【課題を解決するための手段】
【0015】
幾つかの実施形態によれば、低速適応フィルタを適応させる方法が提案される。それによると、補聴器のフィッティング中又は電源投入中における、フィルタ係数の値を決定するための初期設定が回避される。
【0016】
オーディオ信号を生成するための入力トランスデューサと、
補聴器のフィードバック経路をモデル化するように構成されたフィードバック抑制回路と、
フィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、フィードバック抑制回路の出力信号をオーディオ信号から減算するための減算器と、
聴力損失補正を実行するために、フィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように減算器の出力部に結合される聴力損失プロセッサと、好ましくは、
処理されたフィードバックに基づいて音声信号を提供するために、聴力損失プロセッサの出力部に結合される出力トランスデューサ、好ましくはレシーバと、
を含む補聴器であって、
フィードバック抑制回路が、
聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた低速適応フィルタと、
低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた高速適応フィルタと、
を含む補聴器が提供される。
【0017】
高速適応フィルタの出力は、フィードバック抑制回路の出力を構成しても良い。
【0018】
トランスデューサは、あるエネルギ形態の信号を別のエネルギ形態の対応する信号に変換する装置である。例えば、入力トランスデューサは、マイクロホンに到達した音響信号を、対応するアナログオーディオ信号に変換するマイクロホンを含んでも良く、この対応するアナログオーディオ信号では、オーディオ信号の瞬間電圧は、音響信号の音圧と共に連続的に変化する。
【0019】
入力トランスデューサはまた、テレコイルを含んでもよい。テレコイルは、テレコイルにおける磁界を対応するアナログオーディオ信号に変換する。この対応するアナログオーディオ信号では、オーディオ信号の瞬間電圧は、テレコイルにおける磁界強度と共に連続的に変化する。テレコイルは、公共の場所、例えば教会、講堂、劇場、映画館等で、又は駅、空港、ショッピングモールなどのように、場内アナウンスシステムを通して多くの人々に話しかける話者の話し声の信号対雑音比を向上させるために典型的に用いられる。話者の話し声は、誘導ループシステム(「ヒアリングループ」とも称される)を用いて磁界に変換され、テレコイルは、磁気的に送信された話し声の信号を磁気的に受信するために用いられる。
【0020】
テレコイルを用いる場合、フィードバックは、補聴器によって生成された(例えばレシーバによって生成された)磁界をテレコイルが受信する場合に、生成されることがある。
【0021】
入力トランスデューサは、少なくとも2つの互いに離間して設けられたマイクロホンと、当該少なくとも2つのマイクロホンのマイクロホン出力信号を、例えば当該技術分野において周知の指向性マイクロホン信号に組み合わせるように構成されたビームフォーマと、を更に含んでも良い。
【0022】
入力トランスデューサは、1つ又は複数のマイクロホンと、テレコイルと、例えば、無指向性マイクロホン信号、指向性マイクロホン信号、又は、テレコイル信号を単独で又は任意の組み合わせでオーディオ信号として選択するためのスイッチと、を含んでも良い。
【0023】
好ましくは、出力トランスデューサは、レシーバ、即ち小さなスピーカを含んでも良い。レシーバは、アナログオーディオ信号を対応する音響信号に変換する。この対応する音響信号では、瞬時音圧は、アナログオーディオ信号の振幅に従って連続的に変化する。
【0024】
典型的には、アナログオーディオ信号は、アナログデジタルコンバータにおいて、対応するデジタルオーディオ信号に変換されることによってデジタル信号処理に適するようにされる。それにより、アナログオーディオ信号の振幅は、2進数によって表される。このように、デジタル値のシーケンスの形をした離散時間及び離散振幅のデジタルオーディオ信号が、連続時間及び連続振幅のアナログオーディオ信号を表す。
【0025】
本開示の全体を通して、例えば、補聴器によって生成される、音声、機械的振動、電磁界等の結果として生成されるような、補聴器それ自体によって生成されたオーディオ信号の一部を、オーディオ信号のフィードバック信号部分、又は、単にフィードバック信号と呼ぶ。
【0026】
フィードバック抑制回路は、フィードバック経路をモデル化するために、補聴器に設けられる。即ち、フィードバック抑制回路は、フィードバック抑制回路の出力信号が、オーディオ信号のフィードバック信号部分と可能な限りよくぴったりと一致するようにするために、フィードバック経路それ自体と同じ伝達関数を有することが望ましい。
【0027】
フィードバック信号部分が除去又は少なくとも低減されたフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、フィードバック抑制回路の出力信号をオーディオ信号から減算するための減算器が設けられる。
【0028】
フィードバック抑制回路は、フィードバック経路の現在の伝達関数を追跡する適応フィルタを含む。
【0029】
フィードバック抑制回路は、補聴器のフィードバック経路に沿って伝搬するフィードバック信号の遅延に対応する1つ又は複数の電子部品による遅延を含んでも良い。
【0030】
フィードバック抑制回路は、補聴器のフィードバック経路の静止部分をモデル化するように構成された少なくとも1つの固定フィルタを含んでも良い。
【0031】
フィードバック抑制回路は、フィードバック経路をモデル化するように構成された少なくとも1つの低速適応フィルタ及び少なくとも1つの高速適応フィルタを含んでも良い。
【0032】
低速適応フィルタは、意図されたユーザへのフィッティング中に、又は補聴器の電源投入中に、フィードバック抑制回路において初期設定を行うことを不要にする。
【0033】
更に、低速適応フィルタは、耳垢の蓄積、ユーザの外耳道内への補聴器の再挿入による変化、補聴器の電子部品のドリフトなど、フィードバック経路の緩やかな変化に関連して、フィードバック抑制回路の性能を改善する。従って、低速適応フィルタは、分単位又は更に緩やかに起きる変化を追跡しても良く、一方で高速適応フィルタは、何十ミリ秒から数秒単位で行われる微笑、咀嚼、くしゃみ又は電話送受話器の使用などの変化を追跡しても良い。
【0034】
低速適応フィルタのフィルタ係数は、低速適応フィルタの出力信号とオーディオ信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0035】
低速適応フィルタのフィルタ係数は、低速適応フィルタの出力信号と高速適応フィルタの出力信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0036】
低速適応フィルタのフィルタ係数は、低速適応フィルタの出力信号と、高速適応フィルタの出力信号及び第1のオーディオ信号の加重和との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0037】
以下において、上記で最初に言及された補聴器の構成部品及び信号は、「第1の」構成部品及び信号とそれぞれ表示され、それらを、以下で言及される「第2の」構成部品及び信号のそれぞれと区別する。
【0038】
補聴器は、
第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、
補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、
第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、
を更に含んでも良く、
聴力損失プロセッサは、聴力損失補正を実行するために、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するための第2の減算器に結合され、
第2のフィードバック抑制回路は、
聴力損失プロセッサ又は第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、
第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、
を含む。
【0039】
第2の高速適応フィルタの出力は、第2のフィードバック抑制回路の出力を構成しても良い。
【0040】
複数の入力トランスデューサ、例えば前部及び後部マイクロホンを備えた補聴器においては、補聴器ハウジングのサイズが小さいために、入力トランスデューサ間の距離も通常小さい。互いに近接する個々の入力トランスデューサへのフィードバック経路は、同様の伝達関数を有すると予想される。従って、1つのフィルタは、入力トランスデューサのそれぞれの1つに対するフィードバック経路の1つをモデル化するために用いられても良い。以下で「補正フィルタ」と表示される、より単純なフィルタが、モデル化されたフィードバック経路と他の入力トランスデューサのそれぞれへの他のフィードバック経路との間の差をモデル化するために用いられても良い。それによって、低速適応フィルタの共通機能の重複が、ほぼ回避される。フィードバック経路の差は、対象とする出力トランスデューサと入力トランスデューサとの間の物理的距離の差が小さいために、サブサンプル遅延及び小さな振幅応答の形成につながり得る。
【0041】
結果として、補正フィルタの主な目的は、理想的には反因果的なインパルス応答を必要とする補間の形成を実現することであってもよい。何故なら、補間は、補間点の両側におけるサンプルに基づくことが望ましいからである。通常、かかるフィルタは実現が困難であるが、フィードバック抑制回路については、典型的には少なくとも2つまでのサンプルブロックのフィードバックループにおける合計のバルク遅延により、可能となる。このバルク遅延のいくつかは、補正フィルタが所望の補間を実行するための十分な情報を有するように、時間的に少し前に応答を提供するように用いることができる。
【0042】
フィードバック経路における差をモデル化するアイディアは、高速適応フィルタに適用されても良い。動的なフィードバック経路における変化は、補間によってモデル化するのに適した、フィードバックループにおけるサブサンプル時間差を引き起こす可能性があり、且つまた小さな振幅応答の形成をもたらす可能性がある。
【0043】
フィードバック経路に沿った信号の伝搬によって引き起こされる遅延に対応する電子部品による遅延が、フィードバック抑制回路に配置されても良い。これは、適応フィルタを単純化し、且つまた補間の前後の時点のサンプルに基づいた補間を容易にする。
【0044】
対応するフィードバック経路に沿った伝搬遅延に対応するフィードバック抑制回路の遅延は、1つの共通の遅延、好ましくは出力トランスデューサと入力トランスデューサの1つとの間の最短遅延、及び出力トランスデューサからそれぞれの他の入力トランスデューサへの追加遅延をモデル化する個別遅延、の形で提供されても良い。
【0045】
低速適応フィルタは、IIRフィルタほど複雑でなく、それより安定しているFIRフィルタであっても良い。
【0046】
低速フィルタの出力信号は、ビットシフタを用いてスケーリングされても良く、好ましくは適応的にスケーリングされても良い。適応スケーリングなどのスケーリングは、精度を最大限にし、任意選択的に係数範囲を拡張し、且つまた任意の低速適応を可能にする。適応スケーリングなしでは、全てのフィードバック経路については最適なステップサイズが利用できない可能性がある。
【0047】
第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2のオーディオ信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0048】
第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2の高速適応フィルタの出力信号との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0049】
第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の加重和との間の差に少なくとも部分的に基づいても良い。
【0050】
時間nに出力信号dを計算するための、重みベクトル
【数1】
及び入力ベクトル
【数2】
を備えたFIRフィルタアーキテクチャは、次のように説明される。
【数3】
【0051】
この信号を高速適応フィルタ
【数4】
で畳み込み、uと同様にdをベクトル化し、単純化のために起こり得る遅延を無視することによって、以下においてキャンセル信号cと表示される高速適応フィルタの出力信号cが提供される。
【数5】
【0052】
入力トランスデューサのオーディオサンプルsは、
s(n)=x(n)+f(n)
であるように、外部信号x及びフィードバック信号fの混合であると仮定され、フィードバックキャンセル後に、
e(n)=s(n)−c(n)=x(n)+f(n)−c(n)
であり、この式は、f(n)がc(n)と等しい場合に、完全なキャンセル性能を提供する。
【0053】
原則として、単一の誤差基準を用いて、高速フィルタ係数
【数6】
及び低速フィルタ係数
【数7】
の両方を適応させることが可能である。
【0054】
しかしながら、以下において、低速適応フィルタ及び高速適応フィルタの基本的な目的の相違をより完全に引き出す、より効率的なアプローチが開示される。即ち、低速フィルタは、望ましくは、緩やかな変化だけを受けるフィードバック経路の特性をモデル化し、一方で高速適応フィルタは、望ましくは、急速な変化だけをモデル化する。従って、低速適応フィルタ及び高速適応フィルタのための異なる誤差基準が、より適切になり得る。
【0055】
正常な状況下において、キャンセル信号c(n)は、平均して、フィードバック信号の最良の既知の推定値であると仮定されても良い。従って、低速適応フィルタは、この信号を追跡するために接続され、それによって、誤差信号e
1を与える高速適応フィルタからの変化を取り入れても良い。
e
1(n)=c(n)−d(n)
【0056】
代替として、直接アプローチ誤差信号は、次のように定義される。
e
2(n)=s(n)−d(n)
それは、高速適応フィルタがその基準状態で固定化された場合に、実際上、フィードバック抑制回路の出力になるであろう信号である。
【0057】
誤差信号e
1は、高速適応フィルタが適応信号モデルを用いるのでバイアスにそれほど敏感ではないが、それが、低速適応フィルタをトラップして更なる適応を妨げ得る局所最小値につながる可能性がある。
【0058】
誤差信号e
2は、相関除去信号には最適であるが、トーン入力によって引き起こされるバイアスの影響をより多く受ける可能性がある。
【0059】
従って、別の代替は、上記の誤差信号の加重和を用いることである。
e
m(n)=(1−β)e
1(n)+βe
2(n)
=(1−β)c(n)+βs(n)−d(n)
=s(n)−(1−β)e(n)−d(n)
=t(n)−d(n)
この式で、t(n)は、加重和によって定義されるターゲット信号と見なすことができる。
【0060】
βは、固定された所定のパラメータであっても良い。
【0061】
Mサンプルのブロックを処理するための、最小化されるべき、適切な二次誤差基準は、次のように定式化することができる。
【数8】
【0062】
次に、低速適応フィルタ係数に対してJを最小化するような勾配方向を計算するチェーンルールを用いることによって、
【数9】
が与えられ、この式で、
∇e
m=∇t(n)−∇d(n)
であり、この式は、係数wについて、項∇t(n)を無視する(ターゲットは、現在の内部モデルに依存するべきではない)ことによって、
【数10】
に単純化することができる。その結果、勾配方向は、加重誤差信号をそれぞれのタップにおけるFIRフィルタ入力信号と相互相関させることによって推定される。
【0063】
前部から後部への補正フィルタ係数の導出は、相互相関が、補正フィルタに入力される共通の低速適応フィルタの出力信号d(n)を用いて実行されるという点を除いて、同様であっても良い。
【0064】
低速及び高速適応フィルタのために、ステップサイズは、最小2乗平均(LMS)アルゴリズム、正規化最小2乗平均(NLMS)アルゴリズム、又は直線探索法、共役勾配法、ヘッシアン推定技術など、適応フィルタの技術分野において周知の方法で決定されても良い。
【0065】
低速適応フィルタについては、しかしながら、単純な符号に基づいたアルゴリズムでも十分であり得、適切なステップサイズが、現在のフィルタ係数から直接決定されても良い。
【0066】
フィルタ係数の調整の複雑さを最小化するために、係数の幾つかだけ、即ち少なくとも1つの係数が、各サンプルブロックに対して調整、即ち更新されても良い。1つの相互相関だけが用いられるので、1つの重みのための計算の複雑さは、1つのFIRフィルタ係数を追加する複雑さとほぼ等しい。例えば、ブロック当たり4つのフィルタ係数を超える更新は、少なくとも低速適応フィルタのためには望ましくない可能性がある。
【0067】
ひとたび、更新サイクルが完了すると、即ち全ての係数が、ひとたび調整、つまり更新されると、特別のイベントが、係数ステップサイズ、モデルスケーリング、及び制約などの管理上の設定を更新するためにスケジューリングされる。最適な精度のために、ステップサイズ及びスケーリングは、補聴器の正常動作中に更新されなければならない。何故なら、フィードバック経路の振幅が、前もって知られていないからである。しかしながら、合理的な推定値が、初期収束を加速するために提供されても良い。
【0068】
符号に基づいた更新についての良好なステップサイズは、フィードバック経路の振幅応答に比例して定義される。ひとたび、フィードバック振幅の少なくとも大まかな目安が知られると、このアプローチは、フィードバック信号レベルと無関係に、フィードバック経路の変化を追跡するためのほぼ一定の精度を提供する。
【0069】
フィードバック経路が未知の場合に、別のアプローチが、補聴器の電源投入の直後に用いられても良い。初期始動段階において、より速い、且つ最初は非比例的でさえあるステップサイズが、収束を加速し、且つハウリングなどの起こり得る初期フィードバックを素早く消すために用いられても良い。初期レートから最終レートまでの遷移時間は、変更可能であり、数秒から最大ほぼ一分程度であっても良い。
【0070】
代替又は追加として、緩やかな利得の増加及び永続メモリに以前に記憶された係数の読み込みが、実行されても良い。
【0071】
低速適応フィルタが、誤解を招きやすい信号又は情報のない信号を追跡し得る状況において、低速適応フィルタの適応を防止するために、適応のための1つ又は複数の基準が、低速適応フィルタのために追加されても良い。それによって、低速適応フィルタは、或る条件でのみそのフィルタ係数の1つ又は複数を調整するように構成されても良い。
【0072】
例えば、低速適応フィルタは、(1)信号レベルが、所定の閾値を超える場合に、(2)(直接誤差)信号及び対応する信号モデルが、適応に対して保護されるべきと考えられる場合に、且つ/又は、(3)補聴器が、その初期始動段階(電源投入の直後)である場合に、そのフィルタ係数の1つ又は複数を調整するようにだけ構成されても良い。
【0073】
(1)のレベル閾値は、無意味な入力信号、例えばマイクロホンノイズへの適応を主として防止する。これはまた、アルゴリズムが、静かな状態又は消音された状態で起動される場合に、始動段階を延長し得る。
【0074】
(2)に関連して、信号は、それがあまり予測できない場合(例えば、純粋なトーンは、確実に予測可能である)に、適応に対して保護されると考えられる。上記の場合は、例えば高速適応フィルタの更新のために使用される相関除去された誤差信号の信号レベルを、直接誤差信号それ自体のレベルと比較することによって決定される。
【0075】
追加又は代替として、誤差信号は、(信号モデルを表す)高速適応フィルタの係数ベクトルのpノルム、好ましくは1ノルムが、所定の閾値未満である場合(大きな1ノルムはトーン入力を示す)に、保護されると考えられる。
【0076】
補聴器は、異なる周波数帯域において異なって聴力損失補正を実行する、従って意図されたユーザの聴力損失の周波数依存性を考慮するマルチバンド補聴器であっても良い。マルチバンド補聴器において、入力トランスデューサからのオーディオ信号は、2以上の周波数チャネル又は帯域に分割される。典型的には、オーディオ信号は、各周波数帯域において異なって増幅される。例えば、意図されたユーザの聴力損失に従ってオーディオ信号のダイナミックレンジを圧縮するために、コンプレッサが利用されても良い。マルチバンド補聴器において、コンプレッサは、周波数帯域のそれぞれにおいて異なって圧縮を実行し、圧縮比だけでなく各バンドに関連する時定数も変化させる。時定数は、コンプレッサのアタック及びリリースの時定数を指す。コンプレッサのアタック時間は、コンプレッサが、大きな音声の始めに利得を低下させるために必要とされる時間である。リリース時間は、コンプレッサが、大きな音声の停止後に利得を増加させるために必要とされる時間である。
【0077】
周波数帯域は、歪み周波数帯域であっても良い。例えば、補聴器は、国際公開第03/015468号においてより詳細に開示されているようなデジタル周波数ワーピングを用いて、ダイナミックレンジ圧縮を実行するコンプレッサを有しても良い。特に、歪みコンプレッサの基本動作原理は、国際公開第03/015468号の
図11及び説明の対応部分に示されている。
【0078】
例えば1つ又は複数の適応フィルタを含むフィードバック抑制回路は、広帯域モデルであっても良い。即ち、そのモデルは、周波数帯域セットに分割されずに、実質的に、補聴器の動作の全周波数範囲又は補聴器の周波数範囲の有効部分において動作し得る。
【0079】
代替として、フィードバック抑制回路は、各周波数帯域におけるフィードバック経路の個別モデル化のために周波数帯域セットに分割されても良い。この場合に、残留フィードバック信号の推定値は、フィードバック抑制回路の各周波数帯域mにおいて個々に提供されても良い。
【0080】
フィードバック抑制回路の周波数帯域m及び聴力損失補正の周波数帯域kは、同一であっても良いが、しかし好ましくは、それらは異なり、且つ好ましくはフィードバック抑制回路の周波数帯域mの数は、聴力損失補正の周波数帯域の数より少ない。
【0081】
本開示の全体を通して、オーディオ信号なる用語は、マイクロホンの出力部から聴力損失プロセッサの入力部までの信号経路の一部を形成する任意のアナログ又はデジタル信号を識別するために用いられる。
【0082】
フィードバック抑制回路は、1つ又は複数の専用電子ハードウェア回路として実現されても良く、適切な信号処理ソフトウェアと組み合わせて信号プロセッサの一部を形成しても良く、又は専用ハードウェアと、適切な信号処理ソフトウェアを備えた1つ又は複数の信号プロセッサとの組み合わせであっても良い。
【0083】
新規の補聴器における信号処理は、専用ハードウェアによって実行されても良く、信号プロセッサにおいて実行されても良く、又は専用ハードウェアと1つ若しくは複数の信号プロセッサとの組み合わせにおいて実行されても良い。
【0084】
本明細書で用いられている、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」等の用語は、ハードウェア、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、または実行中のソフトウェアのいずれかのCPU関連の構成要素を指すように意図されたものである。
【0085】
例えば、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」等は、プロセッサで実行中のプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行スレッド、および/またはプログラムでもよいが、それらに限定されることはない。
【0086】
実例として、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」等の用語は、プロセッサで実行中のアプリケーション及びハードウェアプロセッサの両方を示す。1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」など、又はこれらの任意の組み合わせも、プロセスおよび/または実行スレッド内に存在してもよく、1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「制御装置」、「システム」等、またはそれらのどのような組み合わせも、1つのハードウェアプロセッサ上に、場合によっては、他のハードウェア回路との組み合わせで局在してもよく、および/または2つ以上のハードウェアプロセッサ間で、場合によっては、他のハードウェア回路との組み合わせで分配されてもよい。
【0087】
また、プロセッサ(又は類似のもの)は、任意の構成部品、又は信号処理を実行できる任意の構成部品の組み合わせであっても良い。例えば、信号プロセッサは、ASICプロセッサ、FPGAプロセッサ、汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路コンポーネント、又は集積回路であっても良い。
【0088】
補聴器は、第1のオーディオ信号を生成するための第1の入力トランスデューサと、補聴器の第1のフィードバック経路をモデル化するように構成された第1のフィードバック抑制回路と、第1のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第1のフィードバック抑制回路の第1の出力信号を第1のオーディオ信号から減算するための第1の減算器と、聴力損失補正を実行するために、第1のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように第1の減算器に結合される聴力損失プロセッサと、処理された第1のフィードバック補正済みオーディオ信号に基づいて音声信号を提供するために聴力損失プロセッサに結合されるレシーバと、を含み、第1のフィードバック抑制回路は、聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた第1の低速適応フィルタと、第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第1の高速適応フィルタと、を含み、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と、第1の高速適応フィルタの出力信号及び第1のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている。
【0089】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と第1のオーディオ信号との間の差に基づいている。
【0090】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と第1の高速適応フィルタの出力信号との間の差に基づいている。
【0091】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第1の低速適応フィルタの出力信号と、第1の高速適応フィルタの出力信号及び第1のオーディオ信号の加重和との間の差に基づいている。
【0092】
任意選択的に、補聴器は、第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、を更に含み、聴力損失プロセッサは、聴力損失補正を実行するために、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように第2の減算器に結合され、第2のフィードバック抑制回路は、聴力損失プロセッサに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、を含み、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている。
【0093】
任意選択的に、補聴器は、第2のオーディオ信号を生成するための第2の入力トランスデューサと、補聴器の第2のフィードバック経路をモデル化するように構成された第2のフィードバック抑制回路と、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を形成するために、第2のフィードバック抑制回路の第2の出力信号を第2のオーディオ信号から減算するための第2の減算器と、を更に含み、聴力損失プロセッサは、聴力損失補正を実行するために、第2のフィードバック補正済みオーディオ信号を処理するように第2の減算器に結合され、第2のフィードバック抑制回路は、第1の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の低速適応フィルタと、第2の低速適応フィルタに結合された入力部、及び出力部を備えた第2の高速適応フィルタと、を含み、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の少なくとも1つとの間の差に少なくとも部分的に基づいている。
【0094】
任意選択的に、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2のオーディオ信号との間の差に基づいている。
【0095】
任意選択的に、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と第2の高速適応フィルタの出力信号との間の差に基づいている。
【0096】
任意選択的に、第2の低速適応フィルタのフィルタ係数は、第2の低速適応フィルタの出力信号と、第2の高速適応フィルタの出力信号及び第2のオーディオ信号の加重和との間の差に基づいている。
【0097】
任意選択的に、第1の低速適応フィルタは、少なくとも1つの基準が満たされた場合に、フィルタ係数の1つ又は複数を調整するように構成される。
【0098】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、所定の閾値より大きい、第1のフィードバック抑制回路の入力信号の信号レベルを含む。
【0099】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、所定の閾値未満である誤差信号の自己相関を含む。
【0100】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、補聴器の電源投入直後に実行される第1の更新を構成する更新を実行することを含む。
【0101】
任意選択的に、少なくとも1つの基準は、所定の閾値未満である第1の高速適応フィルタのフィルタ係数ベクトルのpノルムを含む。
【0102】
他の及び更なる態様及び特徴は、実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって明らかになろう。
【0103】
以下において、新規の方法及び補聴器は、様々な例が示されている図面に関連して、より詳細に説明される。