特許第6019098号(P6019098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019098
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】フィードバック抑制
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20161020BHJP
   H04R 3/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H04R25/00 H
   H04R25/00 M
   H04R3/02
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-258744(P2014-258744)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2015-136105(P2015-136105A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】PA201370822
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ リザウンド エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN RESOUND A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック コルネリス ディーデリック ファン デル ウェルフ
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−506366(JP,A)
【文献】 特開平01−298899(JP,A)
【文献】 特開平07−007786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/02
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のオーディオ信号を生成するための第1の入力トランスデューサと、
補聴器の第1のフィードバック経路をモデル化するように構成された第1のフィードバック抑制回路と、
第1のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、前記第1のフィードバック抑制回路の第1の出力信号を前記第1のオーディオ信号から減算するための第1の減算器と、
聴力損失補正を実行するために、前記第1のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように前記第1の減算器に結合される聴力損失プロセッサと、
前記処理された第1のフィードバック補正済みオーディオ信号に基づいて音声信号を提供するために、前記聴力損失プロセッサに結合されるレシーバと、
を含む補聴器であって、
前記第1のフィードバック抑制回路が、
前記聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた第1の低速適応フィルタと、
前記第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第1の高速適応フィルタと、を含み、
前記第1の低速適応フィルタのフィルタ係数が、前記第1の低速適応フィルタの出力信号と、前記第1の高速適応フィルタの出力信号及び前記第1のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に、少なくとも部分的に基づいている補聴器。
【請求項2】
前記第1の低速適応フィルタの前記フィルタ係数が、前記第1の低速適応フィルタの前記出力信号と前記第1のオーディオ信号との間の差に基づいている、請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
前記第1の低速適応フィルタの前記フィルタ係数が、前記第1の低速適応フィルタの前記出力信号と前記第1の高速適応フィルタの前記出力信号との間の差に基づいている、請求項1に記載の補聴器。
【請求項4】
前記第1の低速適応フィルタの前記フィルタ係数が、前記第1の低速適応フィルタの前記出力信号と、前記第1の高速適応フィルタの前記出力信号及び前記第1のオーディオ信号の加重和との間の差に基づいている、請求項1に記載の補聴器。
【請求項5】
第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、
前記補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、
第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、前記第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を前記第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、
を更に含み、
前記聴力損失プロセッサが、聴力損失補正を実行するために、前記第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように前記第2の減算器に結合され、
前記第2のフィードバック抑制回路が、
前記聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、
前記第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、
を含み、
前記第2の低速適応フィルタのフィルタ係数が、前記第2の低速適応フィルタの出力信号と、前記第2の高速適応フィルタの出力信号及び前記第2のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている、請求項1に記載の補聴器。
【請求項6】
第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、
前記補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、
第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、前記第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を前記第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、
を更に含む補聴器であって、
前記聴力損失プロセッサが、聴力損失補正を実行するために、前記第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように前記第2の減算器に結合され、
前記第2のフィードバック抑制回路が、
前記第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、
前記第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、
を含み、
前記第2の低速適応フィルタのフィルタ係数が、前記第2の低速適応フィルタの出力信号と、前記第2の高速適応フィルタの出力信号及び前記第2のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている、請求項1に記載の補聴器。
【請求項7】
前記第2の低速適応フィルタの前記フィルタ係数が、前記第2の低速適応フィルタの前記出力信号と前記第2のオーディオ信号との間の差に基づいている、請求項5に記載の補聴器。
【請求項8】
前記第2の低速適応フィルタの前記フィルタ係数が、前記第2の低速適応フィルタの前記出力信号と前記第2の高速適応フィルタの前記出力信号との間の差に基づいている、請求項5に記載の補聴器。
【請求項9】
前記第2の低速適応フィルタの前記フィルタ係数が、前記第2の低速適応フィルタの前記出力信号と、前記第2の高速適応フィルタの前記出力信号及び前記第2のオーディオ信号の加重和との間の差に基づいている、請求項5に記載の補聴器。
【請求項10】
前記第1の低速適応フィルタが、少なくとも1つの基準が満たされた場合に前記フィルタ係数の1つ又は複数を調整するように構成される、請求項1に記載の補聴器。
【請求項11】
前記少なくとも1つの基準が、所定の閾値より大きい、前記第1のフィードバック抑制回路の入力信号の信号レベルを含む、請求項10に記載の補聴器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの基準が、所定の閾値未満である誤差信号の自己相関を含む、請求項10に記載の補聴器。
【請求項13】
前記少なくとも1つの基準が、前記補聴器の電源投入後直ちに実行される第1の更新を構成する更新を実行することを含む、請求項10に記載の補聴器。
【請求項14】
前記少なくとも1つの基準が、所定の閾値未満である、前記第1の高速適応フィルタのフィルタ係数ベクトルのpノルムを含む、請求項10に記載の補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
補聴器における適応フィードバック抑制を実行するための新規の方法及びその方法を利用する補聴器が提供される。その方法によれば、フィードバック抑制は、フィードバック経路の緩やかな変化をモデル化する低速適応フィルタ、及びフィードバック経路の急な変化をモデル化する高速適応フィルタを用いて実行される。
【背景技術】
【0002】
補聴器において、補聴器のマイクロホンに到達する音響信号は、可聴性を回復するために、小さなスピーカで増幅され出力される。マイクロホンとスピーカとの間の距離は短いため、フィードバックを引き起こす可能性がある。フィードバックは、増幅された音響出力信号の一部が逆にマイクロホンへ伝搬する反復増幅が起こることによって生成される。フィードバック信号が、マイクロホンにおける原信号のレベルを超過すると、フィードバックループは、不安定になり、典型的には可聴歪み又はハウリングを引き起こす。フィードバックを止める1つの方法は、利得を低下させることである。
【0003】
フィードバックのリスクは、補聴器で利用できる最大利得を制限してしまうことである。
【0004】
補聴器においてフィードバック抑制を用いることが周知である。フィードバック抑制を用いると、マイクロホンに到達したフィードバック信号は、マイクロホン信号からフィードバックモデル信号を減算することによって抑制される。フィードバックモデル信号は、フィードバック伝搬経路、即ち、それに沿って補聴器の出力信号が補聴器の入力部に逆に伝搬して反復増幅を引き起こすフィードバック伝搬経路をモデル化するように構成されたデジタルフィードバック抑制回路によって提供される。レシーバ(補聴器の技術分野において、補聴器のスピーカは、通常、レシーバと表示される)の伝達関数及びマイクロホンの伝達関数は、フィードバック伝搬経路のモデルに含まれる。
【0005】
典型的には、デジタルフィードバック抑制回路は、フィードバック経路をモデル化するための1つ又は複数のデジタル適応フィルタを含む。フィードバック抑制回路の出力は、オーディオ信号のフィードバック信号部分を除去するために、マイクロホンのオーディオ信号から減算される。
【0006】
2つ以上のマイクロホンを備えた、例えば指向性マイクロホンシステムを有する補聴器において、補聴器は、個々のマイクロホン及びマイクロホンのグループのための別個のデジタルフィードバック抑制回路を含んでも良い。
【0007】
国際公開第99/26453号は、補聴器におけるフィードバック抑制方法の有用な考察を提供する。
【0008】
国際公開第99/26453号は、直列に接続された2つの適応フィルタを用いるフィードバック抑制を開示する(図1を参照)。
【0009】
第1のフィルタは、意図されたユーザへの補聴器のフィッティング中に、且つ/又は補聴器を耳内で作動させた場合に適応される。このフィルタは、ホワイトノイズプローブ信号を用いて迅速に適応し、次にフィルタ係数は、固定化される。即ち補聴器の通常動作中に固定化される。第1のフィルタは、固定フィルタとして動作する。
【0010】
第1のフィルタは、マイクロホン、レシーバを駆動する増幅器及びレシーバの共振、並びに基本音響フィードバック経路など、補聴器の使用中にほぼ一定であると仮定される補聴器フィードバック経路の部分をモデル化する。
【0011】
第2のフィルタは、補聴器の使用中に適応するが、別個のプローブ信号を用いない。このフィルタは、補聴器が不安定になった場合に、迅速な補正をフィードバック抑制回路に提供し、且つ咀嚼、くしゃみ又は電話送受話器の使用によって引き起こされるような、日常的な使用で発生するフィードバック経路の擾乱を追跡する。
【0012】
固定フィルタ及び適応フィルタの直列接続は、速度と精度との間の良好なトレードオフを提供する。単一の長いフィルタは、遅く且つ/又は不正確になる傾向がある。更に、固定フィルタは、プロセッサ要件が比較的低いIIRフィルタである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、実際上、固定フィルタのフィルタ係数は、補聴器が、ディスペンサ又は別の訓練された人によってユーザにフィッティングされる場合に、個々のユーザに対して決定される。これは、追加のフィッティングステップを必要とするだけでなく、ディスペンサによって測定されたフィードバック経路が既に幾つかの可変部分を含むので、フィードバック経路の真の不変部分を捉えることができなくなる。例えば、外耳道内への補聴器の取付け具合は、不変部分に含まれるが、しかしそれは、例えば補聴器が耳に再挿入される場合に変化する可能性がある。
【0014】
国際公開第99/26453号はまた、構成部品のドリフトなど、補聴器における緩やかな変化に従うように第1のフィルタがゆっくりと適応できるようにする機能に言及する。しかしながら、第1のフィルタがゆっくりと適応できるようにする方法に関する更なる説明、即ち、低速適応フィルタ用の適応方法は、国際公開第99/26453号に開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
幾つかの実施形態によれば、低速適応フィルタを適応させる方法が提案される。それによると、補聴器のフィッティング中又は電源投入中における、フィルタ係数の値を決定するための初期設定が回避される。
【0016】
オーディオ信号を生成するための入力トランスデューサと、
補聴器のフィードバック経路をモデル化するように構成されたフィードバック抑制回路と、
フィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、フィードバック抑制回路の出力信号をオーディオ信号から減算するための減算器と、
聴力損失補正を実行するために、フィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように減算器の出力部に結合される聴力損失プロセッサと、好ましくは、
処理されたフィードバックに基づいて音声信号を提供するために、聴力損失プロセッサの出力部に結合される出力トランスデューサ、好ましくはレシーバと、
を含む補聴器であって、
フィードバック抑制回路が、
聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた低速適応フィルタと、
低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた高速適応フィルタと、
を含む補聴器が提供される。
【0017】
高速適応フィルタの出力は、フィードバック抑制回路の出力を構成しても良い。
【0018】
トランスデューサは、あるエネルギ形態の信号を別のエネルギ形態の対応する信号に変換する装置である。例えば、入力トランスデューサは、マイクロホンに到達した音響信号を、対応するアナログオーディオ信号に変換するマイクロホンを含んでも良く、この対応するアナログオーディオ信号では、オーディオ信号の瞬間電圧は、音響信号の音圧と共に連続的に変化する。
【0019】
入力トランスデューサはまた、テレコイルを含んでもよい。テレコイルは、テレコイルにおける磁界を対応するアナログオーディオ信号に変換する。この対応するアナログオーディオ信号では、オーディオ信号の瞬間電圧は、テレコイルにおける磁界強度と共に連続的に変化する。テレコイルは、公共の場所、例えば教会、講堂、劇場、映画館等で、又は駅、空港、ショッピングモールなどのように、場内アナウンスシステムを通して多くの人々に話しかける話者の話し声の信号対雑音比を向上させるために典型的に用いられる。話者の話し声は、誘導ループシステム(「ヒアリングループ」とも称される)を用いて磁界に変換され、テレコイルは、磁気的に送信された話し声の信号を磁気的に受信するために用いられる。
【0020】
テレコイルを用いる場合、フィードバックは、補聴器によって生成された(例えばレシーバによって生成された)磁界をテレコイルが受信する場合に、生成されることがある。
【0021】
入力トランスデューサは、少なくとも2つの互いに離間して設けられたマイクロホンと、当該少なくとも2つのマイクロホンのマイクロホン出力信号を、例えば当該技術分野において周知の指向性マイクロホン信号に組み合わせるように構成されたビームフォーマと、を更に含んでも良い。
【0022】
入力トランスデューサは、1つ又は複数のマイクロホンと、テレコイルと、例えば、無指向性マイクロホン信号、指向性マイクロホン信号、又は、テレコイル信号を単独で又は任意の組み合わせでオーディオ信号として選択するためのスイッチと、を含んでも良い。
【0023】
好ましくは、出力トランスデューサは、レシーバ、即ち小さなスピーカを含んでも良い。レシーバは、アナログオーディオ信号を対応する音響信号に変換する。この対応する音響信号では、瞬時音圧は、アナログオーディオ信号の振幅に従って連続的に変化する。
【0024】
典型的には、アナログオーディオ信号は、アナログデジタルコンバータにおいて、対応するデジタルオーディオ信号に変換されることによってデジタル信号処理に適するようにされる。それにより、アナログオーディオ信号の振幅は、2進数によって表される。このように、デジタル値のシーケンスの形をした離散時間及び離散振幅のデジタルオーディオ信号が、連続時間及び連続振幅のアナログオーディオ信号を表す。
【0025】
本開示の全体を通して、例えば、補聴器によって生成される、音声、機械的振動、電磁界等の結果として生成されるような、補聴器それ自体によって生成されたオーディオ信号の一部を、オーディオ信号のフィードバック信号部分、又は、単にフィードバック信号と呼ぶ。
【0026】
フィードバック抑制回路は、フィードバック経路をモデル化するために、補聴器に設けられる。即ち、フィードバック抑制回路は、フィードバック抑制回路の出力信号が、オーディオ信号のフィードバック信号部分と可能な限りよくぴったりと一致するようにするために、フィードバック経路それ自体と同じ伝達関数を有することが望ましい。
【0027】
フィードバック信号部分が除去又は少なくとも低減されたフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、フィードバック抑制回路の出力信号をオーディオ信号から減算するための減算器が設けられる。
【0028】
フィードバック抑制回路は、フィードバック経路の現在の伝達関数を追跡する適応フィルタを含む。
【0029】
フィードバック抑制回路は、補聴器のフィードバック経路に沿って伝搬するフィードバック信号の遅延に対応する1つ又は複数の電子部品による遅延を含んでも良い。
【0030】
フィードバック抑制回路は、補聴器のフィードバック経路の静止部分をモデル化するように構成された少なくとも1つの固定フィルタを含んでも良い。
【0031】
フィードバック抑制回路は、フィードバック経路をモデル化するように構成された少なくとも1つの低速適応フィルタ及び少なくとも1つの高速適応フィルタを含んでも良い。
【0032】
低速適応フィルタは、意図されたユーザへのフィッティング中に、又は補聴器の電源投入中に、フィードバック抑制回路において初期設定を行うことを不要にする。
【0033】
更に、低速適応フィルタは、耳垢の蓄積、ユーザの外耳道内への補聴器の再挿入による変化、補聴器の電子部品のドリフトなど、フィードバック経路の緩やかな変化に関連して、フィードバック抑制回路の性能を改善する。従って、低速適応フィルタは、分単位又は更に緩やかに起きる変化を追跡しても良く、一方で高速適応フィルタは、何十ミリ秒から数秒単位で行われる微笑、咀嚼、くしゃみ又は電話送受話器の使用などの変化を追跡しても良い。
【0034】
低速適応フィルタのフィルタ係数は、低速適応フィルタの出力信号とオーディオ信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0035】
低速適応フィルタのフィルタ係数は、低速適応フィルタの出力信号と高速適応フィルタの出力信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0036】
低速適応フィルタのフィルタ係数は、低速適応フィルタの出力信号と、高速適応フィルタの出力信号及び第1のオーディオ信号の加重和との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0037】
以下において、上記で最初に言及された補聴器の構成部品及び信号は、「第1の」構成部品及び信号とそれぞれ表示され、それらを、以下で言及される「第2の」構成部品及び信号のそれぞれと区別する。
【0038】
補聴器は、
第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、
補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、
第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、
を更に含んでも良く、
聴力損失プロセッサは、聴力損失補正を実行するために、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するための第2の減算器に結合され、
第2のフィードバック抑制回路は、
聴力損失プロセッサ又は第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、
第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、
を含む。
【0039】
第2の高速適応フィルタの出力は、第2のフィードバック抑制回路の出力を構成しても良い。
【0040】
複数の入力トランスデューサ、例えば前部及び後部マイクロホンを備えた補聴器においては、補聴器ハウジングのサイズが小さいために、入力トランスデューサ間の距離も通常小さい。互いに近接する個々の入力トランスデューサへのフィードバック経路は、同様の伝達関数を有すると予想される。従って、1つのフィルタは、入力トランスデューサのそれぞれの1つに対するフィードバック経路の1つをモデル化するために用いられても良い。以下で「補正フィルタ」と表示される、より単純なフィルタが、モデル化されたフィードバック経路と他の入力トランスデューサのそれぞれへの他のフィードバック経路との間の差をモデル化するために用いられても良い。それによって、低速適応フィルタの共通機能の重複が、ほぼ回避される。フィードバック経路の差は、対象とする出力トランスデューサと入力トランスデューサとの間の物理的距離の差が小さいために、サブサンプル遅延及び小さな振幅応答の形成につながり得る。
【0041】
結果として、補正フィルタの主な目的は、理想的には反因果的なインパルス応答を必要とする補間の形成を実現することであってもよい。何故なら、補間は、補間点の両側におけるサンプルに基づくことが望ましいからである。通常、かかるフィルタは実現が困難であるが、フィードバック抑制回路については、典型的には少なくとも2つまでのサンプルブロックのフィードバックループにおける合計のバルク遅延により、可能となる。このバルク遅延のいくつかは、補正フィルタが所望の補間を実行するための十分な情報を有するように、時間的に少し前に応答を提供するように用いることができる。
【0042】
フィードバック経路における差をモデル化するアイディアは、高速適応フィルタに適用されても良い。動的なフィードバック経路における変化は、補間によってモデル化するのに適した、フィードバックループにおけるサブサンプル時間差を引き起こす可能性があり、且つまた小さな振幅応答の形成をもたらす可能性がある。
【0043】
フィードバック経路に沿った信号の伝搬によって引き起こされる遅延に対応する電子部品による遅延が、フィードバック抑制回路に配置されても良い。これは、適応フィルタを単純化し、且つまた補間の前後の時点のサンプルに基づいた補間を容易にする。
【0044】
対応するフィードバック経路に沿った伝搬遅延に対応するフィードバック抑制回路の遅延は、1つの共通の遅延、好ましくは出力トランスデューサと入力トランスデューサの1つとの間の最短遅延、及び出力トランスデューサからそれぞれの他の入力トランスデューサへの追加遅延をモデル化する個別遅延、の形で提供されても良い。
【0045】
低速適応フィルタは、IIRフィルタほど複雑でなく、それより安定しているFIRフィルタであっても良い。
【0046】
低速フィルタの出力信号は、ビットシフタを用いてスケーリングされても良く、好ましくは適応的にスケーリングされても良い。適応スケーリングなどのスケーリングは、精度を最大限にし、任意選択的に係数範囲を拡張し、且つまた任意の低速適応を可能にする。適応スケーリングなしでは、全てのフィードバック経路については最適なステップサイズが利用できない可能性がある。
【0047】
第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2のオーディオ信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0048】
第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2の高速適応フィルタの出力信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0049】
第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の加重和との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0050】
時間nに出力信号dを計算するための、重みベクトル
【数1】
及び入力ベクトル
【数2】
を備えたFIRフィルタアーキテクチャは、次のように説明される。
【数3】
【0051】
この信号を高速適応フィルタ
【数4】
で畳み込み、uと同様にdをベクトル化し、単純化のために起こり得る遅延を無視することによって、以下においてキャンセル信号cと表示される高速適応フィルタの出力信号cが提供される。
【数5】
【0052】
入力トランスデューサのオーディオサンプルsは、
s(n)=x(n)+f(n)
であるように、外部信号x及びフィードバック信号fの混合であると仮定され、フィードバックキャンセル後に、
e(n)=s(n)−c(n)=x(n)+f(n)−c(n)
であり、この式は、f(n)がc(n)と等しい場合に、完全なキャンセル性能を提供する。
【0053】
原則として、単一の誤差基準を用いて、高速フィルタ係数
【数6】
及び低速フィルタ係数
【数7】
の両方を適応させることが可能である。
【0054】
しかしながら、以下において、低速適応フィルタ及び高速適応フィルタの基本的な目的の相違をより完全に引き出す、より効率的なアプローチが開示される。即ち、低速フィルタは、望ましくは、緩やかな変化だけを受けるフィードバック経路の特性をモデル化し、一方で高速適応フィルタは、望ましくは、急速な変化だけをモデル化する。従って、低速適応フィルタ及び高速適応フィルタのための異なる誤差基準が、より適切になり得る。
【0055】
正常な状況下において、キャンセル信号c(n)は、平均して、フィードバック信号の最良の既知の推定値であると仮定されても良い。従って、低速適応フィルタは、この信号を追跡するために接続され、それによって、誤差信号eを与える高速適応フィルタからの変化を取り入れても良い。
(n)=c(n)−d(n)
【0056】
代替として、直接アプローチ誤差信号は、次のように定義される。
(n)=s(n)−d(n)
それは、高速適応フィルタがその基準状態で固定化された場合に、実際上、フィードバック抑制回路の出力になるであろう信号である。
【0057】
誤差信号eは、高速適応フィルタが適応信号モデルを用いるのでバイアスにそれほど敏感ではないが、それが、低速適応フィルタをトラップして更なる適応を妨げ得る局所最小値につながる可能性がある。
【0058】
誤差信号eは、相関除去信号には最適であるが、トーン入力によって引き起こされるバイアスの影響をより多く受ける可能性がある。
【0059】
従って、別の代替は、上記の誤差信号の加重和を用いることである。
(n)=(1−β)e(n)+βe(n)
=(1−β)c(n)+βs(n)−d(n)
=s(n)−(1−β)e(n)−d(n)
=t(n)−d(n)
この式で、t(n)は、加重和によって定義されるターゲット信号と見なすことができる。
【0060】
βは、固定された所定のパラメータであっても良い。
【0061】
Mサンプルのブロックを処理するための、最小化されるべき、適切な二次誤差基準は、次のように定式化することができる。
【数8】
【0062】
次に、低速適応フィルタ係数に対してJを最小化するような勾配方向を計算するチェーンルールを用いることによって、
【数9】
が与えられ、この式で、
∇e=∇t(n)−∇d(n)
であり、この式は、係数wについて、項∇t(n)を無視する(ターゲットは、現在の内部モデルに依存するべきではない)ことによって、
【数10】
に単純化することができる。その結果、勾配方向は、加重誤差信号をそれぞれのタップにおけるFIRフィルタ入力信号と相互相関させることによって推定される。
【0063】
前部から後部への補正フィルタ係数の導出は、相互相関が、補正フィルタに入力される共通の低速適応フィルタの出力信号d(n)を用いて実行されるという点を除いて、同様であっても良い。
【0064】
低速及び高速適応フィルタのために、ステップサイズは、最小2乗平均(LMS)アルゴリズム、正規化最小2乗平均(NLMS)アルゴリズム、又は直線探索法、共役勾配法、ヘッシアン推定技術など、適応フィルタの技術分野において周知の方法で決定されても良い。
【0065】
低速適応フィルタについては、しかしながら、単純な符号に基づいたアルゴリズムでも十分であり得、適切なステップサイズが、現在のフィルタ係数から直接決定されても良い。
【0066】
フィルタ係数の調整の複雑さを最小化するために、係数の幾つかだけ、即ち少なくとも1つの係数が、各サンプルブロックに対して調整、即ち更新されても良い。1つの相互相関だけが用いられるので、1つの重みのための計算の複雑さは、1つのFIRフィルタ係数を追加する複雑さとほぼ等しい。例えば、ブロック当たり4つのフィルタ係数を超える更新は、少なくとも低速適応フィルタのためには望ましくない可能性がある。
【0067】
ひとたび、更新サイクルが完了すると、即ち全ての係数が、ひとたび調整、つまり更新されると、特別のイベントが、係数ステップサイズ、モデルスケーリング、及び制約などの管理上の設定を更新するためにスケジューリングされる。最適な精度のために、ステップサイズ及びスケーリングは、補聴器の正常動作中に更新されなければならない。何故なら、フィードバック経路の振幅が、前もって知られていないからである。しかしながら、合理的な推定値が、初期収束を加速するために提供されても良い。
【0068】
符号に基づいた更新についての良好なステップサイズは、フィードバック経路の振幅応答に比例して定義される。ひとたび、フィードバック振幅の少なくとも大まかな目安が知られると、このアプローチは、フィードバック信号レベルと無関係に、フィードバック経路の変化を追跡するためのほぼ一定の精度を提供する。
【0069】
フィードバック経路が未知の場合に、別のアプローチが、補聴器の電源投入の直後に用いられても良い。初期始動段階において、より速い、且つ最初は非比例的でさえあるステップサイズが、収束を加速し、且つハウリングなどの起こり得る初期フィードバックを素早く消すために用いられても良い。初期レートから最終レートまでの遷移時間は、変更可能であり、数秒から最大ほぼ一分程度であっても良い。
【0070】
代替又は追加として、緩やかな利得の増加及び永続メモリに以前に記憶された係数の読み込みが、実行されても良い。
【0071】
低速適応フィルタが、誤解を招きやすい信号又は情報のない信号を追跡し得る状況において、低速適応フィルタの適応を防止するために、適応のための1つ又は複数の基準が、低速適応フィルタのために追加されても良い。それによって、低速適応フィルタは、或る条件でのみそのフィルタ係数の1つ又は複数を調整するように構成されても良い。
【0072】
例えば、低速適応フィルタは、(1)信号レベルが、所定の閾値を超える場合に、(2)(直接誤差)信号及び対応する信号モデルが、適応に対して保護されるべきと考えられる場合に、且つ/又は、(3)補聴器が、その初期始動段階(電源投入の直後)である場合に、そのフィルタ係数の1つ又は複数を調整するようにだけ構成されても良い。
【0073】
(1)のレベル閾値は、無意味な入力信号、例えばマイクロホンノイズへの適応を主として防止する。これはまた、アルゴリズムが、静かな状態又は消音された状態で起動される場合に、始動段階を延長し得る。
【0074】
(2)に関連して、信号は、それがあまり予測できない場合(例えば、純粋なトーンは、確実に予測可能である)に、適応に対して保護されると考えられる。上記の場合は、例えば高速適応フィルタの更新のために使用される相関除去された誤差信号の信号レベルを、直接誤差信号それ自体のレベルと比較することによって決定される。
【0075】
追加又は代替として、誤差信号は、(信号モデルを表す)高速適応フィルタの係数ベクトルのpノルム、好ましくは1ノルムが、所定の閾値未満である場合(大きな1ノルムはトーン入力を示す)に、保護されると考えられる。
【0076】
補聴器は、異なる周波数帯域において異なって聴力損失補正を実行する、従って意図されたユーザの聴力損失の周波数依存性を考慮するマルチバンド補聴器であっても良い。マルチバンド補聴器において、入力トランスデューサからのオーディオ信号は、2以上の周波数チャネル又は帯域に分割される。典型的には、オーディオ信号は、各周波数帯域において異なって増幅される。例えば、意図されたユーザの聴力損失に従ってオーディオ信号のダイナミックレンジを圧縮するために、コンプレッサが利用されても良い。マルチバンド補聴器において、コンプレッサは、周波数帯域のそれぞれにおいて異なって圧縮を実行し、圧縮比だけでなく各バンドに関連する時定数も変化させる。時定数は、コンプレッサのアタック及びリリースの時定数を指す。コンプレッサのアタック時間は、コンプレッサが、大きな音声の始めに利得を低下させるために必要とされる時間である。リリース時間は、コンプレッサが、大きな音声の停止後に利得を増加させるために必要とされる時間である。
【0077】
周波数帯域は、歪み周波数帯域であっても良い。例えば、補聴器は、国際公開第03/015468号においてより詳細に開示されているようなデジタル周波数ワーピングを用いて、ダイナミックレンジ圧縮を実行するコンプレッサを有しても良い。特に、歪みコンプレッサの基本動作原理は、国際公開第03/015468号の図11及び説明の対応部分に示されている。
【0078】
例えば1つ又は複数の適応フィルタを含むフィードバック抑制回路は、広帯域モデルであっても良い。即ち、そのモデルは、周波数帯域セットに分割されずに、実質的に、補聴器の動作の全周波数範囲又は補聴器の周波数範囲の有効部分において動作し得る。
【0079】
代替として、フィードバック抑制回路は、各周波数帯域におけるフィードバック経路の個別モデル化のために周波数帯域セットに分割されても良い。この場合に、残留フィードバック信号の推定値は、フィードバック抑制回路の各周波数帯域mにおいて個々に提供されても良い。
【0080】
フィードバック抑制回路の周波数帯域m及び聴力損失補正の周波数帯域kは、同一であっても良いが、しかし好ましくは、それらは異なり、且つ好ましくはフィードバック抑制回路の周波数帯域mの数は、聴力損失補正の周波数帯域の数より少ない。
【0081】
本開示の全体を通して、オーディオ信号なる用語は、マイクロホンの出力部から聴力損失プロセッサの入力部までの信号経路の一部を形成する任意のアナログ又はデジタル信号を識別するために用いられる。
【0082】
フィードバック抑制回路は、1つ又は複数の専用電子ハードウェア回路として実現されても良く、適切な信号処理ソフトウェアと組み合わせて信号プロセッサの一部を形成しても良く、又は専用ハードウェアと、適切な信号処理ソフトウェアを備えた1つ又は複数の信号プロセッサとの組み合わせであっても良い。
【0083】
新規の補聴器における信号処理は、専用ハードウェアによって実行されても良く、信号プロセッサにおいて実行されても良く、又は専用ハードウェアと1つ若しくは複数の信号プロセッサとの組み合わせにおいて実行されても良い。
【0084】
本明細書で用いられている、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」等の用語は、ハードウェア、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、または実行中のソフトウェアのいずれかのCPU関連の構成要素を指すように意図されたものである。
【0085】
例えば、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」等は、プロセッサで実行中のプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行スレッド、および/またはプログラムでもよいが、それらに限定されることはない。
【0086】
実例として、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」等の用語は、プロセッサで実行中のアプリケーション及びハードウェアプロセッサの両方を示す。1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」など、又はこれらの任意の組み合わせも、プロセスおよび/または実行スレッド内に存在してもよく、1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「制御装置」、「システム」等、またはそれらのどのような組み合わせも、1つのハードウェアプロセッサ上に、場合によっては、他のハードウェア回路との組み合わせで局在してもよく、および/または2つ以上のハードウェアプロセッサ間で、場合によっては、他のハードウェア回路との組み合わせで分配されてもよい。
【0087】
また、プロセッサ(又は類似のもの)は、任意の構成部品、又は信号処理を実行できる任意の構成部品の組み合わせであっても良い。例えば、信号プロセッサは、ASICプロセッサ、FPGAプロセッサ、汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路コンポーネント、又は集積回路であっても良い。
【0088】
補聴器は、第1のオーディオ信号を生成するための第1の入力トランスデューサと、補聴器の第1のフィードバック経路をモデル化するように構成された第1のフィードバック抑制回路と、第1のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第1のフィードバック抑制回路の第1の出力信号を第1のオーディオ信号から減算するための第1の減算器と、聴力損失補正を実行するために、第1のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように第1の減算器に結合される聴力損失プロセッサと、処理された第1のフィードバック補正済みオーディオ信号に基づいて音声信号を提供するために聴力損失プロセッサに結合されるレシーバと、を含み、第1のフィードバック抑制回路は、聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた第1の低速適応フィルタと、第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第1の高速適応フィルタと、を含み、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と、第1の高速適応フィルタの出力信号及び第1のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている。
【0089】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と第1のオーディオ信号との間の差に基づいている。
【0090】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と第1の高速適応フィルタの出力信号との間の差に基づいている。
【0091】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と、第1の高速適応フィルタの出力信号及び第1のオーディオ信号の加重和との間の差に基づいている。
【0092】
任意選択的に、補聴器は、第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、を更に含み、聴力損失プロセッサは、聴力損失補正を実行するために、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように第2の減算器に結合され、第2のフィードバック抑制回路は、聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、を含み、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている。
【0093】
任意選択的に、補聴器は、第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、を更に含み、聴力損失プロセッサは、聴力損失補正を実行するために、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように第2の減算器に結合され、第2のフィードバック抑制回路は、第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、を含み、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている。
【0094】
任意選択的に、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2のオーディオ信号との間の差に基づいている。
【0095】
任意選択的に、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2の高速適応フィルタの出力信号との間の差に基づいている。
【0096】
任意選択的に、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の加重和との間の差に基づいている。
【0097】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタは、少なくとも1つの基準が満たされた場合に、フィルタ係数の1つ又は複数を調整するように構成される。
【0098】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、所定の閾値より大きい、第1のフィードバック抑制回路の入力信号の信号レベルを含む。
【0099】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、所定の閾値未満である誤差信号の自己相関を含む。
【0100】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、補聴器の電源投入直後に実行される第1の更新を構成する更新を実行することを含む。
【0101】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、所定の閾値未満である第1の高速適応フィルタのフィルタ係数ベクトルのpノルムを含む。
【0102】
他の及び更なる態様及び特徴は、実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって明らかになろう。
【0103】
以下において、新規の方法及び補聴器は、様々な例が示されている図面に関連して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】フィードバック経路を備えた補聴器を概略的に示す。
図2】フィードバック抑制を備えた先行技術の補聴器を概略的に示す。
図3】フィードバック抑制を備えた新規の補聴器を概略的に示す。
図4】フィードバック抑制を備えた別の新規の補聴器を概略的に示す。
図5】フィードバック抑制を備えた更に別の新規の補聴器を概略的に示す。
図6】フィードバック抑制を備えた更に別の新規の補聴器を概略的に示す。
図7】フィードバック抑制を備えた更に別の新規の補聴器を概略的に示す。
図8】フィードバック抑制を備えた更に別の新規の補聴器を概略的に示す。
図9】信号モデル化回路を備える高速適応フィルタを有するフィードバック抑制を備えた別の新規の補聴器を概略的に示す。
図10】信号モデル化回路をより詳細に概略的に示す。
図11】新規のフィードバック抑制回路の一部を概略的に示す。
図12】再挿入が繰り返された場合のフィードバック経路伝達関数のプロットを示す。
図13】低速フィルタフィードバック経路のモデル化の性能についてのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
図面は、実施形態の設計及び有用性を示し、図面では、同様の要素は、共通の参照符号によって参照される。従って、同様の要素は、各図の説明に関連して詳細には説明されない場合がある。上記で挙げられた並びに他の利点及び目的がどのように得られるかをより良く理解するために、実施形態のより個別的な説明が提供され、それらは、添付の図面に示されている。図面は、特徴の説明を容易にすることのみを意図していることに留意されたい。図面は、特許請求の範囲に記載された発明の網羅的な説明を意図するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲に対する限定を意図するものでもない。更に、図示された特徴は、全ての態様又は利点を示しているとは限らない。特定の特徴と関連して説明される態様又は利点は、必ずしもその特徴に限定されず、任意の他の特徴において(たとえそのように図示されず、明示的に説明されていなくても)実現することができる。
【0106】
特許請求の範囲に係る新規の補聴器は、添付の図面に示されていない異なる形態で具体化されても良く、本明細書で述べられている例に限定されるように解釈されるべきではない。
【0107】
図1は、補聴器10と、フィードバック経路12、即ちそれに沿って、補聴器10によって生成された信号が補聴器10の入力部に逆に伝搬するフィードバック経路12と、を概略的に示す。
【0108】
図1において、音響信号14が、マイクロホン16で受信され、マイクロホン16は、音響信号14をオーディオ信号18に変換し、オーディオ信号18は、聴力損失補正のための聴力損失プロセッサ20に入力される。聴力損失プロセッサ20において、オーディオ信号18は、ユーザの聴力損失に従って増幅される。聴力損失プロセッサ20は、例えばマルチバンドコンプレッサを含んでも良い。聴力損失プロセッサ20の出力信号22は、レシーバ26によって音響出力信号24に変換され、レシーバ26は、補聴器10がユーザの耳において適切な動作位置で着用された場合に、ユーザの鼓膜に向けて音響信号を放射する。
【0109】
典型的には、レシーバ26からの音響信号24の一部は、図1でフィードバック経路12として示されているように、マイクロホン16に逆に伝搬する。
【0110】
低い利得では、フィードバックは、単に無害な音色変化を与えるだけである。しかしながら、大きな補聴器利得を用いると、マイクロホン16におけるフィードバック信号レベルは、オリジナルの音響信号14のレベルを超過し、それによって、可聴歪み及び恐らくハウリングを引き起こす可能性がある。
【0111】
フィードバックを克服するために、図2に示されているように、補聴器にフィードバック抑制回路を設けることが周知である。
【0112】
図2は、フィードバック抑制回路28を備えた補聴器10を概略的に示す。フィードバック抑制回路28は、フィードバック経路12をモデル化する。即ち、フィードバック抑制回路は、フィードバック経路12に沿って伝搬される信号と同一の信号を生成しようとする。フィードバック抑制回路28の伝達関数が、望ましくは、レシーバ26の伝達関数、フィードバック経路12の伝達関数、及びマイクロホン16の伝達関数の和と等しくなるように、フィードバック抑制回路28が、レシーバ26及びマイクロホン16のモデルを含むことに留意すべきである。
【0113】
フィードバック抑制回路28は、聴力損失プロセッサ20において処理が行われる前にオーディオ信号18のフィードバック信号部分を抑制又はキャンセルするために、減算器32への出力信号30を生成する。
【0114】
従来の補聴器10において、フィードバック抑制回路28は、典型的には、フィードバック経路12における変化に適応する適応デジタルフィルタである。
【0115】
国際公開第99/26453号は、2つの適応フィルタの直列接続を備えたフィードバック抑制を開示する。ディスペンサのオフィスにおいて意図されたユーザに補聴器のフィッティングが行われる場合に、第1のフィルタ36が適応される。フィッティングにおいて、フィルタ36は、ホワイトノイズプローブ信号を用いて迅速に適応し、次いで、フィルタ係数が固定化される。即ち、その後の補聴器の正常動作中には、第1のフィルタ36は、固定フィルタ36として動作する。
【0116】
第1のフィルタ36は、マイクロホン16の伝達関数及びレシーバ26の伝達関数、並びにフィードバック経路12の基本部分など、補聴器10の使用中にほぼ一定であると仮定される補聴器フィードバック経路12の部分をモデル化する。
【0117】
第2のフィルタ38は、補聴器10の使用中に適応し、別個のプローブ信号を用いない。このフィルタ38は、補聴器10が不安定になった場合に、フィードバック抑制回路28の迅速な補正を提供し、且つ咀嚼、くしゃみ又は電話送受話器の使用によって引き起こされるような、日常的な使用で発生するフィードバック経路12の擾乱を追跡する。従って、高速適応フィルタ38は、数十ミリ秒単位から数秒単位までで起こる変化を追跡し得る。
【0118】
追加のフィッティングステップを要求する場合を除いて、固定フィルタ36は、モデル化された伝達関数の真の不変部分を捉えることができない。何故なら、決定された固定フィルタ係数が、既に幾つかの可変部分を含むからである。例えば、外耳道内への補聴器10の取付け具合は、不変部分に含まれるが、しかしそれは、例えば補聴器10が耳に再挿入される場合に変化する可能性がある。
【0119】
以下において、追加のフィッティングステップを必要としない、且つまたモデル化された伝達関数の真の可変部分に対処する新規の補聴器が示されている。
【0120】
図3は、特許請求の範囲に係る補聴器10の第1の例を示す。補聴器10は、オーディオ信号18aを生成するための入力トランスデューサ、即ちマイクロホン16aと、フィードバック経路12aをモデル化するフィードバック抑制回路28a(即ち、フィードバック抑制回路28aは、フィードバック経路12aに沿って伝搬される信号と同一の信号を生成しようとする)と、を有する。フィードバック抑制回路28aの伝達関数が、望ましくは、レシーバ26の伝達関数、フィードバック経路12aの伝達関数、及びマイクロホン16aの伝達関数の和と等しくなるように、フィードバック抑制回路28aが、レシーバ26及びマイクロホン16aのモデルを含むことに留意されたい。
【0121】
フィードバック抑制回路28aは、聴力損失プロセッサ20において処理が行われる前にオーディオ信号18aのフィードバック信号部分を抑制又はキャンセルするために、減算器32aへの出力信号30aを生成する。
【0122】
聴力損失プロセッサ20は、フィードバック補正済みオーディオ信号34aを処理して聴力損失補正を実行するために減算器32aの出力部に結合されており、さらにレシーバ26に結合されている。レシーバ26は、処理されたフィードバック補正済みオーディオ信号22を音声信号に変換するために聴力損失プロセッサ20の出力部に結合されている。
【0123】
フィードバック抑制回路28aは、聴力損失プロセッサ20の出力部に結合された入力部、及び出力部を備えた低速適応フィルタ36aと、低速適応フィルタ36aの出力部に結合された入力部、及びフィードバック抑制回路28aの出力部を構成する出力部を備えた高速適応フィルタ38aと、を含む。
【0124】
図示された補聴器10の正常動作中に、キャンセル信号30aは、ほとんどの状況において、オーディオ信号18aのフィードバック信号部分の良好な推測を構成する。従って、低速適応フィルタ36aは、信号30aを追跡するように接続されており、それによって、高速適応フィルタ38aからの更新を取り入れる。
【0125】
従って、低速適応フィルタ36aのフィルタ係数は、減算器40aによって出力される、低速適応フィルタ36aの出力信号44aと高速適応フィルタ38aによって出力されるキャンセル信号30aとの間の差と等しい誤差信号42aに、少なくとも部分的に基づいている。
【0126】
高速適応フィルタ38aのフィルタ係数は、減算器32aによって出力される誤差信号34aに、少なくとも部分的に基づいている。
【0127】
低速適応フィルタ36aを備えることにより、フィードバック抑制回路28aの初期設定が不要となる。また、フィードバック経路における緩やかな変化は、低速適応フィルタ36aによって適切にモデル化される。
【0128】
固定フィルタ(図11を参照)が、低速適応フィルタ36a及び高速適応フィルタ38aと直列に接続されても良い。適応フィルタ36a、38aが初期値からの変動に対処することだけを要求されるように、固定フィルタが、マイクロホン16aの伝達関数、レシーバ26を駆動する増幅器(図示せず)の伝達関数、及びレシーバ26の伝達関数、並びにフィードバック経路12aの基本部分の初期値など、フィードバック経路12aの真の不変部分をモデル化するように構成されていてもよい。
【0129】
バルク遅延(図11を参照)が、低速適応フィルタ36a及び高速適応フィルタ38aと直列に接続されても良い。バルク遅延は、フィードバック経路に沿って伝搬するフィードバック信号の伝搬遅延をモデル化し、それによって、このタスクから適応フィルタ36a、38aを解放するように構成されていても良い。
【0130】
バレルシフタ(図11を参照)が、好ましくは適応的に出力信号をスケーリングするために、低速適応フィルタ36a及び/又は高速適応フィルタ38aの出力部に接続されても良い。適応スケーリングなどのスケーリングは、精度を最大限にし、任意選択的に係数範囲を拡張し、且つまた任意の低速適応を可能にする。適応スケーリングなしでは、全てのフィードバック経路については最適なステップサイズが利用できない可能性がある。
【0131】
図4に示されている補聴器10は、以下の点を除いて、図3の補聴器と同様である。即ち、図4の補聴器10は、2つのマイクロホン16a、16b、つまり前部マイクロホン16a及び後部マイクロホン16bを有し、聴力損失プロセッサ20が、補聴器の技術分野において周知のような、選択可能なビーム形成のためのビームフォーマを含むという点を除いて、図3の補聴器と同様である。前部マイクロホン16aへのフィードバック経路12aは、図3に示されているフィードバック回路28aと同一の第1のフィードバック抑制回路28aによってモデル化される。同様に、後部マイクロホン16bへのフィードバック経路12bは、第2の低速適応フィルタ36bの入力が、聴力損失プロセッサ20の出力部22ではなく、第1の低速適応フィルタ36aの出力部44aに結合されるという点を除いて、図3に示されているフィードバック回路28aに対応する第2のフィードバック抑制回路28bによってモデル化される。
【0132】
図示された補聴器10において、レシーバ26と前部マイクロホン16aとの間の距離は、レシーバ26と後部マイクロホン16bとの間の距離より短い。逆が正しい場合、即ち、レシーバ26と後部マイクロホン16bとの間の距離が最も短い場合、マイクロホン16aは、後部マイクロホンであり、マイクロホン16bは、前部マイクロホンである。
【0133】
従って、第1の低速適応フィルタ36a及び第2の低速適応フィルタ36bの直列接続が合わさって、後部マイクロホン16bへのフィードバック経路をモデル化するように、第1の低速適応フィルタ36aは、前部マイクロホン16aへのフィードバック経路をモデル化しており、第2の低速適応フィルタ36bは、前部マイクロホン16aへのフィードバック経路と後部マイクロホン16bへのフィードバック経路との間の差をモデル化している。図示された例において、前部及び後部マイクロホン16a、16b間の距離は小さく、フィードバック経路12a、12bのそれぞれは、サブサンプル遅延差及び振幅応答の形成における小さな差を備える同様の伝達関数を有する。従って、第2の低速適応フィルタ36bは、第1の低速適応フィルタ36aより簡素である。第2の低速適応フィルタ36bは、フィードバック抑制回路28a、28bのバルク遅延(図11を参照)によって可能にされる反因果的な補間を実行する。
【0134】
個々のフィードバック経路12a、12bが同様の伝達関数を有しない別の例(図示せず)において、前部マイクロホン16a及び後部マイクロホン16bへのフィードバック経路12a、12bは、それぞれ、独立したフィードバック回路28a、28bによってモデル化されても良く、フィードバック回路28a、28bのそれぞれは、図3に示されているフィードバック回路28aと同様であり、第1及び第2の低速適応フィルタ36a、36bの両方の入力部は、聴力損失プロセッサ20の出力部22に結合される。
【0135】
第1の固定フィルタ(図11を参照)が、第1の低速適応フィルタ36a及び第1の高速適応フィルタ38aと直列に接続されても良い。第1の固定フィルタは、第1の低速及び高速適応フィルタ36a、38aが、初期値からの変動に対処することだけを要求されるように、マイクロホン16aの伝達関数、レシーバ26を駆動する増幅器(図示せず)の伝達関数、及びレシーバ26の伝達関数、並びに第1のフィードバック経路12aの基本部分の初期値など、第1のフィードバック経路12aの真の不変部分をモデル化するように構成されている。
【0136】
第2の固定フィルタ(図11を参照)が、第2の低速適応フィルタ36b及び第2の高速適応フィルタ38bと直列に接続されても良い。第2の固定フィルタは、第2の低速及び高速適応フィルタ36b、38bが、初期値からの変動に対処することだけを要求されるように、マイクロホン16bの伝達関数、レシーバ26を駆動する増幅器(図示せず)の伝達関数、及びレシーバ26の伝達関数、並びに第2のフィードバック経路12bの基本部分の初期値など、第2のフィードバック経路12bの真の不変部分をモデル化するように構成されている。
【0137】
それぞれのバルク遅延(図11を参照)が、低速適応フィルタ36a、36b及び高速適応フィルタ38a、38bと直列に接続されている。それぞれのバルク遅延は、フィードバック経路12a、12bに沿って伝搬するそれぞれのフィードバック信号の伝搬遅延をモデル化し、それによって、このタスクから適応フィルタ36a、36b、38a、38bを解放するように構成されている。バルク遅延は、第2の低速適応フィルタ36bにおける反因果的な補間を容易にするように配置される。
【0138】
それぞれのバレルシフタ(図11を参照)が、それぞれの出力信号44a、44bを適応的にスケーリングするために、低速適応フィルタ36a、36bの出力部に接続されている。スケーリングは、精度を最大限にし、任意選択的に係数範囲を拡張し、且つまた任意の低速適応を可能にする。適応スケーリングなしでは、全てのフィードバック経路については最適なステップサイズが利用できない可能性がある。
【0139】
図5に示されている補聴器10は、以下の点を除いて、図3の補聴器と同様である。即ち、図5の補聴器10の低速適応フィルタ36aのフィルタ係数が、減算器40aによって出力される、低速適応フィルタ36aの出力信号44aと高速適応フィルタ38aによって出力されるキャンセル信号30aとの間の差と等しいのではなく、減算器40aによって出力される、低速適応フィルタ36aの出力信号44aとオーディオ信号18aとの間の差と等しい誤差信号42aに、少なくとも部分的に基づいているという点を除いて、図3の補聴器と同様である。
【0140】
誤差信号42aは、直接アプローチ誤差ともいう。誤差信号42aは、高速適応フィルタがその基準状態で固定化された場合に、実際上、フィードバック抑制回路の出力になるであろう信号である。誤差信号42aは、相関除去信号については最適であるが、トーン入力によって引き起こされるバイアスの影響をより多く受ける可能性がある。その一方、図3の誤差信号42aは、高速適応フィルタが適応信号モデルを用いるので、バイアスにそれほど敏感でないが、それが、低速適応フィルタを更なる適応を妨げるようトラップしてしまう局所最小値につながる可能性がある。
【0141】
図6に示されている補聴器10は、以下の点を除いて、図4の補聴器と同様である。即ち、図6の補聴器10の第1の低速適応フィルタ36aのフィルタ係数が、第1の減算器40aによって出力される、第1の低速適応フィルタ36aの第1の出力信号44aと、第1の高速適応フィルタ38aによって出力される第1のキャンセル信号30aとの間の差と等しいのではなく、第1の減算器40aによって出力される、第1の低速適応フィルタ36aの第1の出力信号44aと第1のオーディオ信号18aとの間の差と等しい第1の誤差信号42aに、少なくとも部分的に基づいているという点と、同様に、第2の低速適応フィルタ36bのフィルタ係数が、第2の減算器40bによって出力される、第2の低速適応フィルタ36bの第2の出力信号44bと、第2の高速適応フィルタ38bによって出力される第2のキャンセル信号30bとの間の差と等しいのではなく、第2の減算器40bによって出力される、第2の低速適応フィルタ36bの第2の出力信号44bと第2のオーディオ信号18bとの間の差と等しい第2の誤差信号42bに、少なくとも部分的に基づいているという点を除いて、図4の補聴器と同様である。
【0142】
図7に示されている補聴器10は、図3及び図5にそれぞれ示されている誤差信号42aを組み合わせる。従って、図7に示されている補聴器10は、以下の点を除いて、図3の補聴器と同様である。即ち、図7の補聴器10の低速適応フィルタ36aのフィルタ係数が、減算器40aによって出力される、低速適応フィルタ36aの出力信号44aと、高速適応フィルタ38aによって出力されるキャンセル信号30aとの間の差と等しいのではなく、減算器40aによって出力される、低速適応フィルタ36aの出力信号44aと、オーディオ信号18a及び高速適応フィルタ38aによって出力されるキャンセル信号30aの加重和との間の差と等しい誤差信号42aに、少なくとも部分的に基づいているという点を除いて、図3の補聴器と同様である。
【0143】
図8に示されている補聴器10は、以下の点を除いて、図4又は6の補聴器と同様である。即ち、図8の補聴器10の第1の低速適応フィルタ36aのフィルタ係数が、第1の減算器40aによって出力される、第1の低速適応フィルタ36aの第1の出力信号44aと、第1のオーディオ信号18a及び第1の高速適応フィルタ38aによって出力される第1のキャンセル信号30aの加重和との間の差と等しい第1の誤差信号42aに、少なくとも部分的に基づいており、同様に、第2の低速適応フィルタ36bのフィルタ係数が、第2の減算器40bによって出力される、第2の低速適応フィルタ36bの第2の出力信号44bと、第2のオーディオ信号18b及び第2の高速適応フィルタ38bによって出力される第2のキャンセル信号30bの加重和との間の差と等しい第2の誤差信号42bに、少なくとも部分的に基づいているという点を除いて、図4又は図6の補聴器と同様である。
【0144】
図9は、高速適応フィルタ38aが信号モデル化回路64に含まれる、特許請求の範囲に係る補聴器10を示す。信号モデル化回路64が、図3図8に示されている補聴器の適応フィルタ38a、38bを代替してもよい。
【0145】
図3図8に示されている高速適応フィルタ38a、38bは、誤差信号34a、34bの予期される信号強度を最小化するために、いわゆる「直接アプローチ」に従って動作する。「直接アプローチ」は、補聴器の技術分野において周知であり、誤差信号の最小化は、典型的には、最小2乗平均(LMS)アルゴリズム、正規化最小2乗平均(NLMS)アルゴリズム、好ましくはブロック正規化最小2乗平均(BNLMS)アルゴリズム(そこでは2乗誤差基準がサンプルのブロックにわたって最小化される)を用いて実行される。
【0146】
直接アプローチは、入力信号が、ロングテールの自己相関関数を示す場合に、偏った結果を提供することが知られている。例えば、トーン信号の場合に、これは、典型的には次善の解決法につながる。何故なら、適応フィードバックモデルが、実際のフィードバックをモデル化する代わりに、外部トーンを抑制しようと試みるからである。
【0147】
この問題は、トーン入力が存在する状態で安定性を確保する相関除去回路54、56を含む、図9に示されている信号モデル化回路64を用いて解決される。
【0148】
相関除去回路54は、フィルタリングされた誤差信号58を得るために、誤差信号34aに適応相関除去を適用する。相関除去回路56は、フィルタリングされた入力60を得るために、高速適応フィルタ入力44aに適応相関除去を対称的に適用して、フィルタリングされる誤差基準を最小化するようにアルゴリズムブロック62における両方の信号の相互相関が勾配の推定値を提供するようにする。これは、トーン又は自己相関外部信号に対してよりロバストであることが知られている。図示された信号モデル化回路64において、相関除去フィルタ54、56において用いられる信号モデルは、誤差信号34aから得られる。しかしながら、固定相関除去フィルタが、代替として用いられても良い。
【0149】
信号モデル化回路64は、外部信号(トーン入力)に既に存在する相関と、フィードバックによって引き起こされた補聴器出力と入力との間の相関を区別するために、外部信号18aの統計的モデルを維持するように更に構成されても良く、それによってトーン入力に対する感度が低減される。
【0150】
図10は、信号モデル化回路64の実施形態をより詳細に示す。図示された信号モデル化回路64は、適応相関除去回路54、56を含む。適応相関除去は、フィルタリングされた誤差信号58を得るために、誤差信号34aに適用される。更に、適応相関除去は、高速適応フィルタ38aへの入力44aに対称的に適用される。即ち、相関除去回路56のフィルタは、相関除去回路54のフィルタと同一であり、その結果、アルゴリズム62において相関除去された信号58、60を相互相関させることは、フィルタリングされた誤差基準を最小化するように、勾配の推定値を提供する。これは、トーン又は自己相関外部信号の条件に対してよりロバストであることが知られている。
【0151】
相関除去フィルタは、キャンセル後の信号(それは理想的には外部信号と一致する)の線形予測を減算する。或る意味において、それは、本回路においてモデルが増分的に更新されることを除いて、周知の線形予測符号化に極めて似ている。標準FIRフィルタが線形予測に使用され、結果として、(外部信号についての)モデル生成はIIRであり、自己回帰モデルとして解釈することができる。しかしながら、自己回帰モデルに限定する必要はなく、例えば自己回帰移動平均モデル(ARMA)もまた使用可能であるが、安定性及び効率を確保するために余分な注意が必要とされる可能性がある。
【0152】
代替として、固定相関除去フィルタが、信号モデル化回路64において使用されても良い。
【0153】
更に、適応非線形相関除去が、信号経路において適用されても良い。信号経路における非線形相関除去は、補聴器出力と外部信号の相関を減少させる。フィードバックによって引き起こされた入力信号への寄与は、等しく相関されたままであり(適用された非線形性が既知であるからである)、結果として、トーン入力からフィードバックを区別することがより容易になり、従ってフィードバックモデルが改善される。
【0154】
図11は、高速適応フィルタを除いたフィードバック抑制回路を示す。図示された固定フィルタ46、遅延48、52a、52b及びバレルシフタ50a、50bの幾つか又は全てが、図3図8に示されているフィードバック抑制回路28に含まれても良い。
【0155】
聴力損失プロセッサ(図示せず)の出力22は、第1の低速適応フィルタ36a及び第1の高速適応フィルタ(図示せず)と直列に接続された固定フィルタ46に入力される。固定フィルタ46は、フィードバック抑制回路の適応フィルタが、初期値からの変動に対処することだけを要求されるように、マイクロホン(図示せず)の伝達関数、レシーバ(図示せず)を駆動する増幅器(図示せず)の伝達関数、及びレシーバ(図示せず)の伝達関数、並びにフィードバック経路(図示せず)の基本部分の初期値など、フィードバック経路(図示せず)の真の不変部分をモデル化するように構成される。
【0156】
バルク遅延48、52a、52bは、低速適応フィルタ36a、36b及び高速適応フィルタ(図示せず)と直列に接続される。バルク遅延48、52a、52bは、フィードバック経路のそれぞれ(図示せず)に沿って伝搬するフィードバック信号の伝搬遅延のそれぞれをモデル化し、それによって、このタスクからフィードバック抑制回路の適応フィルタを解放するように構成されている。バルク遅延は、第2の低速適応フィルタ36bにおける反因果的な補間を容易にするように配置される。
【0157】
バレルシフタ50a、50bは、それぞれの出力信号44a、44bを適用可能にスケーリングするように、第1及び第2の低速適応フィルタ36a、36bのそれぞれの出力部に接続される。スケーリングは、精度を最大限にし、任意選択的に係数範囲を拡張し、且つまた任意の低速適応を可能にする。適応スケーリングなしでは、全てのフィードバック経路については最適なステップサイズが利用できない可能性がある。
【0158】
図12は、低速適応フィルタによってモデル化されたフィードバック経路の変動の実例として、再挿入が繰り返される場合のフィードバック経路伝達関数のプロットを示す。
【0159】
図13は、60秒の会話の後に低速適応フィルタによって学習されたフィードバック経路の伝達関数80及びモデルの伝達関数82のプロットを示す。
【0160】
特定の実施形態が図示され説明されたが、特許請求の範囲に記載した発明を好ましい実施形態に限定するようには意図していないことが理解されるであろうし、様々な変更及び修正が、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに行われ得ることが、当業者には明白であろう。従って、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく解説的な意味で考えられるべきである。特許請求の範囲に記載した発明は、代替形態、修正形態及び均等形態を含むように意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13