、ロアアーム13と車体2の板金との間に取り付けられる。
【0026】
図3は、図2の足回り構造に用いられる一般的なボールジョイント部材21の一例を示す説明図である。図3(A)は、ボールジョイント部材21の側面図である。図3(B)は、ボールジョイント部材21の部分断面図である。
図3のボールジョイント部材21は、ボール22、スタッド23、ソケット24、を有する。
【0027】
ボール22は、たとえば鉄などの重金属材料により、略球形状に形成される。
スタッド23は、たとえば鉄などの重金属材料により、略円柱形状に形成される。スタッド23は、溶接などにより、略球形状のボール22に立てて一体化される。
ソケット24は、たとえば鉄などの重金属材料により、略円柱形状の外形に形成される。略円柱外形のソケット24の内部には、ボール22が収まる略球形状のボール穴25が形成される。ボール穴25は、略円柱外形のソケット24の底面に開口を形成する。
【0028】
そして、ボール22は、ソケット24のボール穴25に収められる。ボール22の一部はソケット24の底面の開口から突出する。スタッド23は、ボール22についての該突出部分に立設する。ソケット24のボール穴25内でボール22が回転することにより、ソケット24に対してスタッド23を傾けることができる。ボール22がソケット24内でスムースに動くためには、ボールジョイント部材21を他の部材と連結する際にソケット24やスタッド23に対して外から強い力を加えないことが望ましい。外力によりたとえばソケット24のボール穴25が変形すると、ボール穴25内でボール22がスムースに回転し難くなる。
このため、一般的なボールジョイント部材21では、略円柱外形のスタッド23の外周面に、ピンチボルト41と係合可能なスタッドボルト溝26が形成される。スタッドボルト溝26は、略円柱形状のスタッド23の外周面に沿って、その全周にわたって形成される。
【0029】
また、略円柱外形のソケット24の外周面には、ピンチボルト41と係合可能なソケットボルト溝27が形成される。ソケットボルト溝27は、略円柱形状のソケット24の外周面に沿って、その全周にわたって形成される。
そして、ボールジョイント部材21を他の部品と連結する場合、スタッド23またはソケット24を他の部材に挿入し、これらスタッドボルト溝26またはソケットボルト溝27に対して、他の部品に取り付けられたピンチボルト41を係合させる。これにより、ボールジョイント部材21は、他の部品と連結される。また、このような取付方法により、ボールジョイント部材21のスタッド23またはソケット24が直接的に締め付けられない。他の部品に取り付けた後のボールジョイント部材21においてスタッド23またはソケット24が外力により変形し難い。その結果、たとえば取付後においてもソケット24のボール穴25の真球度を確保し、ボール穴25内でボール22がスムースに回転し得る。
【0030】
図4は、図2のアクスルハウジング12についての、ボールジョイント部材21との連結部分31の拡大図である。図4(A)は、該連結部分31を前から見た図である。図4(B)は、該連結部分31を下から見た図である。図4(C)は、該連結部分31を右から見た図である。
図4のアクスルハウジング12の連結部分31は、アクスルハウジング12の本体から突出した部分である。そして、この突出部分に、連結穴32、締付用の逃げ穴33、ハウジングスリット34、ボルト孔35が形成される。
【0031】
連結穴32は、ボールジョイント部材21のソケット24またはスタッド23を挿入可能な穴である。ここでは、連結穴32にボールジョイント部材21のソケット24が挿入される。連結穴32は、略円柱外形のソケット24より一回り大きい略円柱形状の穴である。連結穴32は、アクスルハウジング12の底面に開口する。
【0032】
ボルト孔35は、ピンチボルト41が挿入可能な孔である。ボルト孔35は、アクスルハウジング12の本体から突出した部分に形成される。ボルト孔35は、連結穴32と略直交する略水平な向きで形成される。
そして、図4(C)に示すように、ボルト孔35は、アクスルハウジング12内で、連結穴32と連通する。これにより、連通孔36が形成される。ボルト孔35に挿入されたピンチボルト41は、連通孔36を通じてその一部が連結穴32内へ突出する。
【0033】
ハウジングスリット34は、アクスルハウジング12の突出部分を上下方向に二分するように形成される。ハウジングスリット34は、ボルト孔35を二つに分断する。また、連結穴32の一部を二分する。連結穴32に割りが入る。ボルト孔35に挿入されるピンチボルト41をナットで締めることにより、二分されたアクスルハウジング12の突出部分を締めることができる。
【0034】
締付用の逃げ穴33は、アクスルハウジング12の底面からみて連結穴32の奥側となる、連結穴32の上側に形成される。締付用の逃げ穴33は、連結穴32とともに全体として1つの穴を形成する。締付用の逃げ穴33は、連結穴32より一回り小さい略円柱形状の穴である。よって、同心状に配置される締付用の逃げ穴33と連結穴32との境界部分には、段差37が形成される。
【0035】
そして、ボールジョイント部材21は、たとえばソケット24をアクスルハウジング12の連結穴32に挿入し、アクスルハウジング12のボルト孔35にピンチボルト41を挿入し、ピンチボルト41とナットとでアクスルハウジング12の突出部分を締めることにより、アクスルハウジング12と連結できる。
【0036】
ところで、自動車1などの車両では、車両の軽量化が望まれている。このため、たとえば従来鉄といった重金属材料を用いて鋳造されていたアクスルハウジング12といった足回り部材を、たとえばアルミニウム、マグネシウムといった軽金属材料を用いて形成することが考えられる。
しかしながら、アクスルハウジング12といった足回り部材を軽金属材料で形成した場合、軽金属材料は重金属材料と比べて柔らかいので、足回り部材としての強度が懸念される。すなわち、車両の足回り部材に対しては、操舵の際または路面から様々な方向の力が入力され得る。たとえば、ボールジョイント部材21からアクスルハウジング12へ向かう大きい入力により、軽金属製のアクスルハウジング12が連結穴32内において局所的に変形する懸念がある。ヤング率が大きい鉄などの重金属と、ヤング率が小さいアルミニウムなどの軽金属とが接触する場合、ヤング率が小さい軽金属の接触面において、面圧強度が不足したり、接触面の剛性が不足したりする。その結果、自動車1の操舵感や乗り心地に影響を与えてしまうという懸念がある。
特に、一般的なボールジョイント部材21では、ソケット24やスタッド23を直接的に締めつけなくても他の部材と連結可能となるように、ソケットボルト溝27およびスタッドボルト溝26が全周にわたって形成される。この場合、連結穴32に挿入されたソケット24またはスタッド23と、連結穴32が形成されるアクスルハウジング12といった足回り部材との接触面積は、小さくなる。その結果、上述した外力は、小さな接触面を通じて軽合金製のアクスルハウジング12といった足回り部材に伝わる。足回り部材には、大きな力が非常に限られた接触面から集中して入力される。軽合金製の足回り部材では、局所的な変形が起こりやすい。
そして、このような局所的な力の入力による局所的な変形を抑えるためには、たとえばソケット24またはスタッド23を大径化して、軽合金製のアクスルハウジング12の接触面積を増やすことが考えられる。しかしながら、このように接触面積を確保するためにソケット24またはスタッド23を本来的な強度を確保するために必要なサイズ以上に大径化した場合、たとえばアクスルハウジング12の連結部分31も大きくし、連結部分31の剛性も高めなければならない。その結果、アクスルハウジング12が大型化し、アクスルハウジング12を軽金属材料で形成することによる車両の軽量化の効果が損なわれてしまう。
このように自動車1などの車両では、車両の足回り部材の連結構造を改善することが望まれている。
【0037】
図5は、図2の足回り構造に用いられるカラー51の説明図である。図5(A)は、カラー51の側面図である。図5(B)は、カラー51の下面図である。図5(C)は、カラー51の外周部分の拡大図である。
図5のカラー51は、カラー本体52、カラースリット53、ボルト逃げ孔54、電蝕対策層55、を有する。カラー51は、アクスルハウジング12およびボールジョイント部材21と別体に形成される。
【0038】
カラー本体52は、たとえばアクスルハウジング12にアルミニウムなどの軽金属材料を用いる場合、該軽金属材料よりヤング率が大きいたとえば鉄といった重金属材料を使用すればよい。ここでは、カラー51は、ボールジョイント部材21のソケット24またはスタッド23と同種の金属である鉄により、形成されている。これにより、カラー51は、アクスルハウジング12の連結部分31と比べて、歪み難くなる。
カラー本体52は、略円筒形状に形成される。カラー本体52は、ボールジョイント部材21のソケット24が挿入できる内径に形成すればよい。また、カラー本体52は、アクスルハウジング12の連結穴32に挿入できる外形に形成すればよい。ここでは、図5(B)に示すように、連結穴32に挿入される前のカラー本体52は、アクスルハウジング12の連結穴32より若干大径に形成されている。
【0039】
カラースリット53は、略円筒形状のカラー本体52の円筒面を、円筒の軸方向に沿って縦に分断する。これにより、アクスルハウジング12の連結穴32より若干大径に形成されるカラー本体52は、縮むように撓ませることができ、アクスルハウジング12の連結穴32に挿入し得る。
【0040】
また、略円筒形状のカラー本体52の外周面には、電蝕対策層55が形成される。電蝕対策層55は、たとえば成形後のカラー本体52の外周面に対して、たとえばカチオン塗装処理、ダクロ処理を施すことにより形成できる。これにより、大きいアクスルハウジング12や製品化されたボールジョイント部材21のソケット24などに対して、電蝕対策層55を形成する必要がない。小さい略円筒形状のカラー本体52に対して、少ない面積により容易に電蝕対策層55を形成し得る。
【0041】
ボルト逃げ孔54は、カラー本体52の円筒周面に形成される。ボルト逃げ孔54は、たとえばアクスルハウジング12の連通孔36と同等のサイズに形成すればよい。図5(A)に示すように、ここでは、ボルト逃げ孔54は、略円筒形状のカラー本体52の周方向に沿って長い長孔に形成される。これにより、ボルト孔35に挿入されたピンチボルト41は、ボルト逃げ孔54を通じてその一部がカラー本体52内へ突出できる。
【0042】
また、略円筒形状のカラー本体52の周方向に沿って長いボルト逃げ孔54と、略円筒形状のカラー本体52を軸方向に沿って縦に分断するカラースリット53とは、カラー本体52の円筒面において互いに直交する。カラースリット53は、横長のボルト逃げ孔54の中央部分において、略円筒形状のカラー本体52を軸方向に沿って縦に分断する。
【0043】
図6は、図2のアクスルハウジング12とボールジョイント部材21との連結方法の説明図である。図6(A)は、カラー51をアクスルハウジング12に取り付ける工程図である。図6(B)は、ボールジョイント部材21をアクスルハウジング12に取り付ける工程図である。
【0044】
アクスルハウジング12とボールジョイント部材21のソケット24とを連結する場合、図6(A)に示すように、まず、アクスルハウジング12の連結穴32にカラー51を挿入する。カラー51は、縮むように撓ませた状態で、アクスルハウジング12の連結穴32に挿入できる。これにより、図6(B)に示すように、カラー本体52は、アクスルハウジング12の締付用の逃げ穴33と連結穴32とによる段差37に当たるまで押し込むことができる。また、カラースリット53がハウジングスリット34と重なる状態でカラー本体52を押し込む。
また、カラー51は、カラー本体52が連結穴32に収まる状態で、アクスルハウジング12の連結穴32に取付らけれる。また、カラー51のボルト逃げ孔54が、アクスルハウジング12の連通孔36と重なる。アクスルハウジング12の底面において、カラースリット53をハウジングスリット34と重ねることで、カラー51のボルト逃げ孔54をアクスルハウジング12の連通孔36と重ねることができる。カラー51の位置決めが容易である。
また、カラー51は、しまりばめで連結穴32に挿入されるので、連結穴32から脱落し難い。カラー51をアクスルハウジング12の連通孔36に対して低加重で仮固定ができる。
また、鉄製のカラー本体52と、軽金属性のアクスルハウジング12との間には、電蝕対策層55が設けられる。アクスルハウジング12とボールジョイント部材21との連結部分31において電蝕が起き難い。
【0045】
次に、図6(B)に示すように、カラー51が仮固定された連結穴32に対して、ボールジョイント部材21のソケット24を挿入する。ソケット24は、アクスルハウジング12の締付用の逃げ穴33と連結穴32とによる段差37に当たるまで押し込むことができる。
これにより、略円柱外形のソケット24の外周面に形成されたソケットボルト溝27は、カラー51のボルト逃げ孔54と、アクスルハウジング12の連通孔36と重なる。
【0046】
次に、図6(B)に示すように、アクスルハウジング12のボルト孔35にピンチボルト41を挿入し、ピンチボルト41をナット42で締める。これにより、ハウジングスリット34で二分されたアクスルハウジング12の突出部分が締め付けられる。締付用の逃げ穴33が形成されていることにより、アクスルハウジング12の連結穴32は、全体的に小径化する。連結穴32によるアクスルハウジング12の円筒内面に対してカラー51の外周面が密着し、かつ、カラー51の円筒内面に対してボールジョイント部材21のソケット24の外周面が密着し得る。略円筒形状のカラー51は、ソケット24の外周面に被せられる。
また、ピンチボルト41がナット42によりボルト孔35に挿入された状態に固定される。アクスルハウジング12に固定されたピンチボルト41は、アクスルハウジング12の連通孔36およびカラー51のボルト逃げ孔54を通じて、その一部が連結穴32内へ突出する。該突出部分は、ボールジョイント部材21のソケット24の外周面に形成されたソケットボルト溝27と係合する。
【0047】
これにより、ボールジョイント部材21のソケット24を締め付けることなく、ボールジョイント部材21のソケット24がアクスルハウジング12の連結穴32から脱落しないようにできる。
【0048】
図7は、図2のアクスルハウジング12とボールジョイント部材21との連結状態の説明図である。図7には、ボールジョイント部材21のスタッド23と連結されるロアアーム13も図示されている。
【0049】
図7に示すように、アクスルハウジング12とロアアーム13とは、ボールジョイント部材21により連結される。詳しくは、アクスルハウジング12は、その連結穴32に挿入されたボールジョイント部材21のソケット24とピンチボルト41とが係合することにより、ボールジョイント部材21のソケット24と連結される。また、ロアアーム13は、その連結穴32に挿入されたボールジョイント部材21のスタッド23と別のピンチボルト41とが係合することにより、ボールジョイント部材21のスタッド23と連結される。
【0050】
また、図7では、アクスルハウジング12の連結穴32には、ボールジョイント部材21のソケット24と重なるように、略円筒形状のカラー本体52が配置される。略円筒形状のカラー本体52は、その円筒形状の外周面の全体で、アクスルハウジング12の連結穴32による円筒内面と接触し得る。この場合のアクスルハウジング12の接触面積は、カラー本体52の外周面S1の全面となる。カラー本体52の外周面S1は、ソケット24の外周面の全面と略同じ面積である。
これに対して、仮にたとえばカラー51を用いずに、ボールジョイント部材21のソケット24を直接的にアクスルハウジング12の連結穴32に挿入した場合、アクスルハウジング12の接触面積は、ソケット24の外周面の中の、ソケットボルト溝27が形成されていない部分S2,S3の合計面積となる。
【0051】
図7の連結状態において、アクスルハウジング12の連結部分31に対して、ボールジョイント部材21から、たとえば図7に点線矢線で示すように左下から右上へ向かう力が作用したとする。
この場合、重金属性のソケット24は、ソケットボルト溝27が形成された少ない面積S2,S3で、カラー本体52の内周面に押し付けられる。
そして、カラー本体52は、ソケット24と同種の重金属材料を用いて高剛性に形成されている。カラー本体52は、重金属性のソケット24から局所的に入力される力で変形し難い。
その結果、カラー51は、カラー本体52の外周面による広い面積S1により、アクスルハウジング12の連結穴32による円筒内面に押し付けられる。
このように、ボールジョイント部材21がカラー本体52へ伝えた力は、カラー本体52において分散し、その分散された力がアクスルハウジング12の連結穴32による円筒内面に作用する。アクスルハウジング12の円筒内面において、局所的に大きな力が作用し難くなる。アクスルハウジング12が局所的に大きく変形することが起き難くなる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、自動車1に用いられるボールジョイント部材21とアクスルハウジング12とを連結した状態では、ボールジョイント部材21の略円柱外形のソケット24に、略円筒形状のカラー51が被せられる。そして、このカラー51が被せられたソケット24が、該カラー51とともに、自動車1に用いられるアクスルハウジング12の略円柱内形の連結穴32に配置される。アクスルハウジング12に対しては、略円柱内形の連結穴32において、略円筒形状のカラー51が全面的に接触し得る。
これに対して、仮にたとえばボールジョイント部材21の略円柱外形のソケット24を直接にアクスルハウジング12の略円柱内形の連結穴32に対して挿入する場合、ボールジョイント部材21の略円柱外形のソケット24にはその全周にわたってソケットボルト溝27が形成されるため、アクスルハウジング12がソケット24と接触する接触面積が少なくなる。
このように、本実施形態では、ボールジョイント部材21の略円柱外形のソケット24を直接的にアクスルハウジング12の略円柱内形の連結穴32に対して挿入する場合と比べて、アクスルハウジング12についての他の部材(ここではカラー51)と接触する面積を増やすことができる。
そして、アクスルハウジング12の接触面積が増えるため、たとえば自動車1の走行中にボールジョイント部材21からアクスルハウジング12へ向かう力が作用しても、アクスルハウジング12において力が作用する範囲は、略円筒形状のカラー51が接触している面状の範囲に広がる。アクスルハウジング12に作用する力は分散される。アクスルハウジング12に対して局所的に力が作用して、その局所的な部分が変形してしまうことを効果的に抑制できる。
これに対して、仮にたとえば連結穴32に対してソケット24が直接に挿入される場合、ソケット24の外周面は、ソケットボルト溝27により分断されている。アクスルハウジング12が他の部材(ここではソケット24)と接触する接触面積は、ソケットボルト溝27が形成されていない場合より小さくなる。この場合、アクスルハウジング12には、その小さい接触面積を通じて力が局所的に入力される。アクスルハウジング12は、局所的に強い力が入力されることにより、該局所的な部分が変形してしまう懸念が生じ得る。このような力の集中を緩和するためには、たとえばソケット24を大径化したりすればよい。ただし、この場合、ソケット24が大きくなることにより、連結穴32が形成されるアクスルハウジング12についても大型化させなければならない。アクスルハウジング12が大型化することにより、自動車1の足回り部材が重くなる。
【0053】
本実施形態では、ピンチボルト用のボルト孔35と連結穴32とは、アクスルハウジング12内で連通する。そして、その連通孔36に対して、カラー51のボルト逃げ孔54が重ねられる。ピンチボルト41は、アクスルハウジング12のボルト孔35に挿入されることにより、その一部がカラー51の内側へ突出でき、カラー51とともに連結穴32に配置されているソケット24のソケットボルト溝27と係合する。この係合により、連結穴32に挿入されるボールジョイント部材21のソケット24は、連結穴32から抜け難くなる。
よって、アクスルハウジング12のボルト孔35にピンチボルト41を挿入して締めることにより、ボールジョイント部材21とアクスルハウジング12とを連結できる。ボールジョイント部材21とアクスルハウジング12との間に略円筒形状のカラー51を追加して配置するようにしているにもかかわらず、ボールジョイント部材21とアクスルハウジング12との連結作業が悪化しない。
【0054】
本実施形態では、略円筒形状のカラー51には、該略円筒形状によるカラー本体52の円筒面を軸方向に沿って分断するカラースリット53が形成される。
よって、たとえば略円筒形状のカラー本体52をソケット24より広げた状態でソケット24を挿入することにより、ソケット24に対して略円筒形状のカラー51を容易に被せることができる。
この他にもたとえば、略円筒形状のカラー51の外形を、アクスルハウジング12の連結穴32より若干大径に形成し、ボールジョイント部材21のソケット24を連結穴32に挿入する前に、連結穴32内にカラー51を仮固定することができる。その結果、カラー51が取り付けられた連結穴32に対して、アクスルハウジング12を取り付けることができる。
また、カラースリット53は、略円筒形状のカラー本体52の円筒面においてボルト逃げ孔54と交差している。よって、たとえばカラー51のカラースリット53がアクスルハウジング12のハウジングスリット34と重なるようにカラー51の向きを調整することで、アクスルハウジング12においてボルト孔35と連結穴32とが連通している部分(連通孔36)に対してカラー51のボルト逃げ孔54を重ねることができる。外から視認しやすいカラースリット53とハウジングスリット34との位置決めにより、アクスルハウジング12に対してカラー51を位置決めできる。ボルト孔35と連結穴32とが連通している部分に対してカラー51のボルト逃げ孔54を容易に重ねることができる。
【0055】
本実施形態では、アクスルハウジング12には、連結穴32の奥側に、締付用の逃げ穴33が形成される。これにより、ピンチボルト41を締めることにより、連結穴32を全体的に締め付けることができる。ハウジングスリット34が形成された部分のみが締めつけられないようにできる。その結果、ピンチボルト41により締められたボールジョイント部材21は、連結穴32においてカラー51およびソケット24の外周全体を締め付けることができる。また、連結穴32の開口部分のみが締め付けられるのではなく、連結穴32の奥側についても共に締め付けることができる。連結穴32を全体的に締めつけて、カラー51をその全周にわたってハウジングスリット34と接触させることができる。
また、連結穴32の奥側に形成される締付用の逃げ穴33は連結穴32より小径に形成され、締付用の逃げ穴33と連結穴32との境界部分には、カラー止め用の段差37が形成される。この段差37にカラー51が当たるまでカラー51を連結穴32に挿入することにより、容易に、アクスルハウジング12におけるボルト孔35と連結穴32との連通部分に対して、カラー51の逃げ孔を重ねることができる。挿入孔に挿入されるカラー51は、その外周方向および軸方向において容易に位置決めできる。
【0056】
本実施形態では、カラー本体52は、アクスルハウジング12の連結穴32が形成される部分より歪み難い材料で形成される。詳しくは、アクスルハウジング12にアルミニウムなどの軽金属材料を使用し、カラー本体52には、軽金属材料よりヤング率が大きい鉄という重金属材料を使用している。
これにより、ボールジョイント部材21を通じてアクスルハウジング12に対して作用する力は、アクスルハウジング12に対して作用する前に、歪み難い材料で形成されたカラー本体52において分散する。アクスルハウジング12に対しては分散された力が作用し、応力集中が起き難い。
【0057】
本実施形態では、カラー本体52がボールジョイント部材21のソケット24と同種の金属材料、すなわち鉄で形成され、カラー本体52の外周面には電蝕対策処理が施されている。
よって、ボールジョイント部材21のソケット24とカラー本体52との間、および、カラー本体52とアクスルハウジング12との間において共に、電蝕作用が起き難い。ここでは、アクスルハウジング12としてアルミニウムなどの軽金属を用いるとともに、ボールジョイント部材21のソケット24およびカラー51に鉄といった重金属材料を用いているが、アクスルハウジング12とカラー51との間で電蝕作用が起き難い。
【0058】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0059】
たとえば上記実施形態では、アクスルハウジング12とロアアーム13との連結する場合において、アクスルハウジング12とボールジョイント部材21のソケット24との連結に対して、本発明を適用した例である。
この他にもたとえば、本発明は、アクスルハウジング12に対してボールジョイント部材21のスタッド23を連結する場合に適用できる。この場合、カラー51は、スタッドボルト溝26が形成されるスタッド23に被せられる。
さらに他にもたとえば、本発明は、ロアアーム13やトレーリングリンク15などに対してボールジョイント部材21を連結する場合にも適用できる。また、ハンドル操作を伝達するためのナックルアームとアクスルハウジング12とを連結する場合において、これらとボールジョイント部材21とを連結する場合にも適用できる。
そして、ボールジョイント部材21は、ボールジョイント部材21により互いに連結される2つの足回り部材の中の一方の足回り部材と一体化されてもよい。この場合でも、ボールジョイント部材21と他方の足回り部材とを連結する際に、本発明を利用することができる。
そして、本発明の足回り部材の連結構造を用いることにより、たとえばボールジョイント部材21と連結される足回り部材を軽金属材料により形成でき、自動車1の軽量化を図ることができる。
【0060】
上記実施形態は、本発明を自動車1の足回り部材の連結に適用した例である。
この他にもたとえば、本発明は、航空機、自転車、電車などの車両に適用できる。これらの車両の足回り部材の連結構造に対して本発明を適用することにより、車両の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…自動車(車両)、6…フロントサイドメンバ、8…フロントクロスメンバ、10…車輪、12…アクスルハウジング(第二足回り部材)、13…ロアアーム、14…ロアボールジョイント部材、15…トレーリングリンク、16…アッパボールジョイント部材、21…ボールジョイント部材(第一足回り部材)、22…ボール、23…スタッド(連結部)、24…ソケット(連結部)、26…スタッドボルト溝(ボルト溝)、27…ソケットボルト溝(ボルト溝)、31…連結部分、32…連結穴、33…締付用の逃げ穴、34…ハウジングスリット(部材スリット)、35…ボルト孔、36…連通孔、37…段差、41…ピンチボルト、42…ナット、51…カラー、52…カラー本体、53…カラースリット、54…ボルト逃げ孔、55…電蝕対策層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7