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特許6019126有機ニトロチオエーテル化合物およびその医療用途
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  • 特許6019126-有機ニトロチオエーテル化合物およびその医療用途 図000072
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019126
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】有機ニトロチオエーテル化合物およびその医療用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/397 20060101AFI20161020BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20161020BHJP
   C07D 205/04 20060101ALI20161020BHJP
   C07K 5/093 20060101ALI20161020BHJP
   C07K 5/078 20060101ALI20161020BHJP
   C07K 5/072 20060101ALI20161020BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161020BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20161020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61K31/397
   A61K37/02
   C07D205/04CSP
   C07K5/093
   C07K5/078
   C07K5/072
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 121
【請求項の数】22
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2014-534558(P2014-534558)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公表番号】特表2014-530811(P2014-530811A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】US2012038592
(87)【国際公開番号】WO2013052164
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/544,378
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514087522
【氏名又は名称】エピセントアーレックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】EpicentRx, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176485
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・シシンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ティ・オロンスキー
【審査官】 深谷 良範
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−504684(JP,A)
【文献】 特開2002−069057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/397
A61K 38/00
C07D 205/04
C07K 5/072
C07K 5/078
C07K 5/093
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される担体と、式I:
【化1】
(式中:
は、Nであり;
は、−C(O)−であり;
は、C〜Cアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素または〜Cアルキルを表し
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素または〜Cアルキルを表し
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、または〜Cシクロアルキルを表し;
nは、2であり;
mは、0、1、または2であり;
pおよびtは、独立して1、2、または3である)
示される有機ニトロ化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物とを含む医薬組成物。
【請求項2】
およびRが水素である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
mが0である、請求項1また2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
tが1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
が、−CHC(H)(X)Xである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
が、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]COである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
が、−NH、−N(H)C(O)CH、または−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xが、−COH、−COMe、または−C(O)N(H)CHCOHである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
が、−NHまたは−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xが、−COHまたは−C(O)N(H)CHCOHである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
が、
【化2】
である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記有機ニトロ化合物が式I−A:
【化3】
(式中:
は、Nであり;
は、出現毎に独立して水素またはメチルを表し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;Xは、−NH、−N(H)C(O)−C〜Cアルキル、または−N(H)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)(NH)−COHであり;Xは、−COH、−CO−C〜Cアルキル、または−C(O)N(H)CHCOHであり;
pは、1である)
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
が、
【化4】
である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記有機ニトロ化合物が、下記構造式
【化5】
で示される化合物から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
式I:
【化6】
(式中:
は、Nであり;
は、−C(O)−であり;
は、C〜Cアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素または〜Cアルキルを表し
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素または〜Cアルキルを表し
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、または〜Cシクロアルキルを表し;
nは、2であり;
mは、0、1、または2であり;
pおよびtは、独立して1、2、または3である)
示される単離された化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
【請求項14】
およびRが水素である、請求項13に記載の単離された化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
【請求項15】
mが0であり;
nが2であり;および
tが1である、請求項13または14に記載の単離された化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
【請求項16】
が−CHC(H)(X)Xである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の単離された化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
【請求項17】
が、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COである、請求項13〜16のいずれか一項に記載の単離された化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
【請求項18】
下記構造式
【化7】
で示される化合物から選択される、請求項13に記載の単離された化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
【請求項19】
癌を治療するための請求項10〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記癌が固形腫瘍である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記癌が、脳癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮体癌、食道癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、胃癌、精巣癌、または子宮癌である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記治療が、癌に放射線を照射することをさらに含む、請求項19〜21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年10月7日に出願された米国仮特許出願第61/544,378号明細書の利益および優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、有機ニトロチオエーテル化合物、このような化合物を含有する組成物、単離された化合物、ならびに、このような化合物および組成物を使用して患者の癌を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
癌は、この疾患の検出および治療に関して多くの進歩があったにもかかわらず、重大な健康上の問題となっている。現在の癌管理方法は、早期診断と侵襲的な治療に依存している。治療選択肢には、手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、またはこれらの併用が含まれることが多い。このような療法は多くの患者に利益を提供するが、様々なタイプの癌を治療するためにより優れた治療剤が依然として必要とされている。
【0004】
前立腺癌、乳癌、および肺癌は、癌関連死の主因となっている。前立腺癌は、男性に発生する最も一般的な癌の形態であり、50歳を超えた男性の推定発生率は30%である。さらに、臨床エビデンスから、ヒト前立腺癌は骨に転移する傾向があることが分かっており、この疾患はアンドロゲン依存性からアンドロゲン非依存性の状態に必然的に進行し、患者の死亡率の増加に繋がるように見受けられる。乳癌は、依然として女性の死亡の主因となっている。その累積リスクは比較的高く;ある報告から、米国では女性の約8人に1人が85歳までに何らかのタイプの乳癌を発症すると予想されることが分かっている。同様に、肺癌も癌関連死の主因となっており、非小細胞肺癌(NSCLC)がこの症例の約80%を占めている。肺癌の早期診断のために血清タンパク質マーカーを使用する試みは、一般的なスクリーニングに関して満足な結果が得られておらず、血清DNAを診断マーカーとして使用する新たに開発された早期診断法はさらなるバリデーションを待っている。
【0005】
従って、前述およびその他の癌を治療するための新規な治療法が必要とされている。本発明は、この必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有機ニトロチオエーテル化合物、このような化合物を含有する組成物、単離された化合物、ならびにこのような化合物および組成物を使用して患者の癌を治療する方法を提供する。本発明の様々な態様および実施形態について、より詳細に後述する。
【0007】
従って、本発明の一態様は、本明細書に記載の方法、組成物、およびキットに使用される、式Iに包含される有機ニトロチオエーテル化合物群またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式Iは:
【化1】
(式中、変数は詳細な説明で定義する通りである)で表される。ある特定の実施形態では、化合物は、式Iの単離された化合物の形態で提供される。
【0008】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法、組成物、およびキットに使用される式IIに包含される有機ニトロチオエーテル化合物群、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式IIは:
【化2】
(式中、変数は詳細な説明で定義する通りである)で表される。ある特定の実施形態では、化合物は、式IIの単離された化合物の形態で提供される。
【0009】
本発明の別の態様は、薬学的に許容される担体と、式Iまたは式IIの化合物などの本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物とを含む、医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、患者の癌を治療する方法を提供する。本方法は、それを必要とする患者に式Iまたは式IIの化合物などの本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物を治療有効量投与して、癌を治療することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例6に記載の、(a)化合物1による治療を受けたC3Hマウスまたは(b)治療を受けなかったC3Hマウス(即ち、対照マウス)のSCCVII腫瘍体積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、有機ニトロチオエーテル化合物、このような化合物を含有する組成物、単離された化合物、ならびにこのような化合物および組成物を使用して患者の癌を治療する方法を提供する。特記しない限り、本発明の実施には、有機化学、薬理学、細胞生物学、および生化学の従来の技術を使用する。このような技術は、“Comprehensive Organic Synthesis”(B.M.Trost &I.Fleming,eds.,1991−1992);“Current protocols in molecular biology”(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987、および定期的更新);および“Current protocols in immunology”(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)などの文献に説明されており、これらはそれぞれ、その内容全体が参照により本明細書に援用される。下記のセクションで本発明の様々な態様について記載するが、1つの特定のセクションに記載される本発明の態様は、何れか特定のセクションに限定されるものではない。
【0013】
I.定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語および語句を下記に定義する。
【0014】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、本明細書で使用する場合、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数形を含むものとする。
【0015】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、本明細書でそれぞれC〜C12アルキル、C〜C10アルキル、およびC〜Cアルキルと称される、炭素数1〜12、1〜10、または1〜6の直鎖基または分岐鎖基などの直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、本明細書ではそれぞれC〜C10シクロアルキルおよびC〜Cシクロアルキルと称される、炭素数3〜10または3〜6の環状炭化水素基などの飽和環状炭化水素を指す。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
「ハロアルキル」という用語は、少なくとも1つのハロゲンで置換されているアルキル基を指す。例えば、−CHF、−CHF、−CF、−CHCF、および−CFCF等。
【0018】
「アラルキル」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0019】
「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0020】
「アリール」という用語は、当該技術分野で認識されており、炭素環式芳香族基を指す。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセニル等が挙げられる。特記しない限り、芳香環は、環の1つ以上の位置が、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシルで置換されていてもよい。「アリール」という用語はまた、2つ以上の炭素環を有する多環系も含み、その2つ以上の炭素が隣接する2つの環に共通しており(環は「縮合環」であり)、環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば、他の環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、および/またはアリールであってもよい。
【0021】
「ヘテロアリール」という用語は、当該技術分野で認識されており、少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む芳香族基を指す。ある特定の場合、ヘテロアリール基は、1つ、2つ、3つ、または4つの環ヘテロ原子を含有する。ヘテロアリール基の代表例としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニルおよびピリミジニル等が挙げられる。特記しない限り、ヘテロアリール環は、環の1つ以上の位置がハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシルで置換されていてもよい。「ヘテロアリール」という用語もまた、2つ以上の環を有する多環系を含み、その2つ以上の炭素が隣接する2つの環に共通しており(環は「縮合環」であり)、環の少なくとも1つは複素環式芳香族であり、例えば、他の環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、および/またはアリールであってもよい。
【0022】
オルト(o)、メタ(m)、およびパラ(p)という用語は、当該技術分野で認識されており、それぞれ1,2−、1,3−、および1,4−二置換ベンゼンを指す。例えば、1,2−ジメチルベンゼンおよびo−ジメチルベンゼンという名称は同義である。
【0023】
本明細書で使用する場合、「複素環式」という用語は、例えば、1つ以上のヘテロ原子を含有する芳香環または非芳香環を表す。ヘテロ原子は、互いに同じであってもまたは異なってもよい。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、およびイオウが挙げられるが、これらに限定されるものではない。芳香族および非芳香族複素環は、当該技術分野で周知である。芳香族複素環の幾つかの非限定例としては、ピリジン、ピリミジン、インドール、プリン、キノリンおよびイソキノリンが挙げられる。非芳香族複素環化合物の非限定例としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロリジンおよびピラゾリジンが挙げられる。酸素含有複素環の例としては、フラン、オキシラン、2H−ピラン、4H−ピラン、2H−クロメン、およびベンゾフランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。イオウ含有複素環の例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、およびパラチアジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。窒素含有環の例としては、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピリジン、ピペリジン、ピラジン、ピペラジン、ピリミジン、インドール、プリン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、トリアゾール、およびトリアジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。2つの異なるヘテロ原子を含有する複素環の例としては、フェノチアジン、モルホリン、パラチアジン、オキサジン、オキサゾール、チアジン、およびチアゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。複素環は、任意選択により環の1つ以上の位置が、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、カルボン酸、−C(O)アルキル、−COアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド(sulfonamido)、スルホンアミド(sulfonamide)、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリール部分、−CF、または−CN等でさらに置換されていている。
【0024】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当該技術分野で認識されており、共に非置換および置換アミン、例えば、一般式−N(R50)(R51)(式中、R50およびR51はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくは−(CH−R61を表すか;または、R50とR51は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造内に4〜8個の原子を有する複素環を完成し;R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し;mはゼロまたは1〜8の範囲の整数である)で表される部分を指す。ある特定の実施形態では、R50およびR51は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−R61を表す。
【0025】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、当該技術分野で認識されており、前述のアルキル基に酸素基が結合しているものを指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、およびtert−ブトキシ等が挙げられる。「エーテル」は、2つの炭化水素が酸素により共有結合したものである。従って、そのアルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、アルコキシルであるかまたはそれに類似しており、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH−R61(式中、mおよびR61は前述の通りである)の1つで表すことができる。
【0026】
本発明の組成物に含有されるある特定の化合物は、特定の幾何学的形態または立体異性体の形態で存在し得る。本発明は、本発明の範囲に入る、シス−およびトランス−異性体、R−およびS−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、これらのラセミ混合物、およびこれらのその他の混合物を含む、全てのこのような化合物を検討する。アルキル基などの置換基に追加の不斉炭素原子が存在してもよい。全てのこのような異性体およびその混合物は、本発明に含まれるものとする。特記しない限り(例えば、楔形および/または破線の結合などの立体化学配置の表示記号を使用して)、化学式は、幾何学的形態および/または立体異性体の形態の混合物を含む全ての幾何学的形態および立体異性体の形態を包含することを理解されたい。
【0027】
例えば、本発明の化合物の特定の鏡像異性体を所望する場合、それを、不斉合成により製造しても、またはキラル補助剤を用いた誘導により製造してもよく、この場合、得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断して純粋な所望の鏡像異性体を得る。あるいは、分子がアミノなどの塩基性官能基またはカルボキシルなどの酸性官能基を含有する場合、適切な光学活性酸または塩基とジアステレオマー塩を生成した後、このようにして生成したジアステレオマーを当該技術分野で周知の分別結晶またはクロマトグラフィー手段で分割し、その後、純粋な鏡像異性体を回収する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「対象」および「患者」という用語は、本発明の方法で治療される生物を指す。このような生物は、好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、およびネコ等)であり、より好ましくはヒトである。「非貧血症患者」という用語は、貧血症に罹患していない患者を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本発明の化合物)の量を指す。有効量を1回以上投与、適用または投与量で投与することができ、特定の処方または投与経路に限定されるものではない。本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、例えば、病態、疾患、および障害等の改善またはその症状の寛解をもたらす、減少、低下、調節、寛解または消失などの任意の効果を含む。
【0030】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、薬理活性物質と、組成物を生体内または生体外で診断または治療に使用するのにとりわけ適するようにする不活性または活性の担体との組み合わせを指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルション(例えば、油/水型または水/油型エマルションなど)、および様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬用担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および保存剤を含むこともできる。担体、安定剤、および補助剤の例に関して。(例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照されたい)。
【0032】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に投与された時、本発明の化合物またはその薬理活性代謝物もしくは残基を提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸塩または塩基塩)を指す。当業者に公知のように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から誘導することができる。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。それ自体は薬学的に許容されないが、シュウ酸などのその他の酸も、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際に中間体として有用な塩の調製に使用することができる。
【0033】
塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、水酸化物、アンモニア、および式NW(式中、WはC1〜4アルキルである)の化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
塩の例としては:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩のその他の例としては、Na、NH、およびNW(式中、WはC1〜4アルキルである)などの好適なカチオンと化合した本発明の化合物のアニオン等が挙げられる。
【0035】
治療用途に関して、本発明の化合物の塩は薬学的に許容されるものと考えられる。しかし、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の製造または精製に使用することができる。
【0036】
「ABDNAZ」という用語は、当該技術分野で認識されており、次の化合物:
【化3】
を指す。
【0037】
「TFA」という略称は、当該技術分野で認識されており、トリフルオロ酢酸を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「単離される」という用語は、元の環境(例えば、それが天然物である場合、自然環境から)から取り出される材料を指す。
【0039】
本明細書全体を通して、組成物およびキットは特定の構成要素を有する、含む、もしくは備えるものとして記載されている、またはプロセスおよび方法は特定の工程を有する、含む、もしくは備えるものとして記載されているが、さらに、前述の構成要素から本質的になるまたは前述の構成要素からなる本発明の組成物およびキットが存在すること、ならびに前述の処理工程から本質的になるまたは前述の処理工程からなる本発明のプロセスおよび方法が存在することも考えられる。
【0040】
一般的なこととして、パーセンテージを明記する組成物は、特記しない限り、重量パーセンテージである。さらに、変数が定義を伴わない場合、その変数の前述の定義により規定される。
【0041】
II.本明細書に記載の方法、組成物、およびキットに使用される有機ニトロチオエーテル化合物
本発明の一態様は、本明細書に記載の方法、組成物、およびキットに使用される有機ニトロチオエーテル化合物を提供する。ある特定の実施形態では、有機ニトロ化合物は、式I:
【化4】
(式中:
は、Nまたは−C(R)−であり;
は、−C(O)−または−(C(RC(O)(C(R−であり;
は、C〜Cアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、−N(R)C(O)−アリール、−N(R)C(O)−アラルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり;
は、水素またはC〜Cアルキルであり;
は、出現毎に独立してC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜7員の複素環を形成し;
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
n、p、およびtは、独立して1、2、または3であり;
mおよびxはそれぞれ、出現毎に独立して0、1、2、または3を表す)
に包含される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0042】
ある特定の実施形態では、AはNである。ある特定の実施形態では、Aは−C(O)−である。
【0043】
ある特定の実施形態では、RおよびRは水素である。
【0044】
ある特定の実施形態では、mは0である。ある特定の実施形態では、nは2である。他のある特定の実施形態では、nは1である。ある特定の実施形態では、tは1である。
【0045】
ある特定の実施形態では、Rは、−CHC(H)(X)Xである。他のある特定の実施形態では、Rは、
【化5】
である。
【0046】
他のある特定の実施形態では、Rは、
【化6】
である。
【0047】
ある特定の実施形態では、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COである。他のある特定の実施形態では、Xは、−NH、−N(H)C(O)CH、または−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xは、−COH、−COMe、または−C(O)N(H)CHCOHである。他のある特定の実施形態では、Xは、−NHまたは−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xは、−COHまたは−C(O)N(H)CHCOHである。
【0048】
上記説明は、式Iの化合物に関する複数の実施形態について記載している。本特許出願は、実施形態の全ての組み合わせを明確に検討する。例えば、本発明は、AがNであり、Aが−C(O)−であり、RおよびRが水素であり、mが0であり、nが2であり、tが1であり、Rが−CHC(H)(X)Xである、式Iの化合物を検討する。さらに説明すると、本発明は、AがNであり、Aが−C(O)−であり、RおよびRが水素であり、mが0であり、nが1であり、tが1であり、Rが−CHC(H)(X)Xである、式Iの化合物を検討する。
【0049】
ある特定の実施形態では、化合物は、式I−A:
【化7】
(式中:
は、NまたはC(H)であり;
は、出現毎に独立して水素またはメチルを表し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−NH、−N(H)C(O)−C〜Cアルキル、または−N(H)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)(NH)−COHであり;Xは、−COH、−CO−C〜Cアルキル、または−C(O)N(H)CHCOHであり;
pは、出現毎に独立して1または2である)
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0050】
ある特定の実施形態では、Rは、−CHC(H)(X)Xである。他のある特定の実施形態では、式中、Rは、
【化8】
である。
【0051】
ある特定の実施形態では、Xは、−NH、−N(H)C(O)CH、または−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xは、−COH、−COMe、または−C(O)N(H)CHCOHである。ある特定の実施形態では、Xは、−NHまたは−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xは、−COHまたは−C(O)N(H)CHCOHである。
【0052】
ある特定の実施形態では、有機ニトロ化合物は、
【化9】
(式中、Rは、
【化10】
である)
で表される。
【0053】
上記説明は、式I−Aの化合物に関する複数の実施形態について記載している。本特許出願は、実施形態の全ての組み合わせを明確に検討する。例えば、本発明は、AがNであり、Rが水素であり、Rが−CHC(H)(X)Xであり、pが1である、式I−Aの化合物を検討する。
【0054】
ある特定の実施形態では、化合物は、式I−B:
【化11】
(式中:
は、NまたはC(H)であり;
は、出現毎に独立して水素またはメチルを表し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−NH、−N(H)C(O)−C〜Cアルキル、または−N(H)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)(NH)−COHであり;Xは、−COH、−CO−C〜Cアルキル、または−C(O)N(H)CHCOHであり;
pは、出現毎に独立して1または2である)
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0055】
ある特定の実施形態では、Rは、−CHC(H)(X)Xである。他のある特定の実施形態では、式中、Rは、
【化12】
である。
【0056】
上記説明は、式I−Bの化合物に関する複数の実施形態について記載している。本特許出願は、実施形態の全ての組み合わせを明確に検討する。例えば、本発明は、AがNであり、Rが水素であり、Rが−CHC(H)(X)Xであり、pが1である、式I−Bの化合物を検討する。
【0057】
ある特定の実施形態では、化合物は、次:
【化13】
の1つである。ある特定の実施形態では、化合物は、前述の1つまたはその薬学的に許容される塩である。
【0058】
他のある特定の実施形態では、有機ニトロ化合物は、式II:
【化14】
(式中:
は、−N(R)−または−C(R)(R)−であり;
は、−C(O)−または−(C(RC(O)(C(R−であり;
は、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、−N(R)C(O)−アリール、−N(R)C(O)−アラルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり;
は、水素またはC〜Cアルキルであり;
は、出現毎に独立してC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜7員の複素環を形成し;
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
tおよびvは、独立して1、2、または3であり;
xは、出現毎に独立して0、1、2、または3を表す)
に包含される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0059】
ある特定の実施形態では、AはNである。ある特定の実施形態では、Aは−C(O)−である。
【0060】
ある特定の実施形態では、RおよびRは水素である。
【0061】
ある特定の実施形態では、mは0である。ある特定の実施形態では、nは2である。他のある特定の実施形態では、nは1である。ある特定の実施形態では、式中、tは1である。ある特定の実施形態では、式中、vは1である。
【0062】
ある特定の実施形態では、Rは−CHC(H)(X)Xである。他のある特定の実施形態では、Rは、
【化15】
である。
【0063】
他のある特定の実施形態では、Rは、
【化16】
である。
【0064】
ある特定の実施形態では、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COである。他のある特定の実施形態では、Xは、−NH、−N(H)C(O)CH、または−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xは、−COH、−COMe、または−C(O)N(H)CHCOHである。他のある特定の実施形態では、Xは、−NHまたは−N(H)C(O)CHCHC(H)(NH)−COHであり;Xは、−COHまたは−C(O)N(H)CHCOHである。
【0065】
上記説明は、式IIの化合物に関する複数の実施形態について記載している。本特許出願は、実施形態の全ての組み合わせを明確に検討する。例えば、本発明は、AがNであり、Aが−C(O)−であり、RおよびRが水素であり、tが1であり、vが1であり、Rが−CHC(H)(X)Xである、式IIの化合物を検討する。
【0066】
ある特定の実施形態では、本発明は、式Iの化合物を単離された形態で提供する。別の実施形態では、式Iの単離された化合物は実質的に純粋である(即ち、少なくとも約70重量%、80%重量%、90重量%、95重量%、または99重量%の純度を有する)。
【0067】
ある特定の実施形態では、本発明は、式I−Aの化合物を単離された形態で提供する。別の実施形態では、式I−Aの単離された化合物は実質的に純粋である(即ち、少なくとも約70重量%、80%重量%、90重量%、95重量%、または99重量%の純度を有する)。例えば、ある特定の実施形態では、単離された化合物は、次の単離された化合物:
【化17】
の1つであってもよい。ある特定の実施形態では、単離された化合物は、前述の1つまたはその薬学的に許容される塩である。
【0068】
他のある特定の実施形態では、本発明は、式IIの化合物を単離された形態で提供する。別の実施形態では、式Iの単離された化合物は実質的に純粋である(即ち、少なくとも約70重量%、80%重量%、90重量%、95重量%、または99重量%の純度を有する)。
【0069】
他のある特定の実施形態では、化合物は、下記の表1、表2、もしくは表3に記載の化合物の1つまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
【0080】
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
【表13】
【0083】
【表14】
【0084】
【表15】
【0085】
【表16】
【0086】
【表17】
【0087】
本明細書に記載の化合物の製造方法を以下の合成スキームに示す。これらのスキームは本発明を説明する目的で記載されており、決して本発明の範囲または精神を限定するものとみなされるべきではない。スキームに示される出発原料は、市販のものを入手してもよく、または文献に記載の手順に基づいて製造してもよい。
【0088】
スキーム1に示す合成経路は、環式ジェミナルジニトロ化合物の一般的な製造方法を示す。第1の工程では、クロロエポキシドA1をt−ブチルアミンと反応させてヒドロキシ複素環式化合物B1を得る。複素環式化合物B1のヒドロキシル基をメチルスルホニルクロライドでメシル化することによりメシレートC1を得、これは、NaNOと反応すると、環式モノニトロ化合物D1を生成する。化合物D1のさらなるニトロ化は、NaおよびKFe(CN)の存在下でNaNOを使用して行い、ジェミナルジニトロ複素環式化合物E1を得ることができる。化合物E1と三フッ化ホウ素エーテラートとの反応、アセチルブロマイドFを用いたアシル化、およびチオール化(thiolation)して化合物G1を得ることを含む3工程手順により、最終化合物G1を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;米国特許第7,507,842号明細書;およびJ.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。
【0089】
スキーム1に示し、前述したこの合成手順は、R、R、RおよびRの位置に様々な置換基を有する化合物の製造に適用可能であると考えられる。A1に包含される特定のエポキシド化合物が、スキーム1の合成変換の1つ以上に敏感な官能基を含有する場合、保護基を用いる標準的な方法を適用することが考えられる。保護基を用いる方法および手順の更なる説明については、例えば、Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.;Wiley,New York,1991を参照されたい。
【化18】
【0090】
スキーム2は、mが0である場合のスキーム1に示す合成経路のより具体的な実施形態を示す。第1の工程では、エポキシドA2をt−ブチルアミンと反応させてヒドロキシルアゼチジンB2を得る。アゼチジンB2のヒドロキシル基をメチルスルホニルクロライドでメシル化することによりアゼチジンメシレートC2を得、これは、NaNOと反応すると、モノニトロアゼチジンD2を生成する。モノニトロアゼチジンD2をNaおよびKFe(CN)の存在下、NaNOでさらにニトロ化すると、ジェミナルジニトロアゼチジンE2が得られる。化合物E2と三フッ化ホウ素エーテラートとの反応、アセチルブロマイドFを用いたアシル化、およびチオール化してジニトロアゼチジンG2を得ることを含む3工程手順により、ジニトロアゼチジンG2を得る。この合成手順は、R、R、RおよびRの位置に様々な置換基を有する化合物の製造に適用可能であると考えられる。A2に包含される特定のエポキシド化合物が、スキーム2の合成変換の1つ以上に敏感な官能基を含有する場合、保護基を用いる標準的な方法を適用することが考えられる。保護基を用いる方法および手順の更なる説明については、例えば、Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.;Wiley,New York,1991を参照されたい。さらに、モノニトロ化合物は、モノニトロ化合物D2をルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素エーテラート)およびアセチルブロマイド化合物F(例えば、スキーム2からの)で処理して所望のモノニトロ生成物を得ることにより、製造することができる。
【化19】
【0091】
スキーム3は、RとRが両方とも水素であり、mが0である場合の、スキーム1に示す合成経路の別のより特定的な実施形態を示す。第1の工程では、市販のエピクロロヒドリンA3をt−ブチルアミンと反応させてヒドロキシルアゼチジンB3を得る。アゼチジンB3のヒドロキシル基をメチルスルホニルクロライドでメシル化すると、アゼチジンメシレートC3が得られ、これは、NaNOと反応すると、モノニトロアゼチジンD3を生成する。モノニトロアゼチジンD3をNaおよびKFe(CN)の存在下、NaNOでさらにニトロ化すると、ジェミナルジニトロアゼチジンE3が得られる。化合物E3と三フッ化ホウ素エーテラートとの反応、アセチルブロマイドを用いたアシル化、およびチオール化してジニトロアゼチジンF3を得ることを含む3工程手順により、ジニトロアゼチジンF3を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;米国特許第7,507,842号明細書;および、J.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。さらに、モノニトロ化合物は、モノニトロ化合物D3をルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素エーテラート)およびアセチルブロマイド化合物Fで処理して所望のブロモモノニトロ生成物を得、これを脱臭素化手順で処理して臭素原子を水素で置換することにより製造することができる。
【化20】
【0092】
スキーム4は、環式ジェミナルジニトロ化合物の代替の例示的な製造手順を示す。第1の工程では、複素環式化合物A4を重クロム酸ピリジニウム(PDC)などの酸化剤と反応させて、複素環式ケトンB4を得る。ケトンB4とヒドロキシルアミンとの反応により、複素環式オキシムC4を得、これは、N−ブロモスクシンイミド(NBS)と反応すると、ブロモニトロ化合物D4を生成する。化合物D4とNaBHとの反応によりモノニトロ化合物E4を得る。モノニトロ化合物E4をNaおよびKFe(CN)の存在下、NaNOと反応させると、ジェミナルジニトロ複素環式化合物F4が得られる。化合物F4と脱保護剤との反応、アセチルブロマイド化合物Fを用いたアシル化、およびチオール化して環式ジェミナルジニトロ生成物G4を得ることを含む3工程手順により、環式ジェミナルジニトロG4を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;米国特許第7,507,842号明細書;および、J.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。さらに、モノニトロ化合物は、モノニトロ化合物D4を脱保護剤およびアセチルブロマイド化合物Fで処理して所望のブロモモノニトロ生成物を得、これを脱臭素化手順で処理して臭素原子を水素で置換することにより製造することができる。
【化21】
【0093】
スキーム5は、スキーム4に示すものとは異なる初期工程を有する、環式ジェミナルジニトロ化合物のさらに別の例示的な製造手順を示す。第1の工程では、複素環式化合物A4をメチルスルホニルクロライドと反応させて、複素環式メシレートB5を得る。メシレートB5とNaNOとの反応により、モノニトロ化合物E4を得る。化合物E4をNaおよびKFe(CN)の存在下、NaNOでニトロ化すると、ジェミナルジニトロ化合物F4が得られる。化合物F4と脱保護剤との反応、アセチルブロマイド化合物Fを用いたアシル化、およびチオール化してジニトロ生成物G4を得ることを含む3工程手順により、ジニトロ化合物G4を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;米国特許第7,507,842号明細書;および、J.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。さらに、モノニトロ化合物は、モノニトロ化合物E4を脱保護剤およびアセチルブロマイド化合物Fで処理して所望のブロモモノニトロ生成物を得ることにより製造することができる。
【化22】
【0094】
スキーム6に示す合成経路は、環式ビシナルジニトロ化合物の例示的な製造方法を示す。第1の工程では、シクロアルケンA6をNと反応させてビシナルジニトロ化合物B6を得る。化合物B6と脱保護剤との反応、アセチルブロマイド化合物Fを用いたアシル化、およびチオール化してビシナルジニトロ化合物C6を得ることを含む3工程手順により、ビシナルジニトロ生成物C6を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;米国特許第7,507,842号明細書;および、J.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。この合成手順は、R、R、RおよびRの位置に様々な置換基を有する化合物の製造に適用可能であると考えられる。A6に包含される特定のシクロアルケン化合物が、スキーム6の合成変換の1つ以上に敏感な官能基を含有する場合、保護基を用いる標準的な方法を適用することが考えられる。保護基を用いる方法および手順の更なる説明については、例えば、Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.;Wiley,New York,1991を参照されたい。
【化23】
【0095】
スキーム7に示す合成経路は、環式モノニトロ化合物の一般的な製造方法を示す。第1の工程では、クロロエポキシドA7をt−ブチルアミンと反応させてヒドロキシ複素環式化合物B7を得る。複素環式化合物B7のヒドロキシル基をメチルスルホニルクロライドでメシル化するとメシレートC7が得られ、これは、NaNOと反応すると、環式モノニトロ化合物D7を生成する。化合物D7と三フッ化ホウ素エーテラートとの反応、アセチルブロマイド化合物Fを用いたアシル化、およびチオール化して化合物G7を得ることを含む3工程手順により、化合物G7を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;米国特許第7,507,842号明細書;および、J.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。スキーム7に示すこの合成手順は、R、R、RおよびRの位置に様々な置換基を有する化合物の製造に適用可能であると考えられる。A7に包含される特定のエポキシド化合物が、スキーム7の合成変換の1つ以上に敏感な官能基を含有する場合、保護基を用いる標準的な方法を適用することが考えられる。保護基を用いる方法および手順の更なる説明については、例えば、Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.;Wiley,New York,1991を参照されたい。
【化24】
【0096】
環窒素原子にハロゲン化アルキルが結合している化合物を製造するために、前述の合成経路を変更することができる。このような化合物を製造するための例示的な合成手順は、化合物G1〜G4、G7、およびC6のアミド基をアミンに還元することを含む。あるいは、アルキル化反応後、環窒素原子に結合している保護されたアルキル基が脱保護され、塩化または臭化アルキルに変換されるように、上記手順に使用される化合物Fの代わりに適切に保護されたハロゲン化アルキルを使用することができる。
【0097】
スキーム8は、環式モノニトロおよびジニトロ化合物の別の例示的な製造方法を示す。ケトンB8とヒドロキシルアミンとの反応により、複素環式ヒドロキシルアミンC8を得、これは、N−ブロモスクシンイミド(NBS)と反応すると、ブロモニトロ化合物D8を生成する。化合物D8とNaBHとの反応によりモノニトロ化合物E8を得る。標準的な脱保護条件を使用して、ヒドロキシル保護基(P、これは、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基であってもよい)および1,2−ジヒドロキシエタン保護基を除去する。tert−ブチルジメチルシリル基を除去するための例示的な脱保護条件には、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライドの添加が含まれる。1,2−ジヒドロキシエタン保護基を除去するための例示的な脱保護条件には、塩酸および水の添加が含まれる。ヒドロキシケトンF8のα−ブロモケトンG8への変換は、まず、化合物F8をメタンスルホニルクロライドと反応させてメシレートを生成した後、臭化ナトリウムを添加してα−ブロモケトンG8を生成することにより行うことができる。
【0098】
モノニトロ化合物E8をNaおよびKFe(CN)の存在下でNaNOと反応させてジェミナルジニトロ複素環式化合物H8を得ることにより、ジニトロ化合物を製造することができる。標準的な脱保護条件を使用して、化合物H8のヒドロキシル保護基(P、これは、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基であってもよい)および1,2−ジヒドロキシエタン保護基を除去することができる。tert−ブチルジメチルシリル基を除去するための例示的な脱保護条件には、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライドの添加が含まれる。1,2−ジヒドロキシエタン保護基を除去するための例示的な脱保護条件には、塩酸および水の添加が含まれる。ヒドロキシケトンI8のα−ブロモケトンJ8への変換は、まず、化合物I8をメタンスルホニルクロライドと反応させてメシレートを生成した後、臭化ナトリウムを添加してα−ブロモケトンを生成することにより行うことができる。α−ブロモケトンのチオール化により所望の生成物J8を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;および、J.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。
【化25】
【0099】
スキーム9は、非環式ジェミナルジニトロ化合物の例示的な製造手順を示す。第1の工程では、保護されたアミノアルコールA9をメチルスルホニルクロライドと反応させてメシレートB9を得る。メシレートB9とNaNOとの反応によりモノニトロ化合物E9を得る。化合物E9をNaおよびKFe(CN)の存在下、NaNOでニトロ化すると、ジェミナルジニトロ化合物F9が得られる。化合物F9と脱保護剤との反応、臭化アセチル化合物Fを用いたアシル化、およびチオール化してジニトロ生成物G9を得ることを含む3工程手順により、所望のジニトロ生成物G9を得る。関連する合成手順の更なる説明は、例えば、Archibald et al.in J.Org.Chem.1990,55,2920−2924;米国特許第7,507,842号明細書;および、J.P.Agrawal,R.D.Hodgson,Organic Chemistry of Explosives,Wiley & Sons,England,2007およびそれに引用されている参考文献に記載されている。
【化26】
【0100】
スキーム10は、モノニトロ化合物の代替の製造手順を示す。ジニトロ化合物A10とチオール化合物B10との反応によりモノニトロ化合物C10を得る。この反応を室温で行ってもよく、または反応混合物を加熱して室温より高温に到達させてもよい。ジニトロ化合物A10の量に対して、1当量以上のチオールB10を使用してもよい。この手順に使用することができる例示的なチオールB10の1つにはシステインがある。この合成手順のより具体的な例は、ジニトロ化合物A10’をシステイン(B10’)と反応させてモノニトロ化合物C10’を得ることである。
【化27】
【0101】
III.治療用途
本発明は、本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物および医薬組成物を使用して、癌などの様々な医学的障害を治療する方法を提供する。治療方法は、単独化学療法剤として、放射線増感剤として、および/または別の治療剤との併用療法の一部として、本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物を使用することを含む。特定の理論に拘泥することを望むものではないが、本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物は、癌細胞に対して細胞毒性を示す反応性フリーラジカルを放出し得ることが理解される。
【0102】
医学的障害の治療方法
本発明の一態様は、患者の癌を治療する方法を提供する。本方法は、それを必要とする患者に式Iもしくは式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物などの本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物を治療有効量投与することを含み、前述のように、式Iは:
【化28】
(式中:
は、Nまたは−C(R)−であり;
は、−C(O)−または−(C(RC(O)(C(R−であり;
は、C〜Cアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、−N(R)C(O)−アリール、−N(R)C(O)−アラルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり;
は、水素またはC〜Cアルキルであり;
は、出現毎に独立してC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜7員の複素環を形成し;
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
n、p、およびtは、独立して1、2、または3であり;
mおよびxはそれぞれ、出現毎に独立して0、1、2、または3を表す)
で表され、
式IIは:
【化29】
(式中:
は、−N(R)−または−C(R)(R)−であり;
は、−C(O)−または−(C(RC(O)(C(R−であり;
は、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、−N(R)C(O)−アリール、−N(R)C(O)−アラルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり;
は、水素またはC〜Cアルキルであり;
は、出現毎に独立してC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜7員の複素環を形成し;
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
tおよびvは、独立して1、2、または3であり;
xは、出現毎に独立して0、1、2、または3を表す)
で表される。
【0103】
ある特定の実施形態では、癌は固形腫瘍である。他のある特定の実施形態では、癌は脳癌、膀胱癌(bladder cancer)、乳癌、子宮頸癌(cervical cancer)、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、胃癌、精巣癌、または子宮癌である。さらに他の実施形態では、癌は、血管新生が起こった腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫など)、喉頭癌、耳下腺癌、胆道癌(biliary tract cancer)、甲状腺癌、末端黒子型黒色腫、光線角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管癌、肛門癌、肛門直腸癌、星状細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆道癌(biliary cancer)、骨癌、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織癌、嚢腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞癌、上衣癌、上皮細胞癌、ユーイング肉腫、眼と眼窩の癌、女性生殖器癌、限局性結節過形成、胆嚢癌、幽門洞癌、胃底癌、ガストリノーマ、膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓癌、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝細胞腺腫、肝細胞腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内腫瘍、上皮間扁平上皮腫瘍、肝内胆管癌、浸潤扁平上皮癌、空腸癌、関節癌、カポジ肉腫、骨盤癌、大細胞癌、大腸癌、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、リンパ腫、男性生殖器癌、悪性黒色腫、悪性中皮腫瘍、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜癌、中皮癌、転移癌、口腔癌(mouth cancer)、粘膜表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉癌、鼻道癌、神経系癌、神経上皮腺癌結節型黒色腫、非上皮性皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起神経膠細胞癌、口腔癌(oral cavity cancer)、骨肉腫、漿液性乳頭状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋癌、軟部組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎癌、扁平上皮癌、横紋筋癌、中皮下癌、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌癌、未分化癌、尿管癌、尿道癌、膀胱癌(urinary bladder cancer)、尿路系癌、子宮頸癌(uterine cervix cancer)、子宮体癌、ぶどう膜黒色腫、膣癌、疣贅性癌、ビポーマ、外陰癌、高分化癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0104】
他のある特定の実施形態では、癌は、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。ある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、リンパ節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫などのB細胞リンパ腫である。他のある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆T細胞リンパ芽球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、または末梢T細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫である。
【0105】
治療方法は、任意選択により患者に放射線を照射することを含んでもよい。放射線の1つの例示的な形態としては、137Cs線源から発生するものなどのγ線がある。放射線の量を特定の病態に最適化することができる。ある特定の実施形態では、患者に照射される放射線の量は少なくとも約2Gy、約5Gy、約10Gy、または約15Gyである。
【0106】
さらに、治療方法は、任意選択により化学療法剤を患者に投与することを含んでもよい。例示的な化学療法剤としては、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、カルムスチン、シスプラチン、クロラムブチル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、プロカルバジン、ラロキシフェン、テニポシド、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン、タモキシフェン、トレミフェン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびこれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0107】
ある特定の実施形態では、患者はヒトである。
【0108】
ある特定の実施形態では、化合物は、式Iの化合物、式Iのある特定の変数の定義について記載する他の実施形態の1つに包含される化合物、式IIの化合物、式IIのある特定の変数の定義について記載する他の実施形態の1つに包含される化合物、式IAの化合物、または式IAのある特定の変数の定義について記載する他の実施形態の1つに包含される化合物などのセクションIIに記載の一般的なまたは特定の化合物の1つである。
【0109】
上記説明は、ある特定の有機ニトロチオエーテル化合物を使用して様々な障害を治療する方法に関する複数の実施形態について記載している。本特許出願は、実施形態の全ての組み合わせを明確に検討する。例えば、本発明は、式IA(式中、AはNであり、Rは水素であり、Rは−CHC(H)(X)Xであり、pは1である)の化合物を治療有効量投与することによる、癌(乳癌、白血病、または前立腺癌など)の治療方法を検討する。
【0110】
ある特定の実施形態では、化合物は、
【化30】
またはその薬学的に許容される塩である。他のある特定の実施形態では、化合物は、
【化31】
またはその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、化合物は、
【化32】
またはその薬学的に許容される塩である。一実施形態では、化合物は、
【化33】
またはその薬学的に許容される塩である。他のある特定の実施形態では、化合物は、
【化34】
またはその薬学的に許容される塩である。他のある特定の実施形態では、化合物は、
【化35】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0111】
ある特定の実施形態では、化合物は、
【化36】
またはその薬学的に許容される塩である。他のある特定の実施形態では、化合物は、
【化37】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0112】
併用療法
前述のように、本発明は、本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物(式I、式II、または式IAの化合物など)および第2の薬剤を、これらの治療剤の相互作用による有益な効果を提供することを目的とした特定の治療計画の一部として投与することを含む併用療法を包含する。併用の有益な効果としては、治療剤の併用により得られる薬物動態学的または薬力学的相互作用を挙げることができる。これらの治療剤の併用投与は、典型的には、所定の期間(例えば、選択される併用に応じて数時間または数日)にわたり行われる。併用療法は、これらの治療剤の2つ以上を別個の単独療法投与計画の一部として投与することを含み得、これは本発明の併用となる。併用療法はまた、これらの治療剤を順次投与すること、即ち、各治療剤を異なる時間に投与すること、ならびに、これらの治療剤または治療剤の少なくとも2つを実質的に同時に投与することも含む。実質的同時投与は、例えば、各治療剤を一定比で有する1種類のカプセルを対象に投与すること、または各治療剤につき1種類のカプセルで複数個対象に投与することにより達成することができる。各治療剤の順次投与または実質的同時投与は、経口経路、静脈経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通した直接吸収を含む任意の適切な経路で実施することができるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
複数の治療剤を同じ経路で投与してもまたは異なる経路で投与してもよいことが理解される。例えば、選択される併用の第1の治療剤を経肺投与で投与し、併用の他の治療剤を経口投与してもよい。あるいは、例えば、全ての治療剤を経口投与しても、または全ての治療剤を経肺投与で投与してもよい。
【0114】
従って、ある特定の実施形態では、本明細書に前述した方法の1つ以上は、患者に第2の治療剤を治療有効量投与することをさらに含む。ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、アデノシン、抗微生物化合物、アルドステロン拮抗薬、α−アドレナリン作動性受容体拮抗薬、β−アドレナリン作動薬、抗アレルギー化合物、抗糖尿病化合物、抗高脂血症薬、鎮咳化合物、アンジオテンシンII拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、抗酸化剤、抗トロンビン剤、血管拡張薬、β−アドレナリン拮抗薬、気管支拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿剤、エンドセリン拮抗薬、去痰薬、ヒドラジン化合物、H2受容体拮抗薬、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、非ステロイド系抗炎症化合物(NSAID)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、カリウムチャネル遮断薬、血小板減少剤(platelet reducing agent)、プロトンポンプ阻害剤、レニン阻害剤、選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、またはステロイドである。他のある特定の実施形態では、第2の治療剤は、抗微生物化合物、β−アドレナリン作動薬、抗アレルギー化合物、鎮咳化合物、抗酸化剤、血管拡張薬、去痰薬、非ステロイド系抗炎症化合物(NSAID)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、またはステロイドからなる群から選択される。
【0115】
IV.医薬組成物
本発明は、医薬用担体と、式Iもしくは式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物などの本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物とを含む医薬組成物を提供し、前述のように、式Iは:
【化38】
(式中:
は、Nまたは−C(R)−であり;
は、−C(O)−または−(C(RC(O)(C(R−であり;
は、C〜Cアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、−N(R)C(O)−アリール、−N(R)C(O)−アラルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり;
は、水素またはC〜Cアルキルであり;
は、出現毎に独立してC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜7員の複素環を形成し;
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
n、p、およびtは、独立して1、2、または3であり;
mおよびxはそれぞれ、出現毎に独立して0、1、2、または3を表す)
で表され、
式IIは:
【化39】
(式中:
は、−N(R)−または−C(R)(R)−であり;
は、−C(O)−または−(C(RC(O)(C(R−であり;
は、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであり;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって炭素環を形成し;
は、1つのX基と1つのX基とで置換されているC〜Cアルキルであり;ここで、Xは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)−C〜Cアルキル、−N(R)C(O)−C〜Cシクロアルキル、−N(R)C(O)−アリール、−N(R)C(O)−アラルキル、または−N(R)C(O)−(C〜Cアルキレン)−C(H)[N(R)(R)]−COであり;Xは、−CO10または−C(O)N(R)−(C〜Cアルキレン)−CO10であり;
は、水素またはC〜Cアルキルであり;
は、出現毎に独立してC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
およびRはそれぞれ、出現毎に独立して水素もしくはC〜Cアルキルを表すか;または、RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって3〜7員の複素環を形成し;
およびR10はそれぞれ、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、またはアラルキルを表し;
tおよびvは、独立して1、2、または3であり;
xは、出現毎に独立して0、1、2、または3を表す)
で表される。
【0116】
ある特定の実施形態では、有機ニトロチオエーテル化合物は、有機ニトロチオエーテル化合物が化合物式Iであり、AがNであり、RおよびRが水素であり、mが0であり、nが2であるものなどの、上記セクションIIに記載の特定の実施形態の1つ以上により定義される。
【0117】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、好ましくは、前述の有機ニトロチオエーテル化合物の1種類以上を治療有効量、1種類以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と共に製剤化したものを含む。詳細に後述するように、本発明の医薬組成物は、以下:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性の溶液剤または懸濁剤)、錠剤(例えば、バッカル、舌下および/または全身吸収用のもの)、巨丸剤、散剤、顆粒剤、舌に塗布されるペースト剤;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による、例えば、滅菌溶液剤もしくは懸濁剤、または徐放性製剤としての投与;(3)局所適用、例えば、クリーム剤、軟膏剤、または放出制御パッチ剤または皮膚に塗布されるスプレー剤としての適用;(4)膣内または直腸内投与、例えば、ペッサリー剤、クリーム剤またはフォーム剤としての投与;(5)舌下投与;(6)点眼投与;(7)経皮投与;または(8)経鼻投与;に適するように製造されるものを含む、固体または液体の形態で投与されるように特別に製剤化することができる。
【0118】
湿潤剤、乳化剤、および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤も組成物中に存在してもよい。
【0119】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、およびα−トコフェロール等;ならびに(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、およびリン酸等;が挙げられる。
【0120】
本発明の製剤としては、経口投与、経鼻投与、局所投与(バッカルおよび舌下を含む)、経直腸投与、経膣投与および/または非経口投与に好適なものが挙げられる。製剤は、好都合には単位剤形(unit dosage form)で提供することができ、薬学の技術分野で周知の任意の方法で製造することができる。単一剤形(single dosage form)を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療を受けるホスト、特定の投与方法に応じて変わり得る。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量である。一般に、この量は、100%のうち、有効成分約0.1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%の範囲となるであろう。
【0121】
ある特定の実施形態では、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、および、ポリマー担体、例えば、ポリエステルおよびポリ酸無水物からなる群から選択される医薬品添加物;ならびに本発明の化合物を含む。ある特定の実施形態では、前述の製剤により、本発明の化合物は経口バイオアベイラビリティを有するものとなる。
【0122】
これらの製剤または組成物の製造方法は、本発明の化合物を担体および任意選択により1種類以上の補助成分(accessory ingredients)と配合する工程を含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体担体もしくは微粉砕された固体担体、またはその両方と均一且つ均質に配合した後、必要に応じてその配合物を成形する工程を含む。
【0123】
経口投与に好適な本発明の製剤は、それぞれ有効成分として本発明の化合物を所定量含有する、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(香味付き基剤、通常、ショ糖およびアラビアゴムまたはトラガカントゴムを使用)、散剤、顆粒剤の形態であっても、または水性もしくは非水性液体に溶解もしくは懸濁した溶液剤もしくは懸濁剤であっても、または、水中油型もしくは油中水型の液体乳剤であっても、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤であっても、または香錠剤(ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアラビアゴムなどの不活性基剤を使用)であってもおよび/または洗口剤等であってもよい。本発明の化合物は、巨丸剤、舐剤またはペースト剤として投与されてもよい。
【0124】
経口投与用の本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、およびトローチ剤(trouches)等)では、有効成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1種類以上の薬学的に許容される担体、および/または、以下:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、および/またはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアラビアゴム;(3)保湿剤、例えば、グリセリン;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、および、界面活性剤、例えば、ポロキサマーおよびラウリル硫酸ナトリウム;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、グリセリンモノステアレート、および、非イオン性界面活性剤;(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびこれらの混合物;(10)着色剤;ならびに(11)放出制御剤、例えば、クロスポビドンまたはエチルセルロース;のいずれかと混合物する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物は緩衝剤も含むことができる。類似のタイプの固体組成物を、ラクトース即ち乳糖、および高分子量ポリエチレングリコール等の医薬品添加物を使用して、ソフトシェルおよびハードシェルのゼラチンカプセル剤の充填物として使用することもできる。
【0125】
錠剤は、任意選択により1種類以上の補助成分と共に圧縮または成形することにより製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して製造することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を好適な装置で成形することにより製造することができる。
【0126】
本発明の医薬組成物の錠剤およびその他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤は、任意選択により割線を入れても、または腸溶性コーティングおよび製薬の技術分野で周知のその他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを有するように製造されてもよい。それらは、例えば、所望の放出プロファイルが得られるように様々な割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを使用して、中の有効成分が徐放または放出制御されるように製剤化されてもよい。それらは、速放されるように製剤化されても、例えば、凍結乾燥されてもよい。それらは、例えば、細菌捕捉フィルタで濾過することにより、または、使用直前に滅菌水もしくは他の何らかの注射用滅菌媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌されてもよい。これらの組成物はまた任意選択により乳白剤を含有してもよく、それらが胃腸管のある特定の部分でのみ、または好ましくはその部分で有効成分を放出する、任意選択により時限放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。有効成分はまた、適宜、前述の医薬品添加物の1種類以上と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0127】
本発明の化合物を経口投与するための液体剤形としては、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルション剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。有効成分の他に、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水またはその他の溶媒、溶解補助剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含有してもよい。
【0128】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および保存剤などの補助剤を含むこともできる。
【0129】
懸濁剤は、薬理活性化合物の他に、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントゴム、およびこれらの混合物のような懸濁化剤を含有することができる。
【0130】
経直腸または経膣投与用の本発明の医薬組成物の製剤は、坐剤として提供することができ、これは本発明の1種類以上の化合物を、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチレートを含む1種類以上の好適な非刺激性医薬品添加物または担体と混合することにより製造することができ、室温で固体であるが体温では液体である、従って、直腸または膣腔内で溶融し、薬理活性化合物を放出する。
【0131】
本発明の化合物を局所投与または経皮投与するための剤形としては、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤および吸入剤が挙げられる。薬理活性化合物を滅菌条件下で、薬学的に許容される担体と、および必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤、または噴射剤と混合することができる。
【0132】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、およびゲル剤は、本発明の薬理活性化合物の他に、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの医薬品添加物を含有してもよい。
【0133】
散剤およびスプレー剤は、本発明の化合物の他に、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの医薬品添加物を含有することができる。スプレー剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴射剤、ならびに、ブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を含有することができる。
【0134】
経皮パッチ剤には、本発明の化合物の身体への送達を制御するという追加の利点がある。このような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または分散させることにより製造することができる。また、吸収促進剤を使用して、化合物の皮膚透過を向上させることができる。このような透過の速度は、速度制御膜を提供することによりまたは化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることにより制御することができる。
【0135】
眼科用製剤、眼用軟膏剤、散剤、および溶液剤等も本発明の範囲に入るものと考えることができる。
【0136】
非経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、本発明の1種類以上の化合物を、1種類以上の薬学的に許容される滅菌等張性水性もしくは非水性溶液剤、分散液剤、懸濁剤もしくは乳剤、または、使用直前に滅菌注射用溶液剤もしくは分散液剤に再構成することができる滅菌散剤と組み合わせて含み、それらは、糖類、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含有することができる。
【0137】
本発明の医薬組成物に使用され得る好適な水性および非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール等)、およびこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材を使用することにより、分散液剤の場合は必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤を使用することにより、適切な流動性を維持することができる。
【0138】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤も含有することができる。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、およびフェノールソルビン酸等を含有することにより、対象化合物に対する微生物の作用を確実に防止することができる。糖類、および塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含むことが望ましい場合もある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延する薬剤を含有することにより、注射用医薬形態の持続吸収をもたらすことができる。
【0139】
薬物の効果を持続させるために、皮下注射または筋肉内注射により投与される薬物の吸収速度を低下させることが望ましい場合もある。これは、水溶性の低い結晶性または非晶質材料の液体懸濁剤を使用することにより達成することができる。その場合、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、これはまた結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口投与される薬物形態の吸収の遅延は、薬物を油性溶媒に溶解または懸濁化することにより達成される。
【0140】
注射用デポ剤の形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で対象化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより製造される。薬物対ポリマーの比、および使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリオルトエステルおよびポリ酸無水物が挙げられる。注射用デポ製剤はまた、身体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルションに薬物を閉じ込めることにより製造される。
【0141】
有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物を、吸入により肺に直接投与することもできる。吸入による投与では、有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物は、好都合には、多くの様々なデバイスで肺に送達することができる。例えば、好適な低沸点噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の任意の好適な気体)を収容するキャニスタを使用する計量吸入器(「MDI」)を使用して、有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物を肺に直接送達することができる。
【0142】
あるいは、乾燥粉末吸入器(「DPI」)デバイスを使用して有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物を肺に投与することができる。DPIデバイスは、典型的には気体の急激な膨張などの機構を使用して容器内に乾燥粉末の雲を形成し、これを患者が吸入できるようにするものであり、当該技術分野で周知である。一般的な変種には、2回以上の治療用量の送達を可能にする多回投与DPI(「MDDPI」)システムがある。MDDPIデバイスは、多くの製薬会社(例えば、Schering Plough,Madison,NJ)から市販されている。例えば、吸入器または注入器に使用されるゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物と、ラクトースまたはデンプンなどのこれらのシステムに好適な粉末基剤との粉末混合物を含有するように製剤化されてもよい。
【0143】
化合物および/またはその医薬組成物を肺に送達するのに使用され得る別のタイプのデバイスには、例えば、Aradigm Corporation,Hayward,CAにより供給される液体スプレーデバイスがある。液体スプレーシステムは、極めて小さいノズル穴を使用して、液体薬物製剤をエアゾール化し、それを肺に直接吸入できるようにする。
【0144】
幾つかの実施形態では、ネブライザを使用して、有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物を肺に送達する。ネブライザは、例えば、超音波エネルギーを使用して、容易に吸入され得る微粒子を形成することにより、液体薬物製剤からエアゾールを形成する(例えば、Verschoyle et al.,British J.Cancer,1999,80,Suppl.2,96を参照されたい)。ネブライザの例としては、Sheffield Pharmaceuticals,St.Louis,MO.(例えば、Armerら、米国特許第5,954,047号明細書;van der Lindenら、米国特許第5,950,619号明細書;van der Lindenら、米国特許第5,970,974号明細書)およびBatelle Pulmonary Therapeutics,Columbus,OH.により供給されるデバイスが挙げられる。
【0145】
他の実施形態では、電気流体力学的(「EHD」)エアゾールデバイスを使用して、有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物を患者の肺に送達する。EHDエアゾールデバイスは、電気エネルギーを使用して液体薬物溶液剤または懸濁剤をエアゾール化する(例えば、Noakesら、米国特許第4,765,539号明細書を参照されたい)。製剤の電気化学的特性は、EHDエアゾールデバイスを用いて有機ニトロチオエーテル化合物および/またはその医薬組成物を肺に送達するとき、最適化する重要なパラメータとなり得、このような最適化は当業者により一般的に行われている。EHDエアゾールデバイスは、既存の肺送達法よりも効率的に薬物を肺に送達することができる。
【0146】
本発明の化合物を医薬としてヒトおよび動物に投与するとき、それらはそれ自体で投与されても、または、例えば、有効成分0.1〜99%(より好ましくは10〜30%)を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として投与されてもよい。
【0147】
本発明の製剤は、経口、非経口、局所、または経直腸投与することができる。それらは、もちろん、各投与経路に好適な形態で投与される。例えば、それらは、錠剤またはカプセル剤の形態で、注射、吸入により、眼用ローション剤、軟膏剤、坐剤等、注射、注入、または吸入による投与;ローション剤または軟膏剤による局所投与;および坐剤による経直腸投与で投与される。経口投与が好ましい。
【0148】
「非経口投与」および「非経口投与する」という語句は、本明細書で使用する場合、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常は、注射による投与方法を意味し、それには、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内(transtracheal)、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、および胸膜内注射および注入が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
「全身投与」、「全身投与する」、「末梢投与」および「末梢投与する」という語句は、本明細書で使用する場合、化合物、薬物または他の材料を中枢神経系に直接投与するのではなく、それが患者の体系に入り、従って代謝および他の同様のプロセスを受けるように投与すること、例えば、皮下投与することを意味する。
【0150】
これらの化合物は、治療のためにヒトおよび他の動物に、経口投与、経鼻投与、例えば、スプレーとして投与、経直腸投与、膣内投与、非経口投与、槽内投与および局所投与、散剤、軟膏剤またはドロップ剤として投与、バッカル投与および舌下投与することを含む、任意の好適な投与経路により投与することができる。
【0151】
選択される投与経路にかかわらず、好適な水和形態で使用することができる本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の通常の方法で、薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0152】
患者に対して毒性を示さず、特定の患者、組成、投与方法に関して所望の治療反応を達成するのに有効な有効成分の量が得られるように、本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与レベルを変えることができる。
【0153】
選択された投与レベルは、使用される本発明の特定の化合物またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄もしくは代謝速度、吸収の速度および程度、治療期間、使用される特定の化合物と併用される他の薬物、化合物および/または材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、症状、全身健康状態、および以前の病歴等の医療の技術分野で周知の要因を含む様々な要因に依存する。
【0154】
当該技術分野で通常の技術を有する医師および獣医師であれば、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物中に使用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルから開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加することができる。
【0155】
一般に、本発明の化合物の好適な一日量は、治療効果をもたらすのに有効な最低の用量である化合物の量であろう。このような有効用量は、一般に、前述の要因に依存する。好ましくは、化合物は、約0.01mg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約100mg/kg、さらにより好ましくは約0.5mg/kg〜約50mg/kgで投与される。本明細書に記載の化合物を別の薬剤(例えば、増感剤)と併用投与する場合、有効量は、薬剤を単独で使用する場合より少なくなり得る。
【0156】
必要に応じて、薬理活性化合物の有効な一日量を、任意選択により単位剤形で、1日にわたり適切な間隔で2、3、4、5、または6以上の部分用量として投与してもよい。好ましい投与は、1日1回の投与である。
【0157】
V.医療用途に使用されるキット
本発明の別の態様は、障害を治療するためのキットを提供する。キットは:i)脳癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮体癌、食道癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、胃癌、精巣癌、および子宮癌からなる群から選択される癌などの癌を治療するための使用説明書;およびii)式Iまたは式IIの化合物などの本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物;を含む。キットは、式Iまたは式IIの化合物などの本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物を前記癌の治療に有効な量含有する1つ以上の単位剤形を含んでもよい。
【0158】
上記説明は、有機ニトロチオエーテル化合物、有機ニトロチオエーテル化合物を含む組成物、有機ニトロチオエーテル化合物の使用方法、およびキットを含む本発明の複数の態様および実施形態について説明している。本特許出願は、態様および実施形態のあらゆる組み合わせおよび変更を明確に検討する。例えば、本発明は、式IAの化合物を治療有効量投与することによりヒト患者の癌を治療することを検討する。さらに、例えば、本発明は癌を治療するためのキットも検討し、キットは、癌(乳癌、白血病、または前立腺癌など)を治療するための使用説明書およびii)式IAの化合物などの本明細書に記載の有機ニトロチオエーテル化合物を含む。
【実施例】
【0159】
本発明を概略的に説明したが、本発明は以下の実施例を参照することによりさらに容易に理解され、それらは本発明のある特定の態様および実施形態を説明する目的で記載されるに過ぎず、本発明を限定しようとするものではない。
【0160】
実施例1:ABDNAZ−システイン(ABDNAZ−CYS)の製造
【化40】
2−ブロモ−1−(3,3−ジニトロアゼチジン−1−イル)エタノン(ABDNAZ、1340mg、5.00mmol)の冷メタノール(30mL)溶液を、システイン(610mg、5.03mmol)および酢酸ナトリウム(420mg、5.12mmol)を逆浸透水(10mL)およびメタノール(10mL)に溶解した撹拌溶液に30分間にわたり滴下し、反応フラスコ内で0〜5℃に維持した。添加終了時に、相当量の白色固体が分離しており、反応フラスコを密閉して−10℃で2時間維持した。白色固体を濾過により分離し、冷却したメタノール(−10℃)で洗浄した後、60℃で乾燥して、標題化合物910mgを融点150〜152℃の白色固体として得た。
【0161】
次いで、濾液と洗浄液を減圧下で蒸発乾固し、白色残留物をエタノール(10mL)で処理し、フラスコを密封して、36時間放置した。得られた白色固体を濾過により除去し、エタノールで洗浄し、60℃で乾燥して、標題化合物400mgを融点151〜153℃の白色固体として得た。2つの生成物の赤外スペクトルは同一であり、合わせた収量1310mgは、生成物収率85%であった。合わせた生成物を水/エタノール(1対4)から回収率88%で再結晶し、再結晶前の生成物と同一の赤外スペクトル、TLCで単一のスポットおよびmp151〜153℃を有する生成物を得た。FTIR(KBr加圧成形):3438.3、3015.9、2076.0、1670.1、1634.9、1582.1、1446.5、1388.0、1337.6および1304.8cm−1
【0162】
ABDNAZは、米国特許第7,507,842号明細書に記載のように製造することができ、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0163】
実施例2:ABDNAZ−グルタチオンの製造
【化41】
マグネチックスターラーを備えた40mLバイアルに、メタノール(20mL)および脱イオン水(5mL)を仕込んだ。L−グルタチオン(0.50g、1.63mmole)、続いて酢酸ナトリウム(0.17g、2.07mmole)を添加した。固体が溶解するまで、混合物を撹拌した。次いで、この溶液に2−ブロモ−1−(3,3−ジニトロアゼチジン−1−イル)エタノン(ABDNAZ、0.43g、1.60mmole)を添加し、反応を室温で18時間撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、固体をメタノール(10mL)で洗浄した。次いで、固体を50℃の真空乾燥機で20時間乾燥して、標題化合物を得た。
【0164】
実施例3:(R)−2−アミノ−3−[2−(3,3−ジニトロアゼチジン−1−イル)−2−オキソエチルスルファニル]−プロピオン酸メチルエステル塩酸塩の製造
【化42】
N−Boc−システインメチルエステル(785mg、3.23mmol)および酢酸ナトリウム(265mg、3.23mmol)をメタノール(15mL)およびHPLC用水(15mL)に溶解した冷(0℃)撹拌溶液に、ABDNAZ(850、3.17mmol)の冷(0℃)メタノール(35mL)溶液を30分間にわたり滴下した。2時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)は、完全な変換を示した。混合物を減圧下で濃縮乾固し、残留物に酢酸エチルを添加し、混合物をセライト(celite)で濾過して、濾液を減圧濃縮した。粗生成物を4N HClジオキサン溶液(35mL)で処理し、得られた混合物を室温で終夜撹拌した。次いで、混合物を減圧濃縮した。酢酸エチルを添加し、固体を濾過し、さらに真空乾燥して、標題化合物660mg(2工程で65%)を白色固体として得た。H NMR(200MHz,DO)δ3.09(dd,1H,J=8.0,15.4Hz),3.26(dd,1H,J=4.8,15.4Hz),3.36(s,3H),3.75(s,3H),4.32(dd,1H,J=4.8,8.0Hz),4.89(bs,2H),5.09(s,2H),5.17(bs,2H).LC/MS(M+H=323)。純度は、Phenomenex Luna 3μ C8(2)100Aカラムを使用し、0.1%TFAを含有する水と0.1%を含有するアセトニトリルとを移動相として(30〜90%アセトニトリル、1.0mL/分)使用するLC/MSを使用して確認した。保持時間=0.45分;面積%=97.9%。
【0165】
実施例4:(R)−メチル2−アセトアミド−3−(2−(3,3−ジニトロアゼチジン−1−イル)―2−オキソエチルチオ)プロパノエートの製造
【化43】
N−アセチルシステインメチルエステル(320mg、1.80mmol)および酢酸ナトリウム(148mg、1.80mmol)をメタノール(5mL)およびHPLC用水(5mL)に溶解した冷(0℃)撹拌溶液に、ABDNAZ(474mg、1.77mmol)の冷(0℃)メタノール(20mL)溶液を30分間にわたり滴下した。2時間後、TLCは完全な変換を示した。混合物を減圧下で濃縮乾固し、残留物に酢酸エチルを添加し、混合物をセライトで濾過した。濾液を減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン〜純粋な酢酸エチルを溶離液として使用)で精製して、標題化合物515mg(80%)を白色泡状物として得た。H NMR(200MHz,CDCl)δ2.04(s,3H),2.97(dd,1H,J=7.4,14.8Hz),3.19(dd,1H,J=4.8,14.8Hz),3.24(s,2H),3.78(s,3H),5.13−4.83(m,5H),6.48(d,1H,J=7.4Hz).LC/MS(M+H=365およびM+Na=387).純度は、Phenomenex Luna 3μ C8(2)100Aカラムを使用し、0.1%TFAを含有する水と0.1%を含有するアセトニトリルとを移動相として(30〜90%アセトニトリル、1.0mL/分)使用するLC/MSを使用して確認した。保持時間=0.87分;面積%=100%。
【0166】
実施例5:(R)−2−アセトアミド−3−(2−(3,3−ジニトロアゼチジン−1−イル)−2−オキソエチルチオ)プロパン酸の製造
【化44】
(R)−メチル2−アセトアミド−3−(2−(3,3−ジニトロアゼチジン−1−イル)−2−オキソエチルチオ)プロパノエート(1.02g、2.80mmol)をメタノール(50mL)に撹拌しながら溶解し、混合物を0℃に冷却した。次いで、LiOH(0.5M、8.40mL)をシリンジで反応混合物に滴下し、TLCが完全な変換を示すまで(2.5時間)得られた黄色混合物を撹拌した。次に、反応混合物を水で希釈し、0℃に冷却し、50%HCl溶液でpH=2に酸性化した。次いで、反応混合物を酢酸エチル(×2)で抽出し、抽出物をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して残留物を得、それを、シリカゲルおよび30%MeOH/EtOAcを溶離液として使用するカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物625mg(64%)を白色固体として得た。H NMR(200MHz,DMSO−d)δ1.85(s,3H),2.81(dd,1H,J=8.4,13.6Hz),3.04(dd,1H,J=4.8,13.6Hz),3.33(s,2H),4.41−4.35(m,1H),4.80(s,2H),5.13(s,2H),8.20(d,1H,J=8.0Hz).LC/MS(M+H=351).純度は、Phenomenex Luna 3μ C8(2)100Aカラムを使用し、0.1%TFAを含有する水と0.1%を含有するアセトニトリルとを移動相として(30〜90%アセトニトリル、1.0mL/分)使用するLC/MSを使用して確認した。保持時間=0.60分;面積%=97.6%。
【0167】
実施例6:抗癌アッセイ
SCC VII腫瘍を有するマウスを、次の化学構造を有する化合物1で処置した。
【化45】
実験手順および結果を下記に記載する。
【0168】
第I部:実験手順
治療組成物:
治療組成物は、化合物1を水/DMSO担体に溶解したものであった。治療組成物は、化合物1、2.3mgを、DMSO、0.1mLに溶解し、得られた溶液を水1.9mLと混合し、化合物1を1.15mg/mL含有する溶液を得ることにより調製した。治療組成物中のジメチルスルホキシド(DMSO)の濃度は5%であった。
【0169】
試験手順:
雄性C3HマウスはCharles River Laboratoriesから入手し、特定病原体除去条件下に維持した。マウスは、ケージ当たり動物が5匹となるように飼育され、加圧滅菌された食餌および水を自由摂取させた。ケージは、温度、華氏65±2度、湿度50%±5%、および12時間の明暗サイクルを有する室内に配置した。腫瘍細胞接種時に、マウスは7〜8週齢、体重22〜25グラムの範囲であった。
【0170】
マウスの背中に、ハンクの溶液0.05mLに懸濁したSCCVII腫瘍細胞5×10個を皮下接種した。腫瘍移植の10日後、治療組成物を1日おきに(即ち、第0日目、第2日目および第4日目に隔日)合計3用量、腹腔内注射で投与することにより処置を開始した(第0日目)。処置の直前およびその後週3回、腫瘍体積が処置前の元の体積の少なくとも4倍(4×)に達するまで、腫瘍の長さと幅をキャリパで測定した。腫瘍体積(mm)は、次式に従って算出した:
腫瘍体積=π/6×長さ×幅
【0171】
第II部:結果
治療組成物を投与したマウスの腫瘍は、治療組成物を投与しなかった(即ち、対照)マウスの腫瘍より小さかった。処置マウスと無処置(対照)マウスの腫瘍体積を示す実験データを図1に記載する。
【0172】
実施例7:健常ラットにおける毒性評価
化合物1を健常ラットに投与し、ラットの化合物1による毒性副作用のエビデンスを評価した。実験手順および結果を下記に記載する。結果から、化合物1を投与したラットに顕著な毒性が認められなかったことが分かる。
【化46】
【0173】
第I部:実験手順
雄性ラット各3匹からなる2群にそれぞれ、0.9%生理食塩水に加えて調製した化合物1を100mg/kgまたは300mg/kgの用量で投与した。ラット3匹からなる第3群には生理食塩水だけを投与した。用量は大腿静脈から送達した。100mg/kgの用量は、10mg/mL溶液を使用して、投与量10mL/kgおよび注入速度15mL/時間で送達した。300mg/kgの用量は、20mg/mL溶液を使用して、投与量15mL/kgおよび注入速度15mL/時間で送達した。動物を24時間監視して、剖検を行い(そして、胸膜腔と腹腔を大まかに観察し)、微視的評価を行うことができるように肺を回収した。
【0174】
第II部:結果
化合物1を100mg/kgの用量で投与したラットには、顕著な臨床所見は認められなかった。化合物1を300mg/kgの用量で投与したラットには、投与後最初の3時間、蒼白が認められた。化合物1を投与したラットの肺には大きな変化はなかった。化合物1を投与した大部分のラットには腎臓に斑点(mottled kidneys)が認められたが、化合物1の毒性を判断するためにこの所見が重要性を有するかどうか判定するには、更なる評価を必要とするであろう。
【0175】
参照による援用
本明細書で参照する特許文献および科学論文はそれぞれ、その開示内容全体があらゆる目的で参照により援用される。
【0176】
均等物
本発明の精神または本質的特徴から逸脱することなく他の特定の形態でも本発明を具体化することができる。従って、前述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するものではなく、あらゆる点で本発明を説明するものと見なされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の詳細な説明ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲に入る全ての変更はそれに包含されるものとする。
図1