(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019094
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】潤滑化されたペン針
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-251064(P2014-251064)
(22)【出願日】2014年12月11日
(62)【分割の表示】特願2011-549160(P2011-549160)の分割
【原出願日】2010年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-44114(P2015-44114A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年1月7日
(31)【優先権主張番号】61/150,677
(32)【優先日】2009年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア ホーバス
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】ポール アッパム
【審査官】
姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−124511(JP,A)
【文献】
実開平04−090353(JP,U)
【文献】
特開2003−079727(JP,A)
【文献】
登録実用新案第006733(JP,Z1)
【文献】
特開2000−024108(JP,A)
【文献】
米国特許第05545143(US,A)
【文献】
特表2001−500414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/31
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ;
前記ハブに固定的に接続された針;
前記ハブを受容するための外側カバー;および
前記ハブが前記外側カバーによって受容されているときに、前記針の少なくとも一部が潤滑剤リザーバー内に配置されるように、前記外側カバー内に配置される潤滑剤リザーバーを含み、ここで
前記潤滑剤リザーバーは前記ハブと前記針の患者端との間に配置され、
前記針の前記患者端は、内側ハウジングの内部に、固定されない自由な状態で存在し、
前記針は、前記ハブと前記針の患者端との間に配置された部材を貫通することによって前記外側カバー内に固定された状態で存在し、前記部材と前記ハブとの間には潤滑剤は存在しない
ことを特徴とするペン針。
【請求項2】
シールが前記外側カバーに除去可能に接続されることを特徴とする請求項1に記載のペン針。
【請求項3】
前記シールが前記外側カバーに接続されるとき、前記ハブは前記外側カバーによって受容されることを特徴とする請求項1または2に記載のペン針。
【請求項4】
前記潤滑剤リザーバーは抗菌剤を含有する潤滑剤溶液を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のペン針。
【請求項5】
前記潤滑剤リザーバーは溶剤を含有する潤滑剤溶液を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のペン針。
【請求項6】
前記潤滑剤リザーバーは潤滑剤が含浸されたマトリックスを含むことを特徴とする請求項1に記載のペン針。
【請求項7】
前記部材は、前記潤滑剤リザーバーを封入するように前記外側カバー内に配置される隔壁であり、
前記外側カバーが前記ハブに接続されているとき、前記針の患者端は前記潤滑剤リザーバー内に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のペン針。
【請求項8】
前記部材は前記潤滑剤リザーバーであり、
前記外側カバーが前記ハブに接続されているとき、前記針の患者端は前記潤滑剤リザーバー内に配置されていないことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のペン針。
【請求項9】
前記潤滑剤リザーバーは液体潤滑剤を含むことを特徴とする請求項8に記載のペン針。
【請求項10】
前記針が、接着プロモーターで処理されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のペン針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年2月6日に出願された米国仮出願第61/150,677号明細書の35U.S.C§119(e)に基づく利益を主張し、その内容の全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、広く、薬物送達装置のための潤滑化された針に関する。より詳細には、本発明は、頻回注射を容易にするために潤滑化された針を有するペン針に関する。さらにより詳細には、本発明は、外側カバー内に配置する際にペン針の針を潤滑化させる潤滑剤リザーバーを有する外側カバーに関する。
【背景技術】
【0003】
インスリンおよび他の注射可能な薬剤は、一般的に、それによって使い捨てのペン針が薬物容器のアクセスを容易にし、および流体が容器から針を通って患者内に出ることを可能にするように取り付けられている、薬物送達ペンのような薬物送達装置を用いて与えられる。
【0004】
技術および競争が進むにつれて、より短く、より細く、より苦痛が小さく、およびより効果的な注射に対する要望に駆り立てられ、ペン針およびその部品のデザインはますます重要になっている。デザインは、人間工学的に向上している注射技術、注射深度制御および精度、安全に使用されおよび廃棄のために運ばれるための能力、ならびに誤用に対する保護と同時に、大量生産スケールで経済的に製造されるための能力を維持することに、積極的に取り組む必要がある。
【0005】
図1および2に示される例示的な薬物送達ペン100のような薬物送達装置は、皮下および皮内注射のためにデザインされることができ、および典型的には、投与量ノブ/ボタン24、外側スリーブ13、およびキャップ21を含む。投与量ノブ/ボタン24は、使用者が注射されるべき薬剤の用量を設定することを可能にする。外側スリーブ13は、薬剤を注射するときに使用者によって握持される。キャップ21は、シャツのポケット、ハンドバッグまたは他の適当な場所に薬物送達ペン100をしっかりと保持し、および偶発的な針の怪我からのカバー/保護を提供するように、使用者によって使用される。
【0006】
図2は、
図1の薬物送達ペン100の分解図である。投与量ノブ/ボタン24は、二重の目的を有し、および注射されるべき薬剤の用量を設定するため、および投与される薬剤を、親ねじ7およびストッパー15によって、下側ハウジング17を通って薬物送達ペンに取り付けられた薬剤カートリッジ12を通って注射するため、の両方のために使用される。標準的な薬物送達ペンにおいて、投与および送達機構は、全て、外側スリーブ13内に見出されるが、それらは当業者によって理解されるので、ここではより詳細には説明しない。薬剤カートリッジ12内でのプランジャーまたはストッパー15の遠位運動は、薬剤をハブ20の針11内へ押し進める。薬剤カートリッジ12は、ハブ20内に位置する隔壁貫通針カニューレ18によって穿刺される隔壁16によって密封される。ハブ20は、好ましくは、下側ハウジング17上にねじ込まれるが、しかしながら、カートリッジに取り付けるなど、他の取り付け手段を使用できる。使用者、またはペン注射装置100を取り扱う誰かを保護するために、ハブ20に取り付ける外側カバー69は、ハブを覆う。内側シールド59は、外側カバー69内で患者針11を覆う。内側シールド59は、締まりばめ(interference fit)またはスナップ嵌合のような任意の適当な手段によって、患者針を覆うように、ハブ20に固定されることができる。外側カバー69および内側シールド59は、使用前に除去される。キャップ21は、外側スリーブ13に対してぴったりと嵌合して、使用者が薬物送達ペン100を安全に持ち運ぶことを可能にする。
【0007】
薬剤カートリッジ12は、典型的には、1つの端が隔壁16で密封され、および他の端がストッパー15で密封されたガラス管である。隔壁16は、ハブ20内で隔壁貫通カニューレ18によって穿刺可能であるが、しかし、薬剤カートリッジ12に対して移動しない。ストッパー15は、流体を密封に維持しながら、薬剤カートリッジ12内で軸方向に移動可能である。
【0008】
例示的な薬物送達ペンのペン針2の分解斜視図が、
図3に示される。ペン針2は、カバー(外側シールド)69、内側シールド59、針カニューレ11、およびハブ20を含む。針カニューレ11の近位端310は、ハブ20の遠位(患者)端405の中心開口に、針カニューレ11の遠位(患者)端305の所定の長さが引き続き伸びている状態であるまで、挿入される。針カニューレ11は、ハブ20の遠位端405内のエポキシまたは接着剤によって、ハブ突起420内に固定される。
【0009】
使用者を怪我から、および針カニューレ11を損傷を受けることから保護するために、内側シールド59は、針カニューレ11の露出部分を覆う。内側シールド59の開放近位端210は、針カニューレ11の露出部分上に位置付けられる。カバー69の開放近位端110は、内側シールド59、針カニューレ11、およびハブ20を包囲する。
【0010】
カバー69の遠位端105は、ペン針2の内側構成部材に対する汚染および損傷を防止するように、および使用前にそれを取り扱うかもしれない誰かに対する怪我を防止するように、閉塞されている。ハブ20の近位端410は、典型的には、カバー69の端110に接着された衛生紙またはホイルカバー(不図示)によって覆われている。薬物送達ペンは、その結果、使用者への出荷の準備が整っている。使用者が薬物送達ペンを使用する準備ができているとき、衛生カバー(不図示)がカバー69から除去されて、ハブ20は、標準ペン100(
図1および2)の下側ハウジング17にねじ込まれ、およびカバー69およびシールド59は、ハブ20/カニューレ11部分組立品から引張動作によって別個に除去される。カバー69が除去された後、偶発的な針突き刺しから使用者を保護するために、内側シールド59の遠位端205は、針カニューレ11の遠位端305を覆うように閉塞されている。次いで、針カニューレ11にアクセスするために、内側シールド59は除去される。したがって、カバー69およびシールド59の両方を除去するために、2つの別個の引張動作が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0229562号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0149924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現行のペン針の多くは、頻回注射に使用される。しかしながら、同一の針を用いた各後続の注射は、必要とされる貫通力を増大させ、それによって、注射を次第に困難および苦痛にする。したがって、同一の針を用いた頻回注射を容易にする要求が存在する。
【0013】
現行の薬物送達ペンは、2006年10月12日に発行されたMarshらに対する特許文献1、および2007年6月28日に発行されたR.Marshに対する特許文献2に開示されており、それら両方の内容の全体は参照によってここに組み入れられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の態様に従って、潤滑化されたペン針が、頻回注射を容易にするために提供される。
【0015】
本発明の別の態様に従って、ペン針用の外側カバーは、その中に配置する際に針を潤滑化するための潤滑剤リザーバーを有する。
【0016】
先述の目的は、基本的に、ハブと、ハブに固定的に接続された針とを有するペン針を提供することによって達成される。外側カバーは、ハブを受容する。潤滑剤リザーバーは、ハブが外側カバーによって受容されるときに、針の一部が潤滑剤リザーバー内に配置されるように外側カバー内に配置される。
【0017】
本発明の目的、利点、および顕著な特徴は、添付図面と併せて本発明の例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
上述の利益および本発明の様々な実施形態の他の利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明および添付図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】組み立てられた薬物送達ペンの斜視図である。
【
図2】
図1の薬物送達ペンの構成部材の分解斜視図である。
【
図3】
図1の薬物送達ペンのペン針の分解斜視図である。
【
図4】その中でペン針の針が潤滑剤リザーバー内に配置される、本発明の例示的な実施形態に従った、部分断面の外側カバー、ペン針ハブおよびシールの分解斜視図である。
【
図5】
図4のペン針の外側カバー内に配置されたハブの部分断面の斜視図である。
【
図6】その中で針が外側カバー内の潤滑剤リザーバーを通過する、本発明の別の例示的な実施形態に従った、部分断面の外側カバー、ペン針およびシールの分解斜視図である。
【
図7】
図6の外側カバー内に配置されたペン針の部分断面の斜視図である。
【
図8】その中で隔壁が潤滑剤リザーバーを外側カバー内に封入する、別の例示的な実施形態に従った、部分断面の外側カバー、ペン針およびシールの部分断面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を通して、同様の符号は、同様の部品、構成部材および構造をいうことが理解されよう。
【0021】
本発明の以下の説明および例示的な実施形態の詳細は、
図1から3に示されるように、典型的な薬物送達ペンにおいて一般的に開示されている一方で、シリンジ、自動注射器、および輸液装置のような他の注射装置との併用、または他の注射装置に組み込まれた使用のためのペン針に、より広く適用することができる。
【0022】
図4および5に示される本発明の例示的な実施形態において、ペン針531は、例えば摩擦嵌合によってペン針ハブ511に接続される外側カバー501を含む。ラベルまたはシール521は、ハブ511を外側カバー内に密封するように、外側カバー501に貼り付けられる。ラベル521は、ペン針531のための滅菌バリアである。
【0023】
ラベル521は、外側カバー501の第1端507に貼り付けられる。
図5に示されるように、潤滑剤リザーバー503は、ハブが外側カバー内に配置されるときに、ハブ511の針513の患者端515が潤滑剤リザーバー503内に配置されるように、外側カバー501内に配置される。ラベル521は、外側カバー501からのラベルの除去を容易にするように、外側に延びるタブ523を有する。
【0024】
ラベル521が除去され、および針513が注射に使用された後に、外側カバー501は、針が後続の注射に使用されるまで針をシールドするように、ペン針531上に配置されてもよい。
図5に示されるように、針513の患者端515は、同一の針を用いた頻回注射を容易にするように、潤滑剤リザーバー503内に配置される。
【0025】
潤滑剤リザーバー503は、潤滑剤を含浸させた、スポンジ、ポリマー、ゲルまたは他の適当な材料のような、固体または半固体マトリックスであってもよい。
図5に示されるように、針513の患者端515は、外側カバー501がハブ511上にあるときに、潤滑剤リザーバー503内に配置される。したがって、針513の患者端515は、潤滑剤リザーバー503から引き出されることによって、実質的に使用の直前に潤滑化される。
【0026】
図6および7に示される本発明の別の例示的な実施形態において、外側カバー601は、例えば摩擦嵌合によって、ペン針602のハブ611に接続される。ラベルまたはシール621は、外側カバー601内にハブ611を密封するように、外側カバー601に貼り付けられる。ラベル621は、ペン針611のための滅菌バリアである。
【0027】
ラベル621は、外側カバー601の第1端607に貼り付けられる。
図7に示されるように、ペン針が外側カバー内に配置されるときに、ペン針602の針613の患者端615が潤滑剤リザーバーを通過するように、潤滑剤リザーバー603は外側カバー601内に配置される。ラベル621は、外側カバー601からのラベルの除去を容易にするように、外側に延びるタブ623を有する。
【0028】
ラベル621が除去され、および針613が注射のために使用された後、外側カバー601は、針が後続の注射のために使用されるまで、針を遮蔽するようにペンハブ611の上に配置されていてもよい。
図7に示されるように、第1注射が打たれた後に外側カバー601がハブ611に再接続されているとき、針613の患者端615は、潤滑剤リザーバー603内に配置されない。針613の患者端615は、潤滑剤を含有していない外側カバー601の室605内に配置される。 したがって、同一の針を用いた頻回注射を容易にするように、外側カバーがハブ611に接続されるとき、およびハブ611から除去されるときに、針613の患者端615は潤滑剤リザーバー603を通過する。
【0029】
潤滑剤リザーバー603は、潤滑剤を含浸させた、スポンジ、ポリマー、ゲルまたは他の適当な材料のような、固体または半固体マトリックスであってもよい。
図7に示されるように、外側カバー601がペン針611上にあるとき、針613の患者端615は潤滑剤リザーバー603内に配置されず、それにより、実質的に、潤滑剤リザーバーと薬物送達ペン内の薬剤との間の流体連通が防止される。したがって、針613の患者端615は、潤滑剤リザーバー603を通って引き出されることによって、実質的に使用の直前に、潤滑化される。
【0030】
本発明の別の例示的な実施形態において、
図8に示されるように、外側カバー701は、ペン針702のハブ711に、例えば摩擦嵌合によって、接続される。ラベルまたはシール721は、外側カバー701内にペンハブ711を密封するように、外側カバー701に接着される。ラベル721は、ペンハブ711のための滅菌バリアである。
【0031】
ラベル721は、外側カバー701の第1端707に接着される。
図8に示されるように、潤滑剤リザーバー703(空で示されているが、しかし典型的には、液体潤滑剤で部分的または完全に満たされている。) は、ハブが外側カバー内に配置されるときにハブ711の針713の患者端715が潤滑剤リザーバーを通過するように、外側カバー701内に配置される。隔壁751は、潤滑剤リザーバー703を封入するように、外側カバー701内に配置される。ラベル721は、外側カバー701からのラベルの除去を容易にするように、外側に延びるタブ723を有する。
【0032】
ラベル721が除去され、および針713が注射に使用された後に、外側カバー701は、針が後続の注射に使用されるまで針をシールドするように、ハブ711上に配置されてもよい。
図8に示されるように、針713の患者端715は、第1注射がなされた後に外側カバー701がハブ711に再接続されるときに、潤滑剤リザーバー703内に配置される。したがって、針713の患者端715は、同一の針を用いた頻回注射を容易にするように、潤滑剤リザーバー703内に配置される。
【0033】
潤滑剤リザーバー703は、液体潤滑剤、または潤滑剤を含浸させた、スポンジ、ポリマー、ゲルまたは他の適当な材料のような、固体または半固体マトリックスを含有していてもよい。
図8に示されるように、針713の患者端715は、外側カバー701がペン針702上にあるときに、潤滑剤リザーバー703内に配置される。したがって、針713の患者端715は、実質的に使用の直前に、潤滑剤リザーバー703から引き出されることによって、潤滑化される。針713の患者端715は、外側カバー701がペン針702に接続されるとき、およびペン針702から除去されるときに、隔壁751を貫通する。
【0034】
図4から8に示されるように、内側シールドは、外側カバー内の針の患者端を覆うために使用されない。
【0035】
潤滑剤は、抗菌性溶液であってもよい。好ましくは、潤滑剤溶液は、官能性シロキサンを含むシロキサンのような潤滑剤を含有する。好ましくは、潤滑剤溶液は、水/界面活性剤混合物、アルコール類、アルカン類、1,2−トランス−ジクロロエチレンまたはシリコーンのための他の溶剤のような溶剤を含有する。好ましくは、潤滑剤溶液は、メタクレゾールのような抗菌剤を含有する。潤滑化のための医療グレードのシリコーンの商業的な製造業者は、ダウコーニング(Dow Corning)であり、および適切な潤滑剤は、100cS、350cSおよび12,500cSの粘度で入手可能なダウコーニング360流体(トリメチル−終端ポリジメチルシロキサン)である。好ましくは、潤滑剤は、100cSの粘度を有するトリメチル−終端PDMSである。
【0036】
針は、より高い硬度のために加熱処理されていてもよく、または304ステンレス鋼よりも硬い合金製であってもよい。針の先端形状は、頻回注射の間に、針の鋭さを維持するために、変更されてもよい。針は、潤滑剤コーティングの耐久性を改善するために、接着プロモーターで処理されていてもよい。接着プロモーターは、ポリ(パラキシレン)、水性または溶剤ベースのシラン類、アミノシリコーン類のような蒸着されたポリマー類、および針表面の機械的粗化を含んでいてもよい。
【0037】
本発明の例示的な実施形態に従うペン針は、針が所定の使用回数を超えて使用されるのを防止する自動無力化装置を含んでいてもよい。1回の使用は、外側カバー内での針の除去および挿入の1つのサイクルとして定義される。外側カバーは、市販の薬物送達ペンのペンキャップ内に受容されるように寸法付けられていてもよい(
図1および2)。針が使用されておらずおよび外側カバーに格納されているときに、再使用可能な蓋(ラベルの代わり)が針の非患者端の上に配置されていてもよい。
【0038】
潤滑剤コーティングの潤滑性および耐久性は、一般的に、互いに競合する。耐久性の低い潤滑剤は、より小さな貫通力を生み出すが、しかし、貫通力は、第1回目の使用の後、急速に増大する。より耐久性の高い潤滑剤は、針が再使用される際に、より小さな性能低下をもたらすが、しかし、貫通力は、一般的に、第1回目の使用より大きい。性能は、針を貫通の直前に低粘度潤滑剤で処理することによって改善されてもよい。しかしながら、もし潤滑化されるべき針が使用されるずっと前に処理されるならば、潤滑剤は、針から移動していってしまい、それによって、その性能は低減する。
【0039】
図9は、同一の針を用いた頻回貫通の関数としての最大貫通力のプロットである。各データ点は、いつつ(5)の観測値の平均である。コントロール試料は、ロット6307990として製造されたベクトンディッキンソンの29ゲージ、12.7mmのペン針であり、白いインスリンのバイアル栓に貫通させられた。オーバーコート試料は、コントロール試料と同様であるが、しかし、各貫通試験の直前にトリメチル−終端ポリジメチルシロキサン流体(100Cs粘度)中に浸漬された。各貫通のために新しいバイアル栓が使用された。したがって、
図9に示されるように、慣用的に潤滑化された針を低粘度潤滑剤でオーバーコートすることは、およそ20パーセントだけ最大貫通力を低減させる。十回(10)貫通後の平均貫通力は、慣用的に潤滑化された試料に関する88gと比較して、オーバーコートされた試料に関して71gであった。慣用的な(コントロール)針に関する平均貫通力は、第1回目の使用の間に67gであった。したがって、オーバーコートされた針は、十回(10)貫通後に、慣用的に潤滑化された針の第1回目の使用と同様のパフォーマンスを有する。
【0040】
先述の実施形態および利点は、単なる例示であり、および本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態の記載は、例示であることを意図するものであり、および本発明の範囲を限定することを意図するものではない。種々の改良、変更および変形は、当業者には明らかであり、および添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明およびそれらと同等なものの範囲の中にあることが意図される。