(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理容器の外方に処理液導入パイプを形成し、前記溶媒及び被破砕材料を該処理液導入パイプに導入し、前記パルスレーザを該処理液導入パイプに向けて照射し被破砕材料をナノサイズの粒子に光破砕することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナノ粒子分散液の製造方法。
【背景技術】
【0002】
白金は化学的に非常に安定な性質を有し、化学反応を促進する触媒機能に優れるため、自動車排ガス処理や燃料電池の電極等、種々の用途に向けた材料として利用されている。また、白金の光学特性を利用したバイオセンサーへの利用や、抗酸化性を利用した食料品、化粧品等への利用も行われている。
さらに、例えば、シスプラチン(cisplatin)又はカルボプラチン(carboplatin)等は、プラチナ複合体の抗腫瘍剤として知られており、白金の用途領域は幅広い。
しかしながら、白金は極めて高価であるため、例えば触媒として利用される際には、できる限り少量で高い効果が発揮されるよう、白金材料を効率的に使用する必要がある。
【0003】
白金材料の用途として広く用いられている白金ナノコロイド溶液は、水などの溶媒中に白金ナノ粒子を分散、懸濁し、クエン酸、アスコルビン酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどの重合体でコーティングしたものが一般的に知られている。
高い機能を有する白金、金、銀、パラジウムなどの金属ナノ粒子分散液を製造するためには、金属ナノ粒子の凝集などを避けて、金属ナノ粒子を溶媒中に分散安定化することが不可欠である。
従って、金属のナノコロイド溶液を作製する際には、通常、金属ナノ粒子の分散安定化剤(保護剤)として重合体を用いて、金属ナノ粒子の回りをコーティングすることにより、保護剤を含むコロイド溶液中では、金属コロイド粒子の表面に保護剤が吸着することにより、金属ナノ粒子同士の直接的な接触が抑制され、金属ナノ粒子の凝集や沈殿を防ぐことができる。
【0004】
しかし、金属ナノコロイド溶液から例えば触媒(白金触媒など)を調製する際には上述の分散安定化剤(保護剤)を除去する必要がある。このため、金属ナノ粒子の用途により、保護剤を含まない金属ナノ粒子分散液や金属ナノ粒子粉末の提供が求められる場合がある。しかしながら、保護剤を含まない金属ナノ粒子分散液は、保護剤を含む金属コロイド溶液と比較すると、製造時に凝集や沈殿を生じやすく、また、製造後に金属コロイド溶液を保管する際も長期の保存が困難であった。
このような問題点に鑑みて、凝集や沈殿を生じにくく、長期間安定性に優れる保護剤を含まない白金コロイド溶液が特許文献1に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態のナノ粒子分散液の製造方法は、処理容器の溶媒中にナノ粒子化しようとする被破砕材料を浸漬し、該被破砕材料にパルスレーザを照射して被破砕材料をナノサイズの粒子に光破砕して該溶媒中にナノ粒子を分散させたナノ粒子分散液とし、該ナノ粒子分散液中においてナノ粒子同士の凝集を防止するため、超音波を前記ナノ粒子分散液に照射する方法である。ここで、前記パルスレーザは、前記被破砕材料の持つ特有の電子遷移に起因する吸光帯よりも長い波長であることが重要である。
なお、前記パルスレーザは、液相レーザアブレーション法の原理を利用して、ナノ粒子の光劣化を低減することを配慮して、赤外パルスレーザを使用することもできる。
【0012】
また、ナノ粒子化しようとする被破砕材料としては、金属材料やセラミックスなどが挙げられ、金属材料としては、白金、銀、銅、金、パラジウム、コバルト、チタン、又はこれらを含む合金などが挙げられ、セラミックス材料としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化チタン、又はこれらを含む複合セラミックス材料などが挙げられる。
白金は、白金族金属からなり、白金を99質量%以上含有する粒子をいい、ナノ粒子化した場合の平均粒径は5〜50nmであり、特に10〜30nmのものが好ましく適用される。特にその平均粒径が10〜30nmの範囲であると、白金ナノ粒子の抗酸化作用、除菌作用、さらに抗癌活性作用等の効果を高めることができる。
【0013】
前記被破砕材料の形態は、レーザを用いて溶媒中でナノ粒子化するため、板状や粒子状であることが望ましい。レーザでの光破砕の効率を考えると、板状の原料では厚みが0.1mm乃至1mm程度のもの、粒子状の原料では直径が0.1mm乃至1mm程度のものが好ましい。
【0014】
また、被破砕材料を溶媒中でのナノ粒子化を効率化するため、前記被破砕材料の表面をレーザ吸収機能を有する皮膜で覆う処理をすることが望ましい。
【0015】
また、被破砕材料の表面をレーザ吸収機能を有する皮膜で覆う処理をすることによって、パルスレーザのエネルギーを効率よく吸収させ、光破砕を効率よく実行させることができる。レーザ吸収機能を有する皮膜とは、例えば、レーザ吸収色素、顔料系吸収色素(カーボンブラック等)、光吸収性樹脂などの皮膜が挙げられる。
【0016】
また、前記溶媒は、有機溶媒や水などの液体を用いることができるが、コストや安全性を考慮すると、水を用いることが望ましい。なお、ナノ粒子の凝集を充分に防止するために、前記溶媒に分散剤を添加することもできる。分散剤としては、界面活性剤が好適に挙げられる。
【0017】
さらに、前記ナノ粒子分散液の温度を調整する温調機構を、前記処理容器に付設することが望ましい。すなわち、処理容器を冷却して被破砕材料のナノ粒子の品質劣化を低減するとともに、処理容器表面に生ずる結露を防止することができる。処理容器表面に結露が生ずると、レーザ光が散乱してナノ粒子化の効率を低下させるので、この温調機構は、結露防止機能として役割を備えている。温調機構としては、処理容器の外周を冷却する処理チャンバなどが挙げられる。
【0018】
また、前記処理容器の外方に処理液導入パイプを形成し、前記溶媒及び被破砕材料を該処理液導入パイプに導入し、前記パルスレーザを該処理液導入パイプに向けて照射し被破砕材料をナノサイズの粒子に光破砕することもできる。これに、処理液導入パイプに被破砕材料を通すことで、被破砕材料を効率よく光破砕させることができる。
【0019】
本発明のナノ粒子担持粉末の製造方法は、上記のいずれかの製造方法によって製造されたナノ粒子分散液に、該ナノ粒子よりも大きな外径を有する基体粒子を混合した混合液を製造し、該混合液をスプレードライ法により乾燥させて、該基体粒子の表面に該ナノ粒子を担持させる方法である。スプレードライ法によって、大きな外径を有する基体粒子の表面に複数のナノ粒子を担持させることができる。
なお、基体粒子の表面に複数のナノ粒子を担持させた後、100乃至200℃程度の高温で乾燥させて、ナノ粒子の担持を強固なものにすることが望ましい。
【0020】
基体粒子としては、金属材料やセラミックス材料、有機物などが挙げられ、金属材料としては、白金、銀、銅、金、パラジウム、コバルト、チタン、又はこれらを含む合金などが挙げられ、セラミックス材料としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化アエン、炭酸カルシウムなど、又はこれらを含む複合セラミックス材料などが挙げられる。
有機物としては、食品、薬剤、プラスチックスなどが挙げられる。食品や薬剤としては、例えば、ビタミンCやヒアルロン酸、コラーゲン、アスタキサンチン、プラセンタエキスなどの有機物が挙げられる。
【0021】
基体粒子の大きさとしては、1〜100μm程度のものが好ましいが、ナノ粒子よりも大きなものであればその大きさは限定しない。大きな外径を有する基体粒子の表面に複数のナノ粒子を担持させることで、乾燥状態でもナノ粒子の取扱が容易になる。
【0022】
なお、ナノ粒子分散液に基体粒子を混合した混合液の製造にあたっては、単にナノ粒子分散液と基体粒子とを混合すればよいが、基体粒子へのナノ粒子の担持を強固にするために有機や無機のバインダーを添加することもできる。
有機のバインダーとしては接着剤が挙げられ、無機のバインダーとしてはコロイダルシリカが挙げられる。
【0023】
以下、図面とともに本発明によるナノ粒子分散液の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1のナノ粒子分散液の製造方法を示す概略説明図である。
図1において、符号1Aは、被処理液の溶媒中にある被処理材料を光破砕してナノ粒子を製造するためのナノ粒子分散液の製造装置である。被処理液2は、溶媒である液相の水4と、水4中に含まれるナノ粒子化しようとする材料の粒子(被破砕材料)5とから構成されている。実施形態1では、被破砕材料として、粒子状のものを用いた。
【0024】
図1に示すように、実施形態1のナノ粒子分散液の製造方法に用いられる製造装置1Aは、被処理液2を収容するための処理容器3を備えている。処理容器3は、例えば石英で構成されている。この処理容器3を覆うように恒温装置(温調機構)13が設置されている。恒温装置13は、処理容器3内の被処理液2を冷却する冷却手段としての機能を有し、また、低温に冷却された被処理液2を一定温度に保持する。このように被処理液2を冷却することにより、ナノ粒子化の酸化を防止し光破砕の効率を向上することができる。
【0025】
また、製造装置1Aは、処理容器3内に収容された被処理液2に対して所定波長のレーザ光を照射する高出力レーザ光源10を備えている。このレーザ光源10は、被処理液2の水4中にある被光破砕物の原料粒子5をナノ粒子化するために好適な波長のレーザ光を供給する。
【0026】
レーザ光源10としては、レーザ光に設定すべき波長があらかじめ分かっている場合には、波長固定レーザ光源を用いることができる。あるいは、レーザ光源10として、波長可変レーザ光源を用いても良い。この場合、被光破砕物の吸光特性などに基づいて、適切な波長のレーザ光を適宜に設定して照射することができる。また、必要に応じて、レーザ光源10に対して減衰フィルタや光減衰器などの光強度調整手段を設けても良い。
【0027】
処理容器3内には、被処理液2とともにマグネットスティック11が収容されている。このマグネットスティック11、及びマグネットスターラ12は、処理容器3内において被処理液2の水4と原料粒子5とを撹拌して、水4中で原料粒子5を分散させるために用いられる。
【0028】
処理容器3の外部の所定位置には、超音波振動子20、及び超音波振動子20を駆動制御する超音波振動子駆動装置25が設置されている。この超音波振動子20は、処理容器3内の被処理液2に対して、ナノ粒子同士の凝集を防止するための超音波を照射する超音波照射手段である。また、超音波振動子20に対して、処理容器3は、被処理液2への超音波の照射を、共鳴振動を利用して行うことが可能なように構成されている。
【0029】
本実施形態においては、超音波振動子20は、処理容器3の一方の側面上に配置されている。また、処理容器3の超音波振動子20からみて反対側の側面上には、マイクロフォン30が取り付けられている。このマイクロフォン30と、振動振幅測定装置35とにより、超音波照射による処理容器3の振動振幅をモニタする振動振幅モニタ手段が構成されている。
【0030】
レーザ光源10、及び振動子駆動装置25は、コンピュータなどからなる制御装置15に接続されている。また、本実施形態においては、この制御装置15は、マグネットスターラ12、恒温装置13、及び振動振幅測定装置35に対しても接続されている。
この制御装置15は、上記した製造装置1Aの各部の動作を制御することにより、ナノ粒子の製造を制御する。製造装置は、被処理液を冷却しながら、レーザ光の照射(光破砕)および超音波照射ができる設備を備えている。これによって、白金の粒子から白金ナノ粒子分散液(白金ナノ粒子を分散させた水溶液)の効率的な製造ができる。
【0031】
次に、
図1に示した製造装置1Aを用いたナノ粒子分散液の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態において、ナノ粒子としての白金ナノ粒子を分散させたナノ粒子分散液の製造方法を示す製造フローである。
【0032】
まず、溶媒である水4と、原料となる白金の粒子(原料粒子5)とを混合して被処理液2を調製し、処理容器3内に導入する(ステップS101)。次に、恒温装置13を駆動させて、処理容器3及び処理容器3内にある被処理液2を所定の低温まで冷却する(S102)。そして、マグネットスターラ12を動作させ、マグネットスティック11によって被処理液2を撹拌して、原料粒子5を水4の中に分散させる(S103)。
【0033】
続いて、被処理液2に照射する超音波の周波数の設定を行う(S104)。まず、上記のように恒温装置13による冷却、及びマグネットスティック11による撹拌を行った状態で、振動子駆動装置25によって超音波振動子20を駆動し、処理容器3及び被処理液2へと超音波を照射する。また、マイクロフォン30によって超音波照射による処理容器3の振動振幅をモニタし、振動振幅測定装置35を通してモニタ結果を示す電気信号を制御装置15へと出力する。
【0034】
制御装置15は、振動子駆動装置25からの超音波の周波数に関する情報、及び振動振幅測定装置35からのモニタ結果の情報を参照し、照射している超音波の振動周波数と、処理容器3の振動振幅(振動強度)との関係を求める。そして、振動周波数と振幅との関係に基づいて、被処理液2に照射する超音波の周波数を設定する。具体的には、求められた周波数及び振幅の関係において、振動振幅が最大となる周波数が処理容器3での共鳴振動周波数となるので、超音波振動子20から処理容器3に照射される超音波の周波数を、振動子駆動装置25を通して共鳴振動周波数に設定する。
【0035】
次に、制御装置15によってレーザ光源10が制御され、原料粒子5を構成する物質の吸光特性などに応じて設定された波長を有するレーザ光が、レーザ光源10から被処理液2へと照射される。このレーザ光照射により、処理容器3内の被処理液2において水4中にある原料粒子5がナノザイズに光破砕される(光破砕処理=ナノ粒子化処理)。
また、レーザ光の照射とともに、超音波振動子20による処理容器3及び被処理液2へ超音波の照射を行う。この超音波照射により、水4の中で生成されたナノ粒子同士の凝集が防止される(S105)。
【0036】
続いて、被処理液2での光破砕処理の進行状態を確認する(S106)。そして、その進行状態が所定の光破砕処理(ナノ粒子化)の完了条件を満たしていなければ、さらにレーザ照射による光破砕を続行する。
一方、その進行状態が光破砕処理の完了条件を満たし、被処理液2の全体で原料粒子がナノ粒子化されていると判断されたら、レーザ光照射及び超音波照射を停止し(S107)、光破砕処理を終了する。
【0037】
本実施形態では、原料粒子5を含む被処理液2に対し、ナノ粒子化のためのレーザ光源10によるレーザ光照射と、凝集防止のための超音波振動子20による超音波照射とを同時に行っている。これにより、水4の中で、生成されたナノ粒子の凝集の進行を抑制させつつ、レーザ光照射による光破砕処理を行うことが可能となる。
【0038】
すなわち、被処理液2に対して超音波を照射することにより、最小の塊であるナノ粒子の凝集防止、さらには凝集直後の凝集塊の再分散を可能とする。したがって、レーザ光照射に対して超音波照射を併用することにより、被処理液2内で生成されたナノ粒子同士の凝集による凝集化の発生を効果的に抑制することができる。
また、このようにナノ粒子の凝集が防止されることにより、凝集ナノ粒子がレーザ光に対する散乱体となることによるナノ粒子化の効率の低下が防止される。したがって、効率良く材料をナノ粒子化することが可能となる。
【0039】
超音波照射を併用するこのようなナノ粒子分散液の製造方法は、ナノ粒子の濃度を高くして効率良く物質(被破砕材料)のナノ粒子化を行う場合に特に有効である。すなわち、レーザ光照射によるナノ粒子化の効率を向上する上で、溶媒中において生成されるナノ粒子の濃度を高くしてナノ粒子化処理を行うことが必要となる場合がある。
しかしながら、高濃度のナノ粒子の存在下では、ナノ粒子同士の凝集が生じやすい条件となる。このため、凝集ナノ粒子でのレーザ光の散乱によってナノ粒子化の効率が低下し、あるいは、生成されるナノ粒子が粒度のばらつきが大きい不良なものとなる。
これに対して、上記したようにレーザ光照射と同時に超音波照射を行うことにより、このような高濃度のナノ粒子の存在下においても、良好な条件で被破砕材料のナノ粒子化を行うことが可能となる。
【0040】
また、
図1に示した製造装置1Aでは、被処理液2を収容する処理容器3の共鳴振動を利用して超音波振動子20による超音波照射を行っている。これにより、被処理液2に対する超音波照射によるナノ粒子の凝集の防止を好適に実現することができる。この処理容器3としては、例えば、共鳴振動が可能な四角柱、円筒、もしくは球状の形状を有する容器を用いることが好ましい。
また、このように共鳴振動を利用する場合、大振動の共鳴振動に対する処理容器3の耐久性が必要となるが、円筒や球状などの容器を使用して振動に弱い接合部分を減らすことにより、そのような耐久性を高めることができる。
【0041】
さらに、製造装置1Aでは、マイクロフォン30及び振動振幅測定装置35によって処理容器3の振動振幅をモニタし、そのモニタ結果に基づいて超音波の周波数を設定している。これにより、超音波の周波数を処理容器3での共鳴振動周波数などの好適な周波数に設定することができ、超音波照射によるナノ粒子の凝集の防止を確実に実現することが可能となる。振動振幅モニタ手段としては、マイクロフォン30以外にも様々なセンサを用いることができる。
なお、溶媒中でのナノ粒子の凝集については、溶解度の低いナノ粒子ほど凝集性が高く、このような場合に超音波照射の併用による凝集防止の効果は大きい。
【0042】
また、上記実施形態では、恒温装置13によって被処理液2を冷却しつつ、レーザ光照射及び超音波照射を行っている。このような被処理液2の冷却は、レーザ光照射によるナノ粒子の酸化を防止し光破砕の効率を向上させる上で有効であり、また、ナノ粒子の凝集力の低下、強い共鳴振動場の形成などにも寄与する。
【0043】
ここで、レーザ光源10から被処理液2へと照射されるレーザ光の波長は、ナノ粒子化する物質の電子遷移に起因する吸光帯よりも長い波長であることが好ましい。また、光劣化(光化学反応)を避ける必要のある物質の場合、赤外域の波長であることが好ましく、さらに、900nm以上の波長であることが好ましい。これにより、光破砕処理において、品質劣化を低減して好適に実現することができる。
また、レーザ光源10としては、パルスレーザ光源を用いることが好ましい。特に、被処理液2での余分な光化学反応や熱分解の発生を抑制しつつ、充分な効率でナノ粒子化を行うため、光破砕現象を引き起こす光強度の閾値を超えているのであれば、1パルス当たりの照射エネルギーが低く、高い繰返し周波数を有するパルスレーザ光源を用いることが好ましい。
【0044】
また、
図1に示したナノ粒子分散液の製造装置1Aにおいては、あらかじめ光破砕処理に必要なレーザ光の強度及び時間を求めておき、レーザ光照射及び超音波照射の停止を制御することができる。あるいは、被処理液2中での原料粒子5のナノ粒子化状態をモニタするモニタ手段を設置し、そのモニタ結果に応じて制御することとしても良い。
【0045】
<実施形態2>
図3は、実施形態2のナノ粒子分散液の製造方法を示す概略説明図である。ナノ粒子分散液の製造に用いる装置1Bにおいては、水4及び物質の原料粒子5からなる被処理液2を収容する処理容器3、レーザ光源10、マグネットスティック11、マグネットスターラ12、恒温装置13、及び制御装置15の構成については、
図1に示した製造装置1Aと同様である。
【0046】
図3に示す実施形態2においては、超音波照射手段である超音波振動子21は、処理容器3の底面側に配置されている。また、超音波振動子21に対し、超音波振動子21を駆動制御する超音波振動子駆動装置26が設置されている。さらに、振動子駆動装置26からの信号は、振動振幅測定装置36に対しても入力されている。振動振幅測定装置36は、振動子駆動装置26からの信号により、処理容器3の振動振幅を測定する。
実施形態2においては、これらの超音波振動子21、振動子駆動装置26、及び振動振幅測定装置36により、超音波照射による処理容器3の振動振幅をモニタする振動振幅モニタ手段が構成されている。
【0047】
このように超音波振動子21が処理容器3の底面に設置された構成では、水4の底面と上面との間で共鳴振動が形成される。このとき、共鳴振動状態となったときに超音波振動子21が大きく振動し、振動子への印加電圧が大きくなる。したがって、振動振幅測定装置36によって超音波振動子21への印加電圧の振幅変化をモニタすることにより、超音波照射での共鳴振動周波数が得られる。この場合、
図1に示したマイクロフォン30などを振動振幅のモニタ用に別個に設けなくてすむという利点がある。
【0048】
<実施形態3>
図5に、実施形態3のナノ粒子分散液の製造方法を示す。実施形態3においては、
図5に示すナノ粒子分散液の製造装置1Cのように、処理容器3の外方に処理液導入パイプ40を形成し、被処理液2を処理液導入パイプ40に導入し、パルスレーザを処理液導入パイプ40に向けて照射し被破砕材料をナノサイズの粒子(ナノ粒子)に光破砕することもできる。被処理液2中に分散している被破砕材料を、狭い範囲の処理液導入パイプ中を通過させることによって、パルスレーザを集中させ、光破砕を効率よく実行させることができる。
【0049】
<実施形態4>
図6に、実施形態4のナノ粒子分散液の製造方法を示す。実施形態4のナノ粒子分散液の製造方法においては、
図6に示すように原料として板5を用いる。板5の厚みとしては、レーザでの光破砕の効率を考えると、0.1mm乃至1mm程度のものが好ましい。原料となる板5は処理容器3の中に立設されており、板5の面に対して直角方向からレーザが照射される。なお、レーザは板5の全面に対して走査されるよう制御装置15でレーザ光源又は板を移動でいるようにしている。
【0050】
被破砕材料の原料となる板は、通常は薄板1枚をレーザの照射方向に対して直角になるように処理容器3の中に立設させるが、複数枚の板を積層させたものでもよい。この場合、溶媒中でのナノ粒子化を効率化するため、板5の表面をレーザ吸収機能を有する皮膜5aを被覆することが望ましい(
図7(a)参照)。レーザ吸収機能を有する皮膜5aは、パルスレーザのエネルギーを効率よく吸収するので、原料板の光破砕を効率よく実行することができる。レーザ吸収機能を有する皮膜5aとしては、例えば、レーザ吸収色素、顔料系吸収色素(カーボンブラック等)、光吸収性樹脂などの薄膜が挙げられる。
なお、
図7(b)〜(d)に示すように、2枚以上の原料板5を積層したものを立設させてもよい。この場合、原料板5は異なった種類でもよい。積層板の間に皮膜5aを挟むこともできる。
【0051】
次に、
図6に示した製造装置1Dを用いたナノ粒子分散液の製造方法について説明する。
図8は、実施形態4において、ナノ粒子としての白金ナノ粒子を分散させたナノ粒子分散液の製造方法を示す製造フローである。
【0052】
まず、溶媒である水4と、被処理物となる板5とを処理容器3内に浸漬する(ステップS201)。次に、恒温装置13を駆動させて、処理容器3及び処理容器3内にある溶媒を所定の低温まで冷却する(S202)。そして、マグネットスターラ12を動作させ、マグネットスティック11によって溶媒を撹拌する(S203)。
【0053】
続いて、被処理物となる板5に照射する超音波の周波数の設定を行う(S204)。まず、上記のように恒温装置13による冷却、及びマグネットスティック11による撹拌を行った状態で、振動子駆動装置25によって超音波振動子20を駆動し、処理容器3及び溶媒へと超音波を照射する。
また、マイクロフォン30によって超音波照射による処理容器3の振動振幅をモニタし、振動振幅測定装置35を通してモニタ結果を示す電気信号を制御装置15へと出力する。
【0054】
制御装置15は、振動子駆動装置25からの超音波の周波数に関する情報、及び振動振幅測定装置35からのモニタ結果の情報を参照し、照射している超音波の振動周波数と、処理容器3の振動振幅(振動強度)との関係を求める。
そして、振動周波数と振幅との関係に基づいて、被処理液2に照射する超音波の周波数を設定する。具体的には、求められた周波数及び振幅の関係において、振動振幅が最大となる周波数が処理容器3での共鳴振動周波数となるので、超音波振動子20から処理容器3に照射される超音波の周波数を、振動子駆動装置25を通して共鳴振動周波数に設定する。
【0055】
次に、制御装置15によってレーザ光源10が制御され、原料板5を構成する物質の吸光特性などに応じて設定された波長を有するレーザ光が、レーザ光源10から原料板5へと照射される。このレーザ光照射により、処理容器3内の水4の中にある原料板5がナノザイズに光破砕される。
また、レーザ光の照射とともに、超音波振動子20による処理容器3及び溶媒へ超音波の照射を行う。この超音波照射により、水4の中で生成されたナノ粒子同士の凝集が防止される(S205)。
【0056】
続いて、処理容器中での光破砕処理の進行状態を確認する(S206)。そして、その進行状態が所定の光破砕処理(ナノ粒子化)の完了条件を満たしていなければ、さらにレーザ照射による光破砕を続行する。
一方、その進行状態が光破砕処理の完了条件を満たし、全体で原料粒子がナノ粒子化されていると判断されたら、レーザ光照射及び超音波照射を停止し(S207)、光破砕処理を終了する。
【0057】
図9は、本発明のナノ粒子担持粉末の外観形態を示す概略説明図である。
図9に示すナノ粒子担持粉末Qは、上記のいずれかの製造方法によって製造されたナノ粒子分散液に、該ナノ粒子Pよりも大きな外径を有する基体粒子Cを混合した混合液を製造し、該混合液をスプレードライ法により乾燥させて、該基体粒子Cの表面に該ナノ粒子Pを担持させて製造する。スプレードライ法により乾燥させたナノ粒子担持粉末Qは、100乃至200℃程度の高温で乾燥して、基体粒子Cの表面に複数のナノ粒子Pを強固に担持させる。
図9に示すナノ粒子担持粉末Qは、基体粒子Cとしてシリカ(大きさ:10μm)の表面に白金P(大きさ:10nm)を担持させている。
【0058】
(実施例)
本実施例においては、ナノ粒子化しようとする原料粒子5として、白金粒子を用いた。白金は、水に対して極めて不溶性に近い(貧溶媒)顔料であり、ナノ粒子化すると水中で高い凝集性を示す。まず、粒径10〜70μmの白金の原料粒子を濃度1mg/mlの高濃度懸濁状態で処理容器3である石英角セルに3ml入れたサンプルを6つ作製した。石英角セルとしては、10mm×10mm×40mmのものを用い、その底面に直径φ16mm、厚さ3mmのピエゾ振動子を超音波振動子21(
図3参照)として取り付けた。
【0059】
上記した6つのサンプルに対し、それぞれ(a)原料粒子自体、(b)超音波処理のみ実施、(c)超音波共鳴処理のみ実施、(d)光破砕処理のみ実施、(e)超音波処理及び光破砕処理を同時に実施、及び(f)超音波共鳴処理及び光破砕処理を同時に実施、の異なる条件で処理を行った。そして、各処理による白金の粒径変化の効果を粒度分布測定装置(島津製作所SALD7000)によって調べた。これらのサンプルは、いずれもナノ粒子の凝集を防止するための界面活性剤を含んでおらず、凝集ナノ粒子が生じやすい状態となっている。
【0060】
上記した各処理において「超音波処理」は、共鳴振動周波数外の30kHzで超音波振動子を動作させ、30分間処理を行った。また、「超音波共鳴処理」は、共鳴振動周波数である51kHzで超音波振動子を動作させ、30分間処理を行った。また、光破砕処理におけるレーザ光の照射条件は、波長1064nm、パルスレーザ光の1パルス当たりの光強度688mJ/cm
2、レーザ光のスポット直径φ5mm(照射面積0.196cm
2)、繰返し周波数10Hz、パルス幅FWHM4nsとし、照射時間30分間の処理を行った。
なお、本実施例では、粒度分布測定装置で粒子径分布を求める前処理として、界面活性剤(Nonidet P-40:商品名 Igapal CA-630、分子量602、臨界ミセル濃度0.29mM)を3mlの被処理液に対して100μl添加して、ナノ粒子の再凝集が抑制された条件で粒子径分布を測定した。測定時の水温は常温の25℃であった。
【0061】
図4は、上記各処理を施した白金ナノ粒子の粒子径分布を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は白金の粒子径(μm)を示し、縦軸は体積換算の相対粒子量を示している。また、グラフA1〜A6は、それぞれ処理(a)〜(f)に対応している。
【0062】
図4のグラフにおいて、グラフA1及びA2を比較すると、白金の粒子径分布は超音波処理のみでは変化しないことがわかる。また、グラフA2及びA3を比較すると、超音波共鳴処理を行ったグラフA3では大きな振動が粒子に作用するため、若干のナノ粒子化がみられる。
【0063】
さらに、レーザ光照射による光破砕処理のみを行ったグラフA4と、光破砕処理と同時に超音波処理、超音波共鳴処理を行ったグラフA5、A6とを比較すると、レーザ光照射に対して超音波照射を併用することにより、ナノ粒子化の効率が高くなっていることが確認できる。
また、共鳴振動による超音波照射を利用したグラフA6では、通常の超音波照射に比べて振動振幅が大きいために凝集ナノ粒子を再分散させる作用が強く、結果的に凝集ナノ粒子によるレーザ光の散乱損失が小さくなり、ナノ粒子化の効率が特に高くなっている。
以上より、ナノ粒子の凝集が生じやすい状態で光破砕を行う場合、レーザ光照射に対して超音波照射を併用することが、ナノ粒子化の効率を高める上で有効であることが確認された。